JP3966860B2 - 電波到来方向探知装置及び方法 - Google Patents
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Description
本発明は、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置の指向特性を変化させることができるアレーアンテナを用いた電波到来方向探知装置及び方法に関し、特に、電子制御導波器アレーアンテナ装置の指向特性を適応的に変化させることができるアレーアンテナを用いた電波到来方向探知装置及び方法に関する。
従来技術の電子制御導波器アレーアンテナ装置は、例えば、特許文献1や非特許文献2及び3において提案されている。この電子制御導波器アレーアンテナ装置は、無線信号が給電される給電素子と、この給電素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が給電されない少なくとも1個の非給電素子と、この非給電素子に接続された可変リアクタンス素子とから成るアレーアンテナを備え、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。
この電子制御導波器アレーアンテナ装置を用いた電波到来方向探知装置として、特許文献2(以下、従来例という。)において提案されている。この従来例では、「発信装置から放射された発信パルスの電波を、探知装置の受信ビーム方向をすべての方位角にわたって変化させて受信して最大の受信信号強度を検出することにより電波到来方向を検出する電波到来方向探知装置において、上記発信パルスのパルス幅は、探知装置の受信ビーム方向をすべての方位角にわたって変化させて受信して最大の受信信号強度を検出する処理に係る時間以上に設定され、上記発信パルスの立ち上がりを検出し、当該検出時点から探知装置の受信ビーム方向をすべての方位角にわたって変化させて受信して最大の受信信号強度を検出することにより電波到来方向を検出する制御手段を備えた電波到来方向探知装置」が開示されている。従って、発信パルスのパルス幅は、受信ビーム方向をすべての方位角にわたって変化させて受信して最大の受信信号強度を検出することにより電波到来方向を検出する処理に係る時間に含まれ、必ず、発信装置の方向である最大の強度値の方向(すなわち、電波到来方向)を含む。それ故、最大の受信信号強度の方向を常に正確に検出することができるという特有の効果を有している。
しかしながら、この従来例では、電波到来方向の検出精度が低く、かつ複数の電波到来方向を検出できないという問題点があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来例に比較して高い検出精度で、複数の電波到来方向を同時に検出できる電波到来方向探知装置及び方法を提供することにある。
第1の発明に係る電波到来方向探知装置は、無線信号を受信するための給電素子と、上記給電素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非給電素子と、上記各非給電素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非給電素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いてアレーアンテナに到来する無線信号の到来方位角を測定する電波到来方向探知装置において、
上記アレーアンテナは、上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーと、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーとを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有し、
上記電波到来方向探知装置は、
互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算する制御手段とを備えたことを特徴とする。
上記アレーアンテナは、上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーと、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーとを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有し、
上記電波到来方向探知装置は、
互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算する制御手段とを備えたことを特徴とする。
上記電波到来方向探知装置において、上記制御手段は、上記計算された相関行列Rhzzを固有値分解して上記相関行列Rhzzの固有値αmを計算し、上記計算された固有値αmに基づいて雑音に基づく相関行列Rhnnを計算し、上記計算された2つの相関行列Rhzz及びRhnnに基づいて、送信された無線信号に基づく相関行列Rhyyを計算し、上記計算された相関行列Rhyyを固有値分解することにより固有ベクトルwkを計算し、上記計算された固有ベクトルwkと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算することを特徴とする。
第2の発明に係る電波到来方向探知方法は、無線信号を受信するための給電素子と、上記給電素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非給電素子と、上記各非給電素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非給電素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いてアレーアンテナに到来する無線信号の到来方位角を測定する電波到来方向探知方法において、
上記アレーアンテナは、上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーと、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーとを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有し、
上記電波到来方向探知方法は、
互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算するステップを含むことを特徴とする。
上記アレーアンテナは、上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーと、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーとを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有し、
上記電波到来方向探知方法は、
互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算するステップを含むことを特徴とする。
上記電波到来方向探知方法において、上記受信信号の到来方位角を計算するステップは、上記計算された相関行列Rhzzを固有値分解して上記相関行列Rhzzの固有値αmを計算し、上記計算された固有値αmに基づいて雑音に基づく相関行列Rhnnを計算し、上記計算された2つの相関行列Rhzz及びRhnnに基づいて、送信された無線信号に基づく相関行列Rhyyを計算し、上記計算された相関行列Rhyyを固有値分解することにより固有ベクトルwkを計算し、上記計算された固有ベクトルwkと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算することを特徴とする。
従って、本発明に係る電波到来方向探知装置又は方法によれば、互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算する。それ故、従来例に比較して高い検出精度で、複数の電波到来方向を同時に検出できる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
図1は本発明に係る実施形態である電波到来方向探知装置の構成を示すブロック図である。この実施形態の電波到来方向探知装置は、図1に示すように、1つの給電素子A0と、6個の非給電素子A1乃至A6とを備えてなる電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100と、無線受信機10と、コントローラ20とを備える。
図1において、アレーアンテナ装置100は、接地導体11上に設けられた給電素子A0及び非給電素子A1乃至A6から構成され、給電素子A0は、半径Rの円周上に設けられた6本の非給電素子A1乃至A6に従って囲まれるように配置されている。好ましくは、各非給電素子A1乃至A6は上記半径Rの円周上に互いに等間隔を保って設けられる。各給電素子A0及び非給電素子A1乃至A6の長さは、例えば約λ/4(ここで、λは所望波の波長である。)になるように構成され、また、上記半径Rはλ/4になるように構成される。給電素子A0の給電点は同軸ケーブル5を介して無線受信機10の低雑音増幅器(LNA)1に接続され、また、非給電素子A1乃至A6はそれぞれ可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に接続され、これら可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値はコントローラ20からのリアクタンス値信号に従って設定される。
また、アレーアンテナ装置100は、例えば図4乃至図6に示すように、給電素子A0と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーSA1と、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子A0と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーSA2とを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有している。この条件は、ESPRIT法を適用するためのアレーアンテナ装置に対する必要条件であり、アレーアンテナ装置100はこの条件を満たしている。
コントローラ20は、例えばコンピュータなどのディジタル計算機で構成され、互いに異なる各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときにアレーアンテナ装置100に従って受信される各受信信号y(t)を検出した後、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzを固有値分解して上記相関行列Rhzzの固有値αmを計算し、上記計算された固有値αmに基づいて雑音に基づく相関行列Rhnnを計算し、上記計算された2つの相関行列Rhzz及びRhnnに基づいて、送信された無線信号に基づく相関行列Rhyyを計算し、上記計算された相関行列Rhyyを固有値分解することにより固有ベクトルwkを計算し、上記計算された固有ベクトルwkと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算することを特徴としている。
従来技術において、信号処理に関する実際的問題点のほとんどは、例えば遅延推定又は到来方位角DoA推定の場合のように、受信される信号が依存する一定値パラメータのセットを測定して推定することに関連している。本実施形態で用いるESPRIT法(例えば、非特許文献1参照。)は、到来方位角DoAの推定に適用可能な、部分空間ベースの信号処理配列手法として広く採用されている。パラメータの推定は、センサ設計内部の不変性を利用して達成されている。このESPRIT法を電子制御導波器アレーアンテナ装置(例えば、非特許文献2及び3、並びに特許文献1参照。)は単一の出力ポートしか保有しないため、ESPRIT法に係る従来のアルゴリズムをそのまま適用することはできない。電子制御導波器アレーアンテナ装置に関してリアクタンスドメイン手法(例えば、非特許文献4参照。)が提案されて以来、電子制御導波器アレーアンテナ装置に関してはMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法(例えば、非特許文献4参照。)等の従来方法が提案されてきた(例えば、非特許文献6及び7参照。)。本実施形態では、ESPRIT法のアルゴリズムとリアクタンスドメイン手法とを組み合わせて到来方位角DoAを推定する方法を開示するものである。
図2は、アレーアンテナ装置100の縦断面図である。給電素子A0は接地導体11と電気的に絶縁され、各非給電素子A1乃至A6は、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6を介して、接地導体11に対して高周波的に接地される。可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の動作を説明すると、例えば給電素子A0と非給電素子A1乃至A6の長手方向の長さが実質的に同一であるとき、例えば、可変リアクタンス素子12−1がインダクタンス性(L性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は延長コイルとなり、非給電素子A1乃至A6の電気長が給電素子A0に比較して長くなり、反射器として働く。一方、例えば、可変リアクタンス素子12−1がキャパシタンス性(C性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は短縮コンデンサとなり、非給電素子A1の電気長が給電素子A0に比較して短くなり、導波器として働く。また、他の可変リアクタンス素子12−2乃至12−6に接続された非給電素子A2乃至A6についても同様に動作する。
従って、図1のアレーアンテナ装置100において、各非給電素子A1乃至A6に接続された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナ装置100の平面指向性特性を変化させることができる。
図1のアレーアンテナの制御装置において、アレーアンテナ装置100の給電素子A0は無線信号y(t)を受信し、上記受信された無線信号である受信信号y(t)は同軸ケーブル5を介して無線受信機10の低雑音増幅器1を介してダウンコンバータ2に入力され、ダウンコンバータ2は入力される受信信号を所定の中間周波数の中間周波信号に周波数変換した後、A/D変換器3に出力する。A/D変換器3は、入力されるアナログの中間周波信号をディジタルの中間周波信号に変換した後、コントローラ20に出力する。さらに、コントローラ20は、入力される中間周波信号に基づいて、詳細後述する到来角探索処理を実行することにより、受信信号の電波の到来角を計算し、その結果をCRTディスプレイ21に出力して表示する。ここで、コントローラ20は、詳細後述する電波到来方向探知処理を実行する。
次いで、アレーアンテナ装置100における信号モデルについて説明する。アレーアンテナ装置100は1個の給電素子A0と、M個の非給電素子A1乃至AMとを含む(M+1)個の素子で構成され、図1及び図3の構成例では、M=6である。上述のように、アレーアンテナ装置100の放射パターンは、非給電素子A1乃至A6に接続された各可変リアクタンス素子12−1乃至12−Mのリアクタンス値xm(m=1,2,…,M)を調整することに従って制御される。実際のアプリケーションでは、リアクタンス値xmは、例えば−300Ωから300Ωまでといった所定の領域で制御することができる。下記の式(1)で示されるベクトルはリアクタンスベクトルと呼ばれ、アレーアンテナ装置100のパターン形成に使用される。なお、当該明細書において、行列E*,ET及びEHはそれぞれ、行列Eの複素共役行列、行列Eの複素転置行列、行列Eのエルミート転置行列を表す。
本実施形態で用いるアレーアンテナ装置100は、図3に示すように、中央の1つの給電素子A0をM個の非給電素子A1乃至AMが取り囲む単一ポート型のモノポールアレーアンテナ装置である。ここで、能動のモノポールアンテナである給電素子A0を対称的に取り囲むM本の非給電素子Am(m=1,2,…,M)はそれぞれ、リアクタンス値xm(m=1,2,…,M)の可変リアクタンス素子12−m(m=1,2,…,M)が装荷され、上述のように、アレーアンテナ装置100の放射パターンはこれらのリアクタンス値を調整することよって変更可能である。ここで、M個のリアクタンス値xmからなるリアクタンスベクトルxは次式で表される。なお、当該明細書において、数式がイメージ入力された墨付き括弧の数番号と、数式が文字入力された大括弧の数式番号とを混在して用いており、また、当該明細書での一連の数式番号として「式(1)」の形式を用いて数式番号を式の最後部に付与して(付与していない数式も存在する)用いることとする。
[数1]
x=[x1,x2,…,xM]T (1)
x=[x1,x2,…,xM]T (1)
ここで、到来方位角DoAがθd(d=1,2,…,D)で送信されてくるD個の受信信号ud(t)がアレーアンテナ装置100に入射するRF信号は、次式で表される。
[数2]
s(t)=[s0(t),s1(t),…,sM(t)] (2)
s(t)=[s0(t),s1(t),…,sM(t)] (2)
ここで、sm(t)はm番目のアンテナ素子Amに入射する無線信号である。このとき、無線信号s(t)は次式で表される(例えば、非特許文献2参照。)。
ここで、a(θd)は次式で表される指向性ベクトルである。
ここで、次式で表されるφmは任意の軸に対するm番目のアンテナ素子Amの角度位置である。なお、図1及び図3においては、給電素子A0から非給電素子A1への方向をX方向とし、角度計算の基準軸(θ=0゜)とする。
[数3]
φm=(2π/M)(m−1),(m=0,1,…、M) (5)
φm=(2π/M)(m−1),(m=0,1,…、M) (5)
このとき、アレーアンテナ装置100により受信された受信信号y(t)は次式で表される。
ここで、n(t)は付加白色ガウス雑音であり、iは無線電流ベクトルである。電流ベクトルiは、次式で表される。
[数4]
i=Vs(Z+X)−1u0 (7)
i=Vs(Z+X)−1u0 (7)
ここで、Xは次式で表されるリアクタンス行列である。
[数5]
X=diag([50,jx1,jx2,…,jxM]) (8)
X=diag([50,jx1,jx2,…,jxM]) (8)
また、Zはインピーダンス行列であり、zs=50Ωは受信機の入力インピーダンスであり、(M+1)次元ベクトルu0は次式で表されるものとする。
[数6]
u0=[1,0,…,0]T (9)
u0=[1,0,…,0]T (9)
次いで、ESPRIT法のアルゴリズムのアレーアンテナ装置100への適用方法について以下に説明する。ESPRIT法のアルゴリズムは、センサアレーの構成に制約を課すことにより、計算の複雑さの大幅な低減を達成する。すなわち、アレーは変位不変性を保有していなければならない(例えば、非特許文献1参照。)。電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100への適用は、その形状が7素子の正六角形であることからこの基準に適合する。従って、本実施形態に係るアレーアンテナ装置100は、移動ベクトルΔに従って並進的に分離された2つのサブアレーに分割可能である。すなわち、電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100においては、詳細後述するように、複数のアンテナ素子からなるアレーアンテナ装置100において、給電素子A0を含む複数のアンテナ素子からなる第1のセットと、当該第1のセットを、移動ベクトルΔにより平行移動させたときの、給電素子A0を含む複数のアンテナ素子からなる第2のセットとに基づいて形成したサブアレー形成行列J1,J2を用いてESPRIT法のアルゴリズムを適用する。
実際には、ESPRIT法のアルゴリズムの適用に先立って、幾つかのパラメータが必要である。特に、電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100の場合には、電流ベクトルIcurrentの行列が必要である。Icurrentはアンテナ構成の特徴を具現するものであり、幾つかの校正技術を使用して取得されなければならない(例えば、非特許文献9参照。)。当該電流ベクトルIcurrentは次式で表される。
[数7]
IT=[i0 T,i1,…,iM T] (10)
IT=[i0 T,i1,…,iM T] (10)
ここで、im Tは、互いに指向特性の主ビームの方向が異なるM+1個のリアクタンス値セットのうち、m番目のリアクタンス値セットに関連する電流ベクトルに対応する。第2に、受信信号の相関行列Rzzの測定値からの推定値が必要である。ここで、zは受信信号行列であり、次式で表される。
[数8]
z=[y1,y2,…,yM+1]T (11)
z=[y1,y2,…,yM+1]T (11)
なお、式の簡略化のために、時間依存性は除外されている。受信信号yiは、i番目のリアクタンス値セットを使用する際に測定されるアンテナ出力の受信信号を表す。ベクトルzは、非特許文献4及び6で説明されている単一の出力ポートを有する相関行列の計算を可能にするリアクタンスドメイン技術に従って構成される。
次いで、従来技術のESPRIT法とは異なるアルゴリズムステップについて以下に説明する。まず、(M+1)個のリアクタンス値セットが予め選定される。リアクタンス値セット{x(1),x(2),…,x(M+1)}のそれぞれについて、対応するアンテナ出力の受信信号yiが測定され、次式で表される(M+1)×1の出力ベクトルが取得される。
[数9]
z=[y1,y2,…,yM+1]T (12)
z=[y1,y2,…,yM+1]T (12)
従って、受信信号間の相関行列Rzzは次式を用いて計算できる。
[数10]
Rzz=E[zzH]=Icurrent TARuuAHIcurrent *+Rnn (13)
Rzz=E[zzH]=Icurrent TARuuAHIcurrent *+Rnn (13)
ここで、E[・]は統計的期待値(所定の時間期間の平均値(時間平均値)をいう。)の演算子である。第2に、Rhmで示される雑音相関行列の推定値が、次式で表される公知の赤池情報量基準(AIC)に従って与えられる(例えば、非特許文献10参照。)。
[数11]
Rhnn=σh2IM+1 (14)
Rhnn=σh2IM+1 (14)
ここで、IM+1は(M+1)×(M+1)の単位行列を示し、σh2は次式で表される。
ここで、Dは受信信号の数であり、λiは相関行列Rzzの固有値である。ESPRIT法は、信号相関行列の部分空間分解を基礎としている。従って、信号に関する最も興味深いデータを包含する相関行列を求めることが必要である。それ故、以下の受信信号の修正された(すなわち、受信信号から雑音を除去した信号、すなわち、送信局から送信された信号に係る)相関行列Ryyを使用して受信信号の部分空間Esの推定値が取得される。
[数12]
Ryy=(Icurrent T)−1(Rzz−Rhnn)Icurrent T (16)
Ryy=(Icurrent T)−1(Rzz−Rhnn)Icurrent T (16)
受信信号の部分空間Esは、相関行列Ryyの固有分解のD個の最大固有値に対応する固有ベクトルで張られて構成されており、次式に従って分割される。
図4(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いるアレーアンテナ装置100のアンテナ素子のセットS1aを示す平面図であり、図4(b)は上記アレーアンテナ装置100のアンテナ素子のセットS1bを示す平面図である。以下、セットS1aとセットS1bをまとめてセットS1といい、セットS2及びS3についても同様である。また、図5(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いるアレーアンテナ装置100のアンテナ素子のセットS2aを示す平面図であり、図5(b)は上記アレーアンテナ装置100のアンテナ素子のセットS2bを示す平面図である。さらに、図6(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いるアレーアンテナ装置100のアンテナ素子のセットS3aを示す平面図であり、図6(b)は上記アレーアンテナ装置100のアンテナ素子のセットS3bを示す平面図である。
ここで、J1及びJ2はサブアレー分割に依存する選択行列である。ESPRIT法のアルゴリズムを電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100に適用する場合の重要なパラメータの1つは、サブアレー分割の選定である。サブアレー分割は、サブアレーSA1,SA2にそれぞれ対応する選択行列J1及びJ2に従って具現される。これらの選択行列J1,J2は、電子制御導波器アレーアンテナ装置が保持する移動不変性を表している。当該アレーアンテナ装置100では、3つのセットS1,S2,S3が可能である。ここで、セットS1aにおけるサブアレー構成において、次式の選択行列J1及びJ2を得ることができる。なお、セットS1bにおけるサブアレー構成においては、選択行列J1及びJ2の要素が互いに逆になるように得ることができる。
ここで、選択行列J1はサブアレーSA1においてアンテナ素子{A0,A3,A4,A5}をピックアップして当該選択行列J1の行に対応させ、元の7つのアンテナ素子A0乃至A6を当該選択行列J1の列に対応させて得ることができる。また、選択行列J2はサブアレーSA1においてアンテナ素子{A0,A1,A2,A6}をピックアップして当該選択行列J1の行に対応させ、元の7つのアンテナ素子A0乃至A6を当該選択行列J1の列に対応させて得ることができる。2つのサブアレーSA1、SA2間の移動不変性を表すベクトルΔは、到来方位角DoAの推定を左右する、特に、後述する到来方位角DoA推定値の式における方位角基準値θref値を左右する重要なパラメータである。
これらのセットに対応する到来方位角DoA推定値θk(セット名)は次式の関係(単位は度である。)を有する。
[数13]
θk(セットS1b)=−θk(セットS1a) (20)
[数14]
θk(セットS2b)=120+−θk(セットS2a) (21)
[数15]
θk(セットS3b)=−120−θk(セットS3a) (22)
θk(セットS1b)=−θk(セットS1a) (20)
[数14]
θk(セットS2b)=120+−θk(セットS2a) (21)
[数15]
θk(セットS3b)=−120−θk(セットS3a) (22)
ここで、セットS2aでは、給電素子A0と非給電素子A4,A5,A6とを選択してサブアレーSA1を構成し、給電素子A0と非給電素子A1,A2,A3とを選択してサブアレーSA2を構成している。また、セットS2bではセットS2aにおけるサブアレーの選択とは逆に、給電素子A0と非給電素子A1,A2,A3とを選択してサブアレーSA1を構成し、給電素子A0と非給電素子A4,A5,A6とを選択してサブアレーSA2を構成している。このセットS2aにおける選択行列J1,J2は次式で表される。なお、セットS2bにおけるサブアレー構成においては、選択行列J1及びJ2の要素が互いに逆になるように得ることができる。
また、セットS3aにおける選択行列J1,J2は次式で表される。なお、セットS3bにおけるサブアレー構成においては、選択行列J1及びJ2の要素が互いに逆になるように得ることができる。
図7(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いる第1の変形例に係る3素子リニアアレーアンテナ装置におけるサブアレーSA1を示す平面図であり、図7(b)は上記3素子リニアアレーアンテナ装置におけるサブアレーSA2を示す平面図である。この場合における選択行列J1,J2は次式で表される。なお、以下の種々の変形例において、A0は給電素子であり、それ以外のA1乃至AMは非給電素子である。
図8(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いる第2の変形例に係る5素子リニアアレーアンテナ装置におけるサブアレーSA1を示す平面図であり、図8(b)は上記5素子リニアアレーアンテナ装置におけるサブアレーSA2を示す平面図である。この場合における選択行列J1,J2は次式で表される。
図9(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いる第3の変形例に係る6素子2次元アレーアンテナ装置におけるサブアレーSA1を示す平面図であり、図9(b)は上記6素子2次元アレーアンテナ装置におけるサブアレーSA2を示す平面図である。この場合における選択行列J1,J2は次式で表される。
図10(a)は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法において用いる第4の変形例に係る6素子2次元アレーアンテナ装置におけるサブアレーSA1を示す平面図であり、図10(b)は上記6素子2次元アレーアンテナ装置におけるサブアレーSA2を示す平面図である。この場合における選択行列J1,J2は次式で表される。
さらに、ESPRIT法のアルゴリズムを適用することのできる、リニアアレーアンテナ装置について詳細に考察する。図11は7素子リニアアレーアンテナ装置を、アレーの中心で二等分しかつアンテナ素子で形成される線に対して垂直である方位基準軸を伴って描いたものである。一方、電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100の場合、方位基準軸は同一ではなく、図1及び図3が示すように、非給電素子A1がこのために使用されている。さらに、方位角基準値θrefは移動ベクトルΔの方向性に依存する。例えば、図4(a)に図示されたセットS1aの構成を使用する場合、移動ベクトルΔはリニアアレーアンテナ装置の方位基準軸に対して垂直であり、従って、方位角基準値θrefはこの作用とのバランスで90゜になる。なお、図12は、移動ベクトルΔの方向性による方位角基準値θrefをまとめたものである。ここで、矢印は移動ベクトルΔに対応し、各セットに対応して図12に示している。
次いで、2つのサブアレーの部分空間に対応する部分行列Ex,Eyに基づいて、次式のように固有値分割の計算を行う。
∧はExyの固有値を含む対角行列である。このとき、行列Eは次式で表される。
ここで、行列EijはD×Dの部分行列である。次いで、次式Ψの固有値が計算され、その要素であるφkを計算できる。
[数16]
Ψ=−E12E22 (37)
Ψ=−E12E22 (37)
最後に、到来方位角DoAの推定値θkは次式で表される。
[数17]
θk=±|sin―1((c/(w0‖Δ‖))angle(φk))+θref|
(38)
θk=±|sin―1((c/(w0‖Δ‖))angle(φk))+θref|
(38)
ここで、angle(・)はΨの固有値の要素φkの引数を規定し、ω0は受信信号の周波数であり、定数cは伝搬速度であり、‖Δ‖は移動ベクトルΔのノルムであり、電子制御導波器アレーアンテナ装置であるアレーアンテナ装置100において次式で表される。
[数18]
‖Δ‖=R=λ/4 (39)
‖Δ‖=R=λ/4 (39)
さらに、図1のコントローラ20により実行される、本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知方法の処理ステップの詳細について以下に説明する。ここで、電波到来方向探知処理は、次の前置処理と到来方位角計算処理からなる。
<前置処理>
(ステップST1)互いに主ビーム方向が異なるM+1個のリアクタンス値セット{x(1),x(2),…,x(M+1)}を選択してコントローラ20内の一部メモリに格納する。本実施形態においては、自由度は素子数Mであり、M+1個のリアクタンス値セットを用いることにより、到来方位角DoAを計算できる。
(ステップST2)公知の較正方法(例えば、非特許文献4参照。)を用いて次式の電流行列を計算してコントローラ20内の一部メモリに格納する。ここで、電流ベクトルimは、M+1個のリアクタンス値セット{x(1),x(2),…,x(M+1)}毎の給電素子A0上の電流値である。
(ステップST1)互いに主ビーム方向が異なるM+1個のリアクタンス値セット{x(1),x(2),…,x(M+1)}を選択してコントローラ20内の一部メモリに格納する。本実施形態においては、自由度は素子数Mであり、M+1個のリアクタンス値セットを用いることにより、到来方位角DoAを計算できる。
(ステップST2)公知の較正方法(例えば、非特許文献4参照。)を用いて次式の電流行列を計算してコントローラ20内の一部メモリに格納する。ここで、電流ベクトルimは、M+1個のリアクタンス値セット{x(1),x(2),…,x(M+1)}毎の給電素子A0上の電流値である。
[数19]
IT current=[i1 T,i2 T,…,iM+1 T]T (40)
IT current=[i1 T,i2 T,…,iM+1 T]T (40)
<到来方位角計算処理>
(ステップST11)M+1個のリアクタンス値セットのそれぞれに対して、アンテナ装置100からの受信信号yi(m=1,2,…,M+1)を受信して次式の受信信号ベクトルzを構成して測定し、コントローラ20内の一部メモリに格納する。
(ステップST11)M+1個のリアクタンス値セットのそれぞれに対して、アンテナ装置100からの受信信号yi(m=1,2,…,M+1)を受信して次式の受信信号ベクトルzを構成して測定し、コントローラ20内の一部メモリに格納する。
[数20]
z=[y1,y2,…,yM+1]T (41)
z=[y1,y2,…,yM+1]T (41)
(ステップST12)次いで、測定された受信信号ベクトルzに基づいて相関行列Rhzzを次式を用いて計算する。
[数21]
Rhzz=zzH (42)
Rhzz=zzH (42)
(ステップST13)さらに、次式で表される相関行列Rhzzの固有値分解を実行して固有値α1乃至αD(ここで、Dはアレーアンテナ装置100に入射する受信信号の数であり、D<M+1であり、所望波の信号数Ddは固有ベクトルの数(電子制御導波器アレーアンテナ装置では、素子数に対応する。)から1を減算した値である。)を計算する。
ここで、固有値α1乃至αDは次式のようにとる。また、vkは固有ベクトルである。
[数22]
α1≧α2≧…≧αD≧…≧αM+1 (44)
α1≧α2≧…≧αD≧…≧αM+1 (44)
(ステップST14)次いで、雑音の相関行列Rhnnを次式を用いて計算する。
[数23]
Rhnn=σh2IM+1 (45)
Rhnn=σh2IM+1 (45)
ここで、IM+1は(M+1)×(M+1)の単位行列である。また、雑音電力σh2は次式で表される。
(ステップST15)次いで、次式を用いて、電流ベクトルを考慮した相関行列Ryyを計算する。
[数24]
Ryy=(IT current)−1(Rhzz−Rhnn)IT current (47)
Ryy=(IT current)−1(Rhzz−Rhnn)IT current (47)
(ステップST16)次いで、次式で表される相関行列Ryyの固有値分解を実行して固有値β1乃至βM+1及び固有ベクトルwkを計算する。
ここで、固有値β1乃至βM+1は次式で表される。また、wkは固有ベクトルである。
[数25]
β1≧β2≧…≧βD≧…≧βM+1 (49)
β1≧β2≧…≧βD≧…≧βM+1 (49)
(ステップST17)次いで、次式を用いてサブアレーに対応する行列Ex,Eyを計算する。
ここで、
[数26]
Es=[w1,w2,…,wD] (51)
[数26]
Es=[w1,w2,…,wD] (51)
(ステップST18)次いで、次式の行列Exyの固有値分解を行って固有値行列Eを計算する。
ここで、
[数27]
E=[e1,e2,…,e2D] (55)
[数28]
Λ=diag([λ1,λ2,…,λ2D]),(λ1≧λ2≧…≧λ2D) (56)
[数27]
E=[e1,e2,…,e2D] (55)
[数28]
Λ=diag([λ1,λ2,…,λ2D]),(λ1≧λ2≧…≧λ2D) (56)
ここで、固有値行列Eを次式のように4つのサブ行列に分割して、各サブ行列E12及びE22を計算する。なお、EijはD×Dのサブ行列である。
(ステップST19)次いで、次式の行列Ψを計算する。
[数29]
Ψ=−E12E22 (58)
Ψ=−E12E22 (58)
(ステップST20)次いで、次式の行列Ψについて固有値分解を行って固有値φk(k=1,2,…,D)を計算する。なお、ukは固有ベクトルである。
(ステップST21)次いで、計算された固有値φk(k=1,2,…,D)に基づいて、次式を用いて到来方位角θkを計算する。
[数30]
θhk=±|sin−1(c/(w0‖Δ‖)angle(φk))+θref|(60)
θhk=±|sin−1(c/(w0‖Δ‖)angle(φk))+θref|(60)
ここで、c=3×108[m×s−1]であり、‖Δ‖=λ/4(7素子の電子制御導波器アレーアンテナ装置の場合であり、λ=c/fである。)であり、w0=2πf(シミュレーションにおいて、f=2.4GHz)、angle(φk)は固有値φkに対応する角度であり、θref=π/2(例えば、セットS1のとき)である。
以上説明したように、本実施形態においては、コントローラ20は、電波到来方向探知処理において、互いに異なる各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときにアレーアンテナ装置100に従って受信される各受信信号y(t)を検出した後、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzを固有値分解して上記相関行列Rhzzの固有値αmを計算し、上記計算された固有値αmに基づいて雑音に基づく相関行列Rhnnを計算し、上記計算された2つの相関行列Rhzz及びRhnnに基づいて、送信された無線信号に基づく相関行列Rhyyを計算し、上記計算された相関行列Rhyyを固有値分解することにより固有ベクトルwkを計算し、上記計算された固有ベクトルwkと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算する。
本発明者らは、図1の電波到来方向探知装置を用いてシミュレーションを実行し、その結果について以下に説明する。
当該シミュレーションでは、例えばSNRレート=10dBに設定し、5000スナップショットを使用した。推定可能な信号数の範囲については、非特許文献11で論じられている。サブアレーの数が2のときは、その信号数の上限値dmaxはサブアレー当たりの素子数(すなわち、実施形態ではm=4)である。シミュレーションは、アンテナに同時に入射する最大3つの信号を識別できることを示している。このアルゴリズムには4つまでの信号を検出する能力があるが、電子制御導波器アレーアンテナ装置の場合は、分割されたサブアレーの重複により、サブアレー当たり3素子のみが考慮される。表1は、3つの信号を識別可能であること、及びそれらの到来方位角DoAを推定可能であることを示している。
まず、角度基準値θrefのチェックを行った。角度基準値θrefは、選定されたサブアレーのセットに関連づけられている。従って、最初のシミュレーションセットは、この事実を検証するために実行した。シミュレーションに従って求めた値は、図13の期待値と一致した。
次いで、シミュレーションにおけるカバーセクタについて以下に説明する。この第2のシミュレーションは、電子制御導波器アレーアンテナ装置のカバーゾーン、すなわち、到来方位角DoAの推定が利用可能でありかつ信頼できるものである角度範囲(以下、カバーセクタという。)を決定するために行うものである。予想される通り、カバーセクタは、このアルゴリズムが採用するサブアレー分割に依存する。表2は、サブアレー分割による到来方位角DoAの有効範囲セクタをまとめたものである。
図14は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、セットS1aにおける到来方位角DoAに対する方位角誤差を示すグラフである。また、図15は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、セットS1bにおける到来方位角DoAに対する方位角誤差を示すグラフである。
図14及び図15が示すグラフは、それぞれサブアレー分割セットS1a及びセットS1bを使用して、ESPRIT法のアルゴリズムが最も効率的となる範囲を規定している。両グラフから観察される第1の点は、到来方位角DoAの推定の品質が角度値に左右されることである。図14では、ブロードサイド角度(ほぼ0゜から30゜までと140゜から180゜までの角度)を有する受信信号に関しては、エラーの規模がほぼ10倍に高まることが分かる。さらに、アンテナは360゜の到来方位角DoAの有効範囲を保有しないことも分かる。これは、電子制御導波器アレーアンテナ装置を0゜乃至180゜の範囲内の信号しか検出できないリニアアレーアンテナに似たものにするESPRIT法のアルゴリズムを実装しているためである。要するに、電子制御導波器アレーアンテナ装置に適用された場合にESPRIT法のアルゴリズムがもたらす到来方位角DoAの推定精度は、入射する信号の角度に依存するということがいえる。従って、次のシミュレーションでは、セクタゾーンを下記の表3が示すように縮小する。表3は、サブアレー分割による電子制御導波器アレーアンテナ装置の効率的な作用ゾーンをまとめたものである。
次いで、本実施形態に係る電波到来方向探知装置の性能のシミュレーション結果について説明する。第3のシミュレーションでは、ESPRIT法のアルゴリズムの性能を調べる。ここでは、アレー上に20゜から160゜までの範囲の到来方位角DoAで入射する単一の受信信号について考察する。このシミュレーションに使用するサブアレー分割は、セットS1aである。10000回の反復後、受信信号の到来方位角θは20゜から160゜まで5゜刻みで変化することと、信号及び付加雑音はランダムに生成されることを仮定して出力信号の誤差の統計量を調べる。今回の統計分析は、入力信号の変動による次式で表されるエラーの大きさの3次元累積分布関数(CDF)を採用している。
[数31]
誤差Error=|θ―θh| (61)
誤差Error=|θ―θh| (61)
図16は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、SNR=−5dBのときの到来方位角DoAに対する方位角誤差のCDF(3次元の累積分布関数)曲線を示すグラフである。また、図17は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、SNR=0dBのときの到来方位角DoAに対する方位角誤差のCDF(3次元の累積分布関数)曲線を示すグラフである。さらに、図18は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、SNR=10dBのときの到来方位角DoAに対する方位角誤差のCDF(3次元の累積分布関数)曲線を示すグラフである。
すなわち、図16乃至図18はCDF曲線の等値線、すなわち、予め与えられた到来方位角θに対する次式の値を描いたグラフであり、パーセントで表示されている。
[数32]
p[error=|θ―θh|≦valueError (62)
p[error=|θ―θh|≦valueError (62)
図16乃至図18から明らかなように、シミュレーション結果は、例えば、50゜乃至130゜の角度範囲でアレー上に入射する信号の場合、このグラフは±2゜の推定精度を得る確率が80%あることを示している。さらに、先に言及したエッジ効果も観察することができる。実際、エッジ上の角度(40゜より小さく、140゜より大きい)の場合、2゜の誤差以内の推定精度を得る確率は40%まで下がる。
次いで、SNRの影響について以下に考察する。第4のシミュレーションでは、ESPRIT法のアルゴリズムが雑音にどの程度敏感であるかを評価した。
図16は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、SNR=−5dBのときの到来方位角DoAに対する方位角誤差のCDF(3次元の累積分布関数)曲線を示すグラフである。また、図17は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、SNR=0dBのときの到来方位角DoAに対する方位角誤差のCDF(3次元の累積分布関数)曲線を示すグラフである。さらに、図18は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、SNR=10dBのときの到来方位角DoAに対する方位角誤差のCDF(3次元の累積分布関数)曲線を示すグラフである。
すなわち、図16及び図17はそれぞれ、−5dB及び0dBのSNRにおける誤差の再分割を示している。また、図18についても考慮しなければならない。受信信号はアンテナに60゜で入射し、想定精度は2゜の誤差以内であることを留意されたい。これから、シミュレーション結果は、表4のようにまとめることができる。
この例を引用するだけでも、推定は雑音に極めて敏感であるということができる。また、雑音が少ないほど、推定精度は上がることがわかる。
さらに、サンプル数の影響について以下に説明する。第5のシミュレーションにおける目的は、到来方位角DoAの推定精度が信号のサンプル数に従ってどの程度変わるかを決定することである。図19は本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーション結果であって、到来方位角θ=65゜のときのサンプル数に対する方位角誤差を示すグラフである。
すなわち、図19では、65゜の到来方位角DoAでアレーアンテナ装置100に入射する1つの信号について考察する。使用する信号サンプルの最低数は、必ず要求される推定精度に依存し、例えば、所望する精度が±0.5゜であれば、少なくとも2000サンプルは必要であることがわかる。図20乃至図26において、本実施形態に係るESPRIT法を用いた電波到来方向探知装置のシミュレーションで用いた、次の表に示す各アクタンス値セットに対応する電流imに対応する放射パターンP(im T)を示す指向特性図を示す。
表5に記載の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値xmk(m=0,1,2,…,6;k=1,2,…,6)の7組のセットは、1つのオムニパターンを発生するためのセットと、それぞれ給電素子A0から各非給電素子A1乃至A6に向かう方向の6個のセクタパターンとを発生するためのセットとを含む。なお、本実施形態においては、上記の7つのパターンを用いているが、本発明はこれに限らず、複数の所定のパターンを用いてもよい。表1において、最大値及び最小値はそれぞれ、装荷された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の各リアクタンス値の可動範囲の最大値及び最小値を意味する。また、本実施形態においては、送信側の無線送信機のシーケンス信号発生器(図示せず。)は、表5に示す各パターンで、互いに所定のガードタイムを挟み、それぞれPシンボル(例えば、2msec)のシーケンス信号を順次発生し、シーケンス信号発生器で発生されるシーケンス信号を含む受信信号の相関行列を計算する。
以上説明したように、本実施形態においては、ESPRIT法のアルゴリズムの電子制御導波器アレーアンテナ装置への適用を提案した。電子制御導波器アレーアンテナ装置はESPRIT法のアルゴリズム用に設計されたものではないにも関わらず、この適用は可能であった。ESPRIT法のアルゴリズムは、アンテナの幾何学的配置に対する強力な制約であるアレー構成内部における移動不変性を必要とする。到来方位角DoAの推定は、7素子正六角形の電子制御導波器アレーアンテナ装置故に達成することができる。事実、DoA推定は、アレーへと設計された根本的な並進的不変性を利用し、かつESPRIT法のアルゴリズムとリアクタンスドメイン手法とを組み合わせることに従って求めることができる。電子制御導波器アレーアンテナ装置は360゜のカバーエリア内のどんな信号も検出することができるが、本実施形態に係る修正されたESPRIT法のアルゴリズムを適用すれば、カバーエリアを方位面セクタ全体の2分の1のセクタに縮小することができる。さらに、シミュレーション結果は、このアルゴリズムの性能が、カバーセクタの限界値周辺の角度に関して幾分かのエッジ効果が観察されるように、アレーに入射する角度値に関連していることを示している。このシミュレーション結果は、リニアアレーアンテナ用に以前に設計された技術を電子制御導波器アレーアンテナ装置に適応させているために予測可能である。また、本実施形態によれば、電子制御導波器アレーアンテナ装置に入射する1つの信号に関して、50゜乃至130゜の角度範囲で±2゜の精度の到来方位角DoAの推定を達成する確率が80%あるという優れた結果を示している(ここで、サブアレー分割セットS1aを使用しかつSNR=10dBである場合)。
以上説明したように、本発明に係る電波到来方向探知装置又は方法によれば、互いに異なる各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときにアレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算する。それ故、従来例に比較して高い検出精度で、複数の電波到来方向を同時に検出できる。
A0…給電素子、
A1乃至A6…非給電素子、
1…低雑音増幅器(LNA)、
2…ダウンコンバータ、
3…A/D変換器、
5…給電用同軸ケーブル、
10…無線受信機、
11…接地導体、
12−1乃至12−6…可変リアクタンス素子、
20…コントローラ、
21…CRTディスプレイ、
100…アレーアンテナ装置。
A1乃至A6…非給電素子、
1…低雑音増幅器(LNA)、
2…ダウンコンバータ、
3…A/D変換器、
5…給電用同軸ケーブル、
10…無線受信機、
11…接地導体、
12−1乃至12−6…可変リアクタンス素子、
20…コントローラ、
21…CRTディスプレイ、
100…アレーアンテナ装置。
Claims (4)
- 無線信号を受信するための給電素子と、上記給電素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非給電素子と、上記各非給電素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非給電素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いてアレーアンテナに到来する無線信号の到来方位角を測定する電波到来方向探知装置において、
上記アレーアンテナは、上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーと、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーとを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有し、
上記電波到来方向探知装置は、
互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算する制御手段とを備えたことを特徴とする電波到来方向探知装置。 - 上記制御手段は、上記計算された相関行列Rhzzを固有値分解して上記相関行列Rhzzの固有値αmを計算し、上記計算された固有値αmに基づいて雑音に基づく相関行列Rhnnを計算し、上記計算された2つの相関行列Rhzz及びRhnnに基づいて、送信された無線信号に基づく相関行列Rhyyを計算し、上記計算された相関行列Rhyyを固有値分解することにより固有ベクトルwkを計算し、上記計算された固有ベクトルwkと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算することを特徴とする請求項1記載の電波到来方向探知装置。
- 無線信号を受信するための給電素子と、上記給電素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非給電素子と、上記各非給電素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非給電素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いてアレーアンテナに到来する無線信号の到来方位角を測定する電波到来方向探知方法において、
上記アレーアンテナは、上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第1のサブアレーと、上記第1のサブアレーを平行に移動させたときにそれぞれ位置する上記給電素子と少なくとも1つの非給電素子を含む複数のアンテナ素子からなる第2のサブアレーとを選択し、かつ上記第1と第2のサブアレーの当該選択によりすべてのアンテナ素子を含むように選択することが可能な構成を有し、
上記電波到来方向探知方法は、
互いに異なる上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットをそれぞれ設定したときに上記アレーアンテナに従って受信される各受信信号y(t)を検出し、上記各受信信号に基づく相関行列Rhzzを計算し、上記計算された相関行列Rhzzと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算するステップを含むことを特徴とする電波到来方向探知方法。 - 上記受信信号の到来方位角を計算するステップは、上記計算された相関行列Rhzzを固有値分解して上記相関行列Rhzzの固有値αmを計算し、上記計算された固有値αmに基づいて雑音に基づく相関行列Rhnnを計算し、上記計算された2つの相関行列Rhzz及びRhnnに基づいて、送信された無線信号に基づく相関行列Rhyyを計算し、上記計算された相関行列Rhyyを固有値分解することにより固有ベクトルwkを計算し、上記計算された固有ベクトルwkと、上記第1と第2のサブアレーに対応するESPRIT法の選択行列J1,J2とに基づいて、ESPRIT法を用いて上記アレーアンテナにより受信された受信信号の到来方位角を計算することを特徴とする請求項3記載の電波到来方向探知方法。
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