JP3819384B2 - アレーアンテナの制御方法及び制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、複数のアンテナ素子を備えて指向特性を変化させることができるアレーアンテナを所望波信号の方向に向けるためのアレーアンテナの制御方法及び制御装置に関し、特に、指向特性を適応的に変化させることができる電子制御導波器アレーアンテナ装置(Electronically Steerable Passive Array Radiator Antenna)を用いたアレーアンテナの制御方法及び制御装置に関する。
アレーアンテナに入射する信号の到来角(Direction-of-Arrival:DOA)の推定は、ディジタルアレー処理における興味ある、かつ重要な問題である。この問題を解決するために、いくつかの方法が提案されている。特に、非特許文献1に記載のMUSIC(MUltiple SIgnal Classification)アルゴリズムは、漸近的に不偏推定量に近づく結果を提供するものとして広く知られている。
特許文献1及び非特許文献2及び3などにおいて提案されている電子制御導波器アレーアンテナ装置は、無線信号が給電される励振素子と、この励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられ、無線信号が給電されない少なくとも1個の非励振素子と、この非励振素子に接続された可変リアクタンス素子とから成るアレーアンテナを備え、上記可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記アレーアンテナの指向特性を変化させることができる。この電子制御導波器アレーアンテナ装置は、従来型のアレーアンテナに比べて低コスト、低電力消費でありかつ構成が簡単である。従って、この電子制御導波器アレーアンテナ装置は、移動体ユーザ端末へのアプリケーションとして非常に有望な候補である。しかしながら、この電子制御導波器アレーアンテナ装置は単一ポートの出力構成であるので、従来型のアレーアンテナのためのアルゴリズムはそのままでは使用できない。
最近、特許文献1のアレーアンテナを用いて電波到来角を推定するために、改良されたMUSICアルゴリズムに基づく「リアクタンス領域MUSICアルゴリズム」が提案されている(非特許文献4を参照。)。このアルゴリズムは、上記アレーアンテナの相関行列を取得し、また複数の入射信号の到来角を推定している。この従来技術のアレーアンテナの制御方法では、これに用いる電子制御導波器アレーアンテナ装置に固有の等価ウエイトベクトルの校正が十分でなかったために、MUSICスペクトラムのピークが鈍く分解能が低かった。そのため、複数の近接した到来波に対してポテンシャルを十分に発揮できず、これら複数の到来波を分解して探知することができないという問題点があった。
この問題点を解決するために、本発明者らは、素子数と同数の指向性パターンを回転させることによって相関行列を生成し,その信号部分空間から素子間結合を含んだ等価ウエイト行列を求めるキャリブレーション方法が有効であることを非特許文献9において示している。
特開2001−24431号公報。 特開2003−188630号公報。 R. O. Schmidt, "Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation", IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. AP-34, No. 3, pp. 276-280, March, 1986。 T. Ohira et al., "Electronically steerable passive array radiator antennas for low-cost analog adaptive beamforming", 2000 IEEE International Conference on Phased Array System & Technology pp. 101-104, Dana point, California, May 21-25, 2000。 T. Ohira, et al., "Equivalent weight vector and array factor formulation for Espar antennas," IEICE Technical Report, AP2000-44, SAT2000-41, NW2000-41, July, 2000。 プラプース・シリルほか,「エスパアンテナによるリアクタンスドメインMUSIC法」,電子情報通信学会技術研究報告,RCS2002−147,電子通信情報学会発行,2002年8月。 大平孝,"エスパアンテナの等価ウエイトベクトルとその勾配に関する基本的定式化",電子情報通信学会研究技術報告,AP2001−16,SAT2001−3,電子情報通信学会発行,pp.15−20,2001年5月。 C. M. S. See, "Sensor array calibration in the presence of mutual coupling and unknown sensor gains and phases", Electronics Letters, Vol.30, No.3, pp.373-375, March 1994。 大鐘武雄ほか,"アダプティブアレーと移動通信(I)−移動通信伝搬路への適用−",電子情報通信学会誌,電子情報通信学会発行,Vol.81,No.12,pp.1254−1260,1998年12月。 平田明史ほか,"屋内におけるエスパアンテナの空間相関に関する一考察",電子情報通信学会研究技術報告,AP2002−43,pp.19−23,電子情報通信学会発行,2002年7月。 平田明史ほか,"等価ウエイト行列をキャリブレートしたエスパアンテナの高分解能到来方向推定",電子情報通信学会研究技術報告,SST2002−127,AP2002−226,RCS2002−343,MoMuC2002−152,MW2002−234,電子情報通信学会発行,pp.1−8,2003年3月。
近年、リアクタンスドメイン信号処理によりアレー応答ベクトル(非特許文献7参照。)が電子制御導波器アレーアンテナ装置において利用できることが報告されている(非特許文献8参照。)が、アレーアンテナの適応制御方法については提案されていない。また、より高速でかつ高精度で所望波信号に対して主ビームを向けることができる適応制御方法が求められている。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較してより高速でかつ高精度で所望波信号に対して主ビームを向けることができるアレーアンテナの制御方法及び制御装置を提供することにある。
第1の発明に係るアレーアンテナの制御方法は、無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いたアレーアンテナの制御方法において、
上記アレーアンテナの各可変リアクタンス素子による放射パターンの各方向ベクトルに対する重み付けを表す等価的なベクトルのみからなる等価ウエイト行列Wを校正するステップと、
上記アレーアンテナの互いに異なる複数の放射パターンの各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の複数のセットよりそれぞれ設定された互いに異なる複数の放射パターンの状態において、送信側からの所定の参照信号を含む無線信号を上記アレーアンテナで受信し、上記受信された各無線信号をそれぞれ各受信信号として検出し、上記検出された各受信信号及び上記参照信号のみに基づいて準最適解であるウエイトベクトルwを計算するステップと、
上記校正された等価ウエイト行列Wを用いて、上記計算された準最適解であるウエイトベクトルwに対応する指向性パターンD(φ)を計算し、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の組み合わせである複数のセットについて予め計算された複数の指向性パターンDr(φ)と、上記計算された指向性パターンD(φ)との間の相関係数ρpatを計算することにより、最大の相関係数ρmaxに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを検索し、計算した可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを上記各可変リアクタンス素子に設定することにより所望波信号に主ビームを向けるように適応制御するステップとを含むことを特徴とする。
上記アレーアンテナの制御方法において、上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算するステップは、ゼロ−フォーシング法を用いてゼロ−フォーシング解を準最適解として求めることを特徴とする。とって代わって、上記アレーアンテナの制御方法において、上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算するステップは、SMI(Sample Matrix Inversion)法を用いてSMI解を準最適解として求めることを特徴とする。
第2の発明に係るアレーアンテナの制御装置は、無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いたアレーアンテナの制御装置において、
上記アレーアンテナの各可変リアクタンス素子による放射パターンの各方向ベクトルに対する重み付けを表す等価的なベクトルのみからなる等価ウエイト行列Wを校正する手段と、
上記アレーアンテナの互いに異なる複数の放射パターンの各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の複数のセットよりそれぞれ設定された互いに異なる複数の放射パターンの状態において、送信側からの所定の参照信号を含む無線信号を上記アレーアンテナで受信し、上記受信された各無線信号をそれぞれ各受信信号として検出し、上記検出された各受信信号及び上記参照信号のみに基づいて準最適解であるウエイトベクトルwを計算する手段と、
上記校正された等価ウエイト行列Wを用いて、上記計算された準最適解であるウエイトベクトルwに対応する指向性パターンD(φ)を計算し、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の組み合わせである複数のセットについて予め計算された複数の指向性パターンDr(φ)と、上記計算された指向性パターンD(φ)との間の相関係数ρpatを計算することにより、最大の相関係数ρmaxに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを検索し、計算した可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを上記各可変リアクタンス素子に設定することにより所望波信号に主ビームを向けるように適応制御する手段とを含むことを特徴とする。
上記アレーアンテナの制御装置において、上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算する手段は、ゼロ−フォーシング法を用いてゼロ−フォーシング解を準最適解として求めることを特徴とする。とって代わって、上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算する手段は、SMI(Sample Matrix Inversion)法を用いてSMI解を準最適解として求めることを特徴とする。
従って、本発明によれば、上記校正された等価ウエイト行列Wを用いて、準最適解であるウエイトベクトルwに対応する指向性パターンD(φ)を計算し、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の組み合わせである複数のセットについて予め計算された複数の指向性パターンDr(φ)と、上記計算された指向性パターンD(φ)との間の相関係数ρpatを計算することにより、最大の相関係数ρmaxに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを検索し、計算した可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを上記各可変リアクタンス素子に設定することにより所望波信号に主ビームを向けるように適応制御したので、従来技術に比較して高速でかつ高精度で適応制御できる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、同様の構成要素については同一の符号を付している。
図1は本発明に係る実施形態であるアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。この実施形態のアレーアンテナの制御装置は、特許文献1において開示された、1つの励振素子A0と、6個の非励振素子A1乃至A6とを備えて構成されている電子制御導波器アレーアンテナ装置(以下、アレーアンテナ装置という。)100と、無線受信機4と、適応制御コントローラ20とを備えている。適応制御コントローラ20は、例えばディジタル計算機で構成され、本実施形態では、図6及び図7に示すように、等価ウエイト行列を校正して計算する処理(図8のステップS5)を実行した後、リアクタンスドメインの信号処理による準最適解をゼロ−フォーシング(Zero-forcing)法を用いて計算するZf解計算処理(図9のステップS2)を実行することによりZf解であるウエイトベクトルwを計算し、計算したウエイトベクトルwに実質的に対応する振幅指向性パターンを、図4の基本リアクタンスセットと図5の詳細リアクタンスセットから検索する指向性パターンマッチング処理(図10のステップS3)を実行することにより適応制御するためのリアクタンスセットの最終解を求めて設定することを特徴としている。すなわち、本実施形態では、アレー応答ベクトルから適応制御の準最適解を求め、その指向性と最も相関が高いパターンを形成するリアクタンスセットを電子制御導波器アレーアンテナ装置の最終解とすることを提案し、短時間の参照信号にて最終解を得ることができることを以下に示す。
図1において、アレーアンテナ装置100は、接地導体11上に設けられた励振素子A0及び非励振素子A1乃至A6から構成され、励振素子A0は、半径rの円周上に設けられた6本の非励振素子A1乃至A6によって囲まれるように配置されている。好ましくは、各非励振素子A1乃至A6は上記半径rの円周上に互いに等間隔を保って設けられる。励振素子A0及び各非励振素子A1乃至A6の長さは、例えば約λ/4(但し、λは所望波の波長である。)になるように構成され、本実施形態では0.23λである。また、上記半径rはλ/4になるように構成される。接地導体11は、図2に示すように、半径λ/2の円板形状の上面部と、上面部の外周縁端部から下に延在する長さλ/4の円筒形状のスカート部とから構成され、このスカート部を備えた構成により、主ビームの仰角を減少させることができる。励振素子A0の給電点は同軸ケーブル9を介して無線受信機4の低雑音増幅器(LNA)1に接続され、また、非励振素子A1乃至A6はそれぞれ可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に接続され、これら可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値は適応制御コントローラ20からのリアクタンス値信号によって設定される。
図2のアレーアンテナ装置100の縦断面図において、励振素子A0は接地導体11と電気的に絶縁され、各非励振素子A1乃至A6は、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6を介して、接地導体11に対して高周波的に接地される。可変リアクタンス素子12−1乃至12−6は、例えば、制御電圧(又はバイアス電圧)が印加されることによってそのリアクタンス値が変化する可変容量ダイオードであって、制御電圧は適応制御コントローラ20からのリアクタンス値信号を介して印加される。適応制御コントローラ20は、リアクタンス値テーブルメモリ13内に予め設定されたディジタル電圧値を参照し、内蔵した6個のD/A変換器(図示せず。)を使って上記ディジタル電圧値をアナログの制御電圧値に変換し、この制御電圧値をリアクタンス値信号としてアレーアンテナ装置100の各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に印加することにより、アレーアンテナ装置100上で、対応する各指向性ビームパターンが形成される。
可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の動作を説明すると、例えば励振素子A0と非励振素子A1乃至A6の長手方向の長さが実質的に同一であるとき、例えば、可変リアクタンス素子12−1がインダクタンス性(L性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は延長コイルとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して長くなり、反射器として働く。一方、例えば、可変リアクタンス素子12−1がキャパシタンス性(C性)を有するときは、可変リアクタンス素子12−1は短縮コンデンサとなり、非励振素子A1の電気長が励振素子A0に比較して短くなり、導波器として働く。また、他の可変リアクタンス素子12−2乃至12−6に接続された非励振素子A2乃至A6についても同様に動作する。従って、図1のアレーアンテナ装置100において、各非励振素子A1乃至A6に接続された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を変化させることにより、アレーアンテナ装置100の平面指向性特性を変化させることができる。
図1のアレーアンテナの制御装置において、アレーアンテナ装置100は無線信号を受信し、上記受信された無線信号である受信信号は、励振素子A0に接続された同軸ケーブル9から出力される。出力された受信信号は、無線受信機4の低雑音増幅器1を介してダウンコンバータ2に入力され、ダウンコンバータ2は入力される受信信号を所定の中間周波数の中間周波信号に周波数変換した後、A/D変換器3に出力する。A/D変換器3は、入力されるアナログの中間周波信号をディジタルの中間周波信号に変換した後、適応制御コントローラ20に出力する。さらに、適応制御コントローラ20は、入力される中間周波信号に基づいて、図6及び図7に示すように、等価ウエイト行列を校正して計算する処理(図8のステップS5)を実行した後、リアクタンスドメインの信号処理による準最適解をゼロ−フォーシング(Zero-forcing)法を用いて計算するZf解計算処理(図9のステップS2)を実行することによりZf解であるウエイトベクトルwを計算し、計算したウエイトベクトルwに実質的に対応する振幅指向性パターンを、図4の基本リアクタンスセットと図5の詳細リアクタンスセットから検索する指向性パターンマッチング処理(図10のステップS3)を実行することにより適応制御するためのリアクタンスセットの最終解を求めて設定する。
なお、ここで、上記ステップS1の処理を実行するときに、適応制御コントローラ20からの制御信号に基づいて、アレーアンテナ装置100を励振素子A0を中心軸として回転させる回転機構30が設けられている。
次いで、まず、非特許文献4において開示されている「リアクタンスドメインMUSIC法」について以下に説明する。
「リアクタンスドメインMUSIC法」はアレーアンテナ装置100のリアクタンスドメイン信号処理によって生成される相関行列を利用した高分解能到来方向推定法である。非励振素子A1乃至A6に装荷された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を表1のように設定し、それぞれの指向性パターンによって受信された、同一のシーケンス信号系列を含む受信信号y(t)に基づいて相関行列Ryy(式(8))を生成する(図3参照。)。そして、この相関行列にMUSIC法を適用して到来方向推定を行うことができる。
Figure 0003819384
表1に記載の可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値xmk(m=0,1,2,…,6;k=1,2,…,6)の7組のセットは、1つのオムニパターンを発生するためのセットと、表1に示すように、それぞれ励振素子A0から各非励振素子A1乃至A6に向かう方向の6個のセクタパターンとを発生するためのセットとを含む。なお、本実施形態においては、上記の7つのパターンを用いているが、本発明はこれに限らず、複数の所定のパターンを用いてもよい。表1において、最大値及び最小値はそれぞれ、装荷された可変リアクタンス素子12−1乃至12−6の各リアクタンス値の可動範囲の最大値及び最小値を意味する。また、本実施形態においては、送信側の無線送信機のシーケンス信号発生器(図示せず。)は、図3に示すように、表1に示す各パターンで、互いに所定のガードタイムを挟み、それぞれPシンボル(例えば、2msec)×7パターンに所定の演算時間(マージン時間)を加えたシーケンス信号を順次発生し、シーケンス信号発生器で発生されるシーケンス信号を含む受信信号y(t)の相関行列Ryy(式(8))を計算してMUSIC法を適用する。
L個の波の平面波がアレーアンテナ装置100に到来するとき、表1のm番目の指向性パターン(m=0,1,…,6)で受信される受信信号は次式で表される。なお、当該明細書において、数式がイメージ入力された墨付き括弧の数番号と、数式が文字入力された大括弧の数式番号とを混在して用いており、また、当該明細書での一連の数式番号として「式(1)」の形式を用いて数式番号を式の最後部に付与して用いることとする。
[数式1]
(t)=w Au(t)+n(t) (1)
ここで、行列Aは次式で表される。
[数式2]
A=[a(φ), …, a(φ)] (2)
また、a(φ)は到来角φ(l=1,2,…,L)における方向ベクトルであり、u(t)は次式で表される到来する無線信号である。
[数式3]
u(t)=[u(t), …, u(t)] (3)
さらに、n(t)は熱雑音であり、上付き添字は行列の転置を表す。wは等価ウエイトベクトルであり、素子間結合を含めたインピーダンス行列Zを用いて、次式で表される(例えば、非特許文献5参照。)。
[数式4]
=2z(Z+diag[z jxm1 … jxm6])−1 (4)
ここで、等価ウエイトベクトルとは、アレーアンテナ装置100において可変リアクタンス素子による放射パターンの各方向ベクトルに対する重み付けを表す等価的なベクトルである。zは受信機の内部インピーダンスであり、uは次式で表される単位ベクトルである。
[数式5]
=[1,0,0,0,0,0,0] (5)
上記等価ウエイトベクトルからなる次式の行列Wを
[数式6]
W=[w … w (6)
「等価ウエイト行列」と定義し(なお、等価ウエイト行列Wとは、アレーアンテナ装置100において可変リアクタンス素子による放射パターンの各方向ベクトルに対する重み付けを表す等価的な行列である。)、ベクトル表記の受信信号系列を次式で表されるとすると、
[数式7]
y(t)
=[y(t) y(t) … y(t)]
=WAu(t)+n(t) (7)
相関行列と固有ベクトルの関係から、複数の受信信号から検出した複数のシーケンス信号間の相関行列Ryyは次式で表される。
Figure 0003819384
ここで、E[・]はエルゴード性を仮定した所定の時間期間における時間平均値(又はアンサンブル平均値)であり、上付き添字は行列のエルミート転置を表す。λは固有値であり、eは信号部分空間を張る第lの固有ベクトル(l=1,2,…,L)である。すなわち、相関行列Ryyを固有値分解することにより7個の固有値と7個の固有ベクトルを得ることができる。
アレーアンテナ装置100のMUSICスペクトラムは等価ウエイト行列を用いて、次式で表される。
Figure 0003819384
ここで、
[数式8]
≡[eL+1 … e] (10)
である。
すなわち、MUSIC法では、雑音の固有ベクトルからなる行列EによりMUSICスペクトルを計算でき、これに基づいて到来角を計算できる。
次いで、オムニパターンを含めた7つの指向性パターンを用いて、信号部分空間からアレーアンテナ装置100の「等価ウエイト行列」の校正処理(図7のステップS5)について以下に説明する。
上記式(4)においてインピーダンス行列Zの各要素は未知である。鋭いMUSICスペクトラムを求め角度分解能を向上させるためには、このインピーダンス行列Zを含んだ等価ウエイト行列Wを校正する必要がある。本実施形態では、校正方法として7つの指向性パターンで受信した受信信号系列を用いて、信号の固有値に対応する信号固有ベクトルによって等価ウエイト行列を推定する方法を提案する。校正では到来波は1波のみ(L=1)とし、平面波を12方位から順次に到来させる。
校正の手順の具体的な詳細は後述するが、その概略を説明すると、図8に示すように、まず、受信アンテナであるアレーアンテナ装置100から見た電波到来方向の方位角φを0°に固定する(ステップS12)。次に、可変リアクタンス素子12−1乃至12−6のリアクタンス値を表1のように7通り(m=0,1,…,6)に設定し、指向性パターンを回転させて受信信号系列y(t)を取得する(ステップS13−S16)。tはサンプリング時刻を表し、1シンボルにつき1回サンプリングを行う。指向性パターン毎にPサンプル(=Pシンボル)の信号を受信する。受信信号系列を上記式(7)のようにベクトル表記し(ステップS18)、上記式(8)の相関行列Ryyを固有値分解した後(ステップS19)、信号の固有値(最大値の固有値)に対応する信号固有ベクトルe (1)を取得する(ステップS20)。
次いで、電波到来方向の方位角φを30°に固定し(ステップS12)、同様の手順によって信号固有ベクトルe (2)を取得する(ステップS13−S20)。以降、電波到来方向の方位角φを0°から30°間隔で12方位に順に設定し、同様の手順を繰り返すと12個の信号固有ベクトルが得られる(S12−S22の繰り返しフロー)。電波到来方向は既知であり、その方向の方向ベクトルも既知であるため、次式が成立する。
[数式9]
[e (1) (2) … e (12)
=W[a(φ) a(φ) … a(φ12)] (11)
ここで、上述の校正手順で計算された各方位角での最大値の固有値からなる固有ベクトル[e (1) (2) … e (12)]を行列Eと置き換え、各方位角毎のステアリングベクトルからなるステアリング行列[a(φ) a(φ) … a(φ12)]を行列Aと置き換えると、等価ウエイト行列Wは次式で表される(例えば、非特許文献6参照。)。
[数式10]
W=E(AA−1 (12)
上記式(12)から明らかなように、等価ウエイト行列Wを、上述の校正手順で計算された各方位角での最大値の固有値からなる固有ベクトルの行列と、各方位角毎のステアリングベクトルからなるステアリング行列とを用いて校正している。
なお、アレーアンテナ装置100の方向ベクトルa(φ)は次式で表される。
[数式11]
a(φ)
=[1 exp(j(π/2)cos(φ−φ) …
exp(j(π/2)cos(φ−φ)]
(13)
ここで、
[数式12]
φm=(π/3)(m−1),m=1,2,…,6 (14)
である。
次いで、リアクタンスドメインの信号処理による準最適解を求める解法について詳細説明する。リアクタンスドメインの信号処理とは、指向性パターンを回転し受信した複数の信号系列に演算を施すことを指す。本実施形態では、この受信信号系列にゼロ−フォーシング(Zero-forcing)法(非特許文献7参照。)を用いて準最適解(準ウィーナー解ともいう。)である(Zero-forcing解(以下、Zf解という。)を導く。ゼロ−フォーシング法は、干渉波到来方向に強制的にヌル(NULL)を向けるため短い信号系列長においても比較的安定したパターンが形成されやすい。
アレーアンテナ装置100の素子数7と同数の指向性パターンでの受信信号ベクトルを上述と同様に次式で表す。
[数式13]
y(t)=[y(t)y(t)…y(t)] (15)
このとき、図3に示すように、参照信号パターンAを含む所望波信号と、参照信号パターンBを含む干渉波信号とがアレーアンテナ装置100に到来しているとき、独立な2波到来時の所望波信号及び干渉波信号の各参照信号u0(t),u1(t)をまとめて次式の参照信号ベクトルで表す。
[数式14]
u(t)=[u(t)u(t)] (16)
このとき、アレーアンテナ装置100との相関行列Pyuは次式で表される。
[数式15]
yu=E[y(t)u(t)] (17)
ここで、相関行列Pyuは、参照信号u(t),u(t)を含む受信信号を受信しているときの受信信号y(t)と、当該制御装置内の適応制御コントローラ20で有する(予め格納する)参照信号u(t)との間の相関を表すものである。また、参照信号ベクトル同士の相関行列Ruuは次式で表される。
[数式16]
uu=E[u(t)u(t)] (18)
これらの相関行列Pyu及びRuuを用いてアレー応答ベクトルの推定値Heは次式で表される。
[数式17]
He=Pyuuu −1 (19)
このとき、Zf解は次式で表される。
[数式18]
w=(Heg (20)
ここで、(・)は一般逆行列であり、gは所望波信号のみの受信を拘束するベクトルであり、u(t)を所望波信号の参照信号とすると次式で表される。
[数式19]
g=[1 0] (21)
以上の行列演算において、E[・]はエルゴード性を仮定した時間平均、及びは転置及び複素共役転置を表す。なお、He及びwの導出については、当該明細書の最後部に添付した付録において、ゼロ−フォーシング法に関する数式の導出を詳細説明した。
また、以上の実施形態においては、ゼロ−フォーシング法を用いて準最適解を求めているが、本発明はこれに限らず、例えば、SMI(Sample Matrix Inversion)法を用いて準最適解(SMI解)を求めてもよい。このとき、受信信号ベクトルy(t)の相関行列Ryyは次式で表される。
[数式20]
yy=E[y(t)y(t)] (22)
また、所望波信号の参照信号u(t)との相関行列Pysは次式で表される。
[数式21]
ys=E[y(t)u (t)] (23)
これらの相関行列Ryy及びPysを用いて、SMI解は次式により求めることができる。
[数式22]
smi=Ryy −1ys (24)
以上の行列演算において、は複素共役を表す。SMI解は所望波の参照信号のみが受信側で既知であればよく、干渉波を抑圧するために干渉波の参照信号を必要としないという利点がある。
次いで、リアクタンス空間へのマッチング処理について以下に説明する。Zf解からエスパアンテナのリアクタンスセットを導出する必要があるが、Zf解は複素数でありリアクタンスは虚部のみであるため、Zf解からリアクタンス空間への展開は容易ではない。そこで、リアクタンス空間を部分的に最尤推定し、リアクタンスセットが形成する指向性パターンD(φ)とZf解によるパターンD(φ)との相関係数が最大となるものを最終解として選択する。Zf解であるウエイトベクトルwによる振幅指向性パターン(対数表示)は次式で表される。
[数式23]
D(φ)=20・log|wWa(φ)| (25)
なお、SMI解wsmiによる振幅指向性パターン(対数表示)D(φ)は次式で表される。
[数式24]
D(φ)=20・log|wsmi Wa(φ)| (26)
ここで、Wは上述の校正後の等価ウエイト行列(非特許文献9参照。)であり、a(φ)は方位角φの方向ベクトルである。D(φ)は予め測定して適応制御コントローラ20の一時記憶メモリに保持しておく。上記相関係数ρpatは次式で表される。なお、〈・〉はφ=[0,2π]の区間における積分を表す。
Figure 0003819384
図4は図6の適応制御処理において用いる基本リアクタンスセットを示す表である。図4の基本リアクタンスセットでは、各リアクタンス値x1乃至x6において−90Ωと0Ωの2値の組み合わせたセット(2−2通り)となっている。なお、図4のpzは基本リアクタンスセットにおけるリアクタンスセットパラメータである。
また、図5は図6の適応制御処理において用いる詳細リアクタンスセットの一部を示す表である。図5の例では、基本リアクタンスセット[−90,0,0,0,0,0]において、−90Ωを−80、−70、−60、−50Ωに変化するとともに、0Ωを−10,−20,−30,−40Ωに変化した場合を示している。すなわち、図5では、基本リアクタンスセット[−90,0,0,0,0,0]を代表セットとして選択した後に、上述のごとく詳細変化したときの5−1通りのセットを含んでいる。以上の例では、基本リアクタンスセット[−90,0,0,0,0,0]を代表セットとして選択した例について説明しているが、他の基本リアクタンスセットが選択されたときは、そのセットにおいて、−90Ωを−80、−70、−60、−50Ωに変化するとともに、0Ωを−10,−20,−30,−40Ωに変化した詳細リアクタンスセットを用いることになる。なお、図4及び図5において、ρpatは相関係数の計算例を示している。また、図5のpzは詳細リアクタンスセットにおけるリアクタンスセットパラメータである。
図6は本実施形態に係る適応制御コントローラ20によって実行される、実施形態に係る適応制御処理を示すフローチャートである。図6のステップS1において事前処理を実行し、ステップS2においてZf解計算処理を実行した後、ステップS3において指向性パターンマッチング処理を実行して当該適応制御処理を終了する。
図7は図6のサブルーチンである事前処理(ステップS1)を示すフローチャートである。図7のステップS4においては指向性パターン取得処理を実行する。ここでは、公知の方法により、電波暗室内のアレーアンテナ装置100から所定の送信信号を送信したときに、各リアクタンスセットを設定したときにそれぞれ、アレーアンテナ装置100の近傍や遠界で電界強度を測定することにより、アレーアンテナ装置100の指向性パターンDr(φ)を測定して、適応制御コントローラ20の一時記憶メモリに格納しておく。次いで、ステップS5において等価ウエイト行列を校正して計算する処理(図8)を実行して、元のメインルーチンに戻る。
なお、図7において、指向性パターン取得処理を事前処理に含んでいるが、本発明はこれに限らず、図6の適応制御処理を実行する前の前置処理としてもよい。すなわち、アレーアンテナ装置100の製造後の固有値を測定処理として実行することが好ましい。
図8は図7のサブルーチンである等価ウエイト行列を校正して計算する処理(ステップS5)を示すフローチャートである。なお、リアクタンス値テーブルメモリ13には所定の放射パターンを順次設定するために、例えば、表1に示した7組のリアクタンス値セット(m=0,1,2,…,6)が格納されている。ただし、これは一例であって、少なくとも1組のオムニパターンと複数組のセクタパターンのリアクタンス値セットを含む、互いに異なる複数のリアクタンス値セットであってもよい。もしくは、オムニパターンを含まない、複数組のセクタパターンのリアクタンス値セットを含む、互いに異なる複数のリアクタンス値セットであってもよい。
図8のステップS11において、電波到来方向設定パラメータnを1に初期化し、ステップS12において、回転機構30を用いてアレーアンテナ装置100を、モータを用いて機械的に回転させて送信無線信号に対して到来方位角φ=30×(n−1)[度]となるように設定する。次いで、ステップS13において、放射パターンパラメータmを0に初期化し、ステップS14において、リアクタンス値テーブルメモリ13からm番目のリアクタンス値セットを読み出してアレーアンテナ装置100の各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に設定する。そして、ステップS15において、受信信号y(t)を受信して適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリに格納し、ステップS16において放射パターンパラメータm≧6であるか否かが判断され、NOであるときは、ステップS17で放射パターンパラメータmを1だけインクリメントした後、ステップS14に戻る。一方、ステップS16でYESであるときは、ステップS18に進む。
次いで、ステップS18で適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリに格納された7個の受信信号y(t)を上記式(7)のように受信信号ベクトルとして適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリに格納し、ステップS19で、受信信号ベクトルに基づいて上記式(8)を用いて相関行列Ryyを計算し、固有値分解法を用いて受信信号に対する複数の固有値及び複数の固有ベクトルを計算する。さらに、ステップS20において、計算された複数の固有ベクトルのうち信号の固有値(最大の固有値)に対応する固有ベクトルをe (n)とし、ステップS21において電波到来方向設定パラメータn≧12であるか否かが判断され、NOのときはステップS22に進み、電波到来方向設定パラメータnを1だけインクリメントした後、ステップS12に戻る。一方、ステップS21でYESであるときは、ステップS23に進み、得られた信号固有ベクトルからなる行列Eと、各放射パターンのステアリングベクトルからなるステアリング行列Aとに基づいて、上記式(11)に基づく上記式(12)を用いて校正された等価ウエイト行列Wを推定して計算して、元のメインルーチンに戻る。
図9は図6のサブルーチンであるZf解演算処理(ステップS2)を示すフローチャートである。
図9のステップS31において、まず、放射パターンパラメータmを0にリセットした後、ステップS32においてリアクタンス値テーブルメモリからm番目のリアクタンス値セットを読み出してアレーアンテナ装置の各可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に設定し、ステップS33において受信信号y(t)を受信して適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリに格納する。次いで、ステップS34においてm≧6であるか否かが判断され、NOのときはステップS35に進み、放射パターンパラメータmを1だけインクリメントした後、ステップS32に戻る。一方、ステップS34でYESのときはステップS36に進む。
ステップS36において適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリに格納された7個の受信信号y(t)を数7のように受信信号ベクトルとして適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリに格納する。次いで、ステップS37において受信信号ベクトルy(t)及び参照信号ベクトルu(t)に基づいて式(14)を用いて、相関行列Pyuを計算する式(14)を計算する。さらに、ステップS38において式(15)、式(16)及び式(19)を用いてアレー応答ベクトルの推定値Hhを計算し、ステップS39において式(18)を用いてZf解であるウエイトベクトルwを計算して、元のメインルーチンに戻る。
図10は図6のサブルーチンである指向性パターンマッチング処理(ステップS3)を示すフローチャートである。
図10においてまず、ステップS31においてZf解による振幅指向性パターン(対数表示)D(φ)を式(25)を用いて計算し、ステップS32において適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリから、オムニパターンのD(φ)を読み出し、式(27)を用いて相関係数ρpatを計算する。そして、ステップS33で、上記計算した相関係数ρpatを最大相関係数ρmaxとして設定する。また、ステップS34において、基本リアクタンスセット数PZとして、(2−2)をセットし、ステップS35においてD(φ)、ρmax及びPZを引数とする図11の指向性パターン相関係数演算処理を実行する。この処理を実行することにより、相関係数ρpatの最大値ρmaxと、それに対応するリアクタンスセットパラメータpzmaxの値が演算結果値として返される。ここで、ステップS36においてpzmaxをpz1maxとおき、ρmaxをρ1maxとおく。
次いで、ステップS37において、詳細リアクタンスセット数PZとして、(5−1)をセットし、ステップS38においてD(φ)、ρmax及びPZを引数とする図11の指向性パターン相関係数演算処理を実行する。この処理を実行することにより、相関係数ρpatの最大値ρmaxと、それに対応するリアクタンスセットパラメータpzmaxの値が演算結果値として返される。ここで、ステップS39においてpzmaxをpz2maxとおき、ρmaxをρ2maxとおく。そして、ステップS40においてρ1max≧ρ2maxであるか否かが判断され、YESのときはステップS41に進む一方、NOのときはステップS42に進む。ステップS41において、基本リアクタンスセットでの最大相関係数ρ1maxの指向性パターンを形成するリアクタンスセットを最終解として可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に設定して元のメインルーチンに戻る。一方、ステップS42においてρ2maxの指向性パターンを形成するリアクタンスセットを最終解として可変リアクタンス素子12−1乃至12−6に設定して元のメインルーチンに戻る。
図11は図10のサブルーチンである指向性パターン相関係数演算処理(ステップS35,S38)を示すフローチャートである。この処理は、D(φ)、ρmax及びPZを引数として指向性パターン相関係数演算処理を実行することにより、相関係数ρpatの最大値ρmaxと、それに対応するリアクタンスセットパラメータpzmaxの値が演算結果値として返す処理である。
まず、ステップS51において、リアクタンスセットパラメータpzを1にリセットし、ステップS52において適応制御コントローラ20内の一時記憶メモリから対応する振幅指向性パターンDr(φ)を読み出し、式(27)を用いて相関係数ρpatを計算する。そして、ステップS53においてρpat>ρmaxであるか否かが判断され、YESのときはステップS54に進む一方、NOのときはステップS55に進む。ステップS54において直前に計算した相関係数ρpatをその最大値ρmaxとして設定し、それに対応するリアクタンスセットパラメータpzをpzmaxとして設定する。さらに、ステップS55において、pz≧リアクタンスセット数PZであるか否かが判断され、NOのときはステップS56に進み、リアクタンスセットパラメータpzを1だけインクリメントした後、ステップS52に戻る。一方、ステップS55でYESであるときは、元のメインルーチンに戻る。
以上の実施形態においては、1本の励振素子A0と6本の非励振素子A1乃至A6を用いて電子制御導波器アレーアンテナ装置を構成しているが、本発明はこれに限らず、非励振素子は複数本であればよい。
図3に示す本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置を用いて、電波暗室内にて360°方向から所望波信号、225°方向から干渉波信号が到来する環境における適応制御実験を行った。参照信号はP=16シンボルとした。入力SNRは20dBである。本実施形態に係る適応制御方法のシステム条件として、所望波及び干渉波のトレーニング区間が同時に到来するような時分割のシステムであることが挙げられる。また、Zf解を用いる場合には、所望波信号の参照信号パターンA及び干渉波信号の参照信号パターンBが既知であること、一方、変形例に係るSMI解を用いる場合には、所望波信号の参照信号パターンが既知である必要がある。但し、時分割の無線通信システムでなくとも干渉波信号が所望波の反射波として到来する場合(符号間干渉)には、所望波及び干渉波は同期しているため本適応制御方法を利用することができる。
図12は本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の実験に用いたリアクタンスセットにおけるリアクタンス値、相関係数及びSINRを示す表である。また、図13は本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の実験結果であって、振幅指向性パターンを示す図である。図12から明らかなように、相関係数ρpatが高いほど高い出力SINRが得られる傾向があり、評価関数として利用できることが分かる。また、図13から明らかなように、本発明に係る準最適解であっても、干渉波信号に対してヌルを向けることができることがわかる。
以上説明したように、本実施形態によれば、リアクタンスドメイン信号処理によってエスパアンテナ適応制御の最終解を導出する方法を提案し、112シンボル+α(演算時間)の短い参照信号により解を得ることを示した。従来技術である特許文献2に係るアレーアンテナの制御方法では、適応制御のトレーニング区間に少なくとも1000シンボルを要していたが、本実施形態に係る適応制御方法では、リアクタンスセットの準最適解へのマッチングをとることによって112シンボル+α(演算時間)に短縮することが可能となる。従って、大幅に高速化することができる。また、適応制御の方位角についても、予め記憶する振幅指向性パターンD(φ)をより細かい方位角φで記憶することにより高精度で適応制御可能である。
<付録>
ゼロ−フォーシング法に関する数式の導出方法について以下に説明する。ここで、所望波信号の参照信号u(t)、干渉波信号の参照信号u(t)が同時に到来し、アレーアンテナ装置100によってウエイトベクトルwで受信するとき、そのアレー出力信号x(t)は次式で表される。
[数式25]
x(t)=w(t)+w(t) (28)
ここで、h及びhはそれぞれ所望波信号u(t)及び干渉波信号u(t)に対するアレー応答ベクトルである。所望波信号のみを受信し、干渉波信号を抑圧するためには、次式が成り立つウエイトベクトルwを求めればよい。
[数式26]
=h w=1 (29)
[数式27]
=h w=0 (30)
ここで、所望波信号及び干渉波信号に対するアレー応答ベクトルをHとし、所望波信号のみの受信を拘束するベクトルをgとすると、H及びgは次式で表される。
[数式28]
=[h (31)
[数式29]
g=[1 0] (32)
従って、ウエイトベクトルwは次式を用いて求められる。
[数式30]
w=(Hg (33)
ここで、(Hはムーア・ペンローズ(Moore-Penrose)の一般逆行列であり、次式で表される。
[数式31]
(H=H(H−1 (34)
ここで、は複素共役を表す。
ところで、アレー応答ベクトルは一般に未知であるためHは計算により推定される必要がある。いま、各アレー素子で受信される受信信号ベクトルy(t)は、次式で表される。
Figure 0003819384
ここで、n(t)は雑音ベクトルである。heをアレー応答ベクトルの推定値とすると、真の受信信号と推定した受信信号の誤差信号ベクトルe(t)は次式で表される。
Figure 0003819384
ここで、誤差信号ベクトルの二乗誤差平均を次式のように求めることができる。
Figure 0003819384
ここで、上記式(37)の両辺をheで偏微分して0とおくことによってheが満たすべき条件(次式)が導かれる。
Figure 0003819384
[数式32]
u(t)=[u(t)u(t)] (39)
[数式33]
uu=E[u(t)u(t)] (40)
[数式34]
yu=E[y(t)u(t)] (41)
[数式35]
He=[he he] (42)
ここで、上記式(39)乃至式(42)を用いると、アレー応答ベクトルの推定値Heは次式のように求めることができる。
[数式36]
HeRuu=Pyu (43)
[数式37]
He=Pyuuu ー1 (44)
従って、ゼローフォーシング法によるウエイトベクトルwは次式で表される。
[数式38]
w=(Heg (45)
本発明の実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の構成を示すブロック図である。 本実施形態に係るアレーアンテナ装置100の詳細な構成を示す断面図である。 本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置を用いた適応制御実験システムを示す平面図である。 図6の適応制御処理において用いる基本リアクタンスセットを示す表である。 図6の適応制御処理において用いる詳細リアクタンスセットの一部を示す表である。 本実施形態に係る適応制御コントローラ20によって実行される、実施形態に係る適応制御処理を示すフローチャートである。 図6のサブルーチンである事前処理(ステップS1)を示すフローチャートである。 図7のサブルーチンである等価ウエイト行列を校正して計算する処理(ステップS5)を示すフローチャートである。 図6のサブルーチンであるZf解演算処理(ステップS2)を示すフローチャートである。 図6のサブルーチンである指向性パターンマッチング処理(ステップS3)を示すフローチャートである。 図10のサブルーチンである指向性パターン相関係数演算処理(ステップS35,S38)を示すフローチャートである。 本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の実験に用いたリアクタンスセットにおけるリアクタンス値、相関係数及びSINRを示す表である。 本実施形態に係るアレーアンテナの制御装置の実験結果であって、振幅指向性パターンを示す図である。
符号の説明
A0…励振素子、
A1乃至A6…非励振素子、
1…低雑音増幅器(LNA)、
2…ダウンコンバータ、
3…A/D変換器、
4…無線受信機、
9…同軸ケーブル、
11…接地導体、
12−1乃至12−6…可変リアクタンス素子、
13…リアクタンス値テーブルメモリ、
20…適応制御コントローラ、
30…回転機構、
100…アレーアンテナ装置、
SG1,SG2…信号発生器。

Claims (6)

  1. 無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いたアレーアンテナの制御方法において、
    上記アレーアンテナの各可変リアクタンス素子による放射パターンの各方向ベクトルに対する重み付けを表す等価的なベクトルのみからなる等価ウエイト行列Wを校正するステップと、
    上記アレーアンテナの互いに異なる複数の放射パターンの各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の複数のセットよりそれぞれ設定された互いに異なる複数の放射パターンの状態において、送信側からの所定の参照信号を含む無線信号を上記アレーアンテナで受信し、上記受信された各無線信号をそれぞれ各受信信号として検出し、上記検出された各受信信号及び上記参照信号のみに基づいて準最適解であるウエイトベクトルwを計算するステップと、
    上記校正された等価ウエイト行列Wを用いて、上記計算された準最適解であるウエイトベクトルwに対応する指向性パターンD(φ)を計算し、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の組み合わせである複数のセットについて予め計算された複数の指向性パターンDr(φ)と、上記計算された指向性パターンD(φ)との間の相関係数ρpatを計算することにより、最大の相関係数ρmaxに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを検索し、計算した可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを上記各可変リアクタンス素子に設定することにより所望波信号に主ビームを向けるように適応制御するステップとを含むことを特徴とするアレーアンテナの制御方法。
  2. 上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算するステップは、ゼロ−フォーシング法を用いてゼロ−フォーシング解を準最適解として求めることを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。
  3. 上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算するステップは、SMI(Sample Matrix Inversion)法を用いてSMI解を準最適解として求めることを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナの制御方法。
  4. 無線信号を受信するための励振素子と、上記励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数本の非励振素子と、上記各非励振素子にそれぞれ接続された可変リアクタンス素子とを備え、上記各可変リアクタンス素子のリアクタンス値を変化させることにより、上記各非励振素子をそれぞれ導波器又は反射器として動作させ、アレーアンテナの指向特性を変化させるアレーアンテナを用いたアレーアンテナの制御装置において、
    上記アレーアンテナの各可変リアクタンス素子による放射パターンの各方向ベクトルに対する重み付けを表す等価的なベクトルのみからなる等価ウエイト行列Wを校正する手段と、
    上記アレーアンテナの互いに異なる複数の放射パターンの各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の複数のセットよりそれぞれ設定された互いに異なる複数の放射パターンの状態において、送信側からの所定の参照信号を含む無線信号を上記アレーアンテナで受信し、上記受信された各無線信号をそれぞれ各受信信号として検出し、上記検出された各受信信号及び上記参照信号のみに基づいて準最適解であるウエイトベクトルwを計算する手段と、
    上記校正された等価ウエイト行列Wを用いて、上記計算された準最適解であるウエイトベクトルwに対応する指向性パターンD(φ)を計算し、各可変リアクタンス素子のリアクタンス値の組み合わせである複数のセットについて予め計算された複数の指向性パターンDr(φ)と、上記計算された指向性パターンD(φ)との間の相関係数ρpatを計算することにより、最大の相関係数ρmaxに対応する各可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを検索し、計算した可変リアクタンス素子のリアクタンス値のセットを上記各可変リアクタンス素子に設定することにより所望波信号に主ビームを向けるように適応制御する手段とを含むことを特徴とするアレーアンテナの制御装置。
  5. 上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算する手段は、ゼロ−フォーシング法を用いてゼロ−フォーシング解を準最適解として求めることを特徴とする請求項4記載のアレーアンテナの制御装置。
  6. 上記準最適解であるウエイトベクトルwを計算する手段は、SMI(Sample Matrix Inversion)法を用いてSMI解を準最適解として求めることを特徴とする請求項4記載のアレーアンテナの制御装置。
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