JP3966009B2 - 植設材の製造方法及び時計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は植設材の製造方法及び時計に係り、特に、時計の文字板に植設される植え字を製造する場合に好適な製造技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、時計の文字板には、時刻を示す文字、数字、記号、その他の表示が印刷その他の各種の方法で表されている。特に、高級時計の文字板には、植え字と称される植設材を取付固定することによって上記表示が構成される。植え字には、文字や数字などの字を表すものと、略字(目盛)などのように字そのものではないが、文字板上の表示の一部として構成されるものとがある。また、植え字の形状としては、表面形状がほぼ平面のみで構成されるものと、文字自体の曲折を反映して表面形状の少なくとも一部に曲面を含むものとがある。植え字を全て平面のみの表面形状で形成することも可能ではあるが、高級感を出すことはできない。また、植え字の表面形状には通常斜面部が設けられ、この斜面部の光反射により高級感をさらに高めるようにしている。
【0003】
従来、上記植え字を製造する場合には、最初に、植え字を文字板に取り付ける際に用いる取付足部をプレス打ち出しなどの塑性加工によって成形し、次に、表面形状をダイヤモンドカッタ等でカットして成形した後に、表面にメッキを施して仕上げるといった方法が採用されていた。しかし、この方法では上述のように平面のみで構成される表面形状を有する植え字の場合には比較的容易に製造できるが、曲面を含む表面形状を有する植え字では、手作業に頼らざるを得ないため、製造コストが高くなり、比較的安価なモデルには採用できないという欠点がある。また、製造コストを低減するために、外観デザインを犠牲にして、上記のような曲面を含む表面形状には斜面部を設けない場合もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の時計の植え字においては、上述のように、高級感を出すためには手間がかかり、製造コストを低減するためには高級感を犠牲にせざるを得ないといった問題点、すなわち、製造コストの低減と外観の向上とを両立できないという基本的な問題点があった。
【0005】
例えば、表面形状に曲面を含む植設材を製造する場合には、プレス加工などの金型構造が複雑になって製造コストが増大するため斜面部の形成を省略し、或いは、製造コストの増大を承知の上で手作業で加工を行うなどの方法をとっていた。
【0006】
また、植え字の表面形状にカットのばらつき等による外観不良が多く、歩留まりが低下し、納期の短縮が困難であるという問題点がある。
【0007】
そこで本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、植え字などの植設材の製造工程を大幅に変更することによって、製造コストの上昇を抑制しつつ、曲面を含む表面形状を成形可能にするとともに、表面形状の精度とばらつきを低減し、より高級感のある外観を表出可能な植設材の製造方法及びこれを用いて製造した植設材を備えた時計を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明の植設材の製造方法は、少なくともその第1表面部が植設材の表面形状に対応するブランク形状部が基部上に突出成形されてなるブランク基材が成形されるブランク成形工程と、前記ブランク基材から前記基部が切削加工により除去されると同時に、前記基部の一部が残されて取付足部とされる取付足部成形工程と、少なくとも前記第1表面部上に下地メッキ層が形成される下地メッキ工程と、前記第1表面部が部分的に除去されるように前記ブランク形状部が加工されて第2表面部が成形される第2表面部成形工程と、前記第1表面部及び前記第2表面部上に仕上げメッキを施す仕上げメッキ工程とを有することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ブランク形状部の第1表面部上に下地メッキ層を形成することによって第1表面部の平滑性が向上するとともに、その後の第2表面部成形工程で第2表面部が形成されてから、第1表面部と第2表面部とに一括して仕上げメッキを施すようにしたことにより、第2表面部成形工程による第2表面部が高精度に加工されてさえいれば、高精度でばらつきの少ない表面形状を得ることができる。ブランク成形工程において、植設材の表面形状に対応するブランク形状部が基部上に突出成形されてなるブランク基材が成形されてから、このブランク基材の基部を除去する段階で取付足部を設けることにより、ブランク成形工程を細部の加工が始まる前に済ませることが可能になり、例えば、帯状材の形で複数のブランク基材に対応するブランク形状部を一括して成形することが可能になるなど、ブランク形状部を従来方法よりも容易に成形することが可能になり、その結果、例えば、曲面を含む表面形状も容易に形成できるようになるとともに、植設材の表面に斜面部を設ける場合には、当該斜面部の面精度(歪みの少なさ)を高めることができるなど、植設材の表面形状の精度を高めることも可能になる。特に、ブランク形状部をブランク基材の基部から突出するように設けることによって、個々のブランク基材に分離する前にブランク形状部を成形することが可能になるので、例えば帯状材のままでブランク形状部を成形できるなど、生産性を向上させることができる。ちなみに従来方法では、先に取付足部を成形してから表面形状を成形するようにしていたので、本発明のブランク基材に相当するものを個々に分離した状態で表面形状の加工をせざるを得ず、表面形状の加工そのものが困難であり、しかも、曲面状の斜面部などを機械的に加工することが実質的に不可能であった。
さらに発明によれば、取付足部成形工程において、切削加工によりブランク基材の基部が除去されるとともに取付足部が成形されることにより、植設材の取付足部及びその周辺の形状精度を高めることができるので、植設材の取付精度が向上する。例えば、従来方法では塑性加工(プレス加工)によって取付足部を打ち出し成形していたが、この方法では、打ち出される取付足部及びその周辺の背面の形状精度を充分に高めることが難しいとともに、複数回の塑性加工を行わなければならない。これに対して、本発明の場合には、切削加工によって取付足部及びその周囲の背面を成形するので、取付足部のアスペクト比(縦横比)が高くても容易に加工できるとともに背面の平坦性を充分に確保することができる。また、取付足部を切削加工により成形することによって、ブランク成形工程にて成形されたブランク形状部に影響を与え難いという利点もある。
【0010】
ここで、「少なくとも一部表面が植設材の表面形状に対応するブランク形状部」とは、整形仕上工程により植設材の表面形状を構成するようになる部分であって、ブランク形状部の少なくとも一部表面が実質的にそのままの形状で植設材の表面形状となるものである。実質的にそのままの形状とは、例えば、研磨やメッキ被覆などが施されるだけで、基本的な形状自体はほぼ変わらないで植設材の表面形状の一部となる部分が存在することを意味する。したがって、ブランク形状部の上記一部以外の他の部分においては、整形仕上工程において適宜の加工が施されることにより形状が変わって植設材の表面形状となっても構わない。
【0011】
本発明において、前記ブランク成形工程が塑性加工により行われることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、ブランク成形工程が塑性加工により行われることにより、曲面を含む表面形状がさらに容易に成形できるようになるとともに、植設材の表面形状の元となるブランク形状部を高精度且つ容易に成形できる。この場合、取付足部を成形する前に塑性加工が行われるので、成形精度を向上させることができ、金型費用等の成形コストも低減できる。例えば、従来方法では、先に取付足部を成形してから部品を個々に分離し、その後、表面形状を加工していたので、表面形状の塑性加工を行うことが実質的にきわめて困難であり、表面形状が複雑な場合(例えば曲面を含む場合)にはきわめて手間のかかる切削加工を用いざるを得なかった。また、この方法では表面形状の精度を高めることも難しかった。
【0015】
本発明において、前記取付足部成形工程では、前記ブランク形状部が直接接触しない状態で前記ブランク基材が冶具上に固着されることにより前記ブランク基材が固定された状態で加工されることが好ましい。
【0016】
この発明によれば、ブランク形状部と冶具とが直接接触しない態様で前記ブランク基材が冶具上に固着され、この状態で加工が行われるので、ブランク形状部に損傷を与えることがなくなり、製品の歩留まりを高めることができる。この場合、冶具にブランク形状部との接触を回避する収容凹部が設けられることが好ましい。また、ブランク基材は、冶具に対して嵌合などの方法(位置決め構造)で位置決めされることが好ましい。さらに、ブランク基材はニス、ニカワ、ワックス等の固着材によって固着されることが望ましい。
【0017】
本発明において、前記ブランク成形工程では、前記ブランク形状部の周囲表面が凹凸面若しくは粗面に成形されることが好ましい。
【0018】
この発明によれば、ブランク成形工程でブランク形状部の周囲表面が凹凸面若しくは粗面に成形されることにより、ブランク基材を固着材によって冶具に固定する場合、その固定力(特に冶具上の平面方向の位置ずれに対する固定力)を高めることができるため、取付足部の加工精度を高めることができるとともに、加工中におけるブランク基材の冶具からの剥離事故を防止できる。
【0019】
また、本発明の時計は、上記のいずれかに記載の方法で製造した植設材を備えたものである。この時計としては、植設材を外装ケース上に取り付けたもの、文字板上に取り付けたもの、時計バンド上に取り付けたものなどが挙げられる。また、この時計には、置時計、掛時計、柱時計、腕時計、懐中時計、時計機能を有するダイビングコンピュータや卓上カレンダーなどが含まれる。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照して本発明に係る植設材の製造方法の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する本実施形態は、腕時計の文字板に植設される植え字(植えマーク、植えネームなども含む。)を製造する方法に関するものについて説明するが、本発明の製造方法は、上記の植え字に限らず、種々の部材に植設されるべき取付足部を備えた各種の植設材に適用可能である。
【0021】
図1は、本実施形態により製造される植設材である植え字を備えた文字板の構造の一例を示す平面図である。文字板10には、いずれも植設材である植え字(植え数字)11、植え略字12、及び、植えリング13が取付固定されている。植え字11としては、時刻を表す数字「1」、「2」及び「6」があり、植え略字12としては、時刻を表す棒状の目盛となっている。これらの植え字11、植え略字12及び植えリング13はいずれも背面側に突出した図示しない取付足部を備えており、この取付足部が文字板10の穴部若しくは孔部に挿入された状態で固定されている。
【0022】
図2は、植え字11の構造を示す平面図及び側面図である。植え字11は、上記の文字板10に取り付けた場合に視認可能な表面11Aと、取付足部11Bとを有している。表面11Aには、文字板10の板面に対してほぼ平行平面で構成される上面部11A−1と、文字板10の板面に対して傾斜した斜面部11A−2とが形成されている。また、取付足部11Bは、植え字11の背面から突出した軸状に構成されている。なお、植え略字12においても、図1に示すように、その表面にはほぼ平坦な上面部12A−1と、斜面部12A−2が設けられている。
【0023】
次に、本実施形態の植設材の製造方法の工程について詳細に説明する。図3乃至図11は、本実施形態の製造工程を順次説明するための工程説明図であり、図12は、本製造方法の工程手順を示す概略フローチャートである。
【0024】
最初に、黄銅等の金属材料で構成された帯状材(フープ材)20にプレス加工を施し、図3に示すように、帯状材20の表面20aから突出するようにブランク形状部20bを成形する(図12に示すブランク成形工程)。このブランク形状部20bは、図1及び図2に示した植設材の表面形状の原形となる形状を備えている。このように、帯状材20の表面20aからブランク形状部20bを突出させることにより、帯状材20のままで上記植え字11の表面11Aに対応するブランク形状部20bを形成することができる。したがって、個々に分離した状態でブランク形状部20bの成形を行わなくてもよいので、製造効率を上げることが可能になる。
【0025】
また、帯状材20の表面20aには、加工時位置決め部20cと、プレス時位置決め部20dとが突起として設けられる。なお、これらの加工時位置決め部20c、プレス位置決め部20dは、いずれも凹部或いは貫通孔で構成されていてもよい。
【0026】
さらに、この工程においては、帯状材20における表面20aのうち、上記ブランク形状部20bの周囲表面を凹凸面若しくは粗面20eに成形する。この凹凸面若しくは粗面20eは図示例のように部分的に形成されてもよく、或いは、ブランク形状部20bの周囲全てに形成されていてもよい。図3には、帯状材20の表面20aに格子状(クロス状)の筋目が形成されている例を示してある。なお、上記と同様の凹凸面若しくは粗面を、帯状材20の裏面(図示せず)に形成してもよい。
【0027】
次に、上記帯状材20からプレス打ち抜き加工により、上記ブランク形状部20b及び加工時位置決め部20cを含む部分(図示点線)を抜き落とすことにより、ブランク基材21を形成する(図12に示すブランク外形抜き)。このブランク基材21は、基部21aと、この基部21aの表面から突出した上記ブランク形状部21bと、ブランク基材21を後の工程で位置決めするために上記の加工時位置決め部20cが残されてなる加工時位置決め部21cとを備えている。そして、このブランク基材21の基部21aの表面には、上記の凹凸面若しくは粗面20eがそのまま残されてなる凹凸面若しくは粗面21eが形成されている。
【0028】
次に、図4に示すように、上記ブランク基材21を冶具30に取付固定する。冶具30には、ブランク基材21のブランク形状部21bを、余裕を持って収容可能な収容凹部31と、加工時位置決め部21cと嵌合し、位置決めすることができる位置決め部32(図示例では穴部若しくは凹部)とが形成されている。収容凹部31はブランク基材21が取り付けられたときにブランク形状部21bの損傷を防止するために、ブランク形状部21bと冶具30とが直接接触しないように構成されている。そして、ブランク基材21は、ブランク形状部21bが収容凹部31に収容され、加工時位置決め部21cが位置決め部32に位置決めされた状態で、ニス、ニカワ、ワックス等の固着材33によって冶具30に貼付固定される(図12に示す足切削用冶具貼付)。
【0029】
このとき、上記のようにブランク基材21の表面に(或いは裏面にも)形成された凹凸面若しくは粗面によって、ブランク基材21の固着強度を高めることができるので、より安定した状態で後述する加工を行うことができる。特に、固着材33が凹凸面若しくは粗面と強固に固着するので、冶具30の表面上の平面方向にブランク基材21が位置ずれを起こすことを防止できる。
【0030】
なお、図4には冶具30に一つのブランク基材21だけが取り付けられている状態を示すが、実際には、冶具30に複数の上記収容凹部31や位置決め部32が形成され、一つの冶具30に複数のブランク基材21が取り付けられるようにすることが好ましい。
【0031】
そして、図5に示すように、上記のように冶具30に固定されたブランク基材21に対して、切削加工によって基部21aを除去して、表面22Aと取付足部22Bを備えた植設原材22を形成する(図12に示す足切削)。このとき、基部21aの一部を残存させることにより、植設原材22の取付足部22Bを形成する。表面22Aは、上記ブランク形状部21bと同じ形状のままである。
【0032】
図6及び図7には、上記切削加工の方法を示す。図6は加工前のブランク基材21を基部21a側から見た背面図であり、図7は、切削方法を示す原理図である。この切削加工では、上記取付足部22Bを避けるように回転軸から切削刃35をシフトさせた状態で回転させ、基部21aを切削していくことにより、ブランク形状部の形成された範囲に相当する平面範囲を有する植設原材22が分離されると同時に取付足部22Bが形成される。切削刃35は、その回転範囲(図6に一点鎖線で示す)によって上記ブランク基材21の基部21aがブランク形状部21bから完全に除去され得る大きさに構成される。この切削加工によって植設原材22と加工時位置決め部21cとは相互に分離される。
【0033】
上記のようにして形成された植設原材22は有機溶剤等で冶具30から剥離され、その後、図12に示すように、植設原材22に乾式バレル研磨が施され、切削加工時にバリが生じた場合には、この研磨により除去される。その後、図8に示すように、植設原材22の表面22AにNi等の厚付けメッキ処理(光沢Niメッキ)が施されて、好ましくは厚さ2〜3μmの第1メッキ層22aが形成される。この第1メッキ層22aは、上面部22A−1と斜面部22A−2とを含む表面22Aのうち、特に斜面部22A−2上に形成される、最終的に得られる植設材の斜面部の歪みを低減し、その平滑性を向上させるためのものである。本実施形態においては、植設原材22の素材が黄銅であることによって、メッキの被着性が良好である。
【0034】
また、上記第1メッキ層22aの更にその上にはAu等の薄付けメッキ処理が施され、好ましくは0.2μm程度の第2メッキ層22bが形成される。この第2メッキ層は、後述する仕上げメッキの被着性を高める目的で形成される。これらの第1メッキ層22a及び第2メッキ層22bは下地メッキ層を構成する(図12に示す下地メッキ)。
【0035】
その後、図9に示すように、上記の植設原材22を冶具36に取付固定する(図12に示す上面カット用冶具貼付)。この冶具36には、植設原材22の取付足部22Bに嵌合し、位置決め可能な位置決め部36a(図示例では穴部若しくは凹部)が形成されており、この位置決め部36aによって位置決めされた植設原材22は、ニス、ニカワ、ワックス等の固着材37で固定される。そして、ダイヤモンド製の刃を有するダイヤモンドカッタ38によって図8に一点鎖線Cで示すように植設原材22の上部を薄く削り取る(図12に示す上面カット)。
【0036】
図10は、上記の上面カット工程によって加工された植設原材22’を示す。この植設原材22’においては、表面22’のうち上部の上面部22A−1’がダイヤモンドカッタ38によって高精度な平坦面(鏡面)に加工されており、斜面部22A−2’はカット部分だけ上部がなくなっている。なお、取付足部22Bに変わりはない。その後、植設原材22’は冶具36から有機溶剤等により剥離される。なお、必要に応じて、粗カットと仕上げカットなど、複数回カット加工を繰り返すことにより、仕上げ精度及び面精度を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施形態では、上面カットにより上面部が平坦になるように加工しているが、刃形状を変えたり、複数回のカット加工を行ったりすることにより、上面形状を凹凸形状にしたり、スジ目を入れたりといった適宜の面形状に加工することもできる。
【0038】
最後に、図11及び図12に示すように、上記の植設原材22’の表面22A’全体に仕上げメッキを施し、仕上げメッキ層11cを形成して、植設材11を完成させる。この仕上げメッキ層11cは、例えば、外観を銀色にしたい場合にはNi−Rr合金で構成し、外観を金色にしたい場合にはNi−Au合金で構成する。仕上げメッキ層11cの厚さは0.1〜0.2μm程度が平坦性を損なわずに充分に被覆できる点で好ましい。これにより、図1に示す植え字11が完成する。
【0039】
ここで、本実施形態では植設原材22’の素材として黄銅を用いることにより、この仕上げメッキ層11cのうち特に上面部22A−1’上に形成される部分のメッキ不良(霜降りと呼ばれ白濁して見える状態など)を防止することができた。
【0040】
なお、図11に示す植設材11においては、植設原材22の第1メッキ層22aを第1斜面メッキ層11aとして示し、植設原材22の第2メッキ層22bを第2斜面メッキ層11bとして示してある。
【0041】
本実施形態によれば、最初に基部上に突出するブランク形状部を成形してブランク基材を形成し、その後に、基部を除去することにより取付足部を形成するようにしているので、ブランク形状部を高精度かつ容易に成形することが可能になる。特に斜面部となる部分を予め成形することによって、斜面部を高精度に成形できるとともに、後の加工が容易になる。
【0042】
特に、ブランク成形工程において、基部上に突出するブランク形状部を有するブランク基部を形成することにより、基部形状の如何に拘わらずブランク形状部を最初に成形できるようになった。すなわち、帯状材などの素材から最初に取付足部を打ち出す代りに、素材からブランク形状部を突出成形させることによって、基部とは別にブランク形状部を設けることができる。したがって、素材を個々に分離しなくても加工が可能になり、高精度且つ容易にブランク形状部を成形することができるようになった。また、その後、基部を部分的に除去することによって取付足部を形成することも可能になった。
【0043】
また、ブランク形状部を塑性加工によって成形することにより、複雑なブランク形状部であっても容易且つ高精度に成形することができる。例えば、植え字11のように表面11Aに曲面が含まれた形状を有する植設材の場合には、曲面状の斜面部を容易に成形できる。
【0044】
さらに、取付足部を切削加工によって形成することにより、取付足部が突出する背面部を容易且つ高精度に平坦化できるので、植設材を文字板等に取り付けたときに取付姿勢の不良(取付姿勢の傾斜)が生ずることを防止でき、取付精度を高めることができた。
【0045】
本実施形態では、バレル研磨によって上記切削加工によって形成された取付足部及びその周辺のバリ等を除去しているが、このとき同時に斜面部分についても平滑化され、型肌が除去される。さらに、その上に厚付けメッキによって斜面部を覆うことにより、植設材の斜面部の歪みをさらに低減することが可能になった。
【0046】
本実施形態においては、植設原材には斜面部に相当する傾斜面が既に形成されているために、上記のように処理された植設原材の上部をカットするだけで、上面部と斜面部との境界を鋭利に形成することが可能になる。したがって、それ以前の研磨作業等によるダレが外観に影響することはない。また、上記のように斜面部を最初に成形した面で構成し、厚付けメッキ等で平滑化しているので、この時点において改めて斜面部の加工を行う必要がなくなるため、作業性が向上する。
【0047】
上記のようにして製造された植設材は図1に示すように文字板10に取り付けられ、この文字板10は、図13に示す時計(腕時計)100に組み込まれる。この時計100は、時計本体110と、時計バンド120とを有する。時計本体110には、時計ケース111、リュウズ112、表示窓113、指針114などが含まれる。また、必要に応じて図示しない裏蓋が時計ケース111の背面側に設けられる。
【0048】
この時計100においては、植え字11などの植設材の斜面部が通常の使用態様において目立つことから、外観上きわめて重要な要素になり、時計100の高級感の程度を決定する大きなポイントになる。したがって、本発明の植設材を用いることによって高品位の植設材を効率的に製造することが可能になるので、きわめて品位の高い時計を安定的に市場に供給していくことが可能になる。
【0049】
尚、本発明の植設材の製造方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、植え字11の加工について説明したが、同様の加工を植え字以外の植え略字や植えマークなどの種々の植設材に適用することができる。また、植設材の取付対象としては上記時計の文字板に限定されるものではなく、本発明は、他の種々の装飾品、携帯品、身飾品等に取り付けられるものに適用することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、製造コストの上昇を抑制しつつ、曲面を含む表面形状を形成することが可能になるとともに、植設材を高精度且つ容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る植設材の製造方法の実施形態によって製造された植設材を取り付けた時計用文字板を示す平面図である。
【図2】 図1に示す植設材の構造を示す平面図及び側面図である。
【図3】 製造プロセスのうちブランク基材の成形工程を示す工程説明図である。
【図4】 製造プロセスのうち取付足部の成形工程の状態を示す工程説明図である。
【図5】 図4の取付足部の成形工程によって加工された後の状態を示す工程説明図である。
【図6】 ブランク基材に対する取付足部の成形工程の内容を説明するための工程説明図である。
【図7】 ブランク基材に対する取付足部の成形工程の加工方法を説明するための工程説明図である。
【図8】 植設原材の構造を示す縦断面図である。
【図9】 植設原材に対する上面カット加工の状態を示す工程説明図である。
【図10】 上面カット加工の施された植設原材の構造を示す縦断面図である。
【図11】 最終的に形成された植設材の断面構造を示す縦断面図である。
【図12】 植設材の製造プロセスの手順を示す概略フローチャートである。
【図13】 上記植設材を取り付けた文字板を有する時計の正面図である。
【符号の説明】
10・・・文字板、11・・・植え字、11A・・・表面、11A−1・・・上面部、11A−2・・・斜面部、12・・・植え略字、13・・・植えリング、20・・・帯状材、20a・・・表面、20b・・・ブランク形状部、20c・・・加工時位置決め部、20d・・・プレス時位置決め部、21・・・ブランク基材、21a・・・基部、21b・・・ブランク形状部、21c・・・加工時位置決め部、22・・・植設原材、22A・・・表面、22A−1・・・上面部、22A−2・・・斜面部、22B・・・取付足部、30,36・・・冶具、35・・・切削刃、38・・・ダイヤモンドカッタ
Claims (2)
- 少なくともその第1表面部が植設材の表面形状に対応するブランク形状部が基部上に突出成形されてなるブランク基材が成形されるブランク成形工程と、
前記ブランク基材から前記基部が切削加工により除去されると同時に、前記基部の一部が残されて取付足部とされる取付足部成形工程と、
少なくとも前記第1表面部上に下地メッキ層が形成される下地メッキ工程と、
前記第1表面部が部分的に除去されるように前記ブランク形状部が加工されて第2表面部が成形される第2表面部成形工程と、
前記第1表面部及び前記第2表面部上に仕上げメッキを施す仕上げメッキ工程と
を有することを特徴とする植設材の製造方法。 - 請求項1に記載の方法で製造した植設材を備えた時計。
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