JP3965820B2 - 固体電解質型燃料電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コージェネレーション等に用いられる固体電解質型燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来周知の固体電解質型燃料電池(以下、燃料電池と称する)の動作原理を図4の概略構成図に基づいて説明する。図4において、酸素イオン導電性のある固体電解質41の両側に多孔質の酸素極(カソード)42と多孔質の水素極(アノード)43を装着する。酸素極42側において、酸素ガスO2もしくは空気を空間45に流し込むと、次式に示す反応が起こる。
【0003】
1/2O2 + 2e- → O2- …… (1)
還元された酸素イオンO2-は、酸素イオン導電性のある固体電解質41を通過して水素極43に達する。水素極43側においては、水素ガスH2もしくは天然ガス等の燃料ガスを空間46に流し込み、固体電解質41を通過してきた酸素イオンO2-と次式に示す反応が起こる。
【0004】
2 + O2- → H2O + 2e- …… (2)
図4に示すように、負荷44を酸素極42と水素極43に接続すると、酸素極42側が陽極、そして水素極43側が陰極となった電圧が(2)式の右辺の2e-によって負荷44の両端に発生する。
【0005】
以上示したように構成する燃料電池で使用される固体電解質41の電解質材料には、イットリウム等の酸化物をジルコニアに固溶させて生成された安定化ジルコニアを使用したものが多い。電解質材料に安定化ジルコニアを使用した燃料電池の動作温度は約1000℃の高温となるため、燃料電池の構成材料には、材料コストおよび加工費の高いセラミックスや耐熱合金等の特殊な材料を使用しなければならない不都合があった。また、スタック型の燃料電池の場合には、構成部材が多いため前記材料コストおよび加工費が極めて増加してしまう問題があった。そこで、燃料電池の動作温度を下げる試みがなされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、例えば(CeO20.8(SmO1.50.2(SDC)や(CeO20.8(GdO1.50.2(GDC)から成る電解質材料を用いて固体電解質(以下、セリア系の固体電解質と称する)を形成し、燃料電池の動作温度を700〜800℃にする手段が知られている。
【0007】
しかし、前記セリア系の固体電解質は、水素雰囲気等において還元されてしまう問題がある。また、セリア系の固体電解質を用いた燃料電池において、構成部材としてステンレスを用いることが可能な温度領域で動作させた場合、安定化ジルコニアから成る固体電解質(ジルコニア系の固体電解質)を用いた燃料電池を1000°Cの温度で動作させた場合に匹敵する電池特性は得られない。
【0008】
前記のように、セリア系の固体電解質を用いて燃料電池の動作温度を700〜800℃にする開発は行われているが、燃料電池の構成部材(インターコネクタ,押さえ板,バネ等)としてステンレスを確実に使用することができ、且つコージェネレーションにおいて最適な400〜600°C付近の温度で燃料電池を動作させることが可能な固体電解質の開発は行われていない。
【0009】
本発明は、前記課題に基づいて成されたものであり、固体電解質に用いられる電解質材料を改良して、燃料電池の動作温度を低減すると共に、前記電解質材料の加工性を良好にして製造コストを低減した固体電解質型燃料電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題の解決を図るためにイオン導電性を有する固体電解質に酸素極および水素極を設けて構成された固体電解質型燃料電池であって、前記固体電解質は、チタン族元素の金属酸化物ZrO2またはHfO2と、P25と、から成る電解質材料をガラス化し所望の形状に成形したものであり、前記金属酸化物ZrO 2 またはHfO 2 と、P 2 5 と、のモル比が64:36〜76:24であることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の第1,2形態を図面に基づいて説明する。まず、本実施の第1形態は、ガラス化が可能な電解質材料(第1〜4実施例)の成分を調整して固体電解質(ガラス)を形成し、燃料電池の動作温度を低減させると共に製造効率の向上を図ったものである。
【0017】
図1は、本実施の第1形態におけるガラスを用いた固体電解質の製造工程図を示すものである。図1において、ステップS11は混合・撹拌工程を示すものであり、この工程では複数個の金属酸化物にH3PO4(85%)を加え、混合および撹拌して電解質材料を得る。その電解質材料は、ステップS12に示す予備加熱工程にて、500°Cの温度で3時間予備加熱する。前記のように予備加熱された電解質材料は、ステップS13に示す溶融工程により1450°Cの温度で1時間かけて溶融した後、ステップS14に示す冷却工程で冷却しガラス化してガラスを得、そのガラスを所望の形状に成形して固体電解質を完成させる。
【0018】
ここで、ガラス化が可能な電解質材料について、第1〜4実施例により説明する。
【0019】
(第1実施例)
一般的に、Na2O・TiO2・30P25系のガラスは、Naイオン導電体であることが知られ、そのNa2O・TiO2・30P25系のガラス中にアルカリ成分(ここでは、Na2O)が含有していないと、ガラス化が困難とされてきた。そこで、第1実施例では、Na+を含有しないTiO2・P25系のガラス(xTiO2・yP25系(x,y;自然数)のガラス)の作製を試み、そのTiO2・P25系のガラスを固体電解質(プロトン伝導体)として用いることが可能であるか否かを検討した。
【0020】
まず、TiO2とP25とのモル比(TiO2:P25)を種々変化させて電解質材料A1〜A18を形成し、それら電解質材料A1〜A18をガラス化して固体電解質の作製を試み、その結果を下記表1に示した。なお、下記表1中の○印はガラス化ができた場合、×印はガラス化ができなかった場合を示すものである。
【0021】
【表1】
Figure 0003965820
【0022】
前記表1に示す結果から、TiO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にある電解質材料A7〜A13は、ガラス化が可能であることを読み取れる。TiO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にある電解質材料A7〜A13を用いた各固体電解質において導電率(イオン導電率)を測定した結果、それぞれ略同程度の導電率が得られ、600°Cの温度での導電率は10-1S/cmであった。この600°Cの温度での導電率(10-1S/cm)と、ジルコニア系の固体電解質における温度1000°Cの温度での導電率と比較したところ、殆ど同等であることを確認できた。
【0023】
なお、図2は、前記電解質材料A7〜A13のうちTiO2:P25が70:30の電解質材料A10を用いて成る固体電解質において、温度に対する導電率(σ)特性を示すアレーニウスプロット図である。図2に示すように、電解質材料A10をガラス化して成る固体電解質(図2中の曲線A)は、低い温度にてジルコニア系の固体電解質(図2中の曲線B)と略同等の導電率が得られることを読み取れる。
【0024】
ゆえに、TiO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にあるTiO2・P25系のガラスを用いた固体電解質により、ジルコニア系の固体電解質(図2中の曲線B)と略同等の導電率を得ることができ、低温(600°C以下)で動作する燃料電池を構成することが可能であることを確認できた。
【0025】
(第2実施例)
次に、前記第1実施例に示すTiO2・P25系のガラスの「Ti」を「Al」に置換したAl23・P25系のガラスにおいて、Al23とP25とのモル比(Al23:P25)を種々変化させて電解質材料B1〜B18を形成し、それら電解質材料B1〜B18をガラス化して固体電解質の作製を試み、その結果を下記表2に示した。
【0026】
【表2】
Figure 0003965820
【0027】
前記表2に示す結果から、Al23:P25が60:40〜74:26の範囲内にある電解質材料B5〜B12は、ガラス化が可能であることを読み取れる。Al23:P25が60:40〜74:26の範囲内にある電解質材料B5〜B12を用いた各固体電解質において導電率を測定した結果、それぞれ略同程度の導電率が得られ、600°Cの温度での導電率は10-1S/cmであった。
【0028】
ゆえに、Al23:P25が60:40〜74:26の範囲内にあるAl23・P25系のガラスから成る電解質材料を用いた固体電解質により、低温(600°C以下)で動作する燃料電池を構成することが可能であることを確認できた。
【0029】
(第3実施例)
次に、前記第1実施例(または、第2実施例)に示すTiO2・P25系のガラスの「Ti」(または、Al23・P25系のガラスの「Al」)を「Zr」に置換したZrO2・P25系のガラスにおいて、ZrO2とP25とのモル比(ZrO2:P25)を種々変化させて電解質材料C1〜C18を形成し、それら電解質材料C1〜C18をガラス化して固体電解質の作製を試み、その結果を下記表3に示した。
【0030】
【表3】
Figure 0003965820
【0031】
前記表3に示す結果から、ZrO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にある電解質材料C7〜C13は、ガラス化が可能であることを読み取れる。ZrO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にある電解質材料C7〜C13を用いた各固体電解質において導電率を測定した結果、それぞれ略同程度の導電率が得られ、600°Cの温度での導電率は10-1S/cmであった。
【0032】
ゆえに、ZrO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にあるZrO2・P25系のガラスから成る電解質材料を用いた固体電解質により、低温(600°C以下)で動作する燃料電池を構成することが可能であることを確認できた。
【0033】
(第4実施例)
次に、前記第1実施例(または、第2,3実施例)に示すTiO2・P25系のガラスの「Ti」(または、Al23・P25系のガラスの「Al」,ZrO2・P25系のガラスの「Zr」)を「Hf」に置換したHfO2・P25系のガラスにおいて、HfO2とP25とのモル比(HfO2:P25)を種々変化させて電解質材料D1〜D18を作製し、それら電解質材料D1〜D18をガラス化して固体電解質の作製を試み、その結果を下記表4に示した。
【0034】
【表4】
Figure 0003965820
【0035】
前記表4に示す結果から、HfO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にある電解質材料D7〜D13は、ガラス化が可能であることを読み取れる。HfO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にある電解質材料D7〜D13を用いた各固体電解質において導電率を測定した結果、それぞれ略同程度の導電率が得られ、600°Cの温度での導電率は10-1S/cmであった。
【0036】
ゆえに、HfO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にあるHfO2・P25系のガラスから成る電解質材料を用いた固体電解質により、低温(600°C以下)で動作する燃料電池を構成することが可能であることを確認できた。
【0037】
以上第1〜4実施例に示したように、チタン族元素(Ti,Zr,またはHf)またはAlを含んだガラスを用い、そのガラスを溶かして型に入れて成形することにより、種々の形状の固体電解質を容易に作製することができる。
【0038】
次に、本実施の第2形態を説明する。本実施の第2形態は、前記第1,3実施例に示したガラスを結晶化させて固体電解質(ガラスセラミックス;第5,6実施例)を形成し、燃料電池の動作温度を低減させると共に製造効率の向上を図ったものである。
【0039】
図3は、本実施の第2形態におけるガラスセラミックスを用いた固体電解質の製造工程図を示すものである。なお、図1に示すものと同様なものは省略する。図3において、ステップS31は結晶化工程を示すものであり、この工程では図1に示す工程(ステップS11〜S14)を経て得られたガラスを結晶化する。この結晶化されたガラスはステップS32に示す粉砕工程にて粉砕した後、ステップS33に示す成形工程にてプレスし所望の形状に成形して成形体を得る。そして、ステップS34に示す焼成工程にて前記成形体を焼成して、ガラスセラミックスから成る固体電解質を完成させる。
【0040】
ここで、図3に示す製造工程を経て得られたガラスセラミックスについて、第5,6実施例により説明する。
【0041】
(第5実施例)
前記第1実施例に示したガラス(表1中の電解質材料A7〜A13)を用い、図3に示す製造工程を経てガラスセラミックスから成る固体電解質をそれぞれ作製し、それら固体電解質の導電率(イオン導電率)を測定した。その結果、各固体電解質はそれぞれ略同程度の導電率が得られ、600°Cにおける導電率は10−S・cmであった。ゆえに、TiO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にあるTiO2・P25系のガラスを結晶化させて成るガラスセラミックスを固体電解質として用いることにより、低温(600°C以下)で動作する燃料電池を構成することが可能であることを確認できた。
【0042】
(第6実施例)
前記第3実施例に示したガラス(表3中の電解質材料C7〜C13)を用い、図3に示す製造工程を経てガラスセラミックスから成る固体電解質をそれぞれ作製し、それら固体電解質の導電率(イオン導電率)を測定した。その結果、各固体電解質はそれぞれ略同程度の導電率が得られ、600°Cにおける導電率は10-1S・cmであった。ゆえに、ZrO2:P25が64:36〜76:24の範囲内にあるZrO2・P25系のガラスを結晶化させて成るガラスセラミックスを固体電解質として用いることにより、低温(600°C以下)で動作する燃料電池を構成することが可能であることを確認できた。
【0043】
【発明の効果】
以上示したように本発明によれば、チタン族元素(Ti,Zr,またはHf)またはAlを含んだガラスにより、そのガラスを容易に成形して固体電解質を作製することができると共に、その固体電解質を用いて600°C以下の温度で動作する燃料電池を構成することができるため、高価なセラミックスや特殊な耐熱材料を用いずにステンレス等の金属材料を用いることができ、1000°Cの温度で動作するジルコニア系の燃料電池と同様の電池特性を得ることができる。
【0044】
また、前記ガラス(Ti元素またはZr元素を含んだガラス)を結晶化させて成る固体電解質を用いて燃料電池を構成した場合においても、前記ガラスから成る固体電解質を用いた燃料電池と同様の作用効果を得ることができる。
【0045】
ゆえに、燃料電池の製造コストを低減すると共に、製造効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態における固体電解質の製造工程図。
【図2】温度に対するイオン導電率特性を示すアレーニウスプロット図(第1実施例)。
【図3】本発明の実施の第2形態における固体電解質の製造工程図。
【図4】固体電解質型燃料電池の概略構成図。
【符号の説明】
S11…混合・撹拌工程
S12…予備加熱工程
S13…溶融工程
S14…冷却工程
S31…結晶化工程
S32…粉砕工程
S33…成形工程
S34…焼成工程

Claims (1)

  1. イオン導電性を有する固体電解質に酸素極および水素極を設けて構成された固体電解質型燃料電池であって、
    前記固体電解質は、チタン族元素の金属酸化物ZrO2またはHfO2と、P25と、から成る電解質材料をガラス化し所望の形状に成形したものであり、
    前記金属酸化物ZrO 2 またはHfO 2 と、P 2 5 と、のモル比が64:36〜76:24であることを特徴とする固体電解質型燃料電池。
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