JP3964963B2 - 高炉における微粉炭吹込み方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の羽口部から微粉炭を多量に吹込む際に、微粉炭の燃焼性を確保して、未燃チャーの発生および粉コークスの生成を抑制して高炉の通気性を確保し、生産性を向上させ燃料比を低下させた高炉操業方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高炉操業にあっては、コークス代替として、安価で燃焼性が良く発熱量の高い燃料(微粉炭、石油、重油、ナフサ等)を羽口部より吹込み、溶銑製造コスト低減、生産性向上を図ってきており、特公昭40−23763号公報にその技術が開示されている。特に直近では価格の点から微粉炭吹込みが主流となっており、燃料比低減(コスト低減)、生産性向上に大きく寄与している。
【0003】
このようにして吹込まれた微粉炭は高炉内で一部のコークスの代わりに燃焼し、その燃焼性の良さと高い発熱量のために、高温で多量の還元ガスを生成し効率的な還元反応を行う。したがって、炉頂より装入された鉄鉱石は素早く金属状態に還元されるとともに、溶融して高温の溶銑となり、高炉の炉熱が高く生産性が向上する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで従来の高炉操業において、微粉炭を多量に吹込むと、吹込んだ微粉炭全量が燃焼せずに一部未燃チャーが発生する。この未燃チャーは上昇ガス流に乗って炉頂より排出されるため、微粉炭のコークスに対する置換率が低下し、燃料比上昇、生産量低下を引き起こす。また、この未燃チャーが高炉炉下部中心のコークス層(炉芯と称する)に捕捉されるため、この部分を流下する溶銑滓の通液性を阻害し、ひいてはこの部分のガスの通気性を阻害することになり、高炉の生産量はさらに低下する。
【0005】
このため、微粉炭の吹込み量には上限が存在し、次に示す過剰空気係数を1.0以上に維持している。
過剰空気係数が1.0超の場合は、高炉羽口部のコークス旋回燃焼領域(レースウェイと称する)内で微粉炭中の炭素、水素が全量下記(1),(2)式の反応によりCO2 ,H2 Oとなり、これが全量レースウェイ内のコークスと下記(3),(4)式の反応によりCO2 ,H2 Oとなるため、未燃チャーは発生しない。
C+O2 =CO2 ・・・(1)
2H+1/2O2 =H2 O ・・・(2)
C+CO2 =2CO ・・・(3)
H2 O+C=CO+H2 ・・・(4)
【0006】
ところが、過剰空気係数が1.0未満の場合は全量がCO2 H2 Oにならず、一部C(未燃チャー)が生成する。この未燃チャーが前述したように、置換率低下、通気不良の原因となる。
過剰空気係数1.0は、燃料比500kg/tの場合に微粉炭吹込み量に換算すると、150kg/t程度となる。
またレースウェイ内においては、コークスが上述した(1),(3),(4)の反応により消費されるとともに、レースウェイ内の旋回摩耗により粉が生成しているが、通常はこの粉の生成量が少なく、上述した燃料比上昇、通気不良を招かない。
【0007】
ところが過剰空気係数が1.0超で1.0に近付くにつれて、未燃チャーは発生しないものの、コークスは前記(1)式の反応による消費がほとんどなくなり、微粉炭燃焼(前記(1),(2)式の反応)によって生成したCO2 ,H2 Oとの反応(前記(3),(4)式)による消費だけとなるため、消費速度が遅くなる。
すなわち、コークスのレースウェイ内での旋回滞留時間が長くなり、旋回摩耗による粉コークス生成量が増加する。また生成した粉コークスは一般的に反応性が低いため反応による消費速度が遅く、炉芯に捕捉され、この部分を流下する溶銑滓の通液性を阻害し、ひいてはこの部分のガスの通気性を阻害することになり、未燃チャーの影響はないものの、粉コークスによって高炉の生産量は低下する。
【0008】
この傾向は、過剰空気係数が1.0未満で未燃チャーが発生する状況の下ではますます激しくなり、粉コークス生成量増加による燃料比上昇、通気不良も激しくなる。
過剰空気係数が1.0未満の場合に発生する未燃チャーは、同時に生成している粉コークスに比較して、中空球状を呈し反応性が高いため、粉コークスよりも優先的に消費される特性がある。もし粉コークスの生成量が少なければ、微粉炭吹込み量150kg/t以上を安定的に達成できる可能性はあるが、実際には微粉炭吹込み量が多くなると、粉コークス生成量が多くなるため、この粉コークスの生成を抑制するために、微粉炭吹込み量を150kg/tよりも低く抑えざるを得ず、燃料比低下、生産性向上には限界があった。
また、微粉炭吹込み量を150kg/tに維持するためには、粉コークス生成を抑制する必要があり、コークス冷間強度を向上させる対策を採らざるを得ず、コークス製造コストが上昇していた。
【0009】
このため、微粉炭の燃焼性を向上させるための種々の方法は極めて重要であり、通常の送風支管側壁部より単管ランスを1本挿入する方法に対して、ランスを2重管とし内管より微粉炭を外管より酸素を富化した空気または純酸素を吹込む方法や、送風支管側壁部より単管ランスを2本挿入する方法(ダブルランス)が開発されている。
しかしこれらの方法により、微粉炭の燃焼性が向上しすぎると、未燃チャー、粉コークスの発生は抑制できるものの、レースウェイ内における燃焼ガス温度の極大値(燃焼焦点と称する)が羽口先端に近付き、高温の燃焼ガスが炉壁部を過剰に加熱することによる高炉炉体の熱負荷の増加、装入物降下異常を誘発し、燃料比増加、生産量低下を招く。
したがって、羽口先端から炉外側の方向でのランス先端との距離の調節を含めて、微粉炭の燃焼性を調節する必要がある。
【0010】
そこで本発明は、微粉炭吹込み量を150kg/tあるいはそれ以上としても、微粉炭の燃焼性を一定の範囲に調節し、未燃チャーの発生、粉コークスの生成を抑制するとともに、燃焼焦点を一定の位置に調節し、生産量、燃料比を維持することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の高炉における微粉炭吹込み方法は、その目的を達成するために、下記(1)式で求められる羽口部での過剰空気係数が0.6超1.0以下となる吹込み量で、高炉羽口部に設けたランスから微粉炭を高炉内に吹込む操業において、(a)前記過剰空気係数が0.8超1.0以下の場合、各送風支管側壁部より羽口内に単管ランスを2本挿入し、羽口先端から炉外側に50〜300mmの範囲に前記2本のランス先端位置を調節して微粉炭を吹込み、(b)前記過剰空気係数が0.6超0.8以下の場合、各送風支管側壁部より羽口内に2重管ランスを2本挿入し、羽口先端から炉外側に0〜300mmの範囲に前記2本のランス先端位置を調節し、2重管ランスの内管より微粉炭を、外管より21vol%超の酸素を含有する酸素含有ガスを吹込むことを特徴とする。
(過剰空気係数)=(羽口部より吹込まれる空気、純酸素、微粉炭中の酸素量)/(微粉炭中炭素、水素をCO 2 、H 2 Oまで燃焼するのに必要な酸素量) ・・・(1)
【0014】
【発明の実施の形態】
過剰空気係数が1.0を超える微粉炭吹込み量のときは、前述したように未燃チャーはほとんど発生せず、粉コークスの生成量も少ないから、送風支管側壁部より単管ランス1本を挿入するだけでよい。ただし燃焼焦点を調節するために、ランス先端位置を羽口先端から炉外側に100〜300mmの範囲に調節する必要がある。
この数値限定の理由は、300mmを超えると送風支管内で微粉炭が燃焼しすぎるため、燃焼焦点が羽口先端に近付くことにより、100mm未満では送風支管内での微粉炭燃焼が少なく、過剰空気係数1.0超といえども未燃チャーが発生するためである。
【0015】
過剰空気係数が1.0以下で0.8を超える微粉炭吹込み量のときは、未燃チャーが発生する領域であるため、微粉炭の燃焼性を向上させるためのランスの種類と本数の変更が必要であり、そのために次の2つの方法がある。
【0016】
1つは、送風支管側壁部より2重管ランスを1本挿入して、2重管の内管より微粉炭を、外管より21vol%超の酸素を含有する酸素含有ガスを吹込む方法である。内管より吹込まれた微粉炭の近傍に外管から酸素含有ガスが吹付けられるため、微粉炭と酸素の接触効率が増加し、微粉炭の燃焼性が向上する。外管から吹付けられるガス中の酸素濃度は21%を超えて100%まで調節可能である。
燃焼焦点の調節のために、酸素濃度とランス先端位置(羽口先端から炉外側に100〜300mmの範囲に調節)を過剰空気係数に応じて調節する必要があり、図1にその調節方法を示した。ランス先端位置の数値限定の理由は、前述した理由と同様である。
【0017】
もう1つは、送風支管側壁部より単管ランスを2本挿入して(ダブルランス)、ランス1本当りの微粉炭吹込み量を半分にする方法である。これによりランスから噴出する微粉炭の熱風中への分散性が向上し、やはり微粉炭と酸素の接触効率が増加し、微粉炭の燃焼性が向上する。
そして燃焼焦点を調節するために、両ランスの先端位置を羽口先端から炉外側に50〜300mmの範囲に調節する必要がある。この数値限定の理由は、前述したのと同じである。両ランスの先端位置は必ずしも同じにする必要はなく、50〜300mmの範囲で異なってもよい。。
【0018】
過剰空気係数が0.8以下で0.6を超える微粉炭吹込み量のときは、送風支管側壁部より2重管ランスを2本挿入して(ダブルランス)、ランス1本当りの微粉炭吹込み量を半分にするとともに、2重管の内管より微粉炭を、外管より21vol%超の酸素を含有する酸素含有ガスを吹込む方法を採用する。内管より吹込まれた微粉炭の近傍に外管から酸素含有ガスが吹付けられることと、ダブルランスから噴出する微粉炭の熱風中への分散性が向上することの両方の理由により、微粉炭と酸素の接触効率が非常に増加し、微粉炭の燃焼性が向上する。
【0019】
外管から吹付けられる空気中の酸素濃度は21%を超えて100%まで調節可能である。燃焼焦点の調節のために、この酸素濃度と両ランス先端位置(羽口先端から炉外側に0〜300mmの範囲に調整)を過剰空気係数に応じて調節する必要があり、図2にその調節方法を示した。ランス先端位置の数値限定の理由は、前述したのと同じである。また両ランスの先端位置は必ずしも同じにする必要はなく、0〜300mmの範囲で異なってもよい。
過剰空気係数が0.6以下の微粉炭吹込み量のときは、燃料比500kg/tの場合に微粉炭吹込み量に換算すると、200kg/t程度となる。この吹込み量では、未燃チャー発生、粉コークス生成は極端に多くなり、高炉の安定操業は不可能である。
【0020】
【実施例】
以下実施例により本発明の特徴を具体的に説明する。表1に本発明による高炉操業結果を従来法と比較して示す。対象高炉は内容積3000m3 の中型高炉であり、送風支管側壁部より単管ランスを1本挿入して、ランス先端位置を羽口先端から炉外側に350mmに設置し、微粉炭吹込み量140kg/t(過剰空気係数1.10)、燃料比500kg/tに維持しながら溶銑を6000t/日製造していた。
【0021】
【表1】
【0022】
(参考例1)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を145kg/t(過剰空気係数1.05)に増加するときに、送風支管側壁部より単管ランス1本のまま、ランス先端位置を羽口先端から手前300mmに設置した本発明による操業例である。比較例1に対比すると、燃料比が低く、出銑量が多い。
【0023】
(参考例2)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を175kg/t(過剰空気係数0.9)に増加するときに、送風支管側壁部より2重管ランスを1本挿入して、2重管の内管より微粉炭を、外管より酸素含有ガスを吹込む方法を採用し、図1に従って、ランス先端位置を羽口先端から炉外側に150mmに設置し、外管から流出するガス中の酸素濃度を60%に調整した本発明による操業例である。比較例2に対比すると、燃料比が低く、出銑量が多い。
【0024】
(実施例3)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を175kg/t(過剰空気係数0.9)に増加するときに、送風支管側壁部より単管ランスを2本挿入して(ダブルランス)、ランス1本当りの微粉炭吹込み量を半分にし、ランス先端位置をそれぞれ羽口先端から炉外側に250mm、200mmとした本発明による操業例である。比較例2に対比すると、燃料比が低く、出銑量が多い。
【0025】
(実施例4)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を225kg/t(過剰空気係数0.7)に増加するときに、送風支管側壁部より2重管ランスを2本挿入して(ダブルランス)、ランス1本当りの微粉炭吹込み量を半分にするとともに、2重管の内管より微粉炭を、外管より酸素含有ガスを吹込む方法を採用し、図2に従って、ランス先端位置をそれぞれ羽口先端から炉外側に200mm、100mmに設置し、外管から流出するガス中の酸素濃度をそれぞれ50%、65%に調整した本発明による操業である。比較例3に対比すると、燃料比が低く、出銑量が多い。
【0026】
(比較例1)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を145kg/t(過剰空気係数1.05)に増加するときに、送風支管側壁部より単管ランス1本のまま、ランス先端位置を羽口先端から炉外側に350mmとそのままにして、操業を継続した従来法による操業例である。実施例1に比べて、燃料比を上昇せざるを得ず、生産量が低下している。
【0027】
(比較例2)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を175kg/t(過剰空気係数0.9)に増加するときに、送風支管側壁部より単管ランス1本のまま、ランス先端位置を羽口先端から炉外側に350mmとそのままにして、操業を継続した従来法による操業例である。実施例2,3に比べて、燃料比を上昇せざるを得ず、生産量が低下している。
【0028】
(比較例3)
燃料比500kg/tのまま微粉炭吹込み量を225kg/t(過剰空気係数0.7)に増加するときに、送風支管側壁部より単管ランス1本のまま、ランス先端位置を羽口先端から炉外側に350mmとそのままにして、操業を継続した従来法による操業例である。実施例4に比べて、燃料比を大幅に上昇せざるを得ず、微粉炭吹込み量も190kg/tしか増加できず、生産量も低下している。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、微粉炭多量吹込み時に過剰空気係数に応じて、ランスの種類、ランス本数、ランス先端位置を変更し、微粉炭の燃焼性およびレースウェイ内の燃焼焦点を調節することにより、未燃チャー発生、粉コークス生成を抑制し、かつ炉体熱負荷を抑制できるため、微粉炭吹込み量を150kg/tあるいはそれ以上に増加が可能となり、生産量、燃料比を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 2重管ランスを1本使用するときの、過剰空気係数に対応した外管から流出するガス中の酸素濃度と、ランス先端位置との関係を示す図。
【図2】 本発明で2重管ランスを2本使用するときの、過剰空気係数に対応した外管から流出するガス中の酸素濃度と、ランス先端位置との関係を示す図。
Claims (1)
- 下記(1)式で求められる羽口部での過剰空気係数が0.6超1.0以下となる吹込み量で、高炉羽口部に設けたランスから微粉炭を高炉内に吹込む操業において、(a)前記過剰空気係数が0.8超1.0以下の場合、各送風支管側壁部より羽口内に単管ランスを2本挿入し、羽口先端から炉外側に50〜300mmの範囲に前記2本のランス先端位置を調節して微粉炭を吹込み、(b)前記過剰空気係数が0.6超0.8以下の場合、各送風支管側壁部より羽口内に2重管ランスを2本挿入し、羽口先端から炉外側に0〜300mmの範囲に前記2本のランス先端位置を調節し、2重管ランスの内管より微粉炭を、外管より21vol%超の酸素を含有する酸素含有ガスを吹込むことを特徴とする高炉における微粉炭吹込み方法。
(過剰空気係数)=(羽口部より吹込まれる空気、純酸素、微粉炭中の酸素量)/(微粉炭中炭素、水素をCO 2 、H 2 Oまで燃焼するのに必要な酸素量) ・・・(1)
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JP19915597A Expired - Lifetime JP3964963B2 (ja) | 1997-07-10 | 1997-07-10 | 高炉における微粉炭吹込み方法 |
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