JP3964943B2 - 抗ウイルス剤 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は抗ウイルス剤に関し、さらに詳しくは脂肪族アルコールの硫酸化物、それらの塩類を有効成分とする抗ウイルス剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗エイズ薬として最初の治療薬AZT(アジドチミジン、逆転写酵素阻害剤)は、エイズの発症や進行を有意に遅らせることが明らかになった。しかし、長期投与に基く慢性毒性、薬剤耐性エイズウイルス変異株の出現などの問題がある。また、最近DDI(ジデオキシイノシン)とAZTの組み合わせ療法も承認されているが、これも急性膵炎などの重篤な副作用が報告されている。これらはいずれも構造的にモノヌクレオシドであって、逆転写酵素だけでなくヒトのポリメラーゼにも影響し、選択性に乏しい。
特開平2−1782832号公報は、有効成分としてスルホン化ポリアミノ酸を含有することを特徴とするレトロウイルス感染症、特にエイズの治療及び予防に有効な薬剤を開示しているが、これらの有効成分は分子量が500 〜500,000 ダルトンほどの高分子化合物であって、利用しづらく、硫酸化度など構造的に明確でない。
現在開発中のものとしては、プロテアーゼ阻害剤、転写・翻訳阻害剤、脱殻阻害剤、HIVのエンベロープタンパクのグリコレ−ション阻害剤などがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、毒性が低く、比較的低分子量である有効成分を含む新規の抗ウイルス剤を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するため鋭意研究を重ね、比較的低分子量の簡単な構造の化合物を硫酸エステル化し、それらの抗ウイルス活性を検討した。その結果、脂肪族アルコールの硫酸化物が抗ウイルス活性、特に抗HIV(human immunodeficiency virus、ヒト免疫不全ウイルス) 活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、脂肪族アルコールの硫酸化物、及びそれらの生理学的に許容しうる塩類からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする抗ウイルス剤に関する。
本発明はまた、新規物質である、1−デカノール硫酸化物、テトラメチルエチレングリコール硫酸化物又はα−プロピレンクロロヒドリン硫酸化物、及びそれらの生理学的に許容しうる塩類に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分である脂肪族アルコールの硫酸化物において、脂肪族アルコールは1価アルコールでも多価アルコールでもよい。その脂肪族炭化水素基は飽和でも不飽和でもよく、好ましくは飽和しているものである。また直鎖でも分岐していてもよい。その炭素原子数は一般に2〜100が適当であって、好ましくは2〜20である。また、該炭化水素基は置換されていてもよく、例えばハロゲン原子、具体的には塩素原子、フッ素原子又は臭素原子で置換されていてもよく、好ましくは塩素原子である。
また生理学的に許容しうる塩類としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩又はテトラブチルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0006】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分である硫酸化物の具体例としては、下記の化合物の硫酸化物が挙げられる。
1−プロパノール、1−デカノール、アリルアルコール、α−プロピレンクロロヒドリン、アセトンクロロホルム、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,3-ブタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、テトラメチルエチレングリコール、グリセロール、ペンタグリセロール、ペンタエリトリトール。
上記の中でも、1−デカノール、α−プロピレンクロロヒドリン、テトラメチルエチレングリコール、プロピレングリコール、2,3-ブタンジオール、グルセロール及びペンタグリセロールの硫酸化物が、比較的毒性が低く且つ抗ウイルス活性が高いことから好ましく、より好ましくは1−デカノール、α−プロピレンクロロヒドリン、テトラメチルエチレングリコール及びグルセロールの硫酸化物である。
ウイルスには例えばレトロウイルスといったRNAを鋳型として逆転写酵素を用いてDNAを合成するものがあり、本発明の抗ウイルス剤における有効成分は、この逆転写酵素を阻害すると考えられる。
従って、脂肪族アルコールの硫酸化物、及びそれらの生理学的に許容しうる塩類からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として使用し、逆転写酵素阻害剤とすることができる。
【0007】
上記の硫酸化物は、アルコール類より慣用の方法により製造できる。
また上記の硫酸化物のうち一部は、市販されており、本発明ではそのような市販品を使用してもよい。
以下、出発原料としてアルコール類を用い、硫酸エステル化する方法について、具体的に説明する。
使用する溶媒としてはクロロホルム、ピリジン、DMF(ジメチルホルムアミド)などが適当であって、特にクロロホルムが好ましい。溶媒には適当な脱水剤を加えてから蒸留することが好ましく、脱水剤として例えば水酸化ナトリウムを使用することができる。溶媒の量は、使用するアルコール類の重量に対して1〜50倍量程度でよく、通常は5〜20倍量が適当である。
硫酸化試薬としては、公知の硫酸化エステル化試薬、例えば硫酸、クロロ硫酸、三酸化イオウ、トリメチルシリルスルホン酸クロリドなどが使用できる。さらに三酸化イオウとして、そのトリメチルアミンコンプレックス、ピリジンコンプレックス、N,N-ジメチルホルムアミドコンプレックスが使用できる。硫酸化試薬の添加量は、出発原料に対して1〜50当量が適当であって、さらに2〜10当量が好ましい。好ましくは冷却下で硫酸化試薬を添加する。
【0008】
反応は不活性雰囲気下に行うことが望ましい。使用できる不活性ガスとしては、窒素、アルゴンガスなどが挙げられる。
反応温度及び反応時間は一般に、50〜100℃、1〜100時間が適当である。反応温度が高いほど反応が早く進行するので、反応時間は反応温度に応じて適宜選択することができるが、一般的に反応時間が長いほど収量が高くなる。反応温度及び反応時間はまた、使用する溶媒や硫酸化試薬の種類及びそれらの組み合わせに応じて変動させることが可能である。
反応中は、水分を防ぐために乾燥塔を付けることが好ましく、使用する乾燥剤として塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0009】
本発明の抗ウイルス剤の有効成分は、脂肪族アルコールの硫酸化物及びそれらの生理学的に許容しうる塩の単品又は任意の混合物である。
本発明の抗ウイルス剤は、上記有効成分の他に、これらの有効成分を変質させるものや有毒なものでない限り、用途に応じて適宜選択しうる添加物を含んでもよい。
本発明の有効成分を逆転写酵素阻害剤とする場合も、適宜添加剤を含ませてもよい。
〔投与方法〕
本発明の抗ウイルス剤は、経口及び非経口投与のいずれも使用可能であり、経口投与する場合は、軟・硬カプセル剤又は錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤として投与され、非経口投与する場合は、注射剤、点滴剤及び固体状又は懸濁粘稠液状として持続的な粘膜吸収が維持できるように坐剤のような剤形で投与され得る。本発明の抗ウイルス剤を注射剤として投与する場合、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内あるいは静脈内投与が可能である。また、局所組織内投与、局所への塗布、噴霧、坐剤、膀胱内注入などの外用的投与法なども用いることができる。
【0010】
〔投与量〕
本発明の抗ウイルス剤の投与量は、投与法と病気の悪性度、患者の年齢、病状や一般状態、病気の進行度などによって一定したものではないが、成人では通常、一日当たり有効成分として約1mg〜10gが適当である。
〔製剤化の方法〕
本発明の抗ウイルス剤における有効成分の配合割合は、剤形によって変更し得るが、通常経口または粘膜吸収で投与されるときは、ほぼ0.3〜15.0重量%が適当であり、非経口投与されるときは、ほぼ0.01〜10重量%が適当である。
また本発明の有効成分を製剤化するに当たっては、常法に従えばよく、水溶液、油性製剤などにして注射用製剤とすることができる他、カプセル剤、錠剤、細粒剤、顆粒剤などの剤形に製剤化して経口用に、また局所投与用に供することができる。
有効成分に長時間の保存に耐える安定性及び耐酸性を付与して、薬効を完全に持続させるために、さらに医薬的に許容し得る皮膜を施して製剤化すれば、優れた安定性を有する抗ウイルス剤とすることができる。
【0011】
本発明の有効成分の製剤化に用いられる界面活性剤、賦形剤、滑沢剤、佐剤及び医薬的に許容し得る皮膜形成物質などを挙げれば、次のとおりである。
本発明のウイルス剤の崩壊、溶出を良好にするために、界面活性剤、例えばアルコール、エステル類、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタンの脂肪酸エステル類、硫酸化脂肪アルコール類などの1種又は2種以上を添加することができる。
また、賦形剤として、例えば蔗糖、乳糖、デンプン、結晶セルロース、マンニット、軽質無水珪酸、アルミン酸マグネシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどの1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを1種又は2種以上添加することができる。また矯味剤及び矯臭剤として、食塩、サッカリン、糖、マンニット、オレンジ油、カンゾウエキス、クエン酸、ブドウ糖、メントール、ユーカリ油、リンゴ酸などの甘味剤、香料、着色剤、保存料などを含有させてもよい。
【0012】
懸濁剤、湿潤剤のような佐剤としては、例えばココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、乳酸カルシウム、ベニバナ油、大豆リン脂質などを含有させることができる。
また皮膜形成物質としては、セルロース・糖類などの炭水化物誘導体として酢酸フタル酸セルロース(CAP)、またアクリル酸系共重合体、二塩基酸モノエステル類などのポリビニル誘導体としてアクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体が挙げられる。
また、上記皮膜形成物質をコーティングするに際し、通常使用されるコーティング助剤、例えば可塑剤の他、コーティング操作時の薬剤相互の付着防止のための各種添加剤を添加することによって皮膜形成剤の性質を改良したり、コーティング操作をより容易にすることができる。
【0013】
以下、合成例、試験例及び実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【合成例1】
テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウムの合成
テトラメチルエチレングリコール2g、クロロ硫酸5.9g、及びクロロホルム20mlを55℃にて、窒素雰囲気下93時間反応させた。反応終了後、二層となるので、上清のクロロホルム層を除去後、塩化メチレンでクロロホルムを洗浄した。冷却した12gの炭酸水素ナトリウムを含む水200mlを注ぎ、不溶物は濾過して除去した。次にろ液にテトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェイト6.8g、炭酸水素ナトリウム1.8gを含む水100mlを加え、塩化メチレンで抽出した。塩化メチレン層は、硫酸マグネシウムで洗浄後、濃縮・乾固した。
残査に、アンバーライトIR 120B (Na+ ) 200mlと水200mlを加え、室温で一夜撹拌した。濾過によりアンバーライトを除去後、水溶液を塩化メチレンで洗浄後凍結乾燥した。その結果、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム 0.25gを得た。
このようにして合成したテトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウムのIRを測定した。結果は下記のとおりである。
IR:νmax ,cm-1(KBr)(図1に示す)
3450, 2960, 1640, 1350, 1200, 1040, 920, 780, 620, 530
【0014】
【合成例2】
α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウムの合成
α−プロピレンクロロヒドリン2g、クロロ硫酸7.5g、及びクロロホルム20mlを55℃にて、窒素雰囲気下93時間反応させた。反応終了後、二層となるので、上清のクロロホルム層を除去後、塩化メチレンでクロロホルムを洗浄した。冷却した12gの炭酸水素ナトリウムを含む水200mlを注ぎ、不溶物は濾過して除去した。次にろ液にテトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェイト6.8g、炭酸水素ナトリウム1.8gを含む水100mlを加え、塩化メチレンで抽出した。塩化メチレン層は、硫酸マグネシウムで洗浄後、濃縮・乾固した。
残査に、アンバーライトIR 120B (Na+ ) 200mlと水200mlを加え、室温で一夜撹拌した。濾過によりアンバーライトを除去後、水溶液を塩化メチレンで洗浄後凍結乾燥した。その結果、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム 0.18gを得た。
このようにして合成したα−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウムのIRを測定した。結果は下記のとおりである。
IR:νmax ,cm-1(KBr)(図2に示す)
3470, 2950, 1740, 1650, 1460, 1380, 1220, 1060, 920
【合成例3】
1−デカノール硫酸ナトリウムの合成
1−デカノール2g、クロロ硫酸4.5g、及びクロロホルム20mlを55℃にて、窒素雰囲気下93時間反応させた。反応終了後、二層となるので、上清のクロロホルム層を除去後、塩化メチレンでクロロホルムを洗浄した。冷却した12gの炭酸水素ナトリウムを含む水200mlを注ぎ、不溶物は濾過して除去した。次にろ液にテトラブチルアンモニウムハイドロジェンスルフェイト6.8g、炭酸水素ナトリウム1.8gを含む水100mlを加え、塩化メチレンで抽出した。塩化メチレン層は、硫酸マグネシウムで洗浄後、濃縮・乾固した。
残査に、アンバーライトIR 120B (Na+ ) 200mlと水200mlを加え、室温で一夜撹拌した。濾過によりアンバーライトを除去後、水溶液を塩化メチレンで洗浄後凍結乾燥した。その結果、1−デカノール硫酸ナトリウム0.81gを得た。
このようにして合成した1−デカノール硫酸ナトリウムのIRを測定した。結果は下記のとおりである。
IR:νmax ,cm-1(KBr)(図3に示す)
3420, 2920, 1740, 1620, 1140, 1000, 830, 620
【0015】
【試験例1】
HIV感染による細胞障害に対する薬剤の抑制作用
成人T細胞の白血病の原因ウイルスHTLV−1によりトランスフォームされたヒトT細胞株であるMT−4細胞(Gann Monogr., Vol. 28, pp219〜228 (1982))と、HIVの一種であるHTLV−III Bを使用した。実験方法は、パウエル等の方法に従った(Pauwels 等、J. Virol. Methods ,Vol. 20, pp309〜321(1988))。
96穴マクロタイタープレートに、種々の濃度のテトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムの各薬剤と、HTLV−III Bに感染させた直後のMT−4細胞(2.5×104 個/ウェル、MOI:0.01)を加えた。炭酸ガスインキュベーターで37℃5日間培養した後、MTT法で、吸光度を測定することにより生存細胞数を測定した。なお、HTLV−III Bに感染したMT−4細胞は、薬剤無添加で上記と同様に培養したところ、5日後に完全に死滅した。
なお対照として、HTLV−III B感染させないMT−4細胞に薬剤無添加で同様に培養を行い、生存細胞数を測定した。
上記生存細胞数より有効率(%)を以下のようにして求めた。
(各薬剤添加した時の生存細胞数/対照における生存細胞数)×100
その結果を表1に示す。表中、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムをそれぞれ、TE-S-Na 、PC-S-Na 及びDN-S-Na と記す。
【0016】
【表1】
【0017】
上記結果より、50%有効濃度(EC50、対照と比較してHTLV−III B感染により死滅してゆく細胞を50%に抑える濃度)を求めたところ、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムで、それぞれ、88.4μg/ml、75.5μg/ml及び667.6μg/mlであった。
【0018】
【試験例2】
細胞増殖に対する影響
試験例1で使用したのと同様のMT−4細胞を使用して、HTLV−IIIBに非感染のMT−4細胞の増殖に及ぼす薬剤の影響を観察した。
試験例1と同様、実験方法は、パウエル等の方法に従った(Pauwels 等、J. Virol. Methods ,Vol. 20, pp309〜321(1988))。96穴マクロタイタープレートに、種々の濃度のテトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムの各薬剤と、HTLV−IIIB非感染MT−4細胞を加えた。炭酸ガスインキュベーターで37℃5日間培養した後、MTT法で、吸光度を測定することにより生存細胞数を測定した。
対照として、薬剤無添加でHTLV−IIIB非感染MT−4細胞を同様に培養して、生存細胞数を測定した。
上記生存細胞数より生存率(%)を以下のようにして求めた。
(各薬剤添加した時の生存細胞数/対照における生存細胞数)×100
その結果を表2に示す。表中、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムをそれぞれ、TE-S-Na 、PC-S-Na 及びDN-S-Na と記す。
【0019】
【表2】
【0020】
上記のとおり、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムのいずれも、1,000 μg/mlにおいて、HTLV−III B非感染MT−4細胞の高い生存率を示した。
【0021】
【試験例3】
アリルアルコール、プロピレングリコール、2,3-ブタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、グリセロール及びペンタグリセロールの各硫酸化物(ナトリウム塩)について、上記試験例1と同様の試験を行い、有効率を求め、さらにEC50を求めた。
また試験例2と同様の試験を行い、生存率を求め、HTLV−III B非感染MT−4細胞の増殖に及ぼす影響を、薬剤無添加のときの細胞生存数と比較して50%の細胞が生き残る濃度(CC50)で表した。
下記表3に、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムも含めて、各種薬剤のEC50値及びCC50値をまとめる。
【0022】
【表3】
【0023】
薬剤においてEC50値が低い程、抗HIV活性が高く、またCC50値が高い程、細胞毒性が低いことから、上記薬剤の中でもとりわけ、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム、1−デカノール硫酸ナトリウム、プロピレングリコール硫酸ナトリウム、2,3-ブタンジオール硫酸ナトリウム、グリセロール硫酸ナトリウム及びペンタグリセロール硫酸ナトリウムが優れていることがわかる。
【0024】
【試験例4】
逆転写酵素阻害活性の測定
テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムについて、逆転写酵素阻害活性を測定した。
反応液60μl は、逆転写酵素20μl 、薬剤溶液20μl 、ポリ(rA)−オリゴ(dT)15+ヌクレオチド20μl を含む。逆転写酵素としては、HIV由来のものを使用した。
上記反応液を37℃、1時間恒温槽にて反応させた。更に、200mU/ml抗DIG−PODを200μl 添加し、37℃、1時間反応させた。この液に1mg/ml ABTS基質200μl を添加し、ポジティブサンプルが緑色になるまで室温放置した。マイクロタイタープレートリーダーを用いて、490nmの吸収を測定した。
阻害率は、薬剤無添加のもの(反応液60μl 中、逆転写酵素20μl 、薬剤の代わりに希釈用バッファー20μl 、ポリ(rA)−オリゴ(dT)15+ヌクレオチド20μl を含む)と比較して求めた。
結果は下記表4に示す。
【0025】
【表4】
【0026】
【試験例5】
マウス白血病細胞L1210細胞に対して、200μg/mlの濃度にて、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムを各々添加し3日間培養したところ、細胞の増殖に対する抑制を示さなかった。
【0027】
【試験例6】
マウス急性毒性試験
ICR4週齢、雄マウスに、テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム、α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウム及び1−デカノール硫酸ナトリウムを各々100mg/kg 腹腔内投与したところ、顕著な毒性は観察されなかった。
【0028】
【実施例1】
注射・点滴剤
テトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウムを500mg 含有するように粉末ブドウ糖5gを加えてバイアルに無菌的に分配し、密封した上、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを封入して冷暗所に保存する。使用前に0.85%生理食塩水500ml を添加して静脈内注射剤として1日10〜500ml を症状に応じて静脈内注射または点滴で投与する。
【実施例2】
注射剤・点滴剤
α−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウムを50mg使用した他は、実施例1と同様の方法により軽症用静脈内注射剤を製造し、1日、10〜500ml を症状に応じて静脈内注射または点滴で投与する。
【0029】
【実施例3】
注射剤・カプセル剤
1−デカノール硫酸ナトリウム30mgを精製ゴマ油1g及びステアリン酸アルミニウムゲル100mg に溶解し密封した上、窒素、ヘリウム等の不活性ガスを封入して冷暗所に保存し、皮下注射用製剤とする。症状に応じて1日に、1回1〜10mgを皮下注射で投与する。
また、前記製剤を0.5ml ずつカプセルに分注して経口用カプセル剤とし、1日、1〜10カプセルを症状に応じて経口投与する。
【0030】
【実施例4】
腸溶性錠剤
以下の成分組成で腸溶性錠剤大人用(イ)及び小人用(ロ)各々1,000 個を製造した。
[A] の成分を各々取り、よく混合し、この混合物を直接に加圧するか、またはよく練合した後、押出し型製粒機のスクリーンを通して顆粒成形を行い、十分によく乾燥したものを加圧して錠剤を製造した。
次に、成形された錠剤によく溶解させた[B] の基材を被覆して腸溶性の錠剤とする。
【0031】
【実施例5】
腸溶性顆粒剤
以下の成分で腸溶性顆粒剤1,000gを製造した。
[A] の成分を各々取り、よく混合した後、常法に従って粒状に成形し、それをよく乾燥して篩別し、ビン、ヒートシール包装などに適した顆粒剤を製造した。次に、この顆粒を浮遊流動させながら、溶解した[B] の基材を被覆し、腸溶性の顆粒剤とする。
【0032】
【実施例6】
腸溶性カプセル剤
以下の成分で腸溶性カプセル剤1,000 個を製造した。(イ)は大人用、(ロ)は小人用である。
上記の成分で実施例5に記載したのと同様の方法でカプセルに適した腸溶性の顆粒剤を製造し、その組成物をカプセルに充填して腸溶性カプセルとした。
【0033】
【発明の効果】
本発明の抗ウイルス剤における有効成分は、低毒性であり、且つ顕著な抗ウイルス活性を示す。従って、本発明は優れた抗ウイルス剤を提供でき、また本発明の抗ウイルス剤は特に抗エイズウイルス剤として有用である。上記有効成分はまた逆転写酵素阻害剤としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で得たテトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウムの赤外線吸収スペクトルである。
【図2】合成例2で得たα−プロピレンクロロヒドリン硫酸ナトリウムの赤外線吸収スペクトルである。
【図3】合成例3で得た1−デカノール硫酸ナトリウムの赤外線吸収スペクトルである。
Claims (4)
- α−プロピレンクロロヒドリンの硫酸化物、その生理学的に許容しうる塩類、及び図1に表されるIRスペクトル(IR:νmax,cm-1(KBr)3450, 2960, 1640, 1350, 1200, 1040, 920, 780, 620, 530)を示すテトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする抗ウイルス剤。
- 該塩類がナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩又はテトラブチルアンモニウム塩である請求項1記載の抗ウイルス剤。
- ウイルスがエイズウイルスである請求項1又は2の抗ウイルス剤。
- α−プロピレンクロロヒドリン硫酸化物、その生理学的に許容しうる塩類、又は図1に表されるIRスペクトル(IR:νmax,cm-1(KBr)3450, 2960, 1640, 1350, 1200, 1040, 920, 780, 620, 530)を示すテトラメチルエチレングリコール硫酸ナトリウム。
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