JP3964664B2 - 縦型多段遠心ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、給水装置などに用いられる縦型多段遠心ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
多段遠心ポンプを用いた給水装置は、受水槽からポンプ吸込部までが長い、屈曲部が多い、経路中に逆止弁が挿入されるなど、水中に溶解している空気が気泡として発生しやすい環境で使用される傾向が多い。特に多段遠心ポンプが受水槽の水面より上部に設置される給水装置では、ポンプ吸込部が常時負圧となるので、一層、気泡発生の可能性が高い。
【0003】
気泡が大量にポンプ吸込部に流入すると、多段遠心ポンプは揚水能力を失い、断水などの発生につながる。
【0004】
ところで、従来の給水装置では、大型タンクを用いて、圧力スイッチのON/OFF信号により、多段遠心ポンプを運転・停止する制御を採用していた。この構造だと、ポンプの起動・停止時の流量が概ね100リットル/分と多いために、ポンプ内部の流速が速く、たとえポンプ内部に気泡が流入しても、そのまま勢いにまかせて気泡をポンプ外へ排出することができた。
【0005】
ところが、この構造は、少水量使用時に断続運転を繰り返すために、例えばシャワーの水温が変動する問題がある。しかも、大型タンクの設置する設置スペースが必要になり、近年の実情には合わない。
【0006】
そこで、近時では、給水装置は、実情に即した構造、具体的には小容量の隔膜式のアキュームレータと、概ね10リットル/分で停止信号を送出する流量検出部とを用いた構造へ変更されてきた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
この構造だと、少水量時には多段遠心ポンプが連続運転するため、シャワーの水温が変動することがないうえ、かなりタンクが小さいので、給水装置の据付性も良い。
【0008】
反面、多段遠心ポンプは、ポンプ内部の流速が遅い連続運転が行われるために、気泡がポンプ内部に混入したり内部で発生した場合、ポンプ内部で生じる逆流現象の影響を受けて、気泡がポンプ外へ排出できなくなる問題が生じてきた。
【0009】
少水量時の連続運転中に、ポンプ内部に混入及び発生した気泡を排出するには、自吸式ポンプを採用することが考えられるが、従来の自吸式ポンプは、羽根車が1枚の単段式で、渦巻室が単一ボリュート形成であるうえ、吐出側から吸込部への還流路や気液分離室が必要なために、近年の住宅供給で必要とされる揚水性能は満足しない。このため、ポンプケーシングの容積が通常の多段遠心ポンプより大きくなってしまう問題があり、近年の実情には合わない。
【0010】
多段遠心ポンプは、上述したように水中に溶解している空気が気泡として発生するような条件下での使用が避けられない昨今、簡単な構造で、気泡の問題の解決が行なえる技術が要望されている。特に給水装置には縦型多段遠心ポンプが多く使用されるので、縦型多段遠心ポンプに適した技術が求められている。
【0011】
そこで、本発明は、少水量の運転時に、ポンプ内部に混入・発生した気泡の排出をうながせる縦型多段遠心ポンプを提供する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の縦型多段遠心ポンプは、羽根車の周りに形成した該羽根車の接線方向へ向かう複数のガイド路をなす案内羽根の出口端側の羽根部分に、該羽根部分を挟んだ両側を連通する貫通孔を形成して、運転流量が少ないとき、すなわち少水量時、ポンプ内部の気泡の排出をうながせるようにした。
【0013】
すなわち、縦型多段遠心ポンプは、運転流量が少ないと、ガイド路に生ずる圧力勾配が原因で、排出側へ進むはずの気泡が逆流する挙動を発生する。
【0014】
このときは、案内羽根の出口端側に形成された貫通孔を通じて、逆流をもたらす案内羽根出口の低圧部へ、隣側案内羽根の表側の高い圧力の圧力水が注入されて、圧力勾配を緩和する。
【0015】
これにより、逆流現象の発生は抑えられ、少水量でもポンプ内部の気泡はガイド路を通じて排出される。
【0016】
請求項2に記載の縦型多段遠心ポンプは、ガイド路に生ずる圧力勾配が効果的に緩和されるよう、貫通孔を、案内羽根の出口端側のうち、内周側に配置されて隣り合う案内羽根の入口端部分と対向する羽根部分に設けた。
【0017】
請求項3に記載の縦型多段遠心ポンプは、ポンプ内部から気泡が効果的に排出されるよう、貫通孔を各羽根車の周囲に配設されている案内羽根の全部またはその一部に形成した。
【0018】
請求項4に記載の縦型多段遠心ポンプは、比重の比較的軽い気泡が速やかに排出されるよう、貫通孔を、ガイド路の中心線より上側の地点に設けて、気泡の有る地点に合わせて適切に高圧水を注入するようにした。
【0019】
請求項5に記載の縦型多段遠心ポンプは、ガイド路からの圧力水を次段の羽根車の吸込口へ集水する羽根車間の放射状の戻し流路を形成する各戻し羽根の中心方向側の端部を、次段の羽根車の吸込口から内周側へ突き出るように形成して、運転流量が少ないとき、すなわち少水量時、ポンプ内部の気泡の排出をうながせるようにした。
【0020】
すなわち、縦型多段遠心ポンプは、運転流量が少ないと、ガイド路から流入してきた気泡が、次段の羽根車の吸込口へ流入せずに、他の隣り合う地点に有る戻し流路へ逆流するという逆流現象が発生する。
【0021】
このとき、戻し流路を形成する戻し羽根の中心方向の端部は、次段の羽根車の吸込口から内周側へ突出させてあるので、該端部がもたらす流れの遮りにより、他の戻し流路へ向かう逆流は抑えられる。
【0022】
これにより、気泡は次段羽根車の吸込口へ流入しやすくなり、少水量でもポンプ内部の気泡は排出される。
【0023】
また、運転流量の多いときの揚水性能が損なわれないよう、戻し羽根の中心方向側の端部を、多い運転流量を基準として、次段の羽根車の吸込口から、羽根車を回転自在に支持するポンプ軸の外周面と近接する地点までの範囲内で突出させた。
【0024】
さらに、効果的に気泡の逆流が抑えられるよう、各戻し羽根の中心方向側の端縁を、ポンプ軸とほぼ平行な形状に形成した。
【0025】
請求項に記載の縦型遠心ポンプは、最も高い気泡排出性能を確保するために、案内羽根の出口端側の羽根部分に貫通孔を形成する構造と、各戻し羽根の中心方向側の端部を次段の羽根車の吸込口から内周側へ突出させる構造との2つを併用した。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図1〜図4に示す第1の実施形態にもとづいて説明する。
【0027】
図1は、例えば自動給水装置で用いられる縦型多段遠心ポンプを示していて、図中1はポンプ部、2はモータである。
【0028】
ポンプ部1について説明すると、図中3は最下段に配置されたほぼ円盤状の吸込ケーシング、4は最上段に配置されたほぼ椀状の吐出ケーシング、5はそれら両者間に締結された複数段、例えば2段に重ねたほぼ椀状の中間ケーシングである。なお、吸込ケーシング3にはポンプ吸込部をなす吸込口体3aが形成してあり、吐出ケーシング4にはポンプ吐出部をなす吐出口体4aが形成してある。
【0029】
中間ケーシング5は、上側に、中央に通孔が形成された円板状の仕切り壁6を有し、周囲にその仕切り壁6から連続する環状の周壁7とを有して形成される。これら中間ケーシング5の内部と吐出ケーシング4の内部とにはそれぞれ羽根車8が収めてある。なお、10は、吐出ケーシング4の中心部(中央)から吸込ケーシング4の中心部(中央)に渡り挿通された主軸を示す。
【0030】
羽根車8は、いずれも前・後シュラウド8a,8bの間に複数の渦巻状羽根8cを設けて円盤状に形成される。この構造により、下側に向く前シュラウド8aの中央に円形の吸込口9aを形成し、外周面に吐出口9bを形成してある。そして、各羽根車8の吸込口9aを前段の流路に臨ませている。具体的には、1段目の羽根車8の吸込口9aは、吸込ケーシング3の中央で開口する吸込口体3aの根元側に、図示しないライナリング(シール部材)を介して回転自在に嵌まり、2段目および3段目の羽根車8の吸込口9aは、中間ケーシング5の仕切り壁6の中央で開口している通孔に、図示しないライナリング(シール部材)を介して回転自在に嵌まっている。なお、最下段の羽根車8(吸込口体3aに最も近い羽根車)の後シュラウド8bだけには、吸込口9aが開口する範囲内の位置で貫通する貫通孔8dが形成してある。
【0031】
各羽根車8の中心部は、いずれも主軸10の外周部に嵌挿されて支持されている。この主軸10の上部側の端部は、吐出ケーシング4内に設けた軸受構造13aで回転自在に支持される。この主軸10の上端が、吐出ケーシング4の上面に形成されたモータ据付座11へ突き出ている。そして、この上端が、モータ据付座11に設置されている上記モータ2の出力軸(図示しない)に連結され、モータ2が励磁されると、各羽根車8が回転するようにしてある。なお、13は、主軸10の先端に螺挿されているボルト12で各羽根車8を所定位置に締結するための、主軸10の外周に嵌挿したスリーブを示す。
【0032】
各中間ケーシング5の内部、吐出ケーシング4の内部には、それぞれ羽根車8,8間、最上段の羽根車8の直上を仕切るようにガイド部材15a〜15cが設けてある。
【0033】
これらガイド部材15a〜15cのうち、羽根車8,8間のガイド部材15b、15cには、いずれも図2(a)〜(c)に詳図するようなガイド用と戻し用の羽根を一体に形成した部品が用いてある。
【0034】
このガイド部材15b,15cには、いずれも中央に主軸貫通用の通孔16(図2のみ図示)を有した円板状の本体部17を用い、この本体部17の下面に、ガイド路用の羽根として、例えば7枚の帯板状の案内羽根18を立設し、本体部17の上面に、戻し流路用の羽根として、例えば7枚の帯板状の戻し羽根19を立設した構造が用いられている。
【0035】
具体的には、各ガイド部材15b、15cの本体部17は、羽根車8の外径寸法より若干大きくした寸法でほぼ円形に形成してある。そして、この本体部17の下面の外周縁から7枚の縦形の案内羽根18を等間隔で外側へ突出させ、本体部17の上面に放射状に縦形の戻し羽根19を突出させてある。
【0036】
この羽根構造により、ガイド部材15b,15cは、それぞれ1段目の中間ケーシング5、2段目の中間ケーシング5の内部に収められると、案内羽根18が羽根車8の吐出口9bを囲むように周方向沿いに配置される。と同時に戻し羽根19が羽根車8の背面側に周方向沿いに配置される。
【0037】
このうち案内羽根18は、いずれも本体部17の外周端から円弧を描いて接線方向に延びている。なお、各案内羽根18は、突き出た先端部が、隣り合う内周側の案内羽根18の基端側(入口端側)と対向する間隔で配置してある。そして、各案内羽根18の先端は中間ケーシング5の周壁7内面と内接し、各案内羽根18の下端はその直下の吸込ケーシング3の上面や中間ケーシング5の上面と接する。また各案内羽根18の先端部と、これと対向する内周側の案内羽根部分との間は、いずれも本体部17の外周端を延長した壁部分で遮られていて、各案内羽根18で囲まれる弧形の通路により、羽根車8の吐出口9bの周りに、該羽根車8の接線方向へ向かう、複数、例えば7つのガイド路20[図2(b)に図示]を形成している。これらガイド路20により、羽根車8の吐出口9bからの圧力水が周囲へ均等に吐出されるようにしている。なお、20aは、案内羽根18の先端およびそれに続く本体外周端部分で形成されるガイド路20の出口を示している。
【0038】
戻し羽根19は、いずれも本体部17の中央に在る通孔16の付近から、案内羽根18とは反対の向きで渦巻き状を描いて、上記各案内羽根18の先端位置と対応する外周縁の地点まで延びている。そして、延出端(外周側の端部)が、中間ケーシング5の周壁7内面と内接している。なお、各案内羽根18の中心側の端部は、鋭角に切欠してある(傾斜)。これら各案内羽根18の上端面は、中間ケーシング5の仕切り壁6内面と接している。これにより、1段目、2段目の羽根車8の直上(背面側)に、各ガイド路20からの圧力水、すなわち出口20aの前方に形成される開放部分20bを通してガイド路20から流れ込む吐出水を次段の羽根車8の吸込口9aへ集水させる放射状の戻し流路21を形成している。
【0039】
残るガイド部材15aには、ケーシング4内を仕切るように配置した本体部17の下面に、先のガイド部材15b、15cのときと同様に案内羽根18を形成し、本体部17の上面中央に固定用のスリーブ部22を形成した構造が用いられている。これにより、次段の羽根車へ集水する機能が不要な最上段に在る羽根車8に対しては、ガイド路20だけを形成して、羽根車8からの圧力水を、直接、吐出ケーシング4へ導くようにしている。
【0040】
つまり、縦形多段遠心ポンプは、モータ2の回転力が主軸10へ伝達されると、各羽根車8が回転し、吸込ケーシング3の吸込口体3a(ポンプ吸込部)から水を吸込む。この水が、1番目の羽根車4の吸込口9aから吸込まれ、該羽根車4の外周の吐出口9bから吐出して、接線方向に延びる各ガイド路20に流れ込む。続いて、この吐出水が、放射状の各戻り流路21の入口から流れ込んで次段の羽根車4の吸込口9aへ集水され、該羽根車4から吸込まれて再び増圧される。この増圧作用が3番目の羽根車4まで繰り返し行われる。そして、最終段の増圧を終えた吐出水が、ガイド路20から吐出ケーシング4の内部へ流れ込んで、該吐出ケーシング4の吐出口体3b(ポンプ吐出部)から吐出される。
【0041】
こうした縦形多段遠心ポンプは、少水量時に連続運転する自動給水装置に使用される。具体的には、縦形多段遠心ポンプに、例えばモータのインバータ制御や小容量の隔膜式アキュームレータや概ね10リットル/分で停止信号を送出する流量検出構造を有する構造などが組み合わさるように使用される。
【0042】
この給水装置の使用下では、自動給水用の縦形多段遠心ポンプは、ポンプ内部の流速が遅い少水量時の連続運転のとき、ポンプ内部に混入・発生した気泡がポンプ内部で生じる逆流現象により排出できなくなり、揚水能力が低下することがある。
【0043】
本願発明者らが気泡の挙動を探求した結果、1つはガイド路20を流れる圧力水の流れに逆流渦が発生して、戻し流路21へ運ばれるはずの気泡の一部を逆流させてしまうこと、1つは戻し流路21を流れる圧力水に逆流現象が生じて、ガイド路20から戻し流路21へ流入してきた気泡の一部を、他の戻し流路21へ逆流させてしまう現象が見られた。
【0044】
そこで、本実施形態は、ガイド路20における逆流現象を解消する手段を講じた。
【0045】
すなわち、ガイド路20における逆流現象は、発明者らの考察によると、運転流量が少ない場合、ガイド路20の挙動をみると、案内羽根18の表側の方が、隣接する案内羽根18の裏側により圧力回復が進んで高圧となり、出口部分で圧力勾配が発生する。この際、ガイド路20を流れる流速が遅いこととあいまって、圧力勾配の高圧となる高圧部分から低圧となる低圧部分へ逆流渦が発生し、図2(c)中の一点鎖線の矢印F1で示される流れのように戻し流路21へ運ばれるはずの気泡の一部がガイド路20を逆流して、羽根車8の吸込口9aとの隙間を通過して、羽根車8の吸込口9aへ還流される。この現象により、次段へ気泡が排出できなくなる。
【0046】
そこで、この圧力勾配の発生を抑えるために、例えば全羽根車8うちの一部の羽根車8、例えばポンプ吸込部に最も近い最下位に配置されている各羽根車8の案内羽根18の出口端側の羽根部分だけに小径の貫通孔23を形成した。
【0047】
具体的には、貫通孔23は、図2(b),(c)および図3に示されるように各案内羽根18の出口端側のうち、内周側に配置されて隣り合う案内羽根18の入口端部分と対向する羽根部分に水平方向に貫くように形成される。これで、該羽根部分を挟んだ両側のガイド路部分の相互を連通させ、貫通孔23を通して、低圧となる案内羽根20の裏側へ、案内羽根20の表側の高圧水が注入される構造にした。特に気泡は比重が軽くガイド路20の上側に存在する傾向が高いので、気泡が存在する領域に対して効果的に注入効果が表れるよう、貫通孔23はガイド路20の上下方向の中心線α[図2(b)のみに図示]より上側の地点、特に本体部17と近い点である本体部17近傍の地点に設けて、ガイド路20の上側に開口させてある。
【0048】
なお、各中間ケーシング5の仕切り壁6のうち、外周側の同一な地点(1個所)には、図1および図4に示されるようにガイド路20と戻し流路21との相互間を連通する小径な抜け孔24が形成されていて、ポンプ運転停止時、各抜け孔24を通して、各中間ケーシング5内(ポンプ内部)に滞留する気泡が、速やかに各ケーシング5内から吐出ケーシング4へ排出される工夫を施している。
【0049】
上記のように案内羽根20に貫通孔23を形成すると、ポンプ内部の流速が遅い少水量時(運転流量が少ないポンプ運転)、ガイド路20の出口側において、圧力勾配(案内羽根18の表側が、隣接する案内羽根18の裏面側より高圧となる)が生じることがあっても、図2(c)中の実線の矢印F2に示されるように各貫通孔23から、ガイド路20の低圧となる部分へ隣り合う案内羽根18の表側から高圧水が注入されるから、生じる圧力勾配は緩和され、逆流渦の発生が抑えられる。
【0050】
これにより、羽根車18から吐出された気泡は、流れの整流ならびに促進により、各ガイド路20を通過して、戻し流路21から次段の羽根車8へ排出されやすくなる。
【0051】
それ故、少水量の運転時、ポンプ内部に混入・発生した気泡の排出がうながせ、気泡が逆流(還流)することによる縦形多段遠心ポンプの揚水能力の低下を防ぐことができる。
【0052】
しかも、貫通孔23は、隣り合う内周側の案内羽根18の入口端部分と対向する出口側の羽根部分に形成してあるので、圧力勾配の低圧部に対して効果的に高圧水が注入で、生じる圧力勾配を有効に緩和することができる。特に貫通孔23は、ガイド路20の上側に開口するよう上側の地点に設けてあるので、比重の比較的軽い気泡が有る地点に合わせて適切に高圧水の注入が行なえ、高圧水を十分に効果的に活用して速やかに気泡を次段の羽根車8へ向け排出させることができる。また貫通孔23を形成するだけなので、構造的にも簡単である。
【0053】
そのうえ、貫通孔23を形成する構造に、運転停止時抜け孔24を形成する構造が組み合わさることにより、少水量時のときだけでなく、ポンプ運転起動時にも、求められる揚水能力を安定して確保できる。
【0054】
なお、貫通孔23は、ポンプ入口に最も近い1番目の羽根車8だけに設けたが、これに限らず、他の段の羽根車8に設けても、全段の羽根車8に設けても同様な効果を奏する。
【0055】
図5および図6は、本発明の第2の実施形態に係る縦型多段遠心ポンプを示している。
【0056】
第2の実施形態は、第1の実施形態のようなガイド路20における逆流を抑えることによって縦型多段遠心ポンプの少水量時の運転における気泡の排出性を向上させるのではなく、戻し流路21における逆流現象を解消する手段を講じることによって気泡の排出性を向上させたものである。
【0057】
これには、図5および図6に示されるように戻し流路21を形成する各戻し羽根19の中心方向側の端部19aを、第1の実施形態のような羽根車8の吸込口9aから退避したのではなく、吸込口9aの開口縁から内周側へ突き出るまで延ばした構造が用いてある。この延ばした端部19aの地点は、主軸10に嵌めたスリーブ13(主軸と共にポンプ軸をなすもの)の外周面と近すぎると、運転流量の多い場合に次段の羽根車8の吸込口9aへの流入を阻害するおそれがあるので、各戻し羽根19の中心方向側の端部19aは、運転流量の多いときを基準として、次段の羽根車8の吸込口9aの開口縁から、スリーブ13の外周面と近接する地点(接する点を除く外周面と近い地点)までの範囲内で突出させてある。例えば本実施形態では、吸込口9aの直径Yを100%(最大)とし、スリーブ13の外径(直径)を0%(最小)としたとき、中心方向側の端部がなす直径Xを約75%の地点に定めて調整してある。
【0058】
特に各戻し羽根19の中心方向側の端縁は、図5および図6に示されるように上記地点で主軸10とほぼ平行となる直線形状にして、比重の比較的軽い気泡が集まりやすい戻し羽根19の端縁上部が吸込口9aの内側へ突き出す構造にしてある。
【0059】
こうした各戻し羽根19の端部19aを羽根車8の吸込口9aから内周側へ突き出させた構造だと、運転流量が少ない運転時の戻し流路21における気泡の逆流が防げる。
【0060】
すなわち、このような工夫が戻し羽根19に施されていないと(図1のような吸込口9aから先端が退避した構造)、少水量時、戻し流路21の出口側で生じる逆流現象により、各ガイド路20から戻し流路21へ流入してきた気泡の一部は、図6中の二点鎖線S1に示されるように戻し羽根19の端を通過して、他の隣り合う地点に有る戻し流路21へ逆流する。
【0061】
これに対し、戻し羽根19の端部19aを吸込口9aから突出させる工夫を施すと、突き出た各戻し羽根19の端部19aが、他の戻し流路21の出口との間を遮って、図6中の実線の矢印S2に示されるように戻し流路21へ流入してきた気泡を吸込口9aまで導くという整流作用をもたらす。
【0062】
これにより、気泡は、他の戻し流路21へ逆流せずに、吸込口9aへ流入するようにうながされるので、次段の羽根車8の吸込口8aから速やかに排出できる。
【0063】
それ故、第1の実施形態と同様、気泡が逆流することによる縦型多段遠心ポンプの揚水能力の低下を防ぐことができる。特に戻し羽根19の端縁をスリーブ13の外周面とほぼ平行な形状にしたことで、比重の比較的軽い気泡が集まりやすい地点で、最も効果的に気泡の逆流を防ぐことができる。しかも、戻し羽根19の端部19aの突出量は、運転流量が多いときを基準に設定してあるので、多水量時の運転性能を損なわずにすむ。そのうえ、戻し羽根19の先端部を延長するだけなので構造的にも簡単である。
【0064】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る縦型多段遠心ポンプを示している。
【0065】
本実施形態は、第1の実施形態で説明した案内羽根18に貫通孔23を形成する構造と、第2の実施形態で説明した戻し羽根19の端部19aを次段の羽根車8の吸込口9aから突出させる構造との2つの構造を併用したものである。
【0066】
2つの構造を併用すると、ガイド路20においても、戻し流路21においても気泡が排出されやすくなるので、最も高い気泡の排出性能を確保することができ、どのような気泡が発生しやすい環境下でも安定した揚水運転が約束できる。
【0067】
なお、第2の実施形態、第3の実施形態において、第1の実施形態と同じ部分には同一符号を附してその説明を省略した。
【0068】
なお、上述した実施形態では、3段の縦型多段遠心ポンプを例に挙げたが、これに限らず、他の段数の縦型多段遠心ポンプに本発明を適用しても構わない。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、案内羽根に形成した貫通孔を通じての高圧水の注入、戻し羽根の突き出た端部による整流作用により、運転流量が少ないときにポンプ内部の気泡の排出をうながすことができ、少水量でもポンプ内部の気泡を排出させることができる。しかも、簡単な構造ですむ。
【0070】
また貫通孔を形成する構造は、貫通孔を、隣り合う案内羽根の入口端部分と対向する羽根部分に設けると、高圧水の注入によってガイド路に生ずる圧力勾配を効果的に緩和できる。また貫通孔を上側の地点に設けると、比重の比較的軽い気泡が有る地点に適切に高圧水が注入されるので、気泡を速やかに排出させることができる利点がある。
【0071】
また戻し羽根の端部を突き出させる構造は、該端部の突出量を多い運転流量を基準に定めると、多水量時の運転性能を損なわずにすむ。また端縁の形状をポンプ軸とほぼ平行な形状にすると、効果的に気泡の逆流を遮り、次段の羽根車の吸込口へ吸込みやすくできる利点がある。
【0072】
特に貫通孔を形成する構造と戻し羽根の端部を突出する構造とを併用すると、最も高い気泡の排出性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る縦型多段遠心ポンプを示す断面図。
【図2】(a)は、同ポンプのガイド部材を示す平面図。
(b)は、同じく断面図。
(c)は、同じく下面図。
【図3】案内羽根に形成した貫通孔を示す斜視図。
【図4】図1中のA線に沿う断面図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る縦型多段遠心ポンプを示す断面図。
【図6】(a)は、同ポンプのガイド部材を示す平面図。
(b)は、同じく断面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る縦型多段遠心ポンプを示す断面図。
【符号の説明】
1…ポンプ部
8…羽根車
9a…吸込口
9b…吐出口
10,13…主軸,スリーブ(ポンプ軸)
15a〜15C…ガイド部材
18…案内羽根
19…戻し羽根
20…ガイド路
21…戻し流路。

Claims (6)

  1. 上下方向に沿って複数段配設され、外周面に吐出口を有した羽根車と、
    前記羽根車の吐出口を囲むように周方向沿いに複数枚配設され、前記羽根車の周りに該羽根車の接線方向へ向かう複数のガイド路を形成する案内羽根と、
    前記案内羽根の出口端側の羽根部分に設けられ、該羽根部分を挟んだ両側を連通する貫通孔と
    を具備することを特徴とする縦型多段遠心ポンプ。
  2. 請求項1に記載の縦型多段遠心ポンプにおいて、
    前記貫通孔は、前記案内羽根の出口端側のうち、内周側に配置されて隣り合う案内羽根の入口端部分と対向する羽根部分に設けられている
    ことを特徴とする縦型多段遠心ポンプ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の縦型多段遠心ポンプにおいて、
    前記貫通孔は、各羽根車の周囲に配設されている案内羽根の全部またはその一部に形成されている
    ことを特徴とする縦型多段遠心ポンプ。
  4. 請求項1ないし請求項3にいずれかに記載の縦型多段遠心ポンプにおいて、前記貫通孔は、前記ガイド路の中心線より上側の地点に設けられることを特徴とする縦型多段遠心ポンプ。
  5. 上下方向に沿って複数段配設され、下部に吸込口に有し外周面に吐出口を有した羽根車と、
    前記羽根車の吐出口を囲むように周方向沿いに複数枚配設され、前記羽根車の周りに該羽根車の接線方向へ向かう複数のガイド路を形成する案内羽根と、
    前記羽根車間に放射状に設けられ、前記ガイド路からの圧力水を次段の羽根車の吸込口へ集水する戻し流路を形成する複数枚の戻し羽根とを具備し、
    前記各戻し羽根の中心方向側の端部、前記次段の羽根車の吸込口から内周側へ突き出るように形成されているとともに、運転流量の多いときを基準として、前記次段の羽根車の吸込口の開口縁から、該羽根車を回転自在に支持するポンプ軸の外周面と近接する地点までの範囲内で突出させてあり、
    前記各戻し羽根の中心方向側の端縁は、前記ポンプ軸の外周面とほぼ平行な形状に形成されている
    ことを特徴とする縦型多段遠心ポンプ。
  6. 上下方向に沿って複数段配設され、外周面に吐出口を有した羽根車と、
    前記羽根車の吐出口を囲むように周方向沿いに複数枚配設され、前記羽根車の周りに該羽根車の接線方向へ向かう複数のガイド路を形成する案内羽根と、
    前記羽根車間に放射状に設けられ、前記ガイド路からの圧力水を次段の羽根車の吸込口へ集水する戻し流路を形成する複数枚の戻し羽根とを具備し、
    前記案内羽根の出口端側の羽根部分が、該羽根部分を挟んだ両側を連通する貫通孔を有し、前記各戻し羽根の中心方向側の端部が、前記次段の羽根車の吸込口から内周側へ突き出るように形成されている
    ことを特徴とする縦型多段遠心ポンプ。
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