JP3963318B2 - 廃棄物処理システムと廃棄物処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は廃棄物処理システムと廃棄物処理方法に関し、詳しくは、廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムを備えた熱分解設備と、この熱分解設備から生じた炭化物を焼成用燃料としてセメント焼成部に供給するようになっている廃棄物処理システムと廃棄物処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種ゴミなどの廃棄物は焼却される他、廃棄物から得られる有価物を利用して、システム全体としての処理コストを低減する各種方法の実施が試みられている。たとえば、廃棄物を熱分解し、この熱分解によって得られた炭化物(チャー)を焼成用燃料としてセメント焼成部に供給する廃棄物処理システムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
この場合、システムでは廃棄物中に含まれる塩素成分の悪影響をできるだけ低減したり、セメント焼成プラントへの有害物の混入を防止したりする工夫などがなされている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−206747号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このシステムも熱利用の点では不十分であり、システム全体の熱効率を高めて、より処理コストを低減するには、未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、従来技術の有する問題点に鑑みて、システム全体の熱効率を一層高めて、より処理コストを低減可能な廃棄物処理システムと廃棄物処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は各請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る廃棄物処理システムの特徴構成は、廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムを備えた熱分解設備と、この熱分解設備から生じた炭化物を焼成用燃料としてセメント焼成部に供給するようになっていて、前記熱分解ドラムに加熱ガスを供給する熱分解ガス燃焼装置に、前記セメント焼成部から発生した熱源の一部を供給するようになっていることにある。
【0007】
セメント焼成部において使用した熱エネルギーは、従来、なんら利用されることなく放出されていたが、この構成によれば、その熱エネルギーを有効に利用できることになり、システム全体の熱効率を一層高めて、より処理コストを低減可能な廃棄物処理システムを提供することができるようになった。
【0008】
前記廃棄物を前記熱分解ドラムで熱分解する前に予め前記廃棄物をストックする貯留槽が設けられていて、この貯留槽が前記廃棄物を貯留する間、内部が負圧にされることが好ましい。
【0009】
内部を負圧にするには、貯留槽から排気ファンで槽内空気を吸引することなどが考えられ、吸引された空気は仮焼炉またはセメントキルン(ロータリーキルン)に取り付けられている燃焼器の空気として利用され、臭気分は熱分解される。廃棄物が生ゴミ等を含む一般廃棄物である場合、少なくない悪臭が発生し、環境に悪影響を及ぼすが、この構成によれば、臭気が外部に漏出することを確実に防止できる。
【0010】
前記熱分解ガス燃焼装置は前記熱分解ドラムからの熱分解ガスのうちの所定量の熱分解ガスを燃焼させるようになっていると共に、前記熱分解ドラムの加熱ガス排出部から排出されたガスを回収するガス回収路の途中に、前記加熱ガス排出部からのガスを中和する中和処理装置が設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、熱分解ガス燃焼装置で熱分解残渣とは別個に熱分解ガスだけを燃焼させて、低いHCl濃度の燃焼排ガスを得、しかも、この低いHCl濃度の燃焼排ガスに、中和処理したガス(加熱ガス排出部からのガス)を混合させて加熱ガスを生成するので、加熱ガス受入部側に供給する加熱ガス中のHCl濃度を確実に低くすることができる。その結果、加熱ガス供給部や熱分解ドラムの加熱管などの腐食を効果的に抑制することができる。
【0012】
前記セメント焼成部が、セメント原料を予熱するプレヒーター部と、このプレヒーター部により予熱されたセメント原料を焼成する仮焼炉と、この仮焼炉により仮焼されたセメント原料を主焼成してクリンカを製造するロータリーキルンとこれに接続するクリンカクーラーとを有して構成されており、このクリンカクーラーから発生した熱源の一部を前記熱分解ガス燃焼装置に供給することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、高い熱効率で、かつ有害物の混入を確実に防止できるセメント焼成を実現することができ、高品質かつ低コストのセメント焼成を可能にする。
【0014】
前記熱分解ガス燃焼装置から発生した高温の熱エネルギーの一部を、前記仮焼炉に送給することが好ましい。
【0015】
熱分解ガスは冷却されると含まれているタールが液化し、配管内部に付着して、これにチャー等も付着して配管内部の詰まりを生じさせて種々の障害をもたらす要因となるが、この構成によれば、熱分解ガスが燃焼し高い温度に維持されてタール分が燃焼したりするので、かかる障害を確実に回避できるようになり、操業上都合が良く、保守期間を長くできる。つまり、熱分解ガス燃焼装置は、操業時に、通常、約1000℃程度で熱分解ガスを燃焼させるので、熱分解ガス中に含まれるタール分は確実に燃焼・分解されている。
【0016】
前記セメント焼成部を構成する、クリンカを製造するロータリーキルンに、塩素分を排出する塩素バイパスラインが設けられていることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、クリンカに混入する塩素分の増加を一層効果的に防止でき、高品質なクリンカを製造できる。
【0018】
又、本発明に係る廃棄物処理方法の特徴構成は、熱分解ドラムを備えた熱分解設備を用いて、廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解すると共に、熱分解の際に生じる炭化物を焼成用燃料としてセメント焼成部に供給するようにしている方法において、前記セメント焼成部から発生した熱源の一部を、前記熱分解ドラムに加熱ガスを供給する熱分解ガス燃焼装置に送給することにある。
【0019】
この構成によれば、システム全体の熱効率を一層高めて、より処理コストを低減可能な廃棄物処理方法を提供することができる。
【0020】
前記廃棄物を前記熱分解ドラムで熱分解する前に予め前記廃棄物をストックする貯留槽を設けて、この貯留槽が前記廃棄物を貯留する間、内部を負圧になるようにしていることが好ましい。
【0021】
前記熱分解ガス燃焼装置により、前記熱分解ドラムからの熱分解ガスのうちの所定量の熱分解ガスを燃焼させると共に、前記熱分解ドラムの加熱ガス排出部から排出されたガスを回収するガス回収路側の途中で、前記加熱ガス排出部からのガスを中和するようにしていることが好ましい。
【0022】
前記熱分解ガス燃焼装置から発生した高温の熱エネルギーの一部を、前記セメント焼成部を構成する仮焼炉に送給することが好ましい。
【0023】
前記セメント焼成部を構成する、クリンカを製造するロータリーキルンに、塩素バイパスラインを設けて塩素分を排出するようにすることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、混入する塩素分の少ない高品質なクリンカを製造できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る廃棄物処理システムの概略全体構成を示す。家庭用ゴミなどの一般廃棄物や、カーシュレッダーダスト、電化製品などの産業廃棄物のような各種廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムを備えた熱分解処理部と、この熱分解処理部から生じた炭化物を焼成用燃料として供給するセメント焼成部から構成されている。
【0026】
廃棄物Aは内部を常時負圧に維持された貯留槽1にストックされており、この廃棄物Aを逐次熱分解ドラム2に投入する。つまり、貯留槽1は廃棄物の臭気が外部に漏出し難いように、廃棄物を貯留している間は、内部が排気ファン(図示略)などによって排気されており、この排気は配管3を通って後述するセメント焼成部の仮焼炉7に導入されて利用されるようになっている。又、廃棄物Aを熱分解ドラム2に投入する際、廃棄物の性状、種類などによっては、破砕機(図示略)により細かく破砕される。
【0027】
その後、廃棄物Aは搬送装置(図示略)を介して、あるいは介さずに直接、熱分解ドラム2に投入され、熱分解ガス燃焼装置の1種である熱分解ガス燃焼炉4から供給される加熱ガスにより、熱分解ガスと熱分解残渣とに分解される。
【0028】
すなわち、この加熱ガスで廃棄物Aを間接的に加熱しながら、廃棄物Aを無酸素あるいは低酸素雰囲気で約450°Cの熱分解ガスと熱分解残渣とに熱分解する。熱分解残渣は残渣排出部13から排出されて後述する分別装置5に送られ、金属類、チャー、その他に分別されると共に、熱分解ガスは、熱分解ガス燃焼炉4に送られて熱効率を高めるようにされている。
【0029】
熱分解ドラム2の上流側の加熱ガス排出部14から排出されるガスは、ガス回収路である回収配管11を通して集塵器10に送給され脱塵、脱塩素された排ガスは熱分解ガス燃焼炉4に送られ、一部は煙突から排出される。
【0030】
ここで、本実施形態では、排ガス中に含まれる塩化水素などの酸性ガスがそのまま循環する弊害を効果的に防止するため、熱分解ドラム2から発生する排ガスを中和処理してから集塵器10に送給する中和処理装置が設けられている。つまり、配管11の途中から配管内に、貯槽12に貯留されている微細化された炭酸水素ナトリウム(重曹)を送給ファン15によって送り込み、排ガス中の酸性成分を中和しつつ集塵器10に排ガスを送給するようにしている。これにより、塩化水素濃度を50ppm以下程度にすることができ、システムを構成する各種設備や配管などの耐久性を著しく改善できる。又、貯槽12から重曹を、送給直前に粉砕機で粉砕しながら直ちに配管11内へ送り込み可能に、送給ファン15に粉砕機能を備えさせてもよい。このようにすると、中和剤の活性化が促進されて都合がよい。そして、集塵器10により捕集されたダストは下部から取り出されるようになっている。尚、図1でMは重曹を送り出すフィーダー16を駆動するモータである。
【0031】
分別装置5には、図示はしないが、振動フィーダ、冷却振動コンベア等の搬送装置を介して熱分解残渣が送給されるようになっており、ここでは、金属類の内、鉄、アルミニウム等を磁選機、アルミ選別機(図示せず)などで選別して個別のコンテナ等に回収すると共に、残りの熱分解残渣を適宜粉砕して、貯留槽6にチャーを貯留する。
【0032】
貯留されたチャーは、貯留槽6からセメント焼成部を構成する仮焼炉7のバーナー7aに、あるいはロータリーキルン8の後端側に接続されているクリンカ製造部9のバーナー9aに焼成用燃料として供給される。燃料としては、チャーに加えて、石炭(微粉炭)が補充・供給されるようになっている。ここで、各バーナー7a,9aへチャーや石炭を送給する直前の位置に粉砕装置を設けて、粉砕後直ちにチャーや石炭を各バーナー7a,9aに送給するように構成してもよい。更に、チャーと石炭の混合割合を調整する調整機を設けていてもよい。
【0033】
次に、セメント焼成部について説明する。
このセメント焼成部は、図1に示すように、セメント原料を予熱するプレヒーター部を構成する複数のサスペンションヒーター17と、このサスペンションヒーター17により予熱されたセメント原料を焼成する仮焼炉7と、この仮焼炉7により仮焼されたセメント原料を主焼成してクリンカを製造するロータリーキルン8とこれに接続するクリンカクーラー9とを有して構成されている。もっとも、仮焼炉7は必ずしも必要ではない。
【0034】
複数のサスペンションヒーター17はいずれもサイクロンからなり、上方から順次セメント原料を予熱して下段のサスペンションヒーター17に送給するようになっていて、図1では4段に構成されているが、これに限定されるものではない。仮焼炉7では、予熱されているセメント原料をバーナー7aで加熱して仮焼するようになっていると共に、熱分解ガス燃焼炉4から高温(約1000℃)の燃焼ガスが送給されるようになっている。熱分解ガスは冷却されると含まれているタールが液化し、配管内部に付着して、これにチャー等も付着すると配管内部の詰まりを生じさせ種々の障害をもたらす要因となるが、熱分解ガス燃焼炉4から送られる熱分解ガスは燃焼され高温に維持されているので、タール分は燃焼し、かかる障害が生じることはなく、有効に利用できる。プレヒーター部から発生する排ガスは、必要に応じて集塵器(図示略)による処理をされて煙突から放出される。
【0035】
予熱されたセメント原料は、ロータリーキルンの入口部8aに投入され、順次ロータリーキルン8の内部を通って後端側に向けて送られ、ここでセメント原料は十分に焼成されてクリンカが製造される。クリンカクーラー9には、冷却空気が送給されるようになっていて、熱交換され熱エネルギーを付与された加熱空気(約250℃程度に加熱されている)は、その一部が仮焼炉7に送給されると共に、上述したように、熱分解ガス燃焼炉4に一部が送給され、システム全体の熱効率の向上に寄与するようになっている。
【0036】
更に、ロータリーキルンの入口部8aからは塩素バイパスライン18が設けられており、ロータリーキルン8内部の排ガスと共にダストを抽出して排出し、これらを途中冷却装置19を通して冷却しつつ集塵器20で集塵処理して、煙突21から排出するようにしている。塩素バイパスライン18を設けることによって、一層クリンカに混入する塩素分の増加を防止でき、高品質なクリンカを製造できるようになっている。
【0037】
〔別実施の形態〕
(1)中和剤として重曹を用いた例を示したが、他の中和剤、例えば、炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、天然ソーダ等であってもよい。
【0038】
(2)中和剤吹込み手段としては、吸引ファンに限定されるものではなく、押込ファンでもよく、又、集塵手段もパルスジェット式あるいは逆洗式などのバグフィルター、電気集塵器などを使用でき、特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る廃棄物処理システムの概略全体構成図
【符号の説明】
2 熱分解ドラム
4 熱分解ガス燃焼装置
6 貯留槽
7 仮焼炉
8 ロータリーキルン
9 クリンカークーラー
11 ガス回収路
14 加熱ガス排出部
17 プレヒーター部
18 塩素バイパスライン
A 廃棄物
Claims (11)
- 廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解する熱分解ドラムを備えた熱分解設備と、この熱分解設備から生じた炭化物を焼成用燃料としてセメント焼成部に供給するようになっている廃棄物処理システムにおいて、
前記熱分解ドラムに加熱ガスを供給する熱分解ガス燃焼装置に、前記セメント焼成部から発生した熱源の一部を供給するようになっていることを特徴とする廃棄物処理システム。 - 前記廃棄物を前記熱分解ドラムで熱分解する前に予め前記廃棄物をストックする貯留槽が設けられていて、この貯留槽が前記廃棄物を貯留する間、内部が負圧にされる請求項1の廃棄物処理システム。
- 前記熱分解ガス燃焼装置は前記熱分解ドラムからの熱分解ガスのうちの所定量の熱分解ガスを燃焼させるようになっていると共に、前記熱分解ドラムの加熱ガス排出部から排出されたガスを回収するガス回収路の途中に、前記加熱ガス排出部からのガスを中和する中和処理装置が設けられている請求項1又は2の廃棄物処理システム。
- 前記セメント焼成部が、セメント原料を予熱するプレヒーター部と、このプレヒーター部により予熱されたセメント原料を焼成する仮焼炉と、この仮焼炉により仮焼されたセメント原料を主焼成してクリンカを製造するロータリーキルンとこれに接続するクリンカクーラーとを有して構成されており、このクリンカクーラーから発生した熱源の一部を前記熱分解ガス燃焼装置に供給する請求項1〜3のいずれか1の廃棄物処理システム。
- 前記熱分解ガス燃焼装置から発生した高温の熱エネルギーの一部を、前記仮焼炉に送給する請求項4の廃棄物処理システム。
- 前記セメント焼成部を構成する、クリンカを製造するロータリーキルンに、塩素分を排出する塩素バイパスラインが設けられている請求項1〜5のいずれか1の廃棄物処理システム。
- 熱分解ドラムを備えた熱分解設備を用いて、廃棄物を間接的に加熱して熱分解残渣と熱分解ガスに熱分解すると共に、熱分解の際に生じる炭化物を焼成用燃料としてセメント焼成部に供給するようにしている廃棄物処理方法において、
前記セメント焼成部から発生した熱源の一部を、前記熱分解ドラムに加熱ガスを供給する熱分解ガス燃焼装置に送給することを特徴とする廃棄物処理方法。 - 前記廃棄物を前記熱分解ドラムで熱分解する前に予め前記廃棄物をストックする貯留槽を設けて、この貯留槽が前記廃棄物を貯留する間、内部を負圧になるようにしている請求項7の廃棄物処理方法。
- 前記熱分解ガス燃焼装置により、前記熱分解ドラムからの熱分解ガスのうちの所定量の熱分解ガスを燃焼させると共に、前記熱分解ドラムの加熱ガス排出部から排出されたガスを回収するガス回収路側の途中で、前記加熱ガス排出部からのガスを中和するようにしている請求項7又は8の廃棄物処理方法。
- 前記熱分解ガス燃焼装置から発生した高温の熱エネルギーの一部を、前記セメント焼成部を構成する仮焼炉に送給する請求項7〜9のいずれか1の廃棄物処理方法。
- 前記セメント焼成部を構成する、クリンカを製造するロータリーキルンに、塩素バイパスラインを設けて塩素分を排出する請求項7〜10のいずれか1の廃棄物処理方法。
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