JP3962789B2 - 磁性粒子を利用した混合/分離装置及びその方法 - Google Patents

磁性粒子を利用した混合/分離装置及びその方法 Download PDF

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Description

発明の背景
1.発明の分野
本発明は、対象物質を非磁性液体試験媒体(試験媒液)から単離(isolate)させる目的に利用する、磁性粒子(magnetic particle)の混合(mixing)及び分離(separation)の装置とその方法とに関する。
2.関連技術の説明
磁性粒子と親生体反応(biospecific affinity reaction)の利用とに基づく生体分子(biomolecule)及び生体細胞の磁気分離(magnetic separation)は、その選択性、単純性並びに迅速性の観点から優れてた技術である。その分離技術は分析/製造生物工学(analytical and preparative biotechnology)において非常に有用であり、細胞、プロテイン、核酸シークエンス(sequence)等の標的物質(target substance)の生物検査(bioassay)や単離の目的での利用度が増大している。
本明細書にて使用される用語”レセプター(receptor)”とは、与えられたリガンド(ligand)に対して親生体結合性(biospecific binding affinity)を有したいかなる物質または物質群のことであり、他の物質を実質的に排除している。このような親生体結合反応(biospecific binding affinity reaction)をするレセプターには、抗体(単分枝系(monoclonal)と多分枝系(polyclonal)の両方)、抗体断片(antibody fragment)、酵素、核酸、レクチン等がある。用語”リガンド”とは抗原(antigen)、ハプテン(hapten)並びに少なくとも1つの特徴的な決定子(determinant)あるいはエピトープ(epitope)を有した種々な細胞関与構造体(cell associated structure)のことであり、それら物質はレセプターによって生体的に認知され、結合できるものである。用語”標的物質”とは親生体結合ペア(biospecific binding affinity pair)、すなわち、ペアとなった物質、または親相互反応性を有した1物質と1構造体のいずれか一方であって、生体細胞あるいは細胞成分、生体リガンド(biospecific ligand)及びレセプターのごときを含んだものである。
ここで使用する親分離性(affinity separation)とは媒液内で他の物質と混合された標的物質が親生体結合反応によって固体相(solid phase)の表面に結合されるような公知技術のことである。標的物質の特定分子あるいは特定構造を有しない物質は固体相には結合せず、結合した物質の分離をさせるように別離(remove)させたり、その逆ステップを実施することが可能である。小型粒子、特に固体相としてのポリマー球体粒子(polymeric spherical particle)は非常に有用であることが証明されている。なぜなら、それらは生体分子で被覆(coating)することができ、非常に広い表面積を提供し、優れた反応速度(reaction kinetics)を提供するからである。結合標的物質(結合材料)を含む粒子の媒液(遊離材料(free material))からの分離は濾過または重力効果を利用して、すなわち、沈澱または遠心力を利用して達成が可能である。
結合/遊離画分(bound/free fraction)の分離は、磁界を利用して粒子結合物質(particle bound substance)を分離させる磁性化可能粒子(magnetizable particle)を利用することで非常に単純化される。小型の磁性化可能粒子は当分野では周知であり、免疫学及び他の親生体反応が関与する生体分離での利用も周知である。小型磁性化可能粒子は一般的に2つに分類される。一方は永久的に磁化された粒子であり、他方は磁界にさらされたときだけ磁化される粒子である。後者は強磁性(paramagnetic)あるいは超強磁性(superparamagnetic)粒子と呼称され、一般的には永久磁化粒子よりも好まれる。
多様な適用のために、強磁性粒子の表面は、抗体、レクチン、オリゴ核酸塩、あるいは他の生体反応性分子(bioreactive molecule)のごとき適当なリガンドまたはレセプターにて被覆処理されることがあり、他の物質との混合体内で標的物質と選択的に結合できるようにされる。小型磁化可能粒子あるいはビーズ(bead)の例は、1980年10月28日に発行された米国特許第4,230,685号、1985年11月19日に発行された米国特許第4,554,088号、1986年12月9日に発行された米国特許第4,628,037号に開示されている。強磁性粒子の利用は、バイオ/テクノロジー誌11:60−63(1993年)のB.ハウカネスとC.クバムの”生物検査における磁性ビーズの利用”、1984年1月14日発行のランセット誌のページ70から73にかけてのJ.G.トレリーベン他の”磁性極小球に接合された単分枝系抗体での骨髄からの神経芽腫細胞の別離”、トランスプランテーション誌43:366−71(1987年)のF.バートダル他の”ヒトの骨髄からのT型リンパ球の除去”、免疫学のスカンジナビアンジャーナル誌22:207−16(1985年)のT.リー他の”ヒトの単分枝系細胞の迅速特定分別のための磁性単一サイズポリマー粒子”、並びに、マサチューセッツ州ナチックのイートン出版社編集によるM.ウーレン他の”生体磁気分離の進歩”に掲載されている。
磁気分離手法は典型的には、サンプルを媒液内で強磁性粒子と混合させて親反応性によって標的物質を結合させ、次に磁界を適用することでそのサンプル媒液から結合粒子/標的複合体を分離させることが関与する。コロイド状である粒子以外の全ての磁性粒子はやがて沈澱する。従って、その媒液は、親生体結合反応が生じるだけの充分に長い間、分散状態(suspending)としておくためにある程度の攪拌が必要である。周知な攪拌方法には、部分的に満たされた容器の振混(shaking)、渦混(swirling)、揺混(rocking)、回混(rotation)等がある。場合によっては、標的物質と強磁性粒子との親結合性は比較的に弱く、媒液内での過激な攪拌によって反応が妨害されることがある。あるいは、細胞、細胞断片、酵素複合体等の生体標的物質は非常に脆く、過激な攪拌で反応妨害が発生したり、変性したりすることがある。
過激な攪拌は、生体磁気分離の従来技術で利用される装置及び方法に付随するいくつかの弱点や欠陥の1つに過ぎない。粒子結合標的複合体を媒液から分離するのに利用される磁気分離装置の特定構造は磁性粒子の特性とサイズとによって異なる。0.1から10μmのサイズ範囲の強磁性粒子は商業的に入手が可能な磁気分離装置によって容易に別離することができる。このような磁気分離装置の例は、ニューヨーク州のレークサクセスのダイナルインク社が製造するダイナルMPCシリーズの分離機、マサチューセッツ州ケンブリッジのパーセプティブダイアグノスチックス社が製造するバイオマグ分離機シリーズの装置、及び米国特許第4,895,650号に紹介されている磁気分離ラックである。これらの装置はテスト媒液(test medium)を入れる容器の外部に配置された永久磁石を利用しており、分離のみを提供する。親結合反応のためのテスト媒液内での強磁性粒子の混合は別のステップで実施されなければならない。例えば、ダイナルMPCシリーズの分離機はテスト媒液の攪拌には別体の混合装置であるダイナルサンプルミキサーを必要とする。このプロセスは混合、洗浄(washing)及び分離の各段階でモニターしなければならず、オペレータからの妨害が多くなる。従って、これら装置の効率はオペレータの技術と能率とによって影響を受ける。
1990年3月20日に発行された米国特許第4,910,148号は健全細胞から癌細胞を分離する装置と方法とを解説している。免疫反応性強磁性粒子と骨髄細胞とが揺混プラットフォーム上で媒液を攪拌することで混合される。それら粒子が癌細胞と結合した後は、そのプラットフォームの外部に設置された磁石によって粒子は媒液から分離される。このような混合は液動を最低限に抑えるが、粒子と標的物質との充分な接触は提供しない。さらに、この装置の利用は比較的に多量のサンプルからの細胞分離に限定される。
1993年8月24日に発行された米国特許第5,238,812号は、親生体結合反応を促進させるためにミキサーとしてU形管構造体を採用して急速混合させる複雑な装置を説明している。このU形管は5秒から15秒間、急速に揺混あるいは回混され、テスト媒液内で磁性粒子を混合する。次に磁石はU形管の底部に近接され、これら磁性粒子が分離される。前記の特許第5,238,812号に記述されているように、この装置の利用は極小容積のテスト媒液(1000μl以下)の処理に限定される。
1994年8月9日に発行された米国特許第5,336,760号は、1個あるいは複数の磁石を容器に近接させて配置した状態でプラットフォームに装着されたチャンバーを有しており、そのプラットフォームをギヤとモータとの複雑機構の装置で回転させる混合/磁気分離装置を解説している。免疫反応強磁性粒子はテスト媒液内にて、まずステンレススチール製の”キーパー”をチャンバーと磁石との間に配置してそれを磁界から遮断するように設置し、次にプラットフォームを垂直ポジションと水平ポジションとの間で回転させることで混合される。テスト媒液内の粒子はチャンバーの上下回転運動(end-over-end movement)で混合され、標的物質の結合が促進される。この混合の後に、”キーパー”は取り出され、磁性粒子は適用されている磁界によって補足される。この特許第5,336,760号は混合/分離のための1体装置の便利性を提供するが、複雑な機構を必要とする。さらに、上下回転運動による媒液の攪拌は比較的に高浮力の粒子を効率よく混合せず、液体の揺動は標的物質をせん断(shear off)または損傷させがちである。
1992年5月5日に発行された米国特許第5,110,624号は磁化可能孔質粒子の製法に関するものであり、細胞溶解質(cell lysate)からプロテインを単離するための流通磁力安定液化ベッド(MSFB:flow-through magnetically stabilized fluidized bed)カラム(column)を解説している。このMSFBカラムは磁化可能粒子のベッドで緩やかにパックされており、このカラムを通過する液流と平行に走る固定磁界の創出手段を備えている。これら粒子は溶液の流量と磁力とを調整することでMSFB内に維持される。この特許第5,110,624号に記述されているように、MSFBは粒子ベッドの不全あるいは液流の詰まりを防止するためにベッドの間隙容積を増加させているだけである。MSFBは優れた混合を提供するが、流量と磁力の正確な調整により、流速と磁気引力の組み合せ効果を粒子に対する重力効果と正確にバランスさせるという複雑な技術を必要とする。しかしMSFBのデザインは小テスト容積では最良化できず、生物検査や細胞分離等への適用にも最良化させることができない。よって、その利用には限界がある。
これらの装置と方法の主たる弱点は従来技術に関する前述の内容から明確である。現存する装置と方法とは磁気分離においていくらかの利点を提供するが、これら周知の方法の利用は限定されたものであり、別体の、あるいは機械的に複合された混合機構を必要とし、プロセスには様々な束縛及び非効率性が存在する。よって、比較的に単純な構造と操作性で、大容量と小容量の両方のテスト媒液の処理に利用が可能で、複数のテストサンプルを同時的に処理できるような磁気分離装置の提供が望まれる。さらに、大きな液体揺動を生じさせずにテスト媒液内での強磁性粒子の混合効率を最大にするような1体式装置での混合/分離処理法の提供が望まれる。
発明の概要
本発明によれば、標的物質のテスト媒液からの親和分離(affinity separation)は、表面固定リガンド(surface immobilized ligand)あるいはレセプターを有した磁性粒子を混合し、その磁性粒子と標的物質との間の特定親結合反応を促進させることで実施される。適当な容器内での磁性粒子を有したテスト媒液は本発明装置内に取り外し可能に搭載され、磁界グラジエント(magnetic field gradient)がそのテスト媒液内に創出される。このグラジエントは磁性粒子を不動テスト媒液に対して相対的に移動させる。採用される本発明の実施例によっては、磁力源あるいは容器の移動が開始され、テスト媒液内での磁性粒子の混合は、親和反応(affinity reaction)による標的物質の最良結合が確実となる時間だけ連続される。その後に磁石あるいは容器の動きは停止され、磁性粒子は磁石に最近接した容器の側壁で固定される。残余のテスト媒液は排除されるが、磁性粒子は容器の側壁に保持されたままであり、望む他の処理に供される。
【図面の簡単な説明】
本発明の目的と特徴とは新規なものであると信じられ、添付の「請求の範囲」において特定されている。その準備と操作手法とに関して本発明はその他の目的と利点と共に、添付の図面を利用した以下の詳細な説明によってさらに詳細に理解されるであろう。
図1は本発明の1装置の斜視図であり、磁性粒子を含んだテスト媒液が部分的に満たされた可動容器に近接して配置された固定磁石が含まれている。
図2は本発明の別装置の斜視図であり、磁性粒子を含んだテスト媒液が部分的に満たされた固定容器に近接して配置された可動磁石が含まれている。
図3は本発明の1装置の斜視図であり、対応する固定容器に近接して配置され、通常の機構で回転式に移動される可動磁石の列が含まれている。
図4は本発明の別装置の斜視図であり、通常の機構で回転される対応する回転容器に近接して配置された固定磁石の列が含まれている。
図5A、図5B、図5C、図5D、図5E、図5Fは本発明の方法のステップを略式に図示しており、図2の磁気混合/分離装置の援用による磁性粒子を利用した標的物質の磁気混合/分離をさせるものである。
図6は本発明の1実施例によるテスト媒液内の磁界グラジエント”キャビティ(cavity)”の斜視図であり、容器に近接して配置された1体の永久磁石が含まれている。
図7は本発明の1実施例によるテスト媒液内の磁界グラジエント”キャビティ”の斜視図であり、容器の反対側に配置された2体の磁石が含まれている。
図8は本発明の1実施例によるテスト媒液内の多重磁界グラジエント”キャビティ”の斜視図であり、容器に近接して配置された6体の永久磁石でなる垂直アレイが含まれている。
図9は本発明の1実施例によるテスト媒液内の多重磁界グラジエント”キャビティ”の斜視図であり、容器の反対側に配置された永久磁石で成る2体の垂直アレイが含まれている。
図10Aは本発明の1装置の略式上面図であり、容器の反対側に配置された2体の電磁石が含まれている。
図10Bは本発明の1装置の略式上面図であり、容器を囲む電磁石リングが含まれている。
図11Aと図11Bは容器の反対側に配置された2体の磁石で発生された容器内の磁力線を図示している。
好適実施例の詳細な説明
以下の説明は、当業者に本発明を利用を可能にすることをも目的とし、本発明の実施のために本発明者により最良であると考えられる態様を詳細に記述している。しかしながら、それらの多様な改良は当業者にとって容易であろう。なぜなら、本発明の一般的な原理は、磁界手段により磁性粒子に移動力を付与することで磁性粒子を含むサンプル液を混合させる装置と方法とを提供するように定義されているからである。
本発明は、磁性粒子を利用した標的物質のテスト媒液からの親和式分離(affinity-based separation)のための改良装置と改良方法とを提供する。本発明は新規な混合システムを含んでいる。この混合システムは、テスト溶液が入れられた容器の外部に配置された磁気手段によって比較的に不動であるテスト溶液内で磁性粒子を混合するものである。本発明は、1体装置内に提供された共通の磁気手段にて混合処理と分離処理との両方の処理を実施する装置も併せて提供し、その利用をさらに単純化して実用的にしている。
本発明は、テスト媒液からの標的物質の迅速で、しかも効率的であって、明瞭な分離を可能にするものであり、例えば、検査反応混合物(assay reaction mixture)、細胞培養体(cell culture)、体液等から対象の有機、生化学、あるいは細胞成分を親磁気分離(affinity magnetic separation)するのに特に有用である。
本発明の装置は、テスト媒液を入れる少なくとも1体の容器と、そのテスト媒液内に磁界グラジエントを発生させる外部磁気手段と、そのテスト媒液内での磁性粒子の磁力運動創出手段とを含んでいる。この容器は好適には円筒状で、ガラスあるいはプラスチック等の非磁性材料製であり、望む形態の混合と分離とを実行するチャンバーを提供する。好適には、この容器は磁性粒子を含んだテスト媒液を受領する少なくとも1個の開口部を有している。
この磁気手段はテスト媒液内で磁界グラジエントを発生させるための容器外部に配置された1個あるいは複数の永久磁石あるいは電磁石を含む。好適実施例においては、この磁気手段は稀土類の合金製の永久磁石であり、テスト媒液の望む断面に磁界グラジエント”キャビティ”を提供する。”キャビティ”なる用語が使用されているが、これは磁力グラジエントがキャビティ内に包含されているかのように磁性粒子を封閉あるいは濃縮させるように作用するからである。
このキャビティの磁力は磁石に近接した容器の内面部分(磁力のローカス(locus))のほうがキャビティの他の箇所よりも強力であり、キャビティの外側では無視できる程度の強度となる。その結果、このローカス近辺の磁性粒子は離れた磁性粒子よりも強力に磁力の影響を受ける。好適実施例によっては、2体の磁石が容器の反対側に好適には同性磁極が対面した状態で配置され、磁力線を歪め、1キャビティを形成する2部の磁界グラジエントと2部のローカスの磁力を発生させる。このようなアレンジは後述する磁性粒子の攪拌に特に有用である。特に有用なアレンジにおいては、磁石の垂直アレイを含む構造体が容器の外部に配置され、テスト媒液内の望む断面に多層の磁界グラジエントキャビティを提供する。
本発明はテスト媒液を比較的に不動の状態に保ちながら、テスト媒液内で磁性粒子の攪拌と混合とを実行する2種類の方法を提供する。
(1)固定磁界グラジエントキャビティを定義する固定磁石に対して容器を回転させてテスト媒液内で磁性粒子を運動させ、本質的には不動であるテスト媒液に対して容器と磁気手段との間の角ポジション変化によって励起される磁性粒子の角運動(angular movement)を促す。
(2)固定容器周囲に移動する磁界グラジエントキャビティを定義する磁石を回転させてテスト媒液内で磁性粒子を運動させ、本質的には不動であるテスト媒液に対して容器と磁気手段との間の角ポジション変化によって励起される磁性粒子の角運動を促す。
テスト媒液内の磁界グラジエントキャビティは磁性粒子を閉封し、容器と磁石との間の相対的角ポジションは変動するので磁性粒子の角運動が促されて大容量のテスト媒液と接触が促進され、標的物質との接触が促進される。磁性粒子の攪拌は、図11Aに示される同類磁極が対面している状態で容器の反対側に設置された2体の磁石の場合と同様に磁力線を歪める磁界グラジエントの移動キャビティ内によって大きく改善される。
2体の磁石で発生されるこのような磁力線は互いに反発する。このキャビティは高い磁気吸引力と、実質的には磁界が存在しない非常に狭い領域(中性ゾーン)を中央に有した対応するローカスを有した2部の大磁界にその特徴を有している。この中性ゾーンは非常に狭いため、ブラウン運動、重力作用、熱作用等で励起される磁性粒子のランダム運動によってほとんどの磁性粒子はキャビティ内の2磁界のいずれか側内に押込められる。磁石と容器との間の相対的角ポジションが連続的に変動するような状況下では、反対向きの磁力線は磁性粒子を拡散させ、1体の磁石の場合よりもさらに効率的に混合させる。しかし、図11Bに示すように2体の磁石が逆極状態であれば、磁力線は互いに引き付け合い、キャビティは高い磁気吸引力と、実質的に磁界が存在しない大領域(中性ゾーン)を中央に有した対応するローカスを有した2部の比較的に小さな磁界にその特徴を有する。このようなアレンジは状況によっては有用であるが、大きな中性ゾーンと互いに引き合う磁力線とは一般的に不利である。
従来の混合方法とは異なり、本発明の混合システムは液体を大きく乱動させずに、すなわち、テスト媒液を比較的に不動の状態に保ちつつテスト媒液内で磁性粒子を攪拌させる。このような混合によって、磁性粒子の親和表面(affinity surface)と標的物質との間には高い接触機会が提供されて親結合が促進され、その親和結合力よりも小さな値の接触表面での水力せん断力(hydrodynamic shearforce)が維持され、変性や他の損傷を引き起こさせない。本発明の実施に利用される混合機構は微小磁性粒子に対して特に有用であり、過去にない程度の好操作効率を提供する。
特定の親磁気分離によって得られた標的物質の純度と獲得量とは、標的物質と磁性粒子の表面との間の親結合反応の促進に採用された混合手法によってほぼ決定される。結合反応はその親和表面と標的物質との緊密な接触を要求する。反応効率はこれら両者の衝突頻度と磁性粒子の表面改新性(surface renewal)とによってほぼ決定される。表面改新とは親和表面の薄い媒液層の剥離と、タンクからの新鮮な媒液でのその交換のプロセスである。従って、親和表面の水力せん断力を注意深くバランスさせ、親結合を弱化せずに媒液層を効率よく剥離させる必要がある。テスト媒液の攪拌に頼る従来の混合方法ではこの達成は困難であった。しかし、本発明によれば、高い衝突頻度と、実質的にバランスされたせん断力とは、本質的には不動であるテスト媒液内での磁性粒子の制御下での運動を磁気的に促すことで達成が可能である。
磁石と容器との間の相対的な角ポジションが変動すると、容器内面の最大磁力箇所は継続的に移動し、磁性粒子の角運動を促す。テスト媒液は容器内面に対して相対的不動状態に保たれる。磁性粒子のこのような角運動は、粒子の親和面部分を標的物質と最良に接触させるようにテスト媒液内で磁性粒子を非常に効果的に攪拌させる。好適には約10から100回転/分のゆっくりとした回転速度では、容器内のテスト媒液は不動状態であると考えられる。磁性粒子の表面に作用する水力せん断力は本質的にはテスト媒液内での磁性粒子の運動速度によって規定されるので、角運動速度の調整によって制御が可能である。
本発明によるテスト媒液からの磁性粒子の分離は、前述のように磁石あるいは容器の回転を停止させ、磁性粒子の攪拌を終了させることで実行される。容器あるいは磁石が固定ポジションにあるとき、テスト媒液内の磁界グラジエントのキャビティ内の磁性粒子は磁石に最も近接した容器内壁に引き付けられて固定される。混合と分離とを1体の磁力源で実行させることで、本発明はプロセス全体を非常に単純化させ、併せて装置を単純化して製造コストを下げる。
本発明による磁気混合/分離は、分離のための親生体結合反応が関与する多彩な実験と臨床での有用性を有している。このような利用では、磁性粒子は、テスト媒液内で対象物質と結合する特定の親結合ペアの1つ、すなわちリガンドあるいはレセプターで被覆された表面を有したものである。
そのような親生体結合反応は生体サンプル内の幅広い標的物質の決定(determination)と単離のために採用が可能である。標的物質とは細胞、細胞成分、細胞サブ集団(成熟核及び原始核の両方)、バクテリア、ウィルス、寄生体、抗原、特定抗体、核酸シークエンス等である。よって、本発明の装置と方法は、例えば、骨髄からの腫瘍細胞の分析と単離、末梢血液(peripheral blood)あるいは骨髄からのT型リンパ球の分析と単離、末梢血液からのCD2、CD4、CD8及びCD19のごときリンパ球サブセットの分析と単離、単核細胞、顆粒球等の細胞の分析あるいは単離のための免疫細胞(immunospecific cell)分離を実行するのに使用が可能である。多彩な細胞タイプの別離は同様な方法で実行が可能である。本発明は、食品、培地、体液等からの種々なバクテリアや寄生体の分離あるいは分析にも使用できる。同様に、本発明の装置と方法は、免疫検査と核酸プローブ検査(nucleic acid probe assay)のごとき生物検査や、原細胞溶解質(crudecell lysate)からの直接的なDNAやmRNAの単離と検出、及びプロテインの単離と検出とにも利用が可能である。
本発明の実施に有用なタイプの磁性粒子は非コロイド性で強磁性である。すなわち、磁性化が可能ではあるが磁界が除かれると磁力を保持することができないものである。このような磁性粒子は、典型的には磁界による補足が可能な少量の、例えば磁鉄鉱のような鉄系酸化物、転移金属あるいは稀土類元素を含んだポリマー材料である。本発明の実施に有用な強磁性粒子は、特定の親結合ペア、すなわち、リガンドあるいはレセプターの一方を吸収または共有結合させる適当な結合表面機能を提供するものであり、典型的には0.1から10μmの径を有している。適した強磁性粒子はニューヨーク州レークサクセスのダイナルインク社、マサチューセッツ州ケンブリッジのパーセプティブダイアグノスチックスインク社、カリフォルニア州のサンレアンドロのコーテックスバイオケムインク社から商業的に入手することが可能である。好適な磁性粒子はダイナルインク社が商品番号M−280及びM−450として販売するものであり、それぞれ2.8μmと4.5μmの均等な径を有しており、均質に拡散された磁化可能材料を含有している。これらビーズはポリスチレンの薄殻で被覆されており、種々なリガンドまたはレセプターの固定用に定義された表面を提供する。このような固定化はどのような公知技術を利用しても可能であるが、物理的吸収あるいは共有結合のいずれかの採用が好ましい。
磁界グラジエントは1体または複数体の永久磁石あるいは電磁石で発生させることができる。永久磁石は、研究所スケールでの操作に採用されるようなほとんどの混合/分離装置や、臨床診断で採用されるような自動装置に好適である。しかし、薬剤製造等の産業用に採用されるような大型装置あるいは自動装置は電磁石を使用するほうが有利である。なぜなら、多様な処理ステップを実行するための磁界グラジエントの自動制御下での変更が容易だからである。
本発明の実施に有用な永久磁石は磁性粒子の大部分を引き付けるだけの表面磁力を持たなければならない。1から数十kG(キロガウス)の範囲の表面磁力を有した稀土類合金の永久磁石が好適である。ネオジミウム−鉄−ボロンの永久磁石、あるいはサマリウム−コバルトの永久磁石で、10から35mGOe(メガガウスエールステッド)の範囲のBHmax(最大エネルギープロダクト(product))のものが特に好ましい。このような磁石はインディアナ州のバルパライソのインターナショナルマグナプロダクツインク社等の商業源から入手が可能である。好適には、これら永久磁石は方形断面を有したものであり、永久磁石構造体を形成するように非磁性保持体に物理的に接着あるいは固定されている。この構造体は、磁石を収納し、磁界を焦点させるような強磁性ハーネスを含んでいる。好適には、この磁石はその磁界軸を容器の垂直軸とは垂直にして配置される。磁石の別な断面形状と配向も本発明のスコープ内で想定されている。
一般的に、この永久磁石構造体は容器の底部までは延びないように容器に近接して配置される。図1から図6に示す装置の各磁石構造体と容器との間の好適な距離は一般的には約5mmから約20mmである。磁石の磁力は充分に大きくし、磁石と容器との間の距離は充分に小さくしてテスト媒液内で磁界グラジエントの効果的なキャビティを発生させなければならない。複数の容器の処理が関与する状況では、永久磁石構造体を容器間あるいは容器列間に配置し、1体の永久磁石構造体が隣接する2体の容器内に磁界グラジエントを発生させるように使用することは有利であろう。
図1は本発明による磁性粒子の混合/分離装置を示している。この装置には、容器3の底部には到達せずに円筒容器3に近接して配置されたソリッドな支持体2に固定された磁石1が含まれている。この実施例においては、テスト媒液8を収容する容器3は試験管であり、磁性粒子9はドットで示されている。磁石1が永久磁石であれば、好適には、ネオジミウム−鉄−ボロンあるいはサマリウム−コバルトのような稀土類合金製であり、好適には、20mGOe以上のBHmaxの磁性粒子吸着表面磁力を有している。電磁石が磁石1として採用されても、それに相当する磁力を有するべきである。
テスト媒液8と磁性粒子9とを含んだ容器3は、変速電動モータ6に連結された回転シャフト4に固定されたホルダー5に取り外し自由に垂直設置されている。ホルダー5は複数の垂直スリット7を有して弾性的であり、容器3を堅牢にグリップする。電動モータ6のスイッチを入れると容器3は回転し、磁石1に対する容器3の相対的な角ポジションを連続的に変動させ、磁性粒子9をテスト媒液8内に定義された磁界グラジエントのキャビティ内で運動させる。容器3は好適には10から100回転/分程度の緩やかな速度で回転され、磁性粒子9を確実に攪拌する。容器3の内部のテスト媒液8は相対的に不動状態である。電動モータ6のスイッチを切ると容器3の回転は停止し、磁性粒子9の磁力攪拌は終了する。この時点で、磁性粒子9は磁石1に最近接した容器3の内壁に吸引されて固定される。容器3の垂直側部での磁性粒子9の集団状態によってテスト媒液8の排除が可能となる。
図2は本発明による磁性粒子の混合/分離装置の別例を図示している。この装置には、底部には到達せずに試験管23に近接して設置された磁石21と、試験管ホルダー25内の円形開口部にその上端部を通過させて取り外し式に垂直固定された試験管23とが含まれる。磁石21は電磁石であっても永久磁石であってもよい。永久磁石の場合には、磁石21は好適にはネオジミウム−鉄−ボロンあるいはサマリウム−コバルトのごとき稀土類合金製であり、好適には20mGOe以上のBHmaxである磁性粒子9を引き付けるだけの表面磁力を有している。磁石21は適当なサイズと形状を有した1個あるいは複数個の磁石を含むことができ、試験管23内のテスト媒液28の望む断面を収容する磁界キャビティを定義する。
磁石21は変速電動モータ26に取り付けられた回転シャフト24に搭載されたディスク体22に固定されている。電動モータ26にスイッチを入れると磁石21は固定試験管23の垂直軸周囲を周回的に回転し、試験管23内に角移動する磁界グラジエントを創出する。磁石21の回転中、試験管23は不動のままであり、磁界キャビティは固定テスト媒液28を通過して連続回転する。角移動する磁界により、磁性粒子29はテスト媒液28内の磁界グラジエントのキャビティ内で運動する。磁石21は、好適には10から100回転/分の緩やかな速度で回転され、磁性粒子29を本質的には不動であるテスト媒液内を通過させて運動させる。電動モータ6のスイッチが切られると、磁石21の回転は停止し、磁力攪拌も停止する。固定状態となった磁界内の磁性粒子28は磁石21に最近接した試験管23の内壁に引き付けられて固定される。試験管23の垂直側壁での磁性粒子の集団状態によって、吸引または他の手段によるテスト媒液28の排除が可能になる。
図3は本発明による、複数のテスト媒液を同時的に処理することができ、図2で説明した装置の変形である装置の実施例を図示している。図3の装置は、固定された水平支持プレート32の対応する円形開口部にその上体を通過させて垂直ポジションで固定された同形の試験管33の列と、試験管33の底部にまでは到らないで試験管33に近接して対応的に整合配列された磁石31の列とを含んでいる。永久磁石が使用されれば、好適には図2の装置において説明したような稀土類合金製であり、試験管33内のテスト媒液29の望む断面を収納するような磁界キャビティを定義するように適当な寸法と形状とを有したものである。
磁石31の列は、ドライブベルト39で連結されたプリー38Aと38Bとにそれぞれ偏心的に取り付けられた2本のシャフト34Aと34Bとにその下側が固定された可動支持プレート35上に搭載されている。プリー38Aは変速電動モータ36と連動しており、電動モータ36にスイッチが入れられるとプリー38Aと38Bは回転を開始し、支持プレート35に偏心的回転を与える。この偏心回転によって各磁石31は対応する固定試験管33の垂直軸周囲を周回し、各試験管33内の実質的に不動であるテスト媒液28内にそれぞれ独立して移動する磁界グラジエントを創出させる。この複数の磁界の同時的な移動は、各試験管33内の磁性粒子を磁界グラジエントの個々のキャビティ内で独立的に運動させる。電動モータ36のスイッチを切ると磁石31の回転は停止し、磁力攪拌も停止する。固定状態となったそれぞれの磁界内の磁性粒子29は各試験管33の内壁に引き付けられて固定される。試験管33の垂直側壁への磁性粒子の分離によって吸引あるいは他の方法による媒液の排除が可能となる。
図4は本発明による、複数のテスト媒液を同時的に処理する装置の別実施例を示す。これは図1で解説した装置の変形である。図4の装置は、試験管ラック42の一部である垂直プレート42Cに固定された磁石41の列を含む。磁石41は試験管43の底部には到達せずに試験管43の列に近接して整合されている。望むなら、それぞれの磁石41を隣接する試験管43の間に配置し、1体の磁石が2体の隣接試験管43に作用するようにアレンジすると、さらに単純で経済的な装置を提供することもできる。永久磁石が採用されれば、図1の装置に関して説明したような適当な寸法と形状とを有した稀土類合金製が好適であり、各試験管43内のテスト媒液8の望む断面を収容するように磁界キャビティを定義させる。
それぞれの試験管43は、その底部を下プレート42Aの対応する浅い溝に入れて垂直ポジションで取り外し自由に配置されており、それぞれの上部の一部は試験管ラック42の上プレート42B内に設けられた対応する円形開口部を通過している。上プレート42Bのそれぞれの開口部の径は試験管43の径よりも少々大きく準備されており、試験管43の挿入と回転とを容易にしている。プレート42Aと42Bとは間隔が開けられており、試験管43を安定した垂直状態で保持する。
ドライブベルト49は変速電動モータ46に連動する2体のプリー48Bと48Cとに搭載され、上プレート42Bに搭載された2列のガイダンスローラ47によってガイドされる。複数のガイダンスローラ47は隣接する開口部の両側の中央に配置され、ドライブベルト49を少々押入状態に押圧して試験管43をグリップするようにしている。電動モータ46にスイッチを入れるとドライブベルト49は動き出し、ドライブベルト49の作用による試験管43とのスライド摩擦によって全試験管43はその垂直軸周囲に同時的に回転する。
試験管43が回転すると、各試験管43並びに対応する磁石41の相対的な角ポジションは連続的に変動し、媒液8内の磁性粒子9は磁界グラジエントのキャビティ内で運動する。それぞれの試験管43は好適には10から100回転/分程度の穏やかな速度で回転され、磁性粒子9の攪拌を確実に実行する。試験管43内部のテスト媒液8は相対的に不動のままである。電動モータ46のスイッチを切ると試験管43の回転は停止し、磁力による攪拌も停止する。各試験管43内の磁性粒子9は対応する磁石41に最近接した試験管内壁に引き付けられて固定される。試験管43の垂直側壁での磁性粒子9の集結によって、吸引あるいは他の手段によるテスト媒液8の除去が可能となる。
図5Aから図5Fにかけて、サンプル溶液または生物学的液体の懸濁液からの分子標本の生物検査または単離を行う親和反応性磁性粒子を利用した本発明の好適実施例による方法の典型的なステップが図示されている。図5Aは図2の装置を示しており、ピペット59の利用によって試験管23のサンプル溶液内での磁性粒子58の懸濁が実施される。この装置にスイッチが入れられると磁石21が試験管23の周囲を回転して磁性粒子58が混合される。図5Bはその混合が完了し、磁石21の回転が停止した状態の装置を示している。磁性粒子58は固定磁石21に最近接した試験管23の内壁で固定されている。図5Cは洗浄ステップ(washing step)中の装置を示している。このステップで、集積された磁性粒子58は、吸出管59Aによるテスト媒液の吸出と、導入管59Bによる試験管23内への適当な洗浄溶液の導入とによって洗浄される。磁性粒子58は前述同様に洗浄溶液内で混合され、さらに分離された後に洗浄液が排除される。この洗浄ステップは必要な回数だけ反復される。
図5Dは、磁性粒子58から標的物質を溶離させるため、生物検査あるいは化学遷移反応(chemical displacement reaction)のための望む分析反応を実行させるようにピペット59Cによって1種あるいは複数種の試薬溶液を追加させるために停止状態となっている装置を示している。図5Eはその望む分析反応を実行させるために磁性粒子58を拡散混合させるようにスイッチが入れられた状態の装置を図示している。図5Fは磁性粒子58を反応媒液から分離させるために停止された状態の装置を示している。生物検査の場合には、媒液は、試験管23内で直接的に、あるいは他の場所に移してから計量することになろう。細胞あるいは分子標本を単離させる目的では、媒液は望む後処理のために適当な容器に移されるであろう。
磁石構造体の種々な形状と、容器に対するそれらのポジションを図6から図9を利用して解説する。図6は本発明による磁石構造体61の1実施例を示している。ここでは方形の永久磁石62は非磁性ベースプレート63上に固定されており、容器62に近接して設置され、テスト媒液66の断面に磁界グラジエントのキャビティ65を発生させている。利用可能な磁界はほぼこのキャビティ65内に存在する。すなわち、キャビティの外側の磁力は無視できる程度のものとなる。
図7は2体の磁石構造体71Aと71Bとを示している。磁石構造体71Aと71Bは2体の非磁性ベースプレート73Aと73Bとにそれぞれ固定された2体の方形永久磁石72Aと72Bを含んでいる。2体の磁石構造体71Aと71Bは同種の磁極が対面した状態で容器74の反対側に配置されており、磁力線は歪められ、前述のごとくにテスト媒液76内に磁界グラジエントのキャビティ75を発生させ、キャビティ75内に磁力の2部のローカスを発生させている(図11A参照)。このようなアレンジは磁性粒子の混合には特に効果的であることが発見されている。
図8は容器84内に磁界グラジエントの複層のキャビティを発生させるようにデザインされた磁石構造体81の実施例を図示している。この実施例においては、非磁性支持フレーム83に等間隔で固定された6体の方形永久磁石82Aから82Fのアレイが利用されている。この磁石構造体81は容器84に近接して配置され、テスト媒液86内に磁界グラジエントの6部のキャビティ85Aから85Fを発生させている。
図9は2体のそのような磁石構造体91Aと91Bとを示している。それぞれの磁石構造体91Aと91Bは2体の非磁性支持フレーム93Aと93Bとにそれぞれ等間隔で固定された6体の方形永久磁石92Aから92Fのアレイを含んでいる。これら2体の磁石構造体91Aと91Bは同種の磁極が対面した状態で容器94の反対側にそれぞれ配置されている。テスト媒液96内に発生された磁界グラジエントの6部のキャビティ95Aから95Fは2つの作用磁界の歪んだ磁力線をそれぞれ含んでいる。
このような磁石構造体の多彩な形状とポジションとは本発明の図1から図4にかけて示す装置に有利に採用することが可能である。
前述したように、永久磁石と電磁石とは本発明のほとんどの装置において互換性がある。しかし、当業者には理解されようが、磁石の移動を必要とする場合には永久磁石が有利である。なぜなら、電磁石は移動する磁石に対して電気を供給するための特別なアレンジが必要だからである。しかしながら、電磁石が非常に有利である場合も存在する。図10Aは、支持フレーム104に搭載されており、テスト媒液と磁性粒子103とを含んだ容器102の外部にて約180度離れたポジションに配置された2体の電磁石101Aと101Bとを図示している。図10Bは、支持フレーム104に搭載された分離型電磁石コイル101Aから101Rで成るリングで囲まれたテスト媒液と磁性粒子103とを含んだ1体の容器102の断面を示している。
この例では容器102も電磁石101も不動である。これら電磁石コイルに順番に電気エネルギーを供給することで容器102内のテスト媒液103内に懸濁された磁性粒子に角運動エネルギーが付与される。この順番エネルギー付与は”バイナリ式(binary)”(すなわちオンとオフ)であっても、”アナログ式(analog)”であっても構わない。この場合には第1の電磁石で徐々にエネルギーが高められ、次に弱められ、同時に第2の電磁石で徐々にエネルギーが高められるというエネルギー作用の反復が利用される。磁性粒子103の運動能力は連続電磁石間のエネルギー変動比とオーバーラップ度の調整で規定することが可能であることは明かである。
採用する連続電磁石の数は容器102のサイズや他の要因によって決定される。図10Aは、このような構造が図7のものと同様にまで電磁石の数を減少させることができることを示している。2体の永久磁石の代わりに2体の電磁石が利用されるだけである。1体の磁石から他の磁石への角運動は実際には180度となり、テスト媒液103内の磁性粒子は実際には容器102内で前後にほぼ直線状に移動することとなる。特にこの場合、極性を変動させたり、電流のパワーレベルを変動させれば、磁極の交換が発生し、図11Aと11Bとに示すような磁界が交互に発生し、磁性粒子の通路にバラエティを付与することが可能となる。
容器の周囲に等間隔(すなわち90度)で配置された4体の電磁石を採用すれば、それら電磁石のコントロールした順次的起動化と、磁極の反転作用とによって非常に優れた磁性粒子の攪拌が提供されることが発見されている。
混合/分離チャンバーを定義する容器はテスト媒液の補充/抜取用の少なくとも1つの開口部を含んでいる。この容器は好適には円筒形であり、プラスチックやガラス等の透磁材料製である。さらに、チャンバーの内面はバイオコンパチブル(biocompatible)処理されていることが望ましく、チャンバーはテスト媒液の無菌処理用に殺菌されていることも望ましい。容器の容積は、チャンバーが収納でき、特にテスト媒液の望む断面が収納できる磁界グラジエントが提供できる限りさほど重要な要素ではない。
図1から図9にかけて示すように、テスト媒液を保持する容器は試験管であってもよい。試験管の容積は好適には約1mlから約300mlであり、磁石のサイズと形状とは特定の試験管サイズの内部のテスト媒液内に適当な磁界グラジエントを発生させるものとする。
研究施設での使用に特に好適な本発明の実施例では、好適には試験管のごとき容易に交換できる容器が採用されているが、本発明の教示を利用した診断用装置及び他の装置は、混合並びに分離のために永久流容器(permanent flow cell)あるいは他の永久設置型チャンバーを利用することができる。
本発明によれば、親和反応性磁性粒子は、テスト媒液内での磁性粒子の相対角運動によって容器内で本質的には不動であるテスト媒液と混合される。固定容器周囲に磁石を回転させるか、不動の磁界と相対的に容器を回転させるかのいずれかによって相対角運動エネルギーが磁性粒子に付与される。磁界を提供する磁石は容器の外部に配置され、テスト媒液内に磁界グラジエントのキャビティを定義する。本発明は、磁力源は容器の”外部”に存在するが、ドーナツの穴に存在することにより容器の”内部”に存在させるようなドーナツ形状の容器の使用も可能にする。
当業者であれば、これら好適実施例には、本発明のスコープと精神とから離脱せずに多様な変更と改良とが可能であることを理解しよう。よって、本発明は「請求の範囲」のスコープ内の他の態様であっても実施が可能であることは理解されよう。

Claims (22)

  1. テスト媒液内で磁性粒子を混合して分離する装置であって、そのテスト媒液を受領し、磁力混合と磁力分離とのためのチャンバーを提供する透磁性容器と、その容器を保持するホルダーと、そのホルダーに保持された容器の外側に設置され、その容器内で磁界グラジエントを発生させる磁石手段であって、その磁界はその磁石手段に最近接した容器内壁面部分にて相対的に他の部分よりも強力であり、前記テスト媒液内に磁界キャビティを定義する磁石手段と、
    前記容器と前記磁石手段との間の相対的な角ポジションを連続的に変動させ、前記テスト媒液内での前記磁性粒子の運動を促す移動手段と、そのテスト媒液から磁性粒子を分離させる分離手段であって、前記移動手段を停止させ、前記磁石手段に最近接した容器の内壁面にて磁性粒子を固定させる分離手段と、を含んでいることを特徴とする装置。
  2. 前記透磁性容器は円筒形状であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  3. 前記磁石手段は少なくとも1体の永久磁石を含んでいることを特徴とする請求項1記載の装置。
  4. 前記磁石手段は少なくとも1体の電磁石を含んでいることを特徴とする請求項1記載の装置。
  5. 前記磁石手段は約10から30メガガウスエールステッドの最大エネルギープロダクトを有していることを特徴とする請求項1記載の装置。
  6. 前記永久磁石は稀土類元素を含む磁性合金を含んでいることを特徴とする請求項3記載の装置。
  7. 前記磁石手段は垂直に調整された複数の磁界キャビティを定義するように垂直に配置された複数の磁石を含んでおり、前記分離手段はそれぞれのキャビティ内で磁性粒子を固定させることを特徴とする請求項1記載の装置。
  8. 前記移動手段は前記磁石手段を不動である前記容器側壁周囲で周回的に移動させることを特徴とする請求項1記載の装置。
  9. 前記磁石手段は可動ベース部材に搭載されており、その可動ベース部材はその上方に前記容器を懸垂した状態で電動モータに作動可能に接続されており、その電動モータの作動で可動ベースは回転し、前記磁石手段を容器側壁周囲に近接させて周回させることを特徴とする請求項8記載の装置。
  10. 前記磁石手段は、同種の磁極を前記容器に対面させた状態で容器の反対側に設置された2体の磁石であることを特徴とする請求項1記載の装置。
  11. 前記移動手段は前記容器を不動である前記磁石手段と相対的に移動させることを特徴とする請求項1記載の装置。
  12. 標的物質と磁性粒子との間で親結合反応をさせるためにテスト媒液内で磁性粒子を混合させる方法であって、磁性粒子の新和面と標的物質との間の接触を最大化し、液動と、磁性粒子とテスト媒液との間のせん断力とを最低限に抑え、テスト媒液からの磁性粒子の分離を単純化する方法であり、
    前記テスト媒液と前記磁性粒子とを透磁性容器に入れるステップと、
    そのテスト媒液内でそれら磁性粒子を混合するステップであって、前記容器の外側に配置した磁力源を利用して磁性粒子をテスト媒液内で運動させて前記標的物質と磁性粒子の親和面との間に接触を促すものであり、その運動は容器と前記磁力源との間の相対的な角ポジションを変動させることで促されるステップと、
    前記磁力源と前記容器とを相対的に不動状態にすることでテスト媒液から磁性粒子を分離させるステップであって、それら磁性粒子を磁力源に最近接した容器内壁部分に集結させ、その集結磁性粒子をその状態に保ったままでテスト媒液を排除可能にするステップと、を含んでいることを特徴とする方法。
  13. 前記混合ステップと分離ステップとを反復し、洗浄溶液と反応溶液との追加及び排除を実行させること特徴とする請求項12記載の方法。
  14. 磁性粒子が懸濁されている複数の非磁性テスト媒液内で磁性粒子を混合させて分離させる装置であって、それら複数のテスト媒液をそれぞれ受領し、磁力混合と磁力分離とを実施するための複数の透磁性容器と、それら容器を保持する保持手段と、その保持手段に保持された容器と外部で整合される複数の磁石手段であって各容器内部に磁界グラジエントを発生させるものであり、各磁石手段は対応する容器の外面に近接して設置され、容器内のテスト媒液内に磁界キャビティを定義する磁石手段と、各容器と、対応する磁石手段との間の相対的な角ポジションを変動させる移動手段であって、前記テスト媒液内での磁性粒子の運動を促し、それら磁性粒子をテスト媒液内で混合させる移動手段と、
    各容器と、その対応する磁石手段との間の相対的な角ポジションの変動を停止させ、磁性粒子をテスト媒液から分離させる分離手段であって、それぞれの磁石手段に最近接した容器の内壁部分にて磁性粒子を固定し、固定された磁性粒子とテスト媒液とを分離させる分離手段と、を含んでいることを特徴とする装置。
  15. 前記磁石手段は永久磁石であることを特徴とする請求項14記載の装置。
  16. 前記磁石手段は電磁石であることを特徴とする請求項14記載の装置。
  17. 前記永久磁石は稀土類元素を含んだ磁性合金を含んでいることを特徴とする請求項15記載の装置。
  18. 前記移動手段は各前記磁石手段を、その対応する不動である容器の外壁周囲で周回させることを特徴とする請求項14記載の装置。
  19. 前記移動手段は前記容器を、不動である前記磁石手段に対して回転させることを特徴とする請求項14記載の装置。
  20. 前記磁石手段は同種の磁極を前記容器に対面させた状態で容器の反対側に設置されている2体の磁石を含んでいることを特徴とする請求項14記載の装置。
  21. 各磁石手段は、各対応する容器の内部に垂直に調整された複数の磁界キャビティを定義するように垂直に設置された複数の磁石を含んでおり、前記分離手段は磁性粒子を各キャビティ内で固定させることを特徴とする請求項14記載の装置。
  22. テスト媒液内で磁性粒子を混合させて分離させる装置であって、テスト媒液を受領し、磁力混合と磁力分離とを実施するための透磁性容器と、その容器を保持するホルダーと、そのホルダーに保持された容器の外部に設置される複数の電磁石であって、容器内部に磁界グラジエントを発生させる電磁石と、その容器とその磁界グラジエントの相対的な角ポジションを変動させる移動手段であって、前記テスト媒液内での磁性粒子の運動を促すものであり、各電磁石にエネルギーを付与する電力のレベルと極性との少なくとも一方を順次的に変動させる移動手段と、前記テスト媒液から磁性粒子を分離させる分離手段であって、前記電力の変動を停止させ、少なくとも1体の電磁石にエネルギーを付与し、その電磁石に最近接した容器の内壁部分にて磁性粒子を固定させる分離手段と、を含んでいることを特徴とする装置。
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