JP4207754B2 - 磁性体を用いた免疫学的測定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、測定対象物質に特異的に結合する物質、例えば測定対象物質に対する抗体等が固定化された磁性体を用い、反応液又は/及び洗浄液を攪拌することを特徴とする免疫学的測定方法、及び測定対象物質に対する抗体が固定化された磁性体に関するものである。
近年、臨床検査・診断薬分野においては、生体由来試料中の多種の測定対象物質を短時間で簡便に測定するために、免疫反応を利用した測定方法や自動分析装置が開発されている。該免疫反応を利用した測定方法では、測定対象物質に特異的に結合する物質(レセプター、抗原あるいは抗体等)を固定化した固相を用いて測定対象物質と結合させ、該結合物の量を測定すること等により、測定対象物質を測定している。
このような固相は、様々なものがその用途により用いられているが、免疫学的測定方法に於いてB/F分離を簡便にする目的で、固相に磁性体を用いる例が、例えば特開平5-297001号、特開平7-318559号等に記載されている。
このような磁性体の大きさは、粒子の大きさが100〜10,000 nm程度であり、このような微粒子を用いて上記のような免疫学的測定方法を行った場合、体積あたりの表面積が大きいので抗体等の担持量が多くなるため測定対象物質をより多く吸着(結合)することができ、感度の高い測定が可能という利点があるが、粒子が小さいために洗浄が煩雑で再現性が悪いという問題点があった。
特開平05-297001号 特開平07-318559号
本発明は、上記した如き状況を鑑みなされたもので、本発明者らは、先ず、担体に粒径が1〜10 mm程度であるビーズ粒子磁性体を使用し、高感度且つ高精度な(再現性の良い)免疫学的測定方法の開発を試みたが、該ビーズ粒子は体積あたりの表面積が微粒子に比べて小さいため、抗体等の担持量が少なく、結果として感度を上げることができないという問題があった。
本発明は、上記課題を解決するため、
(1)免疫学的測定方法に於いて、測定対象物質に特異的に結合する物質(以下、測定対象物質結合物質と略記する場合がある)が固定化された磁性体を用いて反応液又は/及び洗浄液を攪拌することを特徴とする免疫学的測定方法、
(2)試料を含有する反応液中で、測定対象物質結合物質が固定化された磁性体を回転させることによって、反応液を攪拌させながら磁性体上に当該測定対象物質結合物質と測定対象物質との複合体を形成させ、当該複合体を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定対象物質の測定方法、
(3)試料を含有する反応液中で、測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された磁性体を回転させることによって、反応液を攪拌させながら測定対象物質と、磁性体上に固定化された測定対象物質結合物質とを接触させて磁性体上に当該測定対象物質結合物質と測定対象物質との複合体を形成させ、更に標識物質により標識された測定対象物質結合物質を磁性体上の当該複合体と反応させて、測定対象物質結合物質と測定対象物質と標識された測定対象物質結合物質との複合体(標識複合体)を形成させた後、当該磁性体を洗浄液洗浄液中で洗浄する際、当該磁性体を回転させることによって洗浄液を攪拌しながらB/F分離を行ない、次いで当該標識結合体中の標識物質を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定対象物質の測定方法、
(4)試料及び標識物質により標識された測定対象物質又はその類似物質を含有する反応液中で、測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された磁性体を回転させることによって、反応液を攪拌させながら磁性体上に固定化された測定対象物質結合物質に、測定対象物質と、標識物質により標識された、測定対象物質結合物質に結合し得る測定対象物質又はその類似物質(以下、測定対象類似物質と略記する場合がある)とを競合反応させて、磁性体上に当該標識測定対象類似物質と測定対象物質結合物質との複合体を形成させた後、当該磁性体を洗浄液中で洗浄する際、当該磁性体を回転させることによって洗浄液を攪拌しながらB/F分離を行ない、次いで当該測定対象類似物質中の標識物質を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定対象物質の測定方法、
(5)測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された、直径が1〜10mm若しくは短径が1〜5mmで長径が3〜10mmの磁性体、を提供するものである。
本発明の方法によれば、測定対象物質結合物質が固定化された磁性体を回転させることによって、反応液を攪拌することで、レセプター、抗原、抗体等の測定対象物質とこの測定対象物質に特異的に結合する物質との反応性を高めることが可能となり、また、磁性体上に、標識された測定対象物質結合物質と測定対象物と当該測定対象物質結合物質との複合体或いは標識された測定対象物質又はその類似物質と当該測定対象物質結合物質との複合体を形成させた後、当該磁性体を洗浄液中で洗浄しB/F分離を行う際の洗浄液を当該磁性体を回転又は振動させることによって攪拌し、B/F分離の効率を高め、且つ容易にB/F分離を行うこと等を可能とし、精度(再現性)良く且つ高感度な免疫学的測定を可能とする。
本発明に係る測定対象物質としては、通常この分野で測定されるものであれば特に限定はされず、例えば血清,血液,血漿,尿等の生体体液、リンパ液、血球、各種細胞類等の生体由来の試料中に含まれるタンパク質、脂質タンパク質、核酸、免疫グロブリン、血液凝固関連因子、抗体、酵素、ホルモン、癌マーカー等が代表的なものとして挙げられる。更に具体的には、例えばアルブミン,ヘモグロビン,ミオグロビン,トランスフェリン,プロテインA,C反応性蛋白質(CRP)等のタンパク質、例えば高比重リポ蛋白質(HDL),低比重リポ蛋白質(LDL),超低比重リポ蛋白質等の脂質蛋白質、例えばデオキシリボ核酸(DNA),リボ核酸(RNA)等の核酸、例えばアルカリ性ホスファターゼ,アミラーゼ,酸性ホスファターゼ,γ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GTP),リパーゼ,クレアチンキナーゼ(CK),乳酸脱水素酵素(LDH),グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT),グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT),レニン,プロテインキナーゼ(PK),チロシンキナーゼ等の酵素、例えばIgG,IgM,IgA,IgD,IgE等の免疫グロブリン(或はこれらの、例えばFc部,Fab部,F(ab)2部等の断片)、例えばフィブリノーゲン,フィブリン分解産物(FDP),プロトロンビン,トロンビン等の血液凝固関連因子、例えば抗ストレプトリジンO抗体,抗ヒトB型肝炎ウイルス表面抗原抗体(HBs抗原)、抗ヒトC型肝炎ウイルス抗体、抗,リュウマチ因子等の抗体、例えば甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT3,FT4,T3,T4)、副甲状腺ホルモン(PTH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)エストラジオール(E2)等のホルモン、例えばα−フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CA19−9、前立腺特異抗原(PSA)等の癌マーカーが挙げられる。上記したものの中でも、抗体、ホルモン、癌マーカー等が好ましく、TSH、甲状腺ホルモン、PTH、PSA等がより好ましい。
本発明に係る測定対象物質に特異的に結合する物質(測定対象物質結合物質)としては、測定対象物質と互いに強い相互作用(affinity;親和力或は親和性)を及ぼしあい、複合体を形成するものであれば特に限定されないが、例えば測定対象物質の特定の部分構造或は抗原決定部位に対する抗体、例えばコンカナバリンA,レンズマメレクチン,インゲンマメレクチン,ダツラレクチン,ヒイロチャワンタケレクチン,ヒママメレクチン,ピーナッツレクチン,小麦胚芽レクチン等の特定構造の糖鎖に対して結合能を有するレクチン類、例えばアミラーゼ,クレアチンキナーゼ(CK),グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)等の酵素に対するインヒビター、例えばTSH、エストロジェン等のレセプター等が挙げられる。尚、測定対象物質の特定の部分構造或は抗原決定部位に対する抗体としては、例えばTSH、甲状腺ホルモン、PTH、hCG、E2、AFP、CEA、CA19−9、PSA等が挙げられ、TSH、甲状腺ホルモン、PTH、PSA等が特に好ましい。
本発明に係る磁性体としては、磁力線に大きな影響を与えるものであれば何れでもよく、具体的には、例えば鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体、例えばマグネタイト、クロマイト等のフェライト等が挙げられ、好ましくは、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性体であり、より好ましくは鉄等が挙げられる。
該磁性体の形状としては、反応溶液を攪拌し得るものであれば特に形は限定されないが、球状又は楕円球状が好ましいものとしてあげられ、中でも球状が好ましい。球状とすることで、表面積のばらつきが小さくなり、磁性体に固定化する測定対象物質結合物質の量を一定とすることができ、それにより精度の高い測定が可能となる。従って、球状の磁性体を用いる場合、真球率が高いほど測定精度も高くなり、上記磁性体、特に鉄等を用いると真球率を高くすることができるので、精度の高い測定を可能とする。
該磁性体の具体的な大きさとしては、球状の場合、その直径は通常1〜10mm、好ましくは2〜4mmであり、楕円球状の場合、通常、短径が1〜5mm、長径が3〜10mm、好ましくは短径が2〜3mm、長径が3〜5mmである。
本発明に係る磁性体としては、磁性体の腐食、劣化の防止及び測定対象物質結合物質を磁性体上に固定化し易くすることを目的として、上記磁性体をコーティングすることが好ましい。該磁性体をコーティングする物質(コーティング物質)としては、磁性体をコーティングし得、且つ本発明に係る測定対象物質結合物質を固定化できるものであれば特に限定はされないが、例えば金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト等の金属、例えばナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレン等のポリマー等が挙げられ、好ましくは、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト等の金属であり、中でも金等が、完全に磁性体をコーティングし得、上記目的、特に磁性体に鉄等錆びるものを用いた場合には防錆効果をも奏するので好ましい。また、金等を用いると薄膜状で均等にコーティングし得、表面積のばらつきを小さくできるので固定化する測定対象物質結合物質の量を一定とし、その結果精度の高い測定が可能となる。尚、本発明に係る磁性体を上記した如きコーティング物質でコーティングする方法は、通常この分野で行われる自体公知の方法で行えばよく、例えば特開平5-43903号2頁カラム2 42行目〜50行目に記載の方法や特開平9-316370号3頁カラム4 32行目〜4頁カラム5 3行目に記載の方法に準じて行えばよい。
コーティングされた磁性体に測定対象物質結合物質を固定化する方法は、コーティング物質や測定対象物質結合物質の種類等により異なるが、通常この分野で用いられている方法であればよく、具体的には、測定対象物質結合物質を通常0.1〜1000μg/ml、好ましくは1〜100μg/ml、測定対象物質結合物質が抗体の場合には、通常0.1〜1000μg/ml、好ましくは10〜100μg/ml含む緩衝液10〜100ml中に直径1〜10mm若しくは長径3〜10mm、短径1〜5mmのコーティングされた磁性体30〜3000個を通常10〜30時間、好ましくは10〜20時間浸漬した後、該磁性体を洗浄することによりなされる方法が好ましいものとして挙げられる。尚、ここで用いられる緩衝液としては通常この分野で用いられているものであれば何れでもよく、具体的には、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液、グリシン緩衝液、ホウ酸緩衝液等が挙げられ、また、これらの緩衝液中の緩衝剤濃度としては、通常10〜500mM、好ましくは10〜300mMの範囲から適宜選択され、そのpHとしては、通常5.0〜9.0、好ましくは6.0〜8.0から適宜選択される。また、このようにして測定対象物質結合物質が固定化された磁性体は、常法によるブロッキング処理、例えば牛血清アルブミン(BSA)等の目的の測定に影響を与えない適当なタンパク質を含む溶液中に適当な時間浸漬する等の処理を行った後に使用される。
本発明に係る測定対象物質結合物質を磁性体に固定化する方法としては、測定対象物質に特定分子を結合し、別途当該特定分子に結合する物質を磁性体に結合させ、当該特定分子と当該特定分子に結合する物質とを結合させることにより、測定対象物質結合物質を磁性体に固定化してもよい。即ち、磁性体−特定分子に結合する物質−特定分子−測定対象物質結合物質複合体を形成することにより、測定対象物質結合物質を磁性体上に固定化してもよい。ここでいう、特定分子と特定分子に結合する物質の反応としては、例えば抗原−抗体間反応、糖鎖−レクチン間反応、酵素−インヒビター間反応、タンパク質−ペプチド鎖間反応、或いは、染色体又はヌクレオチド鎖−ヌクレオチド鎖間反応等の相互反応によって特定分子と特定分子に結合する物質とが結合するものをいい、上記各組み合わせに於いて何れか一方が特定分子である場合、他の一方がこの特定分子に結合する物質である。このような特定分子及び特定分子に結合する物質は、通常感度の向上を目的として用いられるので、両者の親和性が高いものが好ましく、具体的には例えば、核酸鎖の組み合わせや、アビジン(又はストレプトアビジン)とビオチンとの組み合わせ等が挙げられる。尚、上記特定分子と磁性体(又はコーティングされた磁性体)の結合方法は、コーティングされた磁性体に測定対象物質結合物質を固定化する方法に準じて行えばよく、また、上記特定分子に結合する物質を測定対象物質結合物質に結合する方法としては、自体公知の例えば架橋剤を用いて化学的に結合する方法(例えばAnal.BioChem. 223 142−148(1994)に記載の方法)等を用いればよい。
上記核酸鎖としては、プリン塩基又はピリミジン塩基、糖部分であるペントース、及びリン酸からなるヌクレオチド残基を基本単位とし、このリン酸が各ヌクレオチド間が糖の3'と5'位炭素の間でジエステル結合によって結ばれ重合した鎖状のポリヌクレオチドであり、例えば糖部分がリボースであるRNA又は/及び糖部分がデオキシリボースであるDNAが挙げられる。また、当該核酸鎖は、1本鎖でも、2本鎖乃至これ以上の複数の核酸鎖からなるものであってもよい。また、本発明で用いられる核酸鎖は、例えば化学合成法、微生物,昆虫,動物,植物等由来の細胞等から抽出・精製する方法、適当なプラスミド,ファージ,コスミド等のベクター遺伝子が導入された上記した如き細胞等を培養した後、細胞培養等により増殖したベクターを抽出・精製する方法、PCR等の遺伝子増幅技術を利用する方法(モレキュラー クローニング ア ラボラトリー マニュアル セカンド エディション、J.サムブルック,E.F.フリッシュ,T.マニアティス、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー プレス等)等の自体公知の方法により調製することができる。また、このようにして得られた核酸鎖は、化学的分解や制限酵素等の核酸鎖切断酵素等により分解した後、適宜精製することによって所望の長さに調製してもよい。更に、このような核酸鎖は、適当なもので適宜修飾等されていてもよく、修飾方法は自体公知の方法に従って行えばよい。また、これら使用される核酸鎖の長さとしては、通常1bp〜1000kbp、好ましくは5bp〜100kbp、より好ましくは10bp〜50kbpである。
本発明に係る測定対象物質の類似物質は、測定対象物質結合物質が有する測定対象物質との結合部位と結合し得るもの、換言すれば、測定対象物質が有する測定対象物質結合物質との結合部位を有するもの、更に換言すれば、測定対象物質と測定対象物質結合物質との反応時に共存させると該反応と競合し得るものであれば何れでもよい。
本発明の免疫学的測定方法としては、磁性体を用いて反応液又は/及び洗浄液を攪拌する操作以外はこの分野で通常行われる測定対象物質結合物質が固定化された担体を用いる免疫学的測定方法に準じて行えばよく、磁性体を用いて反応液又は/及び洗浄液を攪拌する方法としては、例えば試料を含有する反応液中に測定対象物質結合物質が固定化された磁性体を入れるか、或いは、測定対象物質結合物質と測定対象物質の複合体をその表面に形成させた磁性体、測定対象物質結合物質と測定対象物質と標識測定対象物質結合物質の複合体をその表面に形成させた磁性体、又は測定対象物質結合物質と、標識された測定対象物質(又はその類似物質)との複合体をその表面に形成させた磁性体を、洗浄液に入れ、例えばスターラー等の磁性体を回転し得る機械等で該磁性体を回転させることにより反応液又は/及び洗浄液を攪拌すればよい。
即ち、本発明の免疫学的測定方法は、例えば試料を含有する反応液中に測定対象物質結合物質が固定化された磁性体を入れ、例えばスターラー等で磁性体を回転させることにより反応液を、通常1〜10分間、好ましくは10分間(即ち、反応開始から反応終了まで)攪拌し、該磁性体上に固定化されている測定対象物質結合物質と測定対象物質とを接触、反応させ、その複合体を形成させた後、当該複合体を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行えばよい。
また、例えば上記のように磁性体上に測定対象物質結合物質と測定対象物質との複合体を形成させた後、又は更に標識物質により標識された測定対象物質結合物質を磁性体上の複合体と反応させて測定対象物質結合物質と測定対象物質と標識された測定対象物質結合物質との複合体(標識複合体)を形成させた後、当該磁性体を洗浄液に移し、当該磁性体を例えばスターラー等の磁性体を回転し得る機械等で回転させることによって洗浄液を通常10〜60秒間、好ましくは10〜30秒間攪拌した後、B/F分離を行ない、次いで当該複合体又は当該標識複合体中の標識物質を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行えばよい。
上記測定例に於いては、試料と測定対象結合物質が固定化された磁性体を反応させた後、標識測定対象物質結合物質を反応させているが、標識測定対象物質結合物質と測定対象結合物質が固定化された磁性体とを反応させた後に試料を反応させても、これらを3つ同時に反応させても構わない。
また、例えば試料を含有する反応液中に、測定対象結合物質が固定化された磁性体と標識物質により標識された測定対象物質又はその類似物質(以下、標識測定対象物質等と略記する場合がある)を入れ、例えばスターラー等で磁性体を回転させることにより反応液を、通常1〜10分間、好ましくは10分間攪拌し、磁性体上に固定化されている測定対象物質結合物質に対して測定対象物質と標識測定対象物質等とを競合反応させて、磁性体上に当該標識測定対象物質等と測定対象物質結合物質との複合体を形成させた後、当該磁性体を洗浄液に移し、当該磁性体を例えばスターラー等の磁性体を回転し得る機械等で回転させることによって洗浄液を通常10〜60秒間、好ましくは10〜30秒間攪拌した後、B/F分離を行ない、次いで当該標識測定対象物質等中の標識物質を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定を行えばよい。
尚、上記本発明に係る測定方法で特定分子及び特定分子に結合する物質を用いる場合には、測定対象結合物質が固定化された磁性体の代わりに測定対象結合物質と特定分子の結合体と特定分子に結合する物質と磁性体の結合体を、磁性体を回転させる際にこれら2種の結合体が存在するように反応液中に入れればよい。
上記測定対象物質結合物質、測定対象物質又はその類似物質等を標識するために用いられる標識物質としては、例えば酵素免疫測定法(EIA)に於いて用いられるアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、パーオキシダーゼ、マイクロパーオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ルシフェラーゼ等の酵素類、例えば放射免疫測定法(RIA)に於いて用いられる99mTc、131I、125I、14C、3H等の放射性同位元素、例えば蛍光免疫測定法(FIA)に於いて用いられるフルオレセイン、ダンシル、フルオレスカミン、クマリン、ナフチルアミン或いはこれらの誘導体等の蛍光性物質、例えばルシフェリン、イソルミノール、ルミノール、ビス(2,4,6−トリフロロフェニル)オキザレート等の発光性物質、例えばフェノール、ナフトール、アントラセン或いはこれらの誘導体等の紫外部に吸収を有する物質、例えば4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキシル、2,6−ジ−t−ブチル−α−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン)−p−トリオキシル等のオキシル基を有する化合物に代表されるスピンラベル化剤としての性質を有する物質等が挙げられる。
上記した如き標識物質を測定対象物質結合物質、測定対象物質又はその類似物質等に結合させるには、通常この分野で用いられる常法、例えば自体公知のEIA、RIA或はFIA等に於いて一般に行われている自体公知の標識方法[例えば、医化学実験講座、第8巻、山村雄一監修、第1版、中山書店、1971;図説 蛍光抗体、川生明著、第1版、(株)ソフトサイエンス社、1983;酵素免疫測定法、石川栄治、河合忠、室井潔編、第2版、医学書院、1982等]等を利用すればよい。
標識物質の使用量は、用いる標識物質の種類により異なるため一概には言えないが、例えばパーオキシダーゼを標識物質として使用する場合には、測定対象物質結合物質と標識物質とを、例えば通常1:1〜20のモル比、好ましくは1:1〜10のモル比、より好ましくは1:1〜2のモル比となるように、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等の通常この分野で用いられている緩衝液中に含有させて用いればよい。尚、当該緩衝液としては、通常この分野で用いられている、例えばトリス緩衝液、リン酸緩衝液、ベロナール緩衝液、ホウ酸緩衝液、グッド緩衝液等が挙げられ、そのpHは、抗原抗体反応を抑制しない範囲であればよく、通常5〜9である。また、このような緩衝液中には、目的の抗原抗体反応を阻害しないものであれば、例えばアルブミン、グロブリン、水溶性ゼラチン、ポリエチレングリコール等の安定化剤、界面活性剤、糖類等を含有させておいてもよい。
本願発明の免疫学的測定方法は、具体的には、例えば測定対象物質が甲状腺刺激ホルモン(以下、TSHと略記する場合がある)の場合、以下のようにして行えばよい。
即ち、TSHを含む試料と例えばモルフォリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液等の緩衝液の混合溶液中に、抗TSHモノクローナル抗体が固定化された例えば金メッキ鉄球等を入れ、例えばスターラーを用いて通常1〜10分間、好ましくは10分間、通常、回転数10〜1000rpm、好ましくは、回転数100〜300rpmで該磁性体を回転させて、反応溶液を攪拌し、金メッキ鉄球に固定化されている抗TSHモノクローナル抗体とTSHを接触、反応させ、複合体を形成させる。次いで、例えば生理食塩液中に該磁性体を移し、例えばスターラーを用いて通常10〜60秒間、好ましくは10〜30秒間、通常、回転数10〜1000rpm、好ましくは、回転数200〜600rpmで該磁性体を回転させて洗浄する。その後、例えばPOD標識されたTSH抗体を加え、例えばスターラーを用いて通常1〜10分間、好ましくは10分間、通常、回転数10〜1000rpm、好ましくは、回転数100〜300rpmで該磁性体を回転させて、反応溶液を攪拌し、POD標識されたTSH抗体と上記複合体とを反応結合させる。次いで、上記の洗浄と同様にして生理食塩液を加えスターラーを回転させて洗浄を行う。最後に例えばルミノール及び過酸化水素を加え、化学発光計にて1秒間の化学発光積算量を測定し、該測定値を基に試料中のTSH量を算出する。尚、この場合には予め規定のTSH含有溶液を試料として上記と同様の操作により作られたTSH量と1秒間の化学発光積算量との関係を示す検量線等を用いることで容易に試料中のTSH量を算出し得る。
上記のような方法により測定対象物質の測定を行うことで、測定対象物質と測定対象物質結合物質とを効率よく反応させることができ、更に洗浄液を攪拌しながらB/F分離を行うことで誤差の少ない再現性の良い測定を可能とする。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に述べるが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)抗甲状腺刺激ホルモン(TSH)モノクローナル抗体の作製
TSH(スクリプス社製)をフロイント完全アジュバントとともにBALB/cマウス(雌)に2回免疫した後、摘出した脾臓細胞とミエローマ細胞(F0)とを、例えば特開平5-244983号公報に記載された、ポリエチレングリコールを用いる常法を用いて融合させた。その後、常法により抗TSHモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを選別し、これを培養して抗TSHモノクローナル抗体を得た。
(2)標識抗体溶液の作製
得られた抗TSHモノクローナル抗体を常法(石川栄治著、「酵素標識法」、学会出版センター、1991年、p.62の方法)によりペルオキシダーゼ(POD、ベーリンガーマンハイム社製)標識し、POD標識抗体を作製した。このPOD標識抗体を0.5μg/mLとなるように2%BSAを含む50mM 2−モルフォリノエタンスルホン酸1水和物(MES)緩衝液(pH6.5)に溶解し、POD標識抗体液とした。
(3)抗TSHモノクローナル抗体固定化金メッキ鉄球の作製
金メッキ鉄球(佐藤鉄工株式会社製、直径3.2mm)100個を、上記(1)で得た抗TSHモノクローナル抗体100μg/mLを含む50mM 3−モルフォリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝液(pH7.5)10ml中に浸漬し、4℃で一夜静置後、1% BSAを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.5)中に浸漬して、さらに4℃で一夜静置し、抗TSHモノクローナル抗体固定化金メッキ鉄球を作製した。
(4)攪拌による洗浄能向上効果の検討
ガラスチューブに(2)で得たPOD標識抗体溶液200μLを分注し、(3)で調製した抗TSHモノクローナル抗体固定化金メッキ鉄球1個を加えて37℃で10分間反応させた。次いでPOD標識抗体溶液を除去後、生理食塩液500μLを添加し、スターラー(アドバンテック社製,SR500)を使用して30秒間撹拌した後、洗浄液を吸引するという洗浄操作を所定回数繰り返した。洗浄後の、抗TSHモノクローナル抗体固定化金メッキ鉄球1個が入ったガラスチューブに5mMルミノール(和光純薬工業社製)及び0.02%過酸化水素を含む50mMトリス緩衝液(pH8.5)200μLを加え、化学発光計(ベルトールド社製,オートルマットLB953)にて1秒間の化学発光積算量を測定した。その結果を表1に示した。また、洗浄時に撹拌しない以外は上記と同じ方法で実験を行った比較実験の結果も併せて表1に示した。
Figure 0004207754
上記の結果から明らかなように、攪拌しない場合洗浄完了まで6回の洗浄を必要とするのに対して、攪拌を行うと4回の洗浄でほぼ洗浄を完了できることが分かった。また、攪拌を行った方が、測定値のばらつき、即ちバックグラウンドのばらつきも小さく、良好な洗浄効果が得られることがわかった。
実施例2 本発明の攪拌による感度向上効果についての検討
ガラスチューブに所定濃度のTSH溶液100μLと1%BSAを含む50mM MOPS緩衝液(pH7.5) 100μLを分注し、実施例1(3)で調製した抗TSHモノクローナル抗体固定化金メッキ鉄球1個を加えて37℃で10分間スターラー(アドバンテック社製,SR500)で撹拌しながら反応させた。次いで該鉄球を生理食塩液500μLで6回洗浄後、POD標識抗体溶液200μLを加えて37℃で10分間スターラーで撹拌しながら反応させた。該鉄球を生理食塩液 500μLで6回洗浄後、5mMルミノール(和光純薬工業社製)及び0.02%過酸化水素を含む50mMトリス緩衝液(pH8.5)200μLを加え、化学発光計(ベルトールド社製、オートルマットLB953)にて1秒間の化学発光積算量を測定した。上記実験を3回おこない、その結果を表2に示した。また、反応時及び洗浄時に撹拌しない以外は上記と同じ方法で行った比較実験の結果も併せて表1に示した。
Figure 0004207754
上記結果から明らかなように、撹拌をすることにより測定感度が向上すること、言い換えれば、反応率が向上していることが分かる。また、攪拌をした測定値を見ると、TSHの濃度に比例して測定値も上昇しており、より精度の高い測定が可能となることも分かった。

Claims (5)

  1. 免疫学的測定方法に於いて、測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された、直径が1〜10mm若しくは短径が1〜5mmで長径が3〜10mmの金属コーティング磁性体を用い、その磁性を利用して反応液又は/及び洗浄液を攪拌することを特徴とする、免疫学的測定方法。
  2. 試料を含有する反応液中で、測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された、直径が1〜10mm若しくは短径が1〜5mmで長径が3〜10mmの金属コーティング磁性体を、その磁性を利用して回転させることによって、反応液を攪拌させながら磁性体上に当該測定対象物質に特異的に結合する物質と測定対象物質との複合体を形成させ、当該複合体を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定対象物質の測定方法。
  3. 試料を含有する反応液中で、測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された、直径が1〜10mm若しくは短径が1〜5mmで長径が3〜10mmの金属コーティング磁性体を、磁性を利用して回転させることによって、反応液を攪拌させながら測定対象物質と、磁性体上に固定化された、測定対象物質に特異的に結合する物質(測定対象物質結合物質)とを接触させて磁性体上に当該測定対象物質結合物質と測定対象物質との複合体を形成させ、更に標識物質により標識された測定対象物質結合物質を磁性体上の当該複合体と反応させて、測定対象物質結合物質と測定対象物質と標識された測定対象物質結合物質との複合体(標識複合体)を形成させた後、当該磁性体を洗浄液中で洗浄する際、当該磁性体を、磁性を利用して回転させることによって洗浄液を攪拌しながらB/F分離を行ない、次いで当該標識結合体中の標識物質を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定対象物質の測定方法。
  4. 試料及び標識物質により標識された測定対象物質又はその類似物質を含有する反応液中で、測定対象物質に特異的に結合する物質が固定化された、直径が1〜10mm若しくは短径が1〜5mmで長径が3〜10mmの金属コーティング磁性体を、磁性を利用して回転させることによって、反応液を攪拌させながら磁性体上に固定化された、測定対象物質に特異的に結合する物質(測定対象物質結合物質)に、測定対象物質と、標識物質により標識された測定対象物質又はその類似物質を競合反応させて、磁性体上に当該標識測定対象物質又はその類似物質と測定対象物質結合物質との複合体を形成させた後、当該磁性体を洗浄液中で洗浄する際、当該磁性体を磁性を利用して回転させることによって洗浄液を攪拌しながらB/F分離を行ない、次いで当該標識測定対象物質又はその類似物質中の標識物質を検出し、その結果に基づいて測定対象物質の測定を行うことを特徴とする、当該試料中の測定対象物質の測定方法。
  5. 測定対象物質に特異的に結合する物質が抗体である、請求項1〜4の何れかに記載の測定方法。
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