JP3958797B2 - 抗原特異的IgM検出 - Google Patents

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Description

本発明は、試料を少なくとも2種のレセプターR1およびR2と共にインキュベートすることによる体液中の免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の検出法であって、両レセプターは該抗体に特異的に結合することができ、R1は固相に結合されているか、固相に結合可能であり、R2は標識を有し、R1および任意にR2の必須成分が測定対象の抗体によって特異的に認識される多量体型の結合パートナーであり、同じ特異性を持つ結合パートナーをIgG抗体による干渉を低減させるために単量体型で使用する方法に関する。
具体的には本発明は、IgGクラスの免疫グロブリンおよびリウマチ因子などの干渉因子の存在下にIgMクラスの免疫グロブリンを特異的に検出する方法に関する。
哺乳類生物の免疫系は、外来物質の移入に応答して、免疫グロブリンと呼ばれる抗体を産生する。それらは、抗原とも呼ばれる外来物質から防御する。免疫グロブリンは5種類のクラスに分けることができる。M、G、A、EおよびDクラスの免疫グロブリンの間で区別されている。これら5つの免疫グロブリンクラスのそれぞれはμ、γ、α、εおよびδ鎖と呼ばれる重鎖の組成が異なっている。
各免疫グロブリンクラスは生物内で異なる機能を持つ。Mクラスの免疫グロブリンは、抗原との最初の接触後(いわゆる一次免疫)後に現れる。しかしながら、これらの免疫グロブリンの濃度は感染の進行と共に急速に低下する。Gクラスの免疫グロブリンは、一次免疫後に最初はゆっくりと生成し、同じ抗原による二回目の感染があった場合は大量に生じる。Aクラスの免疫グロブリンは、生物の粘膜表面に認められ、そこでの防御過程を担っている。Eクラスの免疫グロブリンは、主としてアレルギー反応を担っている。Dクラスの免疫グロブリンの正確な機能は今のところわかっていない。
個々の免疫グロブリンクラスは、血中に著しく異なる濃度で存在する。例えばGクラスの免疫グロブリン(IgG)は正常ヒト血清では8〜18mg/mlの血清含有量に相当する約75%を占める主要クラスである。これに次いで頻繁に存在する免疫グロブリンはIgAであり、その平均血清濃度は0.9〜4.5mg/mlである。Mクラスの免疫グロブリンは、0.6〜2.8mg/mlの濃度で存在し、Dクラスの免疫グロブリンは0.003〜0.4mg/mlの濃度で存在する。IgE抗体の比率は最も低く、それらは0.02〜0.05μg/mlの濃度で血清中に存在するにすぎない。
多くの疾患の鑑別診断には、特定の抗原に特異的な1または複数の全く特定の免疫グロブリンクラスの抗体を検出することが重要である。ウイルス、細菌および寄生虫感染症の十分な診断は、クラス特異的抗体試験によるか、特定の免疫グロブリンクラスの存在を排除すること(例えばIgG抗体とIgA抗体を検出するが、IgM抗体は検出しない方法)によってのみ保証されうる。これは、新たな感染症または急性感染症とより早期に起こった感染症とを区別すること、ならびに感染症の経過を臨床的にモニターすることにとりわけ重要である。抗体のクラス特異的検出は、HIV、A型肝炎、B型肝炎、トキソプラズマ症、風疹およびクラミジア感染症にとってとりわけ重要である。特定の抗原に特異的な抗体のクラス特異的検出は、防御抗体の力価を測定する場合や、免疫化の成功をチェックするためにも必要である。新たな急性感染症の診断には、抗原に特異的なIgMクラスの抗体を検出することにとりわけ関心がもたれる。しかしながら、例えば同じ特異性を持つIgG抗体の存在などの種々の干渉因子が、抗原特異的IgM抗体の検出をしばしば妨害する。
抗原に特異的な特定クラスの抗体を検出する方法は、現状として記載されている。したがって、特定クラスの抗原特異的抗体は、特異的抗原で被覆された固相に特異的抗体を結合させることによってしばしば検出される。固相に結合されている抗原に特異的な免疫グロブリン(Ig)は、特定クラスのヒトIgに対して特異的に指向する抗体を、検出対象のIg分子に結合させることによって検出される。ヒトIgに対する抗体には標識が与えられ、それにより検出が行われる。しかしながら、このような試験法は、ヒトIgに対するクラス特異的標識抗体との反応前に、全ての非特異的非結合Igが洗浄によって除去される場合にのみ可能である。したがって自動システムにしばしば必要とされるような1ステップ試験法は不可能である。また第1ステップにおいて、抗原に特異的なすべてのクラスの抗体が固相に結合する。固相の抗原被覆量が十分でなければ、抗原への結合に関して様々な抗体クラスの競合反応が起こりうる。これは試験の感度を損ないうる。
1ステップ試験での抗体検出が実行できる可能性は、いわゆるブリッジ試験により提供される。該ブリッジ試験の概念は、EP-A-0 280 211号明細書に記載されている。この方法では、例えば、測定対象の抗体に特異的に結合できる抗原などの第一レセプターを固相に結合する。測定対象の抗体は、固相結合型抗原に結合する。また、さらなる特異的抗原が標識を与えられた試験混合物中に存在する。抗体は、標識により検出される。しかしながら、この試験ではすべての抗原特異的抗体が検出され、特定のクラスの抗体だけが検出されるわけではない。
抗原特異的IgM抗体を測定する場合、さらなる干渉はリウマチ因子によって引き起こされる。リウマチ因子は通常それ自体が、一般にIgG抗体のFc領域に高い親和性を持つIgMクラスの抗体である。その結果、特異的IgM抗体の免疫アッセイにおいては、リウマチ因子が結合されることになるよう、リウマチ因子がIgG抗体を与える。もしリウマチ因子が検出対象の特異性を持つIgG分子を結合すれば、それは偽陽性測定結果をもたらすことになりうる。
抗原特異的抗体のクラス特異的検出におけるこの問題は、DE 33 03 793号明細書の主題である。これには、リウマチ因子による干渉が抗IgG抗体を添加することによって排除される特定のIgクラスの抗原特異的抗体(「IgX」)の検出法が記載されている。この方法では、ウイルス抗原などの特異的抗原が固形担体に適用される。固相に結合されたウイルス抗原を試料と接触させる。次のステップでは、非結合試料が除かれ、固相に結合された抗原-IgXの複合体を抗IgX抗体で検出する。特にIgM試験では、リウマチ因子による干渉を避けるために、試験に先立って試料を抗IgG抗体で処理する。したがってこの方法で複合体化されたIgG抗体はもはやリウマチ因子による攻撃には利用され得ないので、リウマチ因子は抗原特異的IgG分子を結合できなくなり、したがって偽陽性結果がもたらすことがなくなる。しかしながら、IgG抗体はすべてその特異性とは無関係に結合される。抗IgG抗体による干渉IgG抗体の沈殿は、試験全体に悪影響を及ぼしうる望ましくない沈殿物や濁度につながりうる。また抗IgG抗体による試料の前処理は煩雑でもある。
同じ特異性を持つ他のクラスの抗体による干渉を排除する、さらなる方法は、国際公開96/14337号パンフレットに開示されている。この場合は、IgG重鎖のFd部分と特異的に反応する抗体または抗体断片が、IgG抗体による干渉を排除するために使用される。その結果、IgGの抗原結合能があまりにも強く遮蔽されるため、それらはもはや特異的抗原を認識できなくなる。同様の考え方は国際公開96/14338号パンフレットにも記載されている。この場合は、リウマチ因子による干渉を低減させるために、抗Fd抗体またはその断片を干渉排除試薬として使用する。しかしながら、高度に特異的な抗Fd試薬による干渉の低減は煩雑で費用がかさむ。
先行技術として知られている方法では、精巧で高価な干渉排除試薬および/または複数の特異的抗体を添加することなく免疫グロブリンIgMクラスの抗原特異的抗体を1ステップ法で検出することはできない。標識した抗原と固相に結合できる抗原とを使用するブリッジ試験の概念に基づく現状で知られる免疫学的検出法は確かに1ステップ試験を可能にする。しかしながら、今のところ、この単純な原理では、IgGクラスとIgMクラスの抗体を一緒に検出することしか可能になっていない。
したがって、目的は、特定の抗原に対するIgMクラスの抗体の改善された検出法を提供することであった。本方法は、精巧で高価な干渉排除試薬を必要としてはならず、かつ好ましくは、自動システムで有利に使用できるように、1ステップ試験の原理からなるべきである。
本目的は、抗体に特異的に結合できる少なくとも2種のレセプターR1およびR2と試料とをインキュベートすることによる免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の検出法であって、R1は固相に結合されているか、固相に結合可能であり、R2は標識を持ち、R1の必須成分が測定対象の抗体によって特異的に認識される多量体型の結合パートナーであり、試料中に存在する同じ特異性を持つIgG分子による干渉が単量体型の結合パートナーを添加することによって排除される本発明の方法により達成される。
検出対象のIgM抗体と同じ特異性を持つ、試料中に存在するIgA、IgDおよびIgE抗体は、IgG抗体と比較して極めて低濃度で生じるので、IgA、IgDおよびIgEクラスによる干渉はないと予想される。抗体クラスIgA、IgDおよびIgEは、IgG分子と同様に、かつ五量体として存在するIgM抗体とは対照的に、単独の分子の形態で存在する抗体であり、それぞれ2つの抗原結合部位を持つ。したがってIgG、IgA、IgDおよびIgE抗体の構造上の類似性ゆえに、下記記載の抗原特異的IgM検出法により、IgG抗体により引き起こされる干渉に加えて、IgD、IgAおよびIgE抗体による干渉もおそらく低減されるだろう。
本発明の方法は、同じ抗原特異性を持つIgGクラスの抗体が存在する試料中の免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の測定を可能にする。また、本発明の方法は、リウマチ因子の存在下に行なうことができる。手の込んだ試料の前処理は必要ない。
驚くべきことに、本発明の抗原特異的IgM抗体を検出するための免疫アッセイに単量体型の結合パートナーの使用は、同じ抗原特異性を持つIgG抗体により引き起こされる干渉を効果的に排除できることが判明した。この方法では、単量体型の結合パートナーがIgG抗体の抗原結合部位に特異的に結合する。同じ試料中に存在する同じ特異性を持つ検出対象のIgM抗体は、驚くべきことに、単量体型の結合パートナーとは反応しないか、無視できるほど弱い程度にしか反応しない。「無視できるほど弱い」という用語は、IgM抗体の抗原結合部位が単量体型結合パートナーによってブロックされないことを意味する。これはおそらく、単量体のエピトープに対してかなり高い親和性を持つ個々の分子の形態で存在するIgG抗体と比較して単量体のエピトープに対する五量体のIgM抗体のより低い親和性のためだろう。これは、単量体型結合パートナーの存在下にもかかわらず、IgM試験の感度が損なわれないことを意味する。単量体の結合パートナーによって遮蔽されたIgG抗体は、IgM試験を妨害しない。
驚くべきことに、IgG抗体を結合したリウマチ因子による干渉が、IgGの抗原結合部位に結合する単量体型の結合パートナーによって効果的に排除されうることも判明した。IgG抗体の抗原結合部位がブロックされるので、IgG抗体またはリウマチ因子を前もって分離することなく抗原特異的IgM抗体を検出することができる。単量体の形態で使用される結合パートナーは、遮蔽されたIgG抗体またはリウマチ因子の凝集反応を誘発できない。これにより、試験操作全体に悪影響を及ぼしうる沈殿物による望ましくない濁度が防止される。
それゆえ、本発明の方法において、IgG抗体を分離する逐次試験法は、全く必要がない。というのも、これらは干渉しないからである。したがって、本方法の特別の利点は、その試験操作の簡便さである。
試験試薬が液相に存在するいわゆる湿式試験の他に、タンパク質または抗体の検出に適するあらゆる標準的乾式試験方式も使用できる。これらの乾式試験または例えばEP-A-0 186 799号明細書に記載されているような試験片では、試験成分が担体に適用される。したがって、本発明の方法を試験片形式で行なう場合は、洗浄ステップは必要ない。しかしながら、本発明の方法は、湿式試験として行なわれることが好ましい。
全てのレセプターと単量体の結合パートナーを試料と共にインキュベートし、本方法を1ステップで行なうことができる。これは任意にインキュベーション後に洗浄ステップを一回だけ必要とする。
通常、二種類のレセプターR1およびR2と単量体型結合パートナーとを使用して本発明の方法を実施する。湿式試験を用いる場合は、レセプターR2が液相に存在する。R1は、液相に存在してもよいし、既に固相に結合されていてもよい。単量体型の結合パートナーは、液相に存在することが好ましい。
固相に結合することができるが固相にはまだ結合されていないレセプターをR1として使用する場合は、試料をレセプターR1およびR2と単量体型結合パートナーとを共にインキュベートする。この工程では、試料抗体がR1とR2に結合する。このインキュベーションは、固相の存在下に行なうことができる。固相-R1-試料抗体-R2で構成された複合体がこの工程で生成する。次に、固相を液相から分離し、任意に固相を洗浄し、R2の標識を測定する。該標識は、通常固相で測定されるが、液相で測定することもできる。
R1およびR2と単量体型結合パートナーと試料とのインキュベーションを固相の非存在下で行なう場合は、引き続いて試験混合物全体を固相と接触させなければならず、任意に洗浄を行ない、標識を測定する。
レセプターR1が既に固相結合型である場合は、試料とレセプターR2とを固相結合型レセプターR1に添加して、一緒にインキュベートする。この試験法では、試験混合物を固相結合型レセプターR1に添加する前に、試料を単量体型結合パートナーおよびR2と共に予備インキュベートすることが好ましい。さらなる操作は、上述の方法と一致する。
また本発明の方法を数ステップで行なうこともできる。この場合は、好ましくは、試料を単量体型結合パートナーと共にインキュベートした後、レセプターR1およびR2と共にインキュベートする。試験混合物は、続いて他のレセプターと共にインキュベートし、それにより、これは数ステップで行ないうる。さらなる試験操作は既に記載した方法と一致する。
R1の重要な成分は、検出対象のIgM抗体によって特異的に認識される多量体型の結合パートナーであり、これはポリハプテンとも呼べる。本発明の多量体型結合パートナーは、複数の、好ましくは同一のまたは類似する同等なエピトープ領域が担体に結合されていて、測定対象の抗体と特異的に反応する構造であると理解される。「類似する」または「同等な」という用語は、多量体型結合パートナー上に存在する構造が必ずしもすべて同一である必要はないことを意味する。唯一の条件は、測定対象のIgM抗体がそれらのエピトープ領域に特異的に結合するということである。該エピトープ領域は、例えば、抗原または抗イディオタイプ抗体から得られる。該エピトープ領域は、例えば、糖タンパク質に存在するような糖鎖から得ることもできる。また、例えば、リン脂質やリポ蛋白質に存在するような脂質構造から得ることもできる。したがって、該ポリハプテンまたは多量体型結合パートナーは、同一のまたは類似する多くのエピトープ領域から構成され、したがって、既に前記したように試料抗体に対して多くの類似する結合部位を有する。抗原がタンパク質である場合、結合部位は、タンパク質抗原(分析物)のタンパク質配列の一部である配列であり、そこにタンパク質に対する抗体が特異的に結合するペプチドと理解される。糖構造を含む抗原の場合、結合部位は、試料抗体が特異的に結合する糖分子の領域であるだろう。脂質構造の場合は、脂質分子が試料抗体の結合部位になりうる。結合部位はペプチド領域と糖および/または脂質との組み合わせから構成されうる。しかしながら、ペプチドに基づくポリハプテンを多量体型結合パートナーとして使用することが好ましい。本発明の多量体型結合パートナーの場合は、五量体のIgM試料抗体が多量体型の結合パートナーに高い親和性で特異的に結合できるように、高いエピトープ密度が第1に重要である。多量体型の本発明の結合ペートナーの個々のペプチド成分に関する他の規準は、単量体型の結合パートナーについて後述する必要条件と一致する。
ポリハプテン用の担体材料としては、例えばラテックス、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたは金などの粒子を使用できる。デキストランなどの多量体や、ポリリジン、ウシ血清アルブミン、β-ガラクトシダーゼ、非特異的免疫グロブリンまたはその断片などのポリペプチドも、ポリハプテン用の担体材料として使用できる。担体を選択する際の唯一の条件は、それが試料液中の抗体との交差反応性を持たないということである。さらなる条件は、担体にハプテンを結合することが可能でなければならないということである。エピトープ領域またはハプテンは、例えばEP-A-0 650 053号明細書や国際公開96/03652号パンフレットに記載されているような当業者に知られている方法で担体材料に結合される。またエピトープと担体材料との間にスペーサー領域を挿入してもよく、これも上記特許出願公開公報に記載されている。当業者に知られているスペーサー領域は全て使用されうる。必要条件は、それらが免疫学的に不活性であるということ、すなわちそれらが試料中の抗体と交差反応しないということである。
R1は固相に直接結合してもよいし、特異的結合系により固相に間接的に結合してもよい。固相へのR1の直接結合は、当業者に公知の方法で達成される。特異的結合系によりR1を固相に間接的に結合する場合、R1は、多量体型の本発明の結合パートナーと特異的結合系の反応パートナーとから構成されるコンジュゲートである。この場合、特異的結合系は、互いに特異的に反応できる2つのパートナーであると理解される。この場合、結合能は、免疫反応または他の特異的反応に基づかれうる。ビオチンとアビジンの組み合わせまたはビオチンとストレプトアビジンの組み合わせを特異的結合系として使用することが好ましい。他の好ましい組み合わせは、ビオチンと抗ビオチン、ハプテンと抗ハプテン、抗体のFc断片とそのFc断片に対する抗体、または炭水化物とレクチンである。そして、この特異的に結合しうる対の反応パートナーの一方が、レセプターR1を形成するコンジュゲートの一部になる。
そして特異的結合系の他方の反応パートナーは、固相に存在する。特異的結合系の他方の反応パートナーは、当業者に知られている従来の方法で不溶性担体材料に結合できる。この場合は、共有結合ならびに吸着性の結合も好適である。とりわけ好適な固相は、内表面が特異的結合系の反応パートナーでコーティングされたポリスチレン製または類似のプラスチック製の試験管もしくはマイクロタイタープレートである。ラテックス粒子、モレキュラーシーブ物質、ガラスビーズなどの粒状物質、プラスチックチューブなども好適であり、とりわけ好ましい。紙などの多孔性層状担体も担体として使用できる。
レセプターR2は、試料抗体に特異的に反応する分子と標識とからなる。試料抗体と特異的に反応する分子は、例えば、抗体、抗体断片、タンパク質、試料抗体に特異的に結合する抗原またはハプテンなどでありうる。R2の成分として分子に関する唯一の条件は、それが検出対象の試料抗体に特異的に反応するということである。この分子は、試料抗体を特異的に結合する多量体型の本発明の結合パートナーであることが好ましい。R2に含まれる多量体型結合パートナーは、R1用の多量体型結合パートナーと同じ方法で調製される。
レセプターR2のさらなる成分は標識である。直接検出可能な物質、例えば、化学発光性、蛍光性もしくは放射活性の物質、または金属ゾル粒子、ラテックス粒子もしくは金粒子などを標識として使用することが好ましい。酵素または他の生体分子、例えばハプテンなども、標識として好ましい。ジゴキシゲニンは、ハプテンのなかでもとりわけ好ましい標識である。標識する方法は、当業者にはよく知られており、ここでさらに説明する必要はない。標識は、化学発光物質、蛍光物質、放射活性物質、または金属ゾル粒子、ラテックス粒子、金粒子を測定することにより、あるいは酵素によって変換される基質を測定することにより、よく知られた方法で直接検出される。
標識は間接的に検出することもできる。この場合は、それ自身がシグナル生成基に結合されたさらなるレセプターが、ジゴキシゲニンのようなハプテンなどのR2の標識に特異的に結合する。シグナル生成基、例えば化学発光性、蛍光性もしくは放射活性の物質または酵素または金粒子などは、当業者によく知られている方法で検出される。R2の標識に特異的に結合するさらなるレセプターとしては、例えば抗体や抗体断片を使用できる。この標識の間接的検出を使用する場合は、R2標識はジゴキシゲニンまたは他のハプテンであることが好ましく、検出はジゴキシゲニンまたはハプテンに対するペルオキシダーゼ結合抗体によって行われる。
同じ抗原特異性を有するIgG抗体による干渉を低減させるために、単量体型の結合パートナーを本発明に従って試験混合物に加える。「単量体」という用語は、本発明の単量体型の結合パートナーが、干渉を低減させようとする抗体に対する1つのエピトープ領域のみまたは1つの結合部位のみ、すなわちIgG抗体と免疫学的に特異的に反応する構造を含むことを意味する。これら結合パートナーの単量体構造は、干渉を低減させようとする抗原特異的IgG抗体だけが単量体型の結合パートナーに結合し、検出対象のIgM抗体には結合しないことを保証するために重要である。
該エピトープ領域は、多量体型の結合パートナーについて前記したように、例えば、抗原または抗イディオタイプ抗体から得ることができる。多量体型の結合パートナーに関する必要条件に従って、単量体型結合パートナーのエピトープ領域は、糖および/または脂質構造あるいはペプチド、脂質および/または糖成分を持つ混合構造からも得ることができる。その干渉を低減させようとするIgGクラスの抗体が同じ特異性を持つIgM抗体の存在下に特異的に結合する結合部位を有するエピトープ領域から得られうる全ての構造を使用できる。結合部位、すなわち単量体型で使用される結合パートナーに関する唯一の必要条件は、IgGへの特異的結合能が保持されているということである。また、この条件は、結合部位に糖構造または脂質構造が存在する場合にも適用される。
本発明によれば、干渉を排除しようとするIgG抗体が特異的に結合する結合部位に隣接または重複する単量体型の結合パートナーを使用することもできる。したがって、結合部位が検出対象のIgM抗体によって認識されるエピトープと正確には同一でないエピトープを含むIgG抗体による干渉を排除することもできる。これらのIgG抗体は、多かれ少なかれ検出対象のIgM抗体との交差反応性を持ちうる。それら交差反応性抗体のエピトープに対応し、したがってそれらに高い親和性を有する単量体型の結合パートナーの添加も、それらIgG抗体による干渉を排除する。IgG抗体による干渉を排除するために、検出対象のIgM抗体のエピトープに多かれ少なかれ一部重複する単量体型の結合パートナーの混合物を使用することが好ましい。
単量体型の結合パートナーとして、ペプチドを使用することが好ましい。分析物がタンパク質である場合、結合部位は、多量体型結合パートナーに関する定義と同様に、タンパク質抗原のタンパク質配列の一部である配列を持ち、このタンパク質に対する抗体、本発明の場合はIgG抗体がそこに特異的に結合するペプチドと理解される。これらのペプチドに加えて、結合部位は、上述のペプチドと本質的に同等な、検出対象のIgG抗体への結合特異性および/または親和性を有するアミノ酸配列を持つペプチドを包含すると理解される。これらのペプチドは、好ましくは、上述のペプチドから個々のアミノ酸残基の置換、欠失または挿入によって得ることができる。
また、特異的結合部位に対応する本発明のペプチドは、1または複数のアミノ酸が化学反応によって誘導体化されているペプチド誘導体を包含すると理解される。本発明のペプチド誘導体の例は、具体的には、骨格および/または反応性アミノ酸側鎖基、例えば遊離アミノ基、遊離カルボキシル基および/または遊離ヒドロキシル基などが誘導体化されている分子である。アミノ基の誘導体の具体例は、スルホンアミドまたはカルボキサミド、チオウレタン誘導体および例えば塩酸塩などのアンモニウム塩である。カルボキシル基誘導体は、塩類、エステルおよびアミドである。ヒドロキシル基誘導体の例は、0-アシルまたは0-アルキル誘導体である。ペプチドは、当業者に知られている方法に従って化学合成によって製造されることが好ましく、ここでとりわけて説明する必要はない。
また、ペプチド誘導体という用語は、1または複数のアミノ酸が20種類の「標準」アミノ酸の天然に存在するまたは天然には存在しないアミノ酸ホモログによって置換されているようなペプチドをも包含する。かかるホモログの例は、4-ヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシリジン、3-メチルヒスチジン、ホモセリン、オルニチン、β-アラニンおよび4-アミノ酪酸である。該ペプチド誘導体は、それらが由来するところのペプチドと本質的に同等な、その干渉を低減させようとするIgG抗体への結合特異性および/または親和性を持たなければならない。
特異的結合部位に対応する本発明のペプチドは、干渉を低減させようとするIgG抗体に対して上述のペプチドまたはペプチド誘導体と本質的に同等な結合特異性および/または親和性を持つペプチド模倣物質とも呼ばれ、以下ペプチド模倣物という。ペプチド模倣物は、測定対象の抗体との相互作用に関してペプチドの代わりとなることができ、とりわけプロテイナーゼとペプチダーゼに対して天然ペプチドより高い安定性を持ちうる化合物である。ペプチド模倣物の製造法はGiannisおよびKolter“Angew.Chem.”105(1993)1303-1326とLeeら,Bull.Chem.Soc.Jpn.66(1993)2006-2010に記載されている。
結合部位の長さ、すなわち本発明の単量体型のペプチドの長さは、通常少なくとも4アミノ酸である。長さは、好ましくは4〜20アミノ酸、または6〜15アミノ酸、とりわけ好ましくは9〜12アミノ酸である。ペプチド模倣物またはペプチド誘導体の場合は、分子のサイズに関して同等の長さが必要である。
単量体型の結合パートナーである本発明の単量体ペプチドは、その干渉を低減させようとするIgG抗体が特異的に結合するエピトープを含む。しかしながら、もはや特異的エピトープには相当しないさらなる隣接ペプチド配列が、ペプチドのN末端および/またはC末端に存在してもよい。この処置はペプチドの溶解性を向上させるために必要でありうる。唯一の必要条件は、単量体型の結合パートナーであるペプチドが実際に単量体として存在し、その干渉を低減させようとするIgG抗体に強く結合する能力が保たれているということである。
単量体型の結合パートナー(この場合はペプチド)の使用に関する必要条件は、多量体型の結合パートナーまたは多量体型のポリハプテン上に存在するエピトープと同じエピトープがその単量体型で存在するということである。これは、干渉を効果的に排除するために、単量体型の結合パートナーに結合するIgG抗体が検出対象のIgM抗体と同じ免疫学的特異性をもたなければならないことを意味する。IgM抗体試験では、同じ抗原特異性を持つIgG抗体から干渉は常に排除されるべきである。
単量体型の結合パートナーは、多量体型の結合パートナー上のエピトープの濃度と比較して10倍〜10,000倍過剰で使用されることが好ましい。単量体型の結合パートナーは、10倍〜1000倍過剰で使用することが好ましく、100倍過剰がとりわけ好ましい。単量体型の結合パートナーの濃度は、単量体型結合パートナーが一定濃度以上でもはや可溶性でなくなる場合にのみ制限される。多量体型結合パートナー上のエピトープの濃度は担体材料のサイズに依存し、当業者によりいかなる試験法およびいかなる検出パラメーターについてもこれを容易に個別に決定できる。多量体型の結合パートナー上のエピトープの濃度に関する規準値としては、ペプチドエピトープ(長さ:6〜20アミノ酸)の場合、担体材料1mlあたり5〜500ngペプチドが好適であることがわかった。
IgG抗体による干渉をさらに低減させるために、単量体型の結合パートナーに加えて、例えば序文に記載した抗Fd抗体などの追加の干渉排除剤も使用できる。
抗原特異的IgM試験の試験法として、不均一法ならびに均一法も使用できる。均一試験法では、R1、試料IgMおよびR2から構成される複合体が固相に結合されない。その代わりに、複数のかかる複合体が互いに凝集することは、IgM濃度の尺度となる濁度をもたらす。IgG干渉を低減させる単量体型の結合パートナーは、該凝集を阻害しない。
しかしながら、不均一法を行なうことが好ましい。ブリッジ試験の原理(EP-A-0 280 211号明細書参照)に従った方法を行なうことがとりわけ好ましい。好ましい態様の一つとして、本発明のポリハプテンと特異的結合系の結合パートナー、好ましくはビオチンとのコンジュゲートをR1として使用する。R2は、本発明のポリハプテンまたは多量体型結合パートナーと標識、好ましくはジゴキシゲニンとから構成される。同じポリハプテンを、R1とR2に使用することがとりわけ好ましい。この好ましい態様では、レセプターR1およびR2を、この場合好ましくはアビジンまたはストレプトアビジンで被覆された固相の存在下に、試料と単量体型結合パートナー、好ましくはペプチドとを同時にインキュベートする。この工程では、R1とR2の多量体型結合パートナーは、測定対象のIgM抗体と特異的に反応するが、同じ特異性を有するIgG抗体は、ペプチドにより、すなわち単量体型結合パートナーにより遮蔽されるため、それらは多量体型結合パートナーには結合できない。したがってアビジン/ストレプトアビジン-R1-IgM-試料抗体-R2の複合体全体が固相に結合される。固相を液相から分離し、任意に固相を洗浄した後、固相に結合した複合体を、R2の標識を特異的に認識する別のレセプター(この場合はジゴキシゲニンに対する抗体)と共にインキュベートする。この別のレセプターは、シグナル生成基に結合し、好ましくは酵素ペルオキシダーゼを有する。さらなる任意の洗浄ステップ後に、試料抗体をシグナル生成基を介して、この場合は酵素によって変換される基質により検出する。この試験法では、試料とR1、R2、単量体型結合パートナーおよび追加のレセプターとのインキュベーションは同時に行ないうる。これにより、この試験法はさらに簡略化される。
前記試験法は、自動システムへの適用にも極めて適している。種々のHIV抗原に対するHIV抗体などの複数の抗原特異的IgM抗体を検出することもできる。そのような場合、追加のレセプターは、R2の標識を特異的に認識するので、これを汎用の標識として使用することもできる。異なる抗原特異性を有する複数のIgM抗体を同時に検出する場合は、R1とR2のポリハプテン成分ならびに干渉を低減させるために使用する単量体型結合パートナーが適当な特異性を持たなければならない。
当業者に知られている生物学的液体は、すべて試料として使用できる。全血、血清、血漿、尿、唾液などの体液を試料として使用することが好ましい。
試料、固相および上述のレセプターに加えて、緩衝液、塩類、界面活性剤、BSAなどのタンパク質添加剤などの、用途に応じて必要とされうる他の添加剤も試験混合物中に存在しうる。必要な添加剤は当業者には知られているか、もしくは当業者が簡単な方法で決定できる。
本発明の主題は、免疫アッセイ用の通常の試験添加剤に加えて、単量体型の結合パートナー、すなわち好ましくはペプチドと、固相に結合でき、必須成分が測定対象の抗体によって特異的に認識される多量体型結合パートナーであり、測定対象の抗体に結合できるレセプターR1とを含有する、免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の決定のための試薬でもある。
本発明のさらなる主題は、免疫アッセイ用の通常の試験添加剤に加えて、単量体型の結合パートナー、すなわち好ましくはペプチドと、決定対象の抗体に結合できる2つのレセプターR1およびR2とを含有し、そのうちR1は固相に結合でき、R2は標識を持ち、レセプターR1およびR2のそれぞれの必須成分が決定対象の抗体によって特異的に認識される多量体型の結合パートナーである、免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の決定のための試薬である。
本発明のさらなる主題は、前記した本発明の方法の一つによるIgM抗体の抗原特異的決定のための、多量体型結合パートナーの使用である。
本発明のさらなる主題は、抗原特異的IgM抗体の測定においてIgG抗体および/またはリウマチ因子による干渉を低減させるための、単量体型結合パートナー、すなわち好ましくはペプチドの使用である。
本発明を下記の実施例で説明する。
実施例
抗原特異的IgM試験:抗HIV2-IgM
ビオチン標識およびジゴキシゲニン標識多量体抗原(HIV2)を試料抗体およびストレプトアビジン被覆固相と共にインキュベートする(25℃または37℃で約60〜180分のインキュベーション。本実施例では25℃で120分)。洗浄ステップの後、壁に結合した免疫複合体を抗ジゴキシゲニン-ペルオキシダーゼコンジュゲートと反応させる(25℃または37℃で約30〜120分のインキュベーション。本実施例では25℃で60分)。さらなる洗浄ステップの後、ペルオキシダーゼコンジュゲート-標識免疫複合体を基質反応によって検出する(25℃または37℃で約30〜120分のインキュベーション。本実施例では25℃で60分)。
反応ステップ(基質反応を除く)は、約0.05〜0.4%の界面活性剤(ここでは0.2%ポリドカノール)および約0.5%タンパク質/タンパク質誘導体添加剤(ここではとりわけラクトアルブミン由来のペプトンとBSA)を含むトリス/HCl緩衝液(pH7.5、50〜150mM。本実施例では100mM)で行なう。
この場合の試料抗体は、HIV2エピトープに対するモノクローナルマウス抗体(IgMおよびIgG)を抗HIV陰性ヒト血清に約2〜10μg/mlとなるように希釈したものである。
ポリハプテン上のペプチドエピトープの濃度と比較して10倍または100倍過剰の遊離の非標識HIV2ペプチド抗原を用いて競合を行なう。
Figure 0003958797

Claims (10)

  1. 抗体に特異的に結合することができる少なくとも2種の異なるレセプターR1およびR2と試料とをインキュベートすることによる免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の決定方法であって、R1は固相に結合しているか、または固相に結合可能であり、R2が標識を有するものであり、R1の必須成分が決定対象の抗体によって特異的に認識される多量体型の結合パートナーであり、かつ試料中に存在する同じ特異性を有するIgG分子による干渉を単量体型の結合パートナーを添加することにより低減させる、免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体の決定方法。
  2. R1およびR2の必須成分が決定対象の抗体により特異的に認識される多量体型の結合パートナーであり、かつ試料中に存在する同じ特異性を有するIgG分子による干渉を単量体型の結合パートナーを添加することにより減少させる、請求項1記載の方法。
  3. ビオチン/アビジン、ビオチン/ストレプトアビジン、ビオチン/アンチビオチン、ハプテン/アンチハプテン、抗体のFc断片/該Fc断片に対する抗体または炭水化物/レクチンを特異的結合系として用いてR1と固相とを結合させる、請求項1または2記載の方法。
  4. 該レセプターR2を、化学発光性、蛍光性もしくは放射活性の物質により、または酵素もしくは他の生体分子により標識する、請求項1〜3いずれか記載の方法。
  5. 該試料を、R1およびR2と、干渉を減少させるために用いられる単量体型の結合パートナーとを同時にインキュベートする、請求項1〜4いずれか記載の方法。
  6. レセプターR2の標識に特異的に結合し、R2の標識に特異的なレセプターと標識とのコンジュゲートである別のレセプターと共に試験混合物をインキュベートし、ついで該標識を決定する、請求項1〜5いずれか記載の方法。
  7. 干渉を減少させるために用いられる単量体型の結合パートナーを、R1およびR2の多量体型の結合パートナー上にあるエピトープの濃度に比較して、10倍〜10,000倍過剰の濃度で添加する、請求項1〜6いずれか記載の方法。
  8. 免疫アッセイのための慣用の試験添加剤に加えて、単量体型の結合パートナーと、固相に結合可能である、決定対象の抗体に結合可能なレセプターR1とを含み、かつその必須成分が多量体型の結合パートナーである、請求項1〜7いずれか記載の方法により免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体を決定するための試薬。
  9. 免疫アッセイのための慣用の試験添加剤に加えて、単量体型の結合パートナーと、決定対象の抗体に結合可能な2つのレセプターR1およびR2とを含み、その必須成分がそれぞれ多量体型の結合パートナーであり、かつR1が固相に結合可能であり、R2が標識を有する、請求項1〜7いずれか記載の方法により免疫グロブリンMクラスの抗原特異的抗体を決定するための試薬。
  10. 抗原特異的IgM抗体の決定において、IgG抗体および/またはリウマチ因子による干渉減少させるための単量体型の結合パートナーの使用。
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