JP3956282B2 - 面分析装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分析装置に関し、特に面分析を行う面分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子線やX線を用いた面分析装置では、試料に照射する電子線あるいはX線を走査し、この照射によって試料から得られる電子線やX線を検出して試料の面分析を行っている。
【0003】
面分析では、試料の分析領域内の複数の分析点を走査することで測定するが、分析位置や分析点数は分析対象等に依存しており必ずしも固定したものではなく、分析対象によって変化することがある。このように分析位置や分析点数が不確定な場合には、必ずしも初期設定した測定条件では適正なX線カウントが取得されるとは限らない。そのため、得られるX線カウントが少ない箇所が多数出現した場合には、測定を再度行う必要が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、電子線やX線を用いた分析装置では、分析時間あるいは測定電流によってX線カウントを調整することができる。このX線カウントの調整において、分析時間や測定電流の変更は測定感度等に影響を及ぼすため、単純に行うことができない。例えばX線検出器としてエネルギー分散型検出器を用いた場合には、試料に入射あるいは吸収される電流を増すと感度が低下するという特性があり、また、重・軽元素からなる複合組成において微量成分の検出感度を高めるために測定電流を増加させると、系全体が飽和状態となり分解能や直線性が低下することになる。そのため、単に測定電流を増加することによってX線カウントを増やすことはできない。
【0005】
一方、測定電流を固定した状態で分析時間を長くした場合には、全X線のカウント数は改善されるが、重・軽元素からなる複合組成中の主成分のX線カウントが飽和した状態で測定されるおそれがあり、元素間のX線カウント比が得られないこととなる。
【0006】
また、上記の他、広い領域を分析する場合、試料への照射プローブ径を大きくすることによって広い領域をカバーすると、測定電流は照射プローブ径に応じて結果的に増大することになり、X線カウントの飽和という問題が発生することになる。そのため、面分析において、有効なX線カウントを得ると共に、元素間の正しいX線カウント比を得るには、複数回測定を繰り返すこととなる。
上記のように、従来の分析装置では、X線カウントの調整において分析時間と測定電流とをどのように設定するかが問題となっている。
【0007】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、分析時間あるいは測定電流を最適条件に自動調整することができる面分析装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、面分析の最適条件を求めるための測定点を電子線像から自動決定し、この全測定点についてスペクトル測定を行って元素のX線強度を求め、このX線強度が適正な範囲であるかを判定し、この判定結果に基づいて分析時間あるいは測定電流を最適条件に自動調整し、この最適条件において面分析を行う。ここで、測定点をスペクトル測定するには当該測定点に電子線あるいはX線を照射するが、測定点は面分析の最適条件を求めるためであるため、この測定点の点数は対象領域全体を面分析するために電子線あるいはX線を照射する照射点の点数よりも極めて少数とすることができる。
【0009】
本発明の面分析装置は、照射電子線又は照射X線を走査する走査手段と、照射電子線又は照射X線により発生した電子線及びX線を測定する測定手段と、この測定手段で得た電子線に基づく電子線像により測定位置を決定する測定位置決定手段と、測定位置におけるX線強度を判定するX線強度判定手段と、X線強度判定手段の判定結果に基づいて分析時間及び/又は測定電流の制御条件を定める制御手段とを備えた構成とし、測定手段は制御条件に基づいてX線強度を測定し面分析を行う。
【0010】
本発明の面分析装置によれば、測定位置決定手段で測定位置を自動設定し、X線強度判定手段で測定位置のX線強度を判定し、制御手段で判定結果に基づいて分析時間及び/又は測定電流の制御条件を自動調整することによって、分析時間あるいは測定電流を最適条件に自動調整することができる。
【0011】
ここで、制御手段が定める制御条件は、X線強度が有効最小値以下の判定に基づく分析時間の増加、X線強度が飽和の判定に基づく測定電流の減少である。このX線強度の判定において、有効最小値の判定はX線カウントの最小値を設定することで行い、また、飽和判定は単位時間当りのX線カウント数やデッドタイムを設定することで行うことができる。
【0012】
また、測定位置決定手段は、二次電子線像の表面形状、又は反射電子線像の濃度分布から測定位置を定める。反射電子線像の濃度分布から測定位置を定める場合には、測定位置決定手段は、反射電子線像の濃度分布に基づいて複数の領域に分割し、この分割領域中の任意の点を測定位置とする。
【0013】
また、本発明の面分析装置は、制御手段において走査領域と面分析点数に基づいて測定電流の制御条件を定める構成とすることができる。X線強度が飽和する場合には、面分析点数を増加することによって測定電流を減少させる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照しながら詳細に説明する。
はじめに、本発明の面分析装置の態様について説明する。図1は本発明の面分析装置の一構成例を説明するための概略ブロック図である。
本発明の面分析装置1は、照射電子線又は照射X線を走査する走査手段2と、照射電子線又は照射X線により発生した電子線及びX線を測定する測定手段3と、測定手段3で得た電子線に基づく電子線像によって測定位置を決定する測定位置決定手段4と、測定位置におけるX線強度を判定するX線強度判定手段5と、X線強度判定手段5の判定結果に基づいて分析時間及び/又は測定電流の制御条件を定める制御手段6とを備える。
【0015】
走査手段2は、試料を支持するステージを移動させたり、あるいは試料に照射する電子線あるいはX線を振ることによって、試料上において照射電子線あるいは照射X線をスキャンする。このスキャンによって照射位置を順次移動することで、分析対象の全領域について走査し面分析する。
【0016】
測定手段3は、試料上に電子線あるいはX線を照射し、この電子線照射あるいはX線照射によって試料から放出された二次電子線、反射電子線、あるいはX線を測定する。本発明の面分析装置では、この二次電子線あるいは反射電子線を用いて面分析の最適な制御条件を求めるための測定位置を定め、この最適な制御条件の元で測定したX線のX線強度を用いる面分析を行う。
【0017】
測定位置決定手段4は、測定手段3で取得した電子線で得られる電子線像を用いて測定位置を決定する。電子線として二次電子線を用いる場合には、二次電子線で得られる二次電子線像の表面形状に基づいて測定位置を決定する。また、電子線として反射電子線を用いる場合には、反射電子線で得られる反射電子線像の濃度分布(コントラスト)に基づいて測定位置を決定する。
【0018】
X線強度判定手段5は、測定位置決定手段4で定めた測定位置についてスペクトル測定を行って元素のX線強度を求め、求めたX線の強度の最小値と飽和を判定する。
制御手段6は、X線強度判定手段5の判定結果に基づいて、測定手段の制御条件や走査手段の制御条件を設定する。測定手段の制御条件は、分析時間及び測定電流であり、走査手段の制御条件は照射位置である。なお、測定電流は、測定装置の制御においては制御電流であり、試料に流れる電流においては試料電流である。以下では測定電流によって説明する。
【0019】
次に、本発明の面分析装置において制御条件を定める動作例について、図1、及び図2のフローチャート、図3のX線カウント値の図を用いて説明する。なお、図1、3中には、フローチャート中の工程を表すSで始まる符号を示している。
【0020】
はじめに、測定位置決定手段4は、測定手段3から取得した二次電子線像又は反射電子線像から測定位置を定め(ステップS1)、制御手段6は走査手段2及び測定手段3を制御してこの測定位置におけるスペクトル測定を行う(ステップS2)。X線強度判定手段5は、測定位置におけるスペクトル測定に基づいて、分析対象の元素についてX線のカウント状態を調べる。ここで、X線のカウント状態とは、X線カウントが有効最小値以下であるか否か、及びX線カウントが飽和しているか否かの状態である。X線カウントが有効最小値以上であり、かつ飽和していない状態であるとき、測定に最適な制御条件に設定されているとする。一方、X線カウントが有効最小値以下である場合、あるいは飽和した状態である場合には、測定に最適な制御条件に設定されていないとして、以下の工程で分析時間や測定電流を最適な制御条件に設定する(ステップS3)。
【0021】
最適な制御条件の設定は、はじめにX線カウントの飽和について、単位時間当りのX線カウント数やデッドタイムを設定することで判定する。例えば、X線カウントが飽和状態にある場合には、単位時間当りに計数されるX線カウント数は設定値を超え、また、分析時間内において計数値が上限に達し計数変化が停止している時間が、設定したデッドタイムを超えることになる(ステップS4)。
【0022】
X線カウントが飽和状態にないと判定された場合には(ステップS4)、次にX線カウントが有効最小値以下であるかを判定する。この判定では、予めX線カウントの最小値を設定しておき、この設定値と比較することで行うことができる(ステップS5)。
【0023】
X線カウントが有効最小値以上である場合には、最適な制御条件にあるとし、この制御条件の元で面分析を行う。一方、X線カウントが有効最小値以下である場合には、制御条件の一つである分析時間を増加させる調整を行う。この分析時間の増加調整は、例えば、X線カウント値と設定最小値との比率に応じて行うことができる(図3中のS6)(ステップS6)。
【0024】
X線カウントが飽和状態にあると判定された場合には(ステップS4)、次に、制御条件の一つである測定電流を減少させる調整を行う(図3中のS7)。この測定電流の減少調整は、例えば、測定電流に所定の比率を乗じることで行うことができる(ステップS7)。この測定電流の減少調整の後、飽和した測定位置について再度測定を行ってX線のカウント状態を調べ(ステップS8)、測定電流の減少調整によってX線カウントが最小値以下に低下した場合には(図3中のS8)、ステップS6の工程によって分析時間を増加する調整を行う(図3中のS6′)。
上記各工程によって、はじめに分析時間を調整し、次に測定電流を調整することによって、適正なX線カウント範囲に入るように設定する。
【0025】
次に、上記ステップS1の工程において、二次電子線像に基づく測定位置の選定を図4のフローチャートを用いて説明し、反射電子線像に基づく測定位置の選定を図5のフローチャート、図6の反射電子線像の概略図、及び図7の濃度分布を表すヒストグラムを用いて説明する。
【0026】
ここで、二次電子線像及び反射電子線像の電子線像は、電子線を試料上でスキャンすることによって1回の走査で取得する他に、1回の走査で全領域を電子線のスキャンができない場合には、ステージの移動と組み合わせることによって、複数の画像を合成することで取得することができる。
【0027】
二次電子線像に基づいて測定位置を選定する場合には、図4のフローチャートに示すように、二次電子線像を取得した後(ステップS1a)、二次電子線像の表面形状から測定位置を選出し(ステップS1b)、選出した測定位置を記憶する(ステップS1c)。なお、二次電子線像の表面形状からの測定位置の選出は、予め設定した形状特性と一致する位置をデータ処理で抽出することによって自動で行うことができる。
【0028】
また、反射電子線像に基づいて測定位置を選定する場合には、図5のフローチャートに示すように、反射電子線像を取得した後(ステップS1A)、取得した反射電子線像のコントラストから測定位置を選出する。この反射電子線像のコントラストを用いた測定位置の選出は、反射電子線像の濃度分布中から所定の濃度段階を持つ測定位置を選択することで行う。
【0029】
はじめに、取得した反射電子線像から画像の濃度分布を表すヒストグラムを求める。図6はヒストグラムの一例であり、横軸に濃度を示し、縦軸に画素数を示している(ステップS1B)。このヒストグラムを濃度に応じて所定の段階に分割する。図6のヒストグラム例では、A,B,C,Dの4段階に分割する例を示しているが、分割数は任意に設定することができる。
【0030】
図7に示す反射電子線像の概略図は、この分割したA,B,C,Dの各濃度の範囲を示している。この各濃度の範囲中の任意の点を選択し(ステップS1D)、選出した測定位置を記憶する。図7中に示す×印は各濃度の範囲中で選択した測定位置を表している(ステップS1E)。
なお、各濃度の範囲中からの任意の点の選択は、例えば、各濃度範囲を代表する濃度を選択し、この濃度を持つ画素を反射電子線像から抽出することで行うことができる(ステップS1C)。
【0031】
次に、本発明の面分析装置において制御条件を定める他の動作例について、図1、及び図8のフローチャート、図9の走査説明図を用いて説明する。
広範囲の面分析において、照射する電子線のビーム径やX線の照射領域を広げる場合がある。通常、電子線のビーム径やX線の照射領域を広げると、試料に流れる測定電流が増加し、X線カウントの飽和が発生することになる。本発明の面分析装置は、このような広範囲の面分析に対応するために、測定電流を減少させると共に面分析点を増加させ、これによって面分析を行う領域を拡大することができる。
【0032】
この動作例では、はじめに、制御手段6はスキャンする分析領域を定め、この分析領域をスキャンするための面分析点の点数を初期値として入力し(ステップS11)、この領域を面分析点の点数で除することによって、面分析一点当りの分析領域を求める(ステップS12)。
面分析一点当りの領域の大きさとこの分析領域に流れる測定電流との間にはほぼ測定装置で定まる関係があるため、面分析一点当りの領域の大きさから測定電流を求める(ステップS13)。測定手段3は、この測定電流の制御条件の元で測定を行い(ステップS14)、X線強度判定手段5で飽和判定を行う(ステップS15)。飽和と判定された場合には、制御手段6は面分析点の点数を増加し(ステップS16)、前記ステップS12〜ステップS15の工程を繰り返し、飽和しない面分析点の点数を選出する。
【0033】
図9は、上記動作を概略的に示すものであり、図9(a)はスキャン領域Rを面分析点数nでスキャンする例を示し、図9(b)はスキャン領域Rを面分析点数m(>面分析点数n)でスキャンする例を示している。
図9(a)に示す例では、面分析点数nで定まる測定電流Inは、面分析一点当りの分析領域が広いため大きな測定電流となる。これに対して、図9(b)に示す例では、面分析点数mを増やすことで面分析一点当りの分析領域が小さくなって測定電流Imは減少し、X線カウントの飽和を解消することができる。
【0034】
本発明の実施の形態によれば、絶対的である有効最小X線カウント、及び相対的である異なる元素間でのX線カウント比を一度の面分析で正確に取得することができ、一度の面分析で元素の分布状態を求めることができる。
本発明の実施の形態によれば、分析時間あるいは測定電流を最適条件に自動で調整することができるため、オペレータを煩雑な操作から解放することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の面分析装置によれば、分析時間あるいは測定電流を最適条件に自動調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の面分析装置の一構成例を説明するための概略ブロック図である。
【図2】本発明の面分析装置の制御条件を定める動作例を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の面分析装置の制御条件を定める動作例を説明するためのX線カウントの図である。
【図4】本発明の二次電子線像に基づく測定位置の選定を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の反射電子線像に基づく測定位置の選定を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の反射電子線像に基づく測定位置の選定を説明するための反射電子線像の概略図ある。
【図7】本発明の反射電子線像に基づく測定位置の選定を説明するための反射電子線像の濃度分布を表すヒストグラムである。
【図8】本発明の面分析装置において制御条件を定める他の動作例を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の面分析装置において制御条件を定める他の動作例を説明するための走査説明図である。
【符号の説明】
1…面分析装置、2…走査手段、3…測定手段、4…測定位置決定手段、5…X線強度判定手段、6…制御手段。

Claims (5)

  1. 照射電子線又は照射X線を走査する走査手段と、
    前記照射電子線又は照射X線により発生した電子線及びX線を測定する測定手段と、
    第1の電子線照射によって前記測定手段で得られた電子線像に基づいて、面分析の分析条件を求める照射位置を定めるための測定位置を決定する測定位置決定手段と、
    前記測定位置に対する第2の照射によって測定手段で得られた当該測定位置におけるスペクトルに基づいて、当該測定位置のX線強度を判定するX線強度判定手段と、
    前記X線強度判定手段の判定結果に基づいて、測定手段の面分析のためのX線強度測定のための分析時間及び測定電流の制御条件を定める制御手段とを備え、
    前記測定手段は、前記制御手段に基づくX線強度測定によって面分析を行うことを特徴とする面分析装置。
  2. 前記制御手段が定める制御条件は、X線強度が有効最小値以下の判定に基づく分析時間の増加、X線強度が飽和の判定に基づく測定電流の減少であることを特徴とする、請求項1に記載の面分析装置。
  3. 前記測定位置決定手段は、二次電子線像の表面形状又は反射電子線像の濃度分布から分析位置を定めることを特徴とする、請求項1又は2に記載の面分析装置。
  4. 前記測定位置決定手段は、
    反射電子線像の濃度分布に基づいて複数の領域に分割し、当該分割領域中の任意の点を測定位置とすることを特徴とする、請求項3に記載の面分析装置。
  5. 前記制御手段は、
    走査領域と、当該走査領域内を電子線又はX線の各一照射領域で分割する面分析点数とに基づいて測定電流の制御条件を定めることを特徴とする、請求項1に記載の面分析装置。
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