JP3956103B2 - フォトマスクブランク、フォトマスク及びフォトマスクブランクの評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路又は高密度集積回路などの製造工程において使用されるフォトマスクブランク、フォトマスク及びフォトマスクブランクの評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
LSI、VLSI等の高密度半導体集積回路やCCD(電荷結合素子)やLCD(液晶表示素子)用のカラーフィルターや磁気ヘッド等の微細加工には、フォトマスクを使ったフォトリソグラフィー技術が用いられている。
【0003】
この微細加工には、石英ガラス、アルミノシリケートガラス等の透明な基板の上に、一般的にはクロム膜からなる遮光膜をスパッタ又は真空蒸着等で形成したフォトマスクブランクの遮光膜を所定のパターンに形成したフォトマスクを用いている。
【0004】
このようなフォトマスクは、基板上にクロム系の遮光膜を成膜したフォトマスクブランクに、フォトレジストや電子線レジストを塗布した後、所定のパターンに選択的に露光し、現像工程、リンス工程及び乾燥工程を経てレジストパターンを形成し、次いで、このレジストパターンをマスクとして、硝酸セリウムアンモニウムと過塩素酸の混合水溶液からなるエッチング液を用いてウエットエッチングを行うか又は塩素ガスを用いたドライエッチングを行うことによりマスクされていない部分のクロム系膜を除去し、その後レジストを除去することにより遮光部と透光部とからなる所定のパターンを有するフォトマスクを形成することができる。
【0005】
しかし、このクロム系の遮光膜は光反射率が大きく、被露光物である半導体基板で反射した光が投影レンズを通ってフォトマスクで反射し、再び半導体基板に戻るため、これを防止するために、通常、遮光膜の表面、又は表面及び裏面に反射防止膜を形成している。
【0006】
このようなフォトマスクに使用される反射防止膜を形成したフォトマスクブランクの構造としては、合成石英基板上に遮光膜をスパッタもしくは真空蒸着等で形成し、更に遮光膜として用いるクロム膜の表層部に、シリコンウェハから反射した露光光が再度反射されるのを防止する反射防止膜を設けているもの(2層構造膜)や、基板側にも反射防止膜を設けたもの(3層構造膜)などがあり、基板側の反射防止膜としてクロム炭化物及びクロム窒化物を含有するクロム炭化窒化物膜、遮光膜としてクロム膜、表面側の反射防止膜としてクロム酸化物及びクロム窒化物を含有するクロム酸化窒化物膜を順次積層したフォトマスクブランクが提案されている(特公昭62−37385号公報)。また、反射防止膜としてCrONを用いたもの(特公昭61−46821号公報)、CrNを用いたもの(特公昭62−27386号公報、特公昭62−27387号公報)、更に、窒化クロムを用いた単層膜(特公平4−1339号公報)なども提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなフォトマスクは、透明基板上に形成されたレジストパターンをマスクとしてドライエッチングで遮光膜及び反射防止膜をエッチングすることによってパターンを形成したものであるが、この場合、遮光膜や反射防止膜は、フォトマスク製造における洗浄等の前処理やマスク使用時の洗浄に使用される硫酸等の酸に弱く、この洗浄工程で遮光膜又は反射防止膜の光学的特性(反射率)が変化してしまうという問題ある。
【0008】
また、パターンを正確に転写するためには、基板が平坦であることが強く要求されるが、いかに平坦な基板を用いても、この基板上に2層又は3層以上の複数層のクロム系膜を形成すると、これら複数層のクロム系膜の膜応力が大きくなり、成膜前後で基板が反ってしまい、表面平坦度が低下するという問題がある。また、膜自体の応力で基板の平坦度が変化したフォトマスクブランクは、それ自体が平坦であっても、その後、クロム系膜をパターンニングしてクロム系膜を除去すると、応力が解放され、これにより平坦度が変化して、フォトマスクが反ってしまい、このようなフォトマスクを用いてシリコン基板等の上にマスクパターンを転写すると転写されたパターンに歪みが生じてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を改善するためになされたもので、フォトマスク製造の際の洗浄等による光学的特性の変化が微小で、かつ膜応力が小さいフォトマスクブランク、フォトマスク及びフォトマスクブランクの評価方法を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、露光光が透過する透明基板上に少なくとも1層の遮光膜と少なくとも1層の反射防止膜とを積層した複層膜を有するフォトマスクブランクの複層膜の最表面層を炭素含有量が0.01〜4原子%であるクロム系材料からなる反射防止膜とすることによって、マスク加工時の光学的特性(特に、反射率)の変化が微小となり、硫酸等の酸などに対する耐薬品性が向上し、更に、基板上に形成された複層膜の膜応力(総膜応力)が小さいフォトマスクブランクが得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記のフォトマスクブランク、フォトマスク及びフォトマスクブランクの評価方法を提供する。
請求項1:
露光光が透過する透明基板上に少なくとも1層の遮光膜と少なくとも1層の反射防止膜とを積層した複層膜を有するフォトマスクブランクであって、複層膜の最表面層を炭素含有量が0.01〜4原子%であるクロム系材料からなる反射防止膜とすることにより、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の波長248〜600nmにおける反射率変化量を2%以下、かつ複層膜の膜応力を100MPa以下としたことを特徴とするフォトマスクブランク。
請求項2:
複層膜の最表面層が、クロム酸化窒化炭化物又はクロム酸化炭化物からなることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
請求項3:
複層膜の最表面層の膜厚が2〜70nmであることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
請求項4:
最表面層以外の反射防止膜が、クロム酸化炭化物、クロム酸化窒化炭化物又はクロム酸化窒化物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
請求項5:
請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランクをリソグラフィ法によりパターン形成してなることを特徴とするフォトマスク。
請求項6:
露光光が透過する透明基板上に少なくとも1層の遮光膜と少なくとも1層の反射防止膜とを積層した複層膜を有するフォトマスクブランクの評価方法であって、複層膜の最表面層を炭素含有量が0.01〜4原子%であるクロム系材料からなる反射防止膜とし、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の波長248〜600nmにおける反射率変化量が2%以下、かつ複層膜の膜応力が100MPa以下であるフォトマスクブランクを、優れた反射率を有し、所望とする微細なパターンが歪むことなく正確に形成されたフォトマスクを得ることができるフォトマスクブランクとして評価することを特徴とするフォトマスクブランクの評価方法。
請求項7:
最表面層以外の反射防止膜が、クロム酸化炭化物、クロム酸化窒化炭化物又はクロム酸化窒化物からなることを特徴とする請求項6記載のフォトマスクブランクの評価方法。
【0012】
本発明のフォトマスクブランクは、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の反射率変化量が2%以下であり、フォトマスク製造における洗浄等の前処理や得られたフォトマスク使用時の洗浄に使用される硫酸に接触しても反射率の変化量が小さい耐薬品性に優れたものであり、総膜応力も極めて小さいため、優れた光学的特性(反射率)を有し、所望とする微細なパターンが歪むことなく正確に形成されたフォトマスクを得ることができ、更なる半導体集積回路装置における高集積化、微細化に十分対応することができるものである。
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のフォトマスクブランクは、露光光が透過する透明基板上に少なくとも1層の遮光膜と少なくとも1層の反射防止膜とを積層した複層膜を有するフォトマスクブランクであり、上記フォトマスクブランクを100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の波長248〜600nmにおける反射率変化量が2%以下(即ち、反射率2%増加から2%減少の範囲)であるものである。
【0014】
上記基板としては、露光光を透過する透明なものであれば特に制限されず、例えば、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムなどを好ましく用いることができる。
【0015】
一方、上記複層膜において、遮光膜と反射防止膜の積層順、積層数は特に限定されないが、基板から最も離れた層が反射防止膜であることが好ましく、特に、遮光膜及び反射防止膜を、図1に示したように、透明基板1上に遮光膜2、反射防止膜3、反射防止膜4の順に積層した3層構造のものや、図2に示したように、透明基板1上に反射防止膜3、遮光膜2、反射防止膜3’、反射防止膜4の順に積層した4層構造のものが好ましい。
【0016】
上記遮光膜及び反射防止膜としては、酸素、窒素及び炭素から選ばれる少なくとも1種を含むクロム系材料で形成したものであることが好ましく、特に、クロム酸化炭化物(CrCO)、クロム酸化窒化炭化物(CrCON)又はクロム酸化窒化物(CrON)からなるものが好ましい。
【0017】
また、本発明のフォトマスクブランクにおいては、上記遮光膜及び反射防止膜からなる複層膜の最表面層の炭素含有量が4原子%以下(即ち、0〜4原子%)、特に2原子%以下(即ち、0〜2原子%)であることが好ましい。炭素含有量が4原子%を超えると硫酸等の酸に対する耐薬品性が低下し、フォトマスクブランクやこれから得られたフォトマスクの光学特性である反射率の変化が大きくなり、微細なパターンを精度よく転写することができなくなる恐れがある。
【0018】
特に、上記最表面層がクロム酸化窒化炭化物、クロム酸化炭化物等の炭素を含有するクロム系材料である場合には、その炭素含有量が0.01〜4原子%、好ましくは0.01〜2原子%、特に好ましくは0.1〜2原子%、更に好ましくは1〜2原子%であることが好ましい。なお、図1,2においては反射防止膜4が最表面層に相当する。
【0019】
なお、上記最表面層がクロム酸化窒化物(CrON)である場合、その組成は、CrON膜の場合はOが30〜70原子%、Nが1〜60原子%、残部がCrであることが好ましく、クロム酸化窒化炭化物(CrCON)である場合は、Cが上述の範囲であると共に、Oが30〜70原子%、Nが1〜30原子%、残部がCrであることが好ましい。
【0020】
更に、最表面層の膜厚は2〜70nmであることが好ましい。より好ましくは5〜70nmである。膜厚が2nm未満であると耐薬品性が低下する恐れがある、また70nmを超えると膜応力が大きくなる恐れがある。
【0021】
一方、上記最表面層以外の遮光膜及び反射防止膜の組成や膜厚は、特に限定されないが、CrCO膜の場合はCが1〜20原子%、Oが5〜60原子%、残部がCr、CrCON膜の場合はCが1〜20原子%、Oが5〜60原子%、Nが1〜60原子%、残部がCr、CrON膜の場合はOが30〜70原子%、Nが1〜60原子%、残部がCrであることが好ましく、また、膜厚は、遮光膜の場合は10〜90nm、特に20〜80nmであることが好ましく、反射防止膜の場合は5〜80nm、特に10〜70nmであることが好ましい。
【0022】
また、本発明のフォトマスクブランクにおいては、複層膜の膜応力(総膜応力)が100MPa以下(即ち、0〜100MPa)、特に80MPa以下(即ち、0〜80MPa)、とりわけ60MPa以下(即ち0〜60MPa)であることが好ましい。総膜応力が100MPaを超えると、フォトマスクとしてパターンを形成して膜の応力が解放されたときに、パターンに歪みが生じ、要求される寸法制度が得られなくなる場合がある。
【0023】
本発明のフォトマスクブランクは、例えば、ターゲットとしてクロムを用いた反応性スパッタリングにより、遮光膜及び反射防止膜を基板上に形成して得ることができる。
【0024】
ターゲットとしてはクロム単体だけでなくクロムが主成分であるものであればよく、酸素、窒素、炭素のいずれかを含むクロム、又は酸素、窒素、炭素を組み合わせたものをクロムに添加したターゲットを用いてもよい。
【0025】
スパッタリング方法としては、直流(DC)電源を用いたものでも、高周波(RF)電源を用いたものでもよく、またマグネトロンスパッタリング方式であっても、コンベンショナル方式であってもよいが、DCスパッタリングは機構が単純であり好ましい。また、マグネトロンスパッタリングを用いた場合、成膜速度が速くなり、生産性が向上する点から好ましい。なお、成膜装置は通過型でも枚葉型でも構わない。
【0026】
具体的には、反応性スパッタリングにより遮光膜又は反射防止膜としてクロム酸化炭化物(CrCO)膜を成膜する場合、スパッタガスとしてCH4、CO2、CO等の炭素を含むガスとCO2、O2等の酸素を含むガスをそれぞれ1種以上導入する。また、これらにAr、Ne、Kr等の不活性ガスを添加することもできる。これらのガスは、チャンバ内に別々に導入しても予め混合して導入してもよい。
【0027】
特に、スパッタガスとしてCO2、又はCO2と不活性ガスとの混合ガスを用いると安全であり、CO2ガスはO2等より反応性が低いが故に、チャンバ内の広範囲に均一にガスを回り込ませることができ、成膜されるCrCO膜の膜質が均一になる点から好ましい。
【0028】
クロム酸化窒化炭化物(CrCON)膜を成膜する場合、スパッタガスとしてCH4、CO2、CO等の炭素を含むガスとCO2、O2等の酸素を含むガスとN2、NO、N2O等の窒素を含むガスをそれぞれ1種以上導入する。また、これらにAr、Ne、Kr等の不活性ガスを添加することもできる。これらのガスは、チャンバ内に別々に導入しても予め混合して導入してもよい。
【0029】
特に、スパッタガスとしてCO2とN2との混合ガス、又はCO2とN2と不活性ガスとの混合ガスを用いると安全であり、CO2ガスはO2等より反応性が低いが故に、チャンバ内の広範囲に均一にガスを回り込ませることができ、成膜されるCrCON膜の膜質が均一になる点から好ましい。
【0030】
クロム酸化窒化物(CrON)膜を成膜する場合、スパッタガスとしてNO、O2等の酸素を含むガスとN2、NO、N2O等の窒素を含むガスをそれぞれ1種以上導入する。また、これらにAr、Ne、Kr等の不活性ガスを添加することもできる。これらのガスは、チャンバ内に別々に導入しても予め混合して導入してもよい。
【0031】
なお、最表面層として、クロム酸化炭化物(CrCO)膜、クロム酸化窒化炭化物(CrCON)膜等の炭素を含む膜を形成する場合、上記の方法において炭素を含むガスの流量を調整することによって目的とする炭素含有量に制御することができる。
【0032】
このようにして得られた本発明のフォトマスクブランクをリソグラフィ法によりパターン形成することによりフォトマスクを得ることができる。
【0033】
具体的には、図3(A)に示したように、透明基板1の上に反射防止膜3、遮光膜2、反射防止膜3’、反射防止膜4を順次形成した後、最表面層である反射防止膜4の上にレジスト膜5を形成し、図3(B)に示したように、レジスト膜5をパターニングし、更に、図3(C)に示したように、反射防止膜4、反射防止膜3’、遮光膜2及び反射防止膜3をドライエッチング又はウェットエッチングした後、図3(D)に示したように、レジスト膜5を剥離する方法が採用され得る。この場合、レジスト膜の塗布、パターニング(露光、現像)、レジスト膜の除去は、公知の方法によって行うことができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0035】
[実施例1]
6”の角形石英基板上に金属クロムターゲットを用い、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚10nm)を成膜した。このCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが42原子%、Cが5原子%、Oが43原子%、Nが10原子%含まれていた。
【0036】
この反射防止膜上に金属クロムをターゲットとし、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を0.7sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCOからなる遮光膜(膜厚70nm)を成膜した。このCrCO膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが69原子%、Cが13原子%、Oが18原子%含まれていた。
【0037】
次に、この遮光膜上に金属クロムをターゲットとし、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚25nm)を成膜した。このCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが42原子%、Cが5原子%、Oが43原子%、Nが10原子%含まれていた。
【0038】
更に、この反射防止膜上に金属クロムをターゲットとし、Arを32sccm、CO2を2sccm、N2Oを48sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚3nm)を最表面層として成膜し、基板上に4層の膜が積層された複層膜が形成されたフォトマスクブランクを得た。なお、この最表面層であるCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが33原子%、Cが2原子%、Oが50原子%、Nが15原子%含まれていた。
【0039】
得られたフォトマスクブランクの複層膜の膜応力(総膜応力)は60MPaであり、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の反射率の変化量は、波長248nmの光では−0.66%、365nmでは+0.40%、436nmでは+0.96%、488nmでは+1.28%、600nmでは+1.38%であった。結果を表1に示す。なお、上記において−は反射率の減少、+は反射率の増加を表す(以下同じ)。
【0040】
[参考例1]
6”の角形石英基板上に金属クロムターゲットを用い、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚10nm)を成膜した。このCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが42原子%、Cが5原子%、Oが43原子%、Nが10原子%含まれていた。
【0041】
この反射防止膜上に金属クロムをターゲットとし、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を0.7sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCOからなる遮光膜(膜厚70nm)を成膜した。このCrCO膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが69原子%、Cが13原子%、Oが18原子%含まれていた。
【0042】
次に、この遮光膜上に金属クロムをターゲットとし、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を5sccm、N2Oを20sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚10nm)を成膜した。このCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが44原子%、Cが5原子%、Oが38原子%、Nが13原子%含まれていた。
【0043】
更に、この反射防止膜上に金属クロムをターゲットとし、Arを32sccm、N2Oを48sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrONからなる反射防止膜(膜厚10nm)を最表面層として成膜し、基板上に4層の膜が積層された複層膜が形成されたフォトマスクブランクを得た。なお、この最表面層であるCrON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが33原子%、Oが55原子%、Nが12原子%含まれていた。
【0044】
得られたフォトマスクブランクの複層膜の膜応力(総膜応力)は80MPaであり、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の反射率の変化量は、波長248nmの光では−0.21%、365nmでは+0.17%、436nmでは+0.36%、488nmでは+0.44%、600nmでは+0.43%であった。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
6”の角形石英基板上に金属クロムターゲットを用い、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚10nm)を成膜した。このCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが42原子%、Cが5原子%、Oが43原子%、Nが10原子%含まれていた。
【0046】
この反射防止膜上に金属クロムをターゲットとし、スパッタリングガスとしてArを32sccm、CO2を0.7sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCOからなる遮光膜(膜厚70nm)を成膜した。このCrCO膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが69原子%、Cが13原子%、Oが18原子%含まれていた。
【0047】
更に、この遮光膜上に金属クロムをターゲットとし、Arを32sccm、CO2を14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrCONからなる反射防止膜(膜厚25nm)を最表面層として成膜し、基板上に3層の膜が積層された複層膜が形成されたフォトマスクブランクを得た。なお、この最表面層であるCrCON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが42原子%、Cが5原子%、Oが43原子%、Nが10原子%含まれていた。
【0048】
得られたフォトマスクブランクの複層膜の膜応力(総膜応力)は60MPaであり、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の反射率の変化量は、波長248nmの光では+4.5%、365nmでは+10.2%、436nmでは+12.6%、488nmでは+12.6%、600nmでは+10.0%であった。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例2]
6”の角形石英基板上に金属クロムターゲットを用い、スパッタリングガスとしてArを32sccm、N2Oを14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrONからなる反射防止膜(膜厚10nm)を成膜した。このCrON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが50原子%、Oが28原子%、Nが22原子%含まれていた。
【0050】
この反射防止膜上に金属クロムをターゲットとし、スパッタリングガスとしてArを32sccm、N2Oを0.7sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrONからなる遮光膜(膜厚70nm)を成膜した。このCrON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが72原子%、Oが12原子%、Nが13原子%含まれていた。
【0051】
更に、この遮光膜上に金属クロムをターゲットとし、Arを32sccm、N2Oを14sccm、N2を10sccm流し、放電中のガス圧0.3Pa、投入電力6.6W/cm2のDCスパッタ法にてCrONからなる反射防止膜(膜厚25nm)を最表面層として成膜し、基板上に3層の膜が積層された複層膜が形成されたフォトマスクブランクを得た。なお、この最表面層であるCrON膜の組成をESCAにより分析した結果、Crが37原子%、Oが48原子%、Nが15原子%含まれていた。
【0052】
得られたフォトマスクブランクの複層膜の膜応力(総膜応力)は560MPaであり、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の反射率の変化量は、波長248nmの光では−0.47%、365nmでは−0.24%、436nmでは+0.03%、488nmでは+0.40%、600nmでは+0.40%であった。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、耐薬品性が向上し、マスク製造又はマスク使用の際の洗浄等による光学的特性の変化が微小で、かつ総膜応力が小さい高精度なフォトマスクブランク及びフォトマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るフォトマスクブランクの断面図である。
【図2】本発明の他の実施例に係るフォトマスクブランクの断面図である。
【図3】フォトマスクの製造方法を示した説明図であり、(A)はレジスト膜を形成した状態、(B)はレジスト膜をパターニングした状態、(C)は複層膜のエッチングを行った状態、(D)はレジスト膜を除去した状態の概略断面図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 遮光膜
3,3’ 反射防止膜
4 反射防止膜(最表面層)
5 レジスト膜
Claims (7)
- 露光光が透過する透明基板上に少なくとも1層の遮光膜と少なくとも1層の反射防止膜とを積層した複層膜を有するフォトマスクブランクであって、複層膜の最表面層を炭素含有量が0.01〜4原子%であるクロム系材料からなる反射防止膜とすることにより、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の波長248〜600nmにおける反射率変化量を2%以下、かつ複層膜の膜応力を100MPa以下としたことを特徴とするフォトマスクブランク。
- 複層膜の最表面層が、クロム酸化窒化炭化物又はクロム酸化炭化物からなることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクブランク。
- 複層膜の最表面層の膜厚が2〜70nmであることを特徴とする請求項1又は2記載のフォトマスクブランク。
- 最表面層以外の反射防止膜が、クロム酸化炭化物、クロム酸化窒化炭化物又はクロム酸化窒化物からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のフォトマスクブランク。
- 請求項1乃至4のいずれか1項記載のフォトマスクブランクをリソグラフィ法によりパターン形成してなることを特徴とするフォトマスク。
- 露光光が透過する透明基板上に少なくとも1層の遮光膜と少なくとも1層の反射防止膜とを積層した複層膜を有するフォトマスクブランクの評価方法であって、複層膜の最表面層を炭素含有量が0.01〜4原子%であるクロム系材料からなる反射防止膜とし、100℃の濃硫酸に2時間浸漬した前後の波長248〜600nmにおける反射率変化量が2%以下、かつ複層膜の膜応力が100MPa以下であるフォトマスクブランクを、優れた反射率を有し、所望とする微細なパターンが歪むことなく正確に形成されたフォトマスクを得ることができるフォトマスクブランクとして評価することを特徴とするフォトマスクブランクの評価方法。
- 最表面層以外の反射防止膜が、クロム酸化炭化物、クロム酸化窒化炭化物又はクロム酸化窒化物からなることを特徴とする請求項6記載のフォトマスクブランクの評価方法。
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