JP3956065B2 - 表皮一体樹脂成形品の成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表皮と、射出成形によりその表皮の裏面に向けて射出した溶融樹脂を固化させた基材とを一体成形してなる表皮一体樹脂成形品の成形方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車の内装品としてのインストルメントパネルやドアトリム等の樹脂成形品は、表側の外観の見映えや感触を向上させるために表側の表皮と裏側の基材とで構成されている。この樹脂成形品を成形する方法として、例えば特公平5−42936号公報に示されているように、表皮を下側の成形型にセットした後、上下の成形型を閉じてキャビティを形成し、次いで、上側の成形型に開口したゲートから基材となる溶融樹脂を上記キャビティ内に射出して表皮及び基材を一体に成形する方法が知られている。
【0003】
ところが、この成形方法では、基材となる溶融樹脂がゲートから直接的にキャビティ内の表皮の裏面に向けて射出されるため、表皮のゲートに対向する部位がその溶融樹脂の射出圧力や熱の影響を受けて損傷してしまうという問題がある。すなわち、表皮の表面に皺や変色が発生したり、表皮が融解して破れたりすることがある。
【0004】
そこで、従来、例えば特開平7−276422号公報に示されているように、インストルメントパネル裏面に裏側に突出するリブを設け、成形型においてこのリブの先端に対応する部分に開口したゲートから溶融樹脂を射出するようにすることが提案されている。すなわち、この成形方法では、ゲートから射出した溶融樹脂を一旦上記リブの箇所で拡散させることにより、その射出圧力及び熱が直接的に表皮に影響を及ぼさないようにし、表皮の損傷を防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記提案例の成形方法では、表皮の損傷を防止することができるものの、ゲートから射出した溶融樹脂を十分に拡散させる大きさのリブを成形品に設ける必要があるため、成形品の設計の自由度が低くなると共に、スペース等の観点からこのようなリブを形成することができない場合には、この方法を採用することができないという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮と基材とを射出成形により一体成形する際に、表皮の構成を見直すことによって、上記前者の従来例(特公平5−42936号公報)のように溶融樹脂をゲートから直接的に表皮の裏面に向けて射出する場合であっても、表皮を損傷させることなく表皮及び基材の一体成形を可能とし、成形品の形状の自由度を向上させようとすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、表皮の裏面において基材となる溶融樹脂の射出位置に対応した部位に、その射出された溶融樹脂が表皮を損傷するのを抑制する保護シートをインサートするようにした。
【0008】
具体的には、請求項1の発明では、表皮と、射出成形により該表皮の裏面に向けて射出した溶融樹脂を固化させた基材とを一体成形してなる表皮一体樹脂成形品の成形方法を前提とする。
【0009】
そして、第1及び第2成形型からなる2分割式成形型の第1成形型に表皮をセットする一方、上記第2成形型に、該第2成形型に開口したゲートを塞ぐように保護シートをセットした後、両成形型を閉じてキャビティを形成し、次いで、上記第2成形型のゲートから基材の溶融樹脂を、該溶融樹脂の射出圧力により上記保護シートの上記表皮側の全面が表皮裏面に当接するように上記キャビティ内に射出することにより、保護シートをインサートした状態で上記表皮及び基材を一体に成形するようにする。
【0010】
この発明により、保護シートは溶融樹脂の射出圧力により表皮の裏面側に押しやられて保護シートの表皮側の全面が表皮裏面に当接し、溶融樹脂の射出圧力や熱から確実に表皮を保護する。このように保護シートが溶融樹脂の射出圧力や熱の表皮に対する影響を軽減するので、表皮が変形したり破損したりすることはない。このため、ゲートから射出した溶融樹脂を十分に拡散させる大きさのリブを成形品に設けなくても済む。よって、表皮一体樹脂成形品の設計自由度を向上させつつ、その外観の見映えを向上させることができる。しかも、保護シートを予め表皮の裏面に設ける場合のように、保護シートの位置決めをゲートに対応するように正確に行う必要はない。また、保護シートを予め表皮の裏面に設ける方法として、例えば表皮に植設した針状のピンに保護シートを刺すことにより表皮に取り付ける方法が考えられるが、この方法はピンを植設することによる表皮の損傷を防止する観点から好ましくない。そこで、接着剤等を使用する必要があるが、この発明では、外観には影響のない基材の裏側に位置する第2成形型にピンを植設してそのピンに保護シートを刺しておくだけでよく、接着剤は不要となる。よって、成形品の成形工程をより一層簡略化しつつ、確実に表皮の損傷を防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態に係る成形方法により成形してなる表皮一体樹脂成形品としての自動車用ドアトリム1を示し、図1で左側の面が車室内となる表面であり、上下方向略中央部が表側(車室内側)に突出していて、この突出部の上側面がアームレスト部1aとなる。このドアトリム1は、表側の表皮2と、後述の如くこの表皮2の裏面に向けて射出した溶融樹脂R(図4参照)を固化させた基材3とが一体成形されてなる。この表皮2は、サーモプラスチックオレフィン(TPO)からなり、スラッシュ成形や真空成形等により、その表面形状がこのドアトリム1の表面形状と同じになるように成形されるものである。一方、上記基材3はポリプロピレンラバー(PPR)からなる。
【0012】
上記表皮2の裏面において上記アームレスト部1aの上方近傍には、図2に示すように、多孔質材つまり開口面積が小さい多数の貫通孔4a,4a,…を開けた(メッシュ状の)紙からなる略矩形状の保護シート4がインサートされている。この保護シート4の厚みは0.2〜1.0mmが好ましく、その貫通孔4a,4a,…全体のシート4面積に対する開口率は約30%とされている。そして、この保護シート4は、表皮2の裏面において基材3となる溶融樹脂Rの射出位置(後述のゲート14)に対応した部位に設けられて、射出された溶融樹脂Rが表皮2を損傷するのを抑制するものである。すなわち、上記溶融樹脂Rがゲート14から直接的に表皮2の裏面の保護シート4に向けて射出され、この射出成形により保護シート4が表皮2及び基材3間にインサートされるが、このとき、この保護シート4が溶融樹脂Rの射出圧力や熱から表皮2を保護するようになっている。
【0013】
以上の構成からなるドアトリム1を成形するには、図3に示すように、射出成形型10を用いる。この射出成形型10は、ドアトリム1表側の第1成形型11(下型)と裏側の第2成形型12(上型)とからなる2分割式成形型とされている。この第1成形型11の成形面11aはドアトリム1(表皮2)の表面形状と、また第2成形型12の成形面12aはドアトリム1(基材3)の裏面形状とそれぞれ対応するように形成されている。そして、この第1及び第2成形型11,12を閉じたときにその両成形型11,12間にドアトリム1の外形と同形状のキャビティ13(図4参照)が形成されるようになっている。さらに、上記第2成形型12において表皮2の裏面の保護シート4に対応する部分には、固化(硬化)後に基材3となる溶融樹脂Rを射出するためのゲート14が開口されている。このゲート14は第2成形型12内のスプル15を経て該第2成形型12上面に設けた射出機17のノズル17aに接続されている。この射出機17はシリンダ17b内にスクリュウ17cを有し、このスクリュウ17cの回転により上記溶融樹脂Rをノズル17a及びスプル15を経てゲート14からキャビティ13内に射出するようになっている。
【0014】
次に、上記射出成形型10を用いてドアトリム1を成形する方法を説明する。但し、最初に、本発明とは異なる成形方法を参考形態として説明し、その後、本発明の実施形態を、該参考形態と異なる点を中心に説明する。
【0015】
(参考形態)
先ず、予めスラッシュ成形や真空成形等により成形しておいた表皮2の裏面に、紙にパンチ等で貫通孔4a,4a,…を開けることにより作製した保護シート4を接着剤で取り付ける。このとき、保護シート4を、後述の如く表皮2を第1成形型11にセットしたときにその保護シート4が第2成形型12のゲート14と対応するように正確に位置決めしながら取り付ける。
【0016】
そして、第1及び第2成形型11,12を開いた状態で上記表皮2を成形面11aの形状に合わせて第1成形型11にセットした後、図4に示すように、両成形型11,12を閉じてその両成形型11,12間にキャビティ13を形成する。このとき、保護シート4は第2成形型12のゲート14に対向するように位置付けられる。
【0017】
次いで、射出機17のシリンダ17b内のスクリュウ17cを回転させてそのノズル17a及び第2成形型12内のスプル15を経てゲート14から溶融樹脂Rをキャビティ13内に射出する。このとき、溶融樹脂Rが上記表皮2の裏面の保護シート4に向けて射出されるが、その保護シート4が溶融樹脂Rの射出圧力や熱の表皮2に対する影響を軽減するので、表皮2が変形したり破損したりすることはない。しかも、保護シート4には多数の貫通孔4a,4a,…が開けられているので、溶融樹脂Rの一部が保護シート4の各貫通孔4aを貫通して表皮2の裏面に到達し、基材3及び表皮2に対する保護シート4の接着性を向上させる。このことにより、保護シート4がインサートされた状態で表皮2及び基材3が一体成形され、表皮2及び基材3の密着性並びに表皮2の外観見映えが良好であるドアトリム1が得られる。
【0018】
したがって、上記参考形態では、ドアトリム1の表皮2の裏面においてゲート14に対応した部位に、そのゲート14から射出された溶融樹脂Rが表皮2を損傷するのを抑制する保護シート4がインサートされているので、溶融樹脂Rが直接的に表皮2に向けて射出されないようにするために、ドアトリム1のゲート14に対応する部位に溶融樹脂Rを十分に拡散させ得る大きさのリブ等を設けなくても済み、溶融樹脂Rが直接的に表皮2に向けて射出されても、保護シート4により溶融樹脂Rの射出圧力や熱による表皮2の損傷を防止することができる。また、簡単な射出成形型10により容易に表皮2及び基材3を一体成形することができる。よって、ドアトリム1の設計自由度を向上させつつ、低コストでその外観の見映えを良好にすることができる。
【0019】
(実施形態)
ここで、本発明の実施形態に係る成形方法を説明する。図5及び図6は本発明の実施形態を示し(尚、以下の実施形態では図3及び図4と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、ドアトリム1内にインサートされた保護シート4の材料とそのドアトリム1の成形方法とが上記参考形態とは異なる。
【0020】
すなわち、この実施形態では、保護シート4は、メッシュ率が30〜70%の不織布(多孔質材)からなっていて、第1及び第2成形型11,12を閉じて溶融樹脂Rをゲート14から射出する前の状態では表皮2の裏面には取り付けられていない。
【0021】
具体的には、第2成形型12のゲート14の周囲に複数(図5ではゲート14の両側に2本)の針状のピン20,20が植設され、この各ピン20に上記保護シート4を刺すことによりゲート14が塞がれるようになっている。そして、先ず、第1成形型11に表皮2をセットする一方、第2成形型12に、ゲート14を塞ぐように保護シート4を各ピン20に刺してセットした後、図6に示すように、両成形型11,12を閉じてキャビティ13を形成する。
【0022】
次いで、上記第2成形型12のゲート14から基材3の溶融樹脂Rを射出する。すると、保護シート4は、その溶融樹脂Rの射出圧力により表皮2の裏面側に押しやられ、最終的には表皮2の裏面に当接し、溶融樹脂Rの射出圧力や熱から確実に表皮2を保護する。また、保護シート4は不織布からなるので、第2成形型12の各ピン20に刺すことが容易でかつ溶融樹脂Rの射出圧力により容易に外れると共に、上記参考形態と同様に、溶融樹脂Rの一部が保護シート4のメッシュを貫通するので、基材3及び表皮2に対する保護シート4の接着性が向上する。このことにより、表皮2及び基材3の密着性が優れかつ表皮2の外観品質が良好であるドアトリム1が得られる。
【0023】
したがって、上記実施形態では、第2成形型12に、そのゲート14を塞ぐように保護シート4をセットしておき、そのゲート14から基材3の溶融樹脂Rを、その射出圧力により保護シート4が表皮2裏面側に押しやられるようにキャビティ13内に射出するようにしたので、上記参考形態のように、表皮2による保護シート4の位置決めをゲート14に対応するように正確に行う必要はない。また、第2成形型12のゲート14周囲にピン20,20を植設してこの各ピン20に保護シート4を刺すようにしたので、容易にゲート14を塞ぐように保護シート4を第2成形型12にセットすることができ、接着剤は不要となる。しかも、各ピン20は基材3の裏側に位置するので、表皮2の表側には全く影響がない。よって、上記参考形態よりも容易にドアトリム1の成形を行いつつ、その外観の見映えを確実に向上させることができる。
【0024】
尚、上記参考形態及び実施形態では、表皮一体樹脂成形品としてドアトリム1である場合を示したが、これに限らず、自動車の他の内装品であるインストルメントパネルやコンソールボックス等であってもよく、その他どのような表皮一体樹脂成形品であっても本発明を適用することができる。
【0025】
また、上記参考形態で使用した保護シート4を実施形態における保護シートに、或いは実施形態で使用した保護シート4を参考形態における保護シートにそれぞれ使用できることは勿論である。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によると、2分割式成形型の第1成形型に表皮をセットする一方、第2成形型に、該第2成形型に開口したゲートを塞ぐように保護シートをセットした後、両成形型を閉じてキャビティを形成し、次いで、上記第2成形型のゲートから基材の溶融樹脂を、該溶融樹脂の射出圧力により上記保護シートの上記表皮側の全面が表皮裏面に当接するように上記キャビティ内に射出することにより、保護シートをインサートした状態で上記表皮及び基材を一体に成形するようにしたことにより、表皮一体樹脂成形品の設計自由度を向上させつつ、その外観の見映えを向上させることができ、しかも、表皮一体樹脂成形品の成形工程のさらなる簡略化を図りつつ、確実に高品質の表皮一体樹脂成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る成形方法により成形してなる表皮一体樹脂成形品としてのドアトリムを示す縦断面図である。
【図2】 保護シートを示す斜視図である。
【図3】 参考形態に係るドアトリムの成形方法を示す射出成形型の断面図である。
【図4】 参考形態において基材の溶融樹脂をゲートから射出している状態を示す図3相当図である。
【図5】 実施形態に係るドアトリム成形方法を示す図3相当図である。
【図6】 実施形態に係るドアトリム成形方法を示す図4相当図である。
【符号の説明】
1 ドアトリム(表皮一体樹脂成形品)
2 表皮
3 基材
4 保護シート
4a 貫通孔
10 射出成形型
11 第1成形型
12 第2成形型
13 キャビティ
14 ゲート
R 溶融樹脂
Claims (1)
- 表皮と、射出成形により該表皮の裏面に向けて射出した溶融樹脂を固化させた基材とを一体成形してなる表皮一体樹脂成形品の成形方法において、
第1及び第2成形型からなる2分割式成形型の第1成形型に表皮をセットする一方、上記第2成形型に、該第2成形型に開口したゲートを塞ぐように保護シートをセットした後、両成形型を閉じてキャビティを形成し、
次いで、上記第2成形型のゲートから基材の溶融樹脂を、該溶融樹脂の射出圧力により上記保護シートの上記表皮側の全面が表皮裏面に当接するように上記キャビティ内に射出することにより、保護シートをインサートした状態で上記表皮及び基材を一体に成形することを特徴とする表皮一体樹脂成形品の成形方法。
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