JPH06312437A - 取付座を有するサンドイッチ成形品及びその成形方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 剛性に優れた取付座を有し，かつコアライン
の発生がない，取付座を有するサンドイッチ成形品及び
その成形方法を提供すること。 【構成】 コア材２とその表面に被覆されたスキン材１
とからなると共にボックス状の取付座３を有するサンド
イッチ成形品において，上記取付座は上記コア材２によ
り形成されていること。その成形に当たっては，本体部
をサンドイッチ成形法により成形する際に，成形型にお
いて本体形成用のキャビティ内がスキン材１とその内部
に注入されたコア材２によって充填されたとき，取付座
成形用のスライドコアを後退させる。このとき，コア材
２がスキン材１の層を破ってスライドコアによって形成
されるサブキャビティ内に流入し，コア材２による取付
座が形成される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は，例えば自動車用部品で
あるオーバフェンダのごとき，取付座を有するサンドイ
ッチ成形品及びその成形方法に関する。

【０００２】

【従来技術】合成樹脂成形品においては，内部にコア材
を，その表面にスキン材を被覆形成したサンドイッチ成
形品が知られている（特開平２−２０６５１８）。この
ものは，合成樹脂により一体的に成形され，内部に比較
的硬質のコア材を，表面に比較的軟質のスキン材を有し
ている。そのため，表面が軟質で，全体の剛性が高いと
いう優れた性質を有している。

【０００３】このような，サンドイッチ成形品は，クリ
ップなどの取付具を係合するための取付座を有し，これ
らを介して相手部材に取付けられる。例えば，図９に示
すごとく，小型トラック９９の前輪上方の車体に設ける
オーバフェンダ９を例にとれば，このものは略円弧状の
長尺状成形品である。そして，このオーバフェンダ９
は，車体９８にクリップを介して装着される。また，図
１０，図１１に示すごとく，オーバフェンダ９は，本体
９０の裏側面に上記クリップ９６を係合するための取付
座９１を有する。

【０００４】該取付座９１は，クリップ９６の基部９６
１を係止するための取付穴９１１を有する。クリップ９
６の先端部９６２は車体の取付穴に係止される。ところ
で，上記オーバフェンダ９をサンドイッチ成形品により
構成する場合には，図１１に示すごとく，その本体９０
及び取付座９１は，共に合成樹脂のコア材２とその表面
に被覆された合成樹脂のスキン材１とによって形成され
る。

【０００５】また，上記サンドイッチ成形品を成形する
際には，上記取付座９１を形成するためのキャビティの
前方に，捨てタブを設けた成形型を用いる（図１２参
照）。そして，成形型内にスキン材を射出し，その後該
スキン材の中にコア材を注入する。取付座成形時におい
て，余分のスキン材は小流路を経て捨てタブ内に流出す
る。

【０００６】これにより，前記図１１に示すごとく，内
部に硬質のコア材２を，表面に軟質のスキン材１が被覆
された取付座９１が成形される。このことは，本体９０
においても同様である。なお，図１２には，サンドイッ
チ成形品の取付座９１において，その先端部に上記捨て
タブによって形成されたタブ品９５と小流路によって形
成された小流路品９５１とが示されている。これらのタ
ブ品９５，小流路品９５１は成形型からサンドイッチ成
形品を取り出したときには一体的に形成されているが，
その後除去される。

【０００７】

【解決しようとする課題】しかしながら，従来のサンド
イッチ成形品には，その取付座に関して次の問題があ
る。即ち，従来の取付座９１は，前記図１１に示すごと
く，表面にスキン材１を有している。そのため，その座
面部９１３の表面が軟質となり，表面硬度，剛性が不足
している。

【０００８】それ故，上記のごとくクリップ９６を係合
し，該クリップ９６を車体等の相手部材に係合した場
合，長期間の使用中に，座ゆるみが生じる。その結果，
クリップ９６の係合に不具合を生じ，オーバフェンダ９
と車体との間にズレを生ずるおそれがある。特に，オー
バフェンダ９は長尺状の成形品であるため，上記の座ゆ
るみはその全体の取付位置のズレに対して影響が大き
い。

【０００９】また，上記オーバフェンダ９は，自動車に
おける意匠性向上に，大きな役目も果している。そのた
め，人目の付き易い意匠面７には，特に外観性の良いこ
とが要求されている。しかし，従来のオーバフェンダ９
は，図１３，図１４に示すごとく，スキン材及びコア材
の流れ方向において，上記取付座９１の下流側の意匠面
７に，２本のコアライン７１が発生する。このコアライ
ン７１は，取付座９１の脚部９１６の付け根よりも上記
下流側において，凹状に形成される。

【００１０】このようなコアライン７１の発生は，次の
理由によるものと考えられる。即ち，サンドイッチ成形
時において，成形型のゲート（図１０の符号９８の位
置）より注入されたコア材２は，取付座９１の形成部分
においては，取付座９１の方向へ流入する。そのため，
上記脚部９１６の付け根付近においてコア材２が分流し
てしまい，上記脚部９１６の下流側にはコア材２が流れ
ない（図１４）。それ故，２本の凹状のコアライン７１
が発生する。

【００１１】また，上記コアライン７１は，オーバフェ
ンダをサンドイッチ成形した直後にも見られるが，更に
オーバフェンダ９の表面に意匠性向上のための塗料を塗
布した場合には，一層目立ち，外観性を悪くする。この
ことは，オーバフェンダに限らず，取付座を有するサン
ドイッチ成形品に共通の問題である。

【００１２】本発明は，かかる従来の問題点に鑑み，剛
性に優れた取付座を有し，かつ上記コアラインの発生が
ない，取付座を有するサンドイッチ成形品及びその成形
方法を提供しようとするものである。

【００１３】

【課題の解決手段】本発明は，コア材とその表面に被覆
されたスキン材とからなると共にボックス状の取付座を
有するサンドイッチ成形品において，上記取付座は上記
コア材により形成されていることを特徴とするサンドイ
ッチ成形品にある。

【００１４】本発明において最も注目すべき点は，サン
ドイッチ成形品の上記取付座は，コア材によって形成さ
れていることである。上記コア材による取付座の構成態
様としては，取付座をコア材のみによって形成するこ
と，コア材とこの中に混入した少量のスキン材とより形
成することなどがある。このスキン材は，取付座の成形
時にコア材中にスキン材が混入されて来たものである。
一方，上記取付座が設けられている本体は，コア材とそ
の表面に被覆されたスキン材とよりなるサンドイッチ構
造を有する。

【００１５】上記コア材としては，硬質のＡＢＳ樹脂，
硬質ＰＶＣ樹脂，タルク等のフィラー入りのポリプロピ
レン樹脂などがある。また，これら樹脂にグラスファイ
バー等を混入させた樹脂などもある。また，スキン材と
しては，軟質のポリプロピレンにＥＰＤＭをブレンドし
た樹脂，ＥＶＡ樹脂，ＳＥＢＳ（スチレン・エチレン・
ブチレン・スチレン）樹脂，ＳＢＳ（スチレン・ブタジ
エン・スチレン）樹脂，或いは軟質ＰＶＣ樹脂などがあ
る。

【００１６】次に，上記サンドイッチ成形品を製造する
方法としては，コア材とその表面に被覆されたスキン材
とからなると共にボックス状の取付座を有するサンドイ
ッチ成形品を成形するに当たり，上記サンドイッチ成形
品の本体を成形するキャビティと，該キャビティに連通
すると共に上記取付座を成形するサブキャビティとを有
し，更に該サブキャビティは固定コアとスライドコアと
により構成された成形型を用い，上記キャビティ内にス
キン材を射出し，次いで，該スキン材の内部にコア材を
注入する方法であって，成形に当たっては，上記サブキ
ャビティを上記スライドコアにより閉止した状態におい
て，上記キャビティ内にスキン材を射出し，次いでコア
材を注入し，該コア材がキャビティ内に充填された後に
更にコア材を注入しながら，上記スライドコアを後退さ
せて上記サブキャビティを開き，スキン材の層を突き破
って上記サブキャビティ内にコア材を流入させることを
特徴とする取付座を有するサンドイッチ成形品の成形方
法がある。

【００１７】本方法において最も注目すべき点は，上記
本体を成形するためのキャビティにサブキャビティを設
けたこと，上記サブキャビティは固定コアとスライドコ
アとにより形成したこと，及び上記キャビティ内がスキ
ン材とその内部に注入されたコア材とによって充填され
た後に上記スライドコアを後退させて，スキン材の層を
突き破ってサブキャビティ内にコア材を流入させるよう
にしたことである。

【００１８】

【作用及び効果】本発明の上記サンドイッチ成形品にお
いては，本体はサンドイッチ構造を有し，取付座はコア
材によって形成されている。そのため，サンドイッチ成
形品の全体は，サンドイッチ構造本来の表面柔軟性と内
部剛性という優れた性質を兼備しており，一方取付座は
相手部材への取付部として優れた剛性を有している。

【００１９】特に取付座の座面部は，コア材によってそ
の表面が硬質である。それ故，クリップ等の取付具を係
合した場合でも，該取付具を強く係合しておくことがで
き，表面が軟質のスキン材で形成されたサンドイッチ構
造の場合のように，座ゆるみを生ずることがない。

【００２０】また，上記成形方法においては，まず当初
は上記サブキャビティを閉止しておく。即ち，サブキャ
ビティを形成させるためのスライドコアを前進させて，
サブキャビティを有しない状態となし，本体を成形する
ためのキャビティのみの状態としておく。

【００２１】次いで，従来と同様にキャビティ内にスキ
ン材を射出し，次いで該スキン材の中にコア材を注入す
る。そして，上記キャビティ内へのコア材の注入がほぼ
終了した時点で，上記スライドコアを後退させてサブキ
ャビティを開く。そのため，キャビティ内に注入されつ
つあるコア材は，キャビティとサブキャビティとの間に
形成されているスキン材の層を突き破り，コア材のみが
サブキャビティ内に流入していく。

【００２２】それ故，本体はスキン材とコア材とからな
るサンドイッチ構造を有し，取付座はコア材からなる，
サンドイッチ成形品が得られる。そして，上記成形時に
おいては，コア材は，本体を成形するためのキャビティ
内に充填された後に，取付座用のサブキャビティ内に流
入していく。それ故，前記従来例のごとく，コアライン
が発生することもない。従って，本発明によれば，剛性
に優れた取付座を有し，かつ上記コアラインの発生がな
い，取付座を有するサンドイッチ成形品及びその成形方
法を提供することができる。

【００２３】

【実施例】

実施例１ 本発明の実施例にかかるサンドイッチ成形品につき，図
１，図２を用いて説明する。本例のサンドイッチ成形品
は，前記図９，図１０に示すごとく，小型トラックの前
輪上方の車体に取付けるオーバフェンダ９である。

【００２４】また，図１，図２に示すごとく，オーバフ
ェンダ９の本体９０は，合成樹脂のコア材２と，その表
面に被覆された合成樹脂のスキン材１とからなるサンド
イッチ構造を有している。一方，取付座３は，その殆ど
がコア材２によって成形されている。取付座３は，座面
部３２と該座面部３２と本体９０との間に設けられた脚
部３３と，座面部３２に設けた取付穴３１とよりなる。
取付穴３１には，クリップ９６が係合される。

【００２５】取付座３における上記コア材２の層は，本
体９０より立設された脚部３３の付け根３３１におい
て，スキン層１を突き破って，コア層２を流入させるこ
とにより成形させたものである。本例において，上記コ
ア材としては硬質合成樹脂のガラス繊維入りポリプロピ
レン樹脂を用いた。一方，スキン材としては軟質合成樹
脂のＳＥＢＳ樹脂を用いた。

【００２６】本例のオーバフェンダ９においては，本体
９０はサンドイッチ構造を有し，取付座３の座面部３１
の表面が硬質のコア材２によって形成されている。その
ため，オーバフェンダ９全体はサンドイッチ構造本来の
優れた性質を有し，一方取付座３は優れた剛性を有して
いる。それ故，取付座にクリップ９６を係合した場合で
も，該クリップ９６を強く係合しておくことができ，サ
ンドイッチ構造の場合のような座ゆるみを生ずることが
ない。

【００２７】実施例２ 本例は，図３〜図８に示すごとく，上記実施例１に示し
たオーバフェンダの製造方法を示す。本例においては，
図３に示す成形型５を用い，その中にスキン層１を射出
し（図４），次いでコア層２を注入し（図５），その後
スライドコア５５を後退させて，取付座成形用のサブキ
ャビティ５５０内にコア材２を流入させる（図６）こと
によりオーバフェンダ９を成形する。

【００２８】即ち，上記成形型５は，図３に示すごと
く，オーバフェンダの本体を成形するためのキャビティ
５１を有し，また取付座を成形するサブキャビティ５５
０（図６）を構成するための固定コア５６とスライドコ
ア５５とを有する。そして，成形に当たっては，まず図
３に示すごとく，スライドコア５５を前進させてサブキ
ャビティ５５０は閉止した状態としておく。即ち，スラ
イドコア５５は固定コア５６と接触して，サブキャビテ
ィ５５０は形成されていない状態とする。

【００２９】次に，図４に示すごとく，キャビティ５１
内にゲート（図示略）より，スキン材１を射出する。こ
のスキン材１の射出量は，サンドイッチ成形品の本体部
分においてスキン材層を形成するに必要な量である。次
に，図５に示すごとく，上記スキン材１の中にコア材２
を注入する。このコア材２の量は，サンドイッチ成形品
の本体部分において，コア材層を形成するに必要な量で
ある。

【００３０】そして，上記本体部分に必要な量のコア材
２を充填した後，更にコア材２を注入しながら，図６に
示すごとく，スライドコア５５を後退させてサブキャビ
ティ５５０を開く。そのため，キャビティ５１内に注入
されているコア材２は，キャビティ５１の外周部分と，
開放された上記サブキャビティ５５０との間にあるスキ
ン材１の層１５を突き破って，サブキャビティ５５０内
に流入する。

【００３１】この時，上記スキン材１の層は，既にキャ
ビティ５１の壁面によって冷却固化しつつあるので，上
記コア材２によって突き破られるものの，サブキャビテ
ィ５５０内へは殆ど流入しない。それ故，サブキャビテ
ィ５５０内は殆どコア材２が充填される。なお，その後
は，常法により成形型内において成形品を冷却し，次い
でサンドイッチ成形品を取り出す。

【００３２】このサンドイッチ成形品において，その取
付座３は，前記実施例１の図１，図２及び図７，図８に
示すごとく，実施例１に示したと同様の構造を有してい
る。また，このサンドイッチ成形品の本体９０に関して
は，図７，図８に示すごとく，その意匠面７は平滑であ
り，従来例のごときコアライン（図１３，図１４）は発
生していない。本例によれば，剛性に優れた取付座を有
し，かつ上記コアラインの発生がない，オーバフェンダ
を容易に製造することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１にかかる，オーバフェンダの取付座の
断面図。

【図２】図１のＡ−Ａ線矢視断面図。

【図３】実施例２の成形方法にかかる成形型の断面図。

【図４】実施例２における，スキン材射出時の成形型の
断面図。

【図５】実施例２における，コア材注入時の成形型の断
面図。

【図６】実施例２における，取付座へのコア材流入時の
成形型の断面図。

【図７】実施例２において得られたオーバフェンダの取
付座付近の断面斜視図。

【図８】実施例２において得られたオーバフェンダの取
付座下流付近の断面斜視図。

【図９】従来例における小型トラックの側面図。

【図１０】従来例におけるオーバフェンダの取付座付近
の斜視図。

【図１１】従来例におけるオーバフェンダの取付座の断
面図。

【図１２】従来例におけるオーバフェンダの取付座付近
の斜視図。

【図１３】従来例におけるオーバフェンダの取付座付近
の断面斜視図。

【図１４】従来例におけるオーバフェンダの取付座より
も下流側の断面斜視図。

【符号の説明】

１．．．スキン材， ２．．．コア材， ３．．．取付座， ３２．．．座面部， ５．．．成形型， ５１．．．キャビティ， ５５．．．スライドコア， ５５０．．．サブキャビティ， ５６．．．固定コア， ７．．．意匠面， ９．．．オーバフェンダ， ９０．．．本体，

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 向井 浩 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑１ 番地 豊田合成株式会社内 (72)発明者 栗山 弘 愛知県西春日井郡春日町大字落合字長畑１ 番地 豊田合成株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コア材とその表面に被覆されたスキン材
   とからなると共にボックス状の取付座を有するサンドイ
   ッチ成形品において，上記取付座は上記コア材により形
   成されていることを特徴とするサンドイッチ成形品。
2. 【請求項２】 コア材とその表面に被覆されたスキン材
   とからなると共にボックス状の取付座を有するサンドイ
   ッチ成形品を成形するに当たり，上記サンドイッチ成形
   品の本体を成形するキャビティと，該キャビティに連通
   すると共に上記取付座を成形するサブキャビティとを有
   し，更に該サブキャビティは固定コアとスライドコアと
   により構成された成形型を用い，上記キャビティ内にス
   キン材を射出し，次いで，該スキン材の内部にコア材を
   注入する方法であって，成形に当たっては，上記サブキ
   ャビティを上記スライドコアにより閉止した状態におい
   て，上記キャビティ内にスキン材を射出し，次いでコア
   材を注入し，該コア材がキャビティ内に充填された後に
   更にコア材を注入しながら，上記スライドコアを後退さ
   せて上記サブキャビティを開き，スキン材の層を突き破
   って上記サブキャビティ内にコア材を流入させることを
   特徴とする取付座を有するサンドイッチ成形品の成形方
   法。