JP3955801B2 - 車両用ドアミラー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、格納式の車両用ドアミラーに関し、特に、風切り音の低減対策に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用のドアミラーとして、車体に固定される支持ベースに対しミラーを収容したミラーボディが回動可能に構成された格納式のドアミラーが従来一般に知られている。この種の車両用ドアミラーにおいては、ミラーボディを回動可能とするため、通常、支持ベース1の周壁1Aの上端面1Bと、ミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bとが若干の隙間を空けて対向している(図1参照)。
【0003】
ところで、この種の車両用ドアミラーでは、図10に示すように、車両の高速走行時に支持ベース1とミラーボディ3との間の隙間を走行風が通過するのであり、その際、隙間から進入した走行風が上流側の周壁1A、3Aから離れる際に渦を発生し、この渦が周壁1A、3Aの対向端面における内壁の下流側の角部(エッジ部分)と衝突して風切り音(衝突音)が発生し、これがミラーボディ内で共鳴して拡大する問題点があることが本発明者の研究により判明した。
【0004】
このような風切り音を低減するため、従来は、支持ベースの周壁の上端開口部およびミラーボディの周壁の下端開口部をそれぞれ塞ぐカバー部材を設け、これらのカバー部材により走行風の乱流化を抑制して風切り音の発生を低減し、また、その風切り音の共鳴による拡大を抑制する対策が実施されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したようなカバー部材を設け、これらを支持ベースの周壁の上端開口部およびミラーボディの周壁の下端開口部にそれぞれ装着する対策は、部品点数およびその組付け工数の増加を意味し、車両用ドアミラーの製造コストの低減要求に反することとなる。
【0006】
本発明は、このような問題を解決することを課題とし、部品点数の増加を伴うことなく風切り音の発生を確実に低減し、風切り音の共鳴による拡大を確実に抑制することができる車両用ドアミラーを提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明に係る車両用ドアミラーは、車体に固定される支持ベースに対してミラーを収容したミラーボディが回動可能に構成された格納式の車両用ドアミラーであって、前記支持ベースとミラーボディとの間の隙間を構成する両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としたことを特徴としており、この構成を前記課題の解決手段とする。
【0008】
第1の発明に係る車両用ドアミラーでは、車両の走行に伴い支持ベースとミラーボディとの間の隙間を通過する走行風は、支持ベースおよびミラーボディの周壁の対向端面の間を通過する際、両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の下流側の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としているので、上流側から進入した走行風及び特に上述した渦と、両者の周壁の対向端面における内壁の下流側の角部(エッジ部分)との衝突が緩和され、この結果、風切り音(衝突音)の発生を低減できる。また、両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の上流側の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としているので、隙間から進入した走行風が上流側の周壁から離れる際に渦を発生しにくくなり、この結果、さらに風切り音の発生が低減される。
【0009】
第1の発明の一態様に係る車両用ドアミラーは、第1の発明に係る車両用ドアミラーであって、支持ベースとミラーボディとの間の隙間を構成する両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の角部(エッジ部分)に風切り音が低減できるようなR付け(曲面付与)したことを特徴とするものである。
ここで、内壁の角部(エッジ部分)のR(曲率半径)は、風切り音を効果的に低減できるように、5mm以下(R5以下)とすることが好ましく、3mm以下(R3以下)とすることがより好ましい。
【0010】
なお、上記、第1の発明において、支持ベースとミラーボディとの間の隙間を構成する両者の周壁の対向端面の断面形状における外壁の角部(エッジ部分)のR付け(曲面付与)の程度によっては、支持ベースとミラーボディとの間の隙間に流れ込む風の流速を増加させ、風切り音の周波数、音圧を上昇させる。したがって、上記、第1の発明においては、支持ベースとミラーボディとの間の隙間を構成する両者の周壁の対向端面の断面形状における外壁の角部(エッジ部分)及び/又は頂部(内壁の角部と外壁の角部の間)のR付け(曲面付与)の程度を、内壁の角部(エッジ部分)の曲面形状と相俟って、発生音を効果的に低減できるようなR付け(曲面付与)の程度とすることが好ましい。
【0011】
第2の発明に係る車両用ドアミラーは、第1の発明に係る車両用ドアミラーであって、前記支持ベースは、その周壁の上端近傍から内側に張り出す取付面を有し、この取付面上には、前記隙間を通過する走行風の通風空間を小容積に仕切る複数のリブが突設されていることを特徴としており、この構成を前記課題の解決手段とする。
【0012】
第2の発明に係る車両用ドアミラーでは、第1の発明に係る車両用ドアミラーと同様の作用が生じる他、特に、支持ベースとミラーボディとの間の隙間を通過する走行風の通風空間が複数のリブによって小容積に仕切られているため、僅かに発生する風切り音も共鳴周波数が上昇して聞え難くなる。
【0013】
第3の発明に係る車両用ドアミラーは、第2の発明に係る車両用ドアミラーであって、前記各リブの先端面の断面形状が凸曲面とされていることを特徴としており、この構成を前記課題の解決手段とする。
【0014】
第3の発明に係る車両用ドアミラーでは、第2の発明に係る車両用ドアミラーと同様の作用が生じる他、特に車両の走行に伴い支持ベースとミラーボディとの間の隙間を通過する走行風は、各リブの先端面を通過する際、その凸曲面の断面形状に沿って円滑に流れるため、乱流化が抑制されて風切り音の発生が低減される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る車両用ドアミラーの実施の形態を図1〜図3により説明する。図1に示すように、一実施形態の車両用ドアミラーは、図示しない車体のドア部に固定される支持ベース1に対してミラー2を収容したミラーボディ3が略水平な面内で回動可能に構成された格納式のドアミラーである。
【0016】
前記支持ベース1およびミラーボディ3は、適宜の材料からなる合成樹脂の成形品であり、支持ベース1の周壁1Aの上端面1Bと、ミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bとが0.5mm前後の若干の隙間を開けて対向している。
【0017】
図2に示すように、前記支持ベース1に対してミラーボディ3を略水平な面内で回動可能に支持する機構として、支持ベース1にはその周壁1Aの上端面1Bの近傍から内側に張り出す取付面1Cが一体に形成され、この取付面1C上に段付き筒状のシャフト4がミラーボディ3内に向けて突設されている。これに対応して、ミラーボディ3内には前記シャフト4を回動自在に嵌合する筒状のフレーム5が設けられている。そして、このフレーム5と前記シャフト4との間には、コイルスプリング6の付勢力に抗してミラーボディ3を回動させる節度機構が構成されている。
【0018】
ここで、図3に示すように、前記支持ベース1の周壁1Aの上端面1Bおよびミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bは、その断面形状が例えば半円状の凸曲面に形成されている。また、前記支持ベース1の取付面1C上には、図4にも示すように、前記シャフト4の側方に配置して複数のリブ1Dが一体に突設されている。各リブ1Dは、支持ベース1の上端面1Bとミラーボディ3の下端面3Bとの間の隙間を矢印のように通過する走行風に交差する向きで突設されており、取付面1Cの上方の通風空間を小容積に仕切っている。そして、これらのリブ1Dの先端面は、その断面形状が例えば半円状の凸曲面に形成されている。また、リブ1Dの先端部の高さ<支持ベース1の上端面1Bの高さ、になっている。
【0019】
このように構成された一実施形態の車両用ドアミラーは、図示しない車体のドア部に支持ベース1が取り付けられた状態で使用される。この使用状態において、車両の高速走行に伴ない支持ベース1とミラーボディ3との間の隙間を通過する走行風は、図3に示す支持ベース1の周壁1Aの上端面1Bと、ミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bとの間を通過する際、その半円状の凸曲面に沿って円滑に流れる。そして、両者の周壁1A、3Aの対向端面の断面形状における少なくとも内壁の下流側の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としているので、上流側から進入した走行風及び特に上述した渦と、両者の周壁の対向端面における内壁の下流側の角部(エッジ部分)との衝突が緩和され、この結果、衝突による発生音(音源)の発生を抑制できる。また、両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の上流側の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としているので、隙間から進入した走行風が上流側の周壁から離れる際に渦を発生しにくくなり、この結果、渦の衝突等による発生音(音源)発生がさらに抑制される。
【0020】
また、支持ベース1内の取付面1Cの上方の通風空間においては、各リブ1Dの上端面の半円状の凸曲面に沿って円滑に流れる。このため、支持ベース1とミラーボディ3との間の隙間を通過する走行風の乱流化が抑制され、その結果、風切り音が低減される。
【0021】
また、支持ベース1内の取付面1Cの上方の通風空間が複数のリブ1Dによって小容積に仕切られているため、僅かに発生した風切り音もその共鳴周波数が上昇して聴覚上聞こえ難くなる。
【0022】
なお、本発明の車両用ドアミラーにおいて、支持ベース1の周壁1Aの上端面1B、ミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bおよび各リブ1Dの上端面の断面形状は、風切り音を効果的に低減できる曲面形状であればよく、半円状に限らず半楕円状や曲率が連続的に変化する適宜の凸曲面とすることができる。
例えば、図8に示すように、支持ベース1の周壁1Aの上端部およびミラーボディ3の周壁3Aの下端部(対向端面)の断面形状における内壁の角部(エッジ部分)aの曲率半径Rを、外壁の角部(エッジ部分)cの曲率半径Rよりも小さくすることができる。また、図9に示すように、支持ベース1の周壁1Aの上端部およびミラーボディ3の周壁3Aの下端部(対向端面)の断面形状における内壁の角部(エッジ部分)aの曲率半径Rを、外壁の角部(エッジ部分)cの曲率半径Rよりも小さくすると共に、対向端面の断面形状における頂部(内壁の角部と外壁の角部の間)bに平面部又は曲率半径Rが大きな緩やかな曲面を介在させることができる。
【0023】
また、支持ベース1の取付面1C上に突設する各リブ1Dは、走行風の通風空間を小容積に仕切るものであればよく、その突設個数や配列は適宜変更することができる。
【0024】
【実施例】
実施例1として、図3に示した支持ベース1の周壁1Aの上端面1Bおよびミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bの断面形状を半円状の凸曲面状(外壁のエッジ部分のR=2.8mm、内壁のエッジ部分のR=2.5mm)とした車両用ドアミラー(但し各リブ1Dは形成されていない)を作製し、図5に示す風洞実験装置により時速80kmに相当する風速下で風切り音を集音マイクロフォンで集音し、その周波数(Hz)と音圧レベル(dBF)との関係を解析した。風洞の吹出口は縦横500mmであり、ミラー2の中心から前方400mmに配置した。また、集音マイクロフォンはミラー2の中心から側方1000mmの位置に配置した。
【0025】
実施例1と対比する比較例1として、実施例1の車両用ドアミラーにおける支持ベース1の周壁1Aの上端面1Bおよびミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bの断面形状における内壁の角部(エッジ部分)を、図10に示すように、エッジ状とした車両用ドアミラーを作製し、その他は実施例1と同様の条件により風切り音の周波数(Hz)と音圧レベル(dBF)との関係を解析した。
【0026】
また、実施例2として、図3に示した支持ベース1の周壁1Aの上端面1B、ミラーボディ3の周壁3Aの下端面3Bおよび各リブ1Dの上端面の断面形状を半円状の凸曲面状とした車両用ドアミラーを作製し、その他は実施例1と同様の条件により風切り音の周波数(Hz)と音圧レベル(dBF)との関係を解析した。
【0027】
実施例2と対比する対比例として、実施例2の車両用ドアミラーから各リブ1Dを削除した構造の車両用ドアミラーを作製し、その他は実施例1と同様の条件により風切り音の周波数(Hz)と音圧レベル(dBF)との関係を解析した。
【0028】
実施例1と比較例1との対比の結果は図6に示すとおりであり、周波数2500〜12000Hzの範囲において、実施例1の音圧レベルが比較例1の音圧レベルより低下することが確認された。特に、周波数2500〜7500Hzの範囲においては、5dBF程度の音圧レベルの低下が確認された。
【0029】
また、実施例2と対比例との対比の結果は図7に示すとおりであり、周波数2500〜5000Hzの範囲において、実施例2の音圧レベルが対比例の音圧レベルより低下することが確認された。
【0030】
【発明の効果】
第1の発明に係る車両用ドアミラーによれば、車両の走行に伴い支持ベースとミラーボディとの間の隙間を通過する走行風は、支持ベースおよびミラーボディの周壁の対向端面の間を通過する際、両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の下流側の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としているので、上流側から進入した走行風及び特に上述した渦と、両者の周壁の対向端面における内壁の下流側の角部(エッジ部分)との衝突が緩和され、この結果、風切り音(衝突音)の発生を低減できる。また、両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の上流側の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としているので、隙間から進入した走行風が上流側の周壁から離れる際に渦を発生しにくくなり、この結果、さらに風切り音の発生が低減される。従って、隙間にカバー部材を設ける必要がなく、部品点数の増加を伴うことなく風切り音の発生を確実に低減することができる。
【0031】
第2の発明に係る車両用ドアミラーによれば、第1の発明に係る車両用ドアミラーと同様の作用効果が得られる他、特に、支持ベースとミラーボディとの間の隙間を通過する走行風の通風空間が複数のリブによって小容積に仕切られているため、僅かに発生する風切り音も共鳴周波数が上昇して聞え難くなる。従って、部品点数の増加を伴うことなく風切り音の発生を確実に低減し、その拡大を確実に抑制することができる。
【0032】
第3の発明に係る車両用ドアミラーによれば、第2の発明に係る車両用ドアミラーと同様の作用効果が得られる他、特に、車両の走行に伴い支持ベースとミラーボディとの間の隙間を通過する走行風は、各リブの先端面を通過する際、その凸曲面の断面形状に沿って円滑に流れるため、乱流化が抑制されて風切り音の発生が低減される。従って、部品点数の増加を伴うことなく風切り音の発生を確実に低減し、その拡大を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用ドアミラーの正面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2の拡大図である。
【図4】図1に示した支持ベースの斜視図である。
【図5】実施例1、比較例1、実施例2、対比例に使用した風洞実験装置の概略構成を示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図である。
【図6】実施例1と比較例1との対比結果を示す風切り音の周波数と音圧レベルとの関係線図である。
【図7】実施例2と対比例との対比結果を示す風切り音の周波数と音圧レベルとの関係線図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る車両用ドアミラーにおける支持ベースの周壁の上端部およびミラーボディの周壁の下端部の断面形状を説明するための部分拡大断面図である。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係る車両用ドアミラーにおける支持ベースの周壁の上端部およびミラーボディの周壁の下端部の断面形状を説明するための部分拡大断面図である。
【図10】従来の車両用ドアミラーの問題点を説明するための図であり、支持ベースとミラーボディとの間の隙間部分の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 :支持ベース
1A:周壁
1B:上端面
1C:取付面
1D:リブ
1a:内壁の角部(エッジ部分)
1c:外壁の角部(エッジ部分)
2 :ミラー
3 :ミラーボディ
3A:周壁
3B:下端面
4 :シャフト
5 :フレーム
6 :コイルスプリング

Claims (3)

  1. 車体に固定される支持ベースに対してミラーを収容したミラーボディが回動可能に構成された格納式の車両用ドアミラーであって、前記支持ベースとミラーボディとの間の隙間を構成する両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の角部(エッジ部分)を風切り音が低減できる曲面形状としてあり、
    前記支持ベースは、その周壁の上端近傍から内側に張り出す取付面を有し、この取付面上には、前記隙間を通過する走行風の通風空間を小容積に仕切る複数のリブが突設されていることを特徴とする車両用ドアミラー。
  2. 車体に固定される支持ベースに対してミラーを収容したミラーボディが回動可能に構成された格納式の車両用ドアミラーであって、前記支持ベースとミラーボディとの間の隙間を構成する両者の周壁の対向端面の断面形状における少なくとも内壁の角部(エッジ部分)に風切り音が低減できるようなR付け(曲面付与)してあり、
    前記支持ベースは、その周壁の上端近傍から内側に張り出す取付面を有し、この取付面上には、前記隙間を通過する走行風の通風空間を小容積に仕切る複数のリブが突設されていることを特徴とする車両用ドアミラー。
  3. 請求項1又は2に記載の車両用ドアミラーであって、前記各リブの先端面の断面形状が凸曲面とされていることを特徴とする車両用ドアミラー。
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