JP3955130B2 - 硫酸バナジウム(iii)の製造方法 - Google Patents

硫酸バナジウム(iii)の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫酸バナジウム(III) およびその硫酸水溶液の製造方法に関する。さらに詳しくは、バナジウムレドックスフロー電池の電解液などとして有用な硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液およびその原料である硫酸バナジウム(III) の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、夜間の余剰電力を貯蔵し、その余剰電力を昼間に効率よく使用することの必要性が高まってきており、これに対応するために種々の二次電池が研究されている。
【0003】
前記二次電池のなかでは、4価または5価のバナジウムの硫酸水溶液を正極電解液とし、3価または2価のバナジウムの硫酸水溶液を負極電解液としたレドックスフロー電池が脚光を浴びている。
【0004】
前記負極電解液に必要とされる3価のバナジウム化合物の製造法として、例えば、前記電解液が用いられた電池の基本発明である特開昭62−186473号公報には、三塩化バナジウムを硫酸水溶液中に溶解させ、発生する塩化水素を除去する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、かかる方法には、三塩化バナジウムの製造コストが高く、しかも発生する塩化水素の脱気除去を完全に行なうことが困難であるという欠点がある。
【0006】
前記方法の他にも、従来、前記負極電解液に用いられる3価のバナジウム化合物の製造法として、例えば、
(A)メタバナジン酸アンモニウムまたは五酸化二バナジウム(V2 5 )を無機酸の存在下、亜硫酸、塩酸ヒドラジン、過酸化水素または水素ガスで還元させて4価のバナジウム含有溶液とし、これを電解還元させることによって3価のバナジウム含有溶液を製造する方法(特開平4−149965号公報)、
(B)メタバナジン酸アンモニウムまたは五酸化二バナジウムを、濃硫酸および還元剤の存在下で還元し、実質的に4価バナジウムを含有する溶液を製造し、ついで還元剤として硫黄を加え、180〜250℃の温度に昇温して3価のバナジウム化合物を生成させ、この生成物が固体である場合には濾過回収した後、水および硫酸中で可溶化させ、濾過により、未反応硫黄を除去し、3価のバナジウム溶液を回収する方法(特開平5−290871号公報)、
(C)隔膜により仕切られた第1の電解槽および第2の電解槽を設け、第1の電解槽内にバナジウム4価イオンを含有する硫酸水溶液を供給し、第2の電解槽に硫酸を含む水溶液を供給し、第1の電解槽内の電極を負極、第2の電解槽内の電極を正極として通電することにより、第1の電解槽に供給されたバナジウム4価イオンをバナジウム3価イオンに変換してバナジウム3価イオンを含有する硫酸水溶液を調製する方法( 特開平7−211346号公報) 、
(D)五酸化二バナジウムを硫酸中で理論量の1.5倍の量の硫黄で還元し、過剰の硫黄をエタノールと二硫化炭素を用いて分離し、固体の硫酸バナジウム(III) を製造する方法( Inorg. Synth., p.92)、
(E)酸化硫酸バナジウム(IV)のVOSO4 溶液をマグネシウムで還元させることにより、V3+を生成させる方法(EDUCATION IN CHEMISTRY, JANUARY, 1984, p.19)
が知られている。
【0007】
しかしながら、前記(A)の方法には、メタバナジン酸アンモニウムまたは該メタバナジン酸アンモニウムを熱分解して得られる五酸化二バナジウムから4価のバナジウム含有溶液を調製する際に、隔膜や電磁装置を必要とするため、コスト高となり、また4価のバナジウム含有溶液から電気化学的還元によって3価のバナジウム含有溶液を調製する際に用いられる還元剤が高価であるという経済性の面で欠点がある。
【0008】
また、前記(B)および(D)の方法では、還元剤として過剰の硫黄を使用しているが、かかる硫黄の除去が困難であるため、製品の品質の低下を招くという欠点がある。
【0009】
前記(C)の方法では、用いられる原料であるバナジウム4価イオンを含む硫酸水溶液は、バナジウム工業のプロセスで最初に得られるメタバナジン酸アンモニウムを熱分解して五酸化二バナジウムとし、これを硫酸中で二酸化硫黄で還元して製造する必要があるため、コスト高となるうえ、これを電解装置を使用してさらに還元するという煩雑な操作を要するという欠点がある。
【0010】
さらに、前記(E)の方法では、副生するマグネシウム塩を除去することが困難であるという欠点があり、到底、工業的に適した製法にはなり得ない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、従来技術では製造に多大な困難を伴った硫酸バナジウム(III) を極めて簡単に製造しうる方法、および該硫酸バナジウム(III) を適当な濃度および量の硫酸中で加熱するだけで、バナジウムレドックスフロー電池の電解液として有用な硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液を効率よく製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、酸化バナジウム(III)を濃度が80%以上の硫酸中で140〜260℃に加熱した後、生成した固体の硫酸バナジウム(III)を反応液から回収することを特徴とする硫酸バナジウム(III)の製造方法に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法によれば、酸化バナジウム(III)を濃度が80%以上の硫酸中で140〜260℃に加熱した後、生成した固体の硫酸バナジウム(III) を反応液から回収することにより、硫酸バナジウム(III) を得ることができる。
【0014】
このように、本発明においては、酸化バナジウム(III)と硫酸との反応にあたり、酸化バナジウム(III)を濃度が80%以上の硫酸中で140〜260℃に加熱するという操作が採用されていることにより、硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]を効率よく製造することができる。
【0015】
本発明の製造方法においては、バナジウム(V)含有原料から、V2 (SO4 3 を製造する際の経路は、下記経路Iのようになる。
〔経路I〕
V含有原料 → NH4 VO3 → V2 3 → V2 (SO4 3
【0016】
これに対して、従来技術(特開平4−149965号公報等)においては、V2 (SO4 3 を製造する際の経路は、下記経路IIのようになる。
〔経路II〕
V含有原料 → NH4 VO3 → V2 5 → VOSO4 → V2(SO4)3
【0017】
したがって、本発明における操作は、従来技術と対比して、反応工程が減少するので、操作が簡便になるのみならず、反応効率の向上を図ることができる。
【0018】
ところで、本発明者らの研究によれば、酸化バナジウム(III)(V2 3)を濃度が80%以上の硫酸中で加熱すると、黄色の固体が生成することが判明した。かかる黄色の固体を分離し、粉末X線回折により、回折パターンを調べたところ、主要回折線は、Index to the Powder Diffraction File No.27-941に記載されている次のd値(格子面間隔、回折強度が強い順に記載)と一致した。
【0019】
d値: 6.00,2.62,3.59,4.37,2.75,3.00,2.89,2.67
【0020】
また、元素分析により、バナジウムおよび硫黄を定量したところ、その測定値は、硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]の計算値と一致した。
【0021】
かかる事実から、前記反応は、以下のように進行していることが確認された。
【0022】
2 3 + 3H2 SO4 → V2(SO4)3 + 3H2
【0023】
さらに、前記で得られた黄色の固体を、濃度が5〜50%の硫酸水溶液中に添加し、加熱すると溶解し、透明な青色溶液が生成した。この溶液の紫外線吸収スペクトルを測定すると、公知の別法で調製された硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]の硫酸水溶液のそれと一致した。
【0024】
かかる知見から、前記溶液は、硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]の硫酸水溶液であることが確認された。
【0025】
したがって、前記で得られた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液は、バナジウムレドックスフロー電池の負極電解液として好適に使用しうるものである。
【0026】
前記硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]の硫酸水溶液中のイオンの状態は定かではないが、おそらく、〔V(H2 O)63+、SO4 2+、H3 + 、OH- などのイオンが前記水溶液中に存在するものと考えられる。
【0027】
そのイオン種の解明は、本発明の趣旨から外れてくることになるので、本明細書においては、深く言及しないことにする。
【0028】
以下に、本発明の製造方法について詳述する。
【0029】
本発明の製造方法によれば、酸化バナジウム(III) を濃度が80%以上の硫酸中で140〜260℃に加熱した後、生成した固体の硫酸バナジウム(III) を反応液から回収することにより、硫酸バナジウム(III) を収得することができる。
【0030】
前記酸化バナジウム(III) (V2 3 )としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム(NH4 VO3 )を空気遮断下で800〜900℃に加熱して熱分解させる方法により(特公昭52−40919号公報等)、工業的に製造され、販売されているものを用いることができる。前記酸化バナジウム(III) の形状については、特に限定がない。前記酸化バナジウム(III) は、通常、タイラーメッシュで100メッシュパスとなる粒子径を有するものであればよい。
【0031】
なお、前記メタバナジン酸アンモニウムは、バナジウム含有原料から水溶液中に抽出されたバナジウム塩類から析出される最も基本的なバナジウム製品の中間体である。
【0032】
本発明に用いられる硫酸の濃度は80%以上とされ、加熱温度は140〜260℃とされる。
【0033】
本発明においては、硫酸の濃度および加熱温度がこのように調整される点に、1つの大きな特徴がある。
【0034】
すなわち、前記硫酸の濃度を80%以上とし、なおかつ加熱温度を140〜260℃とした場合には、前記酸化バナジウム(III) は、該硫酸中には溶解せずに、そのまま固体の状態で、本発明の目的化合物である硫酸バナジウム(III) に変性することができる。
【0035】
このように、本発明の製造方法によれば、酸化バナジウム(III) の純分のみから、固体の硫酸バナジウム(III) を高い転化率で生成し、しかも不純物は、硫酸酸性母液中に溶解するので、高純度を有する硫酸バナジウム(III) を効率よく収得することができるという優れた効果が発現される。
【0036】
なお、反応時間を短縮させ、硫酸バナジウム(III) を短時間で効率よく製造するという観点から、前記硫酸の濃度は、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは94%以上である。前記硫酸の濃度の上限値には、特に限定がない。
【0037】
また、酸化バナジウム(III) を硫酸中で加熱する際の加熱温度は、反応速度を高め、また収率を向上させる観点から、140℃以上、好ましくは200℃以上、さらに好ましくは220℃以上である。なお、酸化バナジウム(III) を硫酸中で加熱する際の加熱温度の上限値は、特に限定がないが、常圧における硫酸の沸点を考慮すれば、260℃以下であることが好ましい。
【0038】
硫酸の使用量は、反応終了後に反応液から生成した硫酸バナジウム(III) の微細な結晶によって該反応液の粘度が高くなり、均一な攪拌および反応後の取り扱いが困難とならないようにするために、酸化バナジウム(III) 100重量部に対して1500重量部以上、好ましくは2000重量部以上であることが望ましく、また反応後に硫酸の再利用を容易にする観点から、3000重量部以下であることが望ましい。
【0039】
なお、本発明においては、硫酸には、必要により、安定化SO3 、発煙硫酸を適量配合してもよい。この場合、より低温で酸化バナジウム(III) と硫酸との反応を進行させることができるという利点がある。
【0040】
加熱時間は、硫酸濃度、加熱温度などによって異なるので一概には決定することができないが、その一例として、硫酸濃度が94〜98%であり、加熱温度が220〜225℃程度である場合には、10〜15時間程度であればよい。
【0041】
このように加熱することにより、酸化バナジウム(III) と硫酸との反応は、式:
2 3 + 3H2 SO4 → V2(SO4)3 + 3H2
に示されるように進行する。
【0042】
なお、反応に際しては、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスを反応液に通じ、硫酸から水分を系外に除去することにより、反応系から原料中の水分および反応での生成水を除去し、反応を促進させることが、製造効率を高める観点および生成物の酸化を防止する観点から好ましい。
【0043】
反応の終点は、酸化バナジウム(III) の黒色粒子の消滅を確認することで概略的に決定することができるが、より厳密には、反応混合物を後処理した後、該反応生成物のバナジウムの元素分析を行なうことによって確認することができる。
【0044】
反応終了後の反応液には、多量の硫酸が含まれているので、30℃以下の温度に冷却した後、耐酸性の濾過器、例えば、#4グラスフィルターなどで濾過し、十分に反応液を搾り取るという後処理を施すことが好ましい。
【0045】
なお、濾液は、濃厚な硫酸を主体としているので、再度、酸化バナジウム(III) との反応に利用することができる。この場合、該濾液に、発煙硫酸や安定化SO3 を添加し、該濾液の硫酸濃度を調整すればよい。
【0046】
かくして濾液が除去された濾過ケーキには、本発明の目的化合物である硫酸バナジウム(III) が含有されているが、高濃度の硫酸も含まれている。したがって、硫酸バナジウム(III) を固体粉末として収得する場合には、前記濾過ケーキを洗浄し、硫酸を除去した後、乾燥すればよい。
【0047】
この濾過ケーキに付着している母液である硫酸の濃度は、一般に80%以上であるので、水を用いて洗浄したときには発熱し、高温となり、硫酸バナジウム(III) が可溶化するおそれがある。
【0048】
したがって、前記濾過ケーキを水洗する際には、水、氷または炭素数1〜3程度の低級アルコールの50%水溶液の液温が60℃以下となるように調整しながら攪拌し、その中に前記濾過ケーキを徐々に投入することが好ましい。暫時攪拌した後は、濾過すればよい。
【0049】
ところで、前記硫酸バナジウム(III) は、水和させることにより、硫酸水溶液として負極電解液などに使用される。
【0050】
前記水和は、式:
2(SO4)3 + 12 H2 O → 2〔V(H2 O)63+ + 3SO4 2- (III)
に従って進行する。
【0051】
したがって、理論的には、前記で得られた硫酸バナジウム(III) と水とから、前記式(III) に従って、硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液、すなわち〔V(H2 O)63+とSO4 2- とを含有する水溶液を得ることができる。ここで、前記〔V(H2 O)63+の濃度を「a」モル/Lとし、またSO4 2- の濃度を「b」モル/Lとすると、両者の関係は、
b = 3/2a
となる。
【0052】
ところが、実際には、硫酸バナジウム(III) および水のみを用いた場合には、反応速度が非常に遅くなる。従って、反応を行なうに際して、付加的に硫酸を添加し、硫酸イオン濃度が最終的に「b+α」モル/Lとなるように調整することが好ましい。
【0053】
反応速度を実用的なレベルにまで高めるという観点から、前記αは、0.8モル/Lよりも大きいことが好ましい。ただし、その一方で、〔V(H2 O)63+の溶解度は、〔V(H2 O)63+の濃度(a)とSO4 2+ の濃度(b+α)との積によって決定されるため、通常、2mol/L未満となるように調整することが好ましい。
【0054】
以上のことを考慮し、前記反応に使用される硫酸水溶液の硫酸濃度は、5〜50%、なかんづく7〜50%となるように調整することが好ましい。なお、硫酸水溶液の量は、硫酸濃度を勘案し、溶解後に希釈して所望の〔V(H2 O)63+濃度およびSO4 2+ 濃度となるように適宜、計算により決定することができる。
【0055】
また、硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液における加熱温度は、溶解速度を充分に高める観点から、90℃以上、好ましくは100℃以上であることが望ましく、また硫酸水溶液の沸点を考慮して、120℃以下であることが望ましい。かかる条件下で加熱を行なった場合には、通常、加熱に要する時間は、1〜4時間程度となる。
【0056】
本発明においては、硫酸バナジウム(III) を調製した際の濾過ケーキをそのまま使用することができる。この場合、溶解のために使用する硫酸水溶液中に含まれている硫酸量から前記濾過ケーキ中に含まれている硫酸量を差し引けばよい。
【0057】
水和の終点は、前記硫酸バナジウム(III) の溶解により、確認することができる。
【0058】
かくして得られる硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液は、そのままの状態で、例えば、バナジウムレドックスフロー電池の負極電解液などとして使用することができる。
【0059】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0060】
実施例1
300ml容のフラスコ内に、98%硫酸442gを仕込み、攪拌しながら室温(約25℃)で液中に窒素ガスを流速300ml/min で2時間吹き込み、溶存している酸素を除去した。
【0061】
次に攪拌しながら、前記フラスコ内に、酸化バナジウム(III) (V2 3 )19.5gを添加し、気相部に窒素ガスを流速100ml/min で通じながら220〜225℃で10時間加熱した。その結果、反応液は、灰黄色の粘度の高いスラリーとなった。
【0062】
得られた反応液を30℃以下に冷却した後、氷水浴中に置いた500ml容のビーカー内にあらかじめ仕込んでおいた50%エタノール水100mlの中に、攪拌しながら60℃以下の温度で注入した。
【0063】
1時間後、反応液に含まれている固形物を25℃で吸引濾過した。得られたケーキは、濾過器上で5℃以下の50%エタノール水100ml、ついでエタノール150mlで洗浄したのち、乾燥させた。乾燥ケーキの量は、47.6gであった。
【0064】
得られた乾燥ケーキの元素分析を行なったところ、以下に示す結果が得られた。
【0065】
〔硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]の計算値〕
V:26.12重量%、 S:24.66重量%、
V/S(重量比):1.059
【0066】
〔乾燥ケーキの測定値〕
V:25.93重量%、 S:24.51重量%、
V/S(重量比):1.058
【0067】
以上の結果から、得られた乾燥ケーキは、硫酸バナジウム(III) と同一組成を有する化合物であることが確認された。
【0068】
つぎに、得られた乾燥ケーキの粉末X線回折(ターゲット:Cu、電圧:40kV、電流:50mA、走査速度:8°/min )を調べた。その結果を図1に示す。
【0069】
図1に示された回折パターンを調べたところ、主要回折線は、Index to the
Powder Diffraction File No.27-941 に記載されている次のd値(格子面間隔)と一致した。
【0070】
d値: 6.00,2.62,3.59,4.37,2.75,3.00,2.89,2.67
【0071】
このことから、得られた乾燥ケーキは、硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]であることが確認された。
【0072】
実施例2
実施例1において、硫酸の濃度およびその使用量、ならびに反応条件(温度および時間)を表1に示すように変更したほかは、実施例1と同様の操作を行ない、硫酸バナジウム(III) の収量、純度および収率を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に併記する。
【0073】
〔1〕収量
得られた硫酸バナジウム(III) の重量(g)を収量とする。
【0074】
〔2〕純度
バナジウムの含有量をJIS−G1221(1969)に規定の「鉄及び鋼中のバナジウム定量方法」に準じて測定し、その測定値をV/V2(SO4)3 の比率(重量%)で除した値を純度とする。
【0075】
〔3〕収率
各実験例における収量と純度とを乗じた値を100重量%に換算したときの硫酸バナジウム(III) の取得量(g)を理論的100重量%換算取得量で除したときの値(重量%)を収率とする。
【0076】
なお、反応時間は、目視で酸化バナジウム(III)(V2 3)の黒色粒子の消滅を観察したときまでに要した時間とした。
【0077】
【表1】
Figure 0003955130
【0078】
表1に示された結果から、硫酸の濃度が90%以上、加熱温度が160〜240℃の範囲で、硫酸バナジウム(III) を収率よく、速やかに製造することができることがわかる。とくに、硫酸の濃度を94%以上、反応温度を220℃以上とした場合には(実験番号1〜5)、反応時間を約15時間以下と非常に短縮させることができ、しかも硫酸バナジウム(III) を高収率で収得することができることがわかる。
【0079】
実施例3
300ml容のフラスコ内に、98%硫酸442gを仕込み、攪拌しながら室温(約25℃)で液中に窒素ガスを300ml/min の速度で2時間吹き込み、溶存している酸素を除去した。
【0080】
次に攪拌しながら、前記フラスコ内に、酸化バナジウム(III)(V2 3)19.5gを添加し、気相部に窒素ガスを流速100ml/min で通じながら220〜225℃で10時間加熱した。その結果、反応液は、灰黄色の粘度の高いスラリーとなった。
【0081】
反応終了後、反応液を30℃以下に冷却し、#4のグラスフィルターで吸引濾過した。グラスフィルター上のケーキの量は、110gであり、そのケーキに含まれている3価バナジウムの含有量は、12.12g(0.242mol)、付着反応液の量は、57重量%(62.7g)であった。
【0082】
一方、濾液の量は350g、その硫酸濃度は93%であった。
【0083】
得られたケーキ全量を氷水浴中に置いた500ml容のビーカー内に仕込んだ氷水200ml中に、攪拌しながら60℃以下の温度で注入した。
【0084】
1時間経過後、ビーカー内の反応液を25℃で吸引濾過した。得られたケーキは、濾過器上で50%エタノール水100ml、次いでエタノール150mlで洗浄した後、乾燥させた。乾燥ケーキの量は47.6gであった。
【0085】
得られたケーキを実施例1と同様にして分析したところ、前記ケーキは、硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]であることが確認された。
【0086】
実施例4
実施例1と同様の方法で硫酸バナジウム(III)[V2(SO4)3]の粉末を調製した。
【0087】
つぎに、得られた硫酸バナジウム(III) を用いて以下の実験を行なった。
【0088】
1L容のフラスコに1molの硫酸を含有する硫酸水溶液950mlとV2(SO4)3 1mol(390.1g)とを仕込み、窒素気流下で105℃で1時間加熱して完全に溶解させた。この溶液に水を添加し、容量を1Lとした。
【0089】
得られた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液は、V(III) 濃度が2mol/L、SO4 2-濃度が4mol/Lであり、得られた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液は、バナジウムレドックスフロー電池の負極液として使用しうるものであった。
【0090】
実施例5
実施例4において、H2 SO4 およびV2(SO4)3 の量を表2に示すように変更し、また反応条件も表2に示すように変更したほかは、実施例4と同様の操作を行なった。
【0091】
得られた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液に含まれている3価バナジウム〔V(III) 〕濃度〔mol/L〕およびSO4 2- 濃度〔mol/L〕を調べた。その結果を表2に示す。
【0092】
つぎに、得られた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液の性状を目視により観察した。その結果を表2に示す。
【0093】
【表2】
Figure 0003955130
【0094】
実験例11〜16によれば、表2に示されるように、所定の3価バナジウム〔V(III) 〕濃度およびSO4 2- 濃度を有する硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液を得ることができたことがわかる。
【0095】
次に、実験例11で得られた硫酸水溶液の吸光度〔吸光度A=log10(I0/I) 〕を島津製作所(株)製、スペクトロフォトメーターUV−120−01を用いて測定した。その結果を図2に示す。
【0096】
図2に示されたチャートと、あらかじめ他法で調製しておいた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液について調べておいたチャートとを対比したところ、両者が一致した。このことから、実験例11で得られた硫酸水溶液は、硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液であることを確認することができた。
【0097】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、酸化バナジウム(III) から、硫酸バナジウム(III) を高純度で効率よく製造することができるという効果が奏される。
【0098】
また、本発明の製造方法によれば、得られた硫酸バナジウム(III) を硫酸水溶液中で加熱することにより、バナジウムレドックスフロー電池の電解液として有用な高品質の硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液を効率よく製造することができるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施例1で得られた乾燥ケーキの粉末X線回折図である。
【図2】図2は、本発明の実験例11で得られた硫酸バナジウム(III) の硫酸水溶液の吸光度のチャートを示す図である。

Claims (1)

  1. 酸化バナジウム(III)を濃度が80%以上の硫酸中で140〜260℃に加熱した後、生成した固体の硫酸バナジウム(III)を反応液から回収することを特徴とする硫酸バナジウム(III)の製造方法。
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