JP3952785B2 - 真空バルブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空バルブに係わり、特に小型化を実現可能とした真空バルブに関する。
【0002】
【従来の技術】
図12は、真空バルブの一例を示す断面図である。真空バルブは円筒状の絶縁筒301とその両端の蓋302、303により密閉されており、内部は高真空に維持されている。絶縁筒301の内部には一対の電極304、305が設けられており、一方の電極304は固定軸306を介し外部に導出されており、もう一方の電極305は可動軸307、ベローズ308を介し外部に導出されている。これらの電極304、305は可動軸307を外部より駆動することにより、接離され、回路に流れる電流の開閉を行なう。
【0003】
図13は、真空バルブに用いられる電極の1種でアークを駆動する磁気駆動電極と呼ばれる電極構造の第1の例を示した図である。この図では一対のカップ型電極313が開極状態にあり、接点311間にアーク312が発生している。一方の通電軸317は図12に示した真空バルブの可動軸307に、もう一方の通電軸317は固定軸306に接続される。接点311と通電軸317の間にはカップ型電極313が設けられている。カップ型電極313の断面は凹型になっており、接点311側の円筒部314と通電軸317側の底部315から構成されており、円筒部314に中心軸付近に穴を持つ接点311が取り付けられている。
【0004】
カップ型電極313の円筒部314にはスリット316が設けられており、スリット316の角度は一対の電極で接点に平行な面に対して対称になっている。
【0005】
接点311間に発生したアーク312にはカップ型電極により生じる磁界とアーク電流の相互作用により円周方向の電磁力が働き、接点311間を回転する。このため接点311の局所的な加熱が抑制され、接点の損傷が抑制される。従って、前述のような電極構造とすることで大電流遮断を行なうことが出来る。
【0006】
図14は、アークを駆動する磁気駆動電極と呼ばれる電極構造の第2の例を示した図である。第1の例に示した磁気駆動電極の例とは電極のスリットの構造が異なっている。カップ型電極313の円筒部314と底部315にはスリット316が設けられており、スリット316の角度は一対の電極で接点に平行な面に対して対称になっている。
【0007】
接点311間に発生したアーク312にはカップ型電極により生じる磁界とアーク電流の相互作用により円周方向の電磁力が働き、接点311間を回転する。このため接点311の局所的な加熱が抑制され、接点の損傷が抑制される。従って、前述のような電極構造とすることで大電流遮断を行なうことが出来る。
【0008】
図15は、アークを駆動する磁気駆動電極と呼ばれる電極構造の第3の例を示した図である。第1、第2の例に示した磁気駆動電極の例とは電極のスリットの構造が異なっている。
【0009】
カップ型電極313の円筒部314と底部315にはスリット316が設けられており、スリット316は底部315の通電軸317側の面または、底部315の通電軸317側の面と側面の円筒状の部分からなる角部を通っている。スリット316の角度は一対の電極で接点に平行な面に対して対称になっている。
【0010】
接点311間に発生したアーク312にはカップ型電極により生じる磁界とアーク電流の相互作用により円周方向の電磁力が働き、接点311間を回転する。このため接点311の局所的な加熱が抑制され、接点の損傷が抑制される。従って、前述のような電極構造とすることで大電流遮断を行なうことが出来る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
真空バルブを通電状態とした場合(一対の電極を接触させた場合)では、大電流が流れても電極の接触状態が維持できるように十分な力を電極に加える。そのため、電極にはこの力に耐える機械的強度が必要となる。第1から第3の例では、強度が不十分であると円筒部や底部が変形しやすい。十分な強度を得るためには円筒部や底部を十分な厚さとすることとなり、電極サイズが大きくなっていた。特に第2、第3の例では、底部にスリットが設けられているため、第1の例より底部の機械的な強度が低くなるため、第1の例と同等の強度を得るためには第1の例より更に部材の厚さを増加する必要がある。
【0012】
図16は磁気駆動電極の中心軸を含む断面図である。第1から第3の例のようなアークを電極間で回転する磁気駆動電極では、アークが電極間からはみ出る可能性がある。電極間からアークがはみ出ると、円板状接点のアークが接触する面と接点の背面に取り付けられている電極の円筒部の外側側面や中心側側面(内側の側面)は近接しているため、これらにアークが接触する可能性がある。アークが接触すると、円筒部を構成する材料は接点材料に比べてアークにより損傷を受けやすいため、電極寿命や遮断性能が低下する恐れがある。
【0013】
本発明の目的は、電極の耐久性、遮断性能、機械的強度を向上させ、電極及び真空バルブのサイズを縮小させた真空バルブを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る真空バルブは、
真空容器内に1対の電極が設けられており、
各々の電極は、斜めのスリットを有する導電体製の円筒部の一方の端部に円筒部と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点が接合されており、円筒部のもう一方の端部は底部で覆われており、底部の接点側と逆の面には通電軸が取り付けられており、
電極の円筒部の外側側面のうち前記円板状の接点側の部分が接点に覆われており、
円筒部外側側面の接点の外径と円筒部の外径がほぼ等しくなっており、
円筒部外側側面の接点と円筒部の一端に設けられた円板状の接点が一体で形成されており、
円筒部外側側面の接点の電極中心軸に対し垂直方向の厚さが、円筒部の一端に設けられた円板状の接点の電極中心軸方向の厚さ以下となることを特徴とする。
【0017】
このような構成の本発明によれば、アークが電極間から外側にはみ出した場合も、外側側面に接点が設けられているため、円筒部の損傷を防ぐことができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1を用いて本発明の第1の実施形態を説明する。図1には一対の電極の外形図が示してある。カップ型電極1は、円筒部2と底部3からなり、円筒部2の一方の端部に円筒部2と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点4が接合されており、円筒部2のもう一方の端部は底部3で覆われている。底部3の接点側と逆の面には通電軸7が取り付けられている。円筒部2には電極中心軸に対しある角度を有するスリット5が設けられている。カップ型電極1のうちもう一方の電極はスリット5と電極中心軸がなす角度がほぼ180度から第1の電極のスリット5と電極中心軸のなす角度を引いた角度となっている。
【0022】
そして、円筒部2の内径D1より通電軸7の外径d1が大きくなっている。例では通電軸7は円柱状であるが、多角形など円柱以外の形状でもよい。なお、円柱以外の形状とした場合でも、円筒部2の内径D1より、通電軸7の電極中心軸に垂直な断面における電極中心軸を通る任意の直線上の対向する外周点間の距離が大きくなるようにする。
【0023】
真空バルブを通電状態とする場合、真空バルブ外部の機構により可動軸を固定軸側に動かし、大電流が流れた場合も接触状態を維持できるように大きな力を加えて、一対の電極の接点4を接触させる。円筒部2の背面に通電軸7があるため、接触する部分に働く力を背面で支えることが可能となる。
【0024】
また、遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアーク6を経て、もう一方の電極の接点4に流入する。電流はカップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1を流れる電流により生じる磁界とアーク6中の電流の相互作用による駆動力のためアーク6は周方向に駆動される。
【0025】
このように、円筒部2の内径D1より通電軸7の外径d1を大きくすることにより、電極サイズを大きくすることなく、機械的な強度を向上させることができる。また、アークが接点4間を停滞することなく回転し、接点4の局所的な溶融が抑制される。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持つ真空バルブの提供が可能となる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、図2を用いて本発明の第2の実施形態を説明する。図2には一対の電極の外形図が示してある。カップ型電極1は、円筒部2と底部3からなり、円筒部2の一方の端部に円筒部2と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点4が接合されており、円筒部2のもう一方の端部は底部3で覆われている。底部3の接点側と逆の面には通電軸7が取り付けられている。円筒部2と底部3には電極中心軸に対しある角度を有するスリット5が設けられている。カップ型電極1のうちもう一方の電極はスリット5と電極中心軸がなす角度がほぼ180度から第1の電極のスリット5と電極中心軸のなす角度を引いた角度となっている。底部3では、スリット5は底部3の通電軸7側の面に達するように設けられている。
【0027】
円筒部2の内径D1より通電軸7の外径d1が大きくなっている。例では通電軸7は円柱状であるが、多角形など円柱以外の形状でもよい。なお、円柱以外の形状とした場合でも、円筒部2の内径D1より、通電軸7の電極中心軸に垂直な断面における電極中心軸を通る任意の直線上の対向する外周点間の距離が大きくなるようにする。
【0028】
真空バルブを通電状態とする場合、真空バルブ外部の機構により可動軸を固定軸側に動かし、大電流が流れた場合も接触状態を維持できるように大きな力を加えて、一対の電極の接点4を接触させる。円筒部2の背面に通電軸7があるため、接触する部分に働く力を背面で支えることが可能となる。
【0029】
また、遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアーク6を経て、もう一方の電極の接点4に流入する。電流はカップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3をスリット5により制御されて流れる電流により生じる磁界とアーク6中の電流の相互作用による駆動力のためアーク6は周方向に駆動される。
【0030】
この実施形態においても、円筒部2の内径D1より通電軸7の外径d1を大きくしているので、電極サイズを大きくすることなく、機械的な強度を向上させることができる。また、アークが接点4間を停滞することなく回転し、接点4の局所的な溶融が抑制される。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持つ真空バルブの提供が可能となる。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、図3を用いて本発明の第3の実施形態を説明する。図3には一対の電極の外形図が示してある。カップ型電極1は、円筒部2と底部3からなり、円筒部2の一方の端部に円筒部2と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点4が接合されており、円筒部2のもう一方の端部は底部3で覆われている。底部3の接点側と逆の面には通電軸7が取り付けられている。円筒部2と底部3には電極中心軸に対しある角度を有するスリット5が設けられている。カップ型電極1のうちもう一方の電極はスリット5と電極中心軸がなす角度がほぼ180度から第1の電極のスリット5と電極中心軸のなす角度を引いた角度となっている。底部3では、スリット5は、底部3の接点4側の面(底部3と円筒部2に囲まれた面)には設けられていないが、底部3の通電軸7側の面と外側の円筒状の部分からなる角部に達するように設けられている。
【0032】
円筒部2の内径D1より通電軸7の外径d1が大きくなっている。例では通電軸7は円柱状であるが、多角形など円柱以外の形状でもよい。なお、円柱以外の形状とした場合でも、円筒部2の内径D1より、通電軸7の電極中心軸に垂直な断面における電極中心軸を通る任意の直線上の対向する外周点間の距離が大きくなるようにする。
【0033】
真空バルブを通電状態とする場合、真空バルブ外部の機構により可動軸を固定軸側に動かし、大電流が流れた場合も接触状態を維持できるように大きな力を加えて、一対の電極の接点4を接触させる。円筒部2の背面に通電軸7があるため、接触する部分に働く力を背面で支えることが可能となる。
【0034】
また、遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアーク6を経て、もう一方の電極の接点4に流入する。電流はカップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3をスリット5により制御されて流れる電流により生じる磁界とアーク6中の電流の相互作用による駆動力のためアーク6は周方向に駆動される。
【0035】
この実施形態においても、円筒部2の内径D1より通電軸7の外径d1を大きくしているので、電極サイズを大きくすることなく、機械的な強度を向上させることができる。また、アークが接点4間を停滞することなく回転し、接点4の局所的な溶融が抑制される。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持つ真空バルブの提供が可能となる。
【0036】
(第4の実施形態)
次に、図4を用いて本発明の第4の実施形態を説明する。図4には一方の電極を通電軸側から見た外形図が示してある。通電軸7と底部3の接続部分が、底部3の通電軸7側に設けられたスリット5より電極の中心軸側であることを特徴としている。その他の構成は、第2、第3の実施形態の真空バルブと同様である。
【0037】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアーク6を経て、もう一方の電極の接点4に流入する。電流はカップ型電極1を経て通電軸7に流出する。通電軸7が底部3の通電軸7側のスリット5をふさがないため、底部3を流れる電流はスリット5により制御される。そのため、カップ型電極1の円筒部2と底部3をスリット5により制御されて流れる電流により生じる磁界とアーク6中の電流の相互作用による駆動力のためアーク6は周方向に駆動される。
【0038】
この実施形態によれば、第2、第3の実施形態の効果に加えて、さらにアークが接点4間を停滞することなく回転し、接点4の局所的な溶融が抑制される。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持つ真空バルブの提供が可能となる。
【0039】
(第5の実施形態)
次に、図5を用いて本発明の第5の実施形態を説明する。図5には一方の電極を通電軸側から見た外形図が示してある。通電軸7と底部3の接続部分が、底部3の通電軸7側に設けられたスリット5より電極の中心軸側で、スリット5に接するようになっていることを特徴としている。その他の構成は、第4の実施形態の真空バルブと同様である。
【0040】
通電軸7と底部3の接続部がスリット5をふさがない範囲で最大となっているため、真空バルブ両端の抵抗値が低くなる。また、底部3を広い範囲で通電軸7が支持する構造となる。
【0041】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアーク6を経て、もう一方の電極の接点4に流入する。電流はカップ型電極1を経て通電軸7に流出する。通電軸7が底部3の通電軸7側のスリット5をふさがないため、底部3を流れる電流はスリット5により制御される。そのため、カップ型電極1の円筒部2と底部3をスリット5により制御されて流れる電流により生じる磁界とアーク6中の電流の相互作用による駆動力のためアーク6は周方向に駆動される。
【0042】
この実施形態によれば、第4の実施形態の効果に加えて、通電性能、機械的な強度を向上させることができる。またこれにより、高い遮断性能と機械的な強度を持つ真空バルブの提供が可能となる。
【0043】
(第6の実施形態)
次に、図6を用いて本発明の第6の実施形態を説明する。図6には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。カップ型電極1は、円筒部2と底部3からなり、円筒部2の一方の端部に円筒部2と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点4が接合されており、円筒部2のもう一方の端部は底部3で覆われている。底部3の接点側と逆の面には通電軸7が取り付けられている。円筒部2には電極中心軸に対しある角度を有するスリット5が設けられている。カップ型電極1のうちもう一方の電極はスリット5と電極中心軸がなす角度がほぼ180度から第1の電極のスリット5と電極中心軸のなす角度を引いた角度となっている。
【0044】
円筒部2の外側側面のうち円板状の接点4側の部分のみが接点4に覆われており、円筒部2端部に設けられた円板状の接点4と円筒部2側面に設けられた接点4は一体となっている。また、円筒部2側面の接点4の外径と円筒部2の外径がほぼ等しくなっている。なお、円筒部2の内径より通電軸7の外径が大きくなっている。
【0045】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。アークが電極間から外側にはみ出した場合も、側面に接点4が設けられているため、円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0046】
この実施形態によれば、電極間からはみ出したアークによりカップ型電極1の円筒部2側面が損傷することを防ぐことができる。また、接点4全体を厚くするより真空バルブ両端の抵抗を低く抑えることができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持ち、両端の抵抗の低い通電性能の優れた真空バルブの提供が可能となる。
【0047】
(第7の実施形態)
次に、図6を用いて本発明の第7の実施形態を説明する。図6には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。カップ型電極1は、円筒部2と底部3からなり、円筒部2の一方の端部に円筒部2と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点4が接合されており、円筒部2のもう一方の端部は底部3で覆われている。底部3の接点側と逆の面には通電軸7が取り付けられている。円筒部2と底部3には電極中心軸に対しある角度を有するスリット5が設けられている。カップ型電極1のうちもう一方の電極はスリット5と電極中心軸がなす角度がほぼ180度から第1の電極のスリット5と電極中心軸のなす角度を引いた角度となっている。底部3では、スリット5は底部3と底部3の通電軸側の面に設けられている。
【0048】
円筒部2の外側側面のうち円板状の接点4側の部分のみが接点4に覆われており、円筒部2端部に設けられた円板状の接点4と円筒部2側面に設けられた接点4は一体となっている。また、円筒部2側面の接点4の外径と円筒部2の外径がほぼ等しくなっている。なお、円筒部2の内径より通電軸7の外径が大きくなっている。
【0049】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。アークが電極間から外側にはみ出した場合も、側面に接点4が設けられているため、円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0050】
この実施形態によれば、電極間からはみ出したアークによりカップ型電極1の円筒部の2側面が損傷することを防ぐことができる。また、接点4全体を厚くするより真空バルブ両端の抵抗を低く抑えることができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持ち、両端の抵抗の低い通電性能の優れた真空バルブの提供が可能となる。
【0051】
(第8の実施形態)
次に、図6を用いて本発明の第8の実施形態を説明する。図6には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。カップ型電極1は、円筒部2と底部3からなり、円筒部2の一方の端部に円筒部2と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点4が接合されており、円筒部2のもう一方の端部は底部3で覆われている。底部3の接点側と逆の面には通電軸7が取り付けられている。円筒部2と底部3には電極中心軸に対しある角度を有するスリット5が設けられている。カップ型電極1のうちもう一方の電極はスリット5と電極中心軸がなす角度がほぼ180度から第1の電極のスリット5と電極中心軸のなす角度を引いた角度となっている。底部3では、スリット5は底部3の接点4側の面(底部3と円筒部2に囲まれた面)に設けられていないが、底部3の通電軸7側の面と外側の円筒状の部分からなる角部に設けられている。
【0052】
円筒部2の外側側面のうち円板状の接点4側の部分のみが接点4に覆われており、円筒部2端部に設けられた円板状の接点4と円筒部2側面に設けられた接点4は一体となっている。また、円筒部2側面の接点4の外径と円筒部2の外径がほぼ等しくなっている。なお、円筒部2の内径より通電軸7の外径が大きくなっている。
【0053】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。アークが電極間から外側にはみ出した場合も、側面に接点4が設けられているため、円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0054】
この実施形態によれば、電極間からはみ出したアークによりカップ型電極1の円筒部2の側面が損傷することを防ぐことができる。また、接点4全体を厚くするより真空バルブ両端の抵抗を低く抑えることができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持ち、両端の抵抗の低い通電性能の優れた真空バルブの提供が可能となる。
【0055】
(第9の実施形態)
次に、図6を用いて本発明の第9の実施形態を説明する。図6には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。
【0056】
この実施形態は、上述の第6から第8の実施形態において、円筒部2の外側側面に設けられた接点4の電極中心軸に対し垂直方向の厚さ(すなわち半径方向の厚さ)t1が、円筒部2の端部に取り付けられた中心部に穴の設けられた接点4の電極中心軸方向の厚さt2以下となっていることを特徴とする。
【0057】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。アークが電極間から外側にはみ出した場合も、側面に接点4が設けられているため、円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0058】
円筒部2の外側側面に設けられた接点4には、円筒部2の端部に設けられた接点4よりアークが接している時間は短いため、その厚さt1はt2以下とすることが可能である。また、円筒部2端部に設けられた接点4の厚さがt2となる領域を広くできるため真空バルブ両端の抵抗を低減できる。
【0059】
この実施形態によれば、電極間からはみ出したアークによりカップ型電極1の円筒部2の側面が損傷することを防ぐことができる。また、第6から第8の実施形態よりも、更に真空バルブ両端の抵抗を低く抑えることができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持ち、両端の抵抗の低い通電性能の優れた真空バルブの提供が可能となる。
【0060】
(第10の実施形態)
次に、図7を用いて本発明の第10の実施形態を説明する。図7には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。カップ型電極1の円筒部2の中心側側面のうち円板状の接点4側の部分のみが接点4に覆われており、円筒部2の中心側側面の接点4と、円筒部2の端部に設けられた円板状の接点4が一体で形成されていることを特徴とする。その他の構成は、上述の第6から第9の実施形態の真空バルブと同様である。
【0061】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。
【0062】
アークの位置が電極中心部の接点4の穴付近となり、アークの一部が穴の内部に入り込んだ場合も、円筒部2の中心側側面に接点4が設けられているため、円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0063】
この実施形態によれば、電極間からはみ出したアークによりカップ型電極1の円筒部2が損傷するのを防ぐことができる。これにより、高い遮断性能と耐久性を持った真空バルブの提供が可能となる。
【0064】
なお、上述の説明では、第6から第9の実施形態のように円筒部2の外側側面のうち円板状の接点4側の部分が接点4に覆われていることに加えて、カップ型電極1の円筒部2の中心側側面のうち円板状の接点4側の部分が接点4に覆われており、これらの部分と円筒部2の端部に設けられた円板状の接点4が一体で形成されている場合について述べたが、円筒部2の外側側面のうち円板状の接点4側の部分が接点4に覆われていないものについても、円筒部2の中心側側面のうち円板状の接点4側の部分のみを接点4に覆われており、この部分と円筒部2の端部に設けられた円板状の接点4が一体で形成されている構成とすることができる。この構成においても、アークの一部が穴の内部に入り込んだ場合に円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0065】
(第11の実施形態)
次に、図8を用いて本発明の第11の実施形態を説明する。図8には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。
【0066】
この実施形態は、円筒部2の中心側側面(即ち内側の側面)に沿って、一端が接点4に、もう一端が底部3に接合された補強部材(A)8が設けられており、補強部材(A)8がカップ型電極1の円筒部2より抵抗率が高い材料により形成されたことを特徴とする。その他の構成は、上述の第10の実施形態と同様である。
【0067】
この実施形態においては、補強部材(A)8により、電極の機械的な強度を向上させることができる。また、補強部材(A)8は、円筒部2より低効率の高い材料で構成されているため、補強部材(A)8に分流する電流はごくわずかであり、電流はほぼ全て円筒部2を流れる。そのため、円筒部2を流れる電流により生じる磁界は、補強部材(A)8を設けたことによりほとんど低下しない。
【0068】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。アークの位置が電極中心部の接点4の穴付近となり、アークの一部が穴の内部に入り込んだ場合も、円筒部2の側面に接点4が設けられているため、円筒部2の損傷を防ぐことができる。
【0069】
そして、補強部材(A)8を前述のように設けたことにより、円筒部2より生じる磁界を下げることなく電極の機械的な強度を向上させることができる。また、電極間からはみ出したアークによりカップ型電極1の円筒部2の側面の損傷を防ぐことができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持った真空バルブの提供が可能となる。
【0070】
(第12の実施形態)
次に、図9を用いて本発明の第9の実施形態を説明する。図9には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。
【0071】
真空バルブを通電状態した場合(一対の電極を接触させた場合)、接点4のΔrの部分が対向する電極の接点4と接触する。ΔRは円筒部2の端部に取り付けられた中心に穴が設けられた接点4と円筒部2の接続されている領域を示している。ΔRの領域では、円筒部2を流れる電流による駆動力が充分得られる。
【0072】
一対の電極が接触する領域Δrの電極中心軸側の位置は、ΔRの電極中心軸側の位置より外側となっている。即ち、Δrの電極中心軸側の位置から電極中心軸までの距離aが、円筒部2の一端に設けられた円板状の接点4と円筒部2の接合されている部分の電極中心軸側の位置から電極中心軸までの距離bより長くなっている。
【0073】
また、一対の電極の接点が接触する領域Δrの電極中心軸に対し外側の位置は、ΔRの電極中心軸に対し外側の位置より内側となっている。即ち、Δrの電極中心軸に対し反対側の外側の位置から電極中心軸までの距離cが、円筒部2の一端に設けられた円板状の接点4と円筒部2の接合されている部分の電極中心軸に対し外側の位置から電極中心軸までの距離dより短くなっている。
【0074】
他の構成は、上述の第6から第11の実施形態と同様である。
【0075】
遮断動作を行なうと、電極を開いた瞬間にはΔrの中でアークが発生する。カップ型電極1の円筒部2と底部3を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。前述のようにΔrはΔRに含まれるため、発生したアークは確実に周方向に駆動される。
【0076】
このように、電極を開いた瞬間にアークが生じる位置を、アークがよりよく駆動される位置とすることにより、アークが接点4間を停滞することなく回転し、接点4の局所的な溶融が抑制される。その他の効果は上述の第6から第11の実施形態と同様である。これにより、高い遮断性能と耐久性を持つ真空バルブの提供が可能となる。
【0077】
(第13の実施形態)
次に、図10を用いて本発明の第13の実施形態を説明する。図10には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。
【0078】
カップ型電極1の円筒部2に電極中心軸に対し周方向に空間が設けられており、この空間に一端が接点4に、もう一端がカップ型電極1の底部3に接合された補強部材(B)9が設けられている。補強部材(B)9は円筒部2より抵抗率が高い材料により形成されている。その他の構成は、上述の第1から第12の実施形態と同様である。
【0079】
真空バルブを通電状態(一対の電極を接触させた状熊)とした場合、対向する電極の接点4が接触する部分の背面に補強部材(B)9が取り付けられている。そのため、真空バルブを通電状態とした場合に接点4の接触部分に働く力を効果的に支えることができる。
【0080】
また、補強部材(B)9は、円筒部2より抵抗率の高い材料で構成されているため、補強部材(B)9に分流する電流はごくわずかであり、電流はほぼ全て円筒部2を流れる。そのため、円筒部2を流れる電流により生じる磁界は、補強部材(B)9を設けたことによりほとんど低下しない。
【0081】
遮断動作を行なうと、事故電流や負荷電流は通電軸7、カップ型電極1、接点4、接点4間のアークを経て、もう一方の電極に流入し、カップ型電極1を経て通電軸7に流出する。カップ型電極1の円筒部2と底部3を流れる電流により生じる磁界とアーク中の電流の相互作用による駆動力のためアークは周方向に駆動される。
【0082】
そして、補強部材(B)9を前述のように設けたことにより、円筒部2より生じる磁界を下げることなく電極の機械的な強度を向上させることができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持った真空バルブの提供が可能となる。
【0083】
(第14の実施形態)
次に、図11を用いて本発明の第14の実施形態を説明する。図11には一方の電極の中心軸を通る断面図が示してある。
【0084】
カップ型電極1の円筒部2の内部に設けられた補強部材(B)9の電極中心軸からの距離r2が、通電軸7外周の電極中心軸からの距離R2より短くなっている。その他の構成は上述の第13の実施形態と同様である。
【0085】
真空バルブを通電状態(一対の電極を接触させた状態)とした場合、対向する電極の接点4が接触する部分の背面に補強部材(B)9が取り付けられており、補強部材(B)9の底部3での取り付け位置の背面には通電軸7が取り付けられている。そのため、真空バルブを通電状態とした場合に接点4の接触部分に働く力を補強部材(B)9、底部3、通電軸7で効果的に支えることができる。
【0086】
この実施形態によれば、補強部材(B)9と通電軸7を前述のように設けたことにより、円筒部2より生じる磁界を下げることなく電極の機械的な強度を向上させることができる。これにより、高い遮断性能と機械的な強度を持った真空バルブの提供が可能となる。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、接点間に生じるアークを、電極を流れる電流により生じる磁界による電磁力(駆動力)により周方向に駆動する磁気駆動電極において、通電軸によりカップ型電極の駆動力を損なうことなく、底部の背面を補強し機械的強度を向上させた電極や、接点をカップ型電極の円筒部の側面のうち接点側のみに設けることによりアークによる円筒部の損傷を防ぐことにより、耐久性と遮断性能を向上させた電極が実現可能となり、真空バルブの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態を説明するための、一対の電極の外形図。
【図2】 本発明の第2の実施形態を説明するための、一対の電極の外形図。
【図3】 本発明の第3の実施形態を説明するための、一対の電極の外形図。
【図4】 本発明の第4の実施形態を説明するための、一対の電極の外形図。
【図5】 本発明の第5の実施形態を説明するための、一対の電極の外形図。
【図6】 本発明の第6〜第9の実施形態を説明するための、電極の断面図。
【図7】 本発明の第10の実施形態を説明するための、電極の断面図。
【図8】 本発明の第11の実施形態を説明するための、電極の断面図。
【図9】 本発明の第12の実施形態を説明するための、電極の断面図。
【図10】本発明の第13の実施形態を説明するための、電極の断面図。
【図11】本発明の第14の実施形態を説明するための、電極の断面図。
【図12】従来例及び本発明の実施形態を説明するための、真空バルブの断面図。
【図13】従来の真空バルブ(第1の例)を説明するための、一対の電極の外形図。
【図14】従来の真空バルブ(第2の例)を説明するための、一対の電極の外形図。
【図15】従来の真空バルブ(第3の例)を説明するための、一対の電極の外形図。
【図16】従来の真空バルブを説明するための、一対の電極のうちの一方の電極の断面図。
【符号の説明】
1…カップ型電極
2…円筒部
3…底部
4…接点
5…スリット
6…アーク
7…通電軸
8…補強部材(A)
9…補強部材(B)
301…絶縁筒
302、303…蓋
304、305…電極
306…固定軸
307…可動軸
308…ベローズ
311…接点
312…アーク
313…カップ型電極
314…円筒部
315…底部
316…スリット
317…通電軸
Claims (4)
- 真空容器内に1対の電極が設けられており、
各々の電極は、斜めのスリットを有する導電体製の円筒部の一方の端部に円筒部と同軸の中心付近に穴が設けられた円板状の接点が接合されており、円筒部のもう一方の端部は底部で覆われており、底部の接点側と逆の面には通電軸が取り付けられており、
前記電極の円筒部の外側側面のうち前記円板状の接点側の部分が接点に覆われており、
円筒部外側側面の接点の外径と円筒部の外径がほぼ等しくなっており、
円筒部外側側面の接点と円筒部の一端に設けられた円板状の接点が一体で形成されており、
円筒部外側側面の接点の電極中心軸に対し垂直方向の厚さが、円筒部の一端に設けられた円板状の接点の電極中心軸方向の厚さ以下となることを特徴とする真空バルブ。 - 請求項1に記載の真空バルブにおいて、
前記電極の円筒部の外側側面のうち前記円板状の接点側の部分が接点に覆われていることに加えて、円筒部の中心側側面のうち前記円板状の接点側の部分も接点に覆われており、
前記円筒部の外側側面の接点及び中心側側面の接点と、円筒部の一端に設けられた円板状の接点が一体で形成されていることを特徴とする真空バルブ。 - 請求項1に記載の真空バルブにおいて、
真空バルブを通電状態とした際に、一対の電極の接点が接触する領域の電極中心軸側の位置から電極中心軸までの距離が、円筒部の一端に設けられた円板状の接点と円筒部の接合されている部分の電極中心軸側の位置から電極中心軸までの距離より長く、
一対の電極の接点が接触する領域の電極中心軸に対し外側の位置から電極中心軸までの距離が、円筒部の一端に設けられた円板状の接点と円筒部の接合されている部分の電極中心軸に対し外側の位置から電極中心軸までの距離より短いことを特徴とする真空バルブ。 - 請求項1に記載の真空バルブにおいて、
前記電極の円筒部に、電極中心軸に対し周方向に空間が設けられており、
前記空間に、一端が接点に、もう一端が電極の底部に接合された部材が設けられており、
前記部材が、電極の円筒部と接点より抵抗率が高い材料により形成されており、
前記部材の電極中心軸からの距離が、通電軸外周の電極中心軸からの距離より短いことを特徴とする真空バルブ。
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