JP3952711B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、磁気特性および被膜特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料である。
近年、省エネルギーの観点から、これら電気機器のエネルギーロスを小さくするニーズが高まっており、鉄心材料として用いられている方向性電磁鋼板についても、従来にも増して、良好な磁気特性が求められるようになってきた。
【0003】
方向性電磁鋼板は、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものであり、このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、仕上げ焼鈍の際に、いわゆるゴス方位と称される(110)〔001〕方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。従って、二次再結晶粒の結晶方位が磁気特性に大きな影響を及ぼす。
【0004】
また、方向性電磁鋼板の地鉄表面には、フォルステライト被膜と呼ばれるグラス被膜が存在する。このフォルステライト被膜は、鋼板層間の絶縁性を確保するだけでなく、鋼板に張力を付与してその低鉄損化に寄与している。
方向性電磁鋼板は、需要家にて加工されたのち、 800℃, 3時間程度の歪取り焼鈍が施されるため、フォルステライト被膜の被膜特性としては、歪取り焼鈍に耐え得ると共に、歪取り焼鈍後、曲げなどの加工を施した後でも剥離しないこと(歪取り焼鈍後耐曲げ剥離性)が求められる。
【0005】
さて、このような方向性電磁鋼板は、Siを 4.5mass%以下程度含有する鋼スラブを、加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中で連続焼鈍を施したのち、マグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃, 5時間程度の仕上げ焼鈍を行うことにより製造されてきた。
例えば、米国特許No.1965559号、特公昭40−15644 号公報、特公昭51−13469号公報などに、その技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記したような従来の方向性電磁鋼板の製造工程では、磁気特性と被膜特性との両立を図ることは極めて困難であった。
すなわち、磁気特性の向上を図ろうとすると被膜特性が劣化し、逆に被膜特性の向上を図ろうとすると磁気特性が劣化する、という問題があったのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したとおり、従来の製造工程では、磁気特性と被膜特性の両立を図ることが極めて困難であり、近年、特に強く求められている高特性材を安定して製造するには限界があった。
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、優れた磁気特性と被膜特性とを両立させ得る、全く新しい製造工程からなる方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、従来の製造工程を根本から見直した。その結果、仕上げ焼鈍工程において、二次再結晶とフォルステライト被膜形成の両方を行っていることが、磁気特性と被膜特性の両立を困難にしていることを突き止めた。
【0009】
従来の製造工程において、二次再結晶は仕上げ焼鈍中に起こる。この仕上げ焼鈍は、通常、1200℃,5時間程度の水素雰囲気中で行われる。この際、仕上げ焼鈍中のガス組成、焼鈍分離剤の組成や反応性、鋼板表面の酸化物の組成や形態などが二次再結晶粒の結晶方位、すなわち磁気特性に大きな影響を及ぼす。
一方、フォルステライト被膜の形成も仕上げ焼鈍中に起こる。そのため、磁気特性と同様に、仕上げ焼鈍中のガス組成、焼鈍分離剤の組成や反応性、鋼板表面の酸化物の組成や形態などがフォルステライト被膜の形成挙動、すなわち被膜特性に大きな影響を及ぼす。
しかしながら、二次再結晶にとって良好な条件と、フォルステライト被膜形成にとって良好な条件とは必ずしも一致せず、また、たとえ、そのような条件が存在したとしても、極めて狭い範囲であるため、工業的に安定して磁気特性と被膜特性の両者に優れる方向性電磁鋼板を製造することは極めて困難であった。
【0010】
そこで、発明者らは、従来、二次再結晶とフォルステライト被膜の形成の両方を行っていた仕上げ焼鈍を、二次再結晶のための焼鈍(以後、バッチ焼鈍と呼ぶ)と、フォルステライト被膜形成のための焼鈍(以後、仕上げ焼鈍と呼ぶ)に分離し、しかもバッチ焼鈍の前後で連続焼鈍を施すことによって、磁気特性と被膜特性の両立が可能であることを究明した。
さらに、バッチ焼鈍前後の連続焼鈍条件について検討し、その焼鈍温度、焼鈍時間および雰囲気酸化度等が、磁気特性や被膜特性に及ぼす影響を明らかにして、この発明を完成させたものである。
【0011】
すなわち、この発明は、含けい素鋼スラブを、熱間圧延したのち、熱延板焼鈍を施しまたは省略して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により板厚:0.22mm以上、 0.30mm 以下の最終板厚に仕上げ、ついで焼鈍温度:700 ℃以上、1050℃以下、焼鈍時間:1秒以上、20分以下の連続焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤スラリーを塗布することなしに、焼鈍温度:750 ℃以上、1250℃以下、焼鈍時間:30分以上、500 時間以下のバッチ焼鈍を施し、さらに焼鈍温度:750 ℃以上、1100℃以下、焼鈍時間:1秒以上、20分以下の連続焼鈍を施し、しかるのち焼鈍分離剤を塗布してから、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
【0012】
また、この発明では、バッチ焼鈍の前の連続焼鈍における雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])をA、バッチ焼鈍の後の連続焼鈍における雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])をBとする時、
A≦0.6 かつ 0.1≦B≦0.7 かつ B−A≧0
を満足する条件下でバッチ焼鈍前後の連続焼鈍を施すことが好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体的に説明する。
この発明のスラブは、製鋼−連続鋳造(あるいは造塊)によって製造される。スラブ組成については特に限定されることはなく、方向性電磁鋼板の組成として従来から公知の組成いずれもが適合するが、好適組成を掲げると次のとおりである。
Siは、電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する有用元素であり、3mass%程度含有させることが望ましいが、含有量が 4.5mass%を超えると冷間圧延が著しく困難になるため、4.5 mass%以下程度で含有させることが好ましい。
Cは、組織改善のために 0.1mass%を上限として添加することができる。
また、二次再結晶を制御するために、インヒビターとなる微量のSやSeやN、および硫化物形成元素、セレン化物形成元素(Mn,Cu等)、窒化物形成元素(Al,B等)ならびに粒界偏析元素(Sb,Sn,Bi等)を添加することもできる。
【0014】
ついで、スラブ加熱後、熱間圧延を施す。このスラブ加熱は、1100℃程度の低温加熱あるいは1400℃程度の高温加熱のいずれでもよく、特に限定されるものではない。
ついで、熱延鋼板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、板厚:0.22mm以上、 0.30mm 以下の最終冷延板とする。この冷間圧延は、鋼板温度が 250℃程度の温間圧延としてもよく、特に限定されない。
【0015】
ついで、最終冷延板に連続焼鈍を施す。
この連続焼鈍は、バッチ焼鈍による二次再結晶に最適な一次再結晶組織および表面を形成するために行う。一次再結晶組織制御の観点から、焼鈍温度は 700℃以上、1050℃以下とする必要があり、また焼鈍時間は1秒以上、20分以下とする必要がある。というのは、焼鈍温度が 700℃未満あるいは焼鈍時間が1秒未満では、一次再結晶およびそれに続く粒成長が十分ではなく、二次再結晶が不良となり、磁気特性が劣化し、一方焼鈍温度が1050℃を超えると、一次再結晶粒の粒径が粗大になり、二次再結晶が不良となり、また焼鈍時間が20分超えでは、効果が飽和し、経済的に不利となるからである。
なお、この連続焼鈍における焼鈍温度とは、焼鈍により到達する鋼板の最高温度であり、焼鈍時間とは、鋼板温度が所定の温度域(上記の場合 750℃以上、1050℃以下)にある積算時間を意味する。
【0016】
上記したバッチ焼鈍の前における連続焼鈍の焼鈍雰囲気としては、低酸化性湿潤水素雰囲気あるいは乾水素雰囲気とすることが望ましい。というのは、高酸化性湿水素雰囲気中で焼鈍された冷延鋼板は、その後のバッチ焼鈍の際に窒化や酸化を生じ、二次再結晶粒の結晶方位が劣化して磁気特性の劣化を招くからである。
特に好ましくは、バッチ焼鈍の前の連続焼鈍における雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])をAとすると、A≦0.6 を満足する雰囲気である。ここに、Aが 0.6超になると二次再結晶粒の結晶方位が若干劣化する。
【0017】
ついで、バッチ焼鈍を施す。このバッチ焼鈍は二次再結晶を発現させるために行う。ここに、かかるバッチ焼鈍における焼鈍条件は、焼鈍温度:750 ℃以上、1250℃以下、焼鈍時間:30分以上、 500時間以下とする必要がある。というのは、焼鈍温度が 750℃未満では二次再結晶が進行し難く、一方1250℃超えでは効果が飽和し、高コストとなり、また焼鈍時間が30分未満では、二次再結晶が進行し難く、一方 500時間超えでは効果が飽和し、高コストとなるからである。
なお、このバッチ焼鈍に際して焼鈍分離剤を塗布する必要はない。
【0018】
上記のバッチ焼鈍後、連続焼鈍を施す。この連続焼鈍は仕上げ焼鈍におけるフォルステライト被膜形成に最適な鋼板表面を形成するために行う。
ここに、焼鈍温度は 750℃以上、1100℃以下、また焼鈍時間は1秒以上、20分以下とする必要がある。というのは、焼鈍温度が 750℃未満または焼鈍時間が1秒未満では、鋼板表面の酸化が不十分で薄いフォルステライトしか形成されず、被膜特性の劣化を招き、一方焼鈍温度が1100℃超えでは、鋼板酸化量が多くなりすぎて被膜特性が劣化し、また焼鈍時間が20分超では効果が飽和し、経済的に不利だからである。
なお、この連続焼鈍における焼鈍温度とは、バッチ焼鈍前の連続焼鈍の場合と同様、焼鈍により到達する鋼板の最高温度であり、また焼鈍時間とは、鋼板温度が所定の温度域にある積算時間を意味する。
【0019】
上記したバッチ焼鈍の後における連続焼鈍の焼鈍雰囲気についても、バッチ焼鈍前の連続焼鈍の場合と同様、低酸化性湿潤水素雰囲気あるいは乾水素雰囲気とすることが望ましい。
特に好ましくは、バッチ焼鈍の後の連続焼鈍における雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])をBとすると、 0.1≦B≦0.7 を満足する雰囲気である。
そして、A≦0.6 および 0.1≦B≦0.7 を満足した上で、さらにB−A≧0を満足させるることが望ましい。
ここに、Bが 0.1未満あるいは 0.7超になると、フォルステライト被膜の一部が欠落して、被膜特性が劣化する。また、B−Aが0未満になると、フォルステライト被膜の形成が不十分になりがちで、被膜特性が劣化する。
【0020】
上記の連続焼鈍後、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから、仕上げ焼鈍を施す。
ここに、焼鈍分離剤としては、従来から公知のものいずれもが適合する。特に、マグネシアを主剤とし、必要に応じてチタニア、ストロンチウム化合物、硫化物、塩化物およびほう化物などの添加剤を添加したものを、水スラリーとして、塗布したものが好適に用いられる。
【0021】
この仕上げ焼鈍は、フォルステライト被膜の形成のために行う。この際、焼鈍温度は 800℃以上、1300℃以下、また焼鈍時間は1時間以上、1000時間以下とすることが望ましい。というのは、焼鈍温度が 800℃未満あるいは焼鈍時間が1時間未満の場合には、フォルステライト形成反応の進行が不十分で、良好な被膜特性が得られず、一方焼鈍温度が1300℃超えあるいは焼鈍時間が1000時間超えでは、効果が飽和し、経済的に不利だからである。
【0022】
さらに、上記の仕上げ焼鈍後、鋼板表面に絶縁被膜を塗布、焼き付ける。絶縁被膜の種類については、特に限定されないが、従来公知の絶縁被膜のいずれもが適合する。たとえば、特開昭50−79442 号公報や特開昭48−39338 号公報に記載されている、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、 800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
また、平坦化焼鈍により、鋼板の形状を整えることも可能であり、さらには絶縁被膜の焼き付けを兼ねた平坦化焼鈍を行うこともできる。
【0023】
実施例1
C:0.04mass%, Si:3.0 mass%, Mn:0.08mass%, Se:200 ppm およびSb:0.02mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1420℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.0 mmの熱延板とした後、1000℃, 30秒の熱延板焼鈍を施し、ついで一回目の冷間圧延により板厚:0.60mmとしたのち、 900℃, 30秒の中間焼鈍後、二回目の冷間圧延により0.22mmの最終板厚に仕上げた。
ついで、雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])が0.65の湿潤水素−窒素雰囲気中にて、表1に示す焼鈍温度、焼鈍時間で連続焼鈍を行い、ついで窒素雰囲気中にて875 ℃,100 時間のバッチ焼鈍を施したのち、雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])が0.45の湿潤水素−窒素雰囲気中にて、表1に示す焼鈍温度、焼鈍時間で連続焼鈍を行った。
その後、鋼板表面に、マグネシア:95mass%、チタニア:5mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布してから、乾水素雰囲気中にて1220℃,5時間の仕上げ焼鈍を施した。
【0024】
また、従来工程として、板厚:0.22mmの最終冷延板に、P[H20]/P[H2]=0.55の湿潤水素雰囲気中にて 820℃, 2分間の脱炭焼鈍を行ったのち、マグネシア:90mass%、チタニア:10mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布してから、乾水素雰囲気中にて1200℃, 10時間の仕上げ焼鈍を施した。
【0025】
上記のようにして得られた仕上げ焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を塗布し、 800℃で焼き付けた。
その後、窒素雰囲気中にて 800℃, 3時間の歪取り焼鈍を行った後の磁気特性および被膜特性について調査した。なお、磁気特性は、800 A/m で励磁した時の磁束密度B8 で評価し、また被膜特性は、歪取り焼鈍後の製品を円柱に巻き付け、被膜剥離を生じなかった最小曲げ半径で評価した。
得られた結果を表1に併記する。
【0026】
【表1】
【0027】
表1から明らかなように、バッチ焼鈍前後の連続焼鈍の焼鈍温度、時間およびバッチ焼鈍の焼鈍温度、時間を適切に制御することにより、従来工程品に比べて格段に優れた磁気特性および被膜特性を得ることができた。
【0028】
実施例2
C:0.03mass%,Si:3.0 mass%,Mn:0.10mass%,Al:130 ppm およびN:50 ppmを含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、熱間圧延により板厚:2.3 mmの熱延板にしたのち、1000℃, 30秒の熱延板焼鈍を施し、ついで冷間圧延により板厚:0.30mmの最終冷延板とした。
ついで、表2に示す種々の酸化性雰囲気(A)中にて 920℃, 30秒の連続焼鈍を施したのち、窒素雰囲気中にて 880℃, 50時間のバッチ焼鈍を施し、さらに表2に示す種々の酸化性雰囲気(B)中にて 850℃,2分間の連続焼鈍を行った。その後、鋼板表面に、マグネシアを焼鈍分離剤として塗布し、乾水素雰囲気中にて1180℃,5時間の仕上げ焼鈍を施した。
【0029】
また、従来工程として、板厚:0.30mmの最終冷延板に、P[H20]/P[H2]=0.45の湿潤水素雰囲気中にて 820℃, 2分間の脱炭焼鈍を行ったのち、マグネシア:95mass%、チタニア:5mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布してから、乾水素雰囲気中にて1180℃, 5時間の仕上げ焼鈍を施した。
【0030】
上記のようにして得られた仕上げ焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を塗布し、 800℃で焼き付けた。
その後、窒素雰囲気中にて 800℃, 3時間の歪取り焼鈍を行った後の磁気特性および被膜特性について調査した。
得られた結果を表2に併記する。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示したとおり、バッチ焼鈍の前後の連続焼鈍の雰囲気を制御することによって、さらに優れた磁気特性および被膜特性を得ることができた。
【0033】
実施例3
C:0.05mass%,Si:3.0 mass%,Mn:0.07mass%,S:0.007 mass%,Al:0.027 mass%,N:0.008 mass%およびSn:0.05mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1150℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.3 mmの熱延板とし、ついで一回目の冷間圧延により板厚:1.8 mmとしたのち、1100℃, 2分間の中間焼鈍後、二回目の冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。
この最終冷延板を、雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])が0.40の湿潤水素−窒素雰囲気中にて 830℃, 120秒の条件で連続焼鈍したのち、アンモニア雰囲気中にて焼鈍することにより、窒素量を 0.025mass%に増加して、インヒビターの増強を行った。ついで、水素−窒素混合雰囲気中にて、1250℃,30分間のバッチ焼鈍を施したのち、雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])が0.55の湿潤水素−窒素雰囲気中にて 850℃, 10分間の連続焼鈍を行った。
【0034】
ついで、マグネシア:98mass%、硫酸マグネシウム:1.5 mass%、塩化マグネシウム:0.5 mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布してから、乾水素雰囲気中にて 800℃, 1000時間の仕上げ焼鈍を施した。
その後、仕上げ焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を塗布し、800 ℃で焼き付けた。
【0035】
また、従来の工程による従来例を次のようにして作製した。
上記の最終冷延板を、P[H20]/P[H2]=0.40の湿潤水素−窒素雰囲気中にて、830 ℃, 120秒の条件で連続焼鈍したのち、アンモニア雰囲気中にて焼鈍することにより、窒素量を 0.025mass%に増加して、インヒビターの増強を行った。ついで、マグネシア:98mass%、硫酸マグネシウム:2mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布し、乾水素雰囲気中にて1200℃, 10時間の仕上げ焼鈍を施したのち、鋼板表面に、リン酸塩−クロム酸コロイダルシリカを含有する塗布液を塗布し、800 ℃で焼き付けた。
【0036】
その後、上記のようにして得られた発明例および従来例について、窒素雰囲気中にて 800℃, 3時間の歪取り焼鈍を行った後の磁気特性および被膜特性について調査した。
その結果、発明例の磁気特性B8 は1.94Tであったのに対し、従来例の磁気特性B8 は1.92Tで、発明例の方が優れていた。
また、歪取り焼鈍後の耐曲げ剥離性は、最小曲げ半径が発明例では25mm、従来例では35mmで、被膜特性も発明例の方が優れていた。
【0037】
実施例4
C:0.02mass%,Si:3.0 mass%,Mn:0.15mass%,S:0.002 mass%,Al:0.008 mass%,N:0.003 mass%およびSb:0.025 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1200℃に加熱後、熱間圧延により板厚:2.3 mmの熱延板とし、ついで一回目の冷間圧延により板厚:1.8 mmとしたのち、1100℃, 2分間の中間焼鈍後、二回目の冷間圧延により0.23mmの最終板厚に仕上げた。
この最終冷延板を、雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])が0.40の湿潤水素−窒素雰囲気中にて 860℃, 20秒の条件で連続焼鈍した後、水素−窒素混合雰囲気中にて 750℃,500 時間のバッチ焼鈍を施し、ついで雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])が0.50の湿潤水素−窒素雰囲気中にて 850℃, 3分間の連続焼鈍を行った。
【0038】
ついで、マグネシア:98mass%、水酸化ストロンチウム:2mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布してから、乾水素雰囲気中にて1300℃, 1時間の仕上げ焼鈍を施した。
その後、仕上げ焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を塗布し、800 ℃で焼き付けた。
【0039】
また、従来の工程による従来例を次のようにして作製した。
上記の最終冷延板を、P[H20]/P[H2]=0.40の湿潤水素−窒素雰囲気中にて、860 ℃, 20秒の条件で連続焼鈍したのち、マグネシア:98mass%、水酸化ストロンチウム:2mass%の組成になる焼鈍分離剤を塗布し、乾水素雰囲気中にて1200℃, 10時間の仕上げ焼鈍を施したのち、鋼板表面に、リン酸塩−クロム酸コロイダルシリカを含有する塗布液を塗布し、800 ℃で焼き付けた。
【0040】
その後、上記のようにして得られた発明例および従来例について、窒素雰囲気中にて 800℃, 3時間の歪取り焼鈍を行った後の磁気特性および被膜特性について調査した。
その結果、発明例の磁気特性B8 は1.92Tであったのに対し、従来例の磁気特性B8 は1.88Tで、発明例の方が優れていた。
また、歪取り焼鈍後の耐曲げ剥離性は、最小曲げ半径が発明例では25mm、従来例では45mmで、被膜特性も発明例の方が優れていた。
【0041】
【発明の効果】
かくして、この発明に従い、方向性電磁鋼板の製造に際し、最終冷延板に、バッチ焼鈍を挟む2回の連続焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから、仕上げ焼鈍を施すことにより、磁気特性および被膜特性が共に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる。
Claims (2)
- 含けい素鋼スラブを、熱間圧延したのち、熱延板焼鈍を施しまたは省略して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により板厚:0.22mm以上、 0.30mm 以下の最終板厚に仕上げ、ついで焼鈍温度:700 ℃以上、1050℃以下、焼鈍時間:1秒以上、20分以下の連続焼鈍を施したのち、焼鈍分離剤スラリーを塗布することなしに、焼鈍温度:750 ℃以上、1250℃以下、焼鈍時間:30分以上、500 時間以下のバッチ焼鈍を施し、さらに焼鈍温度:750 ℃以上、1100℃以下、焼鈍時間:1秒以上、20分以下の連続焼鈍を施し、しかるのち焼鈍分離剤を塗布してから、仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
- 請求項1において、バッチ焼鈍の前の連続焼鈍における雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])をA、バッチ焼鈍の後の連続焼鈍における雰囲気酸化度(P[H20]/P[H2])をBとする時、
A≦0.6 かつ 0.1≦B≦0.7 かつ B−A≧0
を満足する条件下でバッチ焼鈍前後の連続焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
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