JP4206664B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を安定して製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板は、その軟磁気特性を活かし、変圧器や発電機の鉄心材料として広く用いられている。
近年、省エネルギーの観点から、これらの電気機器においては、エネルギーロスの低減に対する要求が高まっており、鉄心材料として用いられている方向性電磁鋼板についても、従来にも増して、良好な磁気特性が求められるようになってきた。
【0003】
方向性電磁鋼板は、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するもので、かような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、仕上焼鈍の際にいわゆるゴス方位と称される(110)〔001〕方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。従って、二次再結晶粒の結晶方位が磁気特性に大きな影響を及ぼす。
【0004】
また、方向性電磁鋼板の需要家においては、磁気特性と共に被膜特性も重要視される。というのは、方向性電磁鋼板の被膜には、トランスの鉄心において絶縁性を保つ役割はもとより、ビルディングファクターを改善する役割、さらには騒音に影響する磁歪・歪み感受性を低下させる役割があるからである。
【0005】
さて、このような方向性電磁鋼板は、4.5 mass%以下のSiを含む鋼スラブを、スラブ加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中にて連続焼鈍を施したのち、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃,5時間程度の仕上焼鈍を行うことによって製造されてきた。例えば、米国特許第1965559 号公報、特公昭40−15644 号公報、特公昭51−13469号公報などに、その技術が開示されている。
【0006】
{110}<001>方位に集積した二次再結晶粒を効果的に生成させる技術として、従来から一次再結晶粒の正常粒成長を抑制するインヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズに分散させることが重要であると言われてきた。このインヒビターの作用により、最終仕上焼鈍時に一次再結晶粒の正常粒成長が抑制され、最も粒成長の優位性の高い{110}<001>方位の粒だけが、他の方位を蚕食して大きく成長するのである。
【0007】
このようなインヒビターとして代表的なものは、MnS,MnSe,AlNおよびVNのような硫化物やSe化合物、窒化物等で、鋼中への溶解度が極めて小さいものが用いられており、熱延前のスラブ加熱時にインヒビターを一旦完全に固溶させたのち、その後の工程で微細に析出させる方法が採られてきた。インヒビターを十分に固溶させるためのスラブ加熱温度は1400℃程度であり、普通鋼のスラブ加熱温度に比べると約 200℃も高い。
【0008】
このため、かような高温スラブ加熱に対して、以下に述べるような問題が指摘されるようになってきた。
1)高温加熱を行うためにエネルギー原単位が高い。
2)溶融スケールが発生し易く、またスラブ垂れが生じ易い。
3)スラブ表層の過脱炭が生じる。
上記2),3)の問題を解決するために、方向性電磁鋼専用の誘導加熱炉が考案されたが、依然として、エネルギーコストが高いという問題は残っている。
【0009】
そこで、方向性電磁鋼の低温スラブ加熱化を図る研究が進められるようになった。
しかしながら、スラブ加熱温度の低下は、インヒビター成分の固溶不足を招くために、必然的に抑制力の低下を引き起こす。
【0010】
そこで、低温スラブ加熱に起因する抑制力の低下を、後の工程で補う技術として、途中窒化技術が開発された。例えば、特開昭57−207114号公報には、脱炭焼鈍時に窒化する技術が、特開昭62−70521 号公報には、仕上焼鈍条件を特定し、仕上焼鈍時に途中窒化することによって低温スラブ加熱を可能にする技術が、それぞれ開示されている。また、特開昭62−40315 号公報には、Al,Nはスラブ加熱時に完全に固溶していなくても、後工程の途中窒化によってインヒビターを適正状態に制御する方法が開示されている。
【0011】
また、一方で、二次再結晶発現の重要なポイントとして、インヒビターの存在の他に、一次再結晶組織における方位差角に注目し、インヒビターに頼らなくても二次再結晶を生じさせる技術が開発された。すなわち、方位差角が20〜45°である粒界(高エネルギー粒界)が二次再結晶発現に重要な役割を果たしていることが、Acta Material 45巻で報告され、これに基づいて、インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板の研究がさかんに行われるようになってきた。
【0012】
しかしながら、上記した途中窒化技術および高エネルギー粒界を利用する技術はいずれも、二次再結晶のための最終仕上焼鈍時の粒成長を制御する技術であるため、その前工程の一次再結晶板については、粒成長の制御がうまくいかず、粒径が不ぞろい(非整粒)となり、製品の磁気特性がコイルの部位によって不安定になり易いというところに問題を残していた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、スラブ加熱温度が普通鋼なみに低い条件下でも、一次再結晶板における粒成長を適正に制御し、ひいては仕上焼鈍後に磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を安定して製造することができる方法を提案することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者らは、スラブ加熱温度が普通鋼なみに低い場合に、磁気特性がコイルの部位によって大きくばらつく原因について、詳細な検討を行った。
その結果、
(1) 脱炭焼鈍板において粒径の小さな粒と大きな粒が混在している、
(2) また、集合組織が測定部位によって大きくばらついている
ことが判明した。
このようなバラツキが生じる主因としては、インヒビターの抑制力が弱いために、脱炭焼鈍中に一次再結晶粒が粒成長し易いことが考えられる。
【0015】
インヒビターの抑制力が弱くても、高エネルギー粒界が高移動度を有する性質を利用することにより、あるいは窒化処理によるインヒビター補強により、引き続く仕上焼鈍において二次再結晶を生じさせることは可能である。
しかしながら、脱炭焼鈍終了時点での組織の不均一は製品の磁気特性の不均一を引き起こしてしまう。
【0016】
そこで、脱炭焼鈍終了段階での組織を均一化する方法について鋭意研究を行った結果、従来は並行して行われていた一次再結晶と脱炭とを分離して行う方法に想い至った。
すなわち、一次再結晶が完了するまでの期間は脱炭を抑制し、一次再結晶完了後に脱炭を促進するように制御する方法が極めて有効であることが新たに見出されたのである。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0017】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.C:0.01〜0.1 mass%、Si:2.0 〜4.5 mass%およびMn:0.03〜2.5 mass%を含有する鋼スラブを、1300℃以下に加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施したのち、最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
一次再結晶と脱炭のための焼鈍に関して、昇温過程では水素: 60 vol %以下でかつ露点: 15 ℃以下の雰囲気として一次再結晶を完了させ、均熱過程では水素: 40 vol %以上でかつ露点: 30 ℃以上の雰囲気とすることにより、一次再結晶完了まではCを0.01mass%以上含有させ、一次再結晶完了後にCを 0.005mass%以下まで低減することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【0019】
2.冷間圧延工程において、少なくとも1パスを 100℃以上の温度で行うことを特徴とする上記1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0020】
3.冷間圧延工程において、圧延途中の少なくとも1回のパス間において、150 ℃以上の温度域で1分以上保持することを特徴とする上記1または2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0021】
4.一次再結晶と脱炭のための焼鈍に関して、 500℃から 700℃までの昇温過程を50℃/s以上の昇温速度で加熱することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のスラブは、製鋼−連続鋳造(あるいは造塊)によって製造される。その際、スラブ組成は、少なくともSi,C,Mnについては、所定の範囲に制限する必要があるが、その他の元素については従来公知の組成いずれもが適合する。
【0023】
まず、Siについては、2.0 mass%以上、4.5 mass%以下とする。Siは、電気抵抗を高めて鉄損を低減する作用があり、そのためには 2.0mass%以上の含有を必要とするが、4.5 mass%を超えると冷間圧延性が著しく劣化するため、4.5 mass%以下とした。
Cは、組織改善のため、0.01mass%以上、0.1 mass%以下の範囲で含有させるものとした。
Mnは、Siと同じように電気抵抗を増加させ、鉄損を改善する効果があり、また製造時の熱間加工性を向上させる上でも有用な成分である。この目的のためには、0.03mass%以上の含有が必要であるが、2.5 mass%を超えて含有させた場合、γ変態を誘起して磁気特性が劣化するので、Mnは0.03mass%以上、2.5 mass%以下の範囲とした。
【0024】
その他、二次再結晶を制御するために、インヒビターとなる微量のSやSeならびに硫化物形成元素、セレン化物形成元素(Mn,Cuなど)および粒界偏析元素(Sb,Sn,Biなど)を含有させることもできる。
これらのインヒビター形成元素を含有させる場合の適正量は、次のとおりである。
【0025】
S,Seはそれぞれ、硫化物やSe化合物としてインヒビター機能を発揮する元素であり、単独添加または複合添加いずれの場合も 0.005mass%以上、0.03mass%未満の範囲で含有させることが好適である。というのは、含有量が 0.005mass%未満ではインヒビター機能を十分に発揮できず、一方0.03mass%以上ではスラブ加熱時に均一固溶させることが困難となり、かえってインヒビターとしての機能が損なわれてしまうからである。
【0026】
Cuは、CuSやCuSeを形成してインヒビターとして機能する他、被膜特性の改善にも有効に寄与する。この目的のためには、0.01mass%以上の含有を必要とするが、0.5 mass%を超えると表面性状が悪化するので、0.01mass%以上、0.5 mass%未満が好適である。
【0027】
Sb,SnおよびBiはいずれも、粒界に偏析してインヒビター機能を発揮する元素であるが、過剰に含有させると製品のベンド特性などの機械的特性が劣化する。従って、Sbは 0.001mass%以上、0.1 mass%未満、Snは 0.001mass%以上、0.1mass%未満、Biは0.0005mass%以上、0.05mass%未満の範囲が好適である。
【0028】
窒化物形成元素のAlに関しては、高温スラブ加熱の条件下では有効なインヒビターであるが、1300℃以下の低温スラブ加熱を前提とする本発明においては、均一に析出させることが困難なため、一次再結晶組織および集合組織を不均一たらしめる。従って、Alの含有量は0.01mass%未満に低減することが好ましい。
【0029】
なお、最近、これらのインヒビター元素を特に添加しなくても二次再結晶させる技術が開示されているが、この技術は本発明においても好適に適用できる。
【0030】
上記の工程成分組成に調整したスラブを、1300℃以下の低温でスラブ加熱し、熱間圧延を施す。
ついで、熱間圧延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して、最終板厚とする。冷間圧延は常温で行っても良いが、圧延温度を 100℃以上に上げ、動的歪時効によって集合組織を制御する、いわゆる温間圧延方法、また圧延のパス間に 150℃以上の温度域で1分以上保持し、静的歪時効によって集合組織を制御する、いわゆるパス間時効処理も、本発明において好適に適用することができる。
【0031】
ついで、最終冷間圧延板に、一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施す。この焼鈍においては、一次再結晶完了までは脱炭を抑制し、一次再結晶完了後に脱炭を促進することが重要であり、本発明の中心技術である。
具体的には、一次再結晶完了までは炭素を0.01mass%以上含有させ、一次再結晶完了後に炭素を0.005 mass%以下まで低減する。このような制御のためには、昇温過程では水素:60 vol%以下でかつ露点:15℃以下の雰囲気として脱炭を抑制しつつ一次再結晶を生ぜしめ、均熱過程では水素:40 vol%以上でかつ露点:30℃以上の雰囲気として脱炭を促進させる方法が有効である。
ここで、一次再結晶完了まで脱炭を抑制する理由は、一次再結晶の進行過程での粒成長抑制力を補強するためであり、一次再結晶後に脱炭を促進する理由は、製品鉄損の時効劣化を防ぐためである。
【0032】
本発明に従い、炭素を含有させた状態で一次再結晶を生じさせ、一次再結晶完了後に脱炭を行うことによって、組織、集合組織が均一化される理由については、まだ明確に解明されたわけではないが、発明者らは次のように考えている。
すなわち、一次再結晶完了までの期間に炭素を含有していると、炭素によって粒成長の抑制力が補強される。再結晶初期から再結晶完了までの期間は、局所的に再結晶の進行具合が異なり、比較的早期に核生成する粒と遅れて核生成する粒が混在する。この段階での抑制力は重要であり、抑制力が弱い場合には、早期に核生成した粒が粗大化するため、粒径が不均一になり、これが集合組織の不均一につながる。従って、一次再結晶が完了するまでの間は、炭素によって抑制力を補強することが有効である。一方、一次再結晶が鋼板全体で完了してしまえば、炭素による抑制力の必要性は弱まるので、脱炭を促進すればいいと考えられる。
【0033】
また、一次再結晶焼鈍の際の昇温過程を急速加熱にすることによって、ゴス核を増加させ、二次再結晶粒径を小さくして低鉄損化を図る技術が知られているが、この技術は、一次再結晶進行過程での抑制力を確保する本発明の技術と併用することで、より一層の効果を発揮する。
この急速加熱法を適用する場合には、少なくとも 500℃から 700℃までの昇温過程を50℃/s以上の昇温速度で加熱することが好適である。
なお、一次再結晶焼鈍の際の昇温過程を急速加熱とすることは、一次再結晶完了後の脱炭を促進する効果もあり、本発明には好都合である。
【0034】
ついで、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施す。この最終仕上焼鈍には特に制限はなく、従来から周知の方法に従って行えば良い。さらに、得られた仕上焼鈍板の表面に、絶縁被膜を塗布、焼き付ける。絶縁被膜の種類は特に限定されず、公知の絶縁被膜いずれもが適合する。例えば、特開昭50−79442 号公報や特開昭48−39338 号公報に記載されている、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800 ℃程度で焼き付ける方法が好適である。また、フラットニング焼鈍により、鋼板の形状を整えることも可能であり、さらには絶縁被膜焼き付けを兼ねたフラットニング焼鈍を行うこともできる。
【0035】
【実施例】
実施例1
C:0.05mass%, Si:3.0 mass%, Mn:0.10mass%, Al:0.003 mass%, N:0.003 mass%およびS:0.001 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1200℃に加熱後、熱間圧延により 2.2mm厚の熱延板としたのち、1000℃で30秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、1回で冷間圧延により最終板厚:0.34mmに仕上げた。
冷間圧延後、コイルの長手方向10箇所で、それぞれ幅方向3箇所から合計:30個の試験片を採取した。
【0036】
ついで、各試験片を脱脂処理後、一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施した。焼鈍条件は、均熱温度を 850℃、均熱時間を 120秒に統一し、焼鈍雰囲気を以下の4通り(a〜d)に変化させた。
a;加熱帯露点:50℃(水素 50vol%)、均熱帯露点:40℃(水素 50vol%)
b;加熱帯露点:50℃(水素 50vol%)、均熱帯露点:60℃(水素 50vol%)
c;加熱帯露点:0℃(水素 50vol%)、均熱帯露点:40℃(水素 50vol%)
d;加熱帯露点:0℃(水素 50vol%)、均熱帯露点:60℃(水素 50vol%)
【0037】
上記の焼鈍終了後に、鋼板の集合組織をX線回折による鋼板表面の極密度測定で評価した。また、焼鈍の途中、加熱を終了した時点で試験片を抽出し、C含有量の測定も行った。なお、加熱終了時点でいずれの試験片も 100%再結晶が完了していた。
【0038】
上記の一次再結晶と脱炭のための焼鈍後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤としては、MgOを主成分とし、副成分として Sr(OH)2・8H2Oを5重量部添加したものを用いた。最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付け、製品とした。各製品について、磁束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。かくして得られた結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示したとおり、本発明に従って一次再結晶と脱炭のための焼鈍条件を制御することにより、一次再結晶集合組織のバラツキが軽減され、その結果、磁気特性が良好な方向性電磁鋼板を安定して得ることができた。
【0041】
実施例2
C:0.07mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.08mass%、Al:0.005 mass%、Se:0.007 mass%, N:0.003 mass%およびSb:0.030 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブ3本(A,B,C)を、1250℃に加熱後、熱間圧延により 2.5mm厚の熱延板とした。ついで、酸洗後、常温で1回目の冷間圧延を施して中間板厚:1.5 mmとした。次に、これらのコイルを脱脂後、1000℃で60秒間の中間焼鈍を施したのち、酸洗し、Aのコイルは、常温で0.22mm厚まで冷間圧延し、Bのコイルは 200℃の圧延温度で0.22mm厚まで圧延し、Cのコイルはパス間で 250℃に5時間保持したのち、200 ℃の圧延温度で0.22mm厚まで圧延した。
冷間圧延後、コイルの長手方向10箇所で、それぞれ幅方向3箇所から合計:30個の試験片を採取した。
【0042】
ついで、各試験片を脱脂処理後、一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施した。焼鈍条件は、均熱温度を 825℃、均熱時間を 150秒に統一し、焼鈍雰囲気を以下の2通り(b,e)に変化させた。
b;加熱帯露点:50℃(水素 50vol%)、均熱帯露点:60℃(水素 50vol%)
e;加熱帯露点:0℃(水素 10vol%)、均熱帯露点:60℃(水素 60vol%)
【0043】
上記の焼鈍終了後に、鋼板の集合組織をX線回折による鋼板表面の極密度測定で評価した。また、焼鈍の途中、加熱を終了した時点で試験片を抽出し、C含有量の測定も行った。なお、加熱終了時点でいずれの試験片も 100%再結晶が完了していた。
【0044】
上記の一次再結晶と脱炭のための焼鈍後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤としては、MgOを主成分とし、副成分としてTiO2を5重量部添加したものを用いた。最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付け、製品とした。各製品について、磁束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。かくして得られた結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
同表に示したとおり、本発明に従って一次再結晶と脱炭のための焼鈍条件を制御することにより、一次再結晶集合組織のバラツキが軽減され、良好な磁気特性の方向性電磁鋼板を安定して得ることができた。
【0047】
実施例3
C:0.04mass%、Si:3.3 mass%、Mn:0.12mass%、Al:0.005 mass%、N:0.003 mass%、Cu:0.15mass%およびSn:0.03mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、1200℃に加熱後、熱間圧延により2.5mm厚の熱延板としたのち、1000℃で60秒間の熱延板焼鈍を施した。ついで、酸洗後、常温で1回目の冷間圧延を施して中間板厚:1.5 mmとした。次に、これらのコイルを脱脂後、1000℃で60秒間の中間焼鈍を施したのち、酸洗し、200 ℃の圧延温度で最終板厚:0.22mmに仕上げた。
冷間圧延後、コイルの長手方向10箇所で、それぞれ幅方向3箇所から合計:30個の試験片を採取した。
【0048】
ついで、各試験片を脱脂処理後、一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施した。焼鈍条件は、均熱温度を 850℃、均熱時間を 120秒に統一し、焼鈍雰囲気を以下の4通り(b-1,b-2,e-1,e-2)に変化させた。
b-1;加熱帯露点:50℃(水素 50vol%, 500→700 ℃を20℃/s)、
均熱帯露点:60℃(水素 50vol%)
b-2;加熱帯露点:50℃(水素 50vol%, 500→700 ℃を 120℃/s)、
均熱帯露点:60℃(水素 50vol%)
e-1;加熱帯露点:0℃(水素 10vol%, 500→700 ℃を20℃/s)、
均熱帯露点:60℃(水素 60vol%)
e-2:加熱帯露点:0℃(水素 10vol%, 500→700 ℃を 120℃/s)、
均熱帯露点:60℃(水素 60vol%)
【0049】
上記の焼鈍終了後に、鋼板の集合組織をX線回折による鋼板表面の極密度測定で評価した。また、焼鈍の途中、加熱を終了した時点で試験片を抽出し、C含有量の測定も行った。なお、加熱終了時点でいずれの試験片も 100%再結晶が完了していた。
【0050】
上記の一次再結晶と脱炭のための焼鈍後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布してから、最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤としては、MgOを主成分とし、副成分としてTiO2を5重量部、SrSO4 を5重量部添加したものを用いた。最終仕上焼鈍後、未反応の焼鈍分離剤を除去したのち、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付け、製品とした。各製品について、磁束密度B8 と鉄損W17/50 を測定した。かくして得られた結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
同表に示したとおり、本発明に従って一次再結晶と脱炭のための焼鈍条件を制御することにより、一次再結晶集合組織のバラツキが軽減され、その結果、磁気特性が良好な方向性電磁鋼板を安定して得ることができた。
【0053】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、スラブ加熱温度が普通鋼なみに低い条件下でも、一次再結晶板における粒成長を適正に制御して、仕上焼鈍後に磁気特性の優れた方向性電磁鋼板を安定して製造することができる。
Claims (4)
- C:0.01〜0.1 mass%、Si:2.0 〜4.5 mass%およびMn:0.03〜2.5 mass%を含有する鋼スラブを、1300℃以下に加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで一次再結晶と脱炭のための焼鈍を施したのち、最終仕上焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
一次再結晶と脱炭のための焼鈍に関して、昇温過程では水素: 60 vol %以下でかつ露点: 15 ℃以下の雰囲気として一次再結晶を完了させ、均熱過程では水素: 40 vol %以上でかつ露点: 30 ℃以上の雰囲気とすることにより、一次再結晶完了まではCを0.01mass%以上含有させ、一次再結晶完了後にCを 0.005mass%以下まで低減することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 - 冷間圧延工程において、少なくとも1パスを 100℃以上の温度で行うことを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 冷間圧延工程において、圧延途中の少なくとも1回のパス間において、150 ℃以上の温度域で1分以上保持することを特徴とする請求項1または2記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
- 一次再結晶と脱炭のための焼鈍に関して、 500℃から 700℃までの昇温過程を50℃/s以上の昇温速度で加熱することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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