JP3885432B2 - 一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、一方向性電磁鋼板、特に磁気特性および被膜特性がともに優れた汎用の一方向性電磁鋼板を安定して製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性珪素鋼板は、主として変圧器その他の電気機器の鉄心材料として使用され、磁束密度及び鉄損値などの磁気特性に優れることが重要である。そのため、厚さ100 〜300 mmのスラブを高温に加熱後熱間圧延し、次いでこの熱延板を1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、脱炭焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶および純化を目的とした最終仕上げ焼鈍を行う、という複雑な工程がとられている。磁気特性を高めるためには、仕上げ焼鈍工程での二次再結晶にて、磁化容易軸である<001>軸が圧延方向にそろった{110}<001>方位の結晶粒を成長させることが重要である。
【0003】
{110}<001>方位に集積した二次再結晶を効果的に促進させるためには、一次再結晶粒の成長を抑制するインヒビターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズに分散させることが有効である。このインヒビターの作用により、最終仕上げ焼鈍時に一次再結晶粒の成長が抑制されるのであるが、最も粒成長の優位性の高い{110}<001>方位の粒だけが、他の方位に優先して成長するのである。従って、インヒビターの抑制力は、{110}<001>方位の粒のみが成長でき、他の粒の成長を止められるような強さに制御されねばならない。
【0004】
かかるインヒビターとしては、MnS、MnSe、AlN及びVNに代表される、硫化物、Se化合物または窒化物等、鋼中への溶解度が極めて小さいものが用いられており、熱間圧延前のスラブ加熱時にインヒビターを一旦完全に固溶させた後、その後の工程で微細に析出させる方法が採用されてきた。インヒビターを十分固溶させるためのスラブ加熱温度は1400℃程度であり、普通鋼のスラブ加熱温度に比べて約200 ℃も高く、こうした高温スラブ加熱には以下のような欠点がある。
(ア)高温加熱を行うためにエネルギー原単位が高い。
(イ)溶融スケールが発生しやすく、またスラブ垂れが生じやすい。
(ウ)スラブ表層の過脱炭が生じる。
【0005】
上記の(イ)および(ウ)の問題点を解決するために、方向性珪素鋼専用の誘導加熱炉が提案されたが、エネルギーコストの増大が新たに問題となる。
【0006】
また、上記の(ア)の問題に対して、方向性珪素鋼スラブの低温加熱化を図る研究が、これまで多くなされてきた。すなわち、スラブ加熱温度の低下はインヒビター成分の固溶量不足を招いて、抑制力の低下を必然的に引き起こすため、低温スラブ加熱に起因する抑制力の低下を後工程で補う、途中窒化技術が開発された。例えば、特開昭57−207114号公報には脱炭焼鈍時に窒化する技術が、また特開昭62−70521 号公報には仕上げ焼鈍条件を特定して仕上げ焼鈍時に途中窒化する技術が、それぞれ開示されている。さらに、特開昭62−40315 号公報には、Al、Nをスラブ加熱時に固溶していなくても、後工程の途中窒化によってインヒビターを適正状態に制御する方法が開示されている。
【0007】
しかし、仕上げ焼鈍に入る前に途中窒化を施す方法は、新たな設備を必要とし、コストが増大するという問題点があり、また仕上げ焼鈍中の窒化は制御が難しいところに問題点が残る。
【0008】
ところで、方向性電磁鋼板の需要家においては、磁気特性とともに被膜特性も重要視される。なぜなら、方向性電磁鋼板の被膜には、トランスの鉄心において絶縁性を保つ役割はもとより、ビルディングファクターを改善する役割、騒音に影響する磁歪や歪み感受性を変化させる役割があるからである。
【0009】
この被膜特性を制御することに関して、低温スラブ加熱を前提とする技術が、特開平7−76736 号公報に開示されている。すなわち、脱炭・窒化処理後の鋼板に焼鈍分離剤としてClおよび/またはSO3 を0.15〜2.0 %含有するマグネシアを塗布して仕上げ焼鈍を施すことにより、グラス被膜と磁気特性に優れた方向性電磁鋼板が得られ、その際に仕上げ焼鈍条件として、昇温率20℃/h 以下、900 ℃以上の昇温雰囲気ガスのN2 を25%とすることにより、さらなるグラス被膜品質と磁気特性の向上が得られることが、開示されている。また、同公報には、マグネシアヘの添加物として、Ti、SbおよびB化合物の1種類以上を0.1 〜7.5 重量部配合することにより、被膜特性に極めて優れた方向性電磁鋼板が得られることも記載されている。
【0010】
しかしながら、素材の成分組成および処理工程の違いに起因した表面酸化膜の形成状態や、マグネシアの物性値によって、被膜特性が大きく変化するため、被膜形成時に十分な反応性が得られているとは未だ言えないものであった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明は、コスト削減が要求される汎用の方向性珪素鋼板の製造において、スラブ加熱温度を普通鋼なみに低くした場合であっても、磁気特性および被膜特性がともに良好な方向性電磁鋼板を有利に製造する方法について提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) C:0.005 〜0.100wt %、Si:2.0 〜4.5 wt%およびMn:0.03〜2.50wt%を含み、NおよびSの含有量を
[ppm N]2 +[ppm S]2 ≦6400
に従って抑制し、さらにSb 0.001 0.30wt %、 Sn 0.001 0.30wt %、 Cr 0.001 0.30wt %、 Cu 0.001 0.30wt %およびP: 0.001 0.30wt の中から選ばれる1種または2種以上を含有する成分組成の珪素鋼スラブを、1260℃以下の温度に加熱後、熱間圧延し、次いで必要に応じて熱延板焼鈍を施し、一回又は中間焼鈍を挟む二回以上の冷間圧延により最終板厚とし、さらに脱炭焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布してから仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍の600 ℃から750 ℃にかけての昇温速度を15℃/s 以上に制御し、かつ脱炭焼鈍の均熱過程の水素分圧に対する水蒸気分圧の比である雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2) を0.6 以下の範囲に制御することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0013】
(2) 上記(1) において、MgO を主成分としSr化合物を含有する焼鈍分離剤を塗布することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0014】
(3) 上記(1) または(2) において、最終冷間圧延後かつ二次再結晶開始前に窒化処理を施すことを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
【0015】
ここで、脱炭焼鈍後の鋼板表層での集合組織における極密度のランダム強度比が、(222):1.5 〜6.0 および(310):0.7 〜1.5 を満足することが好ましい。
【0016】
なお、集合組織における極密度のランダム強度比は、X線回折により測定した面強度で評価する。なお、ランダム強度比とは、特定の方位の存在比率を表すものであり、
(測定部位において、特定方位を有する部分の存在比率)/(配向性が全くない仮想的な場合の、その方位を有する部分の存在比率)
にて定義する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明を導くに至った実験について詳しく述べる。
さて、{110}<001>方位粒を二次再結晶させるには、前述のように、一次粒の成長を抑制するインヒビターが不可欠とされてきた。インヒビターを使用せずに方向性電磁鋼板を製造する試みとしては、特開昭64−55339 号公報、特開平2−57635 号公報、特開平7−76732 号公報および特開平7−197126号公報に、三次再結晶を利用する方法が開示されているが、これらは、表面エネルギー差を利用する方法であるため、板厚が極薄に限られ、工業的には不向きであった。
【0018】
一方、近年になって、二次再結晶発現の重要なポイントとして、インヒビターの存在のほかに一次再結晶組織における方位差角、すなわち二方位を重ねるための最小回転角度が注目されるようになってきた。この方位差角が20〜45°である粒界(高エネルギ粒界)が重要な役割を果たしていることが、Acta Material 45巻で報告され、これに基づいて、インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板の研究が再び盛んに行われるようになってきた。
かような技術背景の下、発明者らは、スラブ加熱温度の低温化を目指して、インヒビターとして含有させていた窒化物や硫化物の大幅な低減を試みる、次のような実験を行った。
【0019】
[実験1]
まず、NおよびSを積極的には含有させない以外は、方向性電磁鋼の通常に従う成分組成を有する方向性電磁鋼スラブに、普通鋼なみの1200℃のスラブ加熱を施す実験を行ったところ、二次再結晶を生じさせることができなかった。
【0020】
[実験2]
そこで、同様の成分組成において、スラブ加熱温度の影響を受けない補強インヒビターとして、粒界偏析型インヒビターであるSbを添加したところ、安定して二次再結晶が生じた。さらに、Sb以外でも、Sn、Cr、CuおよびPに同様の効果が認められた。
【0021】
さらに、製造の途中工程の条件を種々に変化させて磁気特性を調査した結果、脱炭焼鈍の均熱過程の雰囲気を低露点(低酸化性)にして脱炭焼鈍後の鋼板の酸素目付量を少なく抑えた場合には、良好な磁気特性が得られたが、高露点(高酸化性)雰囲気で脱炭焼鈍して脱炭焼鈍後の酸素目付量が多くなると、二次再結晶はするものの{110}<001>からずれた方位が二次再結晶しやすくなり磁気特性が劣化することがわかった。
【0022】
一方、被膜に関しては、脱炭焼鈍雰囲気が高酸化性の場合には緻密な下地被膜が形成され、被膜密着性が良好になった。しかし、脱炭焼鈍雰囲気が低酸化性の場合には、被膜形成量が不足し、被膜密着性も劣化した。このときの被膜断面を観察すると、下地被膜と地鉄との界面が平坦化していてはがれやすくなっていたり、下地被膜のアンカー効果が弱い部分が頻繁にみられた。
従って、脱炭焼鈍雰囲気を制御することでは、磁気特性と被膜特性とを両立させることができなかったのである。
【0023】
[実験3]
上記した実験2では、脱炭焼鈍の均熱過程での雰囲気酸化性を変化させたが、磁気特性が良好な範囲は低酸化性側、被膜特性が良好な範囲は高酸化性側で両者をともに満足する範囲が存在しなかった。そこで、磁気特性と被膜特性の両方に影響する工程条件として、脱炭焼鈍の加熱過程での昇温速度に着目し、この昇温速度について、平均昇温速度が600 〜750 ℃の区間にて検討を行った。なお、上記実験2では、昇温速度は8℃/s であった。
【0024】
すなわち、脱炭焼鈍の加熱過程における昇温速度を上げるほど、{110}<001>方位からずれた二次粒が出現しにくくなり、磁気特性が改善された。ここで、種々の昇温速度による脱炭焼鈍を経た鋼板の表層の集合組織について、X線回折による極密度測定(インバース測定)にて調査した結果を、図1〜3に示す。図1〜3に示すように、昇温速度の上昇に伴って主方位である(222)が減少し、二次再結晶の核となる(220)が若干増加し、(310)が増加していた。一次再結晶集合組織において、(222)強度が強すぎる場合には{110}<001>方位からずれた二次粒が成長しやすいことが知られているが、この発明の素材では、脱炭焼鈍の昇温速度を上げることにより、(222)にとってかわって(310)方位が増加するため、方位のずれた二次粒の発生が抑制され磁気特性が改善されたものと思われる。
【0025】
また、昇温速度を上昇すると、同一の雰囲気酸化性であっても、脱炭焼鈍後の酸素目付量は増大するため、良好な被膜特性を得るに十分な酸素目付量を確保できる、雰囲気酸化性の範囲は、低酸化性側にシフトする。一方、酸素目付量が多くなると、前述したように方位のずれた二次粒が発生しやすくなるが、昇温速度を上昇すれば一次再結晶組織が改善されて方位のずれた二次粒の発生が抑制されるから、磁気特性と被膜特性の両立が可能になるのである。
【0026】
さらに、被膜特性の更なる改善について、MgOを主成分とする焼鈍分離剤に種々の副剤を添加する手法を検討した結果、Sr(OH)2・8H2O 等のSr化合物の添加が非常に有効であった。
【0027】
次に、この発明の対象素材の成分組成ならびに製造工程について詳しく述べる。まず、成分組成の各成分の限定理由を以下に示す。
C:0.005 〜0.100 wt%
Cは、組織を改善し、二次再結晶を安定化させるために必要な元素であり、そのためには0.005 wt%以上が必要である。しかし、0.100 wt%を超えると冷間圧延時の破断が増加すること、また脱炭焼鈍の負荷が増大して生産性が低下することから、0.100 wt%以下とする。
【0028】
Si:2.0 〜4.5 wt%
Siは、電気抵抗を増加させて鉄損を低減するために必須の元素であり、そのためには2.0 wt%以上を含有することが必要であるが、4.5 wt%を超えると加工性が劣化し、製造や製品の加工が極めて困難になるため、2.0 〜4.5 wt%の範囲とする。
【0029】
Mn:0.03〜2.50wt%
MnもSiと同じく電気抵抗を高め、また製造時の熱間加工性を向上させるのに必要な元素である。この目的のためには、0.03wt%以上の含有が必要であるが、2.50wt%を超えて含有すると、γ変態を誘起して磁気特性が劣化するため、0.03〜2.50wt%以下の範囲とする。
【0030】
NおよびS:[ppm N]2 +[ppm S]2 ≦6400
通常の方向性電磁鋼板では、NはAlN等の窒化物を、そしてSはMnS等の硫化物を、それぞれ形成し、インヒビターとして機能する。しかし、この発明では、スラブ加熱温度を普通鋼なみに低くするため、過剰なNやSの含有は、窒化物や硫化物の溶体化を困難にし、二次再結晶が生じなかったり、不均一な二次再結晶をもたらす原因になる。
【0031】
そこで、スラブ加熱温度が1260℃以下の条件下でのNおよびSの許容範囲を実験にて調査した。すなわち、C:0.04wt%、Si:3.0 wt%、Mn:0.07wt%、Al:0.007 wt%およびSb:0.02wt%の基本成分においてNおよびSの含有量を種々に変化して、最終板厚が0.34mmの方向性電磁鋼板をスラブ加熱温度が1260℃以下の条件で製造し、得られた鋼板の鉄損を調査した。その調査結果を、NおよびSの含有量と製品鉄損との関係に整理して図4に示す。すなわち、NおよびSは独立ではなく、
[ppm N]2 +[ppm S]2 ≦6400
なる関係式の下に規制するのが、製品鉄損の改善に極めて有効であることが見出された。
【0032】
上記の関係式による規制は、NおよびSを独立にN≦80ppm およびS≦80ppmとする範囲よりも、NおよびSの含有量の許容範囲が狭く、単純な和N+S≦80とする範囲よりも広い。この理由は明らかではないが、窒化物と硫化物とが混在する場合に、両者の複合析出物も生じるため、溶体化の挙動が複雑になるためであると考えられる。
【0033】
なお、窒化物や硫化物と同様にインヒビターとして使用されるSe化合物も、その溶体化に高温度を必要とするため、スラブ加熱温度の低温化には不向きである。従って、Seも添加しないか、添加したとしても50ppm 未満に制限することが好ましい。
【0034】
また、インヒビター成分には、Sb、Sn、Cr、CuおよびPの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。これらの元素は、スラブ加熱温度を普通鋼なみに低くする製造条件下においても、インヒビターとして有効に作用する。かかる作用を得るためには、これらの元素を0.001 wt%以上で添加することが望ましく、一方0.30wt%を超えると製品のベンド特性など機械特性が劣化するから、上限は0.30wt%とすることが好ましい。
【0035】
以上の成分に調整されたスラブは、通常の方法に従い、スラブ加熱に供された後、熱間圧延により熱延コイルとされる。このスラブ加熱温度は、エネルギーコスト低減や地球環境保全のために、1260℃以下とする。
なお、近年、スラブ加熱を行わず連続鋳造後に直接熱間圧延を行う方法が提案されているが、この発明はスラブ加熱温度の低下を所期しているから、その適用を有利にはかることができる。
【0036】
上記熱間圧延後、必要に応じて熱延板焼鈍を施してから、冷間圧延に供する。冷間圧延は、タンデム圧延機またはゼンジミア圧延機で行う。一回の冷間圧延で最終板厚まで圧延してもいいし、途中に中間焼鈍を挟んで2回以上に分けて圧延しても良い。ここに、圧延温度を常温よりも高くして、圧延中の動的歪時効やパス間の静的歪時効を利用し、集合組織を制御する方法は、この発明においても適用できる。
【0037】
次に、冷間圧延後、脱炭焼鈍を常法に従い施した後、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上げ焼鈍を施す。
製品の磁気特性および被膜特性をともに良好にするためには、脱炭焼鈍の加熱過程600 〜750 ℃における昇温速度を15℃/s 以上とし、均熱過程での雰囲気を低酸化性、具体的には水素分圧に対する水蒸気分圧の比である雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2) を0.6 以下とすることが必要である。また、安定した被膜形成のために、MgO を主成分としSr化合物を含有する焼鈍分離剤を塗布することが好ましい。Sr化合物としては例えば、SrSO4 、Sr(HO)2 ・8H2O 、SrCO3 およびSr(NO3)2のうちから選ばれる1種または2種以上を使用することができる。なお、Sr化合物以外の化合物も、この発明の目的を阻害しない範囲内で副成分として含有させることができる。
【0038】
最終仕上げ焼鈍後は、必要に応じて絶縁コーティングを塗布焼き付け、更に平坦化焼鈍を施し、製品とする。
また、最終冷間圧延後、二次再結晶開始までの間に、必要に応じて窒化処理を施すことも粒成長抑制力を適正に制御する、1つの手段として有効である。窒化処理を施すことは、製造コストを高めるという欠点があるが、スラブ加熱の低温化をはかるための1つの方策であり、窒化処理を施すプロセスにおいても、本願発明は良好な磁気特性および被膜特性を得るために好適である。
【0039】
【実施例】
実施例1
表1に示す鋼No. 1〜12の成分組成の鋼スラブを、1200℃に加熱後、熱間圧延して 2.2mm厚の熱延コイルとした。この熱延コイルに1000℃で30秒間保持する熱延板焼鈍を施し、酸洗後、0.29mmの厚みまでタンデム圧延機により一回で冷間圧延した。その後、脱脂処理を行い、840 ℃で120 秒間の脱炭焼鈍を施した。この脱炭焼鈍の加熱過程600 ℃から750 ℃の区間の昇温速度を20℃/s に制御するとともに、均熱過程の雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2) を0.40となるように制御した。
【0040】
脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤には、MgOを主成分とし、副剤としてSr(HO)2 ・8H2O を5wt%添加したものを用いた。そして、最終仕上げ焼鈍後に未反応分離剤を除去し、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを塗布し、800 ℃で焼き付けて製品とした。各製品から、圧延方向に沿ってエプスタイン試験片を切り出し、鉄損W17/50 を測定した。
【0041】
表2に製品の鉄損値および被膜密着性を示すように、この発明の成分組成のスラブを用いることにより、磁気特性と被膜特性がともに良好な方向性電磁鋼板が得られる。
【0042】
【表1】
Figure 0003885432
【0043】
【表2】
Figure 0003885432
【0044】
実施例2
表1に示した鋼No. 1の成分組成の鋼スラブを1150℃に加熱後、熱間圧延して2.4mm 厚の熱延コイルとした。次に、熱延コイルに1000℃で30秒間保持する熱延板焼鈍を施し、酸洗後、0.34mmの厚みまでゼンジミア圧延機により一回で冷間圧延した。その後、脱脂処理を行い、840 ℃で120 秒間の脱炭焼鈍を施した。脱炭焼鈍の加熱過程600 ℃から750 ℃の区間の昇温速度は8℃/s 、16℃/s および24℃/s の3通りに制御した。さらに、脱炭焼鈍の均熱過程の雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2) は、0.45、0.55および0.65の3通りに制御した。
【0045】
脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤には、MgOを主成分とし、副剤としてSr(HO)2 ・8H2O を5wt%添加したものおよび添加しないものを用いた。そして、最終仕上げ焼鈍後、未反応分離剤を除去し、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを施し、800 ℃で焼き付けて製品とした。各製品から、圧延方向に沿ってエプスタイン試験片を切り出し、鉄損W17/50 を測定した。
【0046】
また、脱炭焼鈍後、試料の一部を採取し、表層付近の一次再結晶集合組織の測定を行った。集合組織はX線回折による鋼板表面の極密度測定で評価した。
【0047】
表3に製品の鉄損値、被膜密着性、そして一次再結晶集合組織の(222)強度および(310)強度を示すように、この発明の方法に従って一次再結晶集合組織を発明範囲内に制御することにより、磁気特性および被膜特性がともに良好な方向性電磁鋼板が得られた。
【0048】
【表3】
Figure 0003885432
【0049】
実施例3
表1に示す鋼No. 5の成分組成の鋼スラブを、1230℃に加熱後、熱間圧延して2.6mm 厚の熱延コイルとした。その後、酸洗し、タンデム圧延機により第1回目の冷間圧延を施し、板厚を1.5mm とした。次に、1000℃に60秒間保持する中間焼鈍を施した後、再び酸洗し、0.22mmの厚みまでの第2回目の冷間圧延をゼンジミア圧延機で施した。その後、脱脂処理を行い、840 ℃で120 秒間の脱炭焼鈍を施した。脱炭焼鈍の加熱過程600 ℃から750 ℃の区間の昇温速度は8℃/s 、16℃/s および24℃/s の3通りに制御した。脱炭焼鈍の均熱過程の雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2) は、0.30、0.50および0.70の3通りに制御した。
【0050】
脱炭焼鈍後、窒化焼鈍を750 ℃×30秒で水素、窒素およびアンモニアの混合ガス中で行った。その後、焼鈍分離剤を塗布して最終仕上焼鈍を施した。焼鈍分離剤には、MgOを主成分とし、副剤としてSrSO4 を3wt%添加したものを用いた。
【0051】
最終仕上焼鈍後、未反応分離剤を除去し、コロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティングを施し、800 ℃で焼き付けて製品とした。各製品から、圧延方向に沿ってエプスタイン試験片を切り出し、鉄損W17/50 を測定した。
【0052】
また、脱炭焼鈍後、試料の一部を採取し、表層付近の集合組織の測定を行った。集合組織はX線回折による鋼板表面の極密度測定で評価した。
【0053】
表4に製品の鉄損値、被膜密着性、そして一次再結晶集合組織(222)強度および(310)強度を示すように、この発明の方法に従って一次再結晶集合組織を発明範囲内に制御することにより、磁気特性および被膜特性がともに良好な方向性電磁鋼板が得られた。
【0054】
【表4】
Figure 0003885432
【0055】
【発明の効果】
この発明により、磁気特性および被膜特性がともに優れた方向性電磁鋼板を安定して製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 脱炭焼鈍の昇温速度変化に伴う(222)面強度変化を表す図である。
【図2】 脱炭焼鈍の昇温速度変化に伴う(220)面強度変化を表す図である。
【図3】 脱炭焼鈍の昇温速度変化に伴う(310)面強度変化を表す図である。
【図4】 NおよびSの含有量の異なる素材を用いた場合の製品の鉄損を表す図である。

Claims (3)

  1. C:0.005 〜0.100wt %、
    Si:2.0 〜4.5 wt%および
    Mn:0.03〜2.50wt%
    を含み、NおよびSの含有量を
    [ppm N]2 +[ppm S]2 ≦6400
    に従って抑制し、さらにSb 0.001 0.30wt %、 Sn 0.001 0.30wt %、 Cr 0.001 0.30wt %、 Cu 0.001 0.30wt %およびP: 0.001 0.30wt の中から選ばれる1種または2種以上を含有する成分組成の珪素鋼スラブを、1260℃以下の温度に加熱後熱間圧延し、次いで必要に応じて熱延板焼鈍を施し、1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、さらに脱炭焼鈍後に焼鈍分離剤を塗布してから仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、脱炭焼鈍の600 ℃から750 ℃にかけての昇温速度を15℃/s 以上に制御し、かつ脱炭焼鈍の均熱過程の水素分圧に対する水蒸気分圧の比である雰囲気酸化性P(H2O)/P(H2) を0.6 以下の範囲に制御することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 請求項1において、MgO を主成分としSr化合物を含有する焼鈍分離剤を塗布することを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または2において、最終冷間圧延後かつ二次再結晶開始前に窒化処理を施すことを特徴とする一方向性電磁鋼板の製造方法。
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