JP6439665B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に1コイル内での磁気特性変動を抑制した方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主に変圧器や発電機等の電気機器の鉄心材料として用いられる軟磁気特性材料であって、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有する。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程のうち、二次再結晶焼鈍の際に、いわゆるゴス(Goss)方位と称される(110)[001]方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。
従来、このような方向性電磁鋼板は、3質量%程度のSiと、MnS,MnSe,AlNなどのインヒビター成分を含有するスラブを、1300℃を超える温度で加熱し、インヒビター成分を一旦固溶させたのち、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施して、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、ついで湿(潤)水素雰囲気中で一次再結晶焼鈍を施して一次再結晶および脱炭を行ったのち、マグネシア(MgO)を主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分の純化のために、1200℃で5h程度の最終仕上げ焼鈍を行うことによって製造されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
上述したとおり、従来の方向性電磁鋼板の製造に際しては、MnS,MnSe,AlNなどの析出物(インヒビター成分)をスラブ段階で含有させ、1300℃を超える高温でのスラブ加熱によってこれらのインヒビター成分を一旦固溶させ、後工程で微細析出させることにより二次再結晶を発現させるという手法が採用されてきた。
すなわち、従来の方向性電磁鋼板の製造工程では、1300℃を超える高温でのスラブ加熱が必要であったため、その製造コストは極めて高いものとならざるを得ず、近年の製造コスト低減の要求に応えることができないというところに問題を残していた。
こうした課題を解決するために、例えば、特許文献4では、酸可溶性Al(sol.Al)を0.010〜0.060%含有させ、スラブ加熱を低温に抑え一次再結晶焼鈍工程で適正な窒化雰囲気下で窒化を行なうことにより、二次再結晶時に(Al,Si)Nを析出させインヒビターとして用いる方法が提案されている。
ここで、(Al,Si)Nは、鋼中に微細分散し有効なインヒビターとして機能し、上記の製造方法による窒化処理後の鋼板では、窒化珪素を主体とした析出物(Si34もしくは(Si,Mn)N)が表層のみに形成される。そして、引き続いて行われる二次再結晶焼鈍において、窒化珪素を主体とした析出物はより熱力学的に安定したAl含有窒化物((Al,Si)N、あるいはAlN)に変化する。この際、非特許文献1によれば、表層近傍に存在したSi34は、二次再結晶焼鈍の昇温中に固溶する一方、窒素は鋼中へ拡散し、900℃を超える温度になると板厚方向にほぼ均一なAl含有窒化物として析出し、全板厚で粒成長抑制力(インヒビション効果)を得ることができるとされている。なお、この手法によれば、高温でのスラブ加熱を用いた析出物の分散制御に比べて、比較的容易に板厚方向に同じ析出物量と析出物粒径を得ることができる。
一方、最初からスラブにインヒビター成分を含有させずに二次再結晶を発現させる技術についても検討が進められている。例えば、特許文献5には、インヒビター成分を含有させなくとも二次再結晶出来る技術(インヒビターレス法)が示されている。
インヒビターレス法は、より高純度化した鋼を利用し、テクスチャー(集合組織の制御)によって二次再結晶を発現させる技術である。また、インヒビターレス法は、高温のスラブ加熱が不要であって、窒化などの特殊な工程を経ることなく製造が可能であるため、より低コストでの方向性電磁鋼板の製造が可能である。
米国特許第1965559号公報 特公昭40−15644号公報 特公昭51−13469号公報 特許第2782086号公報 特開2000-129356号公報
ところが、インヒビターレス法では、S,Nなどの微量不純物量の変動や熱間圧延温度、熱延板焼鈍温度、一次再結晶焼鈍温度などの条件変動によって、1コイル内での磁気特性が大きく変動するという問題点があった。このような磁気特性の変動は、主としてインヒビター成分が微量残留することに起因するが、微量インヒビター成分を完全に除去することは現実的には技術的、経済的な問題があり、実質上不可能であった。また、それらの微量インヒビターは熱間圧延中に析出するが、コイル圧延では幅方向、長手方向の温度変動が不可避的に生じるので、コイル内での磁気特性変動も不可避的に生じていた。
本発明は、上記の課題に鑑み、高温スラブ加熱を必要としない低コストかつ高生産性を有する方向性電磁鋼板の製造方法であって、コイル内での鉄損変動の抑制を促進させる方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。
その結果、鋼スラブにおける、sol.Al、S、Se、SnおよびSbの成分元素について、従来認知されているインヒビターとして機能させるための含有量に満たない、微小量域において、これらの各成分の含有量を相互に規制し、かつ一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損(W10/50)の変動を抑制することで、1300℃以下の低温域のスラブ加熱であってもコイル内で安定した磁気特性が得られることを新規に知見するに至った。
以下、本発明を導くに至った実験結果について説明する。
(実験1)
C:0.03%、Si:3.2%、Mn:0.10%、Sn:0.02%、Sb:0.03%、P:0.05%、Cu:0.10%、sol.Al:60ppm、N:30ppm、S:10ppm、Se:1ppm、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼Aのスラブ、およびC:0.03%、Si:3.2%、Mn:0.08%、P:0.05%、Cu:0.10%、Sb:0.03%、sol.Al:60ppm、N:30ppm、S:75ppm、Se:1ppm残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる鋼Bのスラブを1220℃に加熱後、熱間圧延して、板厚:2.5mmの熱延板とした後、1050℃で30秒の熱延板焼鈍を施した。熱延板焼鈍はコイル内で種々に温度変動させるパターンで実施した。ついで冷間圧延で0.27mm厚に仕上げた。
冷間圧延後、840℃で120秒間均熱する脱炭をかねる一次再結晶焼鈍を、水素分圧55%、窒素分圧45%および露点55℃で行い、同時に一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損(W10/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。ついでMgOを主剤とする焼鈍分離剤を、一次再結晶板に12.5g/m2塗布して乾燥した。ついで窒素雰囲気中で800℃まで15℃/hで昇温し、800〜850℃間の昇温速度を5℃/hとして850℃で50時間保定した後、水素雰囲気に切り替え1180℃、5hの条件での二次再結晶焼鈍を施した。最終仕上焼鈍後、60%のコロイダルシリカとリン酸アルミニウムからなる薬剤を塗布乾燥した窒素と水素の混合雰囲気にて、835℃で20秒の平坦化焼鈍を行い、形状矯正した。同時に平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損(W17/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損(W10/50)と、平坦化焼鈍後における長手方向における鉄損(W17/50)との関係を調査した結果を図1に示す。図1によると、まずSを10ppmで含有する鋼Aの場合、一次再結晶焼鈍後での鉄損変動幅(ΔW10/50)がSを75ppmで含有する鋼Bと比較して大きいことが分かる。
一次再結晶焼鈍後での鉄損値は、ほぼ一次再結晶粒径の違いにより生じ、粒径が大きいほど鉄損値が低下する。熱間圧延および熱延板焼鈍での温度変動があるため、一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損変動、すなわち結晶粒径の変動が不可避的に存在するが、それらによる一次再結晶焼鈍後の鉄損変動幅がSを75ppm含む鋼Bのほうが、Sを10ppm含む鋼Aに比べて低減されるという結果が得られた。次に、鋼A,鋼Bともに一次再結晶焼鈍後での鉄損変動が大きくなるほど、平坦化焼鈍後での鉄損変動(ΔW17/50)も大きくなる傾向にあるが、同じ一次再結晶焼鈍後での鉄損変動(ΔW10/50)に対して、Sを75ppm含む鋼Bのほうが、Sを10ppm含む鋼Aに比べて低減されるという結果が得られた。Sを10ppm含有する鋼Aの場合、一次再結晶焼鈍後での鉄損変動(ΔW10/50)が最小(0.12W/kg)のコイルでも、平坦化焼鈍後での鉄損変動(ΔW17/50)が0.05W/kg超発生してしまい、安定した磁気特性を得ることが不可能であった。これに対して、Sを75ppm含有する鋼Bの場合、一次再結晶焼鈍後のコイルでの鉄損変動(ΔW10/50)を0.20W/kg以下とすれば、平坦化焼鈍後での鉄損変動(ΔW17/50)を0.05W/kg以下に抑えられることが分かった。
続いて熱延板焼鈍におけるコイル内長手方向での最高到達温度の変動幅と、一次再結晶焼鈍後でのコイル内の鉄損変動(ΔW10/50)とを調査した結果を図2に示す。図2によると、同一のコイル内での温度変動を最小にしても、一次再結晶焼鈍後でのコイル内の鉄損変動(ΔW10/50)は生じていることが分かる。同じ一次再結晶焼鈍後での鉄損変動に対して、Sを75ppm含む鋼Bのほうが、Sを10ppm含む鋼Aに比べて低減されるという結果が得られた。鋼Bの場合、一次再結晶焼鈍後での鉄損変動(ΔW10/50)を0.20W/kg以下とするためには、熱延板焼鈍におけるコイル内長手方向での最高到達温度の変動幅を45℃以下とする必要がある。
ただし、長手方向での一次再結晶焼鈍板の鉄損の変動要因としては、熱延条件、熱延板焼鈍条件の他にも、成分変動、一次再結晶焼鈍温度の変動もあるので、それらの温度変動をすべて低減することも、一次再結晶焼鈍後での鉄損変動(ΔW10/50)を0.20W/kg以下とするためには必要である。成分変動とは、鋳込みの段階での特にsol.Al、S、Se、Nの長手方向での変動である。一次再結晶焼鈍温度の変動とは、炉内での長手方向および幅方向での温度変動である。成分変動を低減するためには、鋳込みの最初の段階で電磁攪拌により成分を均一化することが有効である。一次再結晶焼鈍温度の変動を低減するためには、炉温やライン通板速度を一定にする必要がある。
S量を75ppmに高めることで、一次再結晶焼鈍後での鉄損変動(ΔW10/50)が低減し、その結果平坦化焼鈍後での鉄損変動(ΔW17/50)を低減できる理由については必ずしも明らかでないが、本発明者らは次のように考えている。すなわち添加したSは、MnSあるいはCu2Sといった析出物と固溶S分による粒界偏析効果との併用により、一次再結晶粒径を狭幅で均一化し、二次再結晶の発現を安定化する効果が発揮される。たとえば、熱延板焼鈍温度が高まった場合、オストワルド成長による析出物粗大化と、固溶S量増加による粒界偏析の増大とが同時に起こるため、影響が相殺されて粒成長抑制力はほぼ一定に保たれる。さらに一次再結晶粒径の変動を抑制するために、粒界偏析元素であるSn、Sb、Pのうち少なくとも1種は添加することが必須であることも知見された。
本発明は、微量析出物と粒界偏析元素を併用した、繊細(Subtle)、抑制力(Inhibition)制御(Control)法(SIC法)とも言うべき方法である。SIC法は、低温スラブ加熱とコイル内での鉄損変動の抑制を同時に達成することのできる、従来のインヒビターを使用する技術やインヒビターレス技術よりも優れた方法である。
すなわち、本発明は、上記した実験結果に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は、以下のとおりである。
1.質量%で、
C:0.002%以上0.08%以下、
Si:2.0%以上8.0%以下、
Mn:0.02%以上1.0%以下、
Sおよび/またはSeを合計で0.005%超0.01%以下並びに
Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上0.2%以下
含有し、Nを60ppm未満および酸可溶性Alを100ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下で加熱し、
該鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板としてコイルに巻き取り、
該熱延鋼板に熱延板焼鈍を施し、
該熱延板焼鈍を施した前記熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
該一次再結晶焼鈍後のコイル内での鉄損(W10/50)の変動幅を0.20W/kg以内に調整し、
前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
2.前記熱延板焼鈍における、前記コイル内での最高到達温度の変動を45℃以下とすることを特徴とする、上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記成分組成は、さらに、
質量%で、
Ni:0.005%以上1.5%以下、
Cu:0.005%以上1.5%以下、
Cr:0.005%以上0.1%以下、
Mo:0.005%以上0.5%以下、
Ti:0.0005%以上0.1%以下、
Nb:0.0005%以上0.1%以下、
V:0.0005%以上0.1%以下、
B:0.0002%以上0.0025%以下、
Bi:0.005%以上0.1%以下、
Te:0.0005%以上0.01%以下および
Ta:0.0005%以上0.01%以下
のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記冷延鋼板に窒化処理を施すことを特徴とする上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記焼鈍分離剤に、硫化物、硫酸塩、セレン化物、およびセレン酸塩の1種または2種以上が添加されていることを特徴とする上記1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、低温スラブ加熱とコイル内での鉄損変動の抑制を同時に達成できる。
また、本発明によれば、微量析出物と粒界偏析元素を併用した、上記SIC法により、鉄損の優れた方向性電磁鋼板を、工業的に安定してかつ安価に製造することが可能となる。
一次再結晶焼鈍後におけるコイル内鉄損変動(ΔW10/50)と、平坦化焼鈍後におけるコイル内鉄損変動(ΔW17/50)の関係を示したグラフである。 熱延板焼鈍におけるコイル内最高到達温度の変動幅と、一次再結晶焼鈍後でのコイル内の鉄損変動(ΔW10/50)の関係を示したグラフである。
以下、本発明の一実施形態による方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。まず、鋼の成分組成の限定理由について述べる。なお、本明細書において、各成分元素の含有量を表す「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味し、「ppm」は、特に断らない限り「質量ppm」を意味する。
C:0.002%以上0.08%以下
Cは、一次再結晶集合組織を改善する上で有用な元素である。Cの含有量が0.002%に満たないと、Cによる粒界強化効果が失われ、スラブに割れが生じるなど、製造に支障を来たす欠陥を生ずるようになる。一方、Cの含有量が0.08%を超えるとかえって一次再結晶集合組織の劣化を招く。このため、Cの含有量を0.002%以上0.08%以下とする。磁気特性の観点から、より好ましいCの含有量は、0.002%以上0.06%以下の範囲とする。
Si:2.0%以上8.0%以下
Siは、電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する上で有用な元素である。Siの含有量が8.0%を超えると二次加工性が著しく劣化する。このため、Siの含有量は8.0%以下とする。鉄損の観点から、Siの含有量は、2.0%以上8.0%以下の範囲であることとする。
Mn:0.02%以上1.0%以下
Mnは、SまたSeと結合してMnSまたはMnSeを形成し、一次再結晶粒径の安定化を通じて磁気特性を安定化する。また、Mnは製造時における熱間加工性を向上させる効果がある。しかし、Mnの含有量が1.0%を超える場合には、一次再結晶集合組織が悪化して磁気特性の劣化を招く。このため、Mnの含有量は1.0%以下とする。磁気特性の観点から、Mnの添加量は、0.02%以上1.0%以下、好ましくは0.08%以上1.0%以下の範囲であることとする。
N:60ppm未満
Nもまた、S、Se、およびOと同様に、過剰に存在すると、二次再結晶を困難にする。特にNの含有量が60ppm以上になると、二次再結晶が生じ難くなり、磁気特性が劣化する。このため、Nの含有量は60ppm未満に抑制する。
sol.Al:100ppm未満
Alもまた、過剰に存在すると二次再結晶を困難とする。特に、sol.Alの含有量が100ppm以上になると、低温スラブ加熱の条件では二次再結晶し難くなり、磁気特性が劣化する。このため、Alの含有量は、sol.Al量で100ppm未満に抑制する。
Sおよび/またはSe:合計で0.005%超0.01%以下
本発明では、Sおよび/またはSeを合計で0.005%超0.01%以下を含有することが最も肝要である。SeはS同様に、MnSeやCu2Seを形成すると同時に、固溶Seとして粒成長を抑制し、Sと同様な磁気特性安定化効果を発揮する。Sおよび/またはSeが、合計で0.005%以下であると磁気特性が不安定になり、合計で0.01%を超えると熱間圧延前スラブ加熱における固溶が不十分になり磁気特性が不安定となる。このため、Sおよび/またはSeの含有量は、合計で0.005%超0.01%以下の範囲とする。
さらに本発明では、Sn、SbおよびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上0.2%以下含有することも必須である。
Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上0.2%以下:
Snは、粒界偏析元素であり、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性、特に鉄損を効果的に向上させる働きがある。Sbは、粒界偏析元素であり、二次再結晶焼鈍中の鋼板の窒化や酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる働きがある。Pは、一次再結晶集合組織を改善し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる働きがある。このような働きのために、Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上含有させることが好ましい。しかし、Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上の合計含有量が0.2%を超えると冷間圧延性の劣化を招く。このため、Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上の合計含有量は0.01%以上0.2%以下の範囲とする。
以上、本発明の基本成分について説明した。上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、その他にも必要に応じて、工業的により安定して磁気特性を改善する成分として、以下の元素を適宜含有させることができる。
Ni:0.005%以上1.5%以下
Niは、熱延板組織の均一性を高めることにより、磁気特性を改善する働きがある。このような働きのために、Niは0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、Niの含有量が1.5%を超えると二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化する。このため、Niの含有量は0.005%以上1.5%以下の範囲であることが望ましい。
Cu:0.005%以上1.5%以下
Cuは、二次再結晶焼鈍中の鋼板の酸化を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を効果的に向上させる働きがある。このような働きのために、Cuは0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、Cuの含有量が1.5%を超えると、熱間圧延性の劣化を招く。このため、Cuの含有量は0.005%以上1.5%以下の範囲であることが望ましい。
Cr:0.005%以上0.1%以下
Crは、フォルステライト下地被膜の形成を安定化させる働きがある。このような働きのために、Crは0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、Crの含有量が0.1%を超えると二次再結晶が困難となり、磁気特性が劣化する。このため、Crの含有量は0.005%以上0.1%以下の範囲であることが望ましい。
Mo:0.005%以上0.5%以下
Moは、高温酸化を抑制し、へゲと呼ばれる表面欠陥の発生を減少させる働きがある。このような働きのために、Moは0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、Moの含有量が0.5%を超えると冷間圧延性が劣化する。このため、Moの含有量は0.005%以上0.5%以下の範囲であることが望ましい。
Ti:0.0005%以上0.1%以下
Tiは一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる働きがある。このような働きのために、Tiは0.0005%以上含有させることが望ましい。しかし、Tiの含有量が0.1%を超えると地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Tiの含有量は、0.0005%以上0.1%以下の範囲であることが望ましい。
Nb:0.0005%以上0.1%以下
Nbは一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させるさせる働きがある。このような働きのために、Nbは0.0005%以上含有させることが望ましい。しかし、Nbの含有量が0.1%を超えると、地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Nbの含有量は0.0005%以上0.1%以下の範囲であることが望ましい。
V:0.0005%以上0.1%以下
Vは一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる働きがある。このような働きのために、Vは0.0005%以上含有させることが望ましい。しかし、Vの含有量が0.1%を超えると、地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Vの含有量は0.0005〜0.1%の範囲であることが望ましい。
B:0.0002%以上0.0025%以下
Bは一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる働きがある。このような働きのために、Bは0.0002%以上含有させることが望ましい。しかし、Bの含有量が0.0025%を超えると地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Bの含有量は0.0002%以上0.0025%以下の範囲であることが望ましい。
Bi:0.005%以上0.1%以下
Biは粒界に偏析して、一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる働きがある。このような働きのために、Biは0.005%以上含有させることが望ましい。しかし、Biの含有量が0.1%を超えると、地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Biの含有量は0.005%以上0.1%以下の範囲であることが望ましい。
Te:0.0005%以上0.01%以下
Teは粒界に偏析して、一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる働きがある。このような働きのために、Teは0.0005%以上含有させることが望ましい。しかし、Teの含有量が0.01%を超えると、地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Teの含有量は、0.0005%以上0.01%以下の範囲であることが望ましい。
Ta:0.0005%以上0.01%以下
Taは一次再結晶粒の成長を抑制し、良好な結晶方位を有する結晶粒の二次再結晶を促進して磁気特性を向上させる働きがある。このような働きのために、Taは0.0005%以上含有させることが望ましい。しかし、Taの含有量が0.01%を超えると、地鉄中に残留して鉄損を劣化させる。このため、Taの含有量は0.0005%以上0.01%以下の範囲であることが望ましい。
次に、本発明に係る方向性電磁鋼板の製造条件について説明する。
上記の成分組成に調整した鋼スラブを、再加熱することなくあるいは再加熱したのち、熱間圧延に供する。熱間圧延前のスラブ加熱の際には、その温度を1300℃以下に抑えることが、熱間圧延時に生成するスケール量を低減する上で特に有効である。また、結晶組織の微細化および不可避的に混入するインヒビター成分の弊害を無害化して、均一な整粒の一次再結晶組織を実現する意味でもスラブ加熱温度の低温化が望ましい。
ついで、熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるために、熱延板焼鈍温度を800℃以上1100℃以下の範囲とすることが好ましい。焼鈍時間は、10秒〜10分程度である。熱延板焼鈍温度が800℃未満では熱間圧延時のバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になる結果、二次再結晶の発達が阻害される。一方、熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎ、これが整粒の一次再結晶組織を実現する上で不利に働く。
熱延板焼鈍後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して冷延板とする。上記の冷間圧延において、圧延温度を100℃以上250℃以下に上昇させて圧延を行うこと、および冷間圧延の途中で100℃以上250℃以下の範囲での時効処理を1回または複数回行うことは、ゴス組織を発達させる上で有効である。
得られた冷延板に一次再結晶焼鈍を施す。この一次再結晶焼鈍の目的は、圧延組織を有する冷間圧延板を一次再結晶させて、二次再結晶に最適な一次再結晶粒径に調整することである。そのためには、一次再結晶焼鈍の焼鈍温度は800℃以上950℃未満程度とすることが望ましい。この時の焼鈍雰囲気は、湿水素窒素あるいは湿水素アルゴン雰囲気とすることで一次再結晶焼鈍を兼ねても良い。
また、一次再結晶焼鈍に際しては、500℃以上700℃以下の温度域の平均昇温速度を50℃/s以上とすることが好ましい。
鋼スラブにSやSeといったインヒビター成分が含まれる場合には、上記の温度域における昇温速度を早めることで、Goss方位の存在量が高められ、二次再結晶後の結晶粒径を低減し、これにより、鉄損特性が改善されることが従来技術として知られている。この点、本発明では、上記の温度域が冷間圧延後の組織の回復に相当する温度域にあたるため、急熱し、回復現象を抑制して再結晶させることで、同様の効果が得られるものと考えられる。
本発明では、一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損(W10/50)の変動幅を0.20W/kg以内とすることが最も肝要な点である。なぜなら、二次再結晶の駆動力を一定に保ち、鉄損ばらつきを一定にする効果があるからである。そのためには、長手方向での一次再結晶焼鈍における板鉄損の変動要因である、成分変動、熱間圧延温度、熱延板焼鈍温度、一次再結晶焼鈍温度の変動を極力低減する必要がある。特に影響の大きい熱延板焼鈍では、コイル長手方向の鉄損ばらつきを低減するために、コイル内での最高到達温度の変動を45℃以下とすることが望ましい。まず、最高到達温度の変動を45℃以下とするためには、炉温を一定に制御する他、ライン速度の変動を極力低減する必要がある。また、熱延板表面の放射率を一定にすることも温度変動を抑制するのに有効である。そのためには、仕上熱延温度のコイル長手方向での温度変動を50℃以下、巻き取り温度のコイル長手方向の温度変動を50℃以下に低減することも有効である。
また、一次再結晶焼鈍最高到達温度の長手方向の温度変動を5℃以内とすることによっても、一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損(W10/50)の変動幅を0.20W/kg以内とすることができる。
さらに、一次再結晶焼鈍中、または焼鈍後、焼鈍分離剤を塗布する前に、窒化処理を行なうこととしてもよい。窒化処理を行なうことで二次再結晶を安定化させることができる。
窒化処理方法については、特に限定されず、例えば、コイル形態のままNH3雰囲気やガスを用いてガス窒化を行ってもよいし、走行するストリップに対して連続的なガス窒化を行ってもよい。また、ガス窒化に比べて窒化能の高い塩浴窒化を利用することも可能である。ここで、塩浴窒化を利用する場合の塩浴としては、シアン酸塩を主成分とする塩浴が好適である。なお、窒化温度および窒化時間については、ガス窒化の場合には500℃以上1000℃以下で20〜600秒程度、塩浴窒化の場合には300℃以上600℃以下で20〜600秒程度とすることが好適である。
そして、一次再結晶焼鈍後または窒化処理後であって二次再結晶焼鈍前に、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布する。鋼板に塗布する焼鈍分離剤中に、硫化物、硫酸塩、セレン化物およびセレン酸塩のうちから選択した一種または二種以上を添加すると、700℃程度で分解し、粒成長抑制力を高めることが可能となるため、磁気特性を向上させることができる。比較的少量でもこの効果は得られるが、MgO:100質量部に対して、1質量部未満では効果が小さい。一方、30質量部を超えて添加した場合には、酸化性が高くなりすぎ、フォルステライト被膜が過剰に厚くなるため、形成されたフォルステライト被膜の曲げ剥離特性が低下する。
次に、純化焼鈍を兼ねる二次再結晶焼鈍を行う。二次再結晶焼鈍では、より低温でのフォルステライト被膜の形成促進による、粒界偏析型元素の純化を抑制する観点から、800℃以上900℃以下の温度域での平均昇温速度を5℃/時間以下とすることが好ましい。
また、二次再結晶焼鈍では、1000℃以上1100℃未満の温度域における雰囲気のガス組成を、H2:10体積%以上とすることが好ましい。この温度域において、H2ガスはフォルステライト被膜形成に有利に作用し、特に、その濃度を10体積%以上とすることで、上記したフォルステライト被膜形成挙動を介したSn、Sb、Cr、PおよびMoを鋼中に留める効果が得られる。より好ましくは、H2:25体積%以上である。なお、H2ガス以外に含まれるガスとしては、N2やArなどが挙げられるが、H2を100体積%としてもよい。
さらに、二次再結晶焼鈍における純化温度は1180℃を超える温度とし、さらに純化の際のガス雰囲気をH2ガス雰囲気、具体的には、H2を10体積%以上とすることで、極微量でも磁気特性を低下させる方向に働くCやN、さらにはAlやS、Seといった成分の徹底した純化が可能となる。なお、純化時間は特に制限されるものではないが、通常、2〜20時間程度である。
上記の二次再結晶焼鈍後、鋼板表面に、さらに絶縁被膜を塗布、焼き付けることとしてもよい。かかる絶縁被膜の種類については、特に限定されず、公知のあらゆる絶縁被膜を適用することとしてもよい。例えば、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを含有する塗布液を鋼板に塗布し、800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
また、平坦化焼鈍により鋼板の形状を整えることとしてもよい。さらに、この平坦化焼鈍を絶縁被膜の焼き付け処理と兼備させることもできる。
その他の製造条件は、方向性電磁鋼板の一般的な製造方法に従えばよい。
(実施例1)
表1に示される成分で、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になるスラブを、1250℃に再加熱した後、熱間圧延して、板厚2.4mmの熱延板とした後、1050℃で30秒の熱延板焼鈍を施した。熱延板焼鈍では、コイル内での最高到達温度の変動幅(ΔT)を測定した。具体的には、長手方向温度を放射温度計で測定することにより、コイル内での最高到達温度の変動幅(ΔT)を測定した。
ついで、200℃での冷間圧延により、板厚:0.23mmとした後、500℃から700℃間の昇温速度を150℃/sとして、850℃で120秒間、雰囲気H2:55%、N2:45%露点55℃で、脱炭をかねる一次再結晶焼鈍を施した。同時に、一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損(W10/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。
一次再結晶焼鈍後、MgOを主剤とする焼鈍分離剤を、一次再結晶板に12.5g/m2塗布して乾燥した後、昇温速度15℃/hで800℃まで、800℃から850℃を2.0℃/hで昇温した後850℃で50時間保定し、1160℃まで5.0℃/hで昇温し5h均熱する条件で二次再結晶焼鈍を施した。雰囲気ガスは、850℃までN2ガス、850℃以上はH2を使用した。
上記の条件で得られた二次再結晶焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを、質量比で3:1:3の割合で含有する処理液を塗布し、平坦化焼鈍を実施した。同時に、平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損(W17/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。
得られたコイル内での、熱延板焼鈍最高到達温度の変動幅(ΔT)、一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損の変動幅(ΔW10/50)、平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損平均値(Av−W17/50)、と変動幅(ΔW17/50)を表1に示す。
表1から明らかなように、本発明に従って、鋼スラブ成分においてさらにSおよび/またはSeを合計で0.005%超0.01%以下、Sn、SbおよびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上0.2%以下含有し、一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損(W10/50)の変動を抑制することで、コイル内で安定した磁気特性を得ることができる。
Figure 0006439665
(実施例2)
表2に示される成分で、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる連鋳スラブを、1250℃に再加熱した後、熱間圧延して、板厚2.8mmの熱延板とした後、1025℃で30秒の熱延板焼鈍を施した。熱延板焼鈍では、コイル内での最高到達温度の変動幅(ΔT)を測定した。
ついで、180℃での冷間圧延により、板厚0.27mmとした後、500〜700℃間の昇温速度を100℃/sとして、840℃で150秒間、雰囲気H2:55%、N2:45%、露点58℃での脱炭をかねる一次再結晶焼鈍を施した。同時に一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損(W10/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。
一次再結晶焼鈍後、MgOを主剤とする焼鈍分離剤を、一次再結晶板に12.5g/m2塗布して乾燥した後、昇温速度5℃/hで800℃まで、2.0℃/hで800℃から860℃まで昇温した後860℃で50時間保定し、5.0℃/hで1160℃まで昇温し5h均熱する条件で二次再結晶焼鈍を施した。雰囲気ガスは、860℃まではN2を使用し、860℃以上はH2を使用した。
上記の条件で得られた二次再結晶焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを、質量比で3:1:3の割合で含有する処理液を塗布し、平坦化焼鈍を実施した。同時に、平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損(W17/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。
得られたコイル内での熱延板焼鈍最高到達温度の変動幅(ΔT)、一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損の変動幅(ΔW10/50)、平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損平均値(Av−W17/50)、と変動幅(ΔW17/50)を表2に示す。
表2から明らかなように、本発明に従って、鋼スラブ成分においてさらにSおよび/またはSeを合計で0.005%超0.01%以下、Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上を0.01%以上0.20%以下を含有し、一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損(W10/50)の変動を抑制することで、コイル内で安定した磁気特性を得ることができる。
Figure 0006439665
(実施例3)
質量%で、C:0.03%、Si:3.5%、Mn:0.10%、N:0.004%、sol.Al:0.006%、S:0.004%、Se:0.003%、Sn:0.03%、Sb:0.06%、P:0.08%、Cu:0.10%、Cr:0.06%、Mo:0.02%含み、残部はFeおよび不可避的不純物からなるスラブを、1250℃に再加熱した後、熱間圧延して、板厚2.8mmの熱延板とした後、1025℃で30秒の熱延板焼鈍を施した。熱延板焼鈍では、コイル内での最高到達温度の変動幅(ΔT)を測定した。
ついで、180℃での冷間圧延により、板厚0.27mmとした後、500〜700℃間の昇温速度を100℃/sとして、840℃で150秒間、雰囲気H2:55%、N2:45%および露点58℃での脱炭をかねる一次再結晶焼鈍を施した。同時に一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損(W10/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。続いて表3に示される条件で窒化処理を行った。
一次再結晶焼鈍後、表3に示される薬剤を添加したMgOを主剤とする焼鈍分離剤を、一次再結晶板に12.5g/m2塗布して乾燥した後、昇温速度5℃/hで800℃まで、800℃から880℃を2.0℃/hで昇温した後880℃で50時間保定し、1160℃まで5.0℃/hで昇温し、5h均熱する条件で、二次再結晶焼鈍を施した。雰囲気ガスは、880℃までN2、880℃以上はH2を使用した。
上記の条件で得られた二次再結晶焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを、質量比で3:1:3の割合で含有する処理液を塗布し、平坦化焼鈍を実施した。同時に、平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損(W17/50)を貫通コイルを用いた連続鉄損測定器により連続的に測定した。
得られたコイル内での、熱延板焼鈍最高到達温度の変動幅(ΔT)、一次再結晶焼鈍後における長手方向の鉄損の変動幅(ΔW10/50)、平坦化焼鈍後における長手方向の鉄損平均値(Av−W17/50)、と変動幅(ΔW17/50)を表3に示す。
Figure 0006439665
表3から明らかなように、本発明に従い、鋼スラブ成分においてさらにSおよび/またはSeを合計で0.005%超0.01%以下、SnおよびSbおよびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上0.20%以下を含有し、一次再結晶焼鈍後でのコイル内での鉄損(W10/50)の変動を抑制すること、および窒化処理、または二次再結晶焼鈍前に鋼板に塗布する焼鈍分離剤中に硫化物、硫酸塩、セレン化物およびセレン酸塩のうちから選択した1種または2種以上を添加することで、コイル内で安定した磁気特性を得ることができる。
本発明によれば、低温スラブ加熱とコイル内での鉄損変動の抑制を同時に達成でき、また、鉄損の優れた方向性電磁鋼板を、工業的に安定してかつ安価に製造することが可能となる。

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.002%以上0.08%以下、
    Si:2.0%以上8.0%以下、
    Mn:0.02%以上1.0%以下、
    Sおよび/またはSeを合計で0.007%以上0.01%以下並びに
    Sn、Sb、およびPのうちから選ばれる1種または2種以上を合計で0.01%以上0.2%以下含有し、Nを60ppm未満および酸可溶性Alを100ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを1300℃以下で加熱し、
    該鋼スラブに熱間圧延を施して熱延鋼板としてコイルに巻き取り、
    該熱延鋼板に熱延板焼鈍を施し、
    該熱延板焼鈍を施した前記熱延鋼板に、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚を有する冷延鋼板とし、
    該冷延鋼板に一次再結晶焼鈍を施し、
    該一次再結晶焼鈍後のコイル内での鉄損(W10/50)の変動幅を0.20W/kg以内に調整し、
    前記一次再結晶焼鈍後の前記冷延鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を施すことを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記熱延板焼鈍における、前記コイル内での最高到達温度の変動を45℃以下とすることを特徴とする、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記成分組成は、さらに、
    質量%で、
    Ni:0.005%以上1.5%以下、
    Cu:0.005%以上1.5%以下、
    Cr:0.005%以上0.1%以下、
    Mo:0.005%以上0.5%以下、
    Ti:0.0005%以上0.1%以下、
    Nb:0.0005%以上0.1%以下、
    V:0.0005%以上0.1%以下、
    B:0.0002%以上0.0025%以下、
    Bi:0.005%以上0.1%以下、
    Te:0.0005%以上0.01%以下および
    Ta:0.0005%以上0.01%以下
    のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記冷延鋼板に窒化処理を施すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記焼鈍分離剤に、硫化物、硫酸塩、セレン化物、およびセレン酸塩の1種または2種以上が添加されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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