JP5338254B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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さらに、これらのインヒビターの働きを強化することを目的として、特許文献3には、Pb、Sb、Nb、Teを利用する方法が、特許文献4には、Zr、Ti、B、Nb、Ta、V、Cr、Moを利用する方法が開示されている。
本発明は、以上の問題を有利に解決するもので、製品磁気特性の高位安定を図ることができる方向性電磁鋼板の製造方法を提案するものである。
なお、以下、%表示については、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.012〜0.073%、Si:3.15〜3.33%、Mn:0.06〜0.09%、Cr:0.02〜0.06%、Sb:0.018〜0.045%、Al:35〜100ppm、N:14〜70ppm、S:11〜25ppmおよびNb:20〜50ppmを有し、残部Feおよび不可避的不純物の組成になる鋼スラブを、連続鋳造にて製造し、1250℃でスラブ加熱後、熱間圧延により2.3mm厚さの熱延板とした。次に、1050℃で15秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.23mmの板厚に仕上げた。さらに、均熱条件が850℃で60秒の再結晶焼鈍を施した後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃に10時間保定する仕上げ焼鈍を行った。最後に、リン酸マグネシウムとホウ酸を主体とする張力付与コーティングの形成を兼ねた平坦化焼鈍を900℃で15秒間施し、方向性電磁鋼板を作製した。
その結果を図1に示す。
同図に示したとおり、Al/Nが小さいと磁束密度が低下する傾向にあり、特にAl/N<1.4においては、ばらつきも大きくなることが分かる。また、1.4≦Al/N<2の範囲では、磁束密度は安定しているものの、若干低下する傾向が認められる。
C:0.045〜0.062%、Si:3.20〜3.31%、Mn:0.04〜0.16%、Cr:0.03〜0.11%、Sb:0.015〜0.037%、Mo:0.03〜0.05%、Al:55〜97ppm、N:20〜49ppm、Al/N:1.98〜3.10およびS:17〜27ppmを含み、さらにZr、Ti、B、Ta、NbおよびVを各々約50ppm含有させ、残部Feおよび不可避的不純物になる鋼スラブとこれら微量元素(Zr、Ti、B、Ta、NbおよびV)を含有させない鋼スラブとを、それぞれ連続鋳造にて製造し、1250℃でスラブ加熱後、熱間圧延により2.2mm厚さの熱延板とした。ついで、1100℃で60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.23mmの板厚に仕上げた。さらに、均熱条件が840℃で80秒の再結晶焼鈍を施した後、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、1200℃に10時間保定する仕上げ焼鈍を行った。最後に、リン酸マグネシウムとホウ酸を主体とする張力付与コーティングの形成を兼ねた平坦化焼鈍を900℃で15秒間施し、方向性電磁鋼板を作製した。
その結果を図2に示す。
同図に示したとおり、添加したZr、Ti、B、Ta、NbおよびVの種類により、得られる磁束密度は大きく異なることが分かる。すなわち、ZrおよびTiを添加したサンプルは、磁束密度が低く、二次再結晶が発現していなかった。これに対し、B、Ta、NbおよびVを添加した場合は、添加しない場合と比較して、磁束密度が高くなっていることが明らかとなった。
このように、B、Ta、NbおよびVを添加することによって磁気特性が向上する理由は、必ずしも明らかになっていないが、発明者らは、以下のように考えている。
磁束密度が低かったZrおよびTiは、その窒化物がAlの窒化物より安定であるのに対して、磁束密度が高かったB、Ta、NbおよびVは、窒化物がAlの窒化物より不安定である。これは、ZrおよびTiを含んだ鋼板は、AlNより安定したZrNやTiNが形成されており、その形成したZrNやTiNが磁気特性を低下させているという可能性を示唆している。
以上の考察より、微量元素の窒化物の増加は、鋼板中の結晶粒の粒界エネルギー差を駆動力としたテクスチャーインヒビション効果を、薄れさせてしまうものと推定される。
このように、微量元素(但しAlを除く)の窒化物の形成がないこと、および微量元素の存在により実現される結晶粒径の均一性が、粒径のサイズの影響を受けることなくテクスチャーインヒビション効果を発揮し、その結果、磁束密度の向上につながったと推定している。つまり、この微量元素の効果により、従来のインヒビター含まない成分系の問題点である、同一サンプル内の磁気特性のばらつきが改善されるものと考えられる。
(1)質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含有し、Alを100ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下とし、さらにNが27ppm以上であって、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、ついで再結晶焼鈍を施した後、仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記スラブ中に含有されるAl量とN量の比を質量比で1.4以上にすると共に、上記スラブ中にさらに、B、Ta、NbおよびVのうちから選んだ1種または2種以上を合計で10〜150ppm含有させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
C量が0.10%を超えると、脱炭処理を行っても磁気時効の起こらない50ppm以下に低減することが困難になる。従って、Cは少ないほうが望ましいが、0.10%までは許容できる。
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を改善するために必要な元素であるが、2.0%未満ではその効果に乏しく、一方、8.0%を超えると加工性が劣化し、圧延が困難となるため、Si量は2.0〜8.0%とする。
Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005%未満ではその効果に乏しく、一方1.0%を超えると製品板の磁束密度が低下するため、Mn量は0.005〜1.0%とする。
なお、上述した元素のうちAlは80ppm以下、Seは20ppm以下とすることがさらに望ましい。また、N、Sの軽元素は、鋼スラブ作製前の成分調整時に完全に除去することは困難であり、特殊な処理を行わない場合は、各々20ppmほど鋼板中に残存している。
各々添加量が10ppm未満では添加効果が少ない。また、好ましくは、各々20ppm以上であり、より好ましくは50ppm以上である。
ただし、これらの微量添加元素は、最終製品においても地鉄中に残存し、鉄損を劣化させる原因となることから、その総量は150ppm以下に制限される。なお、鉄損の劣化抑制の観点からは、総量で100ppm以下とすることが望ましい。
以上、必須元素および抑制元素について説明したが、本発明には、その他にも磁気特性の改善元素として、次に述べる元素を適宜含有させることができる。
熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるためにNiを添加することができる。添加量が0.01%未満であると添加効果が少なく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が低下する。
これらの元素は、いずれも鉄損の改善に有用な元素であるが、それぞれ下限に満たないと、その添加効果に乏しく、一方上限を超えると二次再結晶粒の発達が抑制され、むしろ磁気特性の劣化を招く。
Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0. 50 %、Mo:0.005〜0. 10%
これらの元素も磁気特性の向上に有用な元素であるが、それぞれ下限に満たないと、その添加効果に乏しく、一方上限を超えると二次再結晶粒の発達が抑制され、むしろ磁気特性の劣化を招く。
上記成分の好適組成に調整した溶鋼を、通常の造塊法や連続鋳造法でスラブとする。また、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片としてもよい。スラブの場合は、通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延してもよい。薄鋳片の場合は、熱間圧延しても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に供してもよい。
熱間圧延前のスラブ加熱温度は、Al、N、SおよびSeを低減化したインヒビター成分を実質的に含まないスラブであるため、従来必須であったインヒビターを固溶させるための高温焼鈍を必要とせず、1250℃以下の低温とすることができ、コストの面で望ましい。
打ち抜き加工性を重視してフォルステライト被膜を形成させない場合には、焼鈍分離剤を使用しないか、使用するにしても、フォルステライト被膜を形成を阻害するシリカやアルミナ等を主成分として使用する。上記の焼鈍分離剤を塗布する際には、水分を持ち込まない静電塗布を行うことなどが有効であり、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を用いても良い。
打ち抜き性を重視してフォルステライト被膜を形成させない場合には、二次再結晶が完了すればよいので、保持温度は850〜950℃が望ましく、保持の段階で仕上げ焼鈍を終了することも可能である。
鉄損を重視する場合やトランスの騒音を低下させるためにフォルステライト被膜を形成させる場合には、1200℃程度まで昇温させることが望ましい。
C:0.018〜0.023%、Si:3.20〜3.40%、Mn:0.10〜0.15%、Cr:0.03〜0.05%、Al:30〜140ppmおよびN:29〜50ppmを含み、表1記載のAl/N比を有し、さらに表1記載のNb量を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。ついで1200℃でスラブ加熱し、熱間圧延により板厚2.2mm厚さの熱延板とした。次に、1060℃で40秒の熱延板焼鈍を施し、1回の冷間圧延により板厚0.23mmの厚さに仕上げた。さらに、均熱条件が850℃で100秒の再結晶焼鈍を施したのち、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布してから、900℃に50時間保定して二次再結晶させたのち、1200℃に10時間保定してフォルステライト被膜を形成させた。最後に、1200℃で60秒の平坦化焼鈍を施し、その後、化学蒸着法によりTiNを鋼板表面に蒸着させてコーティングとした。
まず、平坦化焼鈍ラインの焼鈍炉出側に設置したインライン鉄損計によって、コイルの全長にわたって鉄損を測定し、コイル長手方向の鉄損プロファイルを取得しておく。次に、TiNコーティング後、上記鉄損プロファイルでの鉄損が高かった部位から、板幅方向に3箇所、およびコイル長手方向の両端部2箇所(幅方向中央)、の計5箇所からサンプルを採取し、磁気特性をJIS C2550の方法に準拠して測定した。
上記5箇所の内、最も磁気特性が悪かったサンプルにおける磁束密度B8およびW17/50を、そのコイルの代表値とし、その値の良否により、コイル全長で優れた磁気特性が得られているか否かの評価をした。
以上の測定評価結果を、表1に併記する。
表2に示す成分を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造にて製造した。ついで、1250℃でスラブ加熱し、熱間圧延により板厚2.3mm厚さの熱延板とした。次に、1000℃で35秒の熱延板焼鈍を施し、1回目の冷間圧延により板厚0.82mmの鋼板とした。ついで、1000℃で40秒の中間焼鈍を施したのち、2回目の冷間圧延により板厚0.23mmの最終厚さに仕上げた。引き続き、850℃で60秒の再結晶焼鈍を行い、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、1250℃で10時間の仕上げ焼鈍を行った。この際10時間の保定のうち後半5時間をAr雰囲気とし、それ以外は水素雰囲気とした。最後にリン酸マグネシウムとほう酸を主体とした張力付与コーティングの形成を兼ねた平坦化焼鈍を900℃で15秒行った。
その結果を表2に併記する。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含有し、Alを100ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下とし、さらにNが27ppm以上であって、残部Feおよび不可避的不純物からなるスラブを、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、ついで再結晶焼鈍を施した後、仕上げ焼鈍を施す一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記スラブ中に含有されるAl量とN量の比を質量比で1.4以上にすると共に、上記スラブ中にさらに、B、Ta、NbおよびVのうちから選んだ1種または2種以上を合計で10〜150ppm含有させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記スラブ中に、質量%でさらに、Ni:0.01〜1.50%、Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、P:0.005〜0.50%、Sn:0.005〜0.50%、Sb:0.005〜0.50%、Bi:0.005〜0. 50%およびMo:0.005〜0. 10%のうちから選んだ少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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