JP4259338B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法および焼鈍分離剤の調製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法および焼鈍分離剤の調製方法に関し、特に、磁気特性および被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を得ることができる製造方法とその方法に用いる焼鈍分離剤の調製方法に関するものである。
方向性電磁鋼板(珪素鋼板)は、Si等の成分を所定の組成に調整した鋼スラブを熱間圧延した後、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍し、その後、最終仕上焼鈍を経て製造するのが一般的である。中でも最終仕上焼鈍は、鋼中に添加されたインヒビターの作用により二次再結晶を引き起こさせ、磁化容易軸が圧延方向に揃った粗大な結晶粒を生成させる工程であり、方向性電磁鋼板の特性を決定する最も重要な工程である。上記二次再結晶を引き起こすためには、最終仕上焼鈍は、高温で長時間行う必要があり、鋼板の焼付きが起こるのを防止するため、焼鈍前にマグネシア(MgO)を主とする焼鈍分離剤を水と懸濁させてスラリーとし、塗布することが行われている。
塗布されたMgOは、上記焼鈍分離剤としての役割のほかに、最終仕上焼鈍に先んじて行われる一次再結晶焼鈍によって鋼板表面に生成するSiO2を主体とする酸化層と反応して、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜を形成するという働きがある。このフォルステライト被膜は、最終仕上焼鈍後に上塗りされるリン酸塩系の絶縁被膜と鋼板地鉄との密着性を確保するための一種のバインダーとしての働きがある外、それ自体が絶縁被膜となり、さらに、鋼板に張力を付与して磁気特性を改善する働き等がある。従って、均一な厚みを持ち、鋼板との密着性のよいフォルステライト被膜を形成する必要がある。
また、焼鈍分離剤には、上述した働き以外に、鋼板の析出物の生成、成長挙動や結晶粒の成長挙動にも影響を及ぼして、磁気特性を変化させる。例えば、マグネシア(MgO)をスラリー化した際に持ち来たらされる水分量が多過ぎると、鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、ベアスポットと呼ばれる被膜が形成されない点状欠陥が発生したりする。また、焼鈍中に、MgO中に含まれる不純物が鋼板に侵入すると、二次再結晶挙動が変化することも知られている。その故、焼鈍分離剤の果たす役割は重要であり、焼鈍分離剤の成分や配合割合、MgOの粉体特性の良否は、方向性電磁鋼板の磁気特性、被膜特性を左右する重要な要件であるといえる。
そのため、焼鈍分離剤の特性改善を目的として、様々な添加剤に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、Sr,Tiを含む焼鈍分離剤を用いる技術が、特許文献2には、Ti化合物と特定の塩化物を焼鈍分離剤に添加する技術が開示されている。また、添加剤の種類のみではなく、粉体特性を改良する技術も提案されており、例えば、特許文献3には、平均粒径0.3〜3μmのMgOに、添加剤の種類に応じて平均粒径0.03〜0.15μmの1種または2種以上の添加剤を調整して添加することにより優れた磁気特性と被膜特性を得る技術が開示されている。また、特許文献4には、比表面積15m2/g以上のTiO2を、MgO100重量部に対し0.3〜10重量部配合した焼鈍分離剤スラリーを用いる技術が、特許文献5には、特定の添加剤の粒径を規定する技術がそれぞれ開示されている。
特公昭57−032716号公報 特開昭60−145382号公報 特開平09−249916号公報 特開2001−192739号公報 特許第2673767号公報
上記した以外にも、焼鈍分離剤に添加剤を添加したり、その物性を特定したりする技術が数多く提案されており、このような焼鈍分離剤に添加する添加剤の改善を通じて、方向性電磁鋼板の磁気特性や被膜特性は、大きく改善されてきている。しかしながら、上記のような種々の改善技術が提案されているにも拘わらず、工業的に大量生産している過程では製造条件の微妙な変動により、磁気特性の不良や、被膜模様が発生したり被膜の密着性が劣ったりする被膜特性の不良が発生すという問題があった。
本発明の目的は、安定して優れた磁気特性および被膜特性を得ることができる方向性電磁鋼板の製造方法とその製造方法に用いられる焼鈍分離剤の調製方法を提供することにある。
発明者らは、上記課題解決に向けて、焼鈍分離剤の添加剤である水溶性化合物の特性が、仕上焼鈍後の鋼板の磁気特性および被膜特性に及ぼす影響について鋭意検討した。その結果、水溶性化合物中に含まれる不溶分の量に応じて水溶性化合物の添加量を適正化すれば、磁気特性および被膜特性に優れた方向性電磁鋼板を安定して製造し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、Siを2.0〜4.5mass%含有する鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍した後、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、その後、脱炭焼鈍し、MgOを60mass%以上含有する焼鈍分離剤を塗布して乾燥後、最終仕上焼鈍し方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記焼鈍分離剤、不溶分2.0〜5.0mass%に調整した水溶性化合物を添加するとともに、該水溶性化合物の不溶分の量に基づき、MgO100重量部に対して下記式;
0.5≦AL≦2
ここで、L:不溶分の量(mass%)、A:水溶性化合物の添加量(重量部)
を満足するように水溶性化合物の添加量を調整することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
また、本発明は、方向性電磁鋼板の製造時用いるMgOを60mass%以上含有する焼鈍分離剤の調製方法であって、上記焼鈍分離剤に不溶分2.0〜5.0mass%に調整した水溶性化合物を添加するとともに、該水溶性化合物の不溶分の量に基づき、MgO100重量部に対して下記式;
0.5≦AL≦2
ここで、L:不溶分の量(mass%)、A:水溶性化合物の添加量(重量部)
満足するように水溶性化合物の添加量を調整することを特徴とする焼鈍分離剤の調製方法である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法および焼鈍分離剤の調製方法においては、上記化合物として、Li,Sr,Baの水酸化物、Mg,Fe,V,Zrの硫酸塩のうちのいずれか1種または2種以上を用いることができる。
本発明によれば、磁気特性と被膜特性とに優れた方向性電磁鋼板を安定して製造することができるので、方向性電磁鋼板の品質向上、生産性向上、ひいてはエネルギーの削減に大いに寄与する。
本発明を開発する契機となった実験について説明する。
C:0.06mass%、Si:3.3mass%、Mn:0.05mass%、Al:0.025mass%、N:0.008mass%、Se:0.02mass%、Sb:0.04mass%、残部が実質的にFeからなる鋼スラブを1400℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板にした後、1050℃で1分間のノルマ焼鈍を施し、その後、ゼンジミア圧延機を用いて200℃の温間圧延を行い、最終板厚0.23mmの冷延板とし、この冷延板を、50vol%H2+50vol%N2、露点60℃の雰囲気中で、850℃×2分間の脱炭焼鈍を行った。
その後、焼鈍分離剤として、MgO粉を主剤とし、添加剤としてMgO100重量部に対して酸化チタン(TiO2)を10重量部、不溶分の量が異なる種々の水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2・8H2O)を0.5〜7重量部添加し、これらの混合物にイオン交換水350重量部を投入して懸濁したあと、水和を20℃で60分間行いスラリーを調整した後、このスラリーを目付量が両面で12g/m2となるよう脱炭焼鈍後の鋼板に塗布し、200℃のバッチ炉中で1分間の乾燥を行い、その後、仕上焼鈍として830℃で50時間保定した後、該温度から1150℃までを10℃/hの昇温速度で1200℃まで加熱し、1200℃で10時間の被膜形成焼鈍を行った。
ここで上記不溶分とは、焼鈍分離剤のスラリーを調整する時と同一の濃度と条件で水と添加剤とを混合し、これをろ過して採取された不溶残渣の重量を測定し、この残渣の重量と混合した添加剤の重量との比率(%)で定義した値である。例えば、上記実験の場合では、水酸化ストロンチウム0.5〜7gをイオン交換水350g中に投入後、20℃で60分間攪拌したのちにろ過し、ろ紙に付着した残渣の重量を測定し、この重量を投入重量の0.5〜7gで除した値を%表示した値である。
上記のようにして得た鋼板について、磁束密度B8(T)と被膜特性(被膜外観、被膜密着性)を評価した。被膜外観は、ベアスポットの発生頻度を目視により大、中、小の3段階に分類した。また、被膜密着性は、800℃で2時間の歪取焼鈍を施した後、鋼板を丸棒に巻き付けて、被膜の剥離が無かった最小の曲げ径(直径)で評価した。
上記実験の結果を、図1に示した。この図1から、優れた磁気特性、被膜特性を得るためには、添加剤である水酸化ストロンチウムの不溶分と添加量とを特定の関係に収める必要があることがわかる。すなわち、磁気特性を改善するには、不溶分が多い場合には添加量を多くし、逆に、不溶分が少ない場合には添加量を減らす必要がある。また、被膜特性についても同様の傾向が認められ、不溶分が少なく添加量が多い場合には被膜密着性が低下し、逆に、不溶分が多く添加量が少ない場合には被膜密着性が低下し、ベアスポットの発生も著しかった。そして、磁気特性および被膜特性の両特性が優れる範囲は、水溶性化合物中の不溶分Lが2.0〜5.0mass%でかつ、不溶分の量Lと添加量Aとが、下記式;
0.5≦A/L≦2
の関係を満たす領域であることが明らかとなった。
例えば、特許文献3や特許文献4に開示されているように、添加剤のBET比表面積や平均粒径を特定することにより電磁鋼板の特性が改善されることは、従来から知られている。しかし、これらの技術においては、水溶性化合物からなる添加剤は、スラリー中で溶解するため、平均粒径の影響は無いと考えられていた。しかし、今回の結果から、水溶性の添加剤でも何らかの不溶分があった場合には、その量により電磁鋼板の特性は大きく変化するという、従来、知られていなかった新たな知見が得られた。
不溶分が電磁鋼板の特性に影響を及ぼす原因を解明するために、発明者らは、以下の実験を行った。
不溶分が2mass%と5mass%である2種類の水酸化ストロンチウムの粉体を準備し、それぞれ2gをイオン交換水350g中に投入し、20℃で60分間攪拌して溶解した後、この溶液をステンレス鋼板の表面に塗布し、乾燥した。この鋼板表面を、SEMを用いて2000倍で観察した時の表面写真を図2に示す。不溶分が2%と少ない場合には、乾燥後、ステンレス鋼板上に再析出した粒子が均一微細に分散しているのに対し、不溶分が5%と多い場合には、乾燥後の再析出粒子が粗大化し、不均一に分散していると共に、ところどころに凝集しているのが認められる。また、凝集していない部分では、不溶分の少ない場合よりも分散がまばらである。
この結果から、不溶分の量に応じて、最適な水溶性化合物の添加量が変化する原因について、本発明者らは以下のように考えた。
焼鈍分離剤をスラリー化し、水和している間に水溶性化合物は溶解するが、このスラリーを鋼板に塗布、乾燥したときに再析出する。ここで、水溶性化合物の添加量に比べてスラリー中の不溶分が多い場合には、この不溶分が析出の核となり、その周りに再析出が起こる結果、再析出粒子が不均一な分布となり、部分的に再析出粒子が凝集した形態をとる。このような凝集した部分では、主剤のMgOと水溶性化合物の比率が適正化されていないために、焼鈍後に形成されるフォルステライト被膜の特性が、周りの凝集していない部分の被膜と異なるものとなる結果、不均一な応力が発生して剥離を生じ、その結果、ベアスポットが発生する。また、再析出が不均一であるため、凝集していない部分では、水溶性化合物の濃度が実質上少なくなる結果、水溶性化合物の効果が得られず、磁気特性や被膜特性の改善が不十分になるものと考えられる。一方、不溶分が少ない場合には、均一に再析出するために水溶性化合物の添加量は少なくてもよい。しかし、不溶分が少ない場合に水溶性化合物の添加量を増やすと、その水溶性化合物の効果が強く発現して磁気特性や被膜特性が却って劣化する。また、水溶性化合物の添加量が少ない場合に不溶分が増すと、前述の如く、不均一な再析出により、凝集していない部分の実質上の水溶性化合物濃度が少な過ぎて、磁気特性や被膜特性の劣化を招くものと考えられる。
この考えに基づいて、上記実験結果について考察する。
焼鈍分離剤に添加された水溶性化合物である水酸化ストロンチウムは、最終仕上焼鈍における雰囲気中の水分の影響を抑える働きがあり、その影響を調整するために適宜添加される。しかしながら、その添加量が多く不溶分が少ない場合には、水酸化ストロンチウムの効果が強すぎ、インヒビターの分解が抑制される結果、方位の分散した二次再結晶粒が発生し、磁気特性が劣化する。また、最終仕上焼鈍中に、水分の影響が過度に抑えられるため、Siが水分により追加酸化されて被膜として形成される分が少なくなるため、被膜が薄くなり密着性が低下したものと考えられた。逆に、水酸化ストロンチウムの添加量が少なく不溶分が多い場合には、水酸化ストロンチウムの凝集体が不均一に分散し、これがベアスポットや磁気特性劣化の原因になったものと考えられる。
なお、焼鈍分離剤の添加剤に水溶性化合物を用いる技術は、特許文献2の他にも数多く提案されている。しかし、添加する水溶性化合物の物性により、その最適な添加量が変化することは知られていない。従って、従来技術のように単に水溶性化合物を添加剤として用いるだけでなく、その物性に応じて添加量を制御することにより、従来よりも優れた磁気特性や被膜特性を安定して得られることを見出したところに本発明の特徴があると言える。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明が対象とする方向性電磁鋼板は、その素材としてSiを2.0〜4.5mass%含有する鋼スラブを用いる。Siは、鋼板の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必須の成分であるが、2.0mass%に満たないと鉄損の低減効果が弱く、一方、4.5mass%を超えると冷間圧延性が低下し、圧延が困難となるからである。
鋼スラブ中のCは、出鋼段階で低減し、冷延後に脱炭焼鈍を行わない場合と、出鋼段階で適正量のCを確保しておき、後工程で脱炭焼鈍し除去する場合とにより含有量を変える必要があり、前者の場合には、Cの悪影響を避けるために0.01mass%未満、後者の場合には、組織改善のために0.01mass%以上0.10mass%未満とするのが好ましい。
鋼スラブ中には、Si,C以外に、磁化容易軸が高度に揃った二次再結晶粒を得るために、インヒビターを構成する成分を含有させる。このインヒビターとしては、AlN,MnSe,MnS等がよく知られており、これらのインヒビターを単独または併用して添加することができる。インヒビターに、MnSおよび/またはMnSeを用いる場合には、Mnを0.03〜0.10mass%、S,Seを合計で0.01〜0.03mass%の範囲で含有させることが好ましい。また、AlNをインヒビターとして用いる場合は、Alを0.01〜0.03mass%含有させることが好ましい。なお、Nは、製造工程途中で窒化することもできるが、鋼スラブ中に予めNを含有させる場合には、60〜120mass ppmの範囲とすることが好ましい。インヒビター成分が、これらの範囲よりも低いと、インヒビターとしての効果が発揮されず、一方、高過ぎると、二次再結晶が不安定になる。なお、最近、インヒビターを用いずに二次再結晶させる方向性電磁鋼板の製造方法も開発されており、この場合には、Mnを0.08mass%以下、S,Seを合計で50mass ppm以下、Alを0.01mass%以下、Nを80ppm以下とするのが好ましい。
その他の成分として、鋼スラブ中には、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために、Niを0.005〜1.50mass%の範囲で添加することができる。添加量が0.005mass%未満では磁気特性の向上効果が小さく、1.50mass%を超えると、二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するの好ましくない。また、鉄損を向上させる目的で、Sn,Sb,Cu,P,Cr,B,MoおよびBiのうちの1種または2種以上を、Sn:0.01〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Cr:0.01〜1.5mass%、B:0.001〜0.005mass%、Mo:0.01〜0.20mass%、Bi:0.001〜0.05mass%の範囲で添加してもよい。
上記成分組成の範囲に調整された鋼スラブは、加熱炉により再加熱してから公知の方法で熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍を行った後、1回または中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を行い最終板厚の冷延板とする。次いで、この冷延板は、一次再結晶焼鈍した後、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上焼鈍を行う。
ここで、上記の焼鈍分離剤には、マグネシア(MgO)を60mass%以上含有し、添加剤として、不溶分が2.0〜5.0mass%である水溶性化合物を、MgO 100重量部に対して下記式;
0.5≦A/L≦2
ここで、L:不溶分の量(mass%)、A:水溶性化合物の添加量(重量部)
を満足して含むものを用いることが必要である。不溶分の量Lが5.0mass%よりも大きいと、粗大な水溶性化合物の粒子が鋼板表面に巻き込まれる結果、押し庇の原因となったりベアスポットの発生が著しくなったりする。一方、2.0mass%よりも小さいと、スラリー塗布後の乾燥中における水溶成分の再析出の起点が少な過ぎて、再析出が却って不安定となり、ベアスポットが発生し易くなる。また、水溶性化合物の添加量Aは、上述した理由により、不溶分の量Lに対して0.5倍未満ではその水溶性化合物の効果が少なすぎ、一方、2倍を超えるとその効果が強くなり過ぎて却って特性劣化を招くため好ましくない。
本発明が用いる水溶性化合物としては、従来公知の物を用いることができるが、特に、Sr,Li,Baの水酸化物、Fe,Mg,V,Zrの硝酸塩を好適に用いることができる。なお、水溶性化合物の不溶分の量を調整するには、粉体の粒度を特定することが最も簡単で有効な方法であり、例えば、発熱反応により所望の添加剤を生成する場合には、生成反応時の温度を下げたり、反応後の冷却速度を遅くしたりすれば粒度を大きくすることができ、逆に、生成反応時の温度を上げたり、反応後の冷却速度を早くしたりすれば粒度を小さくすることができる。また、反応物生成後に、粉砕処理を施すことによっても粒度の調整は可能である。粒度を適度に調整すると、水に分散させた時の溶解速度を変えることができるので、結果として不溶分を所定の値に調整することができる。
なお、本発明では、添加剤として、水溶性の化合物に着目しているが、その他の添加剤として、従来から公知の不溶性の添加剤を同時に用いることもできる。例えば、Ca,Sr,Ba,Al,Ti,Cr,Mn,Fe,Ni,Zn,Sn,SbおよびBi等の酸化物、水酸化物、硫酸塩、硫化物、珪酸塩等の不溶性であるものを挙げることができ、各々MgO100重量部に対して1.0〜15.0重量部を添加することができる。この添加量が、少な過ぎると効果がなく、逆に多過ぎると、最終仕上焼鈍中の鋼板の酸化や硫化等の影響で、インヒビター強度が変化して製品品質の劣化を招く他、コストアップにもなる。また、添加剤は、水溶性、不溶性のものを、単独または併用して用いてもよいし、複数の添加剤を複合して用いてもよい。
焼鈍分離剤を塗布するに当たっては、主剤であるMgOおよび添加する水溶性化合物をイオン交換水や蒸留水、工水等に投入して水和し、スラリー化するのが好ましい。この際の水和は、10〜50℃の温度範囲で10〜100分間程度行うことが好ましい。スラリー化した焼鈍分離剤は、一次再結晶焼鈍後の鋼板表面に塗布し乾燥する。この時の目付量は、両面で4〜18g/m2の範囲であることが望ましい。目付量が低過ぎると、被膜形成に必要なマグネシアの量が足りなくなり、一方、多過ぎると、水和水分が多くなり過ぎて磁気特性が劣化したり、原料コストの上昇を招いたりする。焼鈍分離剤を塗布した後の最終仕上焼鈍は、従来公知の条件で行えばよい。これら一連の工程を経た後、絶縁被膜を塗布し、焼付けを兼ねた平坦化焼鈍を行い、方向性電磁鋼板の製品を得る。
C:0.06mass%、Si:3.4mass%、Mn:0.068mass%、Al:0.024mass%、Se:0.019mass%、Sb:0.026mass%、Bi:0.004mass%、N:0.008mass%およびCr:0.031mass%を含有し、残部が実質的にFeよりなる珪素鋼スラブを、1350℃で40分加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板にした後、900℃×60秒の熱延板焼鈍を施し、その後、1000℃×60秒の中間焼鈍を挟むタンデム圧延機による2回の冷間圧延により最終板厚0.23mmの冷延板とした。この冷延板を脱炭焼鈍した後、主剤としてマグネシア100重量部に対して、酸化チタン8重量部および不溶性化合物として硫酸ストロンチウム3重量部ならびに水溶性化合物として不溶分の量が異なる水酸化リチウムを添加し、20℃で40分の水和処理して調整した焼鈍分離剤のスラリーを、塗布量が13g/m2となるよう塗布し、乾燥させた。その後、800℃から1100℃を10℃/hで昇温し、引き続き1200℃×10hの純化焼鈍をする最終仕上焼鈍を行った後、絶縁被膜を塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃×60秒で焼付け、その後、プラズマ照射による磁区細分化処理を施し、方向性電磁鋼板とした。
上記のようにして得た方向性電磁鋼板について、磁気特性と被膜特性を調査した。磁気特性は、磁束密度B8、鉄損W17/50をエプスタイン測定法(JIS C 2550)に準拠して測定した。また、被膜特性については、ベアスポットの発生状況を目視観察により評価し、また、被膜密着性は、鋼板を鉄の丸棒に巻き付けたとき、被膜剥離が起こらない最小径(直径)で評価した。測定の結果を表1に示したが、水溶性化合物である水酸化リチウムの添加量を不溶分に合わせて最適化することにより、優れた磁気特性、被膜特性を有する方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
Figure 0004259338
C:0.06mass%、Si:3.32mass%、Mn:0.07mass%、Se:0.02mass%およびSb:0.023mass%を含有し、残部が実質的にFeよりなる鋼スラブを、1400℃で40分加熱したのち熱間圧延して板厚2.2mmの熱延板とし、1000℃×2分の中間焼鈍を挟んだ2回の冷間圧延により最終板厚0.30mmの冷延板とした。この冷延板を、850℃×2分の一次再結晶焼鈍した後、マグネシア100重量部に対して、不溶性化合物である酸化チタン2重量部の他に、表2に示した種々の水溶性化合物を添加し、20℃で40分間の水和処理を施して調整した焼鈍分離剤のスラリーを、塗布量が13g/m2となるよう塗布・乾燥し、その後、最終仕上焼鈍として800℃で50時間保定してから、1200℃×10hの純化焼鈍を行った。その後、絶縁被膜を塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃×60秒で焼き付け、方向性電磁鋼板を製造した。この鋼板の磁気特性および被膜特性を、実施例1と同様にして評価し、その結果を表2に示した。いずれの水溶性化合物を用いても、不溶分に合わせてその添加量を最適化することにより、優れた磁気特性および被膜特性を有する方向性電磁鋼板が得られることがわかる。
Figure 0004259338
水酸化ストロンチウムの添加量、不溶分の量が磁気特性、被膜特性に及ぼす影響を示すグラフである。 不溶分の量が異なる水酸化ストロンチウムを水に溶解し、ステンレス鋼板上に塗布、乾燥したときの水酸化ストロンチウムの析出状態を比較したSEM写真である。

Claims (4)

  1. Siを2.0〜4.5mass%含有する鋼スラブを熱間圧延して熱延板とし、必要に応じて熱延板焼鈍した後、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、その後、脱炭焼鈍し、MgOを60mass%以上含有する焼鈍分離剤を塗布して乾燥後、最終仕上焼鈍し方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記焼鈍分離剤、不溶分2.0〜5.0mass%に調整した水溶性化合物を添加するとともに、該水溶性化合物の不溶分の量に基づき、MgO100重量部に対して下記式;
    0.5≦AL≦2
    ここで、L:不溶分の量(mass%)、A:水溶性化合物の添加量(重量部)
    を満足するように水溶性化合物の添加量を調整することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 上記化合物は、Li,Sr,Baの水酸化物、Mg,Fe,V,Zrの硫酸塩のうちのいずれか1種または2種以上からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 方向性電磁鋼板の製造時用いるMgOを60mass%以上含有する焼鈍分離剤の調製方法であって、上記焼鈍分離剤に不溶分2.0〜5.0mass%に調整した水溶性化合物を添加するとともに、該水溶性化合物の不溶分の量に基づき、MgO100重量部に対して下記式;
    0.5≦AL≦2
    ここで、L:不溶分の量(mass%)、A:水溶性化合物の添加量(重量部)
    満足するように水溶性化合物の添加量を調整することを特徴とする焼鈍分離剤の調製方法
  4. 上記化合物は、Li,Sr,Baの水酸化物、Mg,Fe,V,Zrの硫酸塩のうちのいずれか1種または2種以上からなることを特徴とする請求項3に記載の焼鈍分離剤の調製方法
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