JP4310996B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法並びにこの方法に用いる焼鈍分離剤 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法並びにこの方法に用いる焼鈍分離剤 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器その他の電気機器の鉄心等に用いられる方向性電磁鋼板の製造方法および、それに用いる焼鈍分離剤に関し、特に一次再結晶焼鈍後に塗布する焼鈍分離剤の主成分であるマグネシアに改良を加えることにより、これを用いて製造した方向性電磁鋼板における、磁気特性および被膜特性を向上しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性電磁鋼板の製造工程は、所定の成分組成に調整した鋼スラブを熱間圧延後に冷間圧延を施し、次いで一次再結晶焼鈍を施したのち、二次再結晶のための最終仕上焼鈍を行うのが、一般的である。この工程のうち、最終仕上焼鈍の際に二次再結晶が起こり、鋼中のインヒビターの作用により圧延方向に磁化容易軸の揃った粗大な結晶粒が生成する。この最終仕上焼鈍は長時間行う必要があるため、鋼板の焼付き防止を目的として、この焼鈍前にマグネシアを主体とする焼鈍分離剤を水と懸濁させてスラリーとして塗布するのが、一般的である。
【0003】
このマグネシアは、かような焼鈍分離剤としての役割のほかに、最終仕上焼鈍に先んじて行われる一次再結晶焼鈍により鋼板表面に生成するSiO2を主体とする酸化層と反応することによって、フォルステライト(Mg2SiO4)被膜を形成させるという働きもある。ここで、形成されたフォルステライト被膜は、上塗りされるリン酸塩系絶縁コーティングと地鉄部分とを密着させる一種のバインダーとしての働きのほか、それ自体絶縁被膜として働き、また鋼板に張力を付与することにより磁気特性を改善する働き、等がある。従って、フォルステライト被膜は、均一な厚みを持ち、鋼板との密着性のよいことが必要であり、それ故に焼鈍分離剤の役割は大である。
【0004】
また、焼鈍分離剤には、上に述べた以外に、鋼板の析出物の生成、成長挙動や結晶粒の成長挙動を変化させて磁気特性に影響を及ぼす作用もある。例えば、マグネシアをスラリー化した際に持ち来される水分量が多すぎると、鋼板が酸化されて磁気特性が劣化したり、被膜に点状欠陥が生成したりする。また、マグネシアに含まれる不純物が焼鈍中に鋼板に侵入することにより二次再結晶挙動が変化すること、なども知られている。したがって、焼鈍分離剤の成分や配合割合、マグネシアの粉体特性の良否は、方向性電磁鋼板の磁気特性や被膜特性を左右する重要な要因といえる。
【0005】
このため、焼鈍分離剤の品質改良のための様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には、塩化アンモニウムを焼鈍分離剤スラリーに含有させることにより、被膜反応性を向上させるという技術が開示されている。また、特許文献2には、ホウ素化合物と塩素化合物を特定の割合になるようマグネシアの製造工程途中で添加して、反応性を改善する方法が開示されている。
【0006】
これらの方法によりある程度、被膜を安定化させることができるようになったものの、特許文献1に記載された方法では、最終仕上焼鈍中にアンモニアガスが発生することにより窒素が鋼中に侵入しすぎて磁気特性を却って劣化させたり、最終仕上焼鈍中に塩化アンモニウムが一部分解して塩化水素ガスを発生させ、これが被膜を劣化させたりする現象が生じ、被膜による十分な効果が得られなかった。また、特許文献2に記載された方法では、添加する金属塩化物の金属イオンがマグネシア中に混入して、これが被膜のない部分が点状に発生する、いわゆるベアスポットの原因となることがあり、やはり被膜による十分な効果は得られなかった。
【0007】
【特許文献1】
特表2001−422942号公報
【特許文献2】
特許第2690841号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、焼鈍分離剤の主成分として用いるマグネシアを改良することにより、方向性電磁鋼板の磁気特性および被膜特性を安定して向上するための方法について、提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1) C:0.10mass%未満、Si:2.0〜4.0mass%を含有し、インヒビターとしてAlNおよび/またはMnSとMnSeの1種または2種を用い、AlNを用いる場合は、Al:0.01〜0.04mass%およびN:40〜120ppmを含有し、MnS,MnSeを用いる場合は、Mn:0.03〜0.10mass%、SおよびSeの1種または2種合計で0.01〜0.03mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを加熱して熱間圧延を施した後、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで一次再結晶焼鈍を施し、その後鋼板表面にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を行う、一連の工程よりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、マグネシアの製造に際し最終焼成に供する水酸化マグネシウムにつき、NH3換算でマグネシア100重量部に対して0.005〜0.060重量部となるように、最終焼成前のいずれかの段階でアンモニアもしくはアンモニウム化合物を含有させてから最終焼成を行って得たマグネシアを主成分とする、焼鈍分離剤を使用することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
(2) 前記鋼スラブが、さらに、B,Cu,Sn,Cr,Sb,Ge,Mo,Te,Bi,PおよびVのうちから選んだ一種または二種以上を0.01〜0.2mass含有することを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
【0010】
(3) マグネシウムイオンを含有する溶液を水酸化物と反応させて水酸化マグネシウムとし、必要に応じて焼成後一旦水で水和させて再度水酸化マグネシウムとしたのち、最終焼成する、マグネシアの製造工程において、最終焼成に供する水酸化マグネシウムにつき、NH3換算でマグネシア100重量部に対して0.005〜0.060重量部となるように、最終焼成前のいずれかの段階でアンモニアもしくはアンモニウム化合物を含有させてから最終焼成を行って得た、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤。
【0011】
【発明の実施の形態】
発明者らは、磁気特性および被膜特性を安定して向上することのできる方法を開発するべく、最終仕上焼鈍後の磁気特性および表面状態に及ぼす焼鈍分離剤の影響、特にその主成分であるマグネシアについて種々の検討を行った結果、マグネシアの製造工程途中、つまり最終焼成前にアンモニアもしくはアンモニウム化合物を添加させることにより、マグネシアの被膜反応性が大きく向上し、磁気特性や被膜に良好な結果がもたらされることを、新たに知見した。
【0012】
以下に、この知見を得るに至った実験について述べる。
C:0.045mass%、Si:3.25mass%、Mn:0.07mass%、Se:0.02mass%およびSb:0.02mass%を含み、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物よりなる鋼スラブを、1380℃で30分加熱後、熱間圧延を施して2.2mmの板厚にしたのち、1050℃で1分間の中間焼鈍を挟んで2回の冷間圧延により最終板厚0.23mmに仕上げた。この鋼板に800℃で2分間の一次再結晶焼鈍を行ってから、焼鈍分離剤を塗布、乾燥させた。
【0013】
ここで、焼鈍分離剤は、主成分にマグネシアを用いた。このマグネシアは、原料に苦汁を用い、これを水酸化カルシウムと反応させて水酸化マグネシウムスラリーとした後、アンモニア水を、マグネシア100重量部に対しNH3換算で0〜0.2重量部となるように添加した。その後、このスラリーを圧搾脱水し、焼成してマグネシアとした後、粉砕し、焼鈍分離剤用マグネシアとして供した。なお、このマグネシアは、粉体特性として、マグネシアに対して不純物のCaO濃度が0.2〜0.9mass%、SO3濃度が0.02〜0.75mass%、Cl濃度が0.005〜0.06mass%、F濃度が0.005〜0.06mass%、B濃度が0.03〜0.20mass%、となるように調整し、またBET比表面積は10〜40m2/g,レーザー回折式粒度分布計で測定した平均粒子径が0.5μm〜4.5μm、更に後述する30℃での40%クエン酸活性度(CAA40%)が35〜100sの範囲で一定となるように調整した。ちなみに、以下の実験も同様の粉体条件とした。
【0014】
このマグネシアに、添加剤としてTiO2を2重量部添加し、水和を20℃で60分行い、鋼板に目付量を両面で12g/m2として塗布した。その後、仕上焼鈍として、830℃で50時間保定したのちに、該温度から1150℃までを30℃/hの昇温速度で加熱し、引き続き1200℃で10時間の純化焼鈍を行った。
【0015】
このようにして得られた鋼板の被膜密着性および磁気特性について調査した結果を、図1に示す。この図で、横軸は添加したアンモニウム量、縦軸は被膜密着性および磁気特性の評価結果を示す。ここで、被膜密着性は、鋼板を径の異なる丸棒に巻きつけたときに被膜が剥離しなかった最小の曲げ径を示す(以下同じ)。
【0016】
図1から明らかなように、アンモニアを適度に添加したマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を用いて得た鋼板は、被膜密着性も磁気特性も顕著に改善している。ただし、アンモニアの添加量が多すぎると、磁気特性は逆に低下している。これは、磁束密度および鉄損ともに同様の傾向である。
【0017】
このようにマグネシアにアンモニアもしくはアンモニウム化合物を添加したマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を用いて得た鋼板において、磁気特性及び被膜特性が変化する理由については、明らかでないが、発明者らは次のように考えている。
すなわち、水酸化マグネシウムのスラリー中にアンモニウムイオンが導入されると、水酸化マグネシウム粒子表面の水酸基にアンモニアが吸着する。この状態で乾燥後、焼成すると水酸基に吸着したアンモニアが水酸化マグネシウムの脱水反応を阻害する。その結果、脱水反応が通常よりも高温側にシフトし、これによりマグネシア粒子が多数の安定した細孔を持つようになる。このような細孔は、電磁鋼板に塗布されて最終仕上焼鈍に供されたときに、マグネシアが粒成長する際のピン止め効果を有し、粒径が微細なまま保たれる。その結果、最終仕上焼鈍の被膜反応中に粗大化したマグネシア粒子が固結して鋼板表面に焼きつくことはなくなり、全てのマグネシア粒子が反応に寄与できるため、均一な被膜を形成できる。
【0018】
なお、上掲の特許文献1には、塩化アンモニウムを焼鈍分離剤スラリーに含有させるという技術が開示されているが、この方法では、すでに焼成されて粉体特性が特定された後のマグネシアに塩化アンモニウムを含有させるために、マグネシアの粒子形態を改善する効果を持たない。これに対して、この発明では焼成前の水酸化マグネシウムにアンモニウムを吸着させて焼結反応を調整することにより、マグネシアの粒子形態を改善して高い反応性を持たせることができるのである。
【0019】
以下、この発明に従う方向性電磁鋼板の製造方法をより具体的に説明する。
この発明の出発材である含珪素鋼スラブとしては、まず、Cは出鋼段階で低下させて脱炭焼鈍を行わない方法と、ある程度の量を確保して組織の改善を図り、その後脱炭焼鈍により除去するという方法とがある。前者ではCの悪影響を避けるためには、その含有量を0.01mass%未満とし、後者では組織改善の好適範囲は0.01mass%以上0.10mass%未満である。
【0020】
Siは、鋼板の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必須の成分であるが、2.0mass%に満たないと鉄損の低減効果が弱まり、一方4.0mass%を超えると冷間圧延性が損なわれる。
【0021】
これらの成分の他に、磁化容易軸が高度に揃った二次再結晶粒を形成させるためのインヒビターを構成する成分を含有させる。このインヒビターとしては、AlN,MnSeおよびMnS等がよく知られていて、これらインヒビターを単独使用又は併用することができる。その際、インヒビターにMnSおよび/又はMnSeを用いる場合には、Mnを0.03〜0.10mass%、SおよびSeの1種または2種を合計で0.01〜0.03mass%の範囲で含有させる。また、AlNをインヒビターとして用いる場合は、Al:0.01〜0.04mass%を含有させる。窒素は、製造工程途中で窒化させることもできるが、製鋼時にあらかじめ窒素を含有させる場合には40〜120ppmとする。これらの範囲よりも低いとインヒビター成分としての効果が発揮できず、高いと二次再結晶が不安定になる。
【0022】
また、これらの主インヒビターの他に、B,Cu,Sn,Cr,Sb,Ge,Mo,Te,Bi,P,Vなども補助インヒビターとして用いることができる。これらの有効な含有量は、総量で0.01mass%以上0.2mass%以下である。これらの各インヒビターは単独使用、併用のいずれもが可能である。なお、最近インヒビターを含有させずに集合組織を適正化して二次再結晶を行わせる方法が検討されているが、この方法をこの発明に適用することも可能である。
【0023】
このようなスラブを、加熱してから公知の方法で熱間圧延を施した後、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を行って最終板厚にする。また、必要に応じて熱延板焼鈍を行うことも可能である。最終冷延板は、次いで一次再結晶焼鈍を行い、焼鈍分離剤を塗布したのち、最終仕上焼鈍を行う。
【0024】
この焼鈍分離剤には、マグネシアを主成分として用いる。このマグネシアの製造工程に工夫を加えて高い反応性を持たせることが、この発明の重要な構成要件である。すなわち、マグネシアの製造工程において、最終焼成に供する水酸化マグネシウムにつき、NH3換算でマグネシア100重量部に対して0.005〜0.060重量部となるように、マグネシアの製造開始から最終の焼成を行う前のいずれかの段階において、アンモニアもしくはアンモニウム化合物を添加する。この添加を経て製造されたマグネシアを主成分とした焼鈍分離剤を用いると、被膜形成反応が促進される結果、良好な被膜が得られる。
【0025】
ここで、アンモニアもしくはアンモニウム化合物の添加が、NH3換算でマグネシア100重量部に対して0.005重量部未満では、被膜形成反応を促進する効果がなく、一方同0.060重量部を超えるとアンモニアの窒素が一部マグネシアに残留し、これが最終仕上焼鈍中に鋼板に過度に侵入することにより磁気特性が劣化する。発明者らの実験では、0.060重量部以下では、焼成後にはアンモニア添加に起因する窒素の残留は認められなかった。
【0026】
なお、マグネシアにアンモニアを導入するための化合物としては、アンモニアの他に、弗化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウムおよび亜硫酸アンモニウム等のいずれもが適合するが、これらの化合物に特に限定されるものではない。
【0027】
また、アンモニアもしくはアンモニウム化合物の添加は、最終焼成の前までに行うことが肝要である。これは、焼成時にマグネシアにアンモニア吸着させ、この吸着させたアンモニアの効果で粒子形態を改善するためであり、焼成後の添加では効果が得られない。
【0028】
さらに、マグネシアの製法としては、マグネシウムイオン含有水溶液と水酸化物とを反応させて水酸化マグネシウムを製造し、これを焼成する方法が一般的であるが、粉体特性の調整のために、この後さらに水和して水酸化マグネシウムにしたのち、再焼成してマグネシアを製造する方法を採用することも可能である。このときも、最後の焼成の前までに、アンモニアもしくはアンモニウム化合物の添加を行うことが肝要である。
【0029】
なお、上記以外のマグネシアの粉体特性について述べると、まず、クエン酸活性度は35s〜100sである。このクエン酸活性度は、特公昭57−45472号公報に記載の、下記の方法を用いて測定することができる。

1)2mlの1%フェノールフタレイン指示薬を含む100mlの0.400規定(N)クエン酸水溶液を200ccビーカーにとり、30℃に保つ。ビーカーの中には磁気回転子を入れておく。
2)秤量したMgOをビーカー内に投入する。MgOの投入量は所望の最終反応率によって変化させ、20%反応の場合は4.00g、40%反応の場合は2.00g、60%反応の場合は1.14gとした。
3)MgOをビーカー内に投入した時から正確に10秒後にスターラーのスイッチを入れ回転子を回す。その間液温は30±1℃に保つ。
4)スラリーの温度が白からピンクに変わったら反応終了とし、MgOを投入した時からの時間をはかり、その秒数をクエン酸活性度とする。
【0030】
次に、マグネシアに含まれるCaO量は、0.20〜0.90mass%の範囲であることが好ましい。これは、被膜の形態を調節するためであり、0.20mass%に満たないと、被膜の凹凸がなくなって剥離しやすくなり、一方0.90mass%を超えると被膜形成量が不足し、いずれも良好な被膜が得られない場合がある。
【0031】
また、SO3は0.02〜0.75mass%およびBは300〜2000ppmの範囲が好ましく、いずれの成分も適度に存在することにより、マグネシアの反応性を調節する働きがある。それぞれ下限値に満たないと反応性が低くなりすぎ、一方上限値を超えると点状の欠陥が発生して良好な被膜は得られない場合がある。
【0032】
さらに、Cl含有量は0.005〜0.06mass%およびF含有量は0.005〜0.06mass%とすることが好ましい。いずれの元素も、この範囲よりも低すぎると被膜形成が不充分となり、この範囲を超えると被膜模様が発生したり、場合によってはベアとなったりするおそれがある。
【0033】
平均粒径は、0.5〜4.50μmの範囲とすることが好ましい。この範囲より小さいと、粒子が凝集しやすくなって作業性が低下し、一方大きすぎると、焼鈍分離剤を塗布、乾燥した後に被膜が剥離しやすくなるおそれがある。なお、粒径は、ヘキサメタリン酸ナトリウム3%水溶液で300Wおよび3分間の超音波分散を行った後、レーザー回折式粒度分布計を用いることにより測定することができる。
【0034】
なお、焼鈍分離剤には、主成分として上記のマグネシアを用いる他、添加剤を用いて更に特性を改善することもできる。この添加剤としては、Li,Na,Mn,Mg,Sn, Ti, Cu,Nb, Tl, Sr,Bi,Fe等の酸化物、水酸化物または硫酸塩等を用いることができる。これらの添加量は、マグネシア100重量部に対し、各々0.2〜12重量部とする。すなわち、0.2重量部未満では効果がなく、12重量部を超えると却って被膜や磁気特性を低下させる。これらの添加剤は、単独使用および複数使用の、いずれも可能である。
【0035】
このように、マグネシアを主成分として、さらに必要に応じて添加剤を追加した焼鈍分離剤は、水で懸濁・スラリー化して用いられ、このスラリーを所定目付量にて鋼板に塗布、乾燥させる。目付量は、鋼板両面で4g/m2〜18g/m2とすることが望ましい。これより低すぎると、被膜形成に必要なマグネシアの量が足りなくなり、多すぎるとコストがかかる上に、水和水分が多くなりすぎて磁性が劣化する。また、水和は通常10℃〜50℃の範囲で10〜100分程度で行われるが、この発明でもこの範囲内で行って差し支えない。
【0036】
その後、最終仕上焼鈍を施すが、これは公知の方法でよい。これら一連の処理後、絶縁張力コートを施し、平坦化焼鈍を行って製品に仕上げる。
【0037】
【実施例】
実施例1
C:0.06mass%、Si:3.3 mass%、Mn:0.070 mass%、Al:0.023 mass%、Se:0.019 mass%、Sb:0.025 mass%、Bi:0.014 mass%、N:0.008 mass%およびCr:0.031 mass%を含み、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるスラブを、1350℃で40分加熱後、熱間圧延して2.0mmの板厚にしたのち、900℃、60sでの熱延板焼鈍を施してから、60sの中間焼鈍を挟み、タンデム圧延機により0.23mm厚に圧延し、最終板厚に仕上げた。これを、800℃、2分間の脱炭焼鈍後、表1に示すNo.1〜9の粉体特性を持つ種々のマグネシア100重量部に酸化チタン8重量部を添加した、焼鈍分離剤を鋼板両面で塗布量13g/m2にて、水和温度20℃、水和時間40分で水和して塗布し、乾燥させた。なお、ここでのマグネシアは、水酸化物とマグネシウムイオン含有水溶液とを反応させて水酸化マグネシウムとし、その後焼成、再水和、最終焼成を行うという、工程を経て製造した。
【0038】
その後、鋼板をコイル状に巻取り、最終仕上焼鈍として、800℃から1100℃までを10℃/hで昇温した後、引き続き1200℃で10時間保持する純化焼鈍を施した。次いで、絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃、60sで焼き付け、その後プラズマ照射により磁区細分化処理を行った。
【0039】
かくして得られた製品板における、被膜特性について表2に示すように、この発明に従うマグネシアを主成分とした焼鈍分離剤を適用して得た鋼板は、優れた磁気特性および被膜特性が得られていることがわかる。一方、アンモニアを添加していないマグネシアを用いた焼鈍分離剤を適用して得た鋼板は、磁性不良となり、被膜も著しく劣化した。また、アンモニアを最終焼成後のマグネシアに添加したり、焼成前であっても添加量を多くさせすぎたりした、マグネシアを用いた焼鈍分離剤を適用して得た鋼板は、磁気特性が劣化し、被膜特性も改善されないものがあった。
【0040】
【表1】
Figure 0004310996
【0041】
【表2】
Figure 0004310996
【0042】
実施例2
C:0.06mass%,Si:3.25mass%,Mn:0.07mass%,Al:0.021mass%,N:90ppm,Se:0.02mass%およびSn:0.08mass%を含み、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるスラブを、1400℃で40分加熱し、熱間圧延により板厚2.2mmにしてから、2回の冷間圧延を1000℃で2分の中間焼鈍を挟んで行い、最終板厚0.23mmに仕上げた。この冷延板を850℃、2分の脱炭焼鈍後、焼鈍分離剤として表1のNo.1、2のマグネシアを主成分として、このマグネシア100重量部に対して6重量部のTiO2と1重量部のSnO2とを添加した、焼鈍分離剤を鋼板両面に塗布量13g/m2で、水和温度20℃、水和時間40分で水和して塗布し、乾燥させた。
【0043】
その後、鋼板をコイル状に巻き取り、最終仕上焼鈍として800℃から1100℃までを10℃/hで昇温した後、引き続き1200℃で10時間保持する純化焼鈍を施した。次いで、絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃で60秒で焼き付け、その後プラズマ照射により磁区細分化処理を行った。
【0044】
かくして得られた製品板における被膜特性について、表3に示すように、マグネシアの製造工程中にアンモニアを添加したNo.2の粉体を主成分とした焼鈍分離剤を適用して得た鋼板は、著しい磁気特性および被膜特性の改善がもたらされる。
【0045】
【表3】
Figure 0004310996
【0046】
実施例3
C:0.055mass%,Si:3.03mass%,Mn:0.07mass%,Al:0.005mass%,N:0.004mass%,Sb:0.023mass%,Cu:0.05mass%を含み、残部は実質的にFeおよび不可避的不純物よりなるスラブを、1200℃で60分加熱し、熱間圧延により板厚2.0mmにしてから、200℃の温間圧延により最終板厚0.30mmに仕上げた。この冷延板を850℃、2分の脱炭焼鈍後に、焼鈍分離剤として表1のNo.1、2のマグネシアを主成分として、このマグネシア100重量部に対して6重量部のTiO2と3重量部のSnO2とを添加した焼鈍分離剤を、鋼板両面に塗布量13g/m2で、水和温度20℃、水和時間40分で水和して塗布し、乾燥させた。
【0047】
その後、鋼板をコイル状に巻き取り、最終仕上焼鈍として、800℃から1100℃までを10℃/hで昇温した後、引き続き1200℃で10時間保持する純化焼鈍を施した。次いで、絶縁コーティングを塗布し、ヒートフラットニングを兼ねて900℃で60秒で焼き付け、その後プラズマ照射により磁区細分化処理を行った。
【0048】
かくして得られた製品板における被膜特性について表4に示すように、先の実施例2と同様に、素材成分や製造工程の大きく異なる製法を用いても、この発明に従うことにより、著しい磁気特性および被膜特性の改善がもたらされる。
【0049】
【表4】
Figure 0004310996
【0050】
【発明の効果】
この発明によれば、焼鈍分離剤の主成分として用いるマグネシアの改良を有利に実現したことから、このマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を方向性電磁鋼板の製造に適用することによって、方向性電磁鋼板の磁気特性および被膜特性を安定して向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アンモニアの添加量と磁気特性および被膜特性との関係を示す図である。

Claims (3)

  1. C:0.10mass%未満、Si:2.0〜4.0mass%を含有し、インヒビターとしてAlNおよび/またはMnSとMnSeの1種または2種を用い、AlNを用いる場合は、Al:0.01〜0.04mass%およびN:40〜120ppmを含有し、MnS,MnSeを用いる場合は、Mn:0.03〜0.10mass%、SおよびSeの1種または2種合計で0.01〜0.03mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを加熱して熱間圧延を施した後、1回又は中間焼鈍を挟む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げ、次いで一次再結晶焼鈍を施し、その後鋼板表面にマグネシアを主成分とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を行う、一連の工程よりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、マグネシアの製造に際し最終焼成に供する水酸化マグネシウムにつき、NH3換算でマグネシア100重量部に対して0.005〜0.060重量部となるように、最終焼成前のいずれかの段階でアンモニアもしくはアンモニウム化合物を含有させてから最終焼成を行って得たマグネシアを主成分とする、焼鈍分離剤を使用することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼スラブが、さらに、B,Cu,Sn,Cr,Sb,Ge,Mo,Te,Bi,PおよびVのうちから選んだ一種または二種以上を0.01〜0.2mass含有することを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. マグネシウムイオンを含有する溶液を水酸化物と反応させて水酸化マグネシウムとし、必要に応じて焼成後一旦水で水和させて再度水酸化マグネシウムとしたのち、最終焼成する、マグネシアの製造工程において、最終焼成に供する水酸化マグネシウムにつき、NH3換算でマグネシア100重量部に対して0.005〜0.060重量部となるように、最終焼成前のいずれかの段階でアンモニアもしくはアンモニウム化合物を含有させてから最終焼成を行って得た、マグネシアを主成分とする焼鈍分離剤。
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