JP3921807B2 - 方向性珪素鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、変圧器その他の電気機器の鉄芯等に用いられる方向性珪素鋼板、中でも小型発電器の鉄心やEIコアなど、高磁場特性よりも低磁場特性に優れることが必要とされる用途に供して好適な方向性電磁鋼板の有利な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性珪素鋼板の製造工程は、鋼スラブに熱間圧延、そして冷間圧延を施し、次いで一次再結晶焼鈍を施した後、二次再結晶のために最終仕上げ焼鈍を行うのが一般的である。そして、最終仕上げ焼鈍中に二次再結晶が起こり、圧延方向に磁化容易軸の揃った粗大な結晶粒が生成するのである。
【0003】
この仕上焼鈍は、高温で長時間行うことから、鋼板の焼付防止のために焼鈍分離剤を塗布するのが一般的である。焼鈍分離剤としては、通常MgO を主成分とするものが用いられている。このMgO は、焼鈍中に鋼板表層に生成している酸化層と反応する結果、フォルステライトを主成分とする被膜が生成する。さらに、この被膜上には、張力効果を高めて鉄損を改善したり絶縁性を確保するために、リン酸塩−シリカ系の無機コーティングを被成することも、通常に行われている。
【0004】
ところで、EIコアや小型の鉄心材料として方向性電磁鋼板を使用する場合は、低磁場での鉄損を低くする必要があり、二次再結晶粒の粒径を小さくすることが有効である。そこで、出願人は、素材成分のAl量を低減してSbを添加し、熱延板焼鈍および脱炭焼鈍の条件を適正化する方法について、特願平8-286720号明細書にて提案した。この方法により、低磁場での磁気特性を著しく改善することができたのである。
【0005】
一方、EIコアは、金型で所定の形状に打抜き、積層して製作するのが通例である。この際、上述のようなフォルステライト質被膜が存在すると、金型が磨耗することが問題となるために、種々の提案がなされている。
【0006】
例えば、特開平7-278669号公報には、焼鈍分離剤にMgO を用い、これに塩素化合物を添加する方法が開示されている。また、特開平6-17137 号公報には焼鈍分離剤主剤にMgO を用い、これにアルカリ金属化合物を添加し、仕上げ焼鈍雰囲気の窒素分圧を30%以上にする方法が開示されている。
これらの方法により、ある程度フォルステライト質被膜の形成を抑え、磁気特性も良好な製品が得られているが、焼鈍分離剤にMgO を用いると完全には被膜形成が抑えきれないという問題が依然として解決されない。このため、焼鈍後に酸洗などにより被膜を除去する工程を余分に設ける必要が生じ、コスト増をまねくことになる。
【0007】
一方、特開平4-337030号公報では、焼鈍分離剤の主剤にAl2O3 を用い、脱炭焼鈍から仕上焼鈍までのいずれかの段階でアンモニア窒化を行う方法が提案されている。この提案では、焼鈍分離剤にAl2O3 を用いているため、被膜形成を抑えることが可能であるが、純化不良によって磁気特性が劣化しやすいところが問題であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の事情に鑑み成されたものであり、磁気特性の劣化をまねくことなしに、被膜の形成を抑制して打抜き性を改善する、新規な方向性珪素鋼板の製造方法について提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、EIコア用の方向性珪素鋼として低磁場での鉄損を低下させないまま被膜の形成を抑制して打抜き性を改善する手法について種々の検討を行ったところ、素材成分を調整し、さらに特定の焼鈍分離剤を用いた上で仕上げ焼鈍の雰囲気を制御することが、極めて有効であることを見出し、この発明を完成するに到った。
【0010】
この発明は、C:0.005 〜0.070 wt%、Si:1.5 〜7.0 wt%、Mn:0.03〜2.50wt%、SおよびSeを合計で0.01wt%以下、Al:0.005 〜0.017 wt%、N:0.003〜0.010 wt%およびSb:0.010 〜0.080 wt%を含有する鋼塊を、1300℃以下の温度に加熱後、熱間圧延し、次いで1回もしくは中間焼鈍を含む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍を施し、その後焼鈍分離剤を塗布、乾燥してから最終仕上焼鈍を行う一連の工程によって方向性珪素鋼板を製造するに当たり、焼鈍分離剤に、吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が80m2/g以上 150m2/g以下のAl2O3 を主成分とするものを用いて、仕上焼鈍は、 800℃以上の雰囲気中における窒素濃度を1%以下に調整して行うことを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を導くに到った実験結果について説明する。
すなわち、表1に示す鋼A, DおよびEの成分組成に成る鋼スラブを1200℃で30分加熱後、熱間圧延にて2.5mm の板厚にし、900 ℃で1分間の熱延板焼鈍を行ってから、タンデム圧延機で0.34mm厚に冷間圧延し、最終板厚に仕上げた。次いで、脱炭焼鈍を、850 ℃,2分間で雰囲気の水蒸気分圧に対する水素分圧の比{以下、P(H2O) /P(H2)と示す}を0.45として施した。その後、鋼板表面に、スラリー状の焼鈍分離剤をロールコーターにより塗布、乾燥して最終仕上焼鈍を行った。
【0012】
ここで、焼鈍分離剤は、主剤として吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が80および160 m2/gのAl2O3 を用いて成るものを適用した。また、仕上焼鈍は、800 ℃までをAr雰囲気で行ったのち、800 ℃から1100℃までを乾水素雰囲気に窒素を種々の濃度で微量添加して行った。その際の昇温速度は30℃/hとした。引続き、純化焼鈍として、水素雰囲気にて1200℃,5時間の保定焼鈍を行った。純化焼鈍後のコイルは、40wt%のコロイダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする、絶縁コーティング処理に施し、800 ℃で焼付けて製品とした。
【0013】
かくして得られた鋼板を、エプスタインサイズの試験片に切り出し、800 ℃で3時間の歪取焼鈍を施した後、磁束密度B8(T)を測定するとともに、被膜密着性を曲げ剥離径を測定することにより評価した。さらに、各製品からEIコアを打ち抜き、歪取焼鈍後、積み加工、銅線の巻き加工などによってEIコアを作成し、その鉄損を測定した。さらに、さらに各コイルに対して、ダイス径15mmφのスチールダイスにより打抜き作業を行った際、返り高さが50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定した。
これらの製品品質の評価結果を表2に示す。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】
表2から、素材成分Aを用いて、かつ仕上焼鈍雰囲気のN2 分圧を低減することにより、磁気特性および打抜き性が顕著に改善されていることがわかる。一方、Seを含有する素材Dでは、磁束密度は高いものの鉄損の低減が不十分であり、Sbを添加しない素材Eでは、脱炭焼鈍時に生成したサブスケールが残存して、金属光沢のない表面外観となり、打抜き性も劣化した。
一方、焼鈍分離剤について、吸着質にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が160 m2/gのAl2O3 を主成分とするものを用いると、磁気特性および打抜き性はともに劣化した。
このように製品品質が変化した理由については明らかでないが、発明者らは次のように考えている。
【0017】
通常、Al2O3 を焼鈍分離剤に用いると鋼板の純化は進まないが、今回の素材AのようにS,Seを含有させないものでは、純化の負荷が少ないために、焼鈍分離剤がAl2O3 であっても純化したものと考えられる。
【0018】
また、素材CのようなSbを含まない材料では、脱炭焼鈍の際にSiO2を主体とするサブスケールが鋼板内部まで深く生成するために、仕上焼鈍時にこれらSiO2が表面まで浮上せずに残存してしまうが、Sbを添加すると、脱炭焼鈍時のサブスケールは最表面のみで生成し、仕上焼鈍時での被膜の除去は容易となる。さらに、Sbは鋼板表面に偏析しているため、仕上焼鈍中に雰囲気の微量の酸素が鋼板に浸入して鋼中のAlやSiと反応してAl2O3 やSiO2が新たに生成するのを、阻害する働きもあり、純化不良も防がれる。
【0019】
同様に、焼鈍分離剤の主成分であるAl2O3 について、その吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積は、Al2O3 スラリー乾燥後に残留した水分の、仕上焼鈍中に持ち込まれる量に対応するとともに、コイルをタイトに巻いたときの雰囲気の通気性にも影響を及ぼすため、この比表面積を適度に制御することにより水分を鋼板表面から逃がし、酸素の鋼中浸入を防ぐことができる。
【0020】
以上のような理由により、素材成分のSおよびSeを低減し、Sbを添加して焼鈍分離剤のAl2O3 について、吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積を制御することにより、磁気特性に優れ、打抜き性にも優れた鋼板が得られるのである。
【0021】
ただし、このような素材であっても、仕上焼鈍時の雰囲気の窒素分圧が高いと、良好な特性は得られない。これは、雰囲気の窒素が鋼中に浸入することにより、純化が不十分となるためであり、また、この窒素の鋼中浸入によりサブスケールのSiO2の鋼板表面への浮上が抑制されるためであると考えられる。
【0022】
次に、この発明の各構成要件の限定理由について述べる。
まず、この発明の素材の成分組成の範囲は、次の通りである。
C:0.005 〜0.070 wt%
Cは、0.070 wt%をこえるとγ変態量が過剰となり、熱間圧延中のAlの分布が不均一となって熱延板焼鈍の昇温過程で析出するAlN の分布も不均一となり、磁性不良となる。一方、0.005 wt%未満では、組織の改善効果が得られずに二次再結晶が不安定となり、やはり磁気特性の劣化を招く。従って、0.005 〜0.070 wt%の範囲に限定する。
【0023】
Si:1.5 〜7.0 wt%
Siは、電気抵抗を増加して鉄損を低減するために必須の成分であり、そのためには1.5 wt%以上は含有させる必要があるが、7.0 wt%をこえると加工性が劣化し、製造や製品の加工が極めて困難になるため、1.5 〜7.0 wt%の範囲に限定する。
【0024】
Mn:0.03〜2.50wt%
Mnも、同じく電気抵抗を高め、また製造時の熱間加工性を向上させるのに必要な成分である。そのためには、0.03wt%以上の含有が必要であるが、2.50wt%をこえる含有は、γ変態を誘起して磁気特性が劣化することから、0.03〜2.50wt%の範囲に限定した。
【0025】
SおよびSeを合計で0.01wt%以下
SおよびSeは、上述のとおり、焼鈍分離剤にAl2O3 を主成分とするものを使用した場合にあっても、純化を進めるために、合計で0.01wt%以下に抑制する。
【0026】
Al:0.005 〜0.017 wt%
鋼中には上記の元素の他に、2次再結晶を誘起するためのインヒビター成分の含有が不可欠であり、そのためインヒビター成分としてAlを 0.005〜0.017 wt%の範囲で含有させる。ここに、Alの含有量が 0.005wt%未満の場合、熱延板焼鈍の昇温過程において析出するAlNの量が不足し、逆に 0.017wt%を超える場合には、1200℃前後でのスラブの低温加熱においてのAlNの固溶が困難となり、またAlNの固溶温度が上昇するため熱間圧延においてAlNが析出し、熱延板焼鈍の昇温過程におけるAlNの微細析出が不可能となり、低磁場での良好な鉄損特性が得られない。
従って、Alは 0.005〜0.017 wt%の範囲で含有させるものとした。
なお、上記の不備を解消するために、1400℃前後の高温度でスラブ加熱を行うと、製品の結晶粒径が粗大化し、高磁場での鉄損が低減し、低磁場での鉄損が増大する結果となり実機の鉄損が劣化する。
【0027】
N:0.003 〜0.010 wt%
Nは、AlNを構成する成分であるので、0.0030wt%以上の含有が必要である。しかしながら、0.010 wt%を超えて含有すると鋼中でガス化し膨れなどの欠陥をもたらすので、0.0030〜0.010 wt%の範囲に限定した。
【0028】
Sb:0.01〜0.08wt%
Sbは、0.01wt%よりも少ないと脱炭焼鈍時にサブスケールの形成が進みすぎて仕上焼鈍後にもこのサブスケールが残存するため、打抜き性が劣化する。また、仕上焼鈍中に Al2O3やSiO2が新たに生成するため鈍化不良となり、磁気特性も劣化する。逆に0.08wt%よりも多いとSbの粒界偏析が進みすぎることにより、二次再結晶が不安定となる。
【0029】
また、インヒビター形成成分として、さらにSb,B,Ti,Nb,Cu,Sn,Cr,Ge,Mo,Vなどを添加することができる。その好適量としては、Sb:0.003 〜0.080 wt%、B:0.0001〜0.0020wt%、Ti:0.0005〜0.0020wt%、Nb:0.0010〜0.010 wt%、そしてCu,Sn,Cr,Ge,Mo,Vの1種または2種合計で0.001 wt%以上0.3 wt%以下である。これらの各インヒビターは単独使用、複数使用いずれも可能である。
【0030】
次に、製造条件の限定理由について述べる。
まず、スラブ加熱は1300℃以下の温度で行う。なぜなら、1300℃を超える温度でスラブ加熱を行った場合、製品結晶粒のうち1mm以下の微細粒が減少して粗大粒が増加するため、低磁場での鉄損が劣化する。ちなみに、近年、スラブ加熱を行わずに連続鋳造後、直接熱間圧延を行う方法が提案されているが、この方法はスラブ温度が上昇しないので、この発明方法に適した方法といえる。
【0031】
次いで、1回または中問焼鈍をはさむ複数回の冷間圧延を行って最終板厚にする。なお、必要に応じて熱延板を冷間圧延前に焼鈍することも可能である。このとき、冷間圧延は、タンデム圧延でもゼンジマー圧延でも良いが、生産性の観点からはタンデム圧延が望ましい。その後は、一次再結晶焼鈍を行い、焼鈍分離剤を塗布した後、最終仕上焼鈍を行う。
【0032】
ここで、焼鈍分離剤の主剤には、Al2O3 を用いる。MgO ではフォルステライト被膜が形成されるために不適である。特に主剤のAl2O3 には、吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が80m2/g以上 150m2/g以下の粉体を用いる。これは、鋼板表面の通気性と持ち込み水分量を調節するためである。また、分離剤には特公昭58-44152号公報に開示されたように、Sr, Ba, Caの化合物あるいは他の化合物を添加することも可能である。
【0033】
なお、脱炭焼鈍から仕上焼鈍にかけて鋼板を窒化させる方法が多数開示されているが、低磁場での磁気特性の面からはこの方法は極めて有害で、窒化は可能な限り起こさないようにする必要がある。
【0034】
また、仕上焼鈍は、 800℃以上の雰囲気の窒素分圧を1%以下とする。窒素分圧が1%をこえると、鋼板が窒化されて磁気特性が劣化することになる。なお、温度パターンは珪素鋼板の一般に従えばよい。その後、絶縁コートを施してフラットニング焼鈍をして製品に仕上げる。絶縁コーティングは公知の張力コートでも良いが、打ち抜き性をさらに改善するために有機樹脂系のコーティングを施すことも可能である。かかる処理工程によって優れた磁気特性、打抜き加工性を有する方向性珪素鋼を得ることができる。
【0035】
【実施例】
実施例1
前掲の表1に示したA〜Mの成分組成になる溶鋼を、電磁攪枠しつつ連続鋳造によってスラブとし、1180℃に加熱後、粗5パスで45mm厚のシートバーとし、仕上げ出側温度: 950℃で7パスの仕上げ熱間圧延によって2.2mm 厚まで圧延した。次いで、得られた熱延コイルを、900 ℃、1分間の熱延板焼鈍後、タンデム圧延機にて0.34mmまで冷間圧延した。その後、850 ℃2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤として吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が120 m2/gのAl2O3 を塗布してから、仕上焼鈍を施した。仕上焼鈍は、 800℃から1200℃までを30℃/hで昇温し、引き続き1200℃、5時間の保定焼鈍を行った。また、昇温時に、800 ℃までをAr雰囲気、 800℃から1200℃までを水素雰囲気(窒素濃度:0%)で行った。この仕上焼鈍後は、酢酸ビニル樹脂を含有する重クロム酸マグネシウムを塗布、焼き付けしてヒートフラットニングを施して製品とした。
【0036】
かくして得られた鋼板からエプスタインサイズの試験片を切り出し、800 ℃で3時間の歪取焼鈍を施した後、曲げ剥離試験を行うとともに、磁束密度B8(T)を測定した。また、各製品からEIコアを打ち抜き、歪取焼鈍後、積み加工、銅線の巻き加工などによってEIコアを作成し、その鉄損を測定した。さらに、各コイルをダイス径15mmφのスチールダイスにより打ち抜き作業を行った際、その返り高さが50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定した。
その結果を表3に示すように、この発明法によって得られた方向性電磁鋼板は、鉄損が良好であり、かつ打ち抜き性も優れている。
【0037】
【表3】
【0038】
実施例2
前掲の表1に示したHの成分組成になる溶鋼を、電磁攪枠しつつ連続鋳造によってスラブとし、1180℃に加熱後、粗5パスで45mm厚のシートバーとし、仕上げ出側温度: 950℃で7パスの仕上げ熱間圧延によって2.2mm 厚まで圧延した。次いで、得られた熱延コイルを、900 ℃、1分間の熱延板焼鈍後、タンデム圧延機にて0.34mmまで冷間圧延した。その後、850 ℃2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤として吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が120 m2/gのAl2O3 を塗布してから、仕上焼鈍を施した。仕上焼鈍は 800℃から1200℃までを30℃/hで昇温し、引き続き1200℃、5時間の保定焼鈍を行った。また、昇温時に、800 ℃までをAr雰囲気、 800℃から1100℃までを水素雰囲気における窒素濃度を種々に変化した雰囲気、そして1100℃以上を水素雰囲気で行った。この仕上焼鈍後は、酢酸ビニル樹脂を含有する重クロム酸マグネシウムコーティングを塗布、焼き付けしてヒートフラットニングを施して製品とした。
【0039】
かくして得られた鋼板からエプスタインサイズの試験片を切り出し、780 ℃で3時間の歪取焼鈍を施した後、曲げ剥離試験を行うとともに、磁束密度B8(T)を測定した。また、各製品からEIコアを打ち抜き、歪取焼鈍後、積み加工、銅線の巻き加工などによってEIコアを作成し、その鉄損を測定した。さらに、各コイルをダイス径15mmφのスチールダイスにより打ち抜き作業を行った際、その返り高さが50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定した。
その結果を表4に示すように、特に仕上げ焼鈍雰囲気の窒素濃度を1%以下にすることにより、鉄損が良好であり、かつ打ち抜き性も優れた製品が得れる。
【0040】
【表4】
【0041】
実施例3
前掲の表1に示したHの成分組成になる溶鋼を、電磁攪枠しつつ連続鋳造によってスラブとし、1180℃に加熱後、粗5パスで45mm厚のシートバーとし、仕上げ出側温度: 950℃で7パスの仕上げ熱間圧延によって2.2mm 厚まで圧延した。次いで、得られた熱延コイルを、900 ℃、1分間の熱延板焼鈍後、タンデム圧延機にて0.34mmまで冷間圧延した。その後、850 ℃2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤として吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が70〜160 m2/gのAl2O3 を塗布してから、仕上焼鈍を施した。仕上焼鈍は 800℃から1200℃までを30℃/hで昇温し、引き続き1200℃、5時間の保定焼鈍を行った。また、昇温時に、800 ℃までをAr雰囲気、 800℃から1200℃までを水素雰囲気(窒素濃度:0%)で行った。この仕上焼鈍後は、酢酸ビニル樹脂を含有する重クロム酸マグネシウムコーティングを塗布、焼き付けしてヒートフラットニングを施して製品とした。
【0042】
かくして得られた鋼板からエプスタインサイズの試験片を切り出し、700 ℃で3時間の歪取焼鈍を施した後、曲げ剥離試験を行うとともに、磁束密度B8(T)を測定した。また、各製品からEIコアを打ち抜き、歪取焼鈍後、積み加工、銅線の巻き加工などによってEIコアを作成し、その鉄損を測定した。さらに、各コイルをダイス径15mmφのスチールダイスにより打ち抜き作業を行った際、その返り高さが50μmに達するまでの打ち抜き回数を測定した。
その結果を表5に示すように、特に焼鈍分離剤として吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が80〜150 m2/gのAl2O3 を用いることによって、鉄損が良好であり、かつ打ち抜き性も優れた製品が得られる。
【0043】
【表5】
【0044】
【発明の効果】
この発明によれば、磁気特性及び打抜き性に優れた方向性珪素鋼板を製造することが可能となり、電磁鋼板の品質向上に大きく寄与するものである。
Claims (1)
- C:0.005 〜0.070 wt%、Si:1.5 〜7.0 wt%、Mn:0.03〜2.50wt%、SおよびSeを合計で0.01wt%以下、Al:0.005 〜0.017 wt%、N:0.003 〜0.010 wt%およびSb:0.010 〜0.080 wt%を含有する鋼塊を、1300℃以下の温度に加熱後、熱間圧延し、次いで1回もしくは中間焼鈍を含む複数回の冷間圧延を施して最終板厚に仕上げたのち、一次再結晶焼鈍を施し、その後焼鈍分離剤を塗布、乾燥してから最終仕上焼鈍を行う一連の工程によって方向性珪素鋼板を製造するに当たり、焼鈍分離剤に、吸着種にH2O を用いたときのBET 法による比表面積が80m2/g以上 150m2/g以下のAl2O3 を主成分とするものを用いて、仕上焼鈍は、 800℃以上の雰囲気中における窒素濃度を1%以下に調整して行うことを特徴とする方向性珪素鋼板の製造方法。
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