JP3951956B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(以下、内燃機関を「エンジン」という。)の燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガイド部材の内周側を可動コアと一体の弁部材が軸方向へ往復移動し、噴孔からの燃料の噴射を断続する燃料噴射弁が公知である(特許文献1参照)。このような燃料噴射弁は、一体に形成されている可動コアおよび弁部材にそれぞれガイド部材と摺動する摺動部が形成されている。可動コアおよび弁部材とガイド部材とが摺動することにより、可動コアおよび弁部材の軸方向の移動が案内される。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−263205号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に開示されている燃料噴射弁の場合、可動コアとガイド部材との間に形成される摺動部と、弁部材とガイド部材との間に形成される摺動部とは、弁部材の軸方向において離れた位置に形成される。そのため、可動コアと弁部材との間の同軸度が低い場合、一体に形成された可動コアおよび弁部材は軸に対し傾斜した状態でガイド部材と摺動する。可動コアおよび弁部材が傾斜すると、噴孔を開閉する弁部材の弁密度が低下し、燃料噴射特性の悪化を招く。一方、可動コアと弁部材との間に高い同軸度を確保するためには、高い加工精度および組み付け精度が要求される。その結果、製造工数の増加を招くという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、加工精度および組み付け精度の確保が容易であり、製造工数が低減される燃料噴射弁を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明では、弁部材は可動コアに収容され、摺動部は可動コアとガイド部材との間にのみ形成されている。そのため、弁部材とガイド部材との間に摺動部を形成する必要がなく、弁部材とガイド部材との間における同軸度の確保は不要である。したがって、加工精度および組み付け精度を容易に確保することができ、製造工数を低減することができる。また、摺動部は可動コアの周方向へ複数形成されている。そのため、可動コアは周方向の複数の位置でガイド部材と摺動する。したがって、可動コアの傾きを防止することができる。さらに、複数の摺動部の間には隙間が形成されている。複数の摺動部の間に隙間を配置することにより、摺動部の周方向の長さは小さくなり、摺動部において磁束は容易に飽和する。これにより、ガイド部材と可動コアとの間に生じる磁気吸引力は低減される。したがって、ガイド部材と可動コアとの間に生じる磁気吸引力を低減し、可動コアと固定コアとの間に生じる磁気吸引力を増大することができる。
請求項2記載の発明では、ガイド部材から径方向内側へ突出する突出部により、ガイド部材は可動コアとの間に摺動部を形成している。
【0007】
請求項3記載の発明では、弁部材は可動コアに収容され、摺動部は可動コアとガイド部材との間にのみ形成されている。そのため、弁部材とガイド部材との間に摺動部を形成する必要がなく、弁部材とガイド部材との間における同軸度の確保は不要である。したがって、加工精度および組み付け精度を容易に確保することができ、製造工数を低減することができる。また、摺動部は可動コアの軸方向へ複数形成されている。そのため、可動コアは軸方向の複数の位置でガイド部材と摺動する。したがって、可動コアの傾きを防止することができる。さらに、複数の摺動部の間には隙間が形成されている。複数の摺動部の間に隙間を配置することにより、摺動部の軸方向の長さは小さくなり、摺動部において磁束は容易に飽和する。これにより、ガイド部材と可動コアとの間に生じる磁気吸引力は低減される。したがって、ガイド部材と可動コアとの間に生じる磁気吸引力を低減し、可動コアと固定コアとの間に生じる磁気吸引力を増大することができる。
【0008】
請求項4記載の発明では、突出部は可動コアの周方向へ連続して形成されている。そのため、可動コアをガイド部材により確実にガイドすることができる。
請求項5記載の発明では、弁部材は軸方向の長さの半分以上が可動コアに収容されている。これにより、弁部材は例えば圧入などによる可動コアへの組み付けが可能となる。したがって、製造工数を低減することができる。また、弁部材の軸方向の長さの半分以上を可動コアに収容することにより、弁部材の全長が短縮される。したがって、可動コアの傾きによる弁部材への影響を低減することができる。
【0009】
請求項6記載の発明では、弁部材は弁座に着座可能な球面部を有している。弁部材に球面部を形成することにより、球面部は弁部材の傾きに関わらず弁座に着座可能である。したがって、弁密度を向上することができる。
請求項7記載の発明では、弁部材は略球形状に形成されている。そのため、球面部の形成が容易である。
【0010】
請求項8記載の発明では、ガイド部材を薄肉筒状に形成している。そのため、ガイド部材における磁束は容易に飽和する。その結果、磁気回路はガイド部材で短絡されることなく、可動コアと固定コアとの間に形成される。また、ガイド部材における磁束が飽和することにより、可動コアとガイド部材との間における磁気吸引力は低減される。したがって、ガイド部材を磁性材料で形成する場合でも、ガイド部材と可動コアとの間に生じる磁気吸引力を低減し、可動コアと固定コアとの間に生じる磁気吸引力を高めることができる。
【0011】
請求項9または10記載の発明では、可動コアは内周側に燃料通路を形成している。燃料通路は、可動コアの固定コア側と噴孔とを連通している。可動コアの内周側に燃料通路を形成することにより、燃料通路の形状が単純となる。したがって、燃料通路を流れる燃料の圧力損失を低減することができる。また、可動コアの燃料流れ下流側で発生した燃料の気泡は、燃料通路を経由して可動コアの燃料流れ上流側へ容易に排出される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射弁(以下、燃料噴射弁を「インジェクタ」という。)を図2に示す。インジェクタ10のガイド部材としてのホルダ20は、磁性材料から薄肉の円筒状に形成されている。円筒状のホルダ20は、内周側に燃料通路11を形成している。ホルダ20の内周側には、固定コア12、可動コア30、弁部材31、弁座プレート32、噴孔プレート33、アジャスティングパイプ13およびスプリング14が収容されている。
【0013】
ホルダ20は、磁性材料により一体の円筒状に形成されている。ホルダ20の先端部は内周側に突出しており、突出したホルダ20の先端部に噴孔プレート33および弁座プレート32が積み重ねられて設置されている。噴孔プレート33は、薄板状に形成され、図1に示すように中央部に軸方向に貫く単数または複数の噴孔34を有している。噴孔プレート33の可動コア30側には、弁座プレート32が設置されている。弁座プレート32は、円錐台面状の内周面を有している。弁座プレート32の内周面には、弁部材31のシール部31aが着座可能な弁座35が形成されている。
【0014】
弁部材31は、概ね球形状に形成されており、可動コア30の弁座プレート32側の端部に収容されている。弁部材31は、可動コア30の内周側に軸方向の半分以上が収容されている。弁部材31は、可動コア30の内径と概ね同一の外径を有しており、例えば圧入などにより可動コア30に固定されている。なお、弁部材31を可動コア30に圧入した後、弁部材31と可動コア30とを溶接してもよい。弁部材31は、軸方向において反可動コア側に弁座35に着座可能なシール部31aを有している。弁部材31は概ね球形状であるため、シール部31aは球面状に形成される。
【0015】
可動コア30は、磁性材料により略円筒状に形成されている。可動コア30は、内部に弁部材31を収容している。可動コア30は弁部材31との間に燃料通路36を形成している。可動コア30は、内部に収容している弁部材31とともにホルダ20の内周側を軸方向へ往復移動可能である。
【0016】
固定コア12は、磁性材料により円筒状に形成されている。固定コア12は、圧入されることによりホルダ20に固定されている。固定コア12は、可動コア30に対し反噴孔プレート側に設置され、可動コア30と対向している。固定コア12の内側には図2に示すようにアジャスティングパイプ13が圧入されている。スプリング14は、一方の端部がアジャスティングパイプ13に当接し、他方の端部が可動コア30に当接している。アジャスティングパイプ13の圧入量を調整することにより、スプリング14の荷重は変更される。スプリング14は、可動コア30と一体の弁部材31を弁座プレート32方向へ付勢している。磁性部材15および磁性部材16は、互いに磁気的に接続されてコイル17の外周側に設置されている。ホルダ20、固定コア12、可動コア30、磁性部材15および磁性部材16は、磁気回路を構成する。
【0017】
コイル17が巻回されているスプール18はホルダ20の外周側に取り付けられている。ターミナル19は、コイル17と電気的に接続されており、コイル17に駆動電流を供給する。樹脂ハウジング21は、ホルダ20およびコイル17の外側を覆っている。
【0018】
ホルダ20の図2において上方から燃料通路に流入する燃料は、フィルタ部材22により異物が除去される。異物が除去された燃料は、燃料通路11、アジャスティングパイプ13の内周側、固定コア12の内周側、可動コア30の内周側、ならびに可動コア30と弁部材31との間に形成される燃料通路36を経由して可動コア30と弁座プレート32との間に供給される。可動コア30と弁座プレート32との間に供給された燃料は、弁部材31のシール部31aが弁座35から離座したときに弁部材31と弁座プレート32との間に形成される開口を通り、噴孔プレート33に形成されている噴孔34から噴射される。
【0019】
次に、可動コア30について詳細に説明する。
可動コア30は、図3に示すように内側に軸方向へ貫く穴部40を有している。穴部40は、弁座プレート32側から第一大径穴部41、小径穴部42および第二大径穴部43から構成されている。第一大径穴部41および第二大径穴部43は、内径が小径穴部42よりも大きく形成されている。小径穴部42と第二大径穴部43との間には段差44が形成されており、この段差44にスプリング14の一端が当接可能である。また、可動コア30は、第一大径穴部41と小径穴部42との間に軸方向へ徐々に内径が変化するテーパ部45を有している。テーパ部45を形成している可動コア30の内壁は、可動コア30に収容される弁部材31と当接可能である。弁部材31は、反噴孔側の一部が可動コア30のテーパ部45と当接することにより、可動コア30の軸方向に対する固定位置が決定される。すなわち、可動コア30のテーパ部45は、弁部材31の軸方向の位置を決める位置決め部となる。
【0020】
可動コア30は、図1、図3および図4に示すように第一大径穴部41および小径穴部42から径方向外側へ凹状に形成されている溝部46を有している。溝部46は、小径穴部42に対応する位置から第一大径穴部41の外周側を経て可動コア30の弁座プレート32側の端部まで形成されている。これにより、可動コア30に弁部材31を収容したとき、可動コア30と弁部材31との間には燃料通路36が形成される。燃料通路36は、小径穴部42すなわち位置決め部となるテーパ部45の固定コア12側と、可動コア30の弁座プレート32側すなわち噴孔34の燃料入口側とを連通している。固定コア12の内周側を通過した燃料は、可動コア30の第二大径穴部43、小径穴部42、ならびに燃料通路36を経由して可動コア30と弁座プレート32との間に供給される。
【0021】
可動コア30は、図3に示すように軸方向の両端部に径方向外側へ突出する大径部37、38を有している。大径部37、38は、周方向へ連続して形成され、外径がホルダ20の内径と概ね同一である。そのため、大径部37、38は、周方向へ連続してホルダ20の内周面20aとの間に摺動部を形成する外周面37a、38aを有している。大径部37、38の外周面37a、38aとホルダ20の内周面20aとが摺動することにより、可動コア30はホルダ20に案内されて軸方向へ移動する。可動コア30の大径部37と大径部38との間に形成される小径部39は、図1に示すようにホルダ20の内周面20aとの間に所定の間隔で隙間23を形成する。隙間23は、可動コア30の周方向へ円環状に連続して形成される。
【0022】
コイル17が励磁されると、図2に示すホルダ20、磁性部材15、磁性部材16、可動コア30および固定コア12は磁気回路を形成する。ホルダ20は薄肉に形成されているため、ホルダ20における磁束は容易に飽和される。そのため、ホルダ20を経由して磁性部材15と磁性部材16、または磁性部材15と固定コア12との間が磁気的に短絡されることはない。これにより、磁性部材15と可動コア30との間には、ホルダ20を挟んで磁気回路が形成される。その結果、可動コア30と固定コア12との間に磁気回路が形成され、可動コア30と固定コア12との間には磁気吸引力が発生する。したがって、可動コア30は固定コア12へ吸引される。
【0023】
上記のように、ホルダ20においては磁束が飽和している。そのため、磁気回路は磁性部材15からホルダ20を板厚方向に通過して可動コア30の大径部37、38に形成される。大径部37、38は軸方向の一部に形成されている。そのため、ホルダ20と可動コア30との間の接触部分における面積は小さくなる。これにより、大径部37、38において磁束は容易に飽和する。その結果、ホルダ20を磁性材料で形成する場合でも、可動コア30の周方向において可動コア30とホルダ20との間に発生する磁気吸引力は小さくなる。
【0024】
コイル17への通電が停止されているとき、可動コア30と固定コア12との間には磁気吸引力が発生していない。そのため、可動コア30はスプリング14の付勢力により弁座プレート32側へ移動している。このとき、可動コア30と一体の弁部材31は、シール部31aが弁座プレート32の弁座35に着座している。そのため、可動コア30と弁座プレート32との間に供給された燃料は噴孔34から噴射されない。
【0025】
コイル17へ通電されると、可動コア30と固定コア12との間に磁気吸引力が発生する。発生した磁気吸引力がスプリング14の付勢力よりも大きくなると、可動コア30は固定コア12側へ移動する。可動コア30の移動にともなって、可動コア30と一体の弁部材31も固定コア12側へ移動する。弁部材31の移動によって、弁部材31のシール部31aが弁座プレート32の弁座35から離座すると、燃料通路36を経由して可動コア30と弁座プレート32との間に供給された燃料は弁部材31と弁座プレート32との間に形成される開口を通過する。これにより、燃料は、噴孔34の入口側へ流入し、噴孔34から噴射される。
【0026】
コイル17への通電が停止されると、可動コア30と固定コア12との間の磁気吸引力は消滅する。磁気吸引力が消滅すると、可動コア30はスプリング14の付勢力により弁座プレート32側へ移動する。そして、可動コア30と一体の弁部材31のシール部31aは再び弁座プレート32の弁座35に着座する。これにより、燃料の噴射は終了する。
【0027】
以上説明した本発明の第1実施形態によると、ホルダ20と摺動するのは可動コア30のみである。すなわち、可動コア30のみがホルダ20との間に摺動部を形成し、弁部材31はホルダ20との間に摺動部を形成しない。そのため、可動コア30と弁部材31とは、同軸度を確保する必要がない。ホルダ20と摺動部を形成する大径部37、38は単一の部材からなる可動コア30に形成されている。そのため、同軸度を確保するための可動コア30の加工は容易である。したがって、加工精度および組み付け精度を容易に確保することができ、製造工数を低減することができる。
【0028】
第1実施形態では、ホルダ20との間に摺動部を形成する大径部37、38は可動コア30の軸方向の両端部に形成されている。そのため、可動コア30は軸方向の複数の位置でホルダ20と摺動し、移動が案内される。すなわち、可動コア30は軸方向の両端部においてホルダ20に保持される。したがって、軸に対する可動コア30の傾斜を低減することができる。また、可動コア30の傾斜を低減することにより、弁部材31の傾斜も低減される。そのため、弁部材31のシール部31aは確実に弁座プレート32の弁座35と当接する。したがって、シール部31aと弁座35との間の弁密度を高めることができる。
【0029】
第1実施形態では、ホルダ20は薄肉に形成されているため、ホルダ20を磁性材料で形成してもホルダ20の磁束は容易に飽和する。ホルダ20を薄肉に形成し、可動コア30とホルダ20とが接触する部分すなわち大径部37、38を小さくすることにより、可動コア30の周方向において可動コア30とホルダ20との間に生じる磁気吸引力は低減される。したがって、可動コア30と固定コア12との間の磁気吸引力を増大することができ、可動コア30を円滑に固定コア12側へ駆動することができる。また、ホルダ20を磁性材料により一体に形成することができる。したがって、ホルダ20の製造工数、ならびに部品点数を低減することができる。
【0030】
第1実施形態では、弁部材31は軸方向の長さの半分以上が可動コア30に収容されている。これにより、弁部材31は圧入などにより容易に可動コア30に固定される。したがって、製造工数を低減することができる。また、弁部材31の半分以上を可動コア30に収容することにより、可動コア30から露出する弁部材31の全長は短縮される。すなわち、弁部材31の軸方向の長さは短縮される。これにより、可動コア30の傾きが弁部材31の傾きに与える影響は小さくなる。さらに、第1実施形態では、弁部材31は球形状に形成されているため、シール部31aは球面状である。そのため、弁部材31が傾斜しても、シール部31aは確実に弁座35と当接する。したがって、シール部31aと弁座35との間の弁密度を高めることができる。
【0031】
第1実施形態では、可動コア30の内周側に燃料通路36が形成されている。そのため、燃料通路36の形状は単純となる。したがって、燃料通路36を流れる燃料の圧力損失を低減することができる。また、可動コア30の内周側に燃料通路36を形成することにより、可動コア30の噴孔プレート33側で発生した燃料の気泡を容易に固定コア12側に排出することができる。また、可動コア30の内周側において第一大径穴部41および小径穴部42の外周側に溝部46を形成することにより、可動コア30は例えば冷間鍛造などにより容易に成形することができる。
なお、第1実施形態では、可動コア30に軸方向へ二つの大径部37、38を形成する例について説明した。しかし、可動コア30に三つ以上の大径部を形成してもよい。また、大径部37、38は周方向へ連続して形成したが、任意の間隔で不連続に形成してもよい。
【0032】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態によるインジェクタを図5に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態では、図5に示すように可動コア50は円周面状の外壁を有している。すなわち、可動コア50は、軸方向の両端部間において外径が概ね同一に形成されている。
【0033】
一方、ホルダ60は、図5および図6に示すように径方向内側へ突出する突出部61を有している。突出部61は、周方向において複数の位置に形成されている。ホルダ60の径方向における突出部61間の距離は、可動コア50の外径と概ね同一である。これにより、突出部61の端面61aと可動コア50の外周面50aとは摺動部を形成する。突出部61は、可動コア50と対向してホルダ60の軸方向へ伸びて形成されている。第2実施形態の場合、突出部61は周方向へ四つ形成されている。ホルダ60は、図6に示すように周方向において突出部61の相互間に溝部62を有している。これにより、ホルダ60の溝部62を形成する内周面60aと可動コア50の外周面50aとの間には隙間63が形成されている。すなわち、ホルダ60および可動コア50の周方向において、複数の摺動部と隙間63とが形成されている。
【0034】
図7に示すように、隙間63を大きくするにしたがってホルダ60と可動コア50との間に発生する磁気吸引力は小さくなる。そこで、ホルダ60と可動コア50との間に所定の磁気回路を確保するため、隙間63は30μmから200μm程度に設定している。
突出部61の端面61aと可動コア50の外周面50aとが摺動することにより、可動コア50は軸方向への移動が案内される。突出部61は軸方向へ伸びて形成されているため、中心軸に対する可動コア50の傾斜は低減される。
【0035】
通電することによりコイル17が励磁されると、ホルダ60、磁性部材15、磁性部材16、可動コア50および固定コア12は磁気回路を形成する。第1実施形態と同様にホルダ60は薄肉に形成されているため、ホルダ60を経由した磁気回路の短絡は防止される。これにより、磁性部材15と可動コア50とは、ホルダ60を挟んで磁気回路を形成する。その結果、可動コア50と固定コア12との間に磁気回路が形成され、可動コア50と固定コア12との間には磁気吸引力が発生する。したがって、可動コア50は固定コア12へ吸引される。
【0036】
また、上記のようにホルダ60においては磁束が飽和している。そのため、磁気回路は、ホルダ60の突出部61を経由して磁性部材15と可動コア50との間に形成される。図6に示すように、突出部61はホルダ60の周方向へスリット状に形成されている。そのため、ホルダ60と可動コア50との間の接触部分における断面積は小さくなる。これにより、磁性材料からなるホルダ60と可動コア50とが摺動する場合でも、磁束は突出部61において容易に飽和する。その結果、可動コア50の周方向において可動コア50とホルダ60との間に発生する磁気吸引力は小さくなる。
【0037】
第2実施形態では、ホルダ60に可動コア50と摺動する突出部61を形成している。ホルダ60に突出部61を形成することにより、例えばプレス絞り加工などにより同軸度の高いホルダ60を容易に成形することができる。また、突出部61を周方向へスリット状に複数形成することにより、ホルダ60を磁性材料から形成する場合でも、ホルダ60と可動コア50との間に生じる磁気吸引力を低減することができる。
【0038】
なお、第2実施形態では、ホルダ60にスリット状の突出部61を周方向へ4つ形成する例について説明した。しかし、突出部61は周方向へ4つに限らず、二つ以上であれば任意に形成することができる。また、突出部61は、ホルダ60の軸方向へ不連続に形成してもよい。
【0039】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態によるインジェクタを図8に示す。なお、第1実施形態と実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態では、弁部材70は略円柱形状に形成されている。弁部材70は、略球形状の材料を円柱状に打ち抜いて形成されている。これにより、弁部材70は軸方向の端部に球状部71を有する円柱状に形成される。なお、図8に示す第3実施形態では、弁部材70の球状部71と反対側の端部を平坦に成形している。弁部材70は、球状部71にシート部71aを有している。そのため、可動コア30または弁部材70が中心軸に対し傾斜した場合でも、シート部71aは確実に弁座35に当接する。したがって、シート部71aと弁座35との間の弁密度を高めることができる。
また、第3実施形態では、弁部材70は可動コア30に圧入される部分が軸方向へ伸びる円柱状に形成される。したがって、弁部材70を可動コア30に圧入した際の保持力を高めることができる。
【0040】
なお、第3実施形態では、第1実施形態によるインジェクタ10に円柱状の弁部材70を適用する例について説明した。しかし、第3実施形態による弁部材70を第2実施形態によるインジェクタに適用してもよい。
【0041】
以上説明した複数の実施形態では、例えば自動車に適用される軸方向の全長が長いインジェクタに本発明を適用する例について説明した。しかし、例えば二輪車に適用される全長の短いインジェクタに本発明を適用してもよい。また、複数の実施形態では、ガイド部材となるホルダを磁性材料から形成する例について説明した。しかし、ホルダの軸方向の一部に非磁性部を形成し、磁気的な短絡を防止する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態によるインジェクタの要部を拡大した断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるインジェクタを示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるインジェクタの可動コアを示す断面図である。
【図4】図1のIV−IV線で切断した弁部材、可動コアおよびホルダを示す断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるインジェクタの要部を拡大した断面図である。
【図6】図5のVI−VI線で切断した可動コアおよびホルダを示す断面図である。
【図7】可動コアとホルダとの間に形成される隙間と磁気吸引力との関係を示す模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるインジェクタの要部を拡大した断面図である。
【符号の説明】
10 インジェクタ(燃料噴射弁)
12 固定コア
17 コイル
20、60 ホルダ(ガイド部材)
23、63 隙間
30、50 可動コア
31、70 弁部材
34 噴孔
36 燃料通路
37、38 大径部
39 小径部
45 テーパ部(位置決め部)
61 突出部
62 溝部
Claims (10)
- 噴孔からの燃料の噴射を断続する弁部材と、
軸方向において一方の端部に前記弁部材を収容し、前記弁部材とともに軸方向へ往復移動可能な可動コアと、
コイルへの通電によって発生する磁気吸引力により前記可動コアを吸引する固定コアと、
前記可動コアの外周側に配置され、前記可動コアとの間に、周方向へ複数の摺動部、ならびに前記複数の摺動部の間に隙間を形成するガイド部材と、
を備えることを特徴とする燃料噴射弁。 - 前記ガイド部材は、径方向内側に突出して軸方向へ伸び前記可動コアとの間に前記摺動部を形成する突出部、ならびに周方向において前記突出部の間に配置され前記可動コアとの間に前記隙間を形成する溝部を有することを特徴とする請求項1記載の燃料噴射弁。
- 噴孔からの燃料の噴射を断続する弁部材と、
軸方向において一方の端部に前記弁部材を収容し、前記弁部材とともに軸方向へ往復移動可能な可動コアと、
コイルへの通電によって前記可動コアとともに磁気回路を構成し、発生する磁気吸引力により前記可動コアを吸引する固定コアと、
前記可動コアの外周側に配置されているガイド部材とを備え、
前記可動コアは、軸方向において複数の位置で径方向外側へ突出し前記ガイド部材との間に摺動部を形成する大径部、ならびに前記大径部の間において前記ガイド部材との間に隙間部を形成する小径部を有し、
前記可動コアは、前記複数の大径部のうち前記噴孔側に位置する大径部が前記弁部材の外周側を覆っていることを特徴とする燃料噴射弁。 - 前記大径部は、前記可動コアの周方向へ連続して形成されていることを特徴とする請求項3記載の燃料噴射弁。
- 前記弁部材は、軸方向の長さの半分以上が前記可動コアに収容されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の燃料噴射弁。
- 前記弁部材は、弁座に着座可能な球面部を有することを特徴とする請求項5記載の燃料噴射弁。
- 前記弁部材は、略球形状に形成されていることを特徴とする請求項6記載の燃料噴射弁。
- 前記ガイド部材は、薄肉筒状の磁性材料から形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の燃料噴射弁。
- 前記可動コアは、内周側に前記可動コアの前記固定コア側と前記噴孔とを連通する燃料通路を形成していることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の燃料噴射弁。
- 前記可動コアは前記弁部材と当接し前記弁部材の軸方向の位置決めをする位置決め部を有し、前記燃料通路は前記位置決め部の前記固定コア側と前記噴孔とを連通していることを特徴とする請求項9記載の燃料噴射弁。
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