JP3951717B2 - 防振装置及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、防振装置及びその製造方法に係り、特に、加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが一体的に接合されて構成される複合構造の防振装置における耐候性、耐水性等の特性の改良と、そのような改良された防振装置を有利に製造する方法に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、自動車や鉄道車両等においては、剛性部品への振動・衝撃の伝達防止を目的とした各種形態の防振装置が、用いられてきている。そして、そのような防振装置としては、金属材料からなる支持部材にゴムを加硫接着した金属材料・ゴム複合体よりなるものが数多く研究、開発されて、実際に採用されてきているが、最近では、特に自動車用防振装置において、かかる防振装置の軽量化、防錆、製造コストの低減等を目的として、これまでの金属製支持部材に代えて、樹脂材料よりなる樹脂製支持部材を用いた、樹脂・ゴム複合体より構成される防振装置が、多く採用されている。
【0003】
而して、かかる樹脂・ゴム複合体よりなる防振装置において、支持部材を構成する樹脂としては、各種の樹脂材料の中でも、特に耐熱性や強度、加工性等の物性に優れているものが選択され、用いられることとなるが、現在では、ガラス繊維による補強性、加工時の射出成形性及び耐薬品性に優れており、更には生産コストを低く押さえることができる等の特徴から、ポリアミド樹脂の採用が有効とされているのである。
【0004】
しかしながら、ポリアミド樹脂は、水分が存在する状態においては、吸水により、強度等の力学的特性が低下するという問題があり、また、冬期に道路上に散布される融雪剤乃至は凍結防止剤たる塩化カルシウムによっても、その力学的特性が低下するという問題があり、加えて、熱による酸化劣化、或いは紫外線の暴露による強度低下を生ずる等という問題も内在するものであった。特に、自動車のボデー等の金属部品には、防錆処理として、亜鉛メッキや亜鉛含有塗料による塗装が施されることが多いが、そのような処理によって持ち込まれる亜鉛が、水の存在下において、塩化カルシウム(凍結防止剤)と反応して、塩化亜鉛を生成せしめ、また、それが亜鉛イオンとなって、ポリアミド樹脂にアタックする可能性があるのであり、その影響度は、カルシウムイオンよりも大きいことが認められている。そして、そのような金属イオンがポリアミド樹脂中の水素結合に入り込んで結晶構造を崩すことにより、表層にクラックが惹起されるものと考えられている。
【0005】
また、かかる樹脂・ゴム複合体より構成される防振装置が、自動車用としてエンジンルーム内に配される場合にあっては、同じくエンジンルーム内に配されるバッテリーのイレギュラーな取扱い等に基づいて、バッテリー液である硫酸溶液がこぼれて、樹脂・ゴム複合体にかかった場合にあっては、そのような硫酸溶液にてポリアミド樹脂が溶解されて、その耐久性が低下せしめられる等という問題も、内在しているのである。
【0006】
このため、樹脂・ゴム複合体より構成される防振装置であって、樹脂材料としてポリアミド樹脂を採用する場合にあっては、吸水による強度低下を考慮して、ポリアミド樹脂からなる支持部材を厚肉成形するという設計的配慮を行っているのが実状であるが、それが根本的な解決策となるものでないことは勿論、ポリアミド樹脂部材が大型化して、複合体全体の大きさも大きくなるという問題が内在している。
【0007】
また、上記した問題に対処すべく、一般に、かかるポリアミド樹脂にカーボンブラック等を充填せしめて、その耐候性等の向上を図ることが考えられるが、かかる充填材の添加によっては、充分な耐水性や耐凍結防止剤(塩化カルシウム)性等の特性の向上を図ることが出来ず、そのため、ポリアミド樹脂・ゴム複合体より構成される自動車用防振装置にあっては、水分や塩化カルシウム等と接触することが比較的少ない部位においてのみ使用されるに止まり、その用途が著しく限定されているのである。
【0008】
【解決課題】
かかる状況下において、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが一体的に接合されて構成される複合構造の防振装置において、それの少なくともポリアミド成形体の外部に露呈する表面を、紫外線架橋弾性体の所定厚さの層にて被覆せしめることによって、そのような防振装置におけるポリアミド成形体の耐水性、耐候性、耐バッテリー液性、耐凍結防止剤性等の特性が著しく向上せしめられ得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
従って、本発明は、そのような知見に基づいて完成されたものであって、その解決課題とするところは、耐水性、耐候性、耐バッテリー液性、耐凍結防止剤性等の特性が向上せしめられた、加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが一体的に接合されて構成される複合構造の防振装置を提供することにあり、また、本発明は、そのような特性の向上せしめられた、加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが一体的に接合されて構成される複合構造の防振装置を、有利に製造し得る方法を提供することをも、その解決課題としている。
【0010】
【解決手段】
そして、本発明にあっては、上述の如き課題を解決するために、加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが接合されて構成される複合構造の防振装置にして、少なくとも前記ポリアミド成形体の外部に露呈する表面が、紫外線架橋弾性体の所定厚さの層にて被覆されていることを特徴とする防振装置を、その要旨とするものである。
【0011】
すなわち、このような本発明に従う複合構造の防振装置にあっては、加硫ゴム成形体と共に、それを構成する、支持部材としてのポリアミド成形体の外部に露呈する表面を少なくとも含む防振装置外表面が、紫外線架橋弾性体の所定厚さの層にて被覆されているところに、大きな特徴を有しているのであって、これにより、支持部材たるポリアミド成形体が、雨水や付着する水、大気中に存在する水分等、また零れたバッテリー液、更には融雪剤乃至は凍結防止剤たる塩化カルシウムに直接に接触するようなことがなく、それ故に、それら水分や凍結防止剤、バッテリー液等による作用を受けることがないところから、ポリアミド成形体の劣化が効果的に阻止され得て、その力学的特性が低下するという問題が惹起されることはないのであり、更には、熱による酸化劣化、或いは紫外線の暴露による強度低下等という問題も惹起されることがないのである。
【0012】
要するに、本発明に従う防振装置によれば、水分や凍結防止剤(塩化カルシウム)等が存在する状態下において、また熱や紫外線に晒される使用環境下において、長時間使用されても、更にはバッテリーのイレギュラーな取り扱いによって万一バッテリー液がかかっても、そのような防振装置の支持部材たるポリアミド成形体の機械的特性の低下が効果的に防止され得るのであり、以て、防振装置全体の強度が有効に維持され得ることとなるのである。
【0013】
しかも、かかる本発明に従う防振装置によれば、ポリアミド成形体の少なくとも外部に露呈する表面を覆う被覆層が、紫外線の照射によって架橋せしめて得られる紫外線架橋弾性体にて形成されるものであるところから、そのような被覆層の形成に際して、加熱する必要がなく、そのために、加硫ゴム成形体が熱劣化を受ける恐れがないところから、防振装置としての特性の変化が少ない特徴を発揮することとなる。
【0014】
また、この本発明に従う防振装置においては、前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層が、ポリアミド成形体から加硫ゴム成形体に至る外表面を被覆するようになっても、そのような被覆層が弾性特性を有するものであるために、かかる防振装置に振動が加わった場合に、該紫外線架橋弾性体よりなる被覆層部分も、加硫ゴム成形体、ひいては防振装置の動きを阻害することなく、追従して、変形可能であり、これによって、防振装置本来の防振効果を損なうことなく、そして、被覆層自体にひび割れや剥がれ等の問題を惹起することなく、支持部材たるポリアミド成形体の耐水性、耐候性、耐凍結防止剤性、耐バッテリー液性を有利に向上せしめることが出来るという利点も有しているのである。
【0015】
さらに、本発明に従う防振装置にあっては、ポリアミド成形体における少なくとも外部に露呈する表面が紫外線架橋弾性体の所定厚さの層にて被覆されることになるために、ポリアミド成形体の耐衝撃性も向上し、また、跳ね上げられた砂利等の物体の衝突によって惹起されるチッピング現象に対する耐性も、有利に向上せしめられ得るのである。
【0016】
ところで、かくの如き本発明に従う防振装置における好ましい態様の一つによれば、前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層は、前記加硫ゴム成形体と前記ポリアミド成形体との接合界面を覆うように、該ポリアミド成形体の表面から該加硫ゴム成形体の表面に跨って形成されていることが望ましく、これによって、それら成形体の接合界面に水等が侵入して、その接合性に悪影響をもたらすことが、効果的に阻止され得ることとなり、以て信頼性の向上に大きく寄与せしめ得るのである。
【0017】
また、本発明に従う防振装置における他の好ましい態様の一つによれば、前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層は、10μm〜3000μmの膜厚を有していることが望ましい。これは、かかる紫外線架橋弾性体層(被覆層)の膜厚が10μmよりも薄い場合は、ポリアミド成形体上に被覆層を設けても、耐水性、耐候性、耐凍結防止剤性等の特性の向上を有利に図り得ないことに加えて、被覆層をポリアミド成形体上に均一に設けることが非常に困難となるからであり、一方、膜厚が3000μmよりも厚い場合は、防振装置全体の動きが阻害され、かかる防振装置本来の防振性能が発揮されなくなる恐れが生じるからである。
【0018】
さらに、本発明に従う防振装置における望ましい態様の一つによれば、前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層が、(A)未加硫ゴム材料または熱可塑性エラストマー材料、(B)アクリレート系モノマー及び(C)光重合開始剤からなる架橋性組成物を用いて形成された層を紫外線架橋せしめることによって、形成されており、これによって、そのような被覆層が、ポリアミド成形体の少なくとも外部に露呈する表面上に、有利に形成されることとなる。
【0019】
なお、それら(A)成分から(C)成分の配合割合としては、一般に、前記(A)成分と前記(B)成分とが、重量で、(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40の割合において用いられ、且つそれら(A)成分と(B)成分の合計量の100重量部に対して、前記(C)成分が1〜5重量部の割合において用いられていることが、望ましい。そして、このような配合割合の採用によって、ゴム材料または熱可塑性エラストマー材料の有効な改質効果が実現され、またそれら3成分の混練も良好となり、被覆層の耐熱性、耐バッテリー液性等の特性の均一な向上を有利に図り得ることとなるのである。
【0020】
また、本発明に従う防振装置の別の望ましい態様の一つによれば、前記架橋性組成物は、前記(A)〜(C)成分に加えて、更に、(D)レゾルシノール系化合物及び(E)メラミン樹脂を含有している。そして、それら2つの成分(D)及び(E)を併用することにより、レゾルシノール系化合物(D成分)が主として接着剤として作用すると共に、メラミン樹脂(E成分)が主に接着助剤として作用し、ポリアミド成形体と被覆層との間の接着がより強固となるために、そのような被覆層の界面からの剥がれや界面への水分の侵入が効果的に防止乃至は抑制され得るのであり、また、そのような接着性の向上により、被覆層に傷等が付いても、水分や薬品の界面からの侵入を効果的に阻止し得て、信頼性の向上に大きく寄与せしめ得るのである。
【0021】
さらに、そのような(D)成分と(E)成分は、重量で、(D)成分/(E)成分=1/0.5〜1/2の割合において用いられることが望ましく、これによって、良好な接着性を有利に実現せしめ得るのである。そして、また、かかる(D)成分は、有利には、前記(A)成分と(B)成分の合計量の100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合において用いられ、これによって、有効な接着性が発揮せしめられ得ることとなる。
【0022】
ここにおいて、本発明は、また、上述の如き構成の防振装置を製造する方法として、(a)前記加硫ゴム成形体と前記ポリアミド成形体の一体的な接合物を準備する工程と、(b)前記紫外線架橋弾性体を与える架橋性組成物を準備する工程と、(c)前記接合物を構成するポリアミド成形体の少なくとも外部に露呈する表面に、該架橋性組成物からなる未架橋被覆層を所定厚さにおいて形成せしめる工程と、(d)かかる形成された未架橋被覆層に対して、紫外線照射を行ない、架橋せしめることにより、前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層と為す工程とを、含むことを特徴とする防振装置の製造方法をも、その要旨とするものである。そして、これにより、防振装置を構成するポリアミド成形体の少なくとも外部に露呈する表面上に、紫外線架橋弾性体からなる被覆層が、効果的に形成せしめられ得て、以て、ポリアミド成形体の耐水性、耐候性、耐凍結防止剤性、耐バッテリー液性等の特性が有利に向上せしめられ得ることとなる。
【0023】
なお、かくの如き本発明に従う防振装置の製造方法の望ましい態様の一つによれば、前記未架橋被覆層が、前記架橋性組成物の射出成形操作によって、前記接合物の表面上に所定厚さで形成されることとなり、また、他の望ましい態様の一つによれば、前記未架橋被覆層が、前記架橋性組成物の溶液のコーティング操作によって、前記接合物の表面上に所定厚さで形成されることとなる。このような2つの手法の何れかを採用することによって、目的とする未架橋被覆層が、少なくともポリアミド成形体の外表面上に有利に形成せしめられ得るのである。
【0024】
【発明の実施の形態】
ところで、図1には、本発明が適用される防振装置の一種である自動車用エンジンマウントの構成が、横断面形態において、概略的に示されているが、そこにおいて、エンジンマウント2は、ポリアミド成形体たるガラス繊維強化ポリアミド樹脂成形品にて構成されるブラケット4と、取付軸としての内筒金具6とが、加硫ゴム成形体たるゴム弾性体8によって弾性的に一体的に連結されてなる構造とされている。そして、このエンジンマウント2は、そのブラケット4が自動車のボディー(図示せず)に取り付けられる一方、内筒金具6が自動車のパワーユニット(図示せず)に取り付けられることにより、それらボディーとパワーユニットとの間に介装されて、パワーユニットをボディーに対して防振支持せしめるようになっているのである。
【0025】
なお、かかるエンジンマウント2においてブラケット4を構成する成形品を与えるポリアミド樹脂としては、アミド結合(−CONH−)を繰り返し単位に持つ公知の各種ポリマーの中から、要求特性に応じて、適宜に選定されて、単独で若しくはその複数が組み合わされて用いられることとなる。そして、そのようなポリアミド樹脂として採用されるポリマーとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−又は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−又はp−キシリレンジアミン等の如き脂肪族、脂環族又は芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の如き脂肪族、脂環族又は芳香族ジカルボン酸に代表される二塩基酸との重縮合により得られるポリマー;6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸の如きアミノカルボン酸の重縮合により得られる結晶性乃至は非結晶性ポリマー;ε−カプロラクタム、ω−ドデカラクタム等のラクタムの開環重合により得られるポリマー;共重合ポリアミド等が挙げられ、また、その具体的なものとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12や、芳香族ナイロン、非晶質ナイロン等を例示することが出来る。また、この種のポリアミドに対して、それ以外の公知の各種樹脂材料を配合せしめることも可能であり、更に、そのようなポリアミドには、従来よりポリアミドの添加剤として知られているガラス繊維、カーボン繊維、ウイスカー、粘土鉱物等の補強剤、更には老化防止剤等を、適宜に配合することも可能である。なお、上記の補強剤は、ポリアミドとの接着、或いは親和性を高めるためにカップリング処理等の表面処理を行ってもよい。
【0026】
また、加硫ゴム成形体たるゴム弾性体8を形成するゴム材料としても、公知の各種のゴム材料の中から、適宜に選択されて、用いられるのであって、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル変性NBR、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、マレイン酸変性EPM若しくはEPDM、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化IIR、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム等が、単独で若しくは複数を組み合わせて用いられることとなる。更に、このゴム材料を加硫する加硫剤についても、ゴム材料に応じて、例えば、硫黄、アルキルフェノール樹脂等の樹脂、酸化亜鉛等の金属酸化物、ヘキサメチレンジアミンカルバメート等のポリアミン類などが用いられ、更に、必要に応じて、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等も、従来と同様に配合されることとなる。
【0027】
そして、本発明にあっては、このようなブラケット4とゴム弾性体8の一体構造よりなるエンジンマウント2において、その少なくともブラケット4の外表面に対して、ここでは、図2に部分的に示される如く、該エンジンマウント2の全外表面、具体的にはブラケット4とゴム弾性体8のそれぞれの外表面に、所定の紫外線架橋弾性体よりなる被覆層20が、所定厚さにおいて形成されているのである。
【0028】
なお、そのような本発明に従うエンジンマウント2を得るには、先ず、ポリアミド樹脂成形品よりなるブラケット4と鉄等の金属材質の内筒金具6とが、加硫ゴム成形体たるゴム弾性体8により弾性的に接合されて、一体構造をなす複合体(一体的な接合物)10が、準備されることとなる。
【0029】
かかる複合体10は、従来より公知の手法に従って、適宜に形成され得るものであって、例えば、先ず、その内部にゴム弾性体8と内筒金具6が収容可能な空隙を有するブラケット4を射出成形操作等にて形成し、次いで、この得られたブラケット4の空隙面や内筒金具6の外周面に適当な接着剤を塗布せしめた後、かかる内筒金具6を内部に配置せしめた状態下で、ゴム弾性体8を与える未加硫のゴム組成物を、それらブラケット4と内筒金具6との間に導入して加硫成形せしめると共に、それらを加硫接着して、一体化せしめる方法や、或いは、予め未加硫ゴム組成物の加硫成形により、内筒金具6とゴム弾性体8よりなる一体物を形成した後、かかる一体物においてブラケット4と接着することとなる表面に接着剤を塗布せしめ、更にその塗布面上において、ポリアミド樹脂を成形せしめて、ブラケット4を形成すると同時に、その形成されたブラケット4とゴム弾性体8とを接着、一体化せしめる方法などを採用し、形成されることとなる。
【0030】
次いで、このようにして得られた複合体10を用い、その少なくともブラケット4の外表面に、紫外線架橋弾性体の所定厚さの層からなる被覆層20が形成せしめられ、以て目的とするエンジンマウント2とされるのである。なお、そのような被覆層20を形成せしめるに際しては、従来より公知の如何なる方法をも採用し得るのであるが、特に、作業効率の観点から、所定の紫外線架橋弾性体を与える架橋性組成物からなる未架橋被覆層が、複合体10を構成するブラケット4の少なくとも外部に露呈する表面上に、かかる架橋性組成物の射出成形操作によって所定厚さで形成せしめる方法や、そのような架橋性組成物の溶液のコーティング操作によって、複合体10を構成するブラケット4の少なくとも外部に露呈する表面に所定厚さで形成せしめる手法が有利に採用されることとなる。
【0031】
ここで、上述の如くしてブラケット4上に設けられた、紫外線架橋弾性体よりなる被覆層20の厚さとしては、特に制限されるものではないが、一般に10μm〜3000μm、好ましくは20μm〜1000μmであることが望ましい。けだし、被覆層20の厚さが10μmよりも薄くなると、ブラケット4上に被覆層20を設けても、ブラケット4の耐水性、耐候性、耐凍結防止剤性、耐硫酸性(耐バッテリー液性)等の特性の有効な向上が図られ難いことに加えて、被覆層20を、ブラケット4上に均一に設けることが非常に困難となるからであり、一方、その厚さが3000μmよりも厚い場合は、特にそのような被覆層20がゴム弾性体8の外表面にまで形成されていると、防振装置全体の動きが阻害され、かかる防振装置本来の防振性能が発揮され難くなる恐れがあるからである。
【0032】
また、上述の如き被覆層20を構成する紫外線架橋弾性体を与える材料としては、公知の各種のものが用いられ得るが、その中でも、ゴムまたは熱可塑性エラストマーが有利に用いられることとなる。なお、かかるゴム材料としては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル変性NBR、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、マレイン酸変性EPM若しくはEPDM、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化IIR、塩素化ポリエチレン(CPE)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)等が、それ単独で若しくはその複数を組み合わせて用いられるのである。また、熱可塑性エラストマー(TPE)材料としては、ポリスチレン−ビニルポリイソプレン−ポリスチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)や、かかるSBSを水素添加したSEBS等のポリスチレン系TPEの他、ポリオレフィン系TPE、ポリジエン系TPE、塩化ビニル系TPE、ポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE、ポリアミド系TPE、フッ素系TPE、塩素化ポリエチレン、トランスポリイソプレン、1,4−syn−ポリブタジエン等が、適宜に選択されて、使用される。
【0033】
そして、被覆層20は、上述の如き紫外線架橋弾性体を与える所定の材料を用いて構成される架橋性組成物を用いて形成されることとなるが、上記の望ましい材料として、ゴム又は熱可塑性エラストマーを採用した場合にあっては、架橋性組成物を、(A)未加硫のゴム材料または熱可塑性エラストマー材料、(B)アクリレート系モノマー、及び(C)光重合開始剤にて構成し、この架橋性組成物にて、未架橋被覆層(20)を、複合体10を構成するブラケット4の少なくとも外部に露呈する表面上に所定厚さにおいて形成せしめ、更にその後、そのような未架橋被覆層(20)に対して紫外線照射を行い、それを構成する架橋性組成物を架橋せしめることにより、目的とする紫外線架橋弾性体からなる被覆層20を実現せしめるのである。
【0034】
なお、かかる被覆層20の形成のために、前述せるように架橋性組成物の射出成形操作によって未架橋被覆層(20)を形成せしめる場合にあっては、所定の成形キャビティ内に、ブラケット4と内筒金具6とをゴム弾性体8にて一体的に連結せしめてなる構造の複合体10(接合物)を配置して、その周りに所定の架橋性組成物を射出せしめる、所謂インサート成形手法が採用されることとなる。また、前述せる如き架橋性組成物の溶液を塗布する方法を採用する場合にあっては、所定の架橋性組成物を適当な溶媒に溶解して、塗布溶液が調製されることとなるが、そこで用いられる溶媒としては、所定の未加硫ゴム材料はまた熱可塑性エラストマー材料を容易に溶解し得る公知の各種の溶媒、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、ヘキサン、キシレン等が適宜に用いられることとなる。
【0035】
ところで、前述せる架橋性組成物を構成するアクリレート系モノマー(B成分)は、ここでは、アクリレート(アクリル酸エステル)モノマーの他に、メタクリレート(メタクリル酸エステル)モノマーをも含む言葉として用いられているものであるが、そのようなアクリレート系モノマーは、共架橋剤乃至は架橋助剤として機能し、紫外線反応効率を高めて、ゴム材料や熱可塑性エラストマー材料に有効な架橋構造または相互侵入網目等の構造を導入せしめ、形成される被覆層20の物性を向上せしめるものであって、単官能や多官能の公知のモノマーが、適宜に用いられることとなる。尤も、そのようなモノマーにおいて、官能基数が多いもの程、一般に、硬化速度が早く、少量で、改質効果が得られるところから、本発明においても、多官能モノマーが好適に用いられることとなる。また、単官能モノマーを組み合わせて、用いることも、有効である。
【0036】
なお、そのようなアクリレート系モノマーのうち、単官能モノマーとしては、例えば、下記の一般式(1)や一般式(2)にて表されるものを、挙げることが出来る。
【0037】
【化1】
Figure 0003951717
【0038】
【化2】
Figure 0003951717
【0039】
なお、上記一般式(1)で表される単官能モノマーとしては、具体的には、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレート等があり、また、上記の一般式(2)で表される単官能モノマーとしては、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート等を挙げることが出来る。
【0040】
また、アクリレート系モノマーとして用いられる多官能モノマーとしては、例えば、下記の一般式(3)〜(7)にて表される各種のものを、挙げることが出来る。
【0041】
【化3】
Figure 0003951717
【0042】
【化4】
Figure 0003951717
【0043】
【化5】
Figure 0003951717
【0044】
【化6】
Figure 0003951717
【0045】
【化7】
Figure 0003951717
【0046】
そして、それら一般式にて表される多官能モノマーのうち、前記一般式(3)で表される多官能モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等があり、また、前記一般式(4)にて表される多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等がある。更に、前記一般式(5)で表される多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等があり、更にまた、前記一般式(6)で表される多官能モノマーとしては、ペンタエルスリトールトリアクリレート等があり、加えて、前記一般式(7)で表される多官能モノマーとしては、具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることが出来る。
【0047】
また、かかるアクリレート系モノマー(B成分)と共に、未加硫ゴム材料又は熱可塑性エラストマー材料からなる(A)成分に配合せしめられる光重合開始剤(C成分)は、紫外線(UV)照射により開裂し、ラジカルを発生して、そのようなアクリレート系モノマー(B成分)を介した(A)成分の架橋を実現するものであって、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル(ジベンゾイル)、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等の、UV照射によってラジカルを発生する公知の各種の化合物の中から適宜に選択されて、用いられることとなる。なお、これら光重合開始剤(C成分)に係る化合物が、単独で、若しくは2種以上組み合わせて、用いられ得るものであることは、従来と同様である。
【0048】
そして、架橋性組成物を構成する、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を配合せしめるに際しては、(A)成分と(B)成分とは、重量で、一般に、(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40の割合において、望ましくは95/5〜70/30の割合において用いられることとなるのであり、また、それら(A)成分と(B)成分の合計量の100重量部に対して、前記(C)成分が1〜5重量部の割合において、望ましくは1〜3重量部の割合において用いられることとなるのである。なお、(B)成分の配合割合が少なくなり、(A)成分/(B)成分の値が95/5よりも大きくなると、(A)成分の改質効果が少なく、逆に60/40よりも小さくなって、(B)成分の配合量が多くなると、柔軟性が損なわれるようになる。また、光重合開始剤(C成分)の配合割合に関しても、その使用量が前記1重量部未満となると、架橋効率が悪くなる問題があり、逆に5重量部を超えるようになると、組成物の安定性が低下する等の問題を惹起するようになる。
【0049】
さらに、上述せる如き架橋性組成物には、被覆層20の複合体10に対する接着性を向上せしめるために、上記(A)〜(C)成分に加えて、更に、レゾルシノール系化合物(D成分)及びメラミン樹脂(E成分)が、好適に配合せしめられることとなる。
【0050】
なお、そのようなレゾルシノール系化合物(D成分)としては、主に、接着剤として作用するものであれば、特に制限はなく、例えば、変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等を挙げることが出来る。そして、それらは、単独で若しくは2種以上組み合わせて用いられ、また、それらの中でも、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性等の点から、変性レゾルシノール樹脂が、好適に用いられることとなる。
【0051】
また、その好適な変性レゾルシノール樹脂としては、例えば、下記の一般式(8)〜(10)で表されるものを挙げることが出来るが、特に、その中でも一般式(8)にて表されるものが好適に用いられることとなる。
【0052】
【化8】
Figure 0003951717
【0053】
【化9】
Figure 0003951717
【0054】
【化10】
Figure 0003951717
【0055】
そして、かかるレゾルシノール系化合物(D成分)の配合割合としては、前記した(A)成分と(B)成分との合計量の100重量部に対して、一般に0.1〜10重量部の範囲が好ましく、特に0.5〜5重量部の範囲が好ましい。けだし、(D)成分の使用量が上記の0.1重量部未満の場合には、複合体10のブラケット4との接着性の向上効果に劣り、逆に10重量部を超えるようになると、接着性が飽和し、接着力が安定するため、それ以上の使用量としても、コストアップにつながるのみで、それ以上の効果を期待することが困難となるからである。
【0056】
さらに、このレゾルシノール系化合物(D成分)と共に用いられるメラミン樹脂(E成分)としては、主に接着助剤として作用するものであれば、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物、ヘキサメチレンテトラミン等を挙げることが出来る。そして、それらは、単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いられることとなるが、それらの中でも、低揮発性、低吸湿性、ゴムとの相溶性等の点から、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物が好適に用いられることとなる。また、このホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物としては、下記の一般式(11)にて表されるものが、好適に用いられる。特に、かかる一般式(11)で表される化合物の混合物が有利に用いられ、そこでは、n=1の化合物が43〜44重量%、n=2の化合物が27〜30重量%、n=3の化合物が26〜30重量%の割合となる混合物が、好ましく用いられるのである。
【0057】
【化11】
Figure 0003951717
【0058】
ところで、前記したレゾルシノール系化合物(D成分)とメラミン樹脂(E成分)との配合比は、重量で、一般に(D)成分/(E)成分=1/0.5〜1/2の範囲が好ましく、特に好ましくは(D)成分/(E)成分=1/0.77〜1/1.5である。かかる配合割合において、(E)成分の使用量が、(D)成分の1に対して0.5未満となると、被覆層20の引張強さや伸び等が悪化する傾向が認められ、逆に、(E)成分の重量比が2を越えるようになると、接着性が飽和し、接着力が安定するため、それ以上(E)成分の割合を多くしても、コストアップにつながるのみで、それ以上の効果を期待することが困難となるからである。
【0059】
なお、上記せる如き架橋性組成物には、上記の各成分に加えて、難燃剤、プロセスオイル等の可塑剤、加工助剤、シランカップリング剤等の架橋促進剤等を必要に応じて適宜配合しても何等差し支えなく、また、補強剤としても機能するシリカを用い、それを配合して、アクリレート系モノマー(B成分)を吸着させることにより、組成物に剪断をかけ易くして、混練時間を短縮したり、混練性を向上せしめるようにすることが望ましい。そして、そのようなシリカの配合割合としては、前記(A)成分と(B)成分の合計量の100重量部に対して、一般に5〜60重量部の範囲、好ましくは10〜50重量部の範囲において、配合せしめられることとなる。
【0060】
そして、かかる架橋性組成物は、上記した(A)〜(C)成分、及び必要に応じてその他の成分を配合し、これをロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製された後、前記した射出成形操作によって、或いは、それら各成分を所定の溶媒に溶解せしめて、架橋性組成物の溶液を調製した後、そのコーティング操作によって、複合体10の所定部位の表面に未架橋被覆層(20)が形成せしめられ、更に、その後、適当な紫外線ランプによる紫外線の照射により、架橋反応が惹起され、以てゴム材料または熱可塑性エラストマー材料に架橋構造が導入されて、目的とする紫外線架橋弾性体からなる被覆層20が形成せしめられるのである。なお、そのような紫外線架橋を行うための紫外線の照射条件としては、被覆層20の形成のために用いられる各成分の種類や割合等によっても異なるが、紫外線照射量としては、通常1000〜20000mJ/cm2の範囲であり、好ましくは5000〜15000mJ/cm2の範囲が有利に採用されることとなる。
【0061】
従って、かくの如くして得られた防振装置としてのエンジンマウント2にあっては、ポリアミド樹脂成形品よりなるブラケット4の外部に露呈する表面が、紫外線架橋弾性体の所定厚さの層20にて被覆されているために、そのようなブラケット4を構成するポリアミド樹脂が、雨水や付着する水、大気中に存在する水分等、更には凍結防止剤、バッテリー液等に直接に接触するようなことがなく、従って、それら水分等による作用を受けることがないところから、水分等が存在する状態下において長時間使用しても、ポリアミド樹脂からなるブラケット4の機械的特性の低下が効果的に防止され得るのであり、以て、かかるエンジンマウント2全体の強度が有効に維持されることとなるのである。
【0062】
また、図2に例示の具体例の如く、被覆層20をブラケット4の外表面のみならず、ゴム弾性体8の外表面上にも設けるようにすることによって、ゴム弾性体8の耐候性や耐熱老化性の向上を、被覆層20への老化防止剤の配合によって、達成せしめ得るところから、ゴム弾性体8への老化防止剤やワックス等の添加剤の減量が可能となり、以て防振特性の向上や低コスト化が有利に実現され得、また、配合自由度も向上せしめ得るのである。
【0063】
加えて、例示の具体例においては、図3にも明らかにされているように、ブラケット4及びゴム弾性体8の全ての外表面が被覆層20にて覆われており、従って、かかる被覆層20がブラケット4の外表面からゴム弾性体8に跨って形成されているところから、ブラケット4とゴム弾性体8との接合界面が、被覆層20にて覆われることとなり、そのため、そのような界面に対する前記した水分等による作用や侵入を効果的に防止せしめ得ることとなるのであり、以て、界面剥離の有効な防止を図ることが出来るのである。
【0064】
なお、本発明が適用される防振装置としては、振動の遮断乃至は減衰に寄与するゴム弾性体としての加硫ゴム成形体と、それを支持乃至は保持する部材としてのポリアミド成形体とが接合されてなる、複合構造を呈する防振装置であれば、公知のあらゆる構造の防振装置も対象とされ得るものであって、図1に示される如き形状のエンジンマウントに限定されるものでは決してなく、例えば、自動車用防振ゴムの複合構成部材、具体的にはボデーマウント、キャブマウント、メンバーマウント、ストラットバークッション、センターベアリングサポート、トーショナルダンパー、ステアリングラバーカップリング、テンションロッドブッシュ、ブッシュ、バウンドストッパー、FFエンジンロールストッパー、マフラーハンガー等の各種部材を対象とすることが出来る。
【0065】
【実施例】
以下に、本発明のいくつかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0066】
先ず、ポリアミド樹脂として、ナイロン66にガラス繊維を45重量%混合したポリアミド樹脂(東レ株式会社製、CM3001G−45)に、更にカーボンブラックを0.2重量%添加せしめてなるもの(PA66)を準備し、そして、そのようなポリアミド樹脂を用いて、図1に示される如き形状の、加硫ゴム成形体(ゴム弾性体8)とポリアミド成形体(ブラケット4)とを含んで構成される複合構造の防振装置(エンジンマウント2)を作製した。具体的には、内筒金具6の存在下において、ゴム弾性体8を加硫成形せしめて、内筒金具6とゴム弾性体8よりなる一体物を得た後、そのような一体物のブラケット4との接着面に接着剤を塗布して、成形キャビティ内に配置せしめ、その後、上記のポリアミド樹脂を射出成形することにより、ブラケット4を形成せしめて、それらブラケット4とゴム弾性体8とが一体的に接着されてなる複合体10を得た。
【0067】
また、ポリアミド樹脂として、上記のPA66に代えて、ナイロン6Tにガラス繊維を50重量%の割合で混合した芳香族ナイロン(三井化学株式会社製、アーレンA350)にカーボンブラックを0.2重量%添加せしめてなるもの(PA6T)、又はナイロン9Tにガラス繊維を50重量%の割合で混合した芳香族ナイロン(株式会社クラレ製、ジェネスタG1500NA)にカーボンブラックを0.2重量%の割合で添加せしめてなるもの(PA9T)を用い、上記と同様にして、ブラケット4を形成せしめて、目的とする複合体10を得た。
【0068】
一方、下記表1に示される如き配合組成において、3種の架橋性組成物▲1▼〜▲3▼の混練物乃至は塗布液を調製した。なお、下記表1において、ゴム材料として、EPDM(住友化学株式会社製エスプレン505)を用い、また、熱可塑性エラストマーとして、1,4−syn−PB(ポリブタジエン)(ジェイエスアール株式会社製RB820)又はビニルSIS(株式会社クラレ製ハイブラーVS−1)を用い、更に、アクリレート系モノマーとしては、TMPTMA(トリメチロールプロパントリメタクリレート)若しくはEGDMA(エチレングリコールジメタクリレート)を用いた。また、接着付与剤として、レゾルシノール系化合物(住友化学工業株式会社製スミカノール620)及びメラミン樹脂(住友化学工業株式会社製スミカノール507A)を用いた。更に、光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、そして溶媒としてトルエンを用いた。
【0069】
【表1】
Figure 0003951717
【0070】
そして、架橋性組成物▲1▼及び▲2▼の場合にあっては、それぞれ、ニーダーで混練した後、ロールでシーティングを行い、その後、前記準備された複合体10を金型にセットして、それぞれの架橋性組成物▲1▼,▲2▼の射出成形することにより、1mm厚さの未架橋被覆層(20)をブラケット4及びゴム弾性体8のそれぞれの外表面に形成せしめた。また、架橋性組成物▲3▼の場合にあっては、トルエン溶媒にTPE及びアクリレート系モノマーを溶解させて塗布液とした後、前記複合体10のディッピングを行い、そして乾燥することにより、50μmの厚さのコーティング層である未架橋被覆層(20)を形成せしめた。
【0071】
次いで、かかる未架橋被覆層(20)が形成されてなる5種の複合体10に対して、超高圧水銀灯(株式会社オーク製作所製ORC−HMW532D)を用いて、5000J/cm2 紫外線照射を行い、それぞれの複合体10上に形成した未架橋被覆層(20)の架橋反応を行い、紫外線架橋弾性体からなる被覆層20を形成せしめることにより、目的とするエンジンマウント2を作製した。
【0072】
かくして得られた外表面が紫外線架橋弾性体からなる被覆層20にて覆われてなる5種のエンジンマウントについて、それぞれ、以下の破壊強度試験、耐疲労試験、耐硫酸性(耐バッテリー液性)試験を行い、それらの結果を、下記表2に併せ示した。また、比較のために、上記した被覆層20が設けられていない裸の複合体10からなるエンジンマウントの3種(ブラケット4の材質が異なるもの)についても、それぞれの試験を行い、それらの結果を、下記表2に併せ示した。
【0073】
[水中浸漬後の破壊強度試験]
先ず、前処理として、40℃の温水中に、各エンジンマウント2を1000時間、浸漬せしめた後、温水中より取り出し、常温まで自然冷却した。そして、かかる前処理の施されたエンジンマウント2を、そのブラケット4において治具に固定する一方、金属の丸棒を内筒金具6内に挿入し、その状態下において、丸棒を図において上方向に20mm/分の速度にて、エンジンマウント2が破壊されるまで引張り、その破壊時の応力を測定して、破壊強度とした。なお、かかる破壊強度の測定に際しては、常温の環境下が採用された。
【0074】
[サンシャインウエザオメータ促進試験後の破壊強度測定試験]
先ず、前処理として、ASTM−D2565に準拠したサンシャインウエザ・オ・メータ促進試験を施した。なお、この試験における各種条件は、キセノンランプボロシリケートフィルタの照射強度:0.35W/m2 (340nm)、ブラックパネル温度:63℃、降雨サイクル:18分/120分照射、試験時間:1000時間であった。そして、かかる前処理の後のエンジンマウント2について、前述した水中浸漬後の破壊強度測定試験の場合と同様の方法により、破壊強度を測定した。
【0075】
[耐硫酸性試験]
それぞれのエンジンマウント2のブラケット4部位に、バッテリー液(硫酸)を滴下し、次いで100℃×1時間の熱処理を施した後において、その滴下部分を目視観察して、その表面状態を評価した。
【0076】
【表2】
Figure 0003951717
【0077】
かかる表2に示されたそれぞれの試験結果からも明らかなように、ゴム材料または熱可塑性エラストマー材料を用いて得られた、紫外線架橋弾性体からなる被覆層20が設けられていない比較例のエンジンマウントに比べて、そのような被覆層20が外表面に設けられてなる本発明例に係るエンジンマウント(架橋性組成物▲1▼、▲2▼、または▲3▼を用いて被覆層を形成したもの)の方が、水中浸漬後の破壊強度及びサンシャインウエザオメータ促進試験後の破壊強度において、優れた値を示しているのであり、また、耐硫酸性においても良好であることが認められるのである。
【0078】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に従う、加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが一体的に接合されて構成される複合構造の防振装置にあっては、少なくともポリアミド成形体の外部に露呈する表面に、所定厚さの被覆層が、紫外線架橋弾性体を用いて形成されているところから、そのような被覆層の形成に加熱操作が必要ではなく、そのために、加硫ゴム成形体の物性に対する悪影響の恐れが効果的に回避され得ると共に、そのような被覆層の存在によって、ポリアミド成形体が水分等による作用を受けることがなく、それによって、その耐水性、耐候性、耐凍結防止剤性、耐バッテリー液性等の特性が、従来の防振装置に比して、格段に向上せしめられ得るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用される防振装置の一つであるエンジンマウントの構成を示す断面説明図である。
【図2】図1のエンジンマウントにおいて、本発明に従う被覆層が形成された一例を示す、図1のA部を拡大して示す説明図である。
【図3】図2におけるB−B断面を示す説明図である。
【符号の説明】
2 エンジンマウント
4 ブラケット
6 内筒金具
8 ゴム弾性体
10 複合体
20 被覆層

Claims (11)

  1. 加硫ゴム成形体とポリアミド成形体とが接合されて構成される複合構造の防振装置にして、少なくとも前記ポリアミド成形体の外部に露呈する表面が、紫外線架橋弾性体の所定厚さの層にて被覆されていることを特徴とする防振装置。
  2. 前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層が、前記加硫ゴム成形体と前記ポリアミド成形体との接合界面を覆うように、該ポリアミド成形体の表面から該加硫ゴム成形体の表面に跨って形成されている請求項1に記載の防振装置。
  3. 前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層が、10μm〜3000μmの厚さにおいて形成されている請求項1又は請求項2に記載の防振装置。
  4. 前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層が、(A)未加硫ゴム材料または熱可塑性エラストマー材料、(B)アクリレート系モノマー、及び(C)光重合開始剤からなる架橋性組成物を用いて形成された層を紫外線架橋せしめることによって、形成されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の防振装置。
  5. 前記(A)成分と前記(B)成分とが、重量で、(A)成分/(B)成分=95/5〜60/40の割合において用いられ、且つそれら(A)成分と(B)成分の合計量の100重量部に対して、前記(C)成分が1〜5重量部の割合において用いられている請求項4に記載の防振装置。
  6. 前記架橋性組成物が、前記(A)〜(C)成分に加えて、更に、(D)レゾルシノール系化合物及び(E)メラミン樹脂を含有している請求項4又は請求項5に記載の防振装置。
  7. 前記(D)成分と前記(E)成分とが、重量で、(D)成分/(E)成分=1/0.5〜1/2の割合において用いられる請求項6に記載の防振装置。
  8. 前記(D)成分が、前記(A)成分と前記(B)成分の合計量の100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合において用いられる請求項6又は請求項7に記載の防振装置。
  9. 請求項1乃至請求項8の何れかに記載の防振装置の製造方法にして、
    前記加硫ゴム成形体と前記ポリアミド成形体の一体的な接合物を準備する工程と、
    前記紫外線架橋弾性体を与える架橋性組成物を準備する工程と、
    前記接合物を構成するポリアミド成形体の少なくとも外部に露呈する表面に、該架橋性組成物からなる未架橋被覆層を所定厚さにおいて形成せしめる工程と、
    かかる形成された未架橋被覆層に対して、紫外線照射を行ない、架橋せしめることにより、前記紫外線架橋弾性体からなる被覆層と為す工程とを、
    含むことを特徴とする防振装置の製造方法。
  10. 前記未架橋被覆層が、前記架橋性組成物の射出成形操作によって、前記接合物の表面上に所定厚さで形成される請求項9に記載の防振装置の製造方法。
  11. 前記未架橋被覆層が、前記架橋性組成物の溶液のコーティング操作によって、前記接合物の表面上に所定厚さで形成される請求項9に記載の防振装置の製造方法。
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