JP3951667B2 - 化粧シートとその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、合成樹脂製、望ましくは、ポリエステル系樹脂製の化粧シートとその製造方法、特に、エンボスによる凹凸模様を有する化粧シートとその製造方法に関するものである。本発明の化粧シートは、木質や金属等の基材に貼って、壁紙等の内装材、家具、家電製品、キッチン、或いは洗面化粧台等の家具又は建具の表面化粧材等として使用することができる。本発明の化粧シートは、塩化ビニル製とすることも可能である。
【0002】
【従来の技術】
絵柄を有する樹脂製の化粧シートとしては、一般に、塩化ビニル樹脂が用いられるが、この塩化ビニル製の化粧シートを製造するには、表面に模様を刻んだエンボスロールと抑圧ロールの間に塩化ビニルシートを通して模様を付けるエンボス加工や、塩化ビニルシート表面に直接に印刷する方法、あるいは模様を印刷したフィルムを塩化ビニルシート表面にラミネートする方法などが利用されていた。また、エンボス模様を、透明な表面層を通して観察する中間エンボスタイプの樹脂製化粧シートも存在する。さらに、透明な表面層を通して光輝性インキ層や光輝性シートによる反射層が観察される樹脂製化粧シートも存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来のエンボスによる凹凸模様を有する樹脂製の化粧シートは、一般に、エンボス模様が木目の照りを表現するために用いられているが、単調であり、立体感に欠けるという難点があった。また、透明な表面層を通して上記のような反射層が観察される樹脂製化粧シートでは、シートの全面に反射層が形成されているため、深みに欠けるという難点があった。
【0004】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、表面側から観察する時に、内部の中間エンボスが十分立体的に、且つ光学的に微妙に変化するように観察される、立体感と深みに富む表現を可能とした樹脂性の化粧シートとその製造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
【0006】
本発明の化粧シートDの基本構造は、図1に示すように、非晶質または低晶質樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材層1と、該基材層1の表面側に形成され、少なくともその一部が光輝性インキ2Aにより形成された絵柄印刷模様2と、該印刷模様2上に積層形成される厚さ略30〜略200μmの透明な樹脂材料よりなり、表面には該厚さの略0.5〜略1.5倍の最大深さを有するエンボスによる凹凸模様3Aが形成された透明層3と、該透明層3のエンボス凹凸模様3A上に、裏面側に形成された厚さ略2〜略15μmの塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、塩酢ビという)バインダーよりなる透明インキ層4を介して接合される平滑透明な樹脂材料からなる表面層6と、が少なくとも積層形成され、前記表面層6の表面側から、前記エンボス凹凸模様3Aを透して前記印刷模様2の光輝性インキ2Aによる反射光が観察されることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の化粧シートDは、図1に示すように、非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材層1と、該基材層1の表面側に形成され、少なくともその一部が光輝性インキ2Aにより形成された絵柄印刷模様2と、該印刷模様2上に積層形成される厚さ略30〜略200μmの透明な非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料よりなり、表面には該厚さの略0.5〜略1.5倍の最大深さを有するエンボスによる凹凸模様3Aが形成された透明層3と、該透明層3のエンボス凹凸模様3A上に、裏面側に形成された厚さ略2〜略15μmの塩酢ビバインダーよりなる透明インキ層4を介して接合される平滑透明な晶質ポリエステル系樹脂の二軸延伸フイルムからなる表面層6と、が少なくとも積層形成され、前記表面層6の表面側から、前記エンボス凹凸模様3Aを透して前記印刷模様の光輝性インキ2Aによる反射光が観察されることを特徴としている。
【0008】
上記基材層1の厚さは略50〜略200μm、好ましくは略60〜略150μmとすることが良い。基材層1の厚さを略50μm未満とすると、エンボス加工性、印刷適性が劣るようになる。また、基材層1の厚さが略200μmを超えると2次加工性やコストアップを招くので好ましくない。
【0009】
上記透明層3の厚さは略30〜略200μm、好ましくは略40〜略150μmとすることが良い。基材層1の厚さを略30μm未満とすると、シート化が困難となり、エンボス加工性も劣るようになる。また、基材層1の厚さが略200μmを超えると2次加工性やコストアップを招くので好ましくない。
【0010】
上記表面層6の厚さは略25〜略500μm、好ましくは略40〜略300μmとすることが良い。表面層6の厚さを略25μm未満とすると、エンボスの影響で平滑性が得にくく、印刷の深みがでないという欠点が生じるようになる。また、表面層6の厚さが略500μmを超えると2次加工性やコストアップを招くので好ましくない。
【0011】
上記接着剤層としての透明インキ層4の厚さは略2〜略15μm、好ましくは略3〜略10μmとすることが良い。透明インキ層4の厚みが略2μm未満であると基材シートA表面の凹凸模様3Aの凹部を埋めることができず、界面に空気が残る。また、透明インキ層4の厚さが略15μmを超えると塗工の回数が増加し、コストアップとなるので好ましくない。
【0012】
前記表面層6には、透明硬質塗膜からなる表面保護層7が形成されている。この表面保護層7は、UVコートにより形成される構造としてもよい。
【0013】
また、前記表面層6の裏面には、前記透明インキ層4との密着を良好とするための易接着コート5が予め形成されている。
【0014】
前記表面層6の裏面に、表面印刷模様を形成し、表面側から、該表面印刷模様を透して、前記エンボスによる凹凸模様及び前記基材層1表面の絵柄印刷模様2の光輝性インキ2Aの少なくとも一部が透視し得る構造としても良い。
【0015】
前記印刷模様2は、多層刷りの絵柄模様により形成され、その少なくとも一層は光輝性若しくは光反射性物質を含有する光輝性インキ2Aよりなる絵柄模様であり、他の層は通常の着色インキ2Bによる絵柄模様である。ここで、絵柄模様とは、ベタ印刷による模様以外の一切の模様を言い、幾何学模様、動物性又は植物性模様、鉱物性模様、或いは天然現象による模様などを言う。
【0016】
上記基材層1と透明層3を塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂材料により形成させることも可能である。
【0017】
上記本発明による化粧シートDによれば、中間のエンボス凹凸模様3Aが、硬質で透明な表面保護層7を透して、透明な表面層6及び透明インキ層4の内部に見え、このエンボス凹凸模様3Aの下に絵柄印刷模様2が重なって見えることから、深みのある表現が可能となる。さらに、絵柄模様が光輝性インキ2Aによって形成されおり、この光輝性インキ2Aによる反射光がエンボス凹凸模様3Aによって屈折し、且つ、光輝性インキ2Aはベタ印刷ではなく絵柄状に印刷されていることから、見る角度によって、エンボス凹凸模様及び絵柄模様が光学的に微妙に変化し、繊細で微妙な表現が可能となる。さらに、エンボス凹凸模様3Aのエンボス成型時に、絵柄印刷模様2が形成される基材層1の表面にもエンボスによる凹凸1Aが形成され、絵柄印刷模様2及び光輝性インキ2Aの形成角度がエンボスに沿って凹凸状に変化することから、一層繊細で微妙な表現が可能となり、光学的な変化も複雑で微妙となる。
【0018】
さらに、上記本発明の化粧シートDによれば、化粧シートDを構成する基材シートA及び表面シートBを、その素材主体をポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料とし、これら基材シートAと表面シートBとを接着させる透明インキ層4を、塩酢ビを主成分としていることで、基材シートAと表面シートBを構成する各層間におけるラミネート強度が十分に得られ、容易に剥離してしまうなどの不具合が起きない。
【0019】
また、化粧シートDとしての表面に、UVコートよりなる表面保護層7を形成したことで、化粧シートDとしての表面に、光沢を与え、かっ耐衝撃性や耐擦傷性を向上させることが可能となる。また、上記エンボス凹凸模様3Aを透して観る絵柄印刷模様2の光輝性インキ2Aによる反射光も鮮明である。
【0020】
次に、上記化粧シートの製造方法を、図3及び図4を参照して述べる。
図3に示すように、非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材フィルムの表面側に、少なくともその一部が光輝性インキ2Aを用いて絵柄印刷模様2を形成してなる印刷シートCを用い、該印刷シートCの表面印刷模様2上に、厚さ略30〜略200μmの透明な非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料を被着させて透明層3を形成し、該透明層3の表面に該厚さの略0.5〜略1.5倍の最大深さを有するエンボスによる凹凸模様3Aを形成して基材シートAを製造する。
また、別途、表面に透明硬質塗膜からなる表面保護層7を形成した平滑透明な晶質ポリエステル系樹脂の二軸延伸フイルムからなる表面層6の裏面側に、厚さ略2〜略15μmの塩酢ビよりなる透明インキ層4を予め被着形成した表面シートBを製造する。
図4に示すように、上記の基材シートAのエンボスによる凹凸模様3Aと表面シートBの透明インキ層4とが密着するように加熱条件下で接着させて化粧シートDを製造する。
【0021】
上記化粧シートの製造方法によれば、目的の上記化粧シートを、能率良く連続して得ることができる。この場合、基材シートAと表面シートBの加熱接着時に、エンボスが戻って消えるということがなく、また、加熱接着が確実で、エンボス凹凸模様内に空気が入るということがない。さらに、エンボスによる凹凸模様3Aの形成時に、基材フィルムの印刷表面にもエンボスによる凹凸1Aが成形され、一層微妙な表現が可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図1は本発明による化粧シートの一実施の形態を示す概略断面図、図2は同基材シートと表面シートの分離概略断面図である。図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る化粧シートを説明する。
【0023】
本実施の形態の化粧シートDは、図1、2に示すように、基材シートAと表面シートBとが、基材シートAを構成する透明層3の表面にエンボスによる凹凸模様3Aが形成された状態で、透明インキ層4を介して熱接着されて構成されている。
基材シートAは、非晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材層1と、該基材層1の表面側に形成され、少なくともその一部が光輝性インキ2Aにより形成された絵柄印刷模様2と、該印刷模様2上に積層形成され、透明な2軸延伸ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料よりなる透明層3と、が積層形成されて構成されている。
また、表面シートBは、表面に硬質で透明な表面保護層7が形成された透明な非晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料よりなる表面層6を主体とし、裏面に塩酢ビを主成分とする熱可塑性樹脂による透明インキ層4を有している。
【0024】
表面層6の表裏には、上記表面保護層7としてのUVコートと、上記透明インキ層4との接着を良好とするための易接着コート5とが予め形成されている。
【0025】
基材層1は、非晶質又は低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料よりなるとともに、着色された樹脂材料にて、押出成形にてフィルム状に形成されることで得られる。
樹脂材料としての上記非晶質又は低晶質ポリエステル系樹脂は、テレフタル酸からなるジカルボン酸成分と、25−65モル%の1,4−シクロヘキサンジメタノールと35−75モル%のエチレングリコールからなるジオール成分を共重合された樹脂、或いは他の酸成分を共重合した樹脂などを挙げることができる。この樹脂素材によるフィルムは、エンボス成形などの、熱加工性が良好である。
【0026】
上記印刷模様2は、多層刷りの絵柄模様により形成され、その少なくとも一層は光輝性若しくは光反射性物質を含有する光輝性インキ2Aよりなる絵柄模様であり、他の層は通常の着色インキ2Bによる絵柄模様である。上記印刷模様2、特に、その光輝性インキ2A模様は、ベタ印刷ではなく、絵柄模様であり、例えば、直線及び曲線の組あわせからなる細い縞状に形成されている。印刷模様2は、本実施の形態では、上記基材層1となる押出成形にて得られるフィルムの一方の面に、着色インキによる模様版及び光輝性インキによる模様版を用いて、グラビア印刷などの印刷方法で種々の模様、例えば木目模様や大理石模様などを多層に形成されることでなる。この実施の形態では、エンボス凹凸模様3Aを透して馬の尻の毛並みのように観える模様とされている。印刷模様2を形成するインキは、塩酢ビを主成分とするバインダーからなるインキを用いることが接着性向上の上から望ましい。
【0027】
上記透明層3は、上記基材層1と同等の樹脂素材である非晶質又は低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする透明な樹脂材料よりなる。
この透明層3は、印刷模様2上に積層形成されており、その形成方法としては、押出ラミネートにより形成される。すなわち、上記基材層1を構成する基材フィルムを得た後に、この基材フィルムの一方の面にグラビア印刷などにて印刷模様2を形成させ、この印刷模様2上に対して透明層3となる樹脂材料をフィルム状に押出成形させるとともに一対のロール間を通過させラミネート貼着させることで透明層3を形成させる。
【0028】
上記エンボスによる凹凸模様3Aは、直線と曲線で構成されたエンボスパターンとされている。エンボスパターンは、好ましくは、線の太さが略10μm〜略3000μm程度である。また、エンボスの深さは、略20μm〜略120μm程度である。透明インキ層4は、これらエンボスの深さを十分充填する量及び厚さとされている。
【0029】
そして、上記基材層1となる基材フィルムに、印刷模様2、透明層3が形成され、透明層3の上面にエンボスによる凹凸模様3Aが形成されることで、すなわち、非晶質又は低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂素材よりなる基材層1と透明層3との間に、塩酢ビを主成分とするバインダーからなる着色インキ2B及び光輝性インキ2Aの印刷模様2が介在する構成となる3層構造の基材シートAとなる。
【0030】
なお、上記基材層1及び透明層3となる樹脂素材は、上述した非晶質又は低晶質ポリエステル系樹脂に、晶質ポリエステル樹脂を配合したものとしてもよい。
この晶質ポリエステル樹脂は、通常のポリエチレンテレフタレート樹脂や、ポリブチレンテレフタレート樹脂などとされる。
この配合比率は、非晶質又は低晶質ポリエステル系樹脂を40〜100重量%とし、晶質ポリエステル樹脂を0〜60重量%、好ましくは10〜40重量%とされる。
この晶質ポリエステル樹脂を配合することにより、基材層2及び透明層4は耐溶剤特性が改善されることとなる。
【0031】
また、表面シートBは、表面に硬質で透明な表面保護層7が形成された透明な2軸延伸ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料よりなる表面層6を主体とし、裏面に塩酢ビを主成分とする熱可塑性樹脂による透明インキ層4を有している。表面層6を構成する透明フィルムは、延伸ポリエステル系樹脂、オレフィンなど溶剤に強い材質のものを用いる。
【0032】
なお、表面シートBの表面には、図示しないが、ポリエチレン樹脂などの粘着フィルムよりなるマスキングフィルムが展着されることとしてもよく、このマスキングフィルムにより、製品となった化粧シートDの運搬などの際に、表面保護層7に擦り傷などを生じさせないようになっている。
【0033】
次に、上述した構成の化粧シートDの製造方法について、図3及び図4に示す製造装置の概略図を用いて説明する。
【0034】
まず、非晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする着色された樹脂素材を用い、略均一な所定の厚さ、例えば略100μmとなるよう押出成形などの方法にて基材フィルムを得る。この基材フィルムを基材層1として、その上に、上記多層の印刷模様2を印刷して印刷シートCを得る。印刷シートCは、印刷模様2が表面となるようにロール状に巻き取り、図3の製造装置にセットする。
【0035】
このシート製造装置においては、ロール状の印刷シートCの先端を、略水平に並設された一対の第1のロール11(11A,11B)間に供給させる。第1のロール11の一方は冷却ロール11Bである。
【0036】
また、この印刷シートCの供給と同時に、冷却ロール11B上方に配置される押出機12より、非晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする透明な樹脂素材を、溶融押出法にて押出機12のダイよりフィルム状に押し出す。
【0037】
押し出された透明樹脂フィルムは、垂下方向に送られ、冷却ロール11Bの表面に沿って、第1のロール11を構成する他方のロール11Aとの間へと移動され、印刷シートCと一体となって、この一対の第1のロール11(11A,11B)間に供給されることとなる。
すなわち、印刷シートCの印刷模様2上に透明樹脂フィルムが押出ラミネートされることとなって、この印刷模様2上に透明層3が被着形成される。
そして、この第1のロール11(11A,11B)を通過することで基材シート材料となる。
【0038】
第1のロール11(11A,11B)を通過した基材シート材料は、エンボスロール13により、透明層3の上面にエンボスがかけられ、エンボスによる凹凸模様3Aが形成される。図中、14は引出しロール、15はベッドロールである。基材シート材料は、エンボスによる凹凸模様3Aが形成されて引き出されることにより、基材シートAとなる。
【0039】
また、別途、上記表面シートBを製造する。表面シートBの基材フィルムとしては、実施例として、PETフィルムの表面側に熱硬化性塗膜やUV硬化塗膜のハードコート層が形成された市販のハードコートPETが用いられる。例えば、東レ社の「タフトップ」や中井工業社の「ナカイハードコートPET」などが挙げられる。これらのハードコートPETの裏面側に、塩酢ビよりなる透明インキを塗布する。
【0040】
このようにして製造した基材シートAと前記表面シートBとを、図4に示すように、加熱ドラム16の外周に供給する。この場合、基材シートA表面のエンボスによる凹凸模様3Aの表面に、表面シートB裏面の透明インキ層4が接着するように供給して加熱接着させる。この加熱によって、基材シートAの透明層3のエンボスは若干深さが戻るが、基材層1の表面に形成された印刷模様2のエンボスによる凹凸は残っている。
基材シートAは、加熱ドラム16外周での加熱接着の前に予熱ロール17を通して予熱し、表面シートBは、加熱ドラム16外周での加熱接着の前にヒーター18により裏面の透明インキ層4を加熱しておく。図4において、19、20は、基材シートA又は表面シートBを加熱ドラム16の外周に供給させるための案内ロール、21は、加熱ドラム16の外周から、基材シートAと表面シートBとが一体化された化粧シートDを引き出すための引出しロールである。
【0041】
このようにして、目的の化粧シートDが、製造される。
【0042】
【実施例】
次に、上述した実施の形態における、化粧シートの具体的な実施例について説明する。
【0043】
実施例1
1.非晶質ポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、「Eastar6763」)80重量部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチック社製、「ジュラネックス 600FP」)15重量部、強化樹脂(鐘淵化学工業社製、「カネエースFM」)5重量部を配合し、カレンダー成形した厚さ80μmのライトブラウン色の基材層にバーチの柾目の木目を印刷した。印刷インキはメジューム(昭和インク工業製、「SX257メジューム」、塩酢ビ):黒インキ(同、「SX851ブラック」、塩酢ビ):赤インキ(同、「SX157レッド」、塩酢ビ):黄インキ(同、「SX360イエロー」、塩酢ビ):パールゴールドインキ(同、「SXパールゴールド」、塩酢ビ)=44:0.5:5.5:25:25で1版目を印刷する。
2.次に2版目は、メジューム:黒インキ:赤インキ:黄インキ=66:3:13.5:17.5のインキで印刷する。
3.3版目は、メジューム:黒インキ:赤インキ:青インキ(同、「SX651ブルー」、塩酢ビ)=61.5:8:24:6.5のインキで印刷する。
4.押出機で非晶質ポリエステル系樹脂(「Eastar 6763」)85重量部、ポリブチレンテレフタレート樹脂(「ジュラネックス 600FP」)10重量部、強化樹脂(「カネエースFM」)5重量部を配合した厚さ60μmの透明層を基材層の印刷面に押出ラミネートし、エンボス加工した。このエンボスは深さが最大80μmで馬のお尻の毛並みのように曲線が連続して形成されている。この場合、図2に示される基材シートAのように、印刷層もエンボスされたように少なくともその一部が凹凸状に形成される。
5.厚さ25μmの延伸PETの表面にUV硬化塗膜が形成され、裏面側に易接着コートが施された市販のハードコートPET(中井工業社製、「VHCーU」)の易接着コート面に、メジューム(昭和インク工業製、「SX257メジューム」、塩酢ビ)を150メッシュ、35μmの深さのメッシュロールで2回塗工して、乾燥後、厚さ5μmの透明インキ層を形成した。
6.熱ラミネーター装置を用いて、4で得られたシートのエンボス面と5で得られたハードコートPETの透明インキ層とが接するように熱ラミネートして化粧シートを得た。
【0044】
実施例2
1.カレンダー成形で得られたライトグレー色、厚さ80μmの半硬質PVCからなる基材層にヘヤーライン調の1版目を印刷した。印刷インキは、メジューム:黒インキ:赤インキ:黄インキ:アルミインキ(同、「SXT008シルバー」、塩酢ビ)=52.25:0.05:0.2:0.5:47の割合のアルミ調のものとした。
2.次に、同じくヘヤーライン調の2版目で、1版目のアルミ調のものとは異なりゴールドに見えるように、メジューム:黒インキ:赤インキ:黄インキ=95.8:0.5:0.9:2.8のインキで印刷する。
3.さらに、ヘヤーライン調の3版目でアクセントになるように青系のインキを、メジューム:黒インキ:赤インキ:青インキ=61.5:8:24:6.5のインキで印刷する。
4.熱ラミネーター装置を使用して、上記の基材層の印刷面に、厚さ60μmの透明半硬質PVCフィルムを透明層として熱ラミネートし、エンボス加工した。このエンボスは深さが最大80μmの粗いヘヤーライン調のものを用いた。
5.厚さ25μmの延伸PETの表面にUV硬化塗膜が形成され、裏面側に易接着コートが施された市販のハードコートPET(中井工業社製、「VHCーU」)の易接着コート面に、メジューム(昭和インク工業製、「SX257メジューム」、塩酢ビ)を150メッシュ、35μmの深さのメッシュロールで2回塗工して、乾燥後、厚さ5μmの透明インキ層を形成した。
6.熱ラミネーター装置を用いて、4で得られたシートのエンボス面と5で得られたハードコートPETの透明インキ層とが接するように熱ラミネートして化粧シートを得た。
【0045】
実施例3
実施例1で使用した基材層および透明層として、低晶質ポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、「Eastar DN004」)60重量部、非晶質ポリエステル系樹脂(イーストマンケミカル社製、「Provista」)30重量部、強化樹脂(鐘淵化学工業社製、「カネエースFM」)10重量部からなる樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、化粧シートを得た。
【0046】
比較例1
実施例1で使用した基材層および透明層として、晶質ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル社製、「Eastar K2000」、ポリエステル樹脂)90重量部、強化樹脂(鐘淵化学工業社製、「カネエースFM」)10重量部からなる樹脂組成物を用い、フィルム化は押出機を用いたこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。この比較例1では、深いエンボスが加工出来ず、得られた化粧シートも平面的な感じであった。
【0047】
【発明の効果】
本発明による化粧シートによれば、中間のエンボス凹凸模様3Aが、透明な表面層6及び透明インキ層4の内部に見え、このエンボス凹凸模様3Aの下にエンボスの影響を受けて、少なくとも一部がエンボス凹凸状とされた絵柄印刷模様2が重なって見えることから、深みのある表現が可能となる。さらに、絵柄模様が光輝性インキによって形成されおり、この光輝性インキによる反射光が中間のエンボス凹凸模様3Aによって屈折し、且つ、光輝性インキはベタ印刷ではなく絵柄状に印刷されていることから、見る角度によって、エンボス凹凸模様及び絵柄模様が光学的に微妙に変化し、繊細で微妙な表現が可能となる。また、上記中間のエンボス凹凸模様3Aの成形時に、基材層1の表面にもエンボス凹凸模様が成形され、一層エンボス凹凸模様及び絵柄模様が光学的に微妙に変化し、繊細で微妙な表現が可能となる。
【0048】
さらに、上記本発明の化粧シートDによれば、化粧シートDを構成する基材シートA及び表面シートBを、その素材主体を非晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料とし、これら基材シートAと表面シートBとを接着させる透明インキ層4を、塩酢ビを主成分とすることで、基材シートAと表面シートBを構成する各層間におけるラミネート強度が十分に得られ、容易に剥離してしまうなどの不具合が起きない。
【0049】
また、本発明の化粧シートの製造方法によれば、目的の上記化粧シートを、能率良く連続して得ることができる。この場合、基材シートAと表面シートBの加熱接着時に、エンボスが戻って消えるということがなく、また、加熱接着が確実で、エンボス凹凸模様内に空気が入るということがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による化粧シートの一実施の形態を示す概略側断面図
【図2】同化粧シートの分離概略側断面図
【図3】同化粧シートの製造方法に用いられる製造装置の概略図
【図4】同化粧シートの製造方法に用いられる製造装置の概略図
【符号の説明】
A…基材シート
B…表面シート
C…印刷シート
D…化粧シート
1…基材層、1A…凹凸
2…印刷模様、2A…光輝性インキ、2B…着色インキ
3…透明層、3A…凹凸模様
4…透明インキ層
5…易接着コート
6…表面層
7…表面保護層
11(11A,11B)…第1のロール、11A…他方のロール、11B…冷却ロール
12…押出機
13…エンボスロール
14…引出しロール
15…ベッドロール
16…加熱ドラム
17…予熱ロール
18…ヒーター
19…案内ロール
20…案内ロール
21…引出しロール

Claims (7)

  1. 非晶質または低晶質樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材層と、
    該基材層の表面側に形成され、少なくともその一部が光輝性インキにより形成された絵柄印刷模様と、
    該印刷模様上に積層形成される厚さ0〜00μmの透明な樹脂材料よりなり、表面には該厚さの.5〜.5倍の最大深さを有するエンボスによる凹凸模様が形成された透明層と、
    該透明層のエンボス凹凸模様上に、裏面側に形成された厚さ5μmの塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる透明インキ層を介して接合される平滑透明な樹脂材料からなる表面層と、
    が少なくとも積層形成され、
    前記表面層の表面側から、前記エンボス凹凸模様を透して前記印刷模様の光輝性インキによる反射光が観察されることを特徴とする化粧シート。
  2. 非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材層と、
    該基材層の表面側に形成され、少なくともその一部が光輝性インキにより形成された絵柄印刷模様と、
    該印刷模様上に積層形成される厚さ0〜00μmの透明な非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料よりなり、表面には該厚さの.5〜.5倍の最大深さを有するエンボスによる凹凸模様が形成された透明層と、
    該透明層のエンボス凹凸模様上に、裏面側に形成された厚さ5μmの塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる透明インキ層を介して接合される平滑透明な晶質ポリエステル系樹脂の二軸延伸フイルムからなる表面層と、
    が少なくとも積層形成され、
    前記表面層の表面側から、前記エンボス凹凸模様を透して前記印刷模様の光輝性インキによる反射光が観察されることを特徴とする化粧シート。
  3. 前記表面層には、透明硬質塗膜からなる表面保護層が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 前記表面層の裏面には、前記透明インキ層との密着を良好とするための易接着コートが予め形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする着色樹脂材料よりなる基材フィルムの表面側に、少なくともその一部が光輝性インキを用いて印刷模様を形成してなる印刷シートを用い、該印刷シートの表面印刷模様上に、厚さ0〜00μmの透明な非晶質または低晶質ポリエステル系樹脂を主成分とする樹脂材料を被着させて透明層を形成し、該透明層の表面に該厚さの.5〜.5倍の最大深さを有するエンボスによる凹凸模様を形成した基材シートと、
    表面に透明硬質塗膜からなる表面保護層を形成した平滑透明な晶質ポリエステル系樹脂の二軸延伸フイルムからなる表面層の裏面側に、厚さ5μmの塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる透明インキ層を形成した表面シートとを、
    基材シートのエンボスによる凹凸模様と表面シートの透明インキ層とが密着するように加熱接着させたことを特徴とする化粧シートの製造方法。
  6. 前記表面層には、透明硬質塗膜からなる表面保護層を形成したことを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
  7. 前記表面層の裏面には、前記透明インキ層との密着を良好とするための易接着コートが予め形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の化粧シートの製造方法。
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