JP3951435B2 - ディーゼルエンジンの燃料量制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料量制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンへの燃料供給量を制御するためのこの種の技術として、分配型燃料噴射ポンプに電磁式燃料スピル弁を設け、この燃料スピル弁のON/OFF時期を調整することで燃料噴射ノズルによる燃料噴射量を適正に制御する装置が従来より知られている。こうした装置では、例えばマイクロコンピュータを主体とする電子制御装置(以下、「ECU」という:Electric Contorol Unit)がその時々のエンジン運転状態に基づいて最適なる燃料噴射量を演算し、その燃料噴射量に対応する噴射信号(ON/OFF信号)をスピル弁駆動用の駆動回路(EDU:Electric Driver Unit)に対して送信する。そして、当該駆動回路は、ECUから送信されてきた噴射信号に従い燃料スピル弁の電磁コイルを通電又は非通電とし、燃料スピル弁を開弁又は閉弁させる。
【0003】
また、駆動回路は、燃料スピル弁(電磁コイル)に流れる駆動電流を監視すると共に、その駆動電流に基づいて異常の有無を表すフェイルセーフ信号を生成し、そのフェイルセーフ信号をECUに対して送信する。フェイルセーフ信号は一般に、駆動電流の上昇と下降とを所定のしきい値にて検知することで、論理ハイ又はローの2値信号として生成される。かかる場合、異常が発生していなければ、フェイルセーフ信号はその立ち上がり及び立ち下がりの各タイミングがECUからの噴射信号と略一致する。これに対し、異常が発生していれば、フェイルセーフ信号が常に論理ハイレベル又は論理ローレベルの信号となる。
【0004】
ECUは、前記フェイルセーフ信号に基づき異常判定を行うと共に、仮に異常有りの際にはその旨をバックアップメモリに記憶させる。例えば噴射信号に対応するフェイルセーフ信号のエッジが認識できれば異常無しと判定され、同フェイルセーフ信号のエッジが認識できなければ異常有りと判定される。バックアップメモリに記憶された異常情報は例えばダイアグチェッカなどにより適宜読み出される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記既存の技術では、エンジン運転状態が変動する場合において異常が誤判定されるおそれがあった。すなわち、例えば高回転・低負荷の場合、燃焼気筒間の時間間隔が短く且つ、ECUから駆動回路に送信される噴射信号も比較的短いON信号となる。一例としてエンジン回転数=4000rpm、噴射量=5mm^3/stの場合、噴射信号のON時間は約2ミリ秒となる。従って、駆動回路がECUから噴射信号を受けてそれに対応するフェイルセーフ信号をECUへ返信する際、正常時であるにもかかわらずフェイルセーフ信号が論理ハイ又は論理ローレベルのまま固定されて同信号のエッジが認識できず、異常有りと誤判定される。こうした異常発生の誤判定により、必要でないのにエンジンが不用意に停止してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、如何なるエンジン運転状態でも、電磁弁駆動系の異常の誤判定を防止することができるディーゼルエンジンの燃料量制御装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明におけるディーゼルエンジンの燃料量制御装置は、エンジンの燃料供給量に係わる制御指令を演算し出力する電子制御装置(ECU)と、該電子制御装置からの制御指令に従い電磁弁を駆動させる駆動回路とを備える。そして、請求項1に記載の発明において、前記駆動回路は、前記制御指令に応じて電磁弁に適正な駆動電流が流れたか否かを監視する。また、前記電子制御装置は、その時々の燃料噴射量に対応する噴射信号のON時間に基づき異常判定の実施条件が成立するか否かを判別して、当該異常判定の実施条件が成立する場合、前記駆動電流の監視結果に基づいて異常判定を行うとともに、前記噴射信号のON信号が所定の時間よりも短い場合に前記異常判定を無効化する。
【0008】
要するに、例えばエンジン気筒毎の燃料噴射のたびに、駆動回路が駆動電流を監視し、その結果を電子制御装置に送信する場合、エンジン運転状態によっては電子制御装置が実際の駆動電流に即した信号を認識できず、この不確かな信号を使って異常判定を行うと異常判定の信頼性が著しく低下する。これに対し本発明では、その時々の燃料噴射量に対応する噴射信号のON時間に基づき異常判定の実施条件を判別して、条件成立時にのみ異常判定を有効とし、条件不成立時(噴射信号のON信号が所定の時間よりも短い場合)には異常判定を無効化した。その結果、如何なるエンジン運転状態でも電磁弁駆動系の異常の誤判定を防止し、異常判定の信頼性を向上させることができる。
【0009】
かかる場合、請求項2に記載したように、駆動回路は、電磁弁に流れる駆動電流と所定のしきい値とを比較してフェイルセーフ信号を生成し、電子制御装置は、フェイルセーフ信号のエッジの有無に基づいて異常判定を行うとよい。
【0010】
また実際には、次の請求項3,4のように構成するとよい。つまり、
・請求項3に記載の発明では、電子制御装置は、併せてエンジン回転数を参照して前記異常判定の実施条件を判別し、高回転域では異常判定を無効化する。
・請求項4に記載の発明では、電子制御装置は、その時々の燃料噴射量に対応する噴射信号のON時間として燃料スピル弁(電磁弁)のON時間に基づき前記異常判定の実施条件を判別し、該燃料スピル弁のON時間が所定時間よりも短い場合に異常判定を無効化する。
【0011】
上記請求項3,4によれば、エンジン高回転の場合や燃料スピル弁のON時間が短い場合(信号周波数が高い場合)には、異常判定が無効化される。そのため、電磁弁に流れる駆動電流が適正に監視できない(フェイルセーフ信号のエッジが正しく検出できない)と判断されると信頼性が低いままでの異常判定が禁止され、異常の誤判定が確実に防止できる。
【0012】
そして、請求項5に記載したように、前記異常判定の結果が有効な場合において、異常発生時には前記電磁弁の通電を停止させる、といったフェイルセーフ処理を実施するとよい。上記の通り信頼性の高い異常判定が行われる場合には、フェイルセーフ自体の信頼性も向上する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態の燃料噴射装置は例えば4気筒ディーゼルエンジンに適用され、エンジンの各気筒には分配型燃料噴射ポンプにより圧縮された高圧燃料が給送されてその高圧燃料が燃料噴射ノズルから燃焼室内に噴射供給される。
【0014】
燃料噴射装置については周知であるためその図示を省略するが、その概略を簡単に説明すれば、分配型燃料噴射ポンプは、例えばフェイスカム式或いはインナカム式の高圧ポンプからなり、プランジャの往復動によりポンプ高圧室内の燃料を加圧する。同ポンプには燃料スピル通路が設けられ、燃料スピル通路の途中には電磁式燃料スピル弁(以下、電磁スピル弁という)が配設される。電磁スピル弁は常開弁として構成され、同スピル弁が通電されて閉弁状態にある時、ポンプ高圧室内の燃料が加圧される。そして、その加圧燃料が燃料噴射ノズルから噴射される。また、同スピル弁の通電が遮断されて開弁状態になると、ポンプ高圧室内の燃料がスピル(溢流)され、燃料噴射ノズルからの燃料噴射が停止される。
【0015】
こうした基本構成の燃料噴射装置において、電磁スピル弁の制御、すなわち燃料噴射量制御はECUにより実施される。以下、ECUを主体とする燃料噴射制御システムの概要を図1を用いて説明する。
【0016】
図1に示されるように、本制御システムは大きくは、ディーゼルエンジンの運転制御に併せて電磁スピル弁300の制御指令である噴射信号を出力するためのECU100と、この出力される噴射信号に基づいて電磁スピル弁300に駆動電流を供給するための駆動回路200とを備えて構成されている。ECU100と駆動回路200とは互いに通信可能に接続されている。ここで、電磁スピル弁300は、エンジン各気筒の燃料噴射毎に通電されて開弁及び閉弁動作を繰り返し実施する。
【0017】
ECU100は、周知のCPU、ROM、RAM、バックアップRAM等からなるマイクロコンピュータを有し、吸気圧センサ101、アクセルセンサ102、水温センサ103、基準位置センサ104、回転数センサ105の検出値を逐次取り込む。ECU100は、上記各センサ101〜105の検出結果から吸気圧PM、アクセル開度ACCP、水温Tw、基準位置(TDC)、エンジン回転数NEなどのエンジン運転状態を検知し、当該エンジン運転状態に基づいて最適なる燃料噴射量や燃料噴射時期を演算する。そして、この演算した燃料噴射量に対応する噴射信号を駆動回路200に対して出力し、電磁スピル弁300を駆動させる。また、図示しないタイマ制御弁に対しても噴射時期制御信号を適宜出力する。
【0018】
駆動回路200も大きくは、上記噴射信号に基づき電磁スピル弁300を直接駆動する部分である駆動部210と、電磁スピル弁300の駆動に際して流れる負荷電流(駆動電流)に基づきフェイルセーフ信号を生成するためのフェイルセーフ信号生成部220との2つの部分から構成されている。このフェイルセーフ信号生成部220にて生成されたフェイルセーフ信号はECU100に帰還され、そのECU100で、上記駆動電流が適正なものであったか否かが診断される。すなわち同実施の形態の装置において、ECU100は、診断部としての機能も併せ備えている。
【0019】
また、図2は、本制御システムの詳細な構成を示す電気回路図である。以下、駆動回路200を構成する駆動部210並びにフェイルセーフ信号生成部220の構成についてその詳細を順次説明する。
【0020】
まず、駆動部210において、バッテリ1からの出力電圧は、定電圧回路2に入力されて定電圧Vccに変換されると共に、コイル3に印加される。なおここで、バッテリ1と駆動回路200との間には図示しないリレーが設けられており、IGキー(イグニッションキー)がON操作されるとリレーが励磁されてバッテリ1から駆動回路200に対して給電されるようになっている。
【0021】
コイル3に印加される電圧は、DC−DCコンバータ4、トランジスタ5及び抵抗6からなる昇圧回路を通じて昇圧され、これが逆流防止用のダイオード7を介してコンデンサ8に充電される。このときDC−DCコンバータ4では、少なくとも後述する単安定マルチバイブレータ12からワンショット信号が出力されていない期間、トランジスタ5をオンとしてコイル3に流れる電流を抵抗6の端子電圧によってモニタしつつ、これが所定の電流値に対応した値となる毎にトランジスタ5をオフせしめる動作を繰り返す。そして、上記コンデンサ8への充電電圧が電磁スピル弁300を高速駆動させうる所望の電圧に達した時、こうした昇圧動作を停止する。
【0022】
ここで、トランジスタ10は、単安定マルチバイブレータ12からワンショット信号が出力されている期間だけオンとなって上記コンデンサ8に充電されている電圧やダイオード9を介して加えられるバッテリ電圧を電磁スピル弁300に印加するためのトランジスタである。
【0023】
また、単安定マルチバイブレータ12は、上記ECU100から与えられる噴射信号の、波形整形回路11による波形整形信号に基づいて、その立上りから一定の時間だけ能動となるワンショット信号を出力するための回路である。
【0024】
上述のように、DC−DCコンバータ4は、少なくとも単安定マルチバイブレータ12によるワンショット信号が出力されている期間、その昇圧動作を停止し、トランジスタ10は、同ワンショット信号が出力されている期間だけオンとなる。
【0025】
一方、上記波形整形回路11によって波形整形された噴射信号は、定電流制御回路13にも入力されてこれを駆動する。定電流制御回路13は、波形整形された噴射信号が加えられている期間内において、そのとき電磁スピル弁300に流れる駆動電流を抵抗17の端子電圧によりモニタしつつ、これが所定の電流値に維持されるようトランジスタ14のオン/オフを制御するための回路である。なおこのとき、電磁スピル弁300に流れる電流はダイオード15を介して還流される。
【0026】
また、電磁弁駆動用のトランジスタ16には、前記波形整形後の噴射信号が供給され、その能動レベル(論理ハイレベル)の駆動信号により当該トランジスタ16がオンとなる。上記噴射信号に基づいてトランジスタ16がオンとなる時、上記ワンショット信号に基づきトランジスタ10も併せてオンとなると、その当初、電磁スピル弁300には、上記コンデンサ8に充電されている電荷が一気に放電されることに基づく大電流がその駆動電流として流れる。こうした大電流が流れることで電磁スピル弁300の急峻な応答性が確保されるようになる。ダイオード18は、このような大電流がトランジスタ14側に逆流されることを防止するためのダイオードである。
【0027】
なお後述するように、同駆動部210の実際の動作に際しては、駆動電流として、先ず上述した大電流が流れた後、引き続き上記ダイオード9を介してバッテリ電圧に対応した電流が流れる。そしてその後、ワンショット信号が非能動となることに基づいて、上記定電流制御回路13により制御される定電流が流れ、駆動指令である噴射信号の立ち下がりと共に同駆動電流が遮断される。
【0028】
他方、フェイルセーフ信号生成部220は、上記抵抗17の端子電圧を通じて抽出される駆動電流に基づきフェイルセーフ信号を生成する部分であり、以下のような構成となっている。
【0029】
フェイルセーフ信号生成部220は、比較器21,22及びフリップフロップ23を備える。そして、このフェイルセーフ信号生成部220において、上記抽出される駆動電流(抵抗17の端子電圧)は、抵抗24,25を介して比較器21,22の各々の非反転入力端子に取り込まれる。比較器21の反転入力端子には、定電圧Vccを抵抗26,27にて分圧して設定されたしきい値Vth1が入力されると共に、比較器22の反転入力端子には、定電圧Vccを抵抗28,29にて分圧して設定されたしきい値Vth2が入力される。
【0030】
なお、本実施の形態の装置にあって、比較器21のしきい値電圧Vth1は、電磁スピル弁300の駆動電流として上記大電流が流れたことが検出できる程度の電圧(例えば、5アンペア程度の電流値に対応した電圧)に設定され、比較器22のしきい値電圧Vth2は、同駆動電流として上記定電流制御される電流値の約半分程度に対応した電圧(例えば、1アンペア程度の電流値に対応した電圧)に設定されている。
【0031】
比較器22の出力は2つに分岐され、その一方はインバータ30を介してAND回路31に入力されると共に、他方はNAND回路32に入力される。このNAND回路32には、上記比較器22の出力信号に加えて、前記波形整形後の噴射信号が入力される。そして、同NAND回路32は、入力信号が何れも論理ハイレベルの場合にのみその出力を論理ローレベルとし、入力信号の何れかが論理ローレベルとなるとその出力を論理ハイレベルに立ち上げる。
【0032】
NAND回路32の出力は、単安定マルチバイブレータ33に入力される。この単安定マルチバイブレータ33は、NAND回路32の出力の立ち上がりから一定時間(本実施の形態では、0.1msec程度)だけ能動レベル(論理ハイレベル)となるワンショット信号を出力するための回路として構成されている。
【0033】
また、AND回路34には、前記単安定マルチバイブレータ33の出力が取り込まれると共に、インバータ35を介して噴射信号の反転信号が取り込まれる。AND回路34の出力は、前述のAND回路31に入力される。
【0034】
フリップフロップ23は、上記比較器21の出力が論理ハイレベルになることによってセットされ、上記AND回路31の出力が論理ハイレベルになることによってリセットされる。このフリップフロップ23では非反転入力が取り出され、そのセット時には、論理ハイレベルの信号がトランジスタ36に対して出力される。
【0035】
そして、こうしたフェイルセーフ信号生成部220において、トランジスタ36のオープンコレクタ出力が上記フェイルセーフ信号としてECU100に取り込まれる。
【0036】
このため、該フェイルセーフ信号生成部220にあって、そのフェイルセーフ信号は、
・駆動電流として十分な電流が電磁スピル弁300に供給されることに基づいて非能動レベル(論理ローレベル)に立ち下げられ、そして、
・同駆動電流が適正なタイミングで遮断されることに基づいて能動レベル(論理ハイレベル)に立ち上げられる、
ことになる。
【0037】
図3は、本実施の形態の装置の動作例を示したタイムチャートであり、次に、同図を参照して、電磁スピル弁300の駆動態様並びにフェイルセーフ信号生成態様を更に詳述する。ここで、図3において、
(a)は、ECU100から出力される噴射信号の態様を、
(b)は、電磁スピル弁300の駆動電流と比較器21,22に設定されるしきい値電圧Vth1及びVth2との関係を、
(c)は、比較器21の出力を、
(d)は、単安定マルチバイブレータ33の出力を、
(e)は、フリップフロップ23に入力されるリセット信号、すなわちAND回路31の出力を、
(f),(g)は、上記駆動電流やリセット信号と上記各しきい値電圧との関係に基づき生成されるフェイルセーフ信号を、
それぞれ示している。
【0038】
以下には、図3について順を追って説明する。図3(a)に示されるように、時刻t1でECU100から噴射信号が出力されると、該噴射信号に基づきトランジスタ16がオンになり、電磁スピル弁300に駆動電流が流れる(図3(b))。そして、駆動電流がしきい値Vth1に達する時刻t2では、図3(c)に示されるように、比較器21の出力が論理ハイレベルに立ち上がる。また、この時刻t2をもって、図3(f)に示される態様で、フェイルセーフ信号が非能動レベル(論理ローレベル)に立ち下がる。
【0039】
なお因みに、電磁スピル弁300に流れる駆動電流(正確には同電流に対応した抵抗17の端子電圧)がフェイルセーフ信号生成部220に設定されたしきい値電圧Vth1に達しなかった場合には、フェイルセーフ信号の生成(論理ローレベルへの立ち下げ)が行われることはない。つまり、図3(g)に示されるように、駆動電流が微小であるといった異常発生時には、フェイルセーフ信号が論理ハイレベルのままで固定される。
【0040】
そして、時刻t3では、駆動電流がしきい値Vth1を下回り、比較器21の出力が論理ローレベルに立ち下がる。その後、時刻t4で噴射信号が立ち下がると、フェイルセーフ信号生成部220においてNAND回路32の出力が論理ローレベルから論理ハイレベルに立ち上がり、それに伴って図3(d)に示されるように、単安定マルチバイブレータ33が一定時間幅(0.1msec)のワンショット信号を出力する。
【0041】
また、噴射信号の立ち下がりに伴って駆動電流が遮断され、それにより時刻t5では駆動電流がしきい値Vth2を下回って比較器22の出力が論理ローレベルに立ち下がる。このとき、単安定マルチバイブレータ33の出力信号が論理ハイレベルの状態下で、AND回路31には何れも論理ハイレベルの信号が入力されることにより、フリップフロップ23のリセット信号が図3(e)に示される態様で出力される。その結果、図3(f)に示される態様で、上記生成されたフェイルセーフ信号が能動レベル(論理ハイレベル)に立ち上がるようになる。但し、図3(g)に示されるように、異常発生時には、時刻t5でもその能動レベルが変化することはない。
【0042】
図4のフローチャートは、上記の如く生成されるフェイルセーフ信号に基づき電磁弁駆動系の異常の有無を判定するための異常判定ルーチンを示しており、同ルーチンはECU100により各気筒の燃料噴射毎(本実施の形態では、180°CA毎)に実施される。
【0043】
図4のルーチンがスタートすると、ECU100は、先ずステップ101で異常の有無を表すフェイルフラグXFAILが「0」であるか否かを判別する。ここで、フェイルフラグXFAILはIGキーのON操作に伴うECU100への電源投入時に「0」に初期化されるフラグであって、XFAIL=0は異常無しを、XFAIL=1は異常有りを、それぞれに表す。そして、XFAIL=0(異常無し)であることを条件に、ECU100はステップ102に進み、駆動回路200から送信された最新のフェイルセーフ信号(直前の燃焼気筒の信号)を読み込む。
【0044】
その後、ECU100は、ステップ103でエンジン運転状態に基づく異常判定の実施条件が成立するか否かを判別する。具体的には、例えば図5のマップを用い、その時のエンジン回転数NE、アクセル開度ACCP、噴射量Qといったエンジン運転状態が「異常判定の禁止域(図の斜線域)」にあるか又は「異常判定の許可域(斜線域以外の領域)」にあるかを判別する。因みに、噴射量Qはその時々のNE値及びACCP値に基づき設定されるようになっている。例えばアクセル全開に伴い回転上昇し、その後アクセル開度が減少する時、エンジン運転状態が図の斜線域に達し、かかる場合には異常判定が禁止される。
【0045】
ステップ103がNOの場合、すなわちエンジン運転状態が異常判定の禁止域(図5の斜線域)にある場合、ECU100は異常判定を行わずそのまま本ルーチンを一旦終了する。
【0046】
また、ステップ103がYESの場合、すなわちエンジン運転状態が異常判定の許可域にある場合、ECU100はステップ104に進み、前記読み込んだフェイルセーフ信号に基づいて異常の有無を判定する。かかる場合、フェイルセーフ信号のエッジが認識できれば、ECU100は、異常発生していない、すなわち電磁スピル弁300に適正なる駆動電流が流れているとみなし、そのまま本ルーチンを終了する。このとき、少なくともフェイルセーフ信号の立ち下がりエッジの有無を認識して異常判定を実施すればよいが、立ち上がり及び立ち下がりの両エッジを認識して異常判定を実施してもよい。
【0047】
また、フェイルセーフ信号のエッジが認識できなければ、ECU100は、異常発生している、すなわち電磁スピル弁300に適正なる駆動電流が流れていないとみなし、ステップ105で電磁スピル弁300の通電を強制的に遮断する。これにより、エンジンへの燃料供給が停止される。また、ECU100は、続くステップ106でフェイルフラグXFAILに「1」をセットし、その後本ルーチンを終了する。
【0048】
フェイルフラグXFAILに「1」がセットされると、その情報がECU100内のバックアップRAMに記憶される。従って、ダイアグチェッカにより異常情報を読み出すと異常内容が表示され、異常箇所が特定できる。なお、フェイルフラグXFAILのセット時には、例えば運転席の計器板に設けた異常警告灯を点灯させるようにしてもよい。
【0049】
以上詳述した本実施の形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(イ)本実施の形態では、フェイルセーフ信号に基づいて電磁弁駆動系の異常判定を実施する際、例えば高回転・低負荷域(NE=高、且つQ=小)でないかといった、エンジン運転状態に基づく実施条件が成立するか否かを判別し、同実施条件が不成立の場合、異常判定を無効化するようにした(実施しないようにした)。本構成によれば、如何なるエンジン運転状態でも電磁弁駆動系の異常の誤判定を防止し、異常判定の信頼性を向上させることができる。
【0050】
(ロ)異常判定の実施条件が成立する場合において、異常発生時には電磁スピル弁300の通電を停止させる、といったフェイルセーフ処理が実施される。上記の通り信頼性の高い異常判定が行われる場合には、フェイルセーフ自体の信頼性も向上する。従って、異常発生の誤判定により、必要でないのにエンジンが不用意に停止してしまうなどの不具合が解消される。
【0051】
(ハ)また、本構成によれば、異常診断の信頼性向上のために、駆動回路200の能力アップが強いられることはない。そのため、既存の装置にも容易に適用でき、高コスト化を招くこともない。
【0052】
なお、本発明の実施の形態は、上記以外に次の形態にて具体化できる。
上記実施の形態では、エンジン回転数NEとアクセル開度ACCPと噴射量Qとにより異常判定の実施条件を判別したが、この構成を変更する。エンジン回転数NEのみで異常判定の実施条件を判別したり、エンジン回転数NEと噴射量Qとで異常判定の実施条件を判別したりしてもよい。基本的には、高回転・低負荷(NE=高、且つQ=小)である時に異常判定を禁止する構成であればよい。
【0053】
また、例えばECU100にて生成される噴射信号のON時間(電磁スピル弁のON時間)が所定時間(例えば1ミリ秒)よりも長いかどうかを異常判定の実施条件とする。この場合、噴射信号のON時間が所定時間(1ミリ秒)よりも短ければ異常判定を実施しないこととする。
【0054】
上記実施の形態では、異常判定の実施条件が成立した場合のみ、異常判定を実施するようにしたが(前記図4のステップ104)、これを変更する。例えば異常判定の処理は燃料噴射毎に毎回実施する一方、異常判定の実施条件が不成立であれば、その判定結果を無効化する。この場合にも、上記実施の形態と同様に優れた効果が得られる。
【0055】
上記実施の形態では、フェイルセーフ信号のエッジの有無を判定し(前記図4のステップ104)、エッジが無いと異常発生とみなして直ちにフェイルフラグXFAILをセットしたが、この構成を変更する。例えばエッジの無いフェイルセーフ信号が連続して複数回(例えば5回)、ECU100に取り込まれればその際に異常発生とみなしてフェイルフラグXFAILをセットする。この場合、異常判定の信頼性がより一層向上する。
【0056】
上記実施の形態では、異常発生の旨が判定されると、直ちに電磁スピル弁300の駆動を停止させたが、異常発生後、例えば修理工場まではエンジンの運転を継続させるべく必要最小限の燃料供給を行わせるようにしてもよい(いわゆる、リンプホーム機能を持たせる)。
【0057】
本発明をコモンレール式燃料噴射装置に適用することも可能である。かかる場合、コモンレール(蓄圧配管)に圧縮燃料を吐出するための可変吐出量高圧ポンプに設けられる電磁弁を制御対象とし、その電磁弁の異常を判定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態におけるディーゼルエンジンの燃料噴射制御システムの概要を示す全体構成図。
【図2】駆動回路の詳細な構成を示す電気回路図。
【図3】動作の概要を示すタイムチャート。
【図4】異常判定ルーチンを示すフローチャート。
【図5】異常判定の許可域と禁止域とを示すマップ。
【符号の説明】
100…ECU(電子制御装置)、200…駆動回路、210…駆動部、220…フェイルセーフ信号生成部、300…電磁スピル弁。
Claims (5)
- エンジンの燃料供給量に係わる制御指令を演算し出力する電子制御装置と、該電子制御装置からの制御指令に従い電磁弁を駆動させる駆動回路とを備え、前記電子制御装置と駆動回路とが互いに通信可能に接続されるディーゼルエンジンの燃料量制御装置であって、
前記駆動回路は、前記制御指令に応じて電磁弁に適正な駆動電流が流れたか否かを監視し、
前記電子制御装置は、その時々の燃料噴射量に対応する噴射信号のON時間に基づき異常判定の実施条件が成立するか否かを判別して、当該異常判定の実施条件が成立する場合、前記駆動電流の監視結果に基づいて異常判定を行うとともに、前記噴射信号のON信号が所定の時間よりも短い場合に異常判定を無効化することを特徴とするディーゼルエンジンの燃料量制御装置。 - 前記駆動回路は、電磁弁に流れる駆動電流と所定のしきい値とを比較してフェイルセーフ信号を生成し、
前記電子制御装置は、フェイルセーフ信号のエッジの有無に基づいて異常判定を行う請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料量制御装置。 - 前記電子制御装置は、併せてエンジン回転数を参照して前記異常判定の実施条件を判別し、高回転域では異常判定を無効化する請求項1又は請求項2に記載のディーゼルエンジンの燃料量制御装置。
- ディーゼルエンジンの各気筒に高圧燃料を分配供給するための燃料噴射ポンプに電磁式燃料スピル弁を前記電磁弁として設け、当該燃料スピル弁の開閉時期を調整してエンジン気筒毎の燃料噴射量を制御する燃料量制御装置において、
前記電子制御装置は、前記その時々の燃料噴射量に対応する噴射信号のON時間として前記燃料スピル弁のON時間を用い、該燃料スピル弁のON時間が所定時間よりも短い場合に異常判定を無効化する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のディーゼルエンジンの燃料量制御装置。 - 前記異常判定の結果が有効な場合において、異常発生時には前記電磁弁の通電を停止させる請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のディーゼルエンジンの燃料量制御装置。
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