JP3950524B2 - 電子写真装置及びプロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真装置及びプロセスカートリッジに関し、より詳しくは特定の電子写真感光体を用い、特定の帯電を行う電子写真装置及びプロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真装置の帯電手段としてはコロナ帯電器が一般的に使用されてきた。また近年、低オゾンなどの利点を有することから、接触帯電装置、即ち電子写真感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加することによって電子写真感光体の帯電を行う装置も実用化されている。しかしながら、コロナ帯電は無論、接触帯電も帯電は帯電部材から電子写真感光体への放電によって行われるため、放電開始電圧以上の電圧を印加することによって帯電が開始される。例えば、膜厚25μmの電子写真感光体を帯電ローラを用いて接触帯電するためには、帯電ローラに対して少なくとも約640V以上の電圧を印加しなければならない。約640V以上の電圧を印加することによって初めて放電が開始され、感光体の表面電位が上昇し始め、それ以降は印加電圧に対して傾き1で線形に感光体の表面電位が上昇する。以後、この放電開始電圧をVthと定義する。つまり、電子写真プロセスに必要とされる感光体の表面電位Vdを得るためには帯電ローラにはVd+VthのDC電圧が必要となる。このように、DC電圧のみを帯電部材に印加することによって電子写真感光体の帯電を行う帯電方式をDC帯電方式と称する。
【0003】
このDC帯電方式では装置周辺の温湿度の変動などにより接触帯電部材の抵抗値が変動するため、あるいは感光体が使用に伴って削れることによって膜厚が変化するとVthが変動するため、感光体の電位を所望する値にすることが困難であった。このため、更なる帯電の均一性を図るために特開昭63−149669号公報などに開示されるように、所望のVdに相当するDC電圧に2×Vth以上のピーク間電圧を持つAC成分を重畳した振動電圧を接触帯電部材に印加して感光体の帯電を行う所謂AC帯電方式が用いられる。この帯電方式では感光体の表面電位は、環境や感光体削れなどの外的要因に影響されることもほとんどなく、Vdに収束する。
【0004】
しかしながら、上述のような接触帯電装置においても、その本質的な帯電機構は帯電部材から電子写真感光体へのエアギャップを介した放電現象を用いているため、先に述べたように帯電に必要とされる電圧は感光体の表面電位を超える値であり、微量であるがオゾンも発生する。また、帯電均一化のためにAC帯電方式を用いた場合には、オゾン発生量の増加、AC電圧の電界による振動音の発生及び放電による感光体表面の劣化が顕著になるなどの問題点が発生していた。
【0005】
そこで、EPA0576203公報やEPA0615177公報などには、実質的に放電を利用せずに帯電部材から電子写真感光体の表面に直接電荷を注入する帯電、所謂注入帯電が提案されている。また、本注入帯電においては前記公報に示されるように、電子写真感光体としてその表面に導電性粉体を含有する層を有するものを用いた場合に良好な帯電が可能となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来注入帯電に用いる試みがなされた電子写真感光体では帯電部材から感光体表面層への電荷の注入性が十分ではなく、注入帯電を良好に行うためには帯電部材と感光体表面との接触面積を十分確保し、かつ接触圧を高くして帯電に十分長い時間をかける必要があった。
【0007】
しかしながら、このように帯電部材と感光体表面の接触圧を高くした場合には、繰り返し使用時において帯電部材と感光体表面との摺擦によって感光体表面にキズが発生し、また表面が削れ、これによって感光体の耐久寿命が決定されていた。従って、注入帯電において感光体の更なる耐久性の向上を図るためには、帯電部材から感光体表面への電荷の注入性を向上させ低い接触圧でも均一な帯電ができるようにする必要があった。
【0008】
本発明の目的は、良好な注入帯電を行うことができ、優れた画像を得ることができ、かつ感光体の耐久寿命の十分長い電子写真装置及びプロセスカートリッジを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、電子写真感光体、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を注入帯電する帯電部材、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置において、
該電子写真感光体の表面層が、下記式(2)のアクリルモノマーまたは下記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂、及び、導電性粉体を含有し、
【0010】
【化16】
【0011】
【化17】
かつ、該導電性粉体が、下記式(5)のシラン化合物または下記式(6)のシラン化合物により表面処理されている
【0012】
【化19】
【0013】
【化20】
(R6は
【0014】
【化21】
を示す。)
ことを特徴とする電子写真装置である。
【0015】
また、本発明は、電子写真感光体、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を注入帯電する帯電部材を一体に支持し、電子写真本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、
該電子写真感光体の表面層が、下記式(2)のアクリルモノマーまたは下記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂、及び、導電性粉体を含有し、
【0016】
【化23】
【0017】
【化24】
かつ、該導電性粉体が、下記式(5)のシラン化合物または下記式(6)のシラン化合物により表面処理されている
【0018】
【化26】
【0019】
【化27】
(R6は
【0020】
【化28】
を示す。)
ことを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0021】
このように、本発明は、特定の構成を有する電子写真感光体を用いることにより、良好な注入帯電が可能となり、かつ感光体の耐久寿命を長くすることが可能となった。また本発明においては感光体の注入帯電性が非常に良好であるため、注入性には劣るが取扱いが容易なブレード形状やローラ形状の帯電部材を用いても良好な注入帯電を行うことが可能となった。
【0022】
なお、帯電がエアギャップでの放電による帯電か、放電することなしに直接電荷を注入することによる帯電かの区別は、前記の通り帯電部材への印加電圧と感光体の表面電位との関係を調べることにより判断が可能である。即ち、放電による帯電では、感光体上の帯電部材への印加電圧に対してしきい値をもち、帯電部材へ印加するDC電圧を0Vから徐々に増加していくと、感光体の表面電位は、印加電圧数百ボルトまで0Vを保った後、放電開始電圧(帯電開始電圧)以降は印加電圧の増加に対して線形に増加していくのに対して、電荷を直接注入することによる帯電では、帯電開始電圧が存在しないかまたは非常に小さく、印加電圧の増加に対して0Vからほぼ線形に感光体の表面電位も増加する。従って、本発明においては、印加電圧と帯電開始電圧の差が100V以下であるような帯電をすることが可能な装置で、実質的に放電することなしに行う帯電を注入帯電と定義する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる電子写真感光体は、その表面層が、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ、該導電性粉体が、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物により表面処理されているものを使用する。
【0024】
表面層中に導電性粉体が分散されていない感光体を本発明に用いた場合には電荷注入の効率が低く帯電が不十分であったり、また電荷注入が不均一であるなどという現象に起因する画像欠陥が発生する可能性が高い。
【0025】
本発明で用いる電子写真感光体の構成としては、上記の表面層が、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ、該導電性粉体が、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物により表面処理されていることを除いては特に規制されるものではなく、従来のいかなる構成の感光体も使用可能であるが、支持体上に光半導体よりなる感光層を設け、更に感光層上に保護層を設けたものが感光体特性の安定性及び生産の容易さの面から最適であり、この場合はその保護層が、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ該導電性粉体が、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物により表面処理されていれば本発明に使用可能である。
【0026】
本発明においては、電子写真感光体表面層の樹脂と表面層に含有される導電性粉体の表面処理剤との関係が電荷の注入性の点において重要であった。即ち、注入帯電では直接、帯電部剤から感光体表面に電荷が注入される必要があるため、感光体表面層の樹脂中の導電性粉体の分散状態が重要であり、注入性のよい導電性粉体の分散状態を再現性よく達成するためには、表面層用の樹脂として、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂を用い、かつ、これに導電性粉体の表面処理剤として、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物を組み合わせることが有効であった。
【0027】
表面層用の樹脂及び導電性粉体の表面処理剤が上記組み合わせと異なる表面層では、前述のように表面層の最表面に効率良く均一に導電性粉体が露出しているわけではなく、注入帯電を良好に行うためには帯電部材と感光体表面との接触面積を十分確保し、かつ接触圧を高くして帯電に十分長い時間をかける必要があった。
【0028】
これに対して表面層用の樹脂として、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂を用い、かつ、該導電性粉体が、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物により表面処理されていれば、樹脂と導電性粉体の相溶性が非常に優れ、表面に導電性粉体が十分にかつ均一に露出し、これによって電荷注入性は飛躍的に向上する。
【0029】
本発明において、表面層用のバインダー樹脂を形成するために用いる、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーは単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。また、他の硬化型モノマーやオリゴマーと混合して共重合樹脂を形成することもできる。このとき、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーの割合は好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上である。
【0030】
更に、本発明の硬化型アクリルモノマーはオリゴマーを他の樹脂と混合して用いることもできる。
【0031】
他の樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フッ素樹脂、セルロース、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂及び塩化ビニール−酢酸ビニル共重合体樹脂などの通常の市販の樹脂を挙げることができる。
【0032】
また、導電性粉体としては、Cu、Al及びNiなどの金属、酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン及び酸化チタンあるいはこれら物質の固溶体もしくは融着体などの金属酸化物、あるいはカーボンブラック、ポリアセチレン、ポリチオフェン及びポリピロールなどの導電性ポリマーなどが使用可能であるが、透光性の点から透明度の高い導電材料を使用することが好ましい。また、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物との反応性の観点から金属酸化物が特に好ましい。
【0033】
本発明において上記導電性粉体は、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物によって表面処理される。
【0034】
表面処理の方法としては、湿式及び乾式の二通りがある。湿式では導電性粉体と前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物とを溶剤中で分散し、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物を粉体表面に付着させる。分散の手段としてはボールミル及びサンドミルなど一般の分散手段を使用することができる。次に、この分散溶液を乾燥機により乾燥させ溶剤を取り除いた後、更に熱処理を行って前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物を導電性粉体表面に固着させる。
【0035】
以上に示したように表面処理は、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物を導電性粉体表面に固着させることによって完了するが、必要によって処理後の粉体に粉砕処理を施してもよい。乾式処理においては溶剤を用いずに前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物と導電性粉体とを混合し混練を行うことによって前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物を粉体表面に付着させる。その後は湿式処理と同様に熱処理や粉砕処理などを施して表面処理を完了する。
【0036】
本発明における導電性粉体に対する前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物の割合は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%である。
【0037】
本発明に用いる表面層は、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物で表面処理された導電性粉体を前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーの溶液中に分散し、これに熱硬化の場合には過酸化物触媒を、光で樹脂を硬化させる場合には以下に例示するような光ラジカル発生剤を添加した溶液を塗布溶液として、塗布後乾燥、硬化させて表面層を形成する。
【0038】
【化29】
【0039】
表面層の膜厚は膜強度と電荷注入性の点より好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。
【0040】
表面層においては導電性粉体の分散性の向上、接着性あるいは平滑性の向上を目的として、種々の添加剤を加えることができる。特に、耐久性及びクリーニング性などの特性向上を目的としてポリテトラフルオロエチレンやフッ化炭素粒子などの含フッ素樹脂粒子やシリコーン樹脂粒子などの滑剤を分散することは非常な有効である。
【0041】
本発明で用いる電子写真感光体の構成としては、支持体及び感光層、または支持体、感光層及び保護層をこの順に有していればよい。これを除いては特に規制されるものではなく、従来のいかなる構成の感光体も使用可能である。
【0042】
感光層としては従来公知のものを使用でき、例えばSe、As2Se3、a−Si、CdS及びZnO2などの無機物光半導体よりなるもの、あるいはPVK−TNFやフタロシアニン顔料及びアゾ顔料などの有機材料を用いたものなどが使用可能である。
【0043】
更に、表面保護層と感光層の間に中間層を設けることもできる。このような中間層は保護層と感光層の接着性を高め、あるいは電荷のバリアー層として機能させることを目的とする。中間層としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂及びシリコーン樹脂などの市販の樹脂材料が使用可能である。
【0044】
前記感光体用の支持体としてはアルミニウム、ニッケル、ステンレス及びスチールなどの金属、導電性膜を有するプラスチックあるいはガラス及び導電化処理した紙などを用いることができる。
【0045】
次に、本発明に用いる帯電部材について説明する。
【0046】
帯電部材の形状としてはローラ、ブレード、ブラシ、導電性液体及び導電性粉体などを電子写真感光体表面に接触させるものなどが挙げられる。帯電部材を構成する材料としては特に限定されるものではなく、例えば金、銀、及び水銀などの金属あるいは樹脂にカーボンブラックなどの導電性粉体を分散したもの、導電性高分子、イオン電導処理したゴム材料及び磁性粉体などが使用可能である。電荷の注入性を向上させるためには帯電部材と電子写真感光体の表面との接触面積を大きくすることが好ましく、この点からスポンジローラ、ブラシ、液体及び粉体形状が好ましい。また、ローラやブラシの場合には、帯電部材を電子写真感光体に対して周速差を持って回転させることにより、感光体表面に接触する帯電部材の面積を増加させることができ、その結果、電荷注入性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明においては帯電部材の電気抵抗の範囲が1×104〜1×109Ωcm2であることが好ましい。帯電部材の抵抗が1×109Ωcm2を超える場合には帯電不良が発生し易く、1×104Ωcm2を下回る場合にはピンホール周辺における帯電不良やピンホールの拡大、帯電部材の通電破壊が生じ易くなる。
【0048】
本発明における帯電部材の抵抗は以下のように測定することができる。まず、帯電部材を直径30mmのアルミニウムシリンダーにニップ幅が3mmとなるように接触する。次に、この帯電部材の電圧印加部分(実際の電子写真装置において帯電部材に電圧を印加する場所。例えば帯電ローラの芯金)に外部より100VのDC電圧を印加し、帯電部材とアルミニウムシリンダーとの間に流れる電流を測定する。この電流値をI(A)とし、下記式から得られる値を帯電部材の抵抗値とした。
【0049】
帯電部材の抵抗(Ωcm2)=100(V)×ニップ面積(cm2)/I(A)(ニップ面積(cm2)=0.3(cm)×帯電部材とアルミニウムシリンダーの接触長さ(cm))
【0050】
なお、本発明における露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段などの電子写真プロセスを行うために必要な手段は、何ら限定されるものではない。
【0051】
以下に本発明を実施例により説明する。
(参考例1)
図1は本発明のプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。本例の電子写真装置は、レーザービームプリンターである。
【0052】
図1において、1は直径30mmのドラム状の電子写真感光体である。感光体1は、矢印方向に100mm/secの周速度で回転駆動される。2は感光体1に接触配置された帯電部材としての回転ブラシローラ(帯電ブラシ)であり、この帯電ブラシ2には帯電バイアス電源S1から−700VのDC電圧が印加され、感光体1の表面がほぼ−680Vに一様に注入帯電される。この感光体1の帯電処理面に対して不図示のレーザービームスキャナから出力されるレーザビームによる走査露光L(露光手段)がなされ、感光体1の周面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。形成された静電潜像は磁性一成分絶縁ネガトナーを用いた反転現像手段3によりトナー画像として反転現像される。
【0053】
3aはマグネットを内包する直径16mmの非磁性現像スリーブであり、この現像スリーブ3aに上記のネガトナーをコートし、感光体1表面との距離を300μmに固定した状態で感光体1と等速で回転させ、スリーブ3aに現像バイアス電源S2より現像バイアスを印加する。電圧は−500VのDC電圧と、周波数1800Hz、ピーク間電圧1600Vの矩形のAC電圧を重畳したものを用い、ジャンピング現像を行う。一方、不図示の給紙部から記録材としての転写材Pが給送されて、感光体1と、これに所定の押圧力で当接させた接触転写手段としての、中抵抗の転写ローラ4との圧接ニップ部(転写部)Tに所定のタイミングにて導入される。転写ローラ4には転写バイアス印加電源S3から所定の転写バイアスが印加される。参考例1ではローラ抵抗値が5×108Ωcm2の転写ローラ4を用い、+2000VのDC電圧を印加して転写を行った。転写部Tに導入された転写材Pはこの転写部Tにおいて、その表面に感光体1の表面に形成されているトナー画像を静電力と押圧力にて転写される。トナー画像の転写を受けた転写材Pは感光体1から分離されて熱定着方式などの定着手段5へ導入されてトナー画像の定着を受け、画像形成物(プリントあるいはコピー)として装置外へ排出される。また、転写材Pに対するトナー画像転写後の感光体表面はクリーニング手段6により残留トナーなどの付着物の除去を受けて清掃される。
【0054】
参考例1の電子写真装置においては、感光体1、帯電部材2、現像手段3及びクリーニング装置6がプロセスカートリッジ20として一体に支持されており、プロセスカートリッジは、電子写真装置本体から一括して着脱自在である。なお、現像手段3やクリーニング手段は一体化されていなくてもよい。
【0055】
参考例1における電子写真感光体1は負帯電用の有機光半導体が用いられており、表面を陽極酸化によって粗面化することにより、レーザーによるモアレの発生を防止したφ30mmのアルミニウムシリンダー上に下記の4層を設けた。
【0056】
アルコール可溶性共重合ナイロン樹脂(平均分子量29000)10部(重量部、以下同様)及びメトキシメチル化6ナイロン樹脂(平均分子量32000)30部をメタノール260部及びブタノール40部の混合溶媒中に溶解した。この調合液を浸漬コーティング法によって塗布して、膜厚が1μmの下引き層を形成した。
【0057】
次に、下記式のジスアゾ顔料4部、
【0058】
【化30】
ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化率68%、平均分子量24000)2部及びシクロヘキサノン34部をサンドミル装置によって12時間分散して電荷発生層用分散液を調製し、この分散液を前記下引き層上に浸漬コーティング法によって塗布して、膜厚が0.2μmの電荷発生層を形成した。
【0059】
次に、下記式で示されるヒドラゾン化合物7部
【0060】
【化31】
及びポリスチレン樹脂10部をモノクロルベンゼン50部に溶解し、この溶液を前記電荷発生層上に浸漬コーティング法によって塗布して、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
【0061】
次に、感光層の上に保護層を形成する。まず、下記式(1)のアクリルモノマー60部、
【0062】
【化32】
【0063】
下記式(4)のシラン化合物(対酸化錫重量比15%)
【0064】
【化33】
を用い湿式処理法によって表面処理された酸化錫超微粒子(平均粒径0.02μm)30部、光重合開始剤として2−メチルチオキサントン10部、トルエン100部及びメチルセルソルブ200部をサンドミルにて48時間分散を行って保護層用の調合液を得た。次に、この調合液を前記電荷輸送層上にスプレーコーティング法によって塗布して膜を形成し、乾燥した後、高圧水銀灯を用い8mW/cm2の光強度で20秒間光照射することによって硬化させて、膜厚3μmの保護層を形成した。
【0065】
参考例1の接触帯電部材としての帯電ブラシ2は、ユニチカ(株)製の導電性レーヨン繊維REC−Cをパイル地にしたテープを直径6mmの金属製の芯金2aにスパイラル状に巻つけて外径14mmのロールブラシとしたもので、600デニール/100フィラメント、1平方インチ当り10000フィラメントの密度で、ブラシの抵抗値は1×105 Ωcm2である。この抵抗値の帯電ブラシ2を用いることにより、感光体1上にピンホールなどの欠陥が生じた場合でも、この部分に過大なリーク電流が流れ込むことを防止することが可能である。
【0066】
この帯電ブラシにDC−700Vの電圧を印加し、これを芯金両端に50gの加重で感光体1に当接させ、感光体の回転方向に対して逆方向に150%の周速で回転させて感光体表面を帯電処理した。
【0067】
以上のような構成の参考例1のプリンターで画像出力を行ったところ、どのような環境下においても良好な画像を出力することができた。このとき、帯電部材2に印加する電圧は帯電電位に相当する−700Vのみであり、従来の接触帯電装置のように放電を励起するための余分な電圧を印加する必要がなくなった。また、このように放電を伴わずに帯電が可能となったため、参考例1においては従来放電に起因していたオゾンの発生及び感光体表面の劣化を防止することができた。
【0068】
(比較例1及び2)
次に、参考例1の画像形成装置を用いて帯電性の比較検討を行った。参考例1で用いた感光体との比較例として、参考例1で用いた感光体の表面層に導電性粉体が含有されていない他は参考例1で用いた感光体と全く同様の感光体を比較例1の感光体として、参考例1で用いた感光体の表面層内の導電性粉体として表面処理を行っていないものを用いた他は参考例1で用いた感光体と全く同様の感光体を比較例2の感光体として用意した。また、参考例1の接触帯電ブラシの抵抗をそれぞれ1×1011Ωcm2、1×108Ωcm2、1×105Ωcm2及び1×102Ωcm2としたものを用意し、各々の組み合わせにおける帯電性、電荷注入性及び耐ピンホール性を検討した。結果を表1に示す。
【0069】
表1に示すように表面層が反応性アクリル基またはメタクリル基を有する硬化型アクリル系モノマーまたはオリゴマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ導電性粉体が反応性アクリル基またはメタクリル基を有するカップリング剤により表面処理されている感光体では良好な帯電性を示すのに対して、表面層に導電性粉体を含有していない感光体ではいずれの抵抗(1×102Ωcm2を除く)の帯電部剤を用いても帯電不良が発生し、表面処理されていない導電性粉体を分散した表面層を有する感光体ではいずれの抵抗の帯電部材を用いても分散不均一による帯電不均一や電荷注入が十分ではないための帯電不良によるカブリが発生した。
【0070】
また、帯電部材の抵抗をパラメータとした場合には前述の通り1×102Ωcm2以下ではピンホールによるリークが発生し、1×1011Ωcm2以上では参考例1の感光体においても帯電不良が発生している。
【0071】
【表1】
【0072】
(実施例1)
本実施例では、帯電部材2として導電磁気ブラシを用い、参考例1のプリンターにおいて感光体と帯電部材のみを変更した他は参考例1と同様である。
【0073】
感光体は参考例1の感光体に対して、保護層のみを変更する。まず、アクリルモノマーを前記式(2)のアクリルモノマーに変更し、シラン化合物を前記式(5)のシラン化合物に変更した。他は参考例1と同様にして感光体を作成した。
【0074】
また、帯電部材としては磁性導電粒子を用いた導電磁気ブラシに変更した。導電磁気ブラシは非磁性の導電スリーブ、これに内包されるマグネットロール及びスリーブ上の磁性導電粒子によって構成され、マグネットロールは固定し、スリーブ表面が感光体ドラムの周速方向と逆に同周速で移動するように回転される。このときの磁性導電粒子は平均粒径20μmの焼結したマグネタイトを用い、導電磁気ブラシの抵抗は参考例1と同様の方法で測定したもので5×104Ωcm2のものを用いた。
【0075】
以上のような構成の本実施例のプリンターで画像出力を行ったところ、どのような環境下においても良好な画像を出力することができた。このとき、帯電部材2に印加する電圧は参考例1と同様に帯電電位に相当する−700Vのみであり、従来の接触帯電装置のように放電を励起するための余分な電圧を印加する必要がなくなった。また、このように放電を伴わずに帯電が可能となったため、本実施例においては従来放電に起因していたオゾンの発生及び感光体表面の劣化を防止することができた。
【0076】
(実施例2)
本実施例では、実施例1のプリンターにおいて感光体のみを変更した。用いる感光体としては、参考例1の感光体の表面層の樹脂を前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂に変更し、表面処理剤を前記式(6)のシラン化合物に変更した他は参考例1と全く同様にして実施例2の感光体を作成した。
【0077】
以上のような構成の本実施例のプリンターで画像出力を行ったところ、どのような環境下においても良好な画像を出力することができた。このとき、帯電部材2に印加する電圧は参考例1と同様に帯電電位に相当する−700Vのみであり、従来の接触帯電装置のように放電を励起するための余分な電圧を印加する必要がなくなった。従って、本実施例においても従来放電に起因していたオゾンの発生及び感光体表面の劣化を防止することができた。また、本実施例のプリンター構成において、10000枚の繰り返しの画像出力を行ったところ、表2に示すように、感光体表面に傷の発生がなく、削れがほとんどない耐久性の非常に高い帯電部材と感光体の構成となった。
【0078】
(比較例3及び4)
次に、比較例として、参考例1で用いた感光体の保護層の樹脂として熱可塑性のポリメチルメタクリレート樹脂を用いた他は参考例1で用いた感光体と全く同様の感光体を比較例3の感光体として、更に参考例1で用いた感光体の保護層において導電性粉体の表面処理剤としてCH3Si(OCH3)3を用いた他は参考例1で用いた感光体と全く同様の感光体を比較例4の感光体として、各々実施例2と同様の評価を行った。この結果、表2に示すように比較例3、4いずれにおいても若干の帯電不良によるカブリが見られ、更に比較例3においては保護層の耐久削れが非常に大きく、耐久7000枚においてすでに保護層全層が削れ、画像にキズ及びカブリが発生した。
【0079】
【表2】
【0080】
【発明の効果】
本発明では、電子写真感光体、該電子写真感光体に接触配置され、電圧を印加されることにより該電子写真感光体を帯電する帯電部材、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置において、該電子写真感光体の表面層が、反応性アクリル基またはメタクリル基を有する硬化型アクリル系モノマーまたはオリゴマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ該導電性粉体が反応性アクリル基またはメタクリル基を有するカップリング剤により表面処理されており、かつ該帯電が注入帯電であることにより、従来では両立できなかった電荷注入による良好な帯電とピンホールによる帯電欠陥の防止及び感光体の高い耐久性能を持たせることが可能となった。
【0081】
本発明により、十分な電位収束性を持つ帯電手段を構成することが可能となり、これにより、良好な画像を安定して出力させることができる低電圧タイプの電子写真装置を構成することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の例を示す図である。
Claims (15)
- 前記電子写真感光体の表面層が、前記式(2)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ、該導電性粉体が、前記式(5)のシラン化合物により表面処理されている請求項1に記載の電子写真装置。
- 前記電子写真感光体の表面層が、前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ、該導電性粉体が、前記式(6)のシラン化合物により表面処理されている請求項1に記載の電子写真装置。
- 前記電子写真感光体が支持体、感光層及び保護層をこの順に有する請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記電子写真感光体の表面層が、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマー、及び、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物により表面処理されている導電性粉体を含有する溶液を塗布して塗膜を形成し、次いで光照射または加熱によって該塗膜中の前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーを硬化させることによって形成された層である請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記導電性粉体が金属酸化物粉体である請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記帯電部材の電気抵抗値が1×104〜1×109Ωcm2である請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真装置。
- 前記電子写真感光体の表面層が、前記式(2)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ、該導電性粉体が、前記式(5)のシラン化合物により表面処理されている請求項8に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記電子写真感光体の表面層が、前記式(3)のアクリルモノマーが重合することにより形成される樹脂及び導電性粉体を含有し、かつ、該導電性粉体が、前記式(6)のシラン化合物により表面処理されている請求項8に記載のプロセスカートリッジ。
- 前記電子写真感光体が支持体、感光層及び保護層をこの順に有する請求項8乃至10のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記電子写真感光体の表面層が、前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマー、及び、前記式(5)のシラン化合物または前記式(6)のシラン化合物により表面処理されている導電性粉体を含有する溶液を塗布して塗膜を形成し、次いで光照射または加熱によって該塗膜中の前記式(2)のアクリルモノマーまたは前記式(3)のアクリルモノマーを硬化させることによって形成された層である請求項8乃至11のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記導電性粉体が金属酸化物粉体である請求項8乃至12のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 前記帯電部材の電気抵抗値が1×104〜1×109Ωcm2である請求項8乃至13のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
- 更に、現像手段及びクリーニング手段の少なくとも一方を有する請求項8乃至14のいずれかに記載のプロセスカートリッジ。
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