JP3946000B2 - 耐熱性電子部品包装容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はIC等半導体や電子部品の包装用に適した、導電性、耐熱性を有する電子部品包装容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
IC等の半導体や液晶等の電子部品を収納する包装形態としては、マガジン、トレー、エンボスキャリアテープ及び紙粘着テープがある。これらの包装体は、近年ラップトップ型コンピュータ、電子手帳等の電子機器の普及により需要が急増しており、とくに製品の小型化による軽量短小化が著しく、その製造工程についても多くの改善すべき点を抱えている。
【0003】
例えば、半導体では、実装時の半田リフロー工程で高温加熱(200〜260℃)されると、使用したモールド樹脂が大気中から吸収した水分を放出して、膨れやクラックを起こしてパッケージクラックへと進行したり、モールド樹脂とリードフレームとの剥離が生じる場合があるため、半導体製造後は防湿包装により吸湿を防いでいる。最近は、耐湿性の改善された変性樹脂の使用も提案されているが、まだ十分ではない。
【0004】
パッケージが厚いSOPやQFP等やチップサイズの小さいものは、開封後長期間放置しなければ、問題ないが、とくにTSOP,TQFP等の超薄膜型半導体では短時間で吸湿が進行し、半田リフロー時にパッケージクラックを起こす確立が高いので、防湿包装が必要とされるが、包装材料によっては湿気が侵入しモールド樹脂が吸湿することがあり、長時間保存後はベーキングしなければならない。
【0005】
一方、液晶用トレー等の製造工程においても、コーティングや接着する際に加熱する工程があり、多くの改善が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これら半導体や電子部品の包装形態としてエンボスキャリアテープや導電トレーが採用されており、従来はポリスチレン、ポリ塩化ビニール等の材料が用いられていた。従来使用されている材質のキャリアテープを使用してベーキングを行うと、60℃のベーキング温度で形状が変形してしまう等の問題が生じる。この対策として、135℃の耐熱性を有するシートとして、ポリカーボネート樹脂に導電性塗料を塗工したシートが提案されている(特開平5−162772)が、高価で過剰スペックであるため、70℃〜130℃の耐熱性を有する安価な包装形態が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題は、本発明により解決される。すなわち、本発明は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂の基材層の少なくとも片面に、ポリカーボネート系樹脂に5〜50重量%のカーボンブラックを含有してなる導電性樹脂組成物を積層した導電シートを用いた耐熱性キャリアテープ及び耐熱性トレーに関する。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS共重合体樹脂)とはアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの三成分を主体とした共重合体を主成分とするものをいう。例えばジエン系ゴムに芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体の一種類以上の単量体をブロックあるいはグラフト重合して得られた共重合体およびその共重合体とのブレンド物があげられる。ここで述べるジエン系ゴムとはポリブタジエン、ポリイソプレンやアクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体であり、芳香族ビニル単量体としてはスチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等があげられる。シアン化ビニル単量体としてはアクリロニトリル、メタアクリロニトリル及び各種ハロゲン置換アクリロニトリル等があげられる。上述の共重体及びその共重合体とのブレンド物の具体例としてはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン三元共重合体やアクリロニトリル−スチレン二元共重合体にポリブタジエンをポリマーアロイ化したものがあげられる。またゴム成分を含まないアクリロニトリル−スチレン二元共重合体についてもこの範囲に当てはまる。
【0008】
ポリカーボネート系樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、芳香族−脂肪族ポリカーボネートがあげられ、通常エンジニアプラスチックに分類させるもので、一般的なビスフェノールAとホスゲンとの重縮合またはビスフェノールAと炭酸エステルの重縮合により得られるものも用いることができる。
【0009】
本発明のシートの基材層はABS共重合体を主成分とした熱可塑性樹脂からなり、更に熱可塑性樹脂に対して1〜50重量%の範囲でPC系樹脂を添加することも可能である。PC系樹脂を添加することにより更に機械的強度の向上が可能となるが安価なシートを得る為には50重量%以下の範囲に留めるのが好ましい。
【0010】
基材層にはカーボンブラックを流動性を損なわない程度に少量添加することが可能であり、カーボンブラックの添加により更に機械的強度の向上が図られるとともにシートを包装容器に成形した際にシート厚みが薄くなり成形品のコーナー部等が透けてしまうといった問題点を解決することが可能となる。
【0011】
基材層に含有させるカーボンブラックには特に限定はなく基材層樹脂中に均一に分散できるものであれば良い。シート基材層中のカーボンブラックに添加量としては上述の如く流動性を損なわない程度であれば良く、好ましくは熱可塑性樹脂に対して0.1〜10重量%である。
【0012】
基材層にはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂やエチレン、プロピレンの共重合体(例えばエチレン−エチルアクリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体樹脂等)などのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂等の他の樹脂成分を改質剤として添加することも可能であり、必要に応じて滑剤、可塑剤、加工助剤などの各種添加剤を添加することが可能である。
【0013】
導電性樹脂組成物中に含有させるカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等があり、好ましくは比表面積が大きく、樹脂への添加量が少量で高度の導電性が得られるもの、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラックが望ましい。
【0014】
導電性樹脂組成物のカーボンブラックに添加量は導電性樹脂中において5〜50重量%が好ましい。5重量%未満では静電気による電子部品の破壊を防止するために十分な表面固有抵抗値が得られない。50重量%を超えると流動性が低下しシート基材に積層することが困難になるとともに得られるシートの機械的強度も低下してしまう。
【0015】
導電性樹脂組成物を積層した側の表面抵抗値は10〜1010Ωであることが好ましく、この範囲から外れると静電気による電子部品の破壊を抑制することが困難となる。
【0016】
また、導電性樹脂組成物中にはABS共重合体樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のの他の樹脂成分を改質剤として添加することも可能であり、更に必要に応じて滑剤、可塑剤、加工助剤などの各種添加剤を添加することが可能である。
【0017】
本発明の導電シートを製造するには、まず導電性樹脂組成物の原料全部または一部を押出機等の公知の方法を用いて混練、ペレット化し、得られた導電性樹脂組成物をシート基材となる熱可塑性樹脂と共に押出機等の公知の方法によってシートとすることができる。
【0018】
導電性樹脂組成物の混練に際しては、原料を一括して混練することも可能である。また例えばPC系樹脂の半分とカーボンブラックを混練し、その混練物に残りの原料を加えて件練するといった様に段階的に混練することも可能であるし、更にシートとする際にこれらを加えることも可能である。
【0019】
基材層に導電性樹脂組成物を積層するには、それぞれを別々の押出機によりシート若しくはフィルム状に成形した後、熱ラミネート法、ドライラミネート法、押出しラミネート法等により段階的に積層することが可能である。あるいは、予め成形したシート基材の上に押出コーティング等の方法により積層することも可能である。そして、より安価に製造するにはマルチマニホールドダイやフィードブロックを用いた多層押出法により一括して積層シートを得ることが好ましい。
【0020】
本発明のシート全体の肉厚は0.1〜3.0mmであり、且つ全体の肉厚に占める導電性樹脂組成物層の肉厚は2%〜80%であることが好ましい。全体の肉厚が0.1mm未満ではシートを成形して得られる包装容器としての強度が不足し、3.0mmを超えると圧空成形、真空成形、熱版成形等の成形が困難となる。また導電性樹脂組成物層の肉厚が2%未満ではシート成形して得られる包装容器の表面固有抵抗値が著しく高くなり十分な静電気抑制効果が得られず、80%を超えると圧空成形、真空成形、熱板成形等の成形性が低下してしまう。
【0021】
導電シートは電子部品包装用容器として好適に使用することができる。導電シートをキャリアテープやトレーに加工するには、真空成形法、圧空成形法等の公知の方法によって得ることができる。導電シートからなるキャリアテープ、トレー等の電子部品包装容器は耐熱性および導電性に優れる。
【0022】
【実施例】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
導電性樹脂組成物としてはPC系樹脂(パンライトL−1225、帝人化成社)及びケッチェンブラックEC(ライオンAKZO社)をPC系樹脂に対して12重量%をφ50mmベント式2軸押出機によって予め混練、ペレット化し導電性樹脂コンパウンドを得た。該導電性樹脂コンパウンドとシート基材層用熱可塑性樹脂としてABS共重合体樹脂(テクノABSYT−346、テクノポリマー社)を使用し、φ65mm押出機(L/D=28)、φ40mm押出機(L/D=26)及び500mmは場のTダイを用いたフィードブロック法により全体の肉厚が300μm、導電性樹脂組成物層の肉厚が両側30μmとなるような3層シートを得た。このシートをスリッターで27mm幅にした。これをキャリアテープ成形機(EDG社)を用いて、テープ幅24mm、ポケットの大きさ横16mm、縦12mmのエンボスキャリアテープを作製し、内径100mm、外径280mmのアルミ製リールに1000ポケット分巻取り、温度100℃のドライ環境下30秒及び80℃のドライ環境下24時間放置した。所定時間経過後、収縮率を測定した結果、加熱前に比べ、寸法ともにほぼ同等の値を示した。その結果を表1に示す。
【0023】
実施例2
実施例1と同様にして、3層シートを得た。これを真空圧空成形機(浅野社製)を用いて、縦24cm、横16cmのトレーを作製し、温度100℃のドライ環境下30秒及び80℃のドライ環境下24時間放置した。所定時間経過後、収縮率を測定した結果、加熱前に比べ、寸法ともにほぼ同等の値を示した。その結果を表1に示す。
【0024】
比較例1
シート基材層用樹脂としてPS系樹脂(トーヨースチロールE640N、東洋スチレン社)を使用した以外は実施例1と同様にして、エンボスキャリアテープを作製し、内径100mm、外径280mmのアルミ製リールに1000ポケット分巻取り、温度100℃のドライ環境下30秒及び80℃のドライ環境下24時間放置したところ、いずれも形状変化が甚だしく、寸法測定に至らず測定できなかった。
【0025】
比較例2
シート基材層用樹脂としてPS系樹脂(トーヨースチロールE640N、東洋スチレン社)を使用した以外は実施例2と同様にして、トレーを作製し、温度100℃のドライ環境下30秒及び80℃のドライ環境下24時間放置したところ、いずれも形状変化が甚だしく、寸法測定に至らず測定できなかった。
【0026】
【表1】
Figure 0003946000
【0027】
【発明の効果】
本発明のキャリアテープ及びトレーは耐熱性、導電性に優れる。IC等の電子部品をベーキングする際の容器として好適に用いる事ができる。

Claims (6)

  1. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂の基材層の両面に、ポリカーボネート系樹脂に5〜50重量%のカーボンブラックを含有してなる導電性樹脂組成物を多層共押出法により積層して両側を表面層とした導電シートを用いた耐熱性キャリアテープ。
  2. アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂の基材層の両面に、ポリカーボネート系樹脂に5〜50重量%のカーボンブラックを含有してなる導電性樹脂組成物を多層共押出法により積層して両側を表面層とした導電シートを用いた耐熱性トレー。
  3. 基材層に更にポリカーボネート系樹脂を熱可塑性樹脂に対し1〜50重量%を含有してなる請求項1に記載の耐熱性キャリアテープ。
  4. 基材層に更にポリカーボネート系樹脂を熱可塑性樹脂に対し1〜50重量%を含有してなる請求項2に記載の耐熱性トレー。
  5. 基材層に熱可塑性樹脂に対して0.1〜10重量%のカーボンブラックを含有してなる請求項1又は請求項3に記載の耐熱性キャリアテープ。
  6. 基材層に熱可塑性樹脂に対して0.1〜10重量%のカーボンブラックを含有してなる請求項2又は請求項4に記載の耐熱性トレー。
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