JP3945383B2 - 分解性樹脂、その製造方法及び分解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な分解性樹脂、その製造方法及びその樹脂の分解方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、液状もしくは低融点をもち、かつ、有機溶剤に対する溶解性や各種樹脂に対する相溶性に優れ、良好な化学性能、物理性能及び貯蔵安定性を有すると共に、特に分解性に優れ、低温条件下で分解する電材関係の用途に適用可能な分解性樹脂、特にフラックス剤や接着剤の用途に適用可能な分解性樹脂、その製造方法及び前記の分解性樹脂の分解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高分子は、熱、光、放射線、化学試薬、微生物などの作用により、分解し、モノマーあるいは低分子化合物を生成することが知られており、使用済みの高分子の廃棄、焼却といった、資源、公害問題に関連して多くの方法が提案されている。しかしながら、従来の手法は、分解に高温条件を必要とし、また、モノマーの再生には、窒素雰囲気下あるいは、真空下の条件を必要とする等の問題点があった。さらに、再生したモノマー類は、樹脂合成用の原料として再利用されるのみであり、そのもの自体が、塗料、接着剤、プラスチック成型品等の硬化剤あるい金属酸化物除去を目的としたフラックスなどモノマー分子中の官能基を利用したその他の分野で利用されることはほとんどないのが現状である。
本発明者らは、先に、ジカルボン酸化合物のカルボキシル基とジビニルエーテルを反応させることにより得られるポリへミアセタールエステル樹脂を提案している(国際公開特許WO00/4064号明細書、特許文献1)。前記化合物は、比較的低い温度にてジカルボン酸化合物とジビニルエーテルを再生し、再生したジカルボン酸化合物は、塗料、接着剤、プラスチック成型品等の硬化剤として有用であり、また、カルボキシル基を利用したフラックス成分としても有用である(特開2001−239395号公報、特許文献2)。しかしながら、前記の樹脂は、カルボキシル基とジビニルエーテル基もしくはジビニルチオエーテル基との反応を利用するのみであり、分解によって生成する反応性基は、カルボキシル基のみであり、カルボキシル基と反応しない基に対しては利用できないなど問題があった。さらに、分解の際に、ジビニルエーテルもしくはジビニルチオエーテルが一部生成し、揮発するが、このジビニルエーテルもしくはジビニルチオエーテルの毒性は極めて低く安全であるものの、近年のVOC削減の観点から環境問題に対しては好ましいとは必ずしもいえなかった。
【特許文献1】
国際公開特許WO00/4064号明細書
【特許文献2】
特開2001−239395号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、本発明の第1の目的は、比較的低い温度で分解し、分解後にカルボキシル基とビニル基の2つの反応性官能基を再生する、有機溶剤および樹脂との相溶性に優れた実装基板等に部品を装着する際のはんだ付けフラックスおよびはんだペーストに好適な分解性樹脂を提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記の分解性樹脂の製造方法を提供することにある。
また、本発明の第3の目的は、前記の分解性樹脂の分解方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する分解性樹脂を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の酸無水物と、特定の1分子あたりビニルエーテル基1個と水酸基(ヒドロキシル基)1個とを有するヒドロキシビニルエーテル、または特定の1分子あたりビニルチオエーテル基1個と水酸基(ヒドロキシル基)1個とを有するヒドロキシビニルチオエーテルとを付加反応させることにより得られる分解性樹脂が、その目的を達成しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[5]である。
[1] 1分子あたりカルボキシル基2個以上を有するカルボン酸の無水物と、1分子あたりヒドロキシル基とビニルエーテル基を少なくとも1個づつ有するヒドロキシビニルエーテル化合物またはヒドロキシル基とビニルチオエーテル基を少なくとも1個づつ有するヒドロキシビニルチオエーテル化合物とを反応させてなることを特徴とする重量平均分子量500〜100,000の分解性樹脂。
[2] 下記式(1)で表される基を繰り返し単位として有する前記の[1]に記載の分解性樹脂。
【0005】
【化2】
【0006】
(式中のR1、R2は2価の有機基であり、Yは酸素原子又はイオウ原子である。)
【0007】
[3] 1分子あたりカルボキシル基2個以上を有するカルボン酸の無水物を原料として、これとヒドロキシビニルエーテル化合物またはヒドロキシビニルチオエーテル化合物とを反応させることを特徴とする分解性樹脂の製造方法。
[4] 前記の反応において、触媒として塩基触媒を使用する[3]記載の分解性樹脂の製造方法。
[5] 前記の[3]または[4]に記載の製造方法で得られた酸価が5.0mgKOH/gより高い樹脂に、さらにアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルを反応させて、樹脂酸価を5.0mgKOH/g以下にすることを特徴とする分解性樹脂の製造方法。
[6] 前記の[1]または[2]に記載の分解性樹脂を温度150〜300℃に加熱して樹脂を分解する方法。
[7] 前記の[1]または[2]に記載の分解性樹脂と酸触媒とを配合してなる樹脂配合物を温度150〜300℃に加熱して樹脂配合物を分解する方法。
[8] 酸触媒が、加熱時に活性を示す熱潜在性酸触媒である[7]に記載の分解する方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の分解性樹脂は、1分子あたりカルボキシル基2個以上を有するカルボン酸の無水物と、1分子あたりヒドロキシル基とビニルエーテル基とを少なくとも1個づつ有するヒドロキシビニルエーテル化合物またはヒドロキシル基とビニルチオエーテル基とを少なくとも1個づつ有するヒドロキシビニルチオエーテル化合物とを反応させてなる重量平均分子量500〜100,000の樹脂であることを特徴とする。
またさらに、本発明の分解性樹脂は、下記式(1)で表される基を繰り返し単位として有することを特徴とする。
【0009】
【化3】
【0010】
ここで、式(1)中のR1は、二価の有機基であり、好ましくは、二価の置換もしくは無置換の炭素数1〜20の脂肪族または芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは二価の脂肪族又は芳香族の炭素数1〜20の基であり、R2は二価の有機基であり、好ましくは二価の置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基またはグリコール残基であり、さらに好ましくは二価の炭素数1〜20のアルキル基またはグリコール残基である。
またさらに、Yは酸素原子またはイオウ原子である。
式(1)中のR1の炭素数が21以上であると原料が入手しにくい等の問題がある。
また同様の理由から式(1)中のR2の炭素数は、1〜20が好ましい。
【0011】
また、前記の分解性樹脂は、下記式(2)で表される。
【0012】
【化4】
【0013】
ここで、R1、R2およびYは前記に同じである。またZ1、Z2はジカルボン酸無水物またはヒドロキシビニルエーテルもしくはヒドロキシビニルチオエーテル由来の残基である。
また、nは1〜400の整数である。nが400を越える場合は、樹脂の分子量が大きくなりすぎ合成しにくい。
ここで、Z1は、水素原子または次式(3)で表され、Z2は、次式(4)で表される。
【0014】
【化5】
【0015】
【化6】
【0016】
本発明の分解性樹脂は、次のような方法により製造することができる。すなわち、下記式(5)
【0017】
【化7】
【0018】
(式中のR1は、2価の有機基である。)で表される酸無水物を原料として、これと下記式(6)
【0019】
【化8】
【0020】
(式中のR2は、二価の有機基である。また、Yは、酸素原子またはイオウ原子である。)で表されるヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシビニルチオエーテルを、場合により用いられる塩基触媒の存在下、好ましくは室温ないし200℃の温度で反応させることにより、前記の分解性樹脂が得られる。
【0021】
前記式(5)で表される酸無水物としては、具体的には例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(M−HHPA)、3−メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、2,3−ジフェニル無水コハク酸、2,3−ピリジンジカルボン酸無水物、1,1−シクロヘキサンジ酢酸無水物、グルタル酸無水物、ジグリコール酸無水物などの酸無水物が挙げられる。
前記の酸無水物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの酸無水物の中でも、無水コハク酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸は、入手性、作業性、ヒドロキシビニルエーテルとの反応性及び得られる分解性樹脂の溶剤に対する溶解性、樹脂に対する相溶性から好ましく挙げられる。
【0022】
前記式(6)で表されるヒドロキシビニルエーテル化合物としては、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシヘプチルビニルエーテル、ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロへキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル(CHMVE)、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。また、前記の式(6)で表されるヒドロキシビニルチオエーテル化合物としては、前記のヒドロキシビニルエーテルに対応するヒドロキシビニルチオエーテルなどが挙げられる。
前記の式(6)で表されるヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシビニルチオエーテルは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等が入手性及び酸無水物との反応性の点から好ましく挙げられる。
【0023】
例えば、前記式(5)で表される酸無水物と前記式(6)で表されるヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシビニルチオエーテル化合物を反応させる際の反応比は、{前記式(5)で表される酸無水物/前記式(6)で表されるヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシビニルチオエーテル化合物}のモル比で、残存する未反応物の残存量や樹脂に対する物性の点から、モル比で、通常1.0:0.5〜1.0:5.0であればよく、好ましくは、1.0:0.8〜1.0:4.0であり、特に好ましくは、1.0:1.0〜1.0:3.0である。
モル比が1.0:0.5より式(6)で表される化合物が少ないと、酸無水物が多く未反応物として残存するので好ましくなく、前記のモル比が1.0:5.0より式(6)で表される化合物が多いと式(6)で表される化合物が多く未反応として残存するので好ましくない。
また反応温度は、通常室温ないし200℃の範囲の温度であればよく、好ましくは室温〜150℃である。また、この反応の反応時間は、反応進行状況に応じて適宜選定すればよいが、通常1〜100時間でよい。この際、反応を促進させる目的で、塩基触媒を使用することができる。
【0024】
そのような触媒としては、例えば、ピロール、ベンゾイミダゾール、2−ヒドロキノリン、3−ヒドロキノリン、4−ヒドロキノリン、ピペリジン、ジヘキシルアミン、ジドデシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジアミルアミン、ジメチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、トリプロピルアミン、アミルアミン、オクチルアミン、t−ブチルアミン、シクロへキシルアミン、s−ブチルアミン、エチルアミン、フェニルプロピルアミン、2−メチルキノリン、メチルピロリジン、メチルピペリジン、4−メチル−8−ヒドロキノリン、フェニルエチルアミン、トリエチルアミン、ビニルメチルアミン、アリルアミン、メトキシベンジルアミン、ベンジルピロリジン、エタノールアミン、ジエチルベンジルアミン、エトキシメチルアミン、ベンジルアミン、2−ヒドロキシピリミジン、ジメチルベンジルアミン、ジエタノールアミン、モルフォリン、トリエタノールアミン、メチルイミダゾール、ジメチルトルイジン、メチルモルフォリン、t−ブチルアニリン、イミダゾール、2−ヒドロキシピリジン、3−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジンが挙げられる。
これらの塩基触媒は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。塩基触媒の使用量は、特に制限ないが、酸無水物とヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシビニルチオエーテルの合計量100重量部に対して、通常0.0005〜5.0重量部が好ましく、特に0.001〜1.0重量部が好ましい。
合成する分解樹脂の分子量、その樹脂を使用する用途選択する配合系にもよるが、通常得られる樹脂の酸価は、50mgKOH/g以下である。より好ましくは、樹脂の酸価は、30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは、5.0mgKOH/g以下である。特にフラックスやはんだペーストに本発明の分解性樹脂を用いる場合には、樹脂の酸価が低い方が保存等においてより安定性に優れるので望ましい。
【0025】
さらに本発明の分解性樹脂の酸価を下げる目的で、分解性樹脂末端のカルボキシル基にさらにアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルを反応させることができる。そのようなアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルとしては、例えば、式(7)、(8)
【0026】
【化9】
【0027】
(式中のR3は、炭素数1〜50の2価の有機基であり、Yは酸素原子またはイオウ原子である。)
【0028】
【化10】
【0029】
(式中のR4は、炭素数1〜50の2価の有機基であり、Yは酸素原子またはイオウ原子である。)で表される。
【0030】
より具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、2−エチルへキシルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、アミノプロピルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等のモノビニルエーテル;トリメチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ペンタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル等のジビニルエーテル;及びこれらの対応するビニルチオエーテル、ジビニルチオエーテルなどが挙げられる。
【0031】
前記のビニルエーテル、ビニルチオエーテル、ジビニルエーテル、ジビニルチオエーテルの中でも、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテルが入手性及び反応性の点から好ましく挙げられる。
【0032】
これらのアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルは、1種または2種以上を組合せて用いることができる。
分解性樹脂の末端カルボキル基と前記式(7)、(8)のアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテル化合物を反応させる際の反応比は、残存する未反応物の残存量や樹脂に対する物性の点から、当量比{(カルボキシル基/ビニルエーテル)の当量比}で、通常1.0:1.0〜1.0:5.0であればよく、好ましくは、1.0:2.0〜1.0:5.0である。
当量比が1.0:1.0より式(7)、(8)で表される化合物が少ないと、
分解性樹脂の酸価が下がらないので好ましくなく、前記の当量比が1.0:5.0より式(7)、(8)で表される化合物が多いと式(7)、(8)で表される化合物が多く未反応として残存するので好ましくない。
また反応温度は、通常室温ないし200℃の範囲の温度であればよく、好ましくは室温〜150℃である。また、この反応の反応時間は、反応進行状況に応じて適宜選定すればよいが、通常1〜100時間でよい。
【0033】
また、反応系を均一にし、反応を容易にする目的で有機溶媒も使用することができる。そのような有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、テレビン油、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等の芳香族炭化水素;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、酢酸メトキシブチル等のエステル及びエーテルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等のケトン類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
また、これらの溶媒量としては、特に限定されないが、原料である酸無水物とヒドロキシビニルエーテルまたはヒドロキシビニルチオエーテルとの合計量100部に対して、5〜95重量部、より好ましくは20〜80重量部が挙げられる。
【0034】
本発明の分解性樹脂は、加熱、あるいは紫外線や電子線のような活性線の照射により主鎖中のヘミアセタールエステル構造が分解し、対応する低分子量化合物が生成する。ここで、ヘミアセタール構造とは、−C(=O)−O−CH(CH3)−O−を示す。
その樹脂を分解する温度としては、150〜300℃の範囲が好ましく挙げられる。
この分解反応は、熱潜在性酸触媒により助長される。そのような熱潜在性酸触媒としては、プロトン酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物、ルイス酸とトリアルキルホスフェートの混合物、スルホン酸エステル類、リン酸エステル類、及びオニウム化合物類が好ましく挙げられる。
【0035】
該プロトン酸をルイス酸で中和した化合物としては、例えば、ハロゲノカルボン酸類、スルホン酸類、硫酸モノエステル類、リン酸モノ及びジエステル類、ポリリン酸エステル類、ホウ酸モノ及びジエステル類等を、アンモニア、モノエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、アニリン、モルホリン、シクロへキシルアミン、n−ブチルアミン、モノエチノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種アミンもしくはトリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、トリアルキルホスファイト、トリアリールホスファイトで中和した化合物、さらには、酸−塩基ブロック化触媒として市販されているネイキュアー2500X、X−47−110、3525、5225(商品名、キングインダストリー社製)などが挙げられる。また、ルイス酸をルイス塩基で中和した化合物としては、例えば、BF3、FeCl3、SnCl4、AlCl3、ZnCl2などのルイス酸を前記のルイス塩基で中和した化合物が挙げられる。
あるいは上記ルイス酸とトリアルキルホスフェートとの混合物も挙げられる。該スルホン酸エステル類としては、例えば、式(9)
【0036】
【化11】
【0037】
(式中のR5はフェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基またはアルキル基、R6は一級炭素又は二級炭素を介してスルホニルオキシ基と結合している炭素数3〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基、飽和もしくは不飽和のシクロアルキルまたはヒドロキシシクロアルキル基である)で表される化合物が挙げられる。
前記の化合物としては、具体的には例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類とn−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ルなどの第一級アルコール類又はイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノールなどの第二級アルコール類とのエステル化物、さらには前記スルホン酸類とオキシラン基含有化合物との反応により得られるβ‐ヒドロキシアルキルスルホン酸エステル類などが挙げられる。
該リン酸エステル類としては、例えば、下記式(10)
【0038】
【化12】
【0039】
(式中のR7は、炭素数3〜10のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基、Sは1又は2である)で表される化合物が挙げられる。
前記の化合物としては、具体的には例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノ−ル、2−エチルヘキサノ−ル等の第一級アルコール類、及びイソプロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノ−ル、シクロヘキサノール等の第二級アルコール類のリン酸モノエステル類あるいはリン酸ジエステル類が挙げられる。
【0040】
また該オニウム化合物としては、例えば、一般式(11)〜(14)
[ R8 3NR9 ] + X - ・・・・・ (11)
[ R10 3PR11 ] + X - ・・・・・ (12)
[ R12 2OR13 ] + X - ・・・・・ (13)
[ R14 2SR15 ] + X - ・・・・・ (14)
(式中のR8、R10、R12、R14は炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、アルカノール基またはシクロアルキル基であって、2個のR9、R11、R13、R15は互いに結合してN、P、O又はSをヘテロ原子とする複素環を形成していてもよく、R9、R11、R13、R15は水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、X-はSbF6 -、AsF6 -、PF6 -又はBF4 -である)で表される化合物などが挙げられる。
また、光酸触媒としては、β−ケトスルホン、イミノスルホナート、ベンゾインスルホナート、O−ニトロベンジルスルホナート、アデカオプトマーSPシリーズ(商品名、旭電化工業(株)製)等が利用できる。
【0041】
前記の酸触媒及び光酸触媒は、それぞれ1種用いてもよいし、2種以上を組合わせてもよく、また、その配合量は、前記の分解性樹脂100重量部あたり、通常0.01〜10重量部の範囲で選ばれる。酸触媒及び光酸触媒の量が0.01重量部未満では触媒効果が十分に発揮されないし、10重量部を超えると、分解した低分子化合物が着色したり、副反応を起こすことがあり好ましくない。
【0042】
さらに、本発明の分解性樹脂は、式(1)で表される基を繰り返し単位として1種のみを有するものでもよいし、2種以上を有するものでもよく、また式(1)で表される基を繰り返し単位とする以外に他の基を繰り返し単位として含んでいてもよい。また、当該分解性樹脂の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、通常500〜100,000の範囲のものであり、好ましくは900〜50,000の範囲のものである。
さらに、本発明の分解性樹脂はそのままで、もしくは、本発明の効果を損なわない範囲において、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂等の汎用熱可塑性樹脂と本発明の分解性樹脂と混合して使用することもできる。また、場合により、着色顔料、フィラー、エラストマー、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、流動調整剤等を配合して使用することもできる。
【0043】
本発明の分解性樹脂は、加熱等により容易に分解することができる。また、前記の酸触媒や光酸触媒を前記の分解性樹脂に配合したものは、さらに分解温度を低下させるなど樹脂の設計に適用することができる。例えば その分解温度としては、120〜300℃が挙げられる。従って、本発明の分解性樹脂は、前記のようにフラックス剤やハンダペースト用の材料として樹脂の分解温度を目的に合わせて設計を行うことができるので有用である。なお本発明の分解性樹脂の分解して生じた成分は、次式(15)で表わされる構造である。したがって、分解された成分は二重結合やカルボキシル基を利用することができる。
【0044】
【化13】
【0045】
ここで、式中R1、R2、およびYは前記に同じ。
【0046】
【発明の効果】
本発明の分解性樹脂は、新規高分子化合物であり、有機溶媒に対する溶解性や各種樹脂に対する相溶性に優れる。また、本発明の分解性樹脂は、分解性にも優れることから、リサイクルの面で有用であり、また、分解後、カルボキシル基が生じることから、特に例えば、実装基板等に部品を装着する際のはんだ付け用フラックス、及びフラックスを含有したはんだぺ―ストなどに好適に用いられる。
また、分解して生じたヒドロキシビニルエーテルのジカルボン酸ハーフエステルもしくはヒドロキシビニルチオエーテルのジカルボン酸ハーフエステルは、二重結合やカルボキシル基により他の反応性基と反応することができる。
また本発明の製造方法は、酸無水物とヒドロキシビニルエーテルもしくはヒドロキシビニルチオエーテルと反応させるので容易に前記の分解性樹脂を得ることができる製造方法である。
また、本発明の樹脂の分解方法は、前記樹脂を加熱するか、あるいは酸触媒を配合して加熱することにより容易に分解できる方法である。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。次に用いた分析方法、評価方法を示す。
1.<IRの測定条件>
機種;日本分光(株)社製、FT/IR−600、
セル;臭化カリウムを用いた錠剤法、
分解;4cm-1、
積算回数;16回。
2.<13C−NMRの測定条件>
機種;日本ブルカー(株)社製、400MHzのAdvance400、
積算回数;20000、
溶媒;CDCl3、TMS基準。
3.<ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
機種;東ソー(株)社製、ゲル浸透クロマトグラフィーSC−8010、
カラム;昭和電工(株)製SHODEX K−801、
溶離液;THF、
検出器;RI。
4.<不揮発分の測定>
JIS K 5407−4に準じて試料を140℃30分加熱乾燥させた後、冷却して、重量を測定して残存量より測定する。
5.<酸価の測定>
JIS K 0070−3(1992)の方法に準じて測定する。
5.<水酸基価の測定>
JIS K 0070−7(1992)の方法に準じて測定する。ただし、アセチル化試薬として無水酢酸を使用する。
6.<TG−DTAの測定条件>
機種;セイコーインスツルメント(株)社製TG/DTA220、
昇温速度;10℃/min、
窒素流量;50ml/min。
【0048】
実施例1;分解性樹脂(A)の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれ表1記載の組成の単量体として無水コハク酸16.3重量部、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)71.7重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)12.0重量部を仕込み、温度を110℃〜120℃に保ちながら5時間かき混ぜながら反応した。放冷後、分液ロートに生成物を移した。得られた生成物は、10重量%炭酸水素ナトリウム水溶液100重量部でアルカリ洗浄後、洗浄液のpHが7以下になるまでに200重量部の脱イオン水で洗浄を数回繰り返した。次いで硫酸マグネシウムで有機層中を乾燥した後、浴温度35℃で減圧濃縮した。さらに残査を真空乾燥し、淡黄色透明の分解性樹脂(A)を43.5重量部得た。仕込み組成、反応条件とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定、不揮発分の測定等の分析結果を表1に示す。
【0049】
実施例2〜8;分解性樹脂(B〜H)の製造
表1に示したように仕込み組成や条件を変更した以外は、実施例1と同様にして反応し、さらに精製して淡黄色の分解性樹脂(B〜H)を得た。実施例1と同様に仕込み組成とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定、不揮発分の測定結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例9;分解性樹脂(I)の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれ表2記載の組成の単量体として無水コハク酸36.0重量部、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)38.0重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)25.0重量部、反応触媒としてトリエチルアミン1.0重量部を仕込み、温度を60℃に保ちながら3時間かき混ぜながら反応した。その後、温度を100℃に上昇させ、100℃に保ちながら2時間撹拌しながら反応した。反応後の酸価が30mgKOH/g以下であることを確認し、反応を停止させた。この後、生成物を分液ロートに移し、ヘキサン/アセトン=9/1の混合溶液によりポリマー分の再沈精製を行った。さらに、ロータリーエバポレーターを用い、混合液から溶剤を留去し、その後、真空乾燥することにより、淡黄色透明の分解性樹脂(I)を71.3重量部得た。仕込み組成、反応条件とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定等の分析結果を表2に示す。
【0052】
実施例10、11;分解性樹脂(J、K)の製造
表2に示したように仕込み組成や条件を変更した以外は、実施例9と同様にして反応し、さらに精製して淡黄色の分解性樹脂(J、K)を得た。実施例9と同様に仕込み組成とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定等の分析結果を表2に示す。
【0053】
実施例12;分解性樹脂(L)の製造
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、それぞれ表2記載の組成の単量体として無水コハク酸30.0重量部、ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)31.7重量部、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)21.0重量部、反応触媒としてトリエチルアミン0.8重量部を仕込み、温度を60℃に保ちながら3時間かき混ぜながら反応した。その後、温度を100℃に上昇させ、100℃に保ちながら2時間撹拌しながら反応した。反応後の酸価が20mgKOH/g以下になった時点でn−ブチルビニルエーテル16.5重量部を添加し、さらに100℃で3時間かき混ぜながら反応した。その後、混合物の酸価が5.0mgKOH/g以下であることを確認し、反応を停止させた。この後、生成物を分液ロートに移し、ヘキサン/アセトン=9/1の混合溶液によりポリマー分の再沈精製を行った。さらに、ロータリーエバポレーターを用い、混合液から溶剤を留去し、その後、真空乾燥することにより、淡黄色透明の分解性樹脂(L)を73.6重量部得た。仕込み組成、反応条件とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定等の分析結果を表2に示す。
【0054】
実施例13、14;分解性樹脂(M、N)の製造
表2に示したように仕込み組成や条件を変更した以外は、実施例12と同様にして反応し、さらに精製して淡黄色の分解性樹脂(M、N)を得た。実施例12と同様に仕込み組成とポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定等の分析結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表中の成分および略号は、以下のものを示す。
*1) M−HHPA(4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物)、
*2) HEVE(ヒドロキシエチルビニルエーテル)、
*3) HBVE(ヒドロキシブチルビニルエーテル)、
*4) CHMVE(シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル)、
*5) PMA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)。
【0057】
表1、表2より本発明の分解性樹脂は、反応触媒として塩基性触媒を用いることで、反応温度を低くすることができ、さらに、カルボン酸の酸無水物とヒドロキシビニルエーテル又はヒドロキシビニルチオエーテルとの反応を効率よく進行させることができることから、ヒドロキシビニルエーテル又はヒドロキシビニルチオエーテルの仕込み量を減らすことができ、収率も大幅に改善することができる。また、上記反応で生じる樹脂末端のカルボキシル基にアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルを反応させることで、樹脂酸価を5.0mgKOH/g以下にすることができる。このような低酸価の分解性樹脂は、はんだペーストや導電性ペースト等の金属組成物に配合した場合、金属とカルボキシル基との金属石鹸反応を抑制できることから、保存安定性の向上に有用である。
【0058】
また、実施例2、4、5で得られた分解性樹脂について赤外線吸収スペクトル測定(IRスペクトル)を行ったところ、それぞれ図1、図2、図3に示す吸収チャートが得られた。この図より分解性樹脂のIRスペクトルにおいては、カルボニルの吸収が1732cm-1〜1736cm-1に観測され、また、ビニル基の吸収が2800cm-1〜3000cm-1に観測されたことなどから下記式(9)、(10)、(11)で表される分解性樹脂が得られたことがわかる。また、生成物の13C−NMR等からも構造を確認した。実施例2、4、5で得られた分解性樹脂の13C−NMRのチャートを図4、図5、図6に示す。
なお、その他の実施例(実施例1、3、6〜8)で得られた分解性樹脂に関しても、IRスペクトル、13C−NMRにより構造を確認した。
【0059】
さらに、実施例2、4、5で得られた分解性樹脂の熱分解挙動を熱重量分析により測定を行ったところ図7、図8、図9に示すような分解挙動を示すことが確認でき、低い温度で分解することが確認できた。
【0060】
【化14】
【0061】
n1は22〜32である。
【0062】
【化15】
【0063】
n2は36〜46である。
【0064】
【化16】
【0065】
n3は43〜53である。
【0066】
実施例15〜22
実施例1〜8で得られた分解性樹脂(A〜H)を用い、下記の溶解性試験および相溶性試験の方法により、溶剤およびエピコート828の樹脂に対する相溶性を調べた。結果を表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
7.<溶解性試験>
実施例1〜8で得られた樹脂(A〜H)10gと有機溶剤90gとをガラス瓶に採取し、よくかき混ぜた。さらに3時間静置した後の状態を観察することにより分解性樹脂の有機溶剤に対する溶解性を調べた。
(*1)溶解性の評価は、以下の基準に従って行った。
○:均一溶液となった。
×:不溶であった。
8.<相溶性試験>
実施例1〜8で得られた分解性樹脂(A〜H)10gとエピコート828(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジャパンエポキシレジン(株)製商品名)10gとをガラス瓶に採取し、よくかき混ぜた。さらに3時間静置した後の状態を観察することにより実施例1〜8で得られた分解性樹脂のエピコート828に対する相溶性を調べた。
(*1)相溶性の評価は、以下の基準に従って行った。
○:均一溶液となった。
×:不溶であった。
【0069】
比較例1〜6
実施例1〜8の原料として用いた無水コハク酸(比較例1)、無水マレイン酸(比較例2)、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(M−HHPA、比較例3)、さらに、コハク酸(比較例4)、マレイン酸(比較例5)、4−メチルヘキサヒドロフタル酸(比較例6)を使用して、実施例9〜16と同様にして溶解性と相溶性を調べた。結果を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
表3,4の結果より実施例1〜8で得られた分解性樹脂(A〜H)はいずれも有機溶剤及び樹脂に対する溶解性、相溶性が優れていることがわかる。
また比較例である原料として用いた無水コハク酸、無水マレイン酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、さらに、コハク酸、マレイン酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸の溶解性、相溶性は、実施例1〜8で得られた分解性樹脂(A〜H)に比べて劣ることわかる。
【0072】
前記の分解性樹脂(A〜H)を用い、前記の方法によりTG−DTAの測定を行った。結果を表5に示す。
実施例23〜25、比較例7〜9
表6に示すように前記の樹脂B,D,Eとp−トルエンスルホン酸/ピリジン塩を配合(実施例23;樹脂Bとp−トルエンスルホン酸/ピリジン塩、実施例24;樹脂Dとp−トルエンスルホン酸/ピリジン塩、実施例25;樹脂Eとp−トルエンスルホン酸/ピリジン塩)して前記の方法に準じて、TG−DTAの分析を行った。また比較例としてポリエチレン(比較例7)、ポリメチルメタクリレート(PMMA;比較例8)塩化ビニル(PVC;比較例9)についても同様に熱分解性を調べた。結果を表6に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
【表6】
【0075】
表5、表6より、本発明の分解性樹脂は、それぞれ酸無水物とヒドロキシビニルエーテルの化合物を選択することにより、一般的な樹脂と比較し、低い温度で分解させることができる。また触媒を用いることで、さらにその分解温度を低く設定できることがわかる。
【0076】
合成例1;ブロック化ロジンの合成例
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた4つ口フラスコに、精製ロジン(荒川化学工業(株)社製、商品名:パインクリスタルKE−604)502g、トリエチレングリコールジビニルエーテル(日本カーバイド工業(株)社製)298gを仕込み、30分かけて常温から100℃まで上昇させた。続いて、100℃で4時間反応させ、酸価が5mgKOH/g以下であることを確認し、反応を停止させた。次いで、ロータリーエバポレーターにより未反応のトリエチレングリコールジビニルエーテルを留去し、その後、真空ポンプにより真空乾燥することにより、酸価3.9mgKOH/g、粘度1.5ポイズの淡黄色透明液体を得た。
【0077】
実施例20;はんだペーストの作成と評価結果
前記の実施例2で得られた分解性樹脂Bを用いて、以下の配合・方法によりはんだペーストを作成・評価を行った。結果を表7に示す。
樹脂成分として合成例1で得られたブロック化ロジン2.0重量部、活性剤として実施例2で得られた分解性樹脂5.5重量部、チクソトロピー性付与剤として脂肪酸アミド0.7重量部、溶剤としてテトラエチレングリコールジメチルエーテル1.0重量部、防錆剤としてベンゾトリアゾ−ル0.5重量部、キレート化剤としてアセトニルアセトン0.3重量部、エポキシ化合物としてデシルグリシジルエーテル(日本油脂(株)社製、商品名:エピオールL−41)1.5重量部を混合し、フラックス組成物を調整した。このフラックス組成物に20〜30μmの粒度分布をもつ、Sn89/Zn8/Bi3(数値は金属の重量比を示す)の鉛フリーはんだ粉末88.5重量部を添加し、プラネタリ−ミキサーにより混練し、はんだペーストを製造した。その後、以下に示す試験方法により評価を行った。
【0078】
実施例21、22
実施例20で使用した分解性樹脂を、実施例9で得られた分解性樹脂I、実施例12で得られた分解性樹脂Lに変更し、実施例20と同じ条件ではんだペーストの製造及び評価を行った。結果を表7に示す。
【0079】
【表7】
【0080】
比較例10〜12
表8に示す市販の材料とSn89/Zn8/Bi3(数値は金属の重量比を示す)の鉛フリーはんだ粉末とを所定の混合比率で配合、混練し、はんだペーストを製造した。得られたはんだペーストに対して、実施例20〜22と同様な評価を行った。結果を表8に示す。尚、100時間後の粘度測定は、はんだペーストが流動性のないボソボソの状態となり測定することができなかった。
【0081】
【表8】
【0082】
試験方法は以下の通りである。
9.<ぬれ広がり性>
JIS Z 3284の附属書10に準じた。
評価は、次のとおりであり、以下の凝集度1〜4の4段階のぬれ広がり度合いの区分表示に従った。
1;はんだペーストから溶解したはんだが試験版をぬらし、ペーストを塗布した面積以上に広がった状態、
2;はんだペーストを塗布した部分はすべてはんだがぬれた状態、
3;はんだペーストを塗布した部分の大半は、はんだがぬれた状態、(ディウエッティングも含まれる。)
4;試験版ははんだがぬれた様子はなく、溶融したはんだは1つまたは複数のはんだボールとなった状態(ノンウエッティング)
10.<ソルダーボール試験(はんだの凝集度合い)>
JIS Z 3284の附属書11に準じて行った。評価は、以下の1〜5の5段階の広がり度合いの区分表示に従った。
1;はんだ粉末が溶融して、はんだは1つの大きな球となり、周囲にソルダーボールがない状態、
2;はんだ粉末が溶融して、はんだは1つの大きな球となり、周囲に直径75μm以下のソルダーボールが3つ以下である状態、
3;はんだ粉末が溶融して、はんだは1つの大きな球となり、周囲に直径75μm以下のソルダーボールが4つ以上あり、半連続の環状に並んではいない状態、
4;はんだ粉末が溶融して、はんだは1つの大きな球となり、周囲に多数の細かい球が半連続の環状に並んでいる状態、
5;1〜4以外の状態。
【0083】
11.<ボイド発生評価(接合の信頼性)>
60mm2の銅板に、厚さ150μmのメタルマスクを用いて、直径6mm×6個のパターンを印刷後、大気雰囲気下でリフローした。次いで、カッターではんだと共に銅板を切断した後、該はんだ部分を顕微鏡により観察し、ボイドの発生状況を観察した。6個のパターンについて大きさが10μm以上のボイドを計測し、1個のパターン当たりの平均個数が2個未満の場合を合格、2個以上の場合を不合格とした。
12.<絶縁性>
JIS Z 3284に基づき絶縁抵抗試験を行った。
○:1011Ω以上〜、
△:109Ω以上 〜1011Ω未満、
×: 〜109Ω未満。
13.<粘度の経時安定性>
ハンダペースト製造後、25℃で7日間保存する加速試験を行い、ハンダペースト製造直後の粘度と加速試験後の粘度の比を指標とした。本加速試験の条件は大略3ヶ月間、5℃の冷蔵保管に相当する。粘度の測定は、(株)マルコム製スパイラル粘度計で測定した。測定条件は、JIS Z 3284のスパイラル方式に基づき行った。
14.<残渣の洗浄性>
はんだペーストを塗布、リフロー後の櫛形基板を温度30℃に調節したD−リモネンに超音波中5分浸漬し、乾燥してから、目視観察を行い、残渣の程度を3水準で評価した。
○:目視では残渣が確認できない。
△:わずかに残渣が認められる。
×:明らかに残渣が残留した。
尚、使用した櫛形基板は、導体幅:0.318mm、導体間隔:0.318mm、重ね代:15.75mm、基板寸法:50mm×50mm×1.6mmに規定したものを使用した。
また、超音波の発振周波数は38kHzとした。
【0084】
表7、8の結果より、本発明の分解性樹脂を配合したはんだペーストは、はんだ合金のぬれ性が良好で、電気絶縁性、ボイド特性にも優れていた。また、保存安定性にも優れており、25℃、7日間放置後も、十分な流動性を有していた。さらに、樹脂の酸価を5mgKOH/g以下にした分解性樹脂を配合した実施例22で、はんだペーストの保存安定性を飛躍的に向上させることができた。これに対し、市販の材料を用いて製造したはんだペーストは、はんだ合金のぬれ性、電気絶縁性、ボイド特性が悪く、また、25℃、7日間後の保存安定性に関しても、はんだペーストが増粘して、流動性のないボソボソの状態となり、はんだ付けに使用できるような状態ではなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例2で合成した分解性樹脂の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図2】図2は、実施例4で合成した分解性樹脂の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図3】図3は、実施例5で合成した分解性樹脂の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図4】図4は、実施例2で合成した分解性樹脂の13C−NMRスペクトルチャートである。
【図5】図5は、実施例4で合成した分解性樹脂の13C−NMRスペクトルチャートである。
【図6】図6は、実施例5で合成した分解性樹脂の13C−NMRスペクトルチャートである。
【図7】図7、実施例2で合成した分解性樹脂のTG−DTAチャートである。
【図8】図8、実施例4で合成した分解性樹脂のTG−DTAチャートである。
【図9】図9、実施例5で合成した分解性樹脂のTG−DTAチャートである。
Claims (6)
- 1分子あたりカルボキシル基2個以上を有するカルボン酸の無水物と、1分子あたりヒドロキシル基とビニルエーテル基を少なくとも1個づつ有するヒドロキシビニルエーテル化合物またはヒドロキシ基とビニルチオエーテル基を少なくとも1個づつ有するヒドロキシビニルチオエーテル化合物とを反応させてなることを特徴とする重量平均分子量500〜100,000の分解性樹脂であって、下記式(1)で表される基を繰り返し単位として有する分解性樹脂。
- 請求項1に記載の分解性樹脂を得る反応において、触媒として塩基触媒を使用する分解性樹脂の製造方法。
- 請求項2に記載の分解性樹脂の製造方法で得られた酸価が5.0mgKOH/gより高い樹脂に、さらにアルキルビニルエーテルまたはアルキルビニルチオエーテルを反応させて、樹脂酸価を5.0mgKOH/g以下にすることを特徴とする分解性樹脂の製造方法。
- 請求項1に記載の分解性樹脂を温度150〜300℃に加熱して樹脂を分解する方法。
- 請求項1に記載の分解性樹脂と酸触媒とを配合してなる樹脂配合物を温度150〜300℃に加熱して樹脂配合物を分解する方法。
- 酸触媒が、加熱時に活性を示す熱潜在性酸触媒である請求項5に記載の分解する方法。
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