JP3945038B2 - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽光エネルギーを電気エネルギーに直接変換する色素増感型太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、化石燃料に代わるエネルギー源として太陽光を利用する種々太陽電池が開発されている。現在実用化されている太陽電池の主流は、多結晶又はアモルファスシリコンをセルとするものであるが、製造プロセスにおけるエネルギー消耗が高く、又はガリウムやヒ素等の毒性の高い材料を使用することには問題があった。近年、多結晶又はアモルファスシリコンをセルとする太陽電池の代わりに、酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池が開発されている。
【0003】
この種の太陽電池の原理は、酸化物半導体としての二酸化チタンに、これよりも高い位置に電子の最低空軌道を有する光増感色素を吸着させ、可視光を吸着した増感色素の励起状態から酸化物半導体の伝導体へ速い電子移動が起こることを応用したものである。このような太陽電池には、「Nature」,Vol.261,p402(1976年)学会誌(以下イ号学会誌という)に記載されているようなものが一般的であった。
【0004】
また、イ号学会誌に記載のものを改良した新しい構造の太陽電池が「Nature」,Vol.352,p737(1991年)学会誌(以下ロ号学会誌という)が開示されている。これは透明導電膜上に酸化チタンを焼結し、その酸化チタン上にルテニウムビピリジル錯体を吸着させたものである。これは、8%〜10%程度の高い変換効率を有し実用的にもある程度耐えうる性能を持っていると考えられる。また、「Journal of Physical Chemistry」,Vol.97,No.23,p6272(1993年)学会誌には、酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池の新規な増感色素が開示されている。そこで、いくつかのクロロフィル誘導体について評価をしたデータが記載されている。
【0005】
また、特開平9−199744号公報(以下ハ号公報という)には、カルボキシル基を有する種々の金属を中心に持つフタロシアニン化合物を利用する色素増感型太陽電池が開示されている。
【0006】
更に、特開平10−93118号公報(以下ホ号公報という)、同10−92477号公報(以下ニ号公報という)には、トリフェニメルタン骨格、クマリン骨格、アクリジン骨格、9−フェニルキサンテン骨格を有する有機色素を用いた太陽電池が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の酸化物半導体電極を用いた色素増感型太陽電池では以下の課題を有していた。
【0008】
イ号学会誌に記載の酸化物半導体電極を含む太陽電池には、光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率は低く、実用化は困難であるという課題を有していた。
【0009】
ロ号学会誌に記載の有機色素を用いた太陽電池には、増感色素として使用するルテニウム錯体は希少な金属であり、極めて高価であった。太陽電池で大きなエネルギーを生み出すためには大面積が必要である。現在、実用化されているシリコン系の太陽電池は高価であり普及の大きな妨げになっている。従って、太陽電池を普及させるためには安価な素材を用い、安価な製造方法によって作製できるものでなくてはならない。しかし、ロ号学会誌に記載の増感色素には希少な金属ルテニウムを使用することで、ルテニウムが希少かつ極めて高価なので、入手しにくいという課題を有していた。
【0010】
ハ号公報に記載の湿式太陽電池には、増感色素として使用するフタロシアニン化合物が半導体として用いられる二酸化チタン表面との結合が弱く、耐久性に欠けるという課題を有していた。
【0011】
ホ号、ニ号公報に記載の有機色素を用いた太陽電池には、増感色素として使用する9−フェニルキサンテン骨格を有する有機色素が電子供給体から色素の最高被占軌道への電子移動が遅く、光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率は低いという課題を有していた。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、安価な材料を使用した増感色素を利用できるとともに、高い光エネルギー変換効率を有し、安全かつ耐久性に優れる色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記従来の課題を解決するために本発明における色素増感型太陽電池は、透明導電膜を備えた透明基板と、前記透明基板と対極をなす導電性基板との間に色素を担持させた半導体電極と電解質層とがあり、光電変換によって前記透明導電膜と前記導電性基板との間に電気エネルギーを発生する色素増感型太陽電池であって、前記増感色素が、少なくとも1種の一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体を含む構成を有している。
【0014】
この構成により、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素が安全かつ安価な材料であるため、入手しやすく、生産性に優れるという作用を有する。
【0015】
また、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素は光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率を向上できるという作用を有する。
【0016】
また、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素は耐久性に優れるという作用を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の色素増感型太陽電池は、透明導電膜を備えた透明基板と、前記透明基板と対極をなす導電性基板との間に色素を担持させた半導体電極と電解質層とがあり、光電変換によって前記透明導電膜と前記導電性基板との間に電気エネルギーを発生する色素増感型太陽電池であって、前記増感色素が、少なくとも1種の一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体を含む構成を有している。
【0018】
これにより、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素が安全かつ安価な材料であるため、入手しやすく、生産性に優れるという作用を有する。
【0019】
また、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素は光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率を向上できるという作用を有する。
【0020】
また、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素が、太陽光を効率的に吸収するので、光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率を向上できるという作用を有する。
【0021】
また、一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体の増感色素は耐久性に優れるという作用を有する。
【0022】
ここで、増感色素としては、その骨格炭素に、カルボキシル基を有するものが特に好ましい。即ち、(化1)と(化2)式中のR1〜R8では、HまたはCOOH基が用いられる。R1〜R8の少なくとも1つはCOOH基を有することが好ましい。また、R10とR11にはCOOH基,アルキル基,またはアリール基が用いられる。増感色素の具体例としては、以下の(化6)乃至(化10)の化合物が挙げられる。
【0023】
【化6】
Figure 0003945038
【0024】
【化7】
Figure 0003945038
【0025】
【化8】
Figure 0003945038
【0026】
【化9】
Figure 0003945038
【0027】
【化10】
Figure 0003945038
【0028】
酸化物半導体としては、従来公知のものが包含される。このようなものには、Ti、Nb、Zn、Sn、Zr、Y、La、Ta等遷移金属の酸化物の他、SrTiO3、CaTiO3等のべロプスカイト系酸化物等が挙げられる。この酸化物半導体粉末は、できるだけ微粒子であることが好ましい。その平均粒径は1nm〜5000nm、好ましくは2nm〜50nmが用いられる。また、その比表面積は、5m2/g〜50000m2/g、好ましくはl0m2/g〜10000m2/gが用いられる。酸化物半導体の比表面積は、10m2/gより小さくなるにつれ、酸化物半導体表面に吸着される単分子層の増感色素の量が少なくなるという傾向が認められ、また10000m2/gよりも大きくなるにつれ、作るのが難しくなるという傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0029】
酸化物半導体電極の形状としては、特に制約されず、膜状、板状、柱状、円筒状等の各種の形状であることができるが、一般的には、導電性表面を有する基板上に形成された膜形状で用いられる。
【0030】
酸化物半導体電極の透明基板としては、少なくともその表面が導電性表面に形成された基板が用いられる。このような透明基板としては、ガラス等の耐熱性基板上に、酸化インジウム、酸化錫、酸化錫インジウムなどの導電性金属酸化物薄膜を形成したものや金属等の導電性材料からなる基板が用いられる。これらの中にはフッ素等のドーピング材料を含有することも好ましい。透明基板の厚さは特に制約されないが、通常、0.3〜5mmである。このような透明基板は、透明又は可視光に対して80%以上の透過率があるものが特に好ましい。また、赤外線、紫外線等の電磁波に対して透過性があるものでもよい。
【0031】
電解液としては、レドックス電解質や溶媒が用いられて調整した。レドックス電解質は、I-/I3 -系や、Br-/Br3系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようをレドックス電解質は、従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I-/I3 -系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。溶媒は、電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。
【0032】
対極としては、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I3 -イオン等の酸化型レドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。
【0033】
また本発明は、透明導電膜を備えた透明基板と、前記透明基板と対極をなす導電性基板との間に増感色素を担持させた半導体電極と電解質層とがあり、光電変換によって前記透明導電膜と前記導電性基板との間に電気エネルギーを発生する色素増感型太陽電池であって、前記増感色素が、少なくとも1種の一般式(化3)及び/または(化4)で表される銅フェナン卜ロリン一価錯体を含む構成のものを含む
【0034】
ここで、増感色素としては、一般式(化3)及び/または(化4)で表される銅フェナン卜ロリン一価錯体が用いられる。骨格炭素に、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基等の酸性基又はその水溶性塩から選ばれる置換基を有している。これらを有するものは、酸化物半導体に対する吸着性にすぐれているためである。カルボキシル基を有するものは特に好ましい。即ち、(化3)と(化4)式中のR1〜R8では、HやCOOH,SO3,OH,NH2等置換基が用いられる。R1〜R8の少なくとも1つはCOOH,SO3,OH,NH2等置換基を有することが好ましい。また、R10とR11にはCOOHやSO3,OH,NH2,アルキル基,アリール基等置換基が用いられる。増感色素の具体例としては、以下の(化11)乃至(化14)の化合物が挙げられる。
【0035】
【化11】
Figure 0003945038
【0036】
【化12】
Figure 0003945038
【0037】
【化13】
Figure 0003945038
【0038】
【化14】
Figure 0003945038
【0039】
また本発明は、透明導電膜を備えた透明基板と、前記透明基板と対極をなす導電性基板との間に増感色素を担持させた半導体電極と電解質層とがあり、光電変換によって前記透明導電膜と前記導電性基板との間に電気エネルギーを発生する色素増感型太陽電池であって、前記増感色素が、少なくとも1種の一般式(化5)で表される亜鉛ポルフィリン錯体を含む構成のものを含む
【0040】
ここで、増感色素としては、一般式(化5)で表される亜鉛ポルフィリン錯体が用いられる。(化5)式中のR12〜R15では、HやCOOH,SO3,OH等置換基が用いられるが、R12〜R15の少なくとも1つはCOOH,SO3,OH,等置換基を有することが好ましい。増感色素の具体例としては、以下の(化15)乃至(化18)の化合物が挙げられる。
【0041】
【化15】
Figure 0003945038
【0042】
【化16】
Figure 0003945038
【0043】
【化17】
Figure 0003945038
【0044】
【化18】
Figure 0003945038
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池の要部断面図である。
【0046】
図1において、1は本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池、2は太陽光9を通過できる透明基板、3は太陽光9を通過できる透明基板2に形成された透明導電膜、4は透明導電膜3の表面に形成されて増感色素を担持させた酸化物半導体膜、5は導電膜6を担持される基板、6は基板5に付着された導電膜、7は透明基板2と透明導電膜3と酸化物半導体膜4を備えた半導体電極と基板5と導電膜6を備えた対極とそれらの電極に接触してレドックス電解質が用いられる電解液、8は前記半導体電極や電解液7及び対極を収納して付止されるケース、9は太陽光線である。
【0047】
以上の構成を有した実施の形態1について、以下その各部分の形成を具体的に説明する。
【0048】
半導体電極を製造するには、先ず、酸化物半導体の微粉末を含む塗布液を作る。この酸化物半導体微扮末は、その1次粒子径が微細な程好ましく、そのl次粒子径は、通常、1〜5000nm,好ましくは2〜50nmである。酸化物半導体微粉末を含む塗布液(スラリー液)は、酸化物半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された酸化物半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。
【0049】
上記塗布液の溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール類、ポリビニルアルコール等の高分子化合物)を加えることができる。溶媒中の酸化物半導体微紛末濃度は、0.lwt%〜70wt%、好ましくは0.5wt%〜30wt%に用いられる。半導体微紛末濃度は、半導体微紛末の種類によるが、0.5wt%より小さくなるにつれ、酸化物半導体が基板表面上に塗布する効率が低くなるという傾向が認められ、また30wt%よりも大きくなるにつれ、塗布液の粘度が増加し均一な塗布が難しくなるという傾向が認められるので、いずれも好ましくない。
【0050】
次に、前記塗布液を基板上に塗布、乾燥し、次いで空気中又は不活性ガス中焼成して、基板上に酸化物半導体膜を形成する。このように得られる酸化物半導で体の被膜は、酸化物半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した酸化物半導体微粉末のl次粒子径に対応するものである。このようにして基板上に形成された酸化物半導体微粒子集合体膜は、基板との結合力及びその微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、これを焼成して機械的強度が高められ、かつ基板に強く固着した焼成物膜とする。
【0051】
この酸化物半導体膜は、多孔質構造膜とし、その厚さはl0nm〜10000nm、好ましくは100〜1000nmに形成される。かつその見かけ表面積に対する実表面積の比をl0以上、好ましくはl00以上とする。この比の上限は特に制約されないが、通常、1000〜2000である。前記見かけ表面積とは、通常の表面積を意味し、例えば、その表面形状が長方形の場合には、縦の長さ×横の長さで表される。前記、実表面積とは、クリプトンガスの吸着量により求めたBET表面積を意味する。その具体的測定方法は、見かけ表面積1cm2の基板付酸化物半導体膜をBET表面積測定装置(マイクロメリティクス社製、ASAP2000)を用い、液体窒素温度で、クリプトンガスを吸着せる方法である。この測定方法により得られたクリプンガス吸着量に基づいてBET表面積が算出される。
【0052】
このような多孔質構造の酸化物半導体膜は、その内部に微細な細孔とその表面に微細凹凸を有するものである。焼成物膜の厚さ及び見かけ表面積に対する実表面積の比が前記範囲より小さくなると、その表面に増感色素を単分子膜として吸着させたときに、その増感色素分子膜の表面積が小さくなり、光吸収効率の良い電極を得ることができなくなる。前記のような多孔質構造の焼成物膜は、酸化物半導体微粒子を含む塗布液を基板上に塗布、乾燥して形成された微粒子集合体膜の焼成に際し、その焼成温度を低くし、微粒子集合体膜を軽く焼結させることによって得ることができる。この場合、焼成温度は1000℃より低く、通常、300℃〜900℃、好ましくは500℃〜800℃である。焼成温度が800℃より高くなると、焼成物膜の焼結が進みすぎ、その実表面積が小さくなり、所望する焼成物膜を得ることができないので、好ましくない。前記見かけ表面積に対する実表面積の比は、酸化物半導体微粒子の粒径及び比表面積や、焼成温度等によりコントロールすることができる。
【0053】
次に、前記のようにして得られた酸化物半導体膜表面に、有機色素を単分子膜として吸着させ、増感色素を担持させた酸化物半導体膜を形成させる。このためには、一般式(化1)及び/又は(化2)の有機色素を有機溶媒に溶解させて形成した有機色素溶液中に、酸化物半導体膜を基板とともに浸漬すればよい。この場合、色素溶液が、多孔質構造膜である酸化物半導体膜の内部深く進入するように、その膜を増感色素溶液への浸漬に先立ち、減圧処理したり、加熱処理して、膜中に含まれる気泡をあらかじめ除去しておくのが好ましい。浸漬時聞は、30分〜24時間程度であるが、色素の種類に応じて適宜定める。また、浸漬処理は、必要に応じ、複数回繰返し行うこともできる。前記浸漬処理後、有機色素を吸着した化合物半導体膜は、常温〜80℃で乾燥する。尚、酸化物半導体膜に吸着させる増感色素は、1種である必要はなく、好ましくは光吸収領域の異なる複数の増感色素を吸着させる。これによって、光を効率よく利用することができる。
【0054】
複数の増感色素を膜に吸着させるには、複数の増感色素を含む溶液中に膜を浸漬する方法や、増感色素溶液を複数用意し、これらの溶液に膜を順次浸漬する方法等が挙げられる。増感色素を有機溶媒に溶解させた溶液において、その有機溶媒としては、有機色素を溶解し得るものであれば任意のものが使用可能である。このようなものとしては、例えば、メタノール、エタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン等、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。溶液中の増感色素の濃度は、溶液100ml中、1mg〜10000mg、好ましくは10mg〜500mg程度であり、増感色素及び有機溶媒の種類に応じて適宜定める。
【0055】
以下、実施の形態1における色素増感型太陽電池の形成又は応用について、図面を用いて説明する。
【0056】
図2は実施の形態1における色素増感型太陽電池の応用回路図である。
図2において、10は本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池の応用回路、11は色素増感型太陽電池の短絡電流を測定する無抵抗電流計、12は色素増感型太陽電池の開放電圧を測定するポテンシャル計、13は色素増感型太陽電池の短絡電流や開放電圧を測定する操作のスイッチ、14は抵抗値が調節できる抵抗器である。尚、図1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
以上の構成を有した実施の形態1について、以下その各部分の形成又は動作を具体的に説明する。
【0058】
実施の形態1の色素増感型太陽電池は、前記酸化物半導体電極と対極とそれらの電極に接触するレドックス電解質とから構成される。前記酸化物半導体電極、電解質及び対極をケース内に収納して封止するか又はそれら全体を樹脂封止する。ここで用いられる樹脂としては紫外線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等一般的なものの他、ガラス、金属酸化物等からなるフィラー添加や基板との界面の接着性を向上させるためにシラン系に代表される接着助剤を用いることもできる。本発明の太陽電池は光があたる構造とする必要があるが、構造を強化するために2重構造にする事もできる。このような構造の電池は、その酸化物半導体電極に太陽光又は太陽光と同等な可視光をあてると、酸化物半導体電極とその対極との間に電位差が生じ、両極間に電流が流れるようになる。
【0059】
これらの太陽電池を動作させる光源として500Wのキセノンランプを用いた。420nm以下の波長の光はフィルターでカットした。動作時の短絡電流及び開放電圧が無抵抗電流計やポテンシャル計が用いられて測定する。
【0060】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における色素増感型太陽電池は増感色素が一般式(化3)及び/又は(化4)を用いた以外、実施の形態1と同じもの及び同じ方法で形成された。
【0061】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における色素増感型太陽電池は増感色素が一般式(化5)を用いた以外、実施の形態1と同じもの及び同じ方法で形成された。
【0062】
【実施例】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0063】
(実施例1)
本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池が増感色素(化7)を用いて製造を行った。
【0064】
増感色素(化7)式の化合物の合成:文献(J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,p1909(1996))に記載の方法に従って、増感色素(化7)式の化合物を合成した。合成された(化7)式の化合物が元素分析を行った。元素分析の確認結果を以下に示す。
【0065】
Figure 0003945038
元素分析結果より目的物増感色素(化7)であることを確認した。
【0066】
色素増感型太陽電池の制作:3cm×3cmのフッ素ドープ酸化錫基板(旭ガラス社製)を純水で洗浄後、酸化チタンの微粉末(日本アエロジル社製、P−25、表面積55m2/g)が非イオン界面活性剤を含む水とアセチルアセトンの混合液(混合比20/1)中に濃度約1wt%で分散させて懸濁液を得た。次に、この液をフッ素ドープ酸化錫導電性ガラス基板上に塗布し自然乾燥した。さらに得られた基板を500℃にて1時間焼成した。得られた酸化チタンの焼成膜の厚みは約7μであった。この酸化チタン膜の単位表面積における実表面積(即ち、ラフネスファクター)は800であった。
【0067】
次に、エタノールに0.1%の濃度で溶解させた上記増感色素(化7)を80℃保持し、酸化チタンを付与した透明基板を浸漬して増感色素の吸着を行った。
【0068】
色素を吸着させた基板を引き上げ室温にて乾燥した。
このようにして作製した酸化物半導体電極を対極として作製した1μ厚に白金をスパッタリングした導電性ガラスと張り合わせて、すき間に電解質溶液を流し込んだ。電解質溶液としてはテトラプロピルアンモニウムヨーダイド(0.46M)とヨウ素(0.6M)を含むエチレンカーボネートとアセトニトリルの混合溶液(容量比80/20)を用いた。電解質溶液を注入後、基板のまわりをスリーボンド社製光硬化性樹脂にて封着して色素増感型太陽電池が形成させた。
【0069】
形成させた太陽電池を動作させる光源として500Wのキセノンランプを用いた。420nm以下の波長の光はフィルターでカットした。動作時の短絡電流及び開放電圧が無抵抗電流計とポテンシャメーターが用いられて測定する。その結果を(表1)に示す。
【0070】
【表1】
Figure 0003945038
【0071】
(実施例2)
本発明の実施の形態2における色素増感型太陽電池が増感色素(化12)を用いて製造を行った。
【0072】
増感色素(化12)式の化合物の合成:文献(J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,p1909(1996))に記載の方法に従って、増感色素(化12)式の化合物を合成した。合成された(化12)式の化合物が元素分析を行った。元素分析の確認結果を以下に示す。
【0073】
Figure 0003945038
元素分析結果より目的物増感色素(化12)であることを確認した。
【0074】
色素増感型太陽電池の制作は実施例1と同一のものを用い、同一の方法で形成された。
【0075】
形成させた太陽電池の短絡電流及び開放電圧の測定する方法には、実施例1と同一の方法で行った。その結果を(表1)に示す。
【0076】
(実施例3)
増感色素(化14)を用いた以外、実施例2と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
【0077】
増感色素(化14)式の化合物の合成:文献(J.Chem.Soc.,Dalton Trans.,p1909(1996))に記載の方法に従って、増感色素(化14)式の化合物を合成した。合成された(化14)式の化合物が元素分析を行った。元素分析の確認結果を以下に示す。
【0078】
Figure 0003945038
元素分析結果より目的物増感色素(化14)であることを確認した。
【0079】
色素増感型太陽電池の制作は実施例1と同一のものを用い、同一の方法で形成された。
【0080】
形成させた太陽電池の短絡電流及び開放電圧の測定する方法には、実施例1と同一の方法で行った。その結果を(表1)に示す。
【0081】
(実施例4)
本発明の実施の形態3における色素増感型太陽電池が増感色素(化18)を用いて製造を行った。
【0082】
増感色素(化18)式の[5-4(-Carboxyphenyl)-10,15,20-triphenylporphyrinato]zinc(CATPP−Zn)の合成方法を以下に示す。
【0083】
CATPP、122.56mg(0.186mmol)に脱水蒸留したDMF29mlを室温で加え、反応溶液を100℃〜110℃にした後、塩化亜鉛257.59mg(1.89mmol)をDMF19mlに溶かした溶液を、シリンジで10分間かけて、ゆっくりと滴下し、合成反応を開始した。3時間後に反応を終了した。反応溶液を室温まで放冷し、冷水130mlを加え、冷蔵庫に一晩静置した。沈澱物をブフナロートを用いて吸引濾過し、濾過物を水で十分に洗浄した後、過剰のメタノールに溶解させ自然濾過で不溶物を取り除いた。この濾液をエバポレーターで乾固させ、つぎに過剰のクロロホルムに溶解し、自然濾過で不溶物を取り除き、さらにメンブラン濾過を行った。この濾液をエバポレーターで乾固させ、クロロホルム−ヘキサン(20:80v/v)で再結晶した。再結後、桐山ロートを用いて吸引濾過し、ヘキサンで十分に洗浄した。少し青がかった紫色の結晶を得た。この結晶を真空加熱乾燥させた後、H1−NMRスペクトル測定、元素分析、熱天秤測定を行った。熱天秤の結果より1水和物であることが分かる。元素分析の確認結果を以下に示す。
【0084】
Figure 0003945038
元素分析結果より目的物増感色素(化18)であることを確認した。この色素の収量:111.67mg、収率:83.12%である。
【0085】
色素増感型太陽電池の制作は実施例1と同一のものを用い、同一の方法で形成された。
【0086】
形成させた太陽電池の短絡電流及び開放電圧の測定する方法には、実施例1と同一の方法で行った。その結果を(表1)に示す。
【0087】
(比較例1)
比較例として増感色素が特開平9−199744号公報に記載のテトラ(カルボメトキシ−Zn−フタロシアニン)を用いた以外、実施例1と同様にして色素増感型太陽電池を作製した。
【0088】
形成させた太陽電池の短絡電流及び開放電圧の測定する方法には、実施例1と同一の方法で行った。その結果を(表1)に示す。
【0089】
(表1)から明らかなように、実施例1乃至4の色素増感型太陽電池は高い開放電圧が得られることが分かった。また、実施例1乃至4の色素増感型太陽電を24時間動作させたが短絡電流、開放電圧ともに初期の値を保った。それに対し比較例1で作製した太陽電池は15%の開放電圧の低下が見られた。
【0090】
以上のように実施の形態1乃至4の色素増感型太陽電池によれば、安価な材料を使用した増感色素を利用できるとともに、高い光エネルギー変換効率を有し、安全かつ耐久性に優れる色素増感型太陽電池を提供することができる。
【0091】
【発明の効果】
以上のように本発明における色素増感型太陽電池によれば、以下のような優れた効果を実現できる。
【0092】
(1)一般式(化1)と(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体や一般式(化3)と(化4)で表される銅フェナン卜ロリン一価錯体及び一般式(化5)で表される亜鉛ポルフィリン錯体等増感色素が安全かつ安価な材料であるため、入手しやすく、生産性に優れる。
【0093】
(2)上記増感色素は光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率を向上できる。
【0094】
(3)上記増感色素が、太陽光を効率的に吸収するので、光エネルギーから電気エネルギーに直接変換する変換効率を向上できる。
【0095】
(4)上記増感色素が、半導体表面と強固な結合状態を形成できるため、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池の要部断面図
【図2】本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池の応用回路図
【符号の説明】
1 本発明の実施の形態1における色素増感型太陽電池
2 透明基板
3 透明導電膜
4 酸化物半導体膜
5 基板
6 導電膜
7 電解液
8 ケース
9 太陽光線
10 実施の形態1における色素増感型太陽電池の応用回路
11 無抵抗電流計
12 ポテンシャル計
13 スイッチ
14 抵抗器

Claims (1)

  1. 透明導電膜を備えた透明基板と、前記透明基板と対極をなす導電性基板との間に増感色素を担持させた半導体電極と電解質層とがあり、光電変換によって前記透明導電膜と前記導電性基板との間に電気エネルギーを発生する色素増感型太陽電池であって、前記増感色素が、少なくとも1種の一般式(化1)及び/または(化2)で表される銅ビピリジル一価錯体を含むことを特徴とする色素増感型太陽電池。
    Figure 0003945038
    Figure 0003945038
    (式中、R1〜R8はHまたはCOOH基を示し、R10とR11COOH基、アルキル基またはアリール基を示す。但し、R1〜R8の少なくとも1つはCOOH基を有する。)
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