JP3435459B2 - 色素増感太陽電池 - Google Patents

色素増感太陽電池

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い光電変換効率
を有し、しかも安定した光電流を供給することができる
色素増感太陽電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】太陽電池は、太陽光のエネルギーを利用
する目的に供される光電池で、これまで最も広く用いら
れているタイプは、広い受光表面をもつ半導体結晶又は
アモルファス板の表面付近にpn接合を形成させ、可視
光線を照射してp領域とn領域を連結する外部回路にp
からnに向って電流を発生させるものである。この際の
半導体結晶としては、ケイ素が多く用いられているが、
ケイ素の製造工程は本質的にエネルギー多消費型であ
り、かつ有害なシランガスを用いているため、環境保全
の面でも問題がある上に製造コストが高いという欠点が
ある。
【0003】ところで、1991年にスイスのグレーツ
ェル(Graezel)らが、表面積の大きい多孔質二
酸化チタン薄膜の表面にルテニウムビピリジンカルボン
酸色素を吸収させた電極を用いて、色素増感太陽電池を
発表して以来、製造コストが安い、環境汚染のおそれが
ない、高い光電変換効率を有するなどの長所があること
から、再生型色素増感光電変換セルが注目されるように
なってきた。しかし、この色素増感太陽電池としては、
これまでクロロフィル誘導体やポルフィリンの亜鉛錯体
などが光励起中心としたものが提案されているが、これ
らは光電変換特性が低いため、太陽電池として実用に供
するには、満足しうるものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、高い光電変換特性を有するポルフィリン
誘導体の金属錯体を用いた、実用化可能な再生型色素増
感太陽電池を提供することを目的としてなされたもので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、各種ポル
フィリン誘導体の金属錯体を製造し、その光増感作用に
ついて種々検討した結果、新規な5,10,15,20
‐テトラフェニルポルフィリンの誘導体の金属錯体を色
素増感太陽電池の色素として用いた場合に、高い光電変
換特性を示し、かつ安定した光電流を供給しうる太陽電
池が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明
をなすに至った。
【0006】すなわち、本発明は、多孔質半導体膜を内
側表面に有する透明導電膜を一方の電極とし、金属膜を
他方の電極とする電極対間に電解質を介挿し、透明導電
膜側から光を照射して両極間に電流回路を形成させる太
陽電池において、多孔質半導体膜の細孔中に、一般式
【化2】 (式中のRは水素原子又は酸性置換基、Xはアルコキシ
基、アリールオキシ基、アシルオキシ基及びハロゲン原
子の中から選ばれる少なくとも1種の配位子、MはM
o、Cr、Nb又はWである)で表わされる、ポルフィ
リン化合物の金属錯体の中から選ばれる少なくとも1種
の色素を担持させたことを特徴とする色素増感太陽電池
を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】次に、添付図面に従って本発明の
実施の形態を説明する。図1は、本発明太陽電池の構造
の1例を示すための断面図であって、2枚の透明基板、
例えばガラス基板1,7の間に、透明導電膜2、多孔質
半導体膜3、電解質5及び金属膜6を順次配置し、かつ
前記半導体膜3を多孔質に形成して、その細孔中に前記
一般式(I)で表わされるポルフィリン化合物の金属錯
が吸着担持されている。また、8は電流回路、9はア
ンメータである。
【0008】上記の透明導電体2の材料としては、例え
ば酸化スズ、それと酸化インジウムとの複合体が用いら
れる。また、半導体膜3の材料としては、酸化チタン、
酸化亜鉛、酸化タンタルなどが用いられる。この半導体
膜3は、多孔質として形成することが必要である。この
ような多孔質半導体膜を表面に有する半導体膜は、例え
ば、「ジャーナル・フィジカルケミストリー(J.Ph
ys.Chem.)」,第94巻,8720ページ(1
990年)に記載されている方法を参考にして、チタン
テトライソプロポキシドを2‐プロパノールと脱イオン
水と硝酸との混合物中に溶かして加水分解して安定な酸
化チタンコロイド溶液(粒子径約8nm)を調製し、こ
の溶液をTiO2微粉末(日本エアロジル社製,商品名
「P−25」)及びポリエチレングリコールと混合し、
この混合物を半導体膜上にスピンコーティングしたの
ち、500℃以上で焼成することによって製造すること
ができる。
【0009】次に対極として用いる金属膜6の材料とし
ては、アルミニウム、スズ、銀、銅などが用いられる
が、特に好ましいのは白金である。この金属膜6は、例
えばガラス基板その他の透明基板上に金属を化学蒸着又
は物理蒸着することによって形成することができる。
【0010】本発明においては、前記の多孔質半導体膜
3の細孔中に、前記一般式(I)で表わされるポルフィ
リン化合物の金属錯体の中から選ばれる少なくとも1種
の色素を担持させることが必要である。この一般式
)で表わされる金属錯体は文献未載の新規化合物で
あって、例えば一般式(II
【化3】 (式中のRは水素原子又は酸性置換基である)で表わさ
れるポルフィリン化合物に、Mo、Cr、Nb又はWの
カルボニル化合物を反応させたのち、一般式 HX′(III) (式中のX′はアルコキシ基、アリールオキシ基、アシ
ルオキシ基又はハロゲン原子である)で表わされる化合
物で処理し、所望に応じ、さらにハロゲン化水素で処理
することによって製造することができる。
【0011】この一般式(I)又は(II)で表わされ
るポルフィリン化合物又はその金属錯体中のRは水素原
子又は酸性置換基であるが、この酸性置換基としては、
例えばカルボキシル基、スルホン酸残基、スルホン酸塩
残基、硫酸残基、硫酸塩残基などがある
【0012】次にXはMの配位子となる基であって、メ
トキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のよ
うなアルコキシ基、フェノキシ基、p‐メチルフェノキ
シ基のようなアリールオキシ基、アセチルオキシ基、プ
ロピオニルオキシ基、グリシルオキシ基のようなアシル
オキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハ
ロゲン原子などがある。
【0013】前記一般式()で表わされるポルフィリ
ン化合物の金属錯体は、5,10,15,20‐テトラ
フェニルポルフィリン又は5,10,15,20‐テト
ラ置換フェニルポルフィリンのようなポルフィリン化合
物に金属カルボニル、例えばモリブデンヘキサカルボニ
ル、クロムペンタカルボニル、ニオブペンタカルボニ
ル、タングステンペンタカルボニルなどを反応させたの
ち、アルコール、フェノール、カルボン酸と接触させ、
さらに所望に応じ、その生成物をハロゲン化水素と接触
させて結晶化することにより容易に製造することができ
る。このポルフィリン化合物と金属カルボニルとの反応
は、所望に応じ溶媒、例えばジメチルホルムアミドを用
いて行うことができる。この反応は室温において30分
ないし2時間という短時間で進行し、65%以上の高い
収率でポルフィリン金属錯体が得られ、しかも精製も簡
単であるという点で有利である。
【0014】一般式(I)で表わされるポルフィリン化
合物の金属錯体の中から選ばれる少なくとも1種の色素
4を多孔質半導体膜3に担持させるには、この色素を適
当な溶媒、例えばジメチルホルムアミドに溶解し、この
溶液中に多孔質半導体膜を浸せきし、多孔質半導体膜の
細孔中に色素が十分に吸着するまで放置したのち、これ
を取り出し、必要に応じて洗浄後、乾燥する。
【0015】次に、本発明太陽電池において、対極とし
て用いる金属膜6の材料としては、白金が好ましいが、
それ以外のアルミニウム、銀、スズ、インジウムなど従
来の太陽電池の対極として公知のものも任意に用いるこ
とができる。これらの金属膜6は、ガラス基板や酸化イ
ンジウム、酸化スズ複合体基板上に、物理蒸着又は化学
蒸着することによって形成するのが好ましい。
【0016】本発明太陽電池において、両電極間に介挿
される電解質としては、従来太陽電池の電解質として使
用されていたものの中から適宜選択して用いることがで
きる。このようなものとしては、例えば前述したグレー
ツェルらのルテニウムビピリジンカルボン酸色素を用い
た太陽電池で用いられている電解質、すなわちヨウ素と
ヨウ化カリウムを、プロピレンカーボネート25質量%
と炭酸エチレン75質量%との混合物からなる媒質に溶
解させたものがある。
【0017】本発明太陽電池における透明導電膜2の厚
さは0.4〜0.6μm、好ましくは0.5μm、多孔
質半導体膜3の厚さは5〜30μm、好ましくは10〜
15μm、その微粒子サイズは0.01〜0.06μ
m、好ましくは0.01〜0.03μm、金属膜6の厚
さは2〜20μm、好ましくは10〜12μmの範囲で
選ばれる。また両電極間に介挿される電解質の厚さは8
〜20μm、好ましくは10〜12μmの範囲である。
【0018】このような構造の太陽電池は、両電極間を
導線で接続し、電流回路を形成させ、透明導電膜側から
420nmの白色光を照射すると2.9%以上の高い光
電変換効率で発電することができる。この光電変換効率
は、各膜の厚さ、半導体薄膜の状態、色素の吸着量、電
解質の種類などに左右されるので、これらの最適条件を
選ぶことにより、さらに向上させることができる。
【0019】
【実施例】次に実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。
【0020】参考例1 5,10,15,20‐テトラ(4‐カルボキシフェニ
ル)ポルフィリン0.5g(0.6mmol)、モリブ
デンヘキサカルボニル0.8g(3.2mmol)、乾
燥ジメチルホルムアミド100mlの混合物を、窒素雰
囲気下で2時間還流させた。この間反応の進行状態を紫
外可視スペクトルで追跡した。次いで加熱を停止し、反
応混合物を室温まで放冷したのち、溶媒を留去した。次
いで残留物をイオン交換カラムクロマトグラフィー処理
し、精製し、得られた濃緑色の固体をエチルアルコール
中で再結晶することにより、67%の収率で光沢ある結
晶を得た。この結晶について、紫外可視スペクトル、赤
外吸収スペクトル、ESR、元素分析及び質量スペクト
ル分析したところ、前記一般式()におけるXがエト
キシ基、MがMo、Rがカルボキシル基の構造に該当す
るポルフィリン金属錯体(D)であることが確認され
た。また、原料として5,10,15,20‐テトラフ
ェニルポルフィリン又は5,10,15,20‐テトラ
(4‐スルホフェニル)ポルフィリンを用い、同様に処
理して、前記一般式()におけるXがエトキシ基、M
がMo、Rが水素原子又はスルホ基の構造に該当するポ
ルフィリン金属錯体(E)及び(F)を得た。
【0021】参考例2 塩化水素を飽和させたヘキサン60ml中に、参考例1
で得たポルフィリン金属錯体()50mlをエチルア
ルコール15mlに溶かした溶液を室温で滴下した。生
成した結晶をガラスフィルターでろ取し、ヘキサンで洗
浄後、乾燥することにより、82%の収率で白色結晶を
得た。このものを紫外可視スペクトル、赤外吸収スペク
トル、ESR、元素分析及び質量スペクトル分析したと
ころ、前記一般式()におけるXが塩素原子、MがM
o、Rがカルボキシル基の構造に該当するポルフィリン
金属錯体であることが確認された。
【0022】参考例3 参考例1におけるモリブデンヘキサカルボニルの代り
に、クロムヘキサカルボニル、ニオビウムヘキサカルボ
ニル又はタングステンヘキサカルボニルを用い、同じよ
うに反応させたところ、それぞれ一般式()における
MがCr、Nb又はWの対応するポルフィリン金属錯体
が得られた。
【0023】実施例1 チタンテトライソプロポキシド62.5mlを2‐プロ
パノール10mlと脱イオン水380mlと濃度70質
量%硝酸3mlとの混合物中に溶解し、80℃において
8時間加水分解させたのち、蒸発濃縮し、安定な酸化チ
タンコロイド溶液を調製した。この酸化チタンの粒径は
約8nmであった。また、X線回折した結果、この酸化
チタンはアナターゼ型であることが分った。厚さ0.5
μmの酸化インジウム−酸化スズ複合体(以下ITOと
いう)の薄板(25×25mm)の表面に、前記のコロ
イド溶液10gとTiO2微粉末(日本エアロジル社
製,商品名「P−25」)2gとポリエチレングリコー
ル2gとの混合物をスピンコーティングし、500℃で
1時間焼成することにより、厚さ10μmの多孔質酸化
チタン膜を形成させた。
【0024】5,10,15,20‐テトラフェニルポ
ルフィリン(A)、5,10,15,20‐テトラ(4
‐カルボキシフェニル)ポルフィリン(B)、5,1
0,15,20‐テトラ(4‐スルホフェニル)ポルフ
ィリン(C)、参考例1で得た5,10,15,20‐
テトラフェニルポルフィリン金属錯体()、5,1
0,15,20‐テトラ(4‐カルボキシフェニル)ポ
ルフィリン金属錯体()及び5,10,15,20‐
テトラ(4‐スルホフェニル)ポルフィリン金属錯体
(F)を5×10-4モル濃度でジメチルホルムアミドに
溶解して調製した溶液中に上記の多孔質酸化チタン膜を
浸せきし、80℃において一夜放置したのち、アルゴン
雰囲気中に取り出し、メチルアルコールで洗浄し、乾燥
した。
【0025】対極として、ITO板(22×25mm)
上にスパッタリング法により白金膜(厚さ10μm)を
設けたものを用い、また電解質として、ヨウ素0.38
g及びヨウ化カリウム2.49gの混合物を、プロピレ
ンカーボネート25質量%と炭酸エチレン75質量%と
の混合物30gに溶解したものを用いて、図1に示す構
造の太陽電池を製造した。そのうち、BとCの太陽電池
の性能は次のとおりであった。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】本発明により、高い光電変換効率を有
し、しかも安定した光電流を供給しうる色素増感太陽電
池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の太陽電池の構造の1例を示す断面
図。
【符号の説明】 1,7 透明基板 2 透明導電膜 3 多孔質半導体膜 4 色素 5 電解質 6 金属膜 8 電流回路 9 アンメータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野間 弘昭 佐賀県鳥栖市宿町字野々下807番地1 工業技術院九州工業技術研究所内 (56)参考文献 特開2000−100482(JP,A) 特開 平10−233238(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 14/00 H01L 31/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質半導体膜を内側表面に有する透明
    導電膜を一方の電極とし、金属膜を他方の電極とする電
    極対間に電解質を介挿し、透明導電膜側から光を照射し
    て両極間に電流回路を形成させる太陽電池において、多
    孔質半導体膜の細孔中に、一般式 【化1】 (式中のRは水素原子又は酸性置換基、Xはアルコキシ
    基、アリールオキシ基、アシルオキシ基及びハロゲン原
    子の中から選ばれる少なくとも1種の配位子、MはM
    o、Cr、Nb又はWである)で表わされる、ポルフィ
    リン化合物の金属錯体の中から選ばれる少なくとも1種
    の色素を担持させたことを特徴とする色素増感太陽電
    池。
  2. 【請求項2】 一般式中のRがカルボキシル基である請
    求項1記載の色素増感太陽電池。
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