JP3943713B2 - 電子写真感光体及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質珪素(以下a−Siと称す)感光体を用いた電子写真装置に関するものであり、さらに詳しくは薄肉シリンダーによる低コスト感光体を用いた電子写真装置に関するものである。また、薄肉シリンダーを用い、ヒーターを内蔵する電子写真装置において、継ぎ目のない構成のPTCヒーターを用い、オーバーシュート、リップルの弊害なく、大パワー入力が可能となる電子写真装置に関するものである。
【0002】
また、本発明は光(ここでは広義の光であって、紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線などを意味する。)のような電磁波に対して感受性のある電子写真感光体に関する。
【0003】
【従来の技術】
像形成分野における電子写真用像形成部材に於ける光導電層を形成する光導電材料としては、高感度で、SN比[光電流(Ip)/(Id)]が高く、照射する電磁波(ここでは広義の光で、紫外光線、可視光線、赤外光線、X線、γ線等を示す)のスペクトル特性にマッチングした吸収スペクトル特性を有すること、光応答性が速く、所望の暗抵抗値を有すること、使用時において人体に対して無公害であること等の特性が要求される。殊に、事務機としてオフィスで使用される電子写真装置内に組込まれる電子写真用像形成部材の場合には、上記の使用時における無公害性は重要な点である。
【0004】
このような観点に立脚して、水素(H)やハロゲン原子(X)等の一価の元素でダングリングボンドが修飾されたアモルファスシリコン(以後a−Si(H,X)と表記する)は、例えば独国公開第2746967号公報、同第2855718号公報にも電子写真用像形成部材ヘの応用が記載されており、その優れた光導電性、耐摩耗性、耐熱性及び大面積化が比較的容易であることから電子写真用像形成部材ヘ応用されている。
【0005】
一般に、a−Si(H,X)を含有する光導電材料を有する電子写真用の感光体ドラムを製造する場合には、良好な光導電特性を得るために、a−Si(H,X)膜堆積装置内で、ドラム状金属基体を200℃〜350℃のSe系の場合に比べて極めて高い温度に加熱し続けるという条件でドラム状金属基体上にa−Si(H,X)膜堆積をl〜100μの膜厚に形成している。この基体の高温加熱維持は電子写真特性に優れたa−Si系感光ドラムを製造する上で必要であり、a−Si(H,X)膜の堆積速度を考慮すれば、この高温加熱維持は、数時間から十数時間までに及ぶのが現状である。
【0006】
電子写真用光導電部材は、その好ましい実施態様例に於いては、電子写真用光導電部材の金属製の支持体としてのドラム状、すなわち円筒状のAlもしくはAl合金等の金属基体(以下Al系基体といぅ)と、このドラム状Al系金属基体上に設けられ、ケイ素原子を母体とし、好ましくは水素原子及びハロゲン原子のいずれか少なくとも一方をその構成原子として含む非晶質材料を含有する光導電層とが形成されて構成される。該光導電層は、ドラム状金属基体に接して障壁層、更には該光導電層の表面に表面障壁層を有してもよい。
【0007】
ドラム状金属基体の基材として好ましく用いられるは、例えば、NiCr、ステンレス、Al、Cr、Mo、Au、Nb、Ta、V、Ti、Pt、Pd等の金属又はこれ等の合金が挙げられ、殊に、Al及びAl系合金が好適に用いられる。
【0008】
ドラム状基体の基材としてアルミニウム又はアルミニウム系合金を使用するのが好ましいのは、比較的簡易に真円性、表面平滑性等の精度のよいものが得られ、製造時のa−Si(H,X)の堆積表面部の温度制御が容易であり、かつ経済的であるからである。
【0009】
光導電部材の光導電層中に含有されてもよいハロゲン原子(X)としては、具体的にはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられるが、特に塩素、とりわけフッ素を好適なものとして挙げることができる。光導電層中に含有されるケイ素原子、水素原子、ハロゲン原子以外の成分としては、フェルミ準位や禁止帯幅等を調整する成分として、ホウ素、ガリウム等の周期律表第III族原子、(III族原子という)、窒素、リン、ヒ素等の周期律表第V族原子、(V族原子という)、酸素原子、炭素原子、ゲルマニウム原子等を単独若しくは適宜組み合わせて含有させることができる。
【0010】
障壁層は、光導電層とドラム状金属基体との密着性向上あるいは電荷受容能の調整等の目的で設置されるものであり、該障壁層は目的に応じてIII族原子、V族原子、酸素原子、炭素原子、ゲルマニウム原子等を含むa−Si(H,X)層若しくは多結晶−Si層で、一層あるいは多層に構成される。
【0011】
また、光導電層の上部に表面電荷注入防止層あるいは保護層として、シリコン原子を母体とし、炭素原子、窒素原子、酸素原子等を、好ましくは多量に含有し、必要に応じて水素原子又はハロゲン原子を含有する非晶質材料からなる層あるいは高抵抗有機物質からなる層を設置してもよい。
【0012】
a−Si(H,X)で構成される光導電層を形成するには、例えばグロー放電法、スパッタリング法、あるいはイオンプレーティング法等の従来公知の種々の放電現象を利用する真空堆積法が適用される。
【0013】
次にグロー放電分解法によって作成される電子写真用の光導電部材の製造方法の例について説明する。
【0014】
図1にグロー放電分解法による電子写真用光導電部材の製造装置を示す。堆積槽1は、ベースプレート2と槽壁3とトッププレート4とから構成され、この堆積槽1内には、カソード電極5が設けられており、a−Si(H,X)堆積膜が形成されるドラム状金属基体6はカソード電極5の中央部に設置され、アノード電極も兼ねている。
【0015】
この製造装置を使用してa−Si(H,X)堆積膜をドラム状金属基体上に形成するには、まず、原料ガス流入バルブ7及びリークバルブ8を閉じ、排気バルブ9を開け、堆積槽1内を排気する。真空計10の読みが約5×10-6Torrになった時点で原料ガス流入バルブ7を開いて、マスフローコントローラ11内で所定の混合比に調整された、例えばSiH4ガス、Si2H6ガス、SiF4ガス等の原料混合ガスを堆積槽1内に流入させる。このとき堆積槽1内の圧力が所望の値になるように真空計10の読みを見ながら排気バルブ9の開口度を調整する。そしてドラム状金属基体6の表面温度が加熱ヒーター12により所定の温度に設定されていることを確認した後、高周波電源13を所望の電力に設定して堆積槽1内にグロー放電を生起させる。
【0016】
また、層形成を行っている間は、層形成の均一化を計るためにドラム状金属基体6をモーター14により一定速度で回転させる。このようにしてドラム状金属基体6上に、a−Si(H,X)堆積膜を形成することができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、ドラム状金属基体とa−Si(H,X)膜の熱膨張係数に差があることと、a−Si(H,X)膜の内部応力が大きいこととから、前記のようにドラム状金属基体を高温加熱維持するa−Si(H,X)膜の堆積中だけでなく、堆積後外気温度まで冷却する際にも、堆積したa−Si(H,X)膜がドラム状金属基体から剥離することが認められることが少なくなかった。更に、電子写真用の感光ドラムとしての使用時に使用環境温度如何によってはドラムが加熱されることによってもa−Si(H,X)膜が剥れる場合が少なくはなかった。本発明者等の多くの実験によれば、a−Si(H,X)膜の場合の膜剥れは、a−Si(H,X)膜の膜厚が厚くなればなる程生じやすく、また従来のSe系電子写真用感光ドラムでは膜剥れが生じない程度のドラム状金属基体の熱変形(殊に、光導電層の形成時に起り易すい)によっても、a−Si(H,X)系感光体ドラムの場合には前記熱膨張係数の差とa−Si(H,X)膜の内部応力の大きさとの理由から膜剥れが生じる場合が少なくはなかった。a−Si(H,X)膜の内部応力については、a−Si(H,X)膜の製造条件(原料ガスの種類、ガス流量比、放電パワー、基体の加熱温度、製造装置の内部構造等)によって、ある程度は緩和することはできるが、生産性、量産性のことを考慮すると未だ不充分である。そして、この膜剥れは、電子写真用感光体ドラムとして使用した場合には、画像欠陥の原因となり致命的なものである。
【0018】
また、a−Si(H,X)膜の製造時に於けるドラム状金属基体の長時間にわたる高温加熱は、上記の膜剥れの原因となるばかりでなく、ドラム状金属基体の熱変形をも生じさせやすく、この熱変形は、a−Si(H,X)堆積膜の製造時の放電の不均一を引き起こして、これによりa−Si(H,X)堆積膜の膜厚の均一性が失われ、画像欠陥の原因となる。
【0019】
上記の諸点に鑑み、例えば、特公平6−14189号公報に記載されているように、ドラム状金属基体がアルミニウム又はアルミニウム系合金からなり、2.5mm以上の厚さにすることで、画像欠陥を低減する電子写真用光導電部材が開示されている。
【0020】
しかし、近年の熾烈な価格競争、特に中低速機ヘの展開を考慮すると、ランニングコストが安いだけでは不十分であり、イニシャルコストを何処まで下げられるかが、争点になる為、該光導電部材のコストを大きく引き下げることが、急務であった。
【0021】
光導電部材のコストに占める原材料費の割合は大きく、ドラム状金属基体の肉厚を薄くすることは、単純な原材料費低減だけでなく、薄肉であるが故の低熱容量から、a−Si(H,X)膜の製造時に於ける加熱時間短縮による省電力化及びタクト短縮、高温維持電力の削減、そして冷却時間短縮によるタクト短縮、等のコストダウンが見込まれるため、ドラム状金属基体の薄肉化が急がれていた。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、a−Si(H,X)に関し電子写真用像形成部材に使用される光導電部材としての適用性とその応用性という観点から総括的に鋭意研究検討を重ねた結果、0.1mm以上2.5mm未満の肉厚のドラム状金属基体をa−Si(H,X)堆積膜の支持体として使用する場合、放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法により成膜することで、薄肉基体においても膜剥れ等の上記問題点を解決できることを見い出し、それに基づいて本発明に至ったものである。
【0023】
本発明は、a−Si(H,X)堆積膜の膜剥れによる白抜け等の画像欠陥が少なく、高品質な画像を得ることができ、かつ低コストの光導電部材を用いた電子写真装置を提供することを目的とする。
【0024】
本発明の他の目的は、電気的、光学的、光導電的特性が常時安定し、繰り返し使用に際しても劣化現象を起さず、耐久性に優れた電子写真用光導電部材を用いた電子写真装置を提供することにある。
【0025】
本発明における電子写真感光体は、正抵抗温度係数発熱体からなるヒーターを内部に具備しており、該ヒーターの装着は該ヒーターの一部を変形させることにより行い、該ヒーターの装着後には該ヒーターの復元力で内周面の全周にわたり密着している前記ヒーターを有する電子写真感光体であって、前記ヒーターの形状が継ぎ目のない円筒状であり且つ該ヒーターの温度は自己制御されており、前記電子写真感光体は、肉厚が0.1mm以上2.5mm未満である円筒状導電性基体上に少なくとも非晶質珪素を含有する感光層を備え、該感光層が放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法により成膜されていることを特徴としているので、光導電部材の製造時にa−Si(H、X)膜堆積装置内で、あるいは電子写真用の感光体ドラムとしての使用時にドラム状金属基体が加熱されても、ドラム状金属基体の熱変形の程度を十分小さくおさえることができるので、a−Si(H、X)堆積膜の膜剥れの程度を実用範囲内に於いては問題がない程度以下に減少させ、あるいは皆無にすることが可能である。さらに、膜の応力によるドラム状金属基体の変形も抑えることが可能となる。
導電性基体の基材は、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム系合金である。
【0026】
以下に本発明の感光体について述ベる。
<a−Si感光体>
本発明の電子写真用感光体は、プラズマCVD法ににより作製される。その際の放電周波数は、50MHz以上450MHz以下であり、以下VHF一PCVD法と記載する。
【0027】
本発明で使用した電子写真用感光体の層構成は、図2に示してあるが、本発明は、この層構成に縛られるものではない。
【0028】
・支持体
本発明の感光体には、0.1mm以上2.5mm以下の円筒状導体(201)を用いている。切削後の導電性支持体は適宜脱脂洗浄が行われる。この際、アルミニウムの腐食を防止するための腐食防止剤が適宜添加されていても本発明の効果には何ら影響はない。
【0029】
・阻止層
本発明の電子写真感光体における阻止層(202)は、電子写真感光体が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、導電性支持体(201)側より光導電層(203)側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されない、いわゆる極性依存性を有している。そのような機能を付与するために、阻止層(202)には伝導性を制御する原子を光導電層(203)に比ベ比較的多く含有させる。阻止層(202)に含有される伝導性を制御する原子としては、第3b族原子または第5b族原子を用いることができる。本発明において阻止層(202)中に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、本発明の目的が効果的に達成できるように所望にしたがって適宜決定されるが、好ましくは10〜1×104原子ppm、より好適には50〜5×103原子ppm、最適には1×102〜1×103原子ppmとされるのが望ましい。
【0030】
阻止層(202)に含有される水素原子および/またはハロゲン原子は層内に存在する未結合手を補償し膜質の向上に効果を奏する。阻止層(202)中の水素原子またはハロゲン原子あるいは水素原子とハロゲン原子の和の含有量は、好適には1〜50原子%、より好適には5〜40原子%、最適には10〜30原子%とするのが望ましい。
【0031】
本発明において、阻止層(202)の層厚は所望の電子写真特性が得られること、及び経済的効果等の点から好ましくは0.1〜5μm、最適には1〜4μmとされるのが望ましい。
【0032】
・光導電層
本発明の電子写真感光体における光導電層(203)は膜中に水素原子または/及びハロゲン原子が含有されることが必要である。これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性および電荷保持特性を向上させるために必須不可欠であるからである。よって水素原子またはハロゲン原子の含有量、または水素原子とハロゲン原子の和の量はシリコン原子と水素原子または/及びハロゲン原子の和に対して10〜30原子%、より好ましくは15〜25原子%とされるのが望ましい。光導電層(203)中に含有される水素原子または/及びハロゲン原子の量を制御するには、例えば支持体の温度、水素原子または/及びハロゲン原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内ヘ導入する量、放電電力等を制御すればよい。
【0033】
本発明においては、光導電層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子としては阻止層と同様の原子を用いることができる。光導電層に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1×104原子ppm、より好ましくは5×10-2〜5×103原子ppm、最適には1×10-1〜1×103原子ppmとされるのが望ましい。
【0034】
さらに本発明においては、光導電層(203)に炭素原子及び/または酸素原子及び/または窒素原子を含有させることも有効である。炭素原子及び/または酸素原子/及びまたは窒素原子の含有量はシリコン原子、炭素原子、酸素原子及び窒素原子の和に対して好ましくは1×10-5〜10原子%、より好ましくは1×10-4〜8原子%、最適には1×10-3〜5原子%が望ましい。炭素原子及び/または酸素原子/及びまたは窒素原子は必ずしも全層に渡って含有される必要はなく、一部分のみ、あるいは膜厚方向で分布していても良い。
【0035】
本発明において、光導電層の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、好ましくは10〜50μm、より好ましくは20〜45μm、最適には25〜40μmとされるのが望ましい。
【0036】
・表面層保護層
本発明においては、光導電層(203)の上に、更にa−Si系の表面保護層(204)を形成することが好ましい。この表面保護層(204)は自由表面を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性において本発明の目的を達成するために設けられる。又、本発明においては、光受容層を構成する光導電層と表面保護層とを形成する非晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素を有しているので、積層界面において化学的な安定性の確保が十分成されている。
【0037】
表面保護層(204)は、a−Si系の材料であればいずれの材質でも可能であるが、例えば、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に炭素原子を含有するa−Si(a−SiC:H,X)、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に酸素原子を含有するa−Si(a−SiO:H,X)、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に窒素原子を含有するa−Si(a−SiN:H,X)、水素原子(H)及び/またはハロゲン原子(X)を含有し、更に炭素原子、酸素原子、窒素原子の少なくとも一つを含有するa−Si(a−SiCON:H,X)等の材料が好適に用いられる。
【0038】
炭素、窒素、酸素より選ばれた元素の含有量は、シリコン原子と炭素原子、窒素原子、酸素原子の和に対して30原子%から90原子%の範囲が好ましい。
【0039】
また、本発明において表面保護層(204)中に水素原子または/及びハロゲン原子が含有されることが必要であるが、水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。また、弗素原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.6〜4原子%とされるのが望ましい。
【0040】
さらに本発明においては、表面保護層(204)には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。
【0041】
本発明に於ける表面保護層の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.1〜2μm、最適には0.5〜1μmとされるのが望ましいものである。層厚が0.01μmよりも薄いと電子写真感光体を使用中に摩耗等の理由により表面保護層が失われてしまい、3μmを越えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
【0042】
本発明で用いられる伝導性を制御する原子、たとえば、第3b族原子としては、具体的には、B(ほう素),Al(アルミニウム),Ga(ガリウム),In(インジウム),Ta(タリウム)等があり、特にB,Al,Gaが好適である。第5b族原子としては、具体的にはP(リン),As(砒素),Sb(アンチモン),Bi(ビスマス)等があり、特にP,Asが好適である。
【0043】
第3b族原子あるいは第5b族原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第3b族原子導入用の原料物質あるいは第5b族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に他のガスとともに導入してやればよい。第3b族原子導入用の原料物質あるいは第5b族原子導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまたは、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得るものが採用されるのが望ましい。そのような第3b族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TaCl3等も挙げることができる。第5b族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3、P2H4等の水素化燐、PH4I、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化燐が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等も第5b族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
【0044】
本発明において使用されるSi供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si2H6、Si3H8、Si4H10等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2H6が好ましいものとして挙げられる。
【0045】
そして、形成される各層中に水素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるようにはかり、本発明の目的を達成する膜特性を得るために、これらのガスに更にH2および/またはHeあるいは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成することができる。また、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものである。
【0046】
希釈ガスとして使用するH2および/またはHeの流量は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用ガスに対しH2および/またはHeを、通常の場合3〜20倍、好ましくは4〜15倍、最適には5〜10倍の範囲に制御することが望ましい。
【0047】
また本発明において使用されるハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンをふくむハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF4、Si2F6等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
【0048】
炭素供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C2H6、C3H8、C4H10等のガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効に使用されるものとして挙げられ、更に層作成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でCH4、C2H6が好ましいものとして挙げられる。
【0049】
窒素または酸素供給用ガスとなり得る物質としては、NH3、NO、N2O、NO2、O2、CO、CO2、N2等のガス状態の、またはガス化し得る化合物が有効に使用されるものとして挙げられる。
【0050】
各層に含有される原子は、該層中に万偏なく均一に分布されても良いし、あるいは層厚方向には万偏なく含有されてはいるが、不均一に分布する状態で含有している部分があってもよい。しかしながら、いずれの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化をはかる点からも必要である。
【0051】
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×10-4〜10Torr、好ましくは5×10-4〜5Torr、最適には1×10-3〜1Torrとするのが好ましい。
【0052】
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量に対する放電電力を、通常の場合2〜7倍、好ましくは2.5〜6倍、最適には3〜5倍の範囲に設定することが望ましい。
【0053】
さらに、支持体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合、好ましくは50〜500℃、より好ましくは200〜350℃とするのが望ましい。
【0054】
本発明においては、各層を形成するための原料ガスの混合比、ガス圧、支持体温度、放電電力の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する堆積膜を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0055】
上記の本発明の電子写真用感光体は、真空堆積膜形成方法によって行われる。具体的には、例えばグロー放電法(低周波CVD法、高周波CVD法またはマイクロ波CVD法等の交流放電CVD法、あるいは直流放電CVD法等)、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、光CVD法、熱CVD法などの数々の薄膜堆積法によって形成することができる。これらの薄膜堆積法は、製造条件、設備資本投資下の負荷程度、製造規模、作成される電子写真感光体に所望される特性等の要因によって適宜選択されて採用されるが、所望の特性を有する電子写真感光体を製造するに当たっての条件の制御が比較的容易であることからグロー放電法、特にRF帯またはVHF帯の電源周波数を用いた高周波グロー放電法が好適である。本発明においては、VHF帯の電源周波数、50MHz以上450MHz以下における高周波プラズマCVD法によって堆積膜が形成される。
【0056】
以下に装置及び形成方法について詳述する。
<製造装置>
本発明のVHF帯の周波数を用いた高周波プラズマCVD(VHF−PCVD法)法によって形成される電子写真用電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0057】
図3に示した製造装置におけるRF−PCVD法による堆積装置を、図4に示す堆積装置に交換して原料ガス供給装置(3200)と接続することにより、VHF−PCVD法による電子写真用電子写真感光体製造装置を得ることができる。
【0058】
この装置は大別すると、真空気密化構造を成した減圧にし得る反応容器(4111)、原料ガスの供給装置(3200)、および反応容器内(4111)を減圧にするための排気装置(不図示)から構成されている。反応容器(4111)内には導電性支持体(4112)、支持体加熱用ヒーター(4113)、原料ガス導入管(不図示)、電極(4115)が設置され、電極(4115)には更に高周波マッチングボックス(4116)が接続されている。また、反応容器(4100)内は排気管(4121)を通じて不図示の拡散ポンプに接続されている。
【0059】
原料ガス供給装置(3200)は、SiH4、GeH4、H2、CH4、B2H6、PH3等の原料ガスのボンベとバルブおよびマスフローコントローラーから構成され、各原料ガスのボンベはバルブを介して反応容器(4111)内のガス導入管(不図示)に接続されている。また、導電性支持体(4112)によって取り囲まれた空間が放電空間(4130)を形成している。
【0060】
VHF−PCVD法によるこの装置での堆積膜の形成は、以下のように行なうことができる。
【0061】
まず、反応容器(4111)内に導電性支持体(4112)を設置し、駆動装置(4120)によって支持体(4112)を回転し、不図示の排気装置(例えば拡散ポンプ)により反応容器(4111)内を排気管(4121)を介して排気し、反応容器内の圧力を1×10ー7Torr以下に調整する。続いて、支持体加熱用ヒーター(4113)により導電性支持体(4112)の温度を50℃乃至500℃の所定の温度に加熱保持する。
【0062】
堆積膜形成用の原料ガスを反応容器に流入させるには、ガスボンベのバルブ、反応容器のリークバルブ(不図示)が閉じられていることを確認し、また、流入バルブ(3241−3246)、流出バルブ(3251−3256)、補助バルブ(3260)が開かれていることを確認して、まずメインバルブ(不図示)を開いて反応容器およびガス配管内を排気する。次に真空計(不図示)の読みが約5×10-6Torrになった時点で補助バルブ、流出バルブを閉じる。
【0063】
その後、ガスボンベより各ガスをバルブを開いて導入し、圧力調整器(3261〜3266)により各ガス圧を2Kg/cm2に調整する。次に、流入バルブを徐々に開けて、各ガスをマスフローコントローラー内に導入する。
【0064】
以上のようにして成膜の準備が完了した後、各層の形成を行う。
【0065】
導電性支持体が所定の温度になったところで流出バルブのうちの必要なものおよび補助バルブを徐々に開き、ガスボンベから所定のガスをガス導入管(不図示)を介して反応容器内の放電空間に導入する。次にマスフローコントローラーによって各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その際、放電空間内の圧力が1Torr以下の所定の圧力になるように真空計(不図示)を見ながらメインバルブ(不図示)の開口を調整する。
【0066】
各層の成膜は、例えば周波数500MHzのVHF電源(不図示)を所望の電力に設定して、マッチングボックス(4116)を通じて放電空間(4130)にVHF電力を導入し、グロー放電を生起させる。かくして支持体(4112)により取り囲まれた放電空間(4130)において、導入された原料ガスは、放電エネルギーにより励起されて解離し、支持体(4112)上に所定の堆積膜が形成される。このときVHF電力導入と同時に、支持体加熱用ヒーター(4113)の出力を調整し導電性支持体(4112)の温度を所定の値で変化させる。この時、層形成の均一化を図るため支持体回転用モーター(4120)によって、所望の回転速度で回転させる。
【0067】
所望の膜厚の形成が行われた後、VHF電力の供給を止め、流出バルブを閉じて反応容器ヘのガスの流入を止め、所望の層の形成を終える。
【0068】
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所望の多層構造の電子写真感光体が形成される。
【0069】
それぞれの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブはすべて閉じられていることは言うまでもなく、また、それぞれのガスが反応容器内、流出バルブから反応容器に至る配管内に残留することを避けるために、流出バルブを閉じ、補助バルブを開き、さらにメインバルブ(不図示)を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を必要に応じて行う。
【0070】
上述のガス種およびバルブ操作は各々の層の作成条件にしたがって変更が加えられることは言うまでもない。
【0071】
導電性支持体の加熱手段は、真空仕様である発熱体であればよく、より具体的にはシース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーター等の電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等の熱放射ランプ発熱体、液体、気体等を温媒とし熱交換手段による発熱体等が挙げられる。加熱手段の表面材質は、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、銅等の金属類、セラミックス、耐熱性高分子樹脂等を使用することができる。また、それ以外にも、反応容器以外に加熱専用の容器を設け、導電性支持体を加熱した後、反応容器内に真空中で導電性支持体を搬送する等の方法が用いられる。
【0072】
また、特にVHF−PCVD法における放電空間の圧力として、好ましくは1mTorr以上500mTorr以下、より好ましくは1mTorr以上300mTorr以下、最も好ましくは1mTorr以上100mTorr以下に設定することが望ましい。
【0073】
VHF−PCVD法において放電空間に設けられる電極(4115)の大きさ及び形状は、放電を乱さないならばいずれのものでも良いが、実用上は直径1mm以上10cm以下の円筒状が好ましい。この時、電極の長さも、導電性支持体に電界が均一にかかる長さであれば任意に設定できる。
【0074】
電極(4115)の材質としては、表面が導電性となるものならばいずれのものでも良く、例えば、ステンレス、A1、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pb、Fe等の金属、これらの合金または表面を導電処理したガラス、セラミツク等が通常使用される。
【0075】
本発明の方法で製造された電子写真感光体は、電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版機などの電子写真応用分野にも広く用いることができる。
【0076】
次に、本発明の感光体を用いた電子写真装置について述べる。
本発明の電子写真装置は、肉厚が0.1mm以上2.5mm未満である導電性基体上に、放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法により成膜されている少なくとも非晶質珪素を含有する感光層を備えた円筒状電子写真感光体を具備する電子写真感光体であって、前記ヒーターの形状が継ぎ目のない円筒状であり且つ該ヒーターの温度は自己制御されており、前記電子写真感光体がその内部にヒーターを具備しており、該ヒーターが正抵抗温度係数発熱体からなり、該ヒーターの装着は該ヒーターの一部を変形させることにより行い、該ヒーターの装着後には該ヒーターの復元力で該感光体の内周面の全周にわたり密着している前記ヒーターを有していることを特徴とする。
導電性基体の基材は、好ましくはアルミニウムまたはアルミニウム系合金である。
従来から、コロナ帯電を用いた電子写真装置においては、感光体の表面にオゾン生成物が付着し、とくに高湿時において画像ボケを生ずる事が知られている。有機感光体(OPC)のように比較的表面の摩耗しやすい感光体の場合は、表面に形成したオゾン生成物等が研磨手段等によって摩耗除去されやすいが、あまり研磨効果を高めると、感光体としての機能が低下し寿命を短くしてしまう。アモルファスシリコン感光体(以下a−Si感光体)やNP方式に使用されるCdS感光体の表面絶縁層のような場合は、非常に硬く、表面に形成されたオゾン酸化物等が摩耗除去されにくい事等がある。
【0077】
そこで、感光体内部、近傍にヒーターを配置し感光体表面の温度を35〜45℃程度に加温する事が行なわれている。この感光体加温は、さまざまの目的で行なわれているが、主要目的としては、高湿時に発生する画像ボケの防止及び除去である。これは、コロナ帯電器内で発生したオゾンが感光体表面を化学的に変質させ、親水基(−○H等)等が形成されるため吸湿しやすくなり、これが表面電位の横流れといった電子写真として致命的な現象を引き起こすため、これを加温し、水分を除去する。また、オゾンにより生成したNOX等の物質が感光体表面に付着し、これが同様に吸湿するため、同様に加温し水分を除去するといった目的が主である。
【0078】
加温手段としては、温風吹き付け等もあるが、感光体内面からの電熱ヒーター加熱が主流である。従来、感光体の回転軸として感光体を支持するシャフト内に棒状ヒーターを配置し、温調する方法がとられていたが、近年、特にa−Si感光体において、感光体表面温度の温調精度を上げ、かつ感光体全面について温度ムラをなくすために、面状ヒーターを感光体内面に配置する方式が多くとられている。
【0079】
以下、具体的に従来の加温手段について説明する。
【0080】
図5において、501(A)は装着前の感光体用平板状ヒーター、501(B)は装着後の感光体用平板状ヒーターである。感光体用ヒーターとしては不図示の感光体内面に密着しない棒状のタイプと本図のように感光体内面に密着する面状のタイプが一般的であるが、温調精度に関していえば後者の面状タイプのほうが精度が高い。
【0081】
一般に用いられている温度制御のブロック図を図6、図7に示す。
【0082】
図6において、601は感光体用ヒーター、602は電力供給用AC電源、603は温度フィードバック用サーミスタ、604はサーミスタ603の抵抗に応じてヒーターヘの電力供給をon−offもしくは数段回で切り換えるための制御回路である。図中の波線は電子写真装置本体と感光体ユニットの境界を示すものであり、通常スリップリング等で接触している。サーミスタ603は高温になると低抵抗になるといった特性を有するため、温度を制御回路にフィードバックして温度制御を行なうものである。
【0083】
図7において、701は感光体用ヒーター、702は電力供給用AC電源、703は、温度制御用サーモスイッチである。図中の破線は電子写真装置本体と感光体ユニットの境界を示すものであり、通常スリップリング等で接触している。サーモスイッチ703は高温になるとoffするように接続してあり温度制御を行なうものである。サーモスイッチがoffする温度は、サーモスイッチ固有の特性である。
【0084】
構成上、図6のようなサーミスタ制御のほうが温調精度は良い。特にa−Si感光体の場合、暗部電位(300〜500V)で1〜6v/deg、明部電位(50〜200v)で1〜3v/degの電位の温度依存性があるため、加温温度のコントロールは±1℃程度の精度を求められており、こちらを用いる場合が多い。
【0085】
感光体単独あるいは電子写真装置の中にあっても感光体が静止している様な静的状態においてはこの精度を実現しているが、動的状態、すなわち、実際に電子写真装置の中で使用する様な通紙を伴う状態においては、感光体の温度は、室温とコピーモードに大きく左右される。つまり、通紙する際感光体から紙に持っていかれる熱量は紙の温度に影響するが、紙の温度は室温及びコピーモード(つまりこれからコピーされる紙が電子写真装置の外部から新たに供給される紙か、両面コピー・多重コピー等のように定着器を通った後の紙か)に影響される。また、感光体から紙に持っていかれる熱量は、紙と感光体が接する頻度にも影響されるため、コピーモード(片面・両面、設定枚数、紙サイズ[大きさ・厚さ]等)の影響は大である。従って、動的状態において、感光体の温度を一定に制御するには、温度平衡状態になるよりはるかに高い電力をヒーターに供給し、応答性を向上させることが必要になる。
【0086】
しかし、電力供給を高くする場合、従来の方式では、次の2つの理由により温度むらを生じてしまう。
【0087】
1つめは、形状の問題であり、平面状ヒーターを丸めて円筒状感光体の内側から密着させる方式では、ヒーターの継ぎ目にあたる部分は温度応答性が悪く、ヒーター部分と温度差を生じてしまうため、実開平4−109776号公報では、継ぎ目のないヒーターを開示している。
【0088】
2つめは、制御方式の問題であり、サーミスタを用いた回路により、スイッチングする制御方式では、温度検出位置、制御回路により様々であるが、一般的に電力を大きくすると、オーバーシュート、温調リップルが増大する傾向にあり、軽減するには制御回路が高価になり、コスト的に見合わないものになってしまうため、温度むらはある程度割り切らざるを得なかった。
【0089】
そこで、ヒーターの抵抗自体に温度依存性をもつPTCを用いると、それは高温になると高抵抗になる抵抗体自体の特性を生かし、抵抗体の温度を一定に制御できる物であるため、温度制御回路は不要であり、原理的にオーバーシュート、リップルは発生しない。
【0090】
PTCヒーターとは、電極間のPTC抵抗体のPTC特性により、適宜な温度に自己制御されているもので、例えば、発熱体層および電極がフィルム状の絶縁体層に対し、熱接着性樹脂を介し、ラミネート装置あるいは加熱加圧接着することにより一体にした面状発熱体が知られている。構成としては特公昭57−43995号公報や特公昭55−40161号公報に示されているような一対の電極により構成されているものをはじめ、高温度、高電力等、ニーズにあわせた様々の構成のものがあるが、基本的な構成は同じである。
【0091】
しかし実開平4−109776号公報のような継ぎ目のない構成のPTCヒーターにまで言及しているものはない。
【0092】
従って、前述したような大きい電力を用いて制御しなければならない電子写真装置において、継ぎ目のない構成でPTCヒーターを用いることは、極めて有効な手段と言える。
【0093】
以上のように、ドラム状金属基体は、その厚さを0.1mm以上2.5mm未満にすることができ、製造コストを大幅に削減することができる。
【0094】
また、0.1mm以上2.5mm未満の厚さを有するドラム状金属基体において、ヒーターを用いる場合にはヒーターと感光体表面の温度勾配が少ない為、高精度温調が可能となる。
【0095】
さらに、継ぎ目のない構成のPTCヒーターを用いることにより、温度平衡状態になるよりはるかに高い大電力の投入が可能になる為、応答性が向上し、高速昇温を可能にしつつ、通紙を伴うような動的状態においてもオーバーシュート、温調リップルのない温度制御が可能になる。
【0096】
【発明の実施の形態及び実施例】
発明を更に以下の実施例により説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
参考例1
図4で示すVHF-PCVD法による堆積膜形成装置を用い、前述の堆積膜形成方法の手順に従って、表1に示す条件で阻止型の電子写真感光体を製造した。なお、光導電層の厚さは20μmになるようにした。本参考例では、表2に示す様にアルミニウム製支持体は外径Φ80mmで厚さを0.1mm〜2.5mmの範囲で6本用意した。支持体の切削後の洗浄は純水+界面活性剤で行った後に純水により十分にリンスし、乾燥させた。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
このようにして得られた電子写真用の感光ドラムをキヤノン(株)製のNP6750を実験用に改造した実験用電子写真に設置して画出しを行い、膜剥がれの影響を評価した。その結果を表3に示す。
【0099】
また、作製した電子写真用感光体の真円度を測定した結果を表4に示す。表4に示してある数値は、一番へこんでいる個所と一番突き出している個所の差である。
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
表3〜4に示す様に、放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法で作製した電子写真感光体は、支持体の肉厚0.1mm以上2.5mm未満においても積層された膜の応力が小さい為、膜剥がれ、成膜後の支持体の変形を最小限に抑える事ができた。
比較例1
図3で示すRF−PCVD法による堆積膜形成装置を用い、前述の堆積膜形成方法の手順に従って、表5に示す条件で阻止型の電子写真感光体を製造した。なお、光導電層の厚さは20μmになるようにした。本比較例では、表6に示す様にアルミニウム製指示体は、外径Φ80mmで厚さを0.1mm〜5.0mmの範囲で6本用意した。支持体の切削後の洗浄は純水+界面活性剤で行った後に純水により十分にリンスし、乾燥させた。
【0102】
【表5】
【0103】
【表6】
このようにして得られた電子写真用の感光ドラムをキヤノン(株)製のNP6750を実験用に改造した実験用電子写真に設置して画出しを行い、膜剥がれの影響を評価した。その結果を表7に示す。
【0104】
また、作製した電子写真用感光体の真円度を測定した結果を表8に示す。表8に示してある数値は、一番へこんでいる個所と一番突き出している個所の差である。
【0105】
【表7】
【0106】
【表8】
*変形度が60μmを超えると実用上問題が生じる
表7〜8に示す様に、RF帯の放電周波数(13.56MHz)で放電を励起するプラズマCVD法で作製した電子写真用感光体は、支持体の肉厚を2.5mm以上にしないと積層された膜の応力の為、膜剥がれ/成膜後の支持体の変形が発生してしまう。
参考例2
参考例1で作製した電子写真用感光体をキヤノン製NP6750を改造した電子写真装置に搭載して、画像の評価及び電子写真装置装置搭載時の面ぶれについての評価を行った。画像評価は、面ぶれによる画像むらのレベルの確認及び画像欠陥について行った。なお、感光体内部には、図5に示すヒ−タ−及び温度調節回路を設置し、感光体温度が45℃になるように制御されている。結果を表9に示す。
【0107】
【表9】
表9に示す様に、本発明の感光体を用いた電子写真装置において非常に良好 結果が得られた。即ち、支持体の厚さ0.1mm以上2.5mm未満においても50MHz以上450MHz以下の周波数でのVHF−PCVD法でa−Siを積層するならば、膜の応力が小さい為、膜剥がれ/支持体の変形を最小限に抑え、良好な電子写真装置を得る事が可能となった。
【0108】
また、0.1mm以上2.5mm未満の厚さを有するドラム状金属基体を用いる事で、感光体の温度制御用ヒ−タ−を用いる場合にはヒ−タ−と感光体表面の温度勾配が少ない為、高精度温調が可能となり、連続通紙においても、濃度の安定した非常に良好な画像を得る事ができた。
実施例1
温調回路を用いず、図8のように継ぎ目のない円筒状でフレキシブルなタイプで感光体内面に密着するPTCヒ−タ−を使用して、参考例1で作製した電子写真用感光体を、キヤノン(株)製NP6750を改造した実験機にセットし、感光体の熱容量に応じた最適パワ−をヒ−タ−に通電開始し、ヒ−タ−に通電開始してから感光体の温度が45℃になるように制御している静的状態で、温度の時間変化を測定した。結果を図9に示す。
【0109】
図8において、(A)は装着前の感光体用ヒーター、(B)は装着後の感光体用ヒーターであり、脱着時はヒーターの1部を変形させることにより、実質外径を小さくして行なう。感光体装着時にはヒーターは復元力で円筒状に戻り感光体の内面に密着するようにヒーターの外径は感光体の内径と同じになっている。
【0110】
実測の代表例が図9の通りであるが、感光体上の測定した全ての部分は、ほぼ同傾向であり、大パワ−で高速昇温させる場合においても、スイッチング時に場所による温度差も、測定個所における温度の時間変化(温調リップル)も生じなかった。又、感光体の熱容量に応じた最適パワ−を用いれば支持体の肉厚の依存性はほとんどなく、すべてについて良好な結果となった。特に肉厚の2.5mm未満のものについてはより良好であった。
比較例2
図6のような温調回路を用い、図5のように平板状で丸めて感光体内面に密着させる継ぎ目のあるタイプのヒ−タ−、および図8のように継ぎ目のない円筒状でフレキシブルなタイプで感光体内面に密着するヒ−タ−を使用して、参考例1で作製した電子写真用感光体を、キヤノン(株)製NP6750を改造した実験機にセットし、感光体の熱容量に応じた実施例1のパワ−をヒ−タ−に通電し、ヒ−タ−に通電開始してから感光体の温度が45℃になるように制御している静的状態で、温度の時間変化を測定した結果が図10である。
【0111】
図10において、継ぎ目のあるタイプのヒーターにおいては、ヒーターの継ぎ目でない部分が実線、ヒーターの継ぎ目部分が破線のようになり、スィッチング時に大きな温度差ができてしまった。一方、継ぎ目のないタイプのヒーターにおいては、測定した全ての部分は、実線のようになり、スィッチング時に場所による温度差はできなかったが、測定個所における温度の時間変化(温調リップル)は生じてしまった。
【0112】
従来の実使用条件において実用上問題のなかった、これらのタイプのヒーターにおいても、大パワーで高速昇温させる場合においては、特に肉厚の厚いものに関しては、以上のような傾向がより顕著になった。
【0113】
実施例2
温調回路を用いず、図8のように継ぎ目のない円筒状でフレキシブルなタイプで感光体内面に密着するPTCヒ−タ−を使用して、参考例1で作製した電子写真用感光体を、キヤノン(株)製NP6750を改造した実験機にセットし、感光体の熱容量に応じた最適パワ−をヒ−タ−に通電開始して、感光体の温度が45℃になるように制御し、15℃環境で連続通紙した際の温度の時間変化を測定した結果が図11である。
【0114】
肉厚0.05mmのものは、強度不足の為、成膜時或いは測定時に剥れが生じてしまい、測定不能であった。
【0115】
図11は実測の代表例である。感光体の熱容量に応じた最適パワーを用いると、すべてについて良好な結果となった。特に肉厚の厚いものについては、熱容量が大きいため、より良好であった。
【0116】
この構成を用いる事によって、動的状態においても、温度の時間変化(温調リップル)がなくなり、前述温度特性に起因する電位ムラがなくなり、従来、連続通紙時に発生していた微弱な画像濃度ムラがなくなった。
【0117】
また、電位ムラがなくなったため、電位測定手段を有し、潜像条件を帯電量・光量等でコントロ−ルする、いわゆる『電位制御』において、従来、温度特性に起因する電位ムラによる電位制御バラツキ、即ち制御電位変動がなくなって電位の収束性が向上し、画像濃度安定性がより向上した。
比較例3
図6のような温調回路を用い、図8のように継ぎ目のない円筒状でフレキシブルなタイプで感光体内面に密着するヒ−タ−を使用して、参考例1で作製した電子写真用感光体を、キヤノン(株)製NP6750を改造した実験機にセットし、感光体の熱容量に応じた実施例1のパワ−をヒ−タ−に通電開始し、感光体の温度が45℃になるように制御し、15℃環境で連続通紙した際の温度の時間変化を測定した結果が図12である。
【0118】
図12に示すように、通紙による温度低下を補償する為に、大パワーを供給する為、温調リツプルが発生し、前述温度特性に起因する電位ムラ、画像濃度ムラが発生した。
【0119】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によるところのa−Si(H,X)電子写真感光体は、放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法により作製される為に、膜の応力が非常に小さい。即ち、0.1mm以上2.5mm未満の導体支持体を用いることが可能となり、a−Si(H,X)膜の製造時に於ける加熱時間短縮による省電力化及びタクト短縮、高温維持電力の削減、そして冷却時間短縮によるタクト短縮、等のコストダウンに非常に貢献する。
【0120】
また、0.1mm以上2.5mm未満の厚さを有するドラム状金属基体を用いる事で、感光体の温度制御用ヒーターを用いる場合にはヒーターと感光体表面の温度勾配が少ない為、高精度温調が可能となる。さらに、継ぎ目のない構成のPTCヒーターを用いることにより、温度平衡状態になるよりはるかに高い大電力の投入が可能になる為、応答性が向上し、高速昇温を可能にしつつ、通紙を伴うような動的状態においてもオーバーシュート、温調リップルのない温度制御が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】グロー放電分解法による光導電部材の製造装置を示す摸式図
【図2】本発明の光導電部材の層構成を示す摸式図
【図3】RF−PCVD法による堆積装置及びガス供給装置の摸式図
【図4】本発明の電子写真用光導電部材を得る為に用いたVHF−PCVD堆積装置の摸式図
【図5】従来の感光体用ヒ一ターを示す摸式図で、(A)は装着前、(B)は装着後を示す。
【図6】従来からの温調基板を用いた場合の感光体の温度制御用回路のブロック図
【図7】従来からのサーモスイッチを用いた場合の感光体の温度制御用回路のブロック図
【図8】本発明で使用する感光体用ヒーターを示す摸式図で、(A)は感光体ドラム内面に装着前、(B)は装着後を示す。
【図9】 実施例1の形態に於いて、感光体が静止した状態(静的状態)のドラム表面温度の変化を示す。
【図10】比較例2の形態に於いて、感光体が静止した状態(静的状態)のドラム表面温度の変化を示す。
【図11】 実施例2の形態において、15℃環境で連続通紙した際(動的状態)のドラム表面温度の変化を示す。
【図12】比較例3の形態に於いて、15℃環境で連続通紙した際(動的状態)のドラム表面温度の変化を示す。
【符号の説明】
1 堆積槽
2 ベースプレート
3 槽壁
4 トッププレート
5 カソード電極
6 ドラム状金属基体
7 原料ガス流入バルブ
8 リークバルブ
9 排気バルブ
10 真空計
11 マスフローコントローラ
12 加熱ヒータ
13 高周波電源
14 モーター
201、4112 導電性支持体
202 阻止層
203 光導電層
204 表面保護層
501、601、701、801 感光体用ヒーター
602、702 ヒーター用電源
603 ヒーター温度フィードバック用サーミスタ
604 温調用制御回路
703 ヒーター温度制御用サーモスイッチ
3200 原料ガス供給装置
3241−3246 流入バルブ
3251−3256 流出バルブ
3260 補助バルブ
3261―3266 圧力調整器
4100、4111 反応容器
4113 支持体加熱用ヒーター
4115 電極
4116 マッチングボックス
4120 支持体回転用モーター又は駆動装置
4121 排気管
4130 放電空間
Claims (4)
- 正抵抗温度係数発熱体からなるヒーターを内部に具備しており、該ヒーターの装着は該ヒーターの一部を変形させることにより行い、該ヒーターの装着後には該ヒーターの復元力で内周面の全周にわたり密着している前記ヒーターを有する電子写真感光体であって、前記ヒーターの形状が継ぎ目のない円筒状であり且つ該ヒーターの温度は自己制御されており、前記電子写真感光体は、肉厚が0.1mm以上2.5mm未満である円筒状導電性基体上に少なくとも非晶質珪素を含有する感光層を備え、該感光層が放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法により成膜されていることを特徴とする電子写真感光体。
- 前記導電性基体の基材がアルミニウムまたはアルミニウム系合金である請求項1に記載の電子写真感光体。
- 肉厚が0.1mm以上2.5mm未満である導電性基体上に、放電周波数50MHz以上450MHz以下で放電を励起するプラズマCVD法により成膜されている少なくとも非晶質珪素を含有する感光層を備えた円筒状電子写真感光体を具備する電子写真感光体であって、前記ヒーターの形状が継ぎ目のない円筒状であり且つ該ヒーターの温度は自己制御されており、前記電子写真感光体がその内部にヒーターを具備しており、該ヒーターが正抵抗温度係数発熱体からなり、該ヒーターの装着は該ヒーターの一部を変形させることにより行い、該ヒーターの装着後には該ヒーターの復元力で該感光体の内周面の全周にわたり密着している前記ヒーターを有していることを特徴とする電子写真装置。
- 前記導電性基体の基材がアルミニウムまたはアルミニウム系合金である請求項3に記載の電子写真装置。
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