JP2002220672A - 堆積膜形成方法、堆積膜形成装置、電子写真感光体の製造方法及び製造装置 - Google Patents

堆積膜形成方法、堆積膜形成装置、電子写真感光体の製造方法及び製造装置

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JP2002220672A
JP2002220672A JP2001015844A JP2001015844A JP2002220672A JP 2002220672 A JP2002220672 A JP 2002220672A JP 2001015844 A JP2001015844 A JP 2001015844A JP 2001015844 A JP2001015844 A JP 2001015844A JP 2002220672 A JP2002220672 A JP 2002220672A
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substrate
reaction vessel
forming
deposited film
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Tatsuji Okamura
竜次 岡村
Junichiro Hashizume
淳一郎 橋爪
Shigenori Ueda
重教 植田
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子写真装置において感光体に対する摺擦力
が大きくなるような過酷な電子写真プロセスの条件でも
感光体ドラム表面の削れ量が少なく、かつ、むら削れの
発生がない電子写真感光体の製造を可能にする。 【解決手段】 反応容器111内の基体112と、高周
波電力が供給された反応容器111との間にプラズマを
発生させ、基体112上に、下部阻止層、光導電層、及
び表面層としての非単結晶炭化水素膜をこの順番で積層
して電子写真感光体を製造する。表面層の形成時に、基
体112の下部、すなわち基体112における排気口1
19に近い部分を冷却部材121により冷却する。これ
により、高い硬度の表面層を形成するためにプラズマの
エネルギーを増加させても、基体112において排気口
119に近い部分の温度が局所的に上昇することがなく
なる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマCVD法
を用いた堆積膜形成方法や堆積膜形成装置、電子写真感
光体の製造方法及び製造装置に関する。さらに詳しく
は、本発明は、水素とハロゲンのうち少なくともいずれ
か一方を含有した、良質かつ均一な非単結晶炭素膜(以
下では「a-C:H及び/又はa-C(H,X)」とも称する)の形
成方法や形成装置、表面層が良質かつ均一なa-C:H及び
/又はa-C(H,X)からなる電子写真感光体の製造方法及び
製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真感光体に用いる素子部材の材料
としては、セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、フタロ
シアニン、アモルファスシリコン(以下「a-Si」と称す
る)等、各種提案されている。その中でも特に、水素及
び/又はハロゲン(例えばフッ素、塩素等)で補償され
たa-Si等のアモルファス堆積膜は、高性能、高耐久、無
公害な感光体として提案され、実用化されている。a-Si
からなる感光体は他の感光体と比べて表面硬度が高く、
半導体レーザー(770nm〜800nm)等の長波長
光に対して高い感度を示し、しかも繰り返しの使用によ
る劣化もほとんど認められないことから、特に高速複写
機やレーザープリンター(LBP)等の電子写真感光体
として広く使用されている。また、近年の情報処理量の
増加に伴い、高速な複写機やLBPの需要はさらに大き
くなり、電子写真装置1台あたりのコピー量も著しく増
大している。
【0003】こうした背景において、電子写真感光体の
耐久性や、繰り返しの使用による劣化の減少は以前に増
して求められるようになってきている。こうした要求に
応えるべく、特に感光体の表面層の研究が様々に行われ
ており、特に近年では感光体の表面層材料として非単結
晶炭素膜(a-C)が提案されている。
【0004】特開昭61−219961号公報には、表
面層として、水素化アモルファス炭素と10〜40原子
%の水素原子とで構成された材料を用いる技術が記載さ
れている。これらの技術により、電気的特性、光学的特
性、使用環境特性、及び耐久性が向上し、さらに、画像
品位の向上も可能になっている。
【0005】また、特開平6−317920号公報に
は、周波数20MHz〜450MHzの電磁波により生
起されるグロー放電で原料ガスを分解するプラズマCV
D法により、炭素原子を母体とする非単結晶炭素系材料
から成る表面層を形成する方法が開示されている。
【0006】さらに、特開平8−158050号公報に
は、ECRプラズマCVD法を用いて硬質炭素膜を形成
する方法が開示されている。
【0007】このような従来の電子写真感光体の形成方
法により、実用的な特性と均一性を持つ電子写真感光体
を得ることが可能になった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年の複写機に対する
高速化及び高画質化の要求から、感光体の寿命、安定
性、均一性に関してさらなる改善が求められている。
【0009】特に、感光体における特性の均一性の改善
は、これまで様々な検討が行なわれ、数々の提案もなさ
れてきた。特に、感光体各層の膜厚のばらつき、特性の
ばらつきは画像むら等を引き起こす原因となり、これら
を解決するためには、堆積膜形成中の基体温度を均一に
制御することに充分注意を払う必要があることが分かっ
ていた。
【0010】さらに、感光体の寿命の観点から、その表
面層の硬度の向上による耐久性の向上が唱えられ、表面
層の製法に見直しがなされている。a-SiCを用いた従来
の表面層に比べて硬度が優れているa-C膜でさえも、今
まで以上に硬度を高くする必要性に迫られている。
【0011】a-C膜の硬度を高くする方法として、成膜
時の投入電力を上昇させることが有効であるが、こうし
た成膜条件においては、場合によっては、放電状況に変
化が生じてしまい、表面層の膜厚むら、特性むらが発生
してしまうことがあった。こうした表面層のむらが引き
金となり、使用環境や、電子写真装置本体の構成如何に
よっては、むら削れや画像濃度むら等の画像欠陥が発生
する場合があった。
【0012】電子写真プロセスにおいて、感光体に付着
した現像剤(トナー)を除去するために、ドラム表面の
トナーをブレードやローラーで物理的に除去する際に、
ドラム表面がむら状に削れたり、筋状に削れたるする場
合がある。これらが原因となり、画像に筋状の欠陥が発
生することをむら削れと呼んでいる。
【0013】さらに、近年の高速系の複写機において
は、高画質を維持するために、上述したようなドラム表
面でのブレードやローラーの摺擦力を上昇させる傾向に
あり、ドラム表面の削れ量も耐久性の観点から改善する
必要がある。
【0014】本発明の目的は、均一かつ良質なa-C:H及
び/又はa-C(H,X)膜を基体上に形成することが可能な方
法及び装置を提供することにある。
【0015】さらに、本発明の他の目的は、高速化、長
寿命化された近年の電子写真装置において、電子写真感
光体にとっては過酷な電子写真プロセスの条件において
も、感光体ドラム表面の削れ量が少なく、かつむら削れ
の発生がないという削れ性に優れた電子写真感光体を製
造可能な方法及び装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、減圧可能な反応容器内で、高周波電力を
印加するカソード電極と対向する基体との間にプラズマ
を発生させると共に、前記反応容器内に原料ガスを導入
し、前記基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法にお
いて、前記堆積膜の形成時に、前記基体を実質的に均一
に加熱すると共に前記基体の一部を冷却しながら前記堆
積膜を形成することを特徴とする。
【0017】具体的には、前記堆積膜を形成する際に、
前記反応容器内の気体を排気口より排気し、前記基体に
おける前記排気口に近い一部を冷却することが好まし
い。
【0018】また、前記堆積膜を形成する際には、前記
反応容器内に炭化水素系の原料ガスを導入して前記基体
上に非単結晶炭素膜を形成することが好ましい。
【0019】上記の通りの堆積膜形成方法では、減圧可
能な反応容器内でカソード電極と基体との間にプラズマ
を発生させ、また、基体を実質的に均一に加熱すると共
に基体の一部を冷却しながら基体上に堆積膜を形成する
ことにより、基体の温度が堆積膜の形成条件により局所
的に上昇するということをなくすことができる。例え
ば、堆積膜の硬質化を図るためにプラズマのエネルギー
を増加させた際に、反応容器内における排気口に近い部
分に放電が時々集中しても、上記のように反応容器内の
基体における排気口に近い部分を冷却することにより、
その基体において排気口に近い部分の温度が局所的に上
昇することをなくすことができる。このように、高品質
の堆積膜を形成するためにプラズマエネルギーを増加さ
せても、反応容器内の基体で温度分布の傾斜を発生させ
ることなく、堆積膜の形成中に基体の温度を均一に保つ
ことができる。よって、高い硬度で均一性に富んだ良質
な堆積膜を形成することが可能となる。
【0020】さらに、本発明の電子写真感光体の製造方
法は、減圧可能な反応容器内で、高周波電力を印加する
カソード電極と対向する基体との間にプラズマを発生さ
せることにより、シリコン原子を母体とする非単結晶材
料からなる光導電層と、少なくとも炭化水素系の原料ガ
スを用いた高周波プラズマCVD方法で形成される非単
結晶炭素膜からなる表面層とをこの順番で前記基体上に
順次積層して電子写真感光体を製造する方法において、
前記光導電層の形成時には前記基体を実質的に均一に加
熱し、前記表面層の形成時には前記基体を加熱すると共
に前記基体の一部を冷却しながら前記表面層を形成する
ことを特徴とする。
【0021】具体的には、前記表面層を形成する際に、
前記反応容器内へと原料ガスを導入すると共に該反応容
器内の気体を排気口より排気し、前記基体における前記
排気口に近い一部を冷却することが好ましい。
【0022】上記の通りの電子写真感光体の製造方法で
は、反応容器内の基体上に光導電層及び表面層をこの順
番で積層する工程において、表面層の形成時に上記の堆
積膜形成方法と同様に基体を実質的に均一に加熱すると
共に基体の一部を冷却することにより、基体の温度が表
面膜の形成条件により局所的に上昇するということをな
くすことができる。例えば、上述したのと同様に表面層
の硬質化を図るためにプラズマのエネルギーを増加させ
た際に、反応容器内における排気口に近い部分に放電が
時々集中しても、反応容器内の基体における排気口に近
い部分を冷却することにより、その基体において排気口
に近い部分の温度が局所的に上昇することをなくすこと
ができる。このように、高品質の表面層を形成するため
にプラズマエネルギーを増加させても、反応容器内の基
体で温度分布の傾斜が発生することをなくすことがで
き、表面層の形成中に基体の温度を均一に保つことがで
きる。よって、高い硬度で均一性に富んだ良質な表面層
を形成することが可能となる。例えば、高速化及び長寿
命化される近年の電子写真装置すなわち高速複写機にお
いて、高品質の画像特性を維持するために感光体に対す
る摺擦力を高めたプロセス条件でも、むら削れをおこさ
ず、また、削れ量も低下させることができる。このこと
により、今まで以上に耐久性に富んだ電子写真感光体を
安定して製造することが可能となる。
【0023】さらに、上記の堆積膜形成方法、及び電子
写真感光体の製造方法において、前記基体を冷却する際
に、冷却部材の内部に冷却媒体を循環させ、該冷却部材
を前記基体の一部に接触させることが好ましい。
【0024】さらに、上記の堆積膜形成方法、及び電子
写真感光体の製造方法が、堆積膜、または感光体の表面
層を形成する際に前記基体の温度を検知する段階と、前
記検知結果から得られる信号を基に、前記堆積膜または
表面層の形成時に前記冷却部材内に冷却媒体を循環させ
た状態、または前記冷却部材内の冷却媒体の流れを停止
させた状態にすることにより、前記基体の温度を制御す
る段階とを有していてもよい。
【0025】さらに、本発明の堆積膜形成装置は、減圧
可能な反応容器と、前記反応容器内の基体と対向して高
周波電力を印加するカソード電極と、前記カソード電極
と前記基体との間にプラズマを発生させて前記基体上に
堆積膜を形成するために前記カソード電極に高周波電力
を供給する電源と、前記反応容器内に原料ガスを導入す
る手段と、前記堆積膜の形成時に前記基体を実質的に均
一に加熱する加熱手段とを有する堆積膜形成装置におい
て、前記堆積膜の形成時に前記基体の一部を冷却する冷
却手段をさらに有することを特徴とする。
【0026】具体的には、前記堆積膜を形成する際に前
記反応容器内の気体を排気するための排気口が前記反応
容器に設けられており、前記冷却手段が、前記基体にお
ける前記排気口に近い一部を冷却するものであることが
好ましい。
【0027】さらに、前記反応容器内に原料ガスを導入
する手段が、前記基体上に前記堆積膜として非単結晶炭
素膜が形成されるように炭化水素系の原料ガスを前記反
応容器内に導入するものであることが好ましい。
【0028】上記の通りの堆積膜形成装置では、上述し
たような、堆積膜の形成中に基体の一部を冷却する堆積
膜形成方法が用いられているので、堆積膜の形成中に基
体の温度が堆積膜の形成条件により局所的に上昇するこ
とをなくすことができ、基体の温度を均一に保つことが
できる。よって、堆積膜の硬質化を図るためにプラズマ
のエネルギーを増加させても、高い硬度で均一性に富ん
だ良質な堆積膜を形成可能な堆積膜形成装置が実現され
る。
【0029】さらに、本発明の電子写真感光体の製造装
置は、減圧可能な反応容器と、前記反応容器内の基体と
対向して高周波電力を印加するカソード電極と、前記カ
ソード電極と前記基体との間にプラズマを発生させるこ
とにより、前記基体上に堆積膜を形成するために前記カ
ソード電極に高周波電力を供給する電源と、シリコン原
子を母体とする非単結晶材料からなる光導電層、および
少なくとも炭化水素系の原料ガスを用いた高周波プラズ
マCVD方法で形成される非単結晶炭素膜からなる表面
層の2つの層をこの順番で前記基体上に順次形成するた
めに前記反応容器内に原料ガスを導入するための導入管
と、前記光導電層の形成時及び前記表面層の形成時に前
記基体を実質的に均一に加熱する加熱手段とを有する、
電子写真感光体の製造装置において、前記表面層の形成
時に前記基体の一部を冷却する冷却手段をさらに有する
ことを特徴とする。
【0030】具体的には、前記反応容器内の気体を排気
するための排気口が前記反応容器に設けられており、前
記冷却手段が、前記基体における前記排気口に近い一部
を冷却するものであることが好ましい。
【0031】上記の通りの電子写真感光体の製造装置で
は、上述しような製造方法が用いられているので、基体
上に光導電層及び表面層がこの順番で積層されてなる電
子写真感光体の製造工程において、表面層の形成中に基
体の温度が表面層の形成条件により局所的に上昇するこ
とをなくすことができ、基体の温度を均一に保つことが
できる。よって、表面層の硬質化を図るためにプラズマ
のエネルギーを増加させても、高い硬度で均一性に富ん
だ良質な表面層を形成可能な製造装置が実現される。上
述したのと同様に、高速化及び長寿命化される近年の電
子写真装置すなわち高速複写機において、高品質の画像
特性を維持するために感光体に対する摺擦力を高めたプ
ロセス条件でも、むら削れをおこさず、また、削れ量も
低下させることが可能な電子写真感光体を製造できる。
このことにより、今まで以上に耐久性に富んだ電子写真
感光体を安定して製造することが可能となる。
【0032】さらに、上記の堆積膜形成装置、及び電子
写真感光体の製造装置において、前記冷却手段が、冷却
媒体を循環させるための流路が形成され、前記基体の一
部に接触する冷却部材と、該冷却部材内に循環させる冷
却媒体と、前記冷却部材内に前記冷却媒体を循環させる
手段とから構成されていることが好ましい。
【0033】さらに、上記の堆積膜形成装置、及び電子
写真感光体の製造装置が、前記基体の温度を直接または
間接的に検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果
から得られる信号を基に、前記堆積膜または表面層の形
成時に前記冷却部材内に冷却媒体を循環させた状態、ま
たは前記冷却部材内の冷却媒体の流れを停止させた状態
にすることにより、前記基体の温度を制御する制御手段
とをさらに有することが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。
【0035】図1(a)及び図1(b)は、本発明の一
実施形態に係る堆積膜形成方法により作製された電子写
真感光体を模式的に示す断面図である。
【0036】図1(a)に示される電子写真感光体で
は、基体1上に、下部阻止層2と、光導電層3と、非単
結晶炭素膜(a-C)からなる表面層5とがこの順番で積
層されている。図1(b)に示される電子写真感光体で
は、基体1上に、下部阻止層2と、光導電層3と、バッ
ファー層4と、a-Cからなる表面層5とがこの順番で積
層されている。
【0037】次に、本発明の電子写真感光体の製造方法
及び製造装置の一例について具体的に説明する。
【0038】図2は、電子写真感光体を作製するために
供される、13.56MHzの高周波電源を用いたプラ
ズマCVD法による本発明の堆積膜形成装置の一例を模
式的に示す図である。
【0039】図2に示される製造装置は大別すると、堆
積装置100と、原料ガス供給装置200と、反応容器
111内を減圧するための排気装置117とから構成さ
れている。堆積装置100には、容器内部を減圧可能な
反応容器111が備えられている。反応容器111は、
円筒状部材110と、円筒状部材110の一方の開口端
に絶縁体122aを介して取り付けられた円盤形状のプ
レート120aと、円筒状部材110の他方の開口端に
絶縁体122bを介して取り付けられた円盤形状のプレ
ート120bとから構成されている。円筒状部材110
の軸線が鉛直方向と平行となるように反応容器111が
設置されており、プレート120aが反応容器111の
下部に配置され、プレート120bが反応容器111の
上部に配置されている。
【0040】反応容器111内には、円筒形状の基体1
12、基体112を実質的に均一に加熱するための加熱
用ヒーター113、及び原料ガス導入管114が設置さ
れ、さらに、高周波マッチングボックス115が反応容
器111の円筒状部材110に接続されている。円筒状
部材110は、反応容器111内の基体112と対向し
て高周波電力を印加するカソード電極である。したがっ
て、反応容器111にはカソード電極が備えられてい
る。高周波マッチングボックス115には不図示のRF
電源が接続されており、そのRF電源より、高周波電力
が高周波マッチングボックス115を通して円筒状部材
110に供給される。
【0041】一方、プレート120aには排気口119
が形成され、排気口119には配管部材を介してリーク
バルブ123、真空計124、及びメインバルブ118
が接続されている。メインバルブ118には、反応容器
111内の気体を排気するための排気装置117が接続
されている。
【0042】また、反応容器111内では、冷却部材1
21が基体112の内壁面の下端部に接している。冷却
部材121は、基体112の下部、すなわち基体112
における排気口119に近い部分を冷却するためのもの
である。冷却部材121の外形形状はリング状となって
おり、それにより、冷却部材121の側壁面全体が基体
112の内周面に効率よく接触している。また、冷却部
材121は中空構造となっており、その内部で冷媒(冷
却媒体)を循環させることが可能な構成となっている。
冷却部材121の下端面には、導入用の冷却パイプ、及
び導出用の冷却パイプが接続されている。
【0043】図3は、図2に示される冷却部材の内部構
造、及びその冷却部材に接続された冷却パイプを模式的
に示す図である。図3(a)及び図3(b)に示すよう
に、導入用の冷却パイプ127aと排出用の冷却パイプ
127bのそれぞれが、互いに近い位置で冷却部材12
1に接続されている。そして、冷却パイプ127aから
導入された冷媒が冷却部材121内を循環して冷却パイ
プ127bへと導出されるように、仕切り板128が冷
却部材121内で冷却パイプ127a及び127bの近
傍に設けられている。したがって、冷却部材121内に
は冷媒を循環させるための流路が形成されており、その
流路が、冷却パイプ127a,127bのそれぞれと連
通している。冷却パイプ127aの、冷却部材121側
と反対側の端部には、冷却部材121内に冷媒を循環さ
せるように冷媒を送り出す手段としてポンプなどの冷媒
供給装置が接続されている。このような構成では、冷却
部材121内での冷媒の循環によって基体112をその
下部から冷却することができる。
【0044】本実施形態の電子写真感光体の製造装置に
は、堆積装置100や原料ガス供給装置200、冷却部
材121内に冷媒を供給する前記装置のそれぞれの動作
を制御する制御手段が備えられている。その制御手段に
よって、原料ガス供給装置200から反応容器111内
への原料ガスの供給動作や、RF電源から高周波マッチ
ングボックス115を介して円筒状部材110に高周波
電力を供給する動作が制御される。
【0045】一方、原料ガス供給装置200は、SiH
4,GeH4,H2,CH4,B26,PH3等の原料ガス
をそれぞれ収容したガスボンベ221〜226と、バル
ブ231〜236と、流入バルブ241〜246と、流
出バルブ251〜256と、マスフローコントローラー
211〜216とから構成されている。各原料ガスのガ
スボンベ221〜226はそれぞれ、バルブ260及び
ガス配管116を介して反応容器111内のガス導入管
114に接続されている。ガスボンベ221について説
明すると、そのガスボンベ221が、バルブ231、流
入バルブ241、マスフローコントローラー211、及
び流出バルブ251を介してバルブ260に接続されて
いる。バルブ231と流入バルブ241との間には圧力
調整器261が接続されている。
【0046】同様に、ガスボンベ222〜226のそれ
ぞれが、バルブ232〜236、流入バルブ242〜2
46、マスフローコントローラー212〜216、及び
流出バルブ252〜256のそれぞれを介してバルブ2
60に接続されている。バルブ232〜236と流入バ
ルブ242〜246とのそれぞれの間には圧力調整器2
62〜266が接続されている。
【0047】この装置を用いた堆積膜の形成は、例えば
以下のように行なうことができる。
【0048】まず、反応容器111内の基体支持台12
6に基体112を設置する。その後、排気装置117
(例えば真空ポンプ)により反応容器111内の気体を
排気する。続いて、加熱用ヒーター113により基体1
12の温度を50〜500℃の所定の温度に制御する。
この時、基体112の温度を実質的に均一に保つため、
冷却部材121内には冷媒を流さず、基体112を冷却
部材121によって冷却しないことが肝要である。
【0049】堆積膜形成用の原料ガスを反応容器111
に流入させるためには、ガスボンベのバルブ231〜2
36、反応容器111のリークバルブ123が閉じられ
ていることを確認し、また、流入バルブ241〜24
6、流出バルブ251〜256、及び補助バルブ260
が開かれていることを確認する。そして、メインバルブ
118を開いて反応容器111内及びガス配管116内
を排気装置117により排気する。
【0050】次に、真空計124の読みが約6.5×1
-4Paになった時点で補助バルブ260、流出バルブ
251〜256、及び流入バルブ241〜246を閉じ
る。その後、バルブ231〜236を開いてガスボンベ
221〜226より各ガスを流出させ、圧力調整器26
1〜266により各ガス圧を19.6N/cm2(2K
gf/cm2)に調整する。次に、流入バルブ241〜
246を徐々に開けて各ガスをマスフローコントローラ
ー211〜216内に導入する。
【0051】以上のようにして成膜の準備が完了した
後、以下の手順で各層の形成を行う。基体112が所定
の温度になったところで流出バルブ251〜256のう
ちの必要なガスのバルブ及び補助バルブ260を徐々に
開き、ガスボンベ221〜226から所定のガスを、ガ
ス導入管114を介して反応容器111内に導入する。
次に、マスフローコントローラー211〜216によっ
て各原料ガスが所定の流量になるように調整する。その
際、反応容器111内の圧力が1.0×102Pa以下
の所定の圧力になるように真空計124を見ながらメイ
ンバルブ118の開口を調整する。反応容器111の内
圧が安定したところで、周波数13.56MHzのRF
電源(不図示)を所望の電力に設定して、高周波マッチ
ングボックス115を通じて反応容器111内にRF電
力を導入し、グロー放電を生起させて、基体112と円
筒状部材110との間にプラズマを発生させる。この放
電エネルギーによって反応容器111内の原料ガスが分
解され、所定のシリコンを主成分とする堆積膜が基体1
12上に形成される。所望の膜厚の堆積膜が形成された
後、RF電力の供給を止め、また、流出バルブを閉じて
反応容器111へのガスの流入を止め、堆積膜の形成を
終える。同様の操作を複数回繰り返すことによって、シ
リコン原子を母体とする非単結晶材料からなる所望の多
層構造の光受容部材が基体112上に形成される。
【0052】本発明の製造方法における電子写真感光体
の表面層の形成は、上記の手順によって光導電層を所定
の膜厚に作製した後、放電を一旦止め、反応容器111
内を排気する。その後、水素を含有した非単結晶炭素膜
(a-C:H膜)を形成するための炭化水素系の原料ガス、
例えばCH4,C22,C24,C26,C38,C4
10等のガス、及び、場合によっては水素ガス又はヘリウ
ム等の希釈ガスをそれらのガスと混合させて、補助バル
ブ260を介して原料ガス導入管114より反応容器1
11内に所定の流量だけ導入する。後は、上述の光導電
層の作製と同様の手順で膜形成を行う。
【0053】この時、RFパワー(RF電力)の投入と
同時に、冷却パイプ127aを通して冷却部材121内
に冷媒を流し込み、冷却部材121内で冷媒を循環させ
る。このように表面層を形成する工程時には、基体12
1を加熱用ヒーター113により実質的に均一に加熱す
ると共に、冷却部材121内の冷媒の循環により基体1
21の下部を冷却することができるようになっている。
これにより、基体112の温度が表面膜の形成条件によ
り局所的に上昇するということをなくすことができる。
例えば、表面層の硬質化を図るためにプラズマのエネル
ギーを増加させた際に、反応容器111内における排気
口119に近い部分に放電が時々集中しても、基体11
2における排気口119に近い部分を冷却部材121内
の冷媒の循環で冷却することにより、基体112におい
て排気口119に近い部分の温度が局所的に上昇するこ
とをなくすことができる。
【0054】このように、高品質の表面層を形成するた
めにプラズマエネルギーを増加させても、反応容器11
1内の基体112で温度分布の傾斜が発生することをな
くすことができ、表面層の形成中に基体112の温度を
均一に保つことができる。よって、高い硬度で均一性に
富んだ良質な表面層を形成することが可能となる。その
結果、例えば、高速化及び長寿命化される近年の電子写
真装置すなわち高速複写機において、高品質の画像特性
を維持するために感光体に対する摺擦力を高めたプロセ
ス条件でも、むら削れをおこさず、また、削れ量も低下
させることができる。このことにより、今まで以上に耐
久性に富んだ電子写真感光体を安定して製造することが
可能となる。
【0055】上述したような製造方法において、それぞ
れの層を形成する際には必要なガス以外の流出バルブは
全て閉じられていることはいうまでもない。また、それ
ぞれのガスが反応容器111内や、流出バルブ251〜
256のそれぞれから反応容器111に至る配管内に残
留することを避けるために、流出バルブ251〜256
を閉じ、補助バルブ260を開き、さらにメインバルブ
118を全開にして系内を一旦高真空に排気する操作を
必要に応じて行う。
【0056】上述のガス種及びバルブ操作は各々の層の
作製条件にしたがって変更が加えられることはいうまで
もない。電子写真感光体の表面層として、水素を含有し
た非単結晶炭素膜(a-C:H膜)だけでなく、水素とハロ
ゲンのうち少なくともいずれか一方を含有した非単結晶
炭素膜(a-C:H及び/又はa-C(H,X))を形成することが
できる。
【0057】さらに本発明は、電子写真感光体の製造以
外にa-C膜のコーティング等にも有効であることはいう
までもない。この場合、コーティングする部材の材質、
形状、大きさ等により、冷却部材を適宜工夫する必要が
あるが、上述した冷却機構を基本として装置を設計すれ
ばよい。
【0058】図4は、図2に示した堆積膜形成装置の変
形例を模式的に示す図である。図4に示される堆積膜形
成装置は、図2の製造装置と比較して、反応容器内の基
体112の下部を冷却する構成が主に異なっている。こ
の堆積膜形成装置では反応容器111aは、円筒状部材
110と、円筒状部材110の下端面に絶縁体122a
を介して取り付けられた円盤形状の冷却プレート121
aと、円筒状部材110の上端面に絶縁体122bを介
して取り付けられたプレート120bとから構成されて
いる。冷却プレート121aの上面には基体支持台12
6が設けられており、反応容器111a内の基体112
の下部を冷却する冷却部材が、冷却プレート121a及
び基体支持台126から構成されている。
【0059】冷却プレート121a内には、そのプレー
ト内で冷媒を循環させるための流路が形成され、その流
路内に冷媒を流入させるための冷却パイプ127aが冷
却プレート121aの側面に接続されている。また、図
4に基づいて後述するように、冷却プレート121a内
を循環した冷媒をその外部に流出させるための冷却パイ
プ127bも冷却プレート121aの側面に接続されて
いる。また、冷却プレート121aには排気口119a
が形成され、排気口119aには、図2の製造装置と同
様に配管部材を介してリークバルブ123、真空計12
4、及びメインバルブ118が接続されている。メイン
バルブ118には、反応容器111a内の気体を排気す
るための排気装置117が接続されている。
【0060】冷却プレート121a内で冷媒を循環させ
るためには、例えば図5(a)及び図5(b)に示すよ
うに冷却プレート121aの内部に溝を形成し、冷媒が
程良く循環するような構成にすることが基体112の冷
却に効果的である。この場合、例えば、図5(b)に示
すように導入用の冷却パイプ127aと排出用の冷却パ
イプ127bのそれぞれを、互いに近い位置で冷却プレ
ート121aに接続する。そして、冷却パイプ127a
から導入された冷媒が冷却プレート121a内を循環し
て冷却パイプ127bへと導出されるように、仕切り板
128aが冷却プレート121a内で冷却パイプ127
a及び127bの近傍に設けられている。また、冷却プ
レート121a内には、そのプレートの内側で冷媒が循
環するように冷却プレート121aと同心の円筒状ガイ
ド板129が設けられている。
【0061】このような冷却プレート121a内に冷媒
を循環させるには、冷却パイプ127aから冷媒を冷却
プレート121a内に導入し、そのプレート内を循環し
た冷媒を冷却パイプ127bから排出させる。冷却プレ
ート121aの内部構造が、上述したように構成された
ことにより、その内部で冷媒が程良く循環し、基体11
2の冷却が効果的に行われる。この例では、冷却プレー
ト121aを中空構造としたが、基体支持台126も中
空構造とし、かつ基体支持台126を冷却プレート12
1aと一体構造にすることにより、基体112の冷却効
果をより一層高めることができる。
【0062】図6は、図4に示した堆積膜形成装置のさ
らに他の変形例を模式的に示す図である。図6に示され
る堆積膜形成装置と、図4の製造装置とを比較すると、
図4の装置は、反応容器111aの下側に排気口119
aを設けると共に基体112の下側の部分を冷却する構
成であるのに対して、図6の装置は、反応容器の上側に
排気口を設けると共に反応容器内の基体の上部を冷却す
るような構成である点が主に異なっている。
【0063】具体的に説明すると、図6に示される堆積
膜形成装置では、反応容器111bが、円筒状部材11
0と、円筒状部材110の下端面に絶縁体122aを介
して取り付けられたプレート120aと、円筒状部材1
10の上端面に絶縁体122bを介して取り付けられた
円盤形状の冷却プレート121bとから構成されてい
る。冷却プレート121bに、反応容器111b内の気
体を排気するための排気口119bが設けられている。
排気口119bには、図2の製造装置と同様に配管部材
を介してリークバルブ123、真空計124、及びメイ
ンバルブ118が接続されている。メインバルブ118
には、反応容器111b内の気体を排気口119bより
排気するための排気装置117が接続されている。
【0064】また、冷却プレート121bは中空構造と
なっており、図5に示したプレート121aと同様に冷
媒を循環させることが可能な構成となっている。冷却プ
レート121bの側面に、そのプレート内の流路に冷媒
を導入するための冷却パイプ127aと、そのプレート
内の冷媒を導出させるための冷却パイプとが接続されて
いる。この冷却プレート121bには基体112の上端
が補助基体125aを介して接続されており、冷却プレ
ート121b内での冷媒の循環により基体112の上側
の部分が補助基体125aを介して冷却される構成とな
っている。よって、基体112の上部を冷却する冷却部
材が冷却プレート121b及び補助基体125aから構
成されている。
【0065】ここで、補助基体125aを中空構造と
し、かつ補助基体125a内と冷却プレート121b内
とを連通させてそれらを一体構造とすることにより、基
体112の冷却効果をより一層高めることができる。
【0066】図7は、図2に示した堆積膜形成装置の他
の変形例を模式的に示す図である。図7に示される堆積
膜形成装置は、図2の製造装置と比較して、反応容器1
11の円筒状部材110に、その高さ方向の中央部に位
置する排気口111cを設けると共に、基体112の高
さ方向中央部を冷却する構成となっている点が主に異な
っている。この例では、反応容器111の高さ方向中央
部と、その容器内に固定された基体112の高さ方向中
央部とがほぼ同じ高さとなっており、排気口119c
が、基体112おけるその高さ方向の中央部とほぼ同じ
高さに位置している。図7では、堆積装置100の部分
のみが示されているが、その堆積装置100には、図2
の装置と同様に補助バルブ260を介して原料ガス供給
装置200が接続されている。
【0067】この堆積膜形成装置では、反応容器111
に取り付けられたプレート120a,120bに排気口
が設けられておらず、上述したように反応容器111の
高さ方向中央部に排気口119cが設けられている。排
気口119cには、図2の製造装置と同様に配管部材を
介してリークバルブ123、真空計124、及びメイン
バルブ118が接続されている。メインバルブ118に
は、反応容器111内の気体を排気口119cより排気
するための排気装置117が接続されている。反応容器
111内の気体は、排気装置117によって基体112
の高さ方向の中心付近から排気口119cを通して横方
向に排気される。
【0068】反応容器111内では、基体112の一部
を冷却するための冷却部材121cが、基体112の内
壁面におけるその高さ方向の中央部分に接している。冷
却部材121cの外形形状は、図2に示した冷却部材1
21と同様にリング状となっており、冷却部材121c
の側壁面全体が基体112の内周面に接している。ま
た、図2に示した冷却部材121と同様に、冷却部材1
21cが中空構造であると共にその内部に仕切り板が設
けられており、冷却部材121c内で冷媒を循環させる
ことが可能な構成となっている。冷却部材121cの上
端面に、その部材内の流路に冷媒を導入するための冷却
パイプ127a、及びその部材内の冷媒を導出させるた
めの冷却パイプ127bとが接続されている。このよう
な構成では、冷却部材121c内での冷媒の循環によっ
て基体112がその高さ方向中央部から冷却される。
【0069】次に、本発明の特徴について、本発明が完
成された経緯と共にさらに説明する。
【0070】本発明者らは、電子写真感光体の表面層と
してa-C材料を用いることにより、感光体の耐久性、及
び画像特性を向上させることに成功していたが、さらな
る高速処理が可能な複写機等において今まで以上に感光
体に対する摺擦力を向上させた電子写真プロセスでは、
表面層の作製条件によってはその膜厚むらを引き起こ
し、これが原因となってむら削れを発生させてしまうこ
とがあった。このため、もう一段、品質を向上させるた
めには、このような、より過酷なプロセス条件において
も、高耐久性、高画質を維持しつつ、膜厚むらやむら削
れの発生しない電子写真感光体用の表面層の開発が求め
られるようになった。
【0071】電子写真感光体の製造においては、堆積膜
の形成前に加熱ヒーター等によって基体をある程度均一
に加熱する必要がある。また、堆積膜の形成中も、下部
阻止層及び感光層は、比較的少ない放電電力で形成され
るため、堆積膜形成中の基体の温度は徐々に低下してし
まう。堆積膜の特性を保つためには、堆積膜の形成中に
も加熱ヒーターによって基体の温度をある範囲に維持さ
せなければならない。この場合、基体全体を均一に加熱
するためには、例えば、図2等に示した加熱ヒーター1
13として、均一な発熱分布を持った加熱手段を円筒状
基体112の内側に設置し、反応容器内で基体112上
に堆積膜を形成する必要がある。
【0072】従来の堆積膜形成装置の構成、すなわち従
来の電子写真感光体の製造装置の構成のままで、電子写
真感光体の表面層としてa-C膜を形成すると、その形成
条件によっては膜厚むらや特性むらが生じてしまう。こ
の原因は、a-C膜の硬質化を図るためにプラズマのエネ
ルギーを従来よりも多く投入することに起因するプラズ
マの局在が引き起こす基体の温度むらであることが解っ
てきた。本発明者らが、a-C膜の形成時に基体の温度を
観察したところ、プラズマエネルギーを上昇させると、
反応容器内の基体において排気口に近い部分に放電が時
々集中し、その基体の、排気口近傍の部分の温度が、堆
積膜の形成条件によって局所的に上昇し、その結果、基
体の温度が、排気口に近い部分程高くなり、基体で温度
分布の傾斜ができてしまうことを確認した。
【0073】このように高品質のa-C膜を得ようとプラ
ズマエネルギーを上昇させると、上述のように基体で温
度分布の傾斜が発生してしまうことが確認された。これ
までは、このような基体での温度分布の傾斜が発生する
ような条件までプラズマエネルギーを与えなくとも充分
実用性のあるa-C膜が得られていたが、近年の電子写真
の進歩とユーザーのニーズから、さらに一歩進んだ電子
写真感光体及び電子写真装置を提供していく上でこうし
た問題を解決する必要性に迫られた。
【0074】こうした状況の中、本発明者らは、下部阻
止層や感光層といった、a-Siから成る層の成膜時には基
体を実質的に均一に加熱し、a-Cからなる表面層の形成
時には基体の一部を冷却しながら堆積膜を形成すること
により、例えばプラズマエネルギーを上昇させ、より高
品質なa-C膜が得られる条件においても、堆積膜の形成
中に均一な基体温度を保ち、均一かつ高品質なa-C膜を
得ることが可能になった。
【0075】本発明において、基体の冷却手段として
は、図2に示したように、例えば金属性の冷却部材12
1を基体112の内壁面の一部に接触させて冷却するこ
とが有効である。基体112の内壁面に冷却部材121
を効率よく接触させるためには、冷却部材127の形状
を、図2及び図3に示したようにリング状にし、その内
部に、例えば図3に示したような構成により冷媒を循環
させることが有効である。
【0076】さらに本発明において、図4及び図5に示
したように、基体112の冷却効率を高めるために、反
応容器を設置するためのプレートを冷却部材として用
い、その冷却プレート121a内に冷却媒体を循環さ
せ、基体112の一端が冷却プレート121aに接触す
るように設置することも有効な手段である。さらに、図
5に示したように、基体支持台126が冷却プレート1
21aと一体構成であり、かつ、基体支持台126内に
も冷却媒体を循環させ、基体112の冷却効率を向上さ
せることも本発明では有効である。
【0077】本発明において、冷却部材の材質として
は、熱伝導性、強度、加工性の面から、ステンレス鋼、
アルミを主成分とした合金等を用いることが好ましい。
また、冷却部材内を循環させる冷却媒体としては、通
常、水が使用されるが、それ以外の液体を循環させても
よい。
【0078】本発明において、冷却部材を、基体112
の、排気口に近い部分に接触させて設置し、基体112
を冷却することが重要である。
【0079】本発明において、基体の冷却方法は、上記
以外の方法でも良い。即ち、反応容器を含めたプラズマ
CVD装置の構成により基体の冷却方法が任意に選択さ
れる。
【0080】図4に示したように、基体112の下側に
排気口119aを設けた装置構成であれば、反応容器の
下側にある前述の冷却プレート121aの構成が基体1
12の冷却に効果的である。また、図6に示したよう
に、基体112の上側に排気口119bを設けたような
装置構成であれば、基体112をその上端側から冷却す
る手段を設けることが本発明では有効である。さらに、
図7に示したように、基体112の高さ方向中心付近か
ら横方向に気体を排気する排気口119cを設けたよう
な装置構成の場合、基体112の高さ方向中心付近に冷
却部材121cを設けることが本発明では有効である。
【0081】本発明において、電子写真感光体の表面層
を形成する時のより具体的な手法として、堆積膜の形成
中に基体112の温度を検知し、その信号を基に冷却部
材内の冷媒の循環または停止を行ないながら、表面層形
成中の基体112の温度を制御することも有効な手段で
ある。例えば、図4に示した装置において、基体112
の上端部と下端部のそれぞれの内側に検知手段として温
度センサー(不図示)を設置し、その温度差がある値に
達したときに冷却プレート121a内に冷媒を循環させ
る。基体112に温度センサーを直接設置することが困
難な場合には、例えば、基体112の上端に取り付けら
れた補助基体125と、基体支持台126とに温度セン
サーを設置する等の代替手段も本発明では有効である。
このように補助基体125や基体支持台126を介して
基体112の温度を温度センサーによって間接的に検知
してもよい。
【0082】基体112の温度を検知する温度センサー
を設置した場合、冷却部材121内に冷媒を供給する供
給装置の動作が、上述したように堆積装置100及び原
料ガス供給装置200の動作を制御する制御手段によっ
て制御される。この場合、温度センサーの検知結果から
得られた信号を基にその冷媒供給装置を制御手段により
制御し、堆積膜の形成時に冷却部材121内に冷媒を循
環させた状態、または冷却部材121内の冷媒の流れを
停止させた状態にすることにより、基体112の温度が
制御される。
【0083】次に、本発明の製造装置及び製造方法につ
いて実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれ
により何ら限定されるものではない。
【0084】(実施例1)図2に示した本発明のプラズ
マCVD装置を用いて、表1に示される条件により円筒
状のAl(アルミニウム)基体上に下部阻止層及び光導
電層をこの順番で順次積層し、次いで表2に示される条
件で光導電層の表面に、a-C:Hからなる表面層を形成
し、図1(a)に示した構成の電子写真感光体を作製し
た。
【0085】この時、冷却部材121を、円筒状の基体
112の下端から上方向に200mmの範囲で基体11
2の内面に接触させ、表面層の形成時には、水温10℃
の水道水を毎分1リットルの水量で冷却部材121内に
循環させた。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】(比較例1)図8に示される従来のプラズ
マCVD装置を用いて、表1に示した条件により円筒状
Al基体上に下部阻止層及び光導電層をこの順番で順次
積層し、次いで表2に示した条件で光導電層の表面に、
a-C:Hからなる表面層を形成し、電子写真感光体を作製
した。図8に示される従来の堆積膜形成装置は、本発明
の各堆積膜形成装置と比較して、反応容器内の基体を冷
却する手段を有していない点が異なっており、図8で
は、本発明の堆積膜形成装置の構成部品と同一の部品に
同一の符号を付してある。
【0089】実施例1及び比較例1で作製した各感光体
ドラムについて、以下のように、表面層の膜厚むら、む
ら削れ(濃度むら)、及び感度むらの評価を行なった。
【0090】表面層の膜厚むらの評価に関しては、ま
ず、堆積膜の形成を終えた感光体ドラムをプラズマCV
D装置から取り出し、分光反射計(大塚電子社製のCL-3
000R)を用いて表面層の膜厚を計算した。次に、感光体
ドラムの軸方向に5点の膜厚を測定し、最大値と最小値
の差の値を比較した。値の比率によって、表面層の膜厚
むらの判定を行なった。その値の比率が5%未満の場合
を◎、5%以上20%未満の場合を○、20%以上50
%未満の場合を△、50%以上の場合を×とした。
【0091】むら削れ(濃度むら)の評価に関しては、
電子写真装置であるキヤノン社製のNP6060を改造
し、クリーニングブレードの材質及び押し当て圧を変更
することで、むら削れが発生しやすい環境を作りだした
加速試験機を用いた。その加速試験器に、作製した感光
体ドラムを設置し、キヤノン社製の中間チャート(部品
番号:FY9−9042)を原稿台に置き、耐久試験を
10万枚分行なった。耐久試験後、感光体ドラムを電子
写真装置から取り出し、目視によりドラム表面のむら削
れの有無を観察した。
【0092】さらに、耐久試験後の画像について画像濃
度計(Macbeth RD914)を用いて画像濃度
を測定し、濃度の分布及び平均値(M)を求め、標準偏
差(σ)の±2の範囲から外れる値とMの値の差の絶対
値の平均値(W)を求め、むら削れを判定した。その平
均値Wが5%未満の場合を◎、平均値Wが5%以上10
%未満の場合を○、平均値Wが10%以上20%未満の
場合を△、平均値Wが20%以上の場合を×とした。
【0093】感度むらの評価に関しては、まず、むら削
れの評価の際に用いた前記の改造機を用い、評価現像器
の位置に電位計を取り付け、通常の帯電・除電・露光の
プロセスを行ったときの現像器位置での光受容部材の表
面電位を測定する。そして、露光強度を変えたときの光
受容部材の表面電位の変化から感度を算出する。具体的
には、表面電位が400Vになるように帯電器に与える
電流量を調整した後、露光光量を変化させ、表面電位が
50Vになる光量を便宜的に感度と定義する。その数字
が小さいほど感度が良好であることを示している。この
感度測定を感光体ドラムの軸方向に5点行ない、最大値
と最小値の差の値を比較した。その値の比率によって感
度むらの判定を行なった。その値の比率が5%未満の場
合を◎、5%以上20%末満の場合を○、20%以上5
0%未満の場合を△、50%以上の場合を×とした。
【0094】これら各評価により得られた結果を次の表
3にまとめて示した。
【0095】
【表3】
【0096】表3に示されるように、実施例1の条件に
て作製した感光体ドラムは全ての項目において良好な結
果が得られた。なお、目視によるむら削れの有無は、実
施例1及び比較例1の各感光体ドラムとも確認できなか
った。
【0097】(実施例2)図2に示した本発明のプラズ
マCVD装置を用いて、実施例1と同様の条件にて円筒
状Al基体上に下部阻止層及び光導電層をこの順番で順
次積層し、次いで表4の条件にて光導電層上に表面層を
形成した。また、表面層の形成時では、高周波電力の条
件のみを1000Wから3000Wの範囲で500W毎
にかえたものをそれぞれ作製し、各電子写真感光体を実
施例1と同様に評価した。なお、本実施例でも実施例1
と同様に、表面層の形成時には水温10℃の水道水を毎
分1リットルの水量で冷却部材内に循環させた。
【0098】
【表4】
【0099】(比較例2)図8に示した従来のラズマC
VD装置を用いて、実施例2と同様に、表1に示した条
件により円筒状Al基体上に下部阻止層及び光導電層を
この順番で順次積層し、次いで表4に示した条件で光導
電層上に、a-C:Hからなる表面層を形成し、電子写真感
光体を作製した。
【0100】実施例2及び比較例2で作製した各感光体
ドラムについて、以下のような評価を行なった。
【0101】表面層の膜厚むらの評価に関しては、作製
した各感光体ドラムを実施例1と同様に評価した。その
評価結果を次の表5に示した。
【0102】
【表5】
【0103】表5に示されるように、実施例2における
表面層の膜厚むらは比較例2に比べて小さく、そのレベ
ルは良好である。
【0104】濃度むらの評価に関しては、作製した各感
光体ドラムを実施例1と同様に評価した。その評価結果
を次の表6に示した。
【0105】
【表6】
【0106】表6に示されるように、実施例2における
濃度むらは比較例2に比ベてレベルが良好である。
【0107】削れ量の評価に関しては、まず、実施例1
の感光体ドラムの評価の際に使用した前記加速試験器を
用いて実施例1と同様に加速耐久試験を行った後、表面
層の削れ量を測定した。測定には、実施例1と同様に分
光反射計(大塚電子社製のCL-3000R)を用い、感光体ド
ラムの軸方向に5点の膜厚を測定し、平均値を求めた。
すなわち、削れ量は、耐久試験前の表面層の膜厚から耐
久試験後の表面層の膜厚を引いた値における5個所の測
定点の平均値である。そして、削れ量の評価は、比較例
2において高周波電力が1000Wの条件で作製した感
光体ドラムの値を50とした相対値で比較する。その数
値が小さいほど、削れ量が少ない。削れ量の測定結果を
次の表7に示した。
【0108】
【表7】
【0109】表7に示されるように、実施例2における
削れ量は、比較例2に比べて良好な結果を示している。
また、成膜時の投入パワーを上昇させた条件において
は、削れ量の評価でさらに良好な結果が得られている。
【0110】感度むらの評価に関しては、実施例2及び
比較例2で作製した各感光体ドラムを実施例1と同様に
評価した。その評価結果を次の表8に示した。
【0111】
【表8】
【0112】表8に示されるように、実施例2における
感度むらは比較例2に比べて良好な結果を示している。
また、成膜時の投入パワーを上昇させた条件において
は、さらに良好な結果が得られている。
【0113】これらの結果から、本発明の製造方法によ
り作製された感光体ドラムは、成膜時の投入パワーを上
昇させた条件において、表面層の膜厚むらは全くなく、
感光体ドラムの軸方向で削れ量のむらを起こさずに、濃
度むら、感度むらが少ない画像を提供することができる
優れた感光体ドラムの作製が可能であることを示してい
る。
【0114】(実施例3)図2に示した本発明のプラズ
マCVD装置を用いて、実施例1と同様の条件にて円筒
状Al基体上に下部阻止層及び光導電層をこの順番で順
次積層し、次いで表9の条件にて光導電層上に表面層を
形成した。本実施例では、表面層の形成時における高周
波電力の条件を2000Wから5000Wの範囲で10
00W毎にかえたものをそれぞれ作製し、各電子写真感
光体を実施例2と同様に評価した。
【0115】
【表9】
【0116】なお、本実施例では、円筒状の基体112
の内側において、その上端から20mmだけ下方の位置
と、下端から20mmだけ上方の位置にそれぞれ温度セ
ンサーを設置し、表面層の形成時に基体の温度を温度セ
ンサーにより測定しながら堆積膜の形成を行なった。
【0117】さらに、温度センサーからの信号に基づい
て、冷却部材の冷媒導入口につながるバルブの開閉動作
を制御し、基体の上端部と下端部の温度差が10℃以上
になったときに冷却部材内で冷媒が循環するように設定
した。
【0118】得られた感光体については、実施例2と同
様に表面層の膜厚、濃度むら、削れ量、及び感度むらの
評価を行った。その評価結果を次の表10に示した。
【0119】
【表10】
【0120】表10に示すように、本実施例における感
光体ドラムは、全ての評価項目において良好な結果が得
られた。
【0121】また、本実施例のように温度センサーから
の信号に基づいて、冷却部材の冷媒導入口側のバルブの
開閉動作を連動させることによって、成膜条件等の変化
により基体温度が変化しても、装置(ハード)の変更
や、条件出し等の手間が省け、工業的にメリットが大き
い。
【0122】(実施例4)図4に示したプラズマCVD
装置を用いて、実施例2と同様の感光体ドラムを作製
し、同様の評価を行なった。本実施例のプラズマCVD
装置は、冷却部材として、図5(a)及び図5(b)に
示した構成の冷却プレート121a及び基体支持台12
6を用い、円筒状基体112の下端から冷却を行なっ
た。また、表面層の形成時では高周波電力の条件のみ
を、次の表11に示すように500Wから3000Wの
範囲で500W、750W、1000W、1500W、
2000W、2500W、3000Wにかえて感光体ド
ラムを作製した。なお、本実施例でも実施例1と同様に
表面層の形成時には、水温10℃の水道水を毎分1リッ
トルの水量で冷却部材内に循環させた。
【0123】得られた感光体については、実施例2と同
様に表面層の膜厚、濃度むら、及び削れ量の評価を行な
った。その評価結果を次の表11に示した。
【0124】
【表11】
【0125】本実施例においても、表11に示されるよ
うに、成膜時の投入パワーを上昇させた条件で表面層の
膜厚むらは全くなく、感光体ドラムの軸方向で削れ量の
むらを起こさずに、濃度むらが少ない画像を提供するこ
とができる優れた感光体ドラムの作製が可能であること
を示している。
【0126】(実施例5)図6に示した本発明のプラズ
マCVD装置を用いて、実施例2と同様の条件で感光体
ドラムを作製し、同様の評価を行なった。本実施例のプ
ラズマCVD装置では、上述したように円筒状基体11
2の上側に排気口119bを設け、基体112を冷却す
る機構も反応容器111bの上側部分に設置し、基体1
12の上端と冷却部材を接触させて基体112の冷却を
行なった。冷却部材としては、上述したように冷却プレ
ート121b及び補助基体125aが共に中空構造で一
体化され、それらの内部が連通した構造のものを使用し
た。なお、本実施例でも、実施例1と同様に表面層の形
成時に水温10℃の水道水を毎分1リットルの水量で冷
却部材内に循環させた。
【0127】得られた感光体については、実施例2と同
様に表面層の膜厚、濃度むら、及び削れ量の評価を行な
った。その評価結果を次の表12に示した。
【0128】
【表12】
【0129】表12に示すように、本実施例において
も、実施例2と同様に成膜時の投入パワーを上昇させた
条件で表面層の膜厚むらは全くなく、感光体ドラムの軸
方向で削れ量のむらを起こさずに、削れ性の優れた感光
体ドラムの作製が可能であることを示している。
【0130】(実施例6)図7に示した本発明のプラズ
マCVD装置を用いて、実施例2と同様の感光体ドラム
を作製し、同様の評価を行なった。本実施例のプラズマ
CVD装置では、上述したように円筒状基体112の高
さ方向の中心位置付近に排気口119cを設け、反応容
器111内の気体を横方向から排気した。また、冷却部
材121cは、基体112の内壁面における高さ方向の
中央部分に接触させた。なお、本実施例でも実施例1と
同様に表面層の形成時には、水温10℃の水道水を毎分
1リットルの水量で冷却部材121c内に循環させた。
【0131】得られた感光体については、実施例2と同
様に表面層の膜厚、濃度むら、及び削れ量の評価を行っ
た。その評価結果を次の表13に示す。
【0132】
【表13】
【0133】表13に示すように、本実施例において
も、実施例2と同様に成膜時の投入パワーを上昇させた
条件で表面層の膜厚むらは全くなく、感光体ドラムの軸
方向で削れ量のむらを起こさずに、濃度むらが少ない画
像を提供することができる優れた感光体ドラムの作製が
可能であることを示している。
【0134】(実施例7)図9に示される本発明のプラ
ズマ装置を用い、表2に示した条件にて幅20mm、長
さ200mmのステンレス基板601にa-C:H膜をコー
ティングした。図9のプラズマ装置は、本発明の堆積膜
形成装置の構成が適用されたものであり、図9では、堆
積装置600における反応容器611の部分のみが示さ
れている。堆積装置600における反応容器611以外
の部分や、原料ガス供給装置の構成は、図2に示した装
置と同様である。この堆積膜形成装置では、図9に示す
ように、反応容器611の一端部には、その容器内の気
体を排気するための排気口619が形成されている。こ
の反応容器611内には、堆積膜が形成される基体とし
てのステンレス基板601を支持する基体支持台626
が配設されている。基体支持台626には、その支持台
上のステンレス基板601を加熱する加熱用ヒーター6
13と、ステンレス基板601の一部を冷却するための
冷却部材621が備えられている。
【0135】冷却部材621は中空構造であり、その内
部を冷媒が循環できるようにその部材が構成されてい
る。冷却部材621には、その内部に冷媒を導入するた
めの冷却パイプ627aと、冷却部材621内から冷媒
を導出させるための冷却パイプ627bとが接続されて
いる。この冷却部材621は排気口619に近い位置に
配置されており、これにより、ステンレス基板601に
おける排気口619側の端部が、冷却部材621内の冷
媒の循環で冷却される構成となっている。
【0136】このように構成された堆積膜形成装置にお
けるコーティングの工程では、排気口619に近い位置
に設置された冷却部材621内に、水温10℃の水道水
を毎分1リットルの水量で循環させた。この成膜行程に
よりステンレス基板601にa-C:H膜のコーティングを
行い、その長手方向に10ポイントの膜厚を測定した。
その結果、各ポイントの膜厚は土5%以内であった。
【0137】さらに、同様の条件にて、冷却部材621
内に冷却水を流さないで同様のステンレス基板601に
a-C:H膜のコーティングを行ったが、排気口619に近
い位置ほどa-C:H膜の膜厚が薄くなり、最大30%の膜
厚むらが生じた。この結果から、本実施例においても、
堆積膜の形成中にステンレス基板601において排気口
619に近い部分を冷却することにより、a-C:H膜をス
テンレス基板601上に均一にコーティングすることが
可能であることを示している。
【0138】
【発明の効果】以上説明したように本発明の堆積膜形成
方法及び堆積膜形成装置によれば、反応容器内の基体上
に堆積膜を形成する際に基体を実質的に均一に加熱する
と共に基体の一部を冷却することにより、堆積膜の硬質
化を図るためにプラズマのエネルギーを増加させても、
堆積膜の形成中に基体の温度を均一に保つことができ、
高い硬度で均一性に富んだ良質な堆積膜を形成すること
が可能になるという効果がある。
【0139】また、本発明の電子写真感光体の製造方法
及び製造装置によれば、反応容器内の基体上に光導電層
及び表面層をこの順番で積層する工程において、表面層
の形成時に上記の堆積膜形成方法と同様に基体を実質的
に均一に加熱すると共に基体の一部を冷却することによ
り、表面層の硬質化を図るためにプラズマのエネルギー
を増加させても、高い硬度で均一性に富んだ良質な表面
層を形成することが可能となる。これにより、例えば、
高速化及び長寿命化される近年の電子写真装置すなわち
高速複写機において、高品質の画像特性を維持するため
に感光体に対する摺擦力を高めたプロセス条件でも、む
ら削れをおこさず、また、削れ量も低下させることがで
きる。このことにより、今まで以上に耐久性に富んだ電
子写真感光体を安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る堆積膜形成方法によ
り作製された電子写真感光体を模式的に示す断面図であ
る。
【図2】本発明の堆積膜形成装置の一例を模式的に示す
図である。
【図3】図2に示される冷却部材の内部構造、及びその
プレートに接続された冷却パイプを模式的に示す図であ
る。
【図4】図2に示される堆積膜形成装置の変形例を模式
的に示す図である。
【図5】図4に示される冷却プレートの内部構造、及び
そのプレートに接続された冷却パイプを模式的に示す図
である。
【図6】図4に示される堆積膜形成装置のさらに他の変
形例を模式的に示す図である。
【図7】図2に示される堆積膜形成装置の他の変形例を
模式的に示す図である。
【図8】従来の電子写真感光体の製造装置を模式的に示
す図である。
【図9】本発明の堆積膜形成装置の一部を模式的に示す
図である。
【符号の説明】
1、112 基体 2 下部阻止層 3 光導電層 4 バッファー層 5 表面層 100、600 堆積装置 110 円筒状部材 111、111a、111b、611 反応容器 113、613 加熱用ヒーター 114 原料ガス導入管 115 高周波マッチングボックス 116 ガス配管 117 排気装置 118 メインバルブ 119、119a、119b、119c、619 排
気口 120a、120b プレート 121、121c、621 冷却部材 121a、121b 冷却プレート 122a、122b 絶縁体 123 リークバルブ 124 真空計 125、125a 補助基体 126、626 基体支持台 127a、127b、627a、627b 冷却パイ
プ 128、128a 仕切り板 129 円筒状ガイド板 200 原料ガス供給装置 211〜216 マスフローコントローラー 221〜226 ガスボンベ 231〜236 バルブ 241〜246 流入バルブ 251〜256 流出バルブ 260 補助バルブ 261〜266 圧力調整器 601 ステンレス基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 植田 重教 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 CA03 DA12 DA23 EA25 EA30 4K030 AA06 AA09 AA17 BA27 BA29 BB12 FA03 HA13 KA18 KA23 KA26 KA30 KA39 KA41 LA17

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 減圧可能な反応容器内で、高周波電力を
    印加するカソード電極と対向する基体との間にプラズマ
    を発生させると共に、前記反応容器内に原料ガスを導入
    し、前記基体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法にお
    いて、 前記堆積膜の形成時に、前記基体を実質的に均一に加熱
    すると共に前記基体の一部を冷却しながら前記堆積膜を
    形成することを特徴とする堆積膜形成方法。
  2. 【請求項2】 前記堆積膜を形成する際には、前記反応
    容器内の気体を排気口より排気し、前記基体における前
    記排気口に近い一部を冷却する請求項1に記載の堆積膜
    形成方法。
  3. 【請求項3】 前記堆積膜を形成する際には、前記反応
    容器内に炭化水素系の原料ガスを導入して前記基体上に
    非単結晶炭素膜を形成する請求項1または2に記載の堆
    積膜形成方法。
  4. 【請求項4】 前記基体を冷却する際には、冷却部材の
    内部に冷却媒体を循環させ、該冷却部材を前記基体の一
    部に接触させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の堆
    積膜形成方法。
  5. 【請求項5】 前記堆積膜を形成する際に前記基体の温
    度を検知する段階と、 前記検知結果から得られる信号を基に、前記堆積膜の形
    成時に前記冷却部材内に冷却媒体を循環させた状態、ま
    たは前記冷却部材内の冷却媒体の流れを停止させた状態
    にすることにより、前記基体の温度を制御する段階とを
    有する請求項4に記載の堆積膜形成方法。
  6. 【請求項6】 減圧可能な反応容器内で、高周波電力を
    印加するカソード電極と対向する基体との間にプラズマ
    を発生させることにより、シリコン原子を母体とする非
    単結晶材料からなる光導電層と、少なくとも炭化水素系
    の原料ガスを用いた高周波プラズマCVD方法で形成さ
    れる非単結晶炭素膜からなる表面層とをこの順番で前記
    基体上に順次積層して電子写真感光体を製造する方法に
    おいて、 前記光導電層の形成時には前記基体を実質的に均一に加
    熱し、前記表面層の形成時には前記基体を加熱すると共
    に前記基体の一部を冷却しながら前記表面層を形成する
    ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記表面層を形成する際には、前記反応
    容器内へと原料ガスを導入すると共に該反応容器内の気
    体を排気口より排気し、前記基体における前記排気口に
    近い一部を冷却する請求項6に記載の電子写真感光体の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 前記基体を冷却する際には、冷却部材の
    内部に冷却媒体を循環させ、該冷却部材を前記基体の一
    部に接触させる請求項6または7に記載の電子写真感光
    体の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記表面層を形成する際に前記基体の温
    度を検知する段階と、 前記検知結果から得られた信号を基に、前記表面層の形
    成時に前記冷却部材内に冷却媒体を循環させた状態、ま
    たは前記冷却部材内の冷却媒体の流れを停止させた状態
    にすることにより、前記基体の温度を制御する段階とを
    有する請求項8に記載の電子写真感光体の製造方法。
  10. 【請求項10】 減圧可能な反応容器と、 前記反応容器内の基体と対向して高周波電力を印加する
    カソード電極と、 前記カソード電極と前記基体との間にプラズマを発生さ
    せて前記基体上に堆積膜を形成するために前記カソード
    電極に高周波電力を供給する電源と、 前記反応容器内に原料ガスを導入する手段と、 前記堆積膜の形成時に前記基体を実質的に均一に加熱す
    る加熱手段とを有する堆積膜形成装置において、 前記堆積膜の形成時に前記基体の一部を冷却する冷却手
    段をさらに有することを特徴とする堆積膜形成装置。
  11. 【請求項11】 前記堆積膜を形成する際に前記反応容
    器内の気体を排気するための排気口が前記反応容器に設
    けられており、 前記冷却手段が、前記基体における前記排気口に近い一
    部を冷却するものである請求項10に記載の堆積膜形成
    装置。
  12. 【請求項12】 前記反応容器内に原料ガスを導入する
    手段が、前記基体上に前記堆積膜として非単結晶炭素膜
    が形成されるように炭化水素系の原料ガスを前記反応容
    器内に導入するものである請求項10または11に記載
    の堆積膜形成装置。
  13. 【請求項13】 前記冷却手段が、冷却媒体を循環させ
    るための流路が形成され、前記基体の一部に接触する冷
    却部材と、該冷却部材内に循環させる冷却媒体と、前記
    冷却部材内に前記冷却媒体を循環させる手段とから構成
    されている請求項10〜12のいずれか1項に記載の堆
    積膜形成装置。
  14. 【請求項14】 前記基体の温度を直接または間接的に
    検知する検知手段と、 前記検知手段の検知結果から得られる信号を基に、前記
    堆積膜の形成時に前記冷却部材内に冷却媒体を循環させ
    た状態、または前記冷却部材内の冷却媒体の流れを停止
    させた状態にすることにより、前記基体の温度を制御す
    る制御手段とをさらに有する請求項13に記載の堆積膜
    形成装置。
  15. 【請求項15】 減圧可能な反応容器と、 前記反応容器内の基体と対向して高周波電力を印加する
    カソード電極と、 前記カソード電極と前記基体との間にプラズマを発生さ
    せることにより、前記基体上に堆積膜を形成するために
    前記カソード電極に高周波電力を供給する電源と、 シリコン原子を母体とする非単結晶材料からなる光導電
    層、および少なくとも炭化水素系の原料ガスを用いた高
    周波プラズマCVD方法で形成される非単結晶炭素膜か
    らなる表面層の2つの層をこの順番で前記基体上に順次
    形成するために前記反応容器内に原料ガスを導入するた
    めの導入管と、 前記光導電層の形成時及び前記表面層の形成時に前記基
    体を実質的に均一に加熱する加熱手段とを有する、電子
    写真感光体の製造装置において、 前記表面層の形成時に前記基体の一部を冷却する冷却手
    段をさらに有することを特徴とする電子写真感光体の製
    造装置。
  16. 【請求項16】 前記反応容器内の気体を排気するため
    の排気口が前記反応容器に設けられており、 前記冷却手段が、前記基体における前記排気口に近い一
    部を冷却するものである請求項15に記載の電子写真感
    光体の製造装置。
  17. 【請求項17】 前記冷却手段が、冷却媒体を循環させ
    るための流路が形成され、前記基体の一部に接触する冷
    却部材と、該冷却部材内に循環させる冷却媒体と、前記
    冷却部材内に前記冷却媒体を循環させるための手段とか
    ら構成されている請求項15または16に記載の電子写
    真感光体の製造装置。
  18. 【請求項18】 前記基体の温度を直接または間接的に
    検知する検知手段と、 前記検知手段の検知結果から得られる信号を基に、前記
    堆積膜の形成時に前記冷却部材内に冷却媒体を循環させ
    た状態、または前記冷却部材内の冷却媒体の流れを停止
    させた状態にすることにより、前記基体の温度を制御す
    る制御手段とをさらに有する請求項17に記載の電子写
    真感光体の製造装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011257657A (ja) * 2010-06-10 2011-12-22 Canon Inc 電子写真感光体の形成方法及び形成装置
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