JP3942944B2 - トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられるトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
省電力化、小型化、ボールペンなどによる書き込みや、スタンプの捺印、付箋紙の貼付等の有利さを考慮して、定着オイルを塗布しない定着器を備え、かつ1分間にA4サイズ(210mm×297mm)の紙で16枚以上のシートスピードを有する電子写真方式印字装置に対応可能なトナーの開発が要望されている。そこで、離型剤を含有したトナーが種々検討されているが、重合トナーではその製造に煩雑な工程が必要とされ、粉砕トナーでは、着色剤の分散性の低下による発色性の悪化や、離型剤の分散性の低下によるトナーの現像部材へのフィルミングの発生が生じやすく、また定着可能領域も非常に狭くなるという欠点を有する。
【0003】
一方、トナー中の離型剤の分散性を向上させ、感光体へのフィルミングを防止し耐オフセット性を向上させるために、オープンロール型混練機で製造したカラートナーが提案されている(特開2000−214638号公報)。しかし、さらに耐オフセット性を向上させるために、離型剤の添加量を増やすとオープンロール型混練機では、混練物とロールとの密着性の低下による離型剤や着色剤の分散性が不十分となる場合があり、さらに密着性が低下すると混練物がロールから垂れて混練できないという問題が生じる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、離型剤を多量に含有する混練物を、混練物のたれなどの不具合を生じることなくオープンロール型混練機を用いて溶融混練することができ、離型剤及び着色剤の分散性に優れ、オイルレス定着にも好適に用いることができるトナーを製造しうる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、混練機のロールと離型剤を含む混練物との密着性について検討した結果、特定の離型剤と着色剤とを併用することにより、オープンロール型混練機を用いて溶融混練した場合であっても、混練物がロールに適度に密着することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、少なくとも結着樹脂、イエロー着色剤及び離型剤をオープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程を有するトナーの製造方法であって、前記イエロー着色剤が式(I):
【0007】
【化2】
【0008】
で表される化合物を含有してなり、前記離型剤がヒドロキシ酸エステルを含有してなり、該離型剤の含有量が前記結着樹脂100重量部に対して5〜25重量部であり、式(I)で表される化合物と離型剤の総含有量が、トナー中、7.5〜30重量%であるトナーの製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる結着樹脂としては、ポリエステル、スチレン−アクリル樹脂等のビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、2種以上の樹脂成分が部分的に化学結合したハイブリッド樹脂等が挙げられ、特に限定されないが、これらの中では、ポリエステル及びポリエステル成分とビニル系樹脂成分とを有するハイブリッド樹脂が好ましく、ポリエステルがより好ましい。ポリエステルもしくはハイブリッド樹脂の含有量又は両者が併用されている場合にはそれらの総含有量は、結着樹脂中、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、特に好ましくは100重量%である。
【0010】
ポリエステルは、2価以上のアルコールからなるアルコール成分と2価以上のカルボン酸化合物からなるカルボン酸成分とを縮重合することにより得られる。
【0011】
2価のアルコールとしては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2又は3)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜10)、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0012】
3価以上のアルコールとしては、ソルビトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、グリセロール、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0013】
また、2価のカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、炭素数1〜20のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸、これらの酸の無水物及びアルキル(炭素数1〜12)エステル等が挙げられる。
【0014】
3価以上のカルボン酸化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)及びその酸無水物、アルキル(炭素数1〜12)エステル等が挙げられる。
【0015】
ポリエステルは、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、要すればエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
【0016】
ポリエステルの軟化点は、80〜165℃が好ましく、ガラス転移点は50〜85℃が好ましい。
【0017】
また、ポリエステルの酸価は、着色剤の分散性の観点から、0.5〜60mgKOH/gが好ましく、水酸基価は1〜60mgKOH/gが好ましい。
【0018】
また、本発明において、ハイブリッド樹脂は、2種以上の樹脂を原料として得られたものであっても、1種の樹脂と他種の樹脂の原料モノマーから得られたものであっても、さらに2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものであってもよいが、効率よくハイブリッド樹脂を得るためには、2種以上の樹脂の原料モノマーの混合物から得られたものが好ましい。
【0019】
従って、ハイブリッド樹脂としては、各々独立した反応経路を有する二つの重合系樹脂の原料モノマー、好ましくはポリエステルの原料モノマーとビニル系樹脂の原料モノマーを混合し、該二つの重合反応を行わせることにより得られる樹脂が好ましく、具体的には、特開平10−087839号公報に記載のハイブリッド樹脂が好ましい。
【0020】
本発明で用いられる着色剤は、式(I):
【0021】
【化3】
【0022】
で表される化合物を含有する。
【0023】
式(I)で表される化合物の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、1.5〜15重量部が好ましく、2.5〜12重量部がより好ましい。
【0024】
なお、本発明では、着色剤として、式(I)で表される化合物とともに、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の着色剤を併用してもよい。例えば、本発明で用いる式(I)で表される化合物はイエロー顔料であるが、シアン顔料であるP.B.15:3を併用することにより、グリーントナーを得ることもできる。
【0025】
本発明で用いられるヒドロキシ酸エステルを含有した離型剤としては、カルナウバワックス、ライスワックス等の天然ワックス、セリル−ω−ヒドロキシセロテート(Ceryl-ω-hydroxycerotate) 、セリル−ω−ヒドロキシメリセート(Ceryl-ω-hydroxymelissate)、ミリシル−ω−ヒドロキシメリセート(Myricyl-ω-hydroxymelissate)等のヒドロキシ酸エステルを含有した合成ワックス等が挙げられる。離型剤におけるヒドロキシ酸エステルの含有量は、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上が特に好ましく、50重量%以上が最も好ましい。
【0026】
ヒドロキシ酸エステルを含有した離型剤の融点は、保存性及び耐オフセット性の観点から、好ましくは65〜110℃、より好ましくは70〜100℃である。
【0027】
ヒドロキシ酸エステルを含有した離型剤の含有量は、耐オフセット性及び定着性の観点から、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは5〜25重量部、より好ましくは7〜20重量部である。
【0028】
式(I)で表される化合物と離型剤の総含有量は、溶融混練時の混練物のロールへの密着性の観点から、トナー中、7.5〜30重量%であり、好ましくは8〜25重量%、より好ましくは8〜20重量%である。
【0029】
式(I)で表される化合物と離型剤の重量比(式(I)で表される化合物/離型剤)は、溶融混練時の混練物のロールへの密着性、オイルレス定着における定着可能領域の拡張の観点から、0.175〜0.75が好ましく、0.175〜0.65がより好ましく、0.175〜0.5が特に好ましい。
【0030】
さらに、本発明では、結着樹脂、着色剤及び離型剤に加えて、荷電制御剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を、適宜用いてもよい。
【0031】
本発明のトナーの製造方法は、少なくとも結着樹脂、式(I)で表される化合物を含む着色剤及びヒドロキシ酸エステルを含有した離型剤を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練する工程を有する方法であれば特に限定されない。本発明では、これらの特定の着色剤と離型剤を併用することにより、多量の離型剤を用いて溶融混練した場合であっても、混練物がロールに適度に密着し、良好に溶融混練を行うことができ、着色剤と離型剤の分散性に優れたトナーを得ることができる。このような本発明の効果が得られる理由の詳細は不明なるも、式(I)の化合物が、ヒドロキシ酸エステルを含有した離型剤の微分散に寄与し、着色剤と離型剤を高濃度で含有した混練物であっても安定して混練できるためと推定される。
【0032】
溶融混練工程は、例えば、結着樹脂、着色剤及及び離型剤を含み、必要に応じて添加剤を併用した原料を、ヘンシェルミキサー等の混合機で適宜混合し、テーブルフィーダー、減算式スクリューフィーダー等を用いてオープンロール型混練機に投入して行うことができる。なお、原料は、混練機のロールをロール間で下向きに回転するように互いに逆方向に回転させたロールの上面又はその間隙に投入することが好ましい。
【0033】
本発明で用いるオープンロール型混練機としては、回転速度の異なる2本のロールを有する二本ロール型混練機であるのが好ましく、また、生産効率と設備の簡素化の観点から連続式の混練機であるのが好ましい。
【0034】
ロールの回転速度は、回転速度が速い方のロール(高回転ロール)では、50〜150r/minが好ましく、50〜100r/minがより好ましい。また、回転速度が遅い方のロール(低回転ロール)では、高回転ロールの回転速度よりも、10〜75r/min、より好ましくは10〜30r/min低回転であるのが好ましい。
【0035】
混練物が高回転ロールに張りつきやすくするために、高回転ロールの温度は結着樹脂の軟化点及び離型剤の融点のいずれの温度よりも高く、低回転ロールの温度は結着樹脂の軟化点及び離型剤の融点のいずれの温度よりも低く調整されているのが好ましい。
【0036】
高回転ロールの温度は、結着樹脂の軟化点及び離型剤の融点のいずれの温度よりも高いことが好ましく、そのいずれかの高い方の温度よりも、0〜80℃高いことがより好ましく、0〜50℃高いことが特に好ましい。また、低回転ロールの温度は、結着樹脂の軟化点及び離型剤の融点のいずれの温度よりも低いことが好ましく、そのいずれかの低い方の温度よりも、0〜80℃低いことがより好ましく、40〜80℃低いことが特に好ましい。
【0037】
高回転ロールと低回転ロールの温度の差は、60〜150℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。なお、ロールの温度は、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0038】
2本のロールは互いに近接して配設されているのが好ましく、ロールの間隙は、0.01〜5mmが好ましく、0.05〜2mmがより好ましい。
【0039】
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよい。
【0040】
さらに、オープンロール型混練機を用いて溶融混練した混練物を、例えば、冷却、粉砕、分級工程等の公知の粉砕トナーの製造工程に供することにより、トナーを得ることができる。
【0041】
本発明により得られるトナーの体積平均粒子径は3〜15μmが好ましい。また、トナーと疎水性シリカ等の流動性向上剤等の外添剤とをスーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等の高速攪拌機等で攪拌混合することにより、トナー表面に外添剤を添加してもよい。
【0042】
本発明の方法により得られるトナーは、離型剤の分散性に優れており、耐オフセット性に極めて優れているため、オイル供給装置を備えていないヒートロール定着装置を有する印字装置にも好適に使用することができる。かかる印字装置のシートスピードも特に限定されず、単色印字でA4紙を1分あたり20枚以上、好ましくは20〜50枚の高速装置であっても、好適に用いることができる。ここで、オイル供給装置とは、オイルタンクを有し、定量的にオイルをヒートロール表面に塗布する機構を有する装置の他、オイルを予め含浸させたロールをヒートロールに接触させるような機構を有する装置等を含む。
【0043】
【実施例】
〔軟化点〕
高化式フローテスター(島津製作所製、CFT−500D)を用い、樹脂の半分が流出する温度を軟化点とする(試料:1g、昇温速度:6℃/分、荷重:1.96MPa、ノズル:1mmφ×1mm)。
【0044】
〔ガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて昇温速度10℃/分で測定する。
【0045】
〔酸価及び水酸基価〕
JIS K0070の方法により測定する。
【0046】
樹脂製造例
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン350g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン975g、テレフタル酸299g、トリメリット酸2g及び酸化ジブチル錫4gの混合物を、窒素雰囲気下、230℃で、軟化点が113℃に達するまで反応させて、白色の固体として樹脂Aを得た。樹脂Aのガラス転移点は66℃、軟化点は113℃、酸価は6.0mgKOH/g、水酸基価は39.2mgKOH/gであった。
【0047】
実施例1〜3、比較例1〜4
樹脂A 100重量部、荷電制御剤「LR−147」(日本カーリット社製)1.2重量部及び表1に示す着色剤、離型剤からなる混合物3kgをヘンシェルミキサー(有効容量:10リットル)を用いて、羽根回転数を2300r/minに設定し、3分間予備混合した。
【0048】
得られた原料混合物を、テーブルフィーダーにて、5kg/hの供給速度で、連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山(株)製、ロール外径:140cm、有効ロール長:80cm)に供給し、混練物を得た。原料混合物の平均滞留時間は約5分間であった。なお、混練機の運転条件は、高回転ロール(前ロール)の回転数を75r/min、低回転ロール(後ロール)の回転数を50r/min、ロールの間隙を0.1mmに調整した。また、ロール内の加熱及び冷却媒体温度は、高回転ロールの原料投入側を150℃、混練物排出側を130℃、低回転ロールの原料投入側を35℃、混練物排出側を30℃に、それぞれ設定した。
【0049】
なお、比較例1、2、4では、高回転ロールへの混練物の張りつきが不十分であり、溶融混練が非常に困難であったため、製造を中止した。
【0050】
得られた混練物を冷却ベルトにて冷却後、2mmφのスクリーンを有するミルにて粗砕した。次に、この粗砕物を衝突板型ジェットミルにて粉砕し、さらにサイクロン型風力分級機にて粗粉及び微粉を除去し、体積平均粒径が8.0μmのトナーを得た。なお、トナーの平均粒径は、コールターカウンターにて測定した。
【0051】
さらに、トナー100重量部と疎水性シリカ「アエロジルR−972」(日本アエロジル社製)2重量部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー表面にコロイダルシリカを外添した。
【0052】
得られたトナーの一部を溶融させ、顕微鏡で観察して、着色剤の分散性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
試験例1
カラープリンター「BEAMSTAR−PriusLaser2500」(日立製作所製)から定着器を外した装置にトナーを実装し、A4サイズ(210mm×297mm)のファインエフシー紙を用いて未定着画像を得た。印字装置「DOCUPRINT C2220」(富士ゼロックス社製)の、オイル塗布装置を備えていないヒートロール定着装置を単独で操作できるように改造した装置を用いて、得られた未定着画像を定着させた。得られた定着画像を目視にて観察し、オフセットが発生することなく定着画像が得られる定着可能領域を評価した。定着は、定着温度を120〜190℃に5℃きざみで昇温しながら、各温度で行い、シートスピードは1分間にA4サイズの紙を22枚印字できる速度とした。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
以上の結果より、ロールへの混練物の張りつきが不十分であったため、トナーを製造できなかった比較例1、2、4及びトナーは製造できたものの不十分な混練しか行えなかった比較例3に対して、本発明では、溶融混練により離型剤や着色剤を均一に分散させることができるため、得られたトナーはいずれも定着可能領域が広く、かつ着色剤の分散性にも優れていることが分かる。
【0056】
【発明の効果】
本発明により、離型剤を多量に含有する混練物を、オープンロール型混練機を用いて溶融混練する場合でも、混練物のたれなどの不具合を生じることなく混練することができ、離型剤及び着色剤の分散性に優れたトナーを製造することができる。さらに、本発明により得られたトナーは、オイル塗布装置を備えていないヒートロール定着装置にも好適に用いることができる。
Claims (3)
- オープンロール型混練機が回転速度の異なる2本のロールを有する二本ロール型混練機であり、回転速度が速い方のロールの温度は結着樹脂の軟化点及び離型剤の融点のいずれの温度よりも高く、回転速度が遅い方のロールの温度は結着樹脂の軟化点及び離型剤の融点のいずれの温度よりも低く調整されている請求項1記載の製造方法。
- 式(I)で表される化合物と離型剤の重量比(式(I)で表される化合物/離型剤)が、0.175〜0.75である請求項1又は2記載の製造方法。
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