JP3941170B2 - インクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙に関し、特に白紙部および印字部の光沢、インクジェット記録適性に優れ、印字後のカール、コックリングが無く、印画紙様の風合いを有するインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタによる記録は、騒音が少なく、高速記録が可能であり、かつ、多色化が容易なために多方面で利用されている。インクジェット記録用紙としては、インク吸収性に富むように工夫された上質紙や、表面に多孔性顔料を塗工した塗工紙等が適用されている。ところで、これらの用紙はすべて表面光沢の低い、いわゆるマット調のインクジェット記録用紙が主体であるため、表面光沢の高い、優れた外観を持つインクジェット記録用紙が要望されている。
【0003】
上記問題を解決する方法として、顔料および接着剤を主成分とする下塗り層を設けた原紙上に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる40℃以上のガラス転移点を有する共重合体組成物を主成分とする塗工液を塗工してキャスト用塗工層を形成せしめ、該キャスト用塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げることにより、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用キャスト紙が得られることを本発明者等は見出し、特開平7-89220号として提案した。
ところで、近年インクジェット記録装置の進歩に伴い、銀塩方式の写真に迫る記録画像が可能になってきている。このため印画紙に匹敵する様な光沢、記録品質、風合いの記録用紙が求められている。しかしながら、印画紙の風合いという点では、先に提案した技術を使用しても達成が困難であるのが現状である。
またインクジェット記録を行うと、水性インクを吸収することに伴い、紙のボコツキが生じてしまう欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、インクジェット記録用紙に関し、特に白紙部および印字部の光沢に優れ、印字濃度、インク吸収性、記録画質等のインクジェット記録適性に優れ、印字後のコックリング(インク吸収に伴う印字部のボコツキ)が無く、更に印画紙の風合いを有するインクジェット記録用紙に関する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の態様を含む。
〔1〕表面に光沢を有する光沢層を有し、裏面にポリオレフィン樹脂含有層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、
紙基材の一面に、あるいは紙基材の一面に顔料および接着剤を含有する下塗り層面に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなるガラス転移点が40℃以上の重合体樹脂、またはエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなるガラス転移点が40℃以上の重合体樹脂とコロイダルシリカの複合体を含有する塗液を塗工し、得られる塗工層が湿潤状態にある間に、あるいは再湿潤した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥するキャスト仕上げで光沢層を設けた後、該紙基材の光沢層を設けた面の反対面に、ポリオレフィン樹脂含有層を、塗工量が5〜100g/m2となるように、溶融押出しラミネート法により設けることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
〔2〕表面に光沢を有する光沢層を有し、裏面にポリオレフィン樹脂含有層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、
紙基材の一面に、あるいは紙基材の一面に顔料および接着剤を含有する下塗り層面に、顔料と樹脂を含有し、該顔料として一次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、二次粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下であるシリカ微細粒子を含有する塗液を塗工し、得られる塗工層が湿潤状態にある間に、あるいは再湿潤した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥するキャスト仕上げで光沢層を設けた後、該紙基材の光沢層を設けた面の反対面に、ポリオレフィン樹脂含有層を、塗工量が5〜100g/m 2 となるように、溶融押出しラミネート法により設けることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
〔3〕ポリオレフィン樹脂含有層が二酸化チタンを含有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
〔4〕ポリオレフィン樹脂含有層の表面がマット仕上げされてなることを特徴とする〔1〕〜〔3〕に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0006】
〔5〕下塗り層の顔料が、非晶質シリカを含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0007】
〔6〕ポリオレフィン樹脂は、その密度0.915g/cm3〜0.950g/cm3であり、そのメルトフローインデックス2〜20g/10分のポリエチレン樹脂である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる紙基材としては、特に限定されるものではなく、一般の塗工紙に使用される酸性紙、あるいは中性紙等が適宜使用される。紙基材のインク吸収性を向上させる目的で、サイズ度を調整したり、焼成カオリン、シリカ等の吸収性顔料を内添することができる。また透気性を有する合成紙または透気性フィルム等も使用し得る。
【0009】
本発明では紙基材の一面に、下塗り層を1層以上設けるのが好ましい。何故なら光沢層のインク定着・吸収能が少ない場合には、下塗り層がインク定着・吸収の主な役割を果たし、光沢層はインク通過層となる。光沢層にインク定着・吸収能がある場合でも、下塗り層を設けることにより、インクの定着・吸収が促進される。紙基材上に設けられる下塗り層(記録層ともいう)は、顔料と接着剤を主成分として構成される。顔料としては、例えばカオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカともいう)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、コロイダルシリカ、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等、一般塗工紙製造分野で公知公用の各種顔料が使用できるが、上記の顔料の中で、塗工層の構造をポーラスでインク吸収性の優れたものにする意味で、非晶質シリカや酸化アルミニウム、ゼオライト、合成スメクタイト等を少なくともその一部として使用するのが好ましい。
【0010】
本発明の下塗り層に用いる顔料の二次粒子(凝集粒子)の平均粒子径は、0.1μm以上15μm以下のものが好ましく、1μm以上10μm以下のものがより好ましい。二次粒子の平均粒子径が0.1μm未満になると、インク吸収性が低下し、にじみやインク吸収ムラが発生し、所望とする画像品位を得られ難くなる。また、顔料の二次粒子の平均粒子径が15μmを超えると、光沢の低下が起こるとともに、発色性の低下が発生し、所望する画像品位を得ることができ難くなる。
【0011】
上記顔料は、異なる種類や平均粒子径のものを併用することができる。
接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス、等一般に塗被紙用として用いられている従来公知の接着剤が単独、あるいは併用して用いられる。なお接着剤の配合量は顔料100重量部に対し、1〜200重量部、より好ましくは2〜100重量部の範囲で調節される。ここで接着剤の量が少ないと、記録層の強度が弱くなり表面が傷つきやすくなったり、粉落ちが発生する場合がある。逆に接着剤の量が多いと、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる場合がある。
【0012】
下塗り層には、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等のカチオン性化合物を添加できる。これにより画像濃度および印字画像耐水性および光沢層を設けた後の光沢を向上させることができる。顔料100重量部に対し、1〜100重量部、より好ましくは10〜60重量部の範囲で使用することができる。
下塗り層には、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。上記材料をもって構成される各記録層用組成物は、一般に固形分濃度を5〜65重量%程度に調整し、坪量が約20〜400g/m2 程度の基材上に塗工される。塗工量は乾燥重量で1〜50g/m2 程度、より好ましくは2〜30g/m2 程度である。塗工はブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター等の各種公知公用の塗工装置により塗工、乾燥される。さらに、必要に応じて記録層の乾燥後にスーパーキャレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施すこともできる。
【0013】
紙基材上に、或いは上記した顔料と接着剤よりなる下塗り層上に、光沢層を設ける。光沢層はインクを速やかに通過あるいは吸収できるよう、光沢を阻害しない範囲で多孔性もしくは通液性にするのが好ましい。このようにするためには、顔料を配合するか、光沢を落とさない範囲で、光沢層が完全に成膜しないような乾燥条件を選択すると良い。
光沢層に含有される樹脂としては下塗り層の接着剤として記載したもの等が使用できる。例えば、ポリビニルアルコール類、水性ウレタン樹脂、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなる重合体樹脂等が挙げられる。
樹脂を主体に光沢層を形成する場合、特にエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下エチレン性モノマーともいう)を重合させてなる重合体樹脂あるいは共重合体樹脂(以下一括して重合体樹脂とも称する)を主成分として構成されるのが好ましい。この様な重合体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のアルキル基炭素数が1〜18個のメタクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレン、ブタジエン等のエチレン性モノマーを重合して得られる重合体が挙げられる。
なお、重合体は、必要に応じて2種類以上のエチレン性モノマーを併用した共重合体であっても良いし、さらに、これら重合体あるいは共重合体の置換誘導体でも良い。因みに、置換誘導体としては、例えばカルボキシル基化したもの、またはそれをアルカリ反応性にしたもの等が例示される。
【0014】
また、上記のエチレン性モノマーをコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R(R:重合体成分)結合によって複合体になった形で使用すると、光沢とインク吸収性のバランスに特に優れるため好ましい。この際のエチレン性モノマーとコロイダルシリカの存在割合は、重量比で5/95〜95/5程度が望ましい。コロイダルシリカの割合が95を超えて多くなると複合化に寄与しないコロイダルシリカが多くなり、光沢が低下する場合があり、5未満であると所望の効果が得られない場合がある。
上記の重合体樹脂は、そのガラス転移点が40℃以上のものが好ましく、50〜100℃の範囲であるものがより望ましい。ガラス転移点が低いと乾燥の際に成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下する結果、インクの吸収速度が低下するおそれが生じる。また、乾燥温度が重要であり、乾燥温度が高すぎると成膜が進みすぎ、表面の多孔性が低下する結果、インクの吸収速度が低下し、逆に乾燥温度が低すぎると、光沢に乏しくなる傾向が有り、生産性も低下する。
また、光沢層には顔料を配合することができる。この場合、顔料としては、下塗り層に用いたものと同様のものが挙げられるが、光沢、透明性、インク吸収性の点で、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、酸化アルミニウム、ゼオライト、合成スメクタイト等が好ましく、顔料の平均粒子径は、0.01〜5μmものが好ましく、0.05〜1μmのものがより好ましい。粒子径が0.01μm未満になると、インク吸収性の効果に乏しく、5μmを超えると、光沢や印字濃度の低下が起こる可能性が生じる。
【0015】
顔料として一次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、二次粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下であるシリカ微細粒子を使用すると、光沢、インクの吸収性に特に優れたものとなり好ましい。このようなシリカ微細粒子を使用すると光沢層中に比較的多量の顔料を添加しても、高光沢な表面が得られ、この顔料を主成分(50%以上)として形成することができる。
この場合、光沢層がインク吸収性および透明性に優れるため、光沢層にカチオン性化合物を配合すると、インク染料が効率よく光沢層に定着し、光沢層の透明性とあいまって印字濃度の極めて優れたものとなり易い。
【0016】
光沢層には、画像濃度および印字画像耐水性を向上させる目的でポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等のカチオン性化合物を、1〜100重量%、より好ましくは5〜50重量%の範囲で配合することができる。
光沢層用塗工液には、その他に通常の印刷用塗工紙やインクジェット用紙に使用されている消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤及び分散剤、増粘剤等の各種助剤が適宜添加される。
光沢層は、重合体樹脂、例えば上記のエチレン性モノマーを重合してなる重合体樹脂、および必要に応じ顔料を添加した塗液を塗工して、該塗工層が湿潤状態(少なくとも可塑性を有する程度の水分を含有)にある間に、あるいは再湿潤した後、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(キャスト方式)により、優れた光沢とインク吸収性を兼ね備えるインクジェット記録用紙が得られる。鏡面ドラムによる乾燥温度は特に限定しないが、50℃〜150℃、特に70〜120℃程度である。
【0017】
前述した光沢層用塗工液を記録層上に塗工する場合、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター等の各種公知の塗工装置が使用できる。光沢層用塗工液の塗工量は、乾燥固形分で0.2〜100g/m2 、好ましくは、1〜50g/m2 である。ここで、0.2g/m2 未満では光沢が十分に出ない場合があり、100g/m2 を越えて多いとインク乾燥性が劣ったり、記録濃度が低下する場合がある。
キャスト仕上げにより光沢層を設けた後で、さらにスーパーカレンダー等により平滑化処理を行うこともできる。
【0018】
本発明では、光沢を有する光沢層を設けた面の反対面に、ポリオレフィン樹脂含有層を溶融押出しラミネート法により設ける。ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、α−オレフィン類例えばプロピレンなどの単独重合体、ないしは前記オレフィンの少なくとも2種類の共重合体、およびこれらの各種重合体の少なくとも2種類の混合物などから選ぶことができる。特に好ましいポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリプロピレンおよびこれらの混合物である。ポリオレフィン樹脂の分子量に特に制限はないが、2万〜20万程度の範囲のものが通常使用される。
【0019】
ポリエチレン樹脂等としては市販品から適宜選択して使用することができるが、その密度は0.915g/cm3 〜0.950g/cm3 がラミネート加工適性の点で好ましい。メルトフローインデックスは2〜20g/10分であることが好ましい(JISK−6760)。
メルトフローインデックスが小さい場合および大きい場合は、溶融押出しの操業工程の管理が困難になり、均一な塗工層が得られ難くなる場合がある。
ポリオレフィン樹脂含有層には、不透明度を向上させたり、白さを向上させる目的で白色顔料を配合するのが好ましい。白色顔料としては、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、合成ゼオライトなどから適宜選択して使用でき、また2種類以上を混合して使用することもできる。特に、不透明度と白色度の点からアナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン等の二酸化チタンが好ましい。白色顔料の表面はポリオレフィン樹脂との分散性を向上させる目的で、表面処理を施すこともできる。
【0020】
白色顔料の配合量は特に限定しないが、ポリオレフィン樹脂100重量部に対し、1〜50重量部程度である。少ないと不透明度と白色度向上の効果が得られない場合がある。多いとポリオレフィン含有層にひび割れが生じて、均一な塗工層が得られ難い場合があり、印字後のカール・コックリング防止、印画紙様の風合い付与等の効果が得られない場合がある。
添加剤として、有色顔料、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤などを必要に応じて添加することができる。
本発明のポリオレフィン樹脂含有層は、好ましくは溶融押出しラミネート法により塗工される。溶融押し出しラミネートによる場合、例えば水性塗工液を塗布乾燥する場合に比べ、塗液の浸透によるボコツキがなく、また均一な裏面層を形成することができる。
溶融押出しラミネートを実施するには、通常ポリオレフィン樹脂および必要に応じ白色顔料を溶解混練し、走行するシートの塗工される面(裏面)の上に押出し機のスリットダイからフィルム状に押出し塗工する。通常、溶融押出し温度は250〜350℃程度である。
【0021】
ポリオレフィン樹脂含有層は、単層または多段塗工あるいはマルチスリットダイコート法等で設けた多層であってもよい。塗工したポリオレフィン樹脂含有層の表面を、クロームメッキなどで表面を平滑に仕上げたクーリングロール、あるいは鏡面仕上げしたクーリングロールで冷却固化し、光沢仕上げしたり、或いは細かい凹凸をつけマット仕上げをしたクーリングロールで冷却固化し、マット仕上げすることができる。印画紙の風合い付与および記録用紙を重ねた場合のブロッキング防止の観点からはマット仕上げが好ましい。 ポリオレフィン樹脂含有層の塗工量は、5〜100g/m2 程度が適当であり、より好ましくは10〜50g/m2 程度である。コート量が少ないと、目的とするコックリング防止や印画紙風合い付与の効果に乏しい可能性が有り、さらに均一な塗工が困難となる場合がある。一方コート量が多いとカールが著しくなる場合があり、また効果が飽和しコスト的に不利となる。ポリオレフィン樹脂含有層の上にさらにカール防止やブロッキング防止、筆記性付与、帯電防止、プリンタでの給紙走行性改善等の目的で塗工層を設けることができる。該塗工層は特に限定はしないが、例えば、樹脂と顔料とを主成分とするものである。
本発明のインクジェット記録用紙は、キャスト方式で光沢層を形成する。加熱された鏡面ドラムで乾燥するため、蒸気を逃がすために、基材の通気性が必要である。このため、キャスト仕上げした後で裏面にポリオレフィン樹脂含有層を設けるのが望ましい。予め裏面にポリオレフィン樹脂層を設けた場合、光沢層の乾燥が不十分になったり、光沢が劣る恐れがある。また支持体表面にポリオレフィン樹脂層を設けることも乾燥性を損なうので好ましくない。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部および%は特に断らない限り、それぞれ重量部および重量%を示す。
〔紙基材の作製〕
木材パルプ(LBKP;ろ水度500mlCSF)100部、アンシレックス(焼成カオリン)10部、市販サイズ剤0.05部、硫酸バンド1.5部、湿潤紙力剤0.5部、澱粉0.75部よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量120g/m2 の紙基材を製造した。この紙基材のステキヒトサイズ度は10秒であった。本発明の実施例、比較例ではすべてこの紙基材を用いた。
【0023】
実施例1
顔料として平均二次粒子径4.5μmの非晶質シリカ100部(商品名、ファインシールX−45、(株)トクヤマ製) 、接着剤として、シリル変性ポリビニルアルコール( R1130 クラレ株製) 20部、カチオン性樹脂としてジシアンジアミド系樹脂(商品名、ネオフィックスE117、日華化学(株)製)5部およびアクリルアミド系樹脂(商品名、スミレッツレジンSR1001、住友化学(株)製)15部、分散剤として、ポリ燐酸ソーダ0.5部を添加し、固形分濃度18%の記録層用塗工液を調成した。この記録層用塗工液を、紙基材の片面に、乾燥重量で6g/m2 になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、下塗り層を形成した。
一方、ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体とコロイダルシリカ(平均粒子径30nm)との複合体(共重合体とコロイダルシリカは、重量比で50:50)100部、増粘・分散剤としてアルキルビニルエーテル・マレイン酸誘導体共重合体5部、離型剤としてレシチン1.5部よりなる固形分濃度が25%の光沢層用塗工液を調製した。
この光沢層用塗工液を上記の記録層上層上にロールコーターを用いて塗工した後、ただちに表面温度が85℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときの光沢層の塗工量は固形分重量で、6g/m2 であった。
【0024】
次に、上記インクジェット記録用紙の光沢層を設けた面と反対面に、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、塗工量が30g/m2 になるようにして、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗工し、その表面をマット面を有するクーリングロールで冷却固化して裏面層を設けた。
(ポリオレフィン樹脂組成物1)
直鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3 、メルトフローインデックス20g/10分)35重量部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3 、メルトフローインデックス2g/10分)50重量部、アナターゼ型二酸化チタン(石原産業製、商標:A−220)5重量部、ステアリン酸亜鉛0.1重量部、酸化防止剤(チバガイギー製、商標:Irganox1010)0.03重量部、染料(第一化成製、商標:青口群青No.2000)0.09重量部、蛍光増白剤(チバガイギー製、商標:UVITEXOB)0.3重量部
【0025】
実施例2
裏面のポリオレフィン樹脂含有層のコート量を20g/m2 にした以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
実施例3
裏面のポリオレフィン樹脂含有層のコート量を10g/m2 にした以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0026】
実施例4
裏面のポリオレフィン樹脂含有層として下記のポリオレフィン樹脂組成物2を用いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
(ポリオレフィン樹脂組成物2)
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3 、メルトフローインデックス20g/10分)65重量部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3 、メルトフローインデックス4g/10分)35重量部
【0027】
実施例5
裏面のポリオレフィン樹脂含有層を設ける際、実施例1と同様のポリオレフィン樹脂組成物1を、塗工量が30g/m2 になるようにして、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗工し、その表面を鏡面仕上げしたクーリングロールで冷却固化して、光沢を有する裏面層を設けた以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を得た。
【0028】
実施例6
紙基材上に、下記下塗り層用塗工液を、乾燥重量で12g/m2 になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥した。
次に、下記光沢層用塗工液を、上記の下塗り層上にエアーナイフコーターで塗工し、冷風で20秒乾燥し半乾燥状態にした後(塗工層絶乾量に対する水分率150%)、表面温度が100℃の鏡面ドラムに圧接し、乾燥後、離型させ、光沢タイプのインクジェット記録用紙を得た。このときのキャスト塗工層の塗工量は固形分重量で、5g/m2 であった。
〔下塗り層用塗工液(固形分濃度17%)〕
合成シリカ(ファインシールX−60;トクヤマ製、平均二次粒子径6.0μm、一次粒子径15nm)80部、ゼオライト(トヨビルダー;トーソー製、平均粒子径1.5μm)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)20部、ガラス転移点75℃のスチレン−2メチルヘキシルアクリレート共重合体と粒子径30nmのコロイダルシリカとの複合体エマルジョン(共重合体とコロイダルシリカは重量比で40:60、エマルジョンの粒子径は80nm)40部
【0029】
〔光沢層用塗工液(固形分濃度12%)〕
シリカ微細粒子A(下記に記載)100部、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−アクリルアミド共重合体(日東紡績社製、商品名;PAS−J−81)10部、カチオン性アクリル樹脂(XC−2010;星光化学製、四級アミン変性アクリル水性樹脂、Tg85℃)20部、シリル変性ポリビニルアルコール(R1130;クラレ製)10部、離型剤(レシチン)2部
〔シリカ微細粒子Aの調製〕
合成無定形シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−45、2次粒子径4.5μm、1次粒子径15nm)の水分散液を用い、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザーGM−1)を用いて粉砕の操作を繰り返した(加圧500kg/cm2 )。処理後の分散液の平均2次粒子径は50nm、固形分濃度は12%であった。
次に、上記インクジェット記録用紙の光沢層を設けた面と反対面に、実施例1と同様にして裏面層を設けた。
【0030】
比較例1
裏面のポリオレフィン樹脂含有層を設けなかった以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用紙を得た。
比較例2
顔料として平均二次粒子径4.5μmの非晶質シリカ100部( 商品名、ファインシールX−45、(株)トクヤマ製) 、接着剤として、シリル変性ポリビニルアルコール( R1130 クラレ株製) 20部、カチオン性樹脂としてジシアンジアミド系樹脂(商品名、ネオフィックスE117、日華化学(株)製) 5部およびアクリルアミド系樹脂(商品名、スミレッツレジンSR1001、住友化学(株)製)15部、分散剤として、ポリ燐酸ソーダ0.5部を添加し、固形分濃度18%の記録層用塗工液を調成した。この記録層用塗工液を、米坪100g/m2 の原紙の片面に、乾燥重量で6g/m2 になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、下塗り層を形成した。
次に、実施例1と同様にして裏面にポリオレフィン樹脂含有層を設けた。
【0031】
比較例3
裏面のポリオレフィン樹脂含有層を設けなかった以外は比較例2と同様にして、インクジェット記録用紙を得た。
比較例4
実施例1で用いた原紙の一方の面に、実施例1と同様にして裏面にポリオレフィン樹脂含有層を設けた。
比較例5
実施例1で用いた原紙をそのまま用いた。
【0032】
比較例6
実施例1において、裏面にポリオレフィン樹脂含有層を設ける代わりに、下記の水系塗料を乾燥重量で20g/m2 になるように、エアーナイフコーターで塗工、乾燥し、インクジェット記録用紙を得た。
(水系塗料)
顔料としてカオリン50部、重質炭酸カルシウム50部、接着剤として酸化澱粉5部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス12部、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.5部を添加し、固形分濃度60%の水系塗料を調製した。
【0033】
この様にして得られたインクジェット記録用紙のインクジェット記録適性、白紙光沢、外観(風合い)を表1にまとめて示した。
なお、上記の評価については下記の如き方法で評価を行った。
[インクジェット記録適性]
インクジェットプリンターBJC600J(キヤノン(株)製)を用いて印字を行なった。
(ベタ印字部の均一性)
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部の印字ムラ(濃淡ムラ)を目視にて評価した。
○:印字ムラは見られず良好なレベル。
×:印字ムラが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
(インクの乾燥性)
シアンインクとマゼンタインクの2色混合のベタ印字部につきインクの乾燥性を評価した。
○:印字直後に指で触れてもまったく汚れない。
×:印字直後に指で触れると汚れる。
(インクジェット記録後の印字濃度)
黒ベタ印字部分の印字濃度をマクベスRD−914で測定。
【0034】
(コックリング)
10×20cmの面積全体に黒ベタ印字を行い、印字直後のコックリング(印字によるボコツキ)を目視判定した。
◎:コックリングはほとんど無い。
○:若干コックリングが見られるが、実用上問題の無いレベル。
×:コックリングが著しい。
[白紙光沢]
JIS−P8142に準じて白紙部の75°光沢を測定した。
【0035】
[外観(風合い)]
◎:表面の光沢感、裏面の白さ、手触り感に極めて優れ、印画紙様の外観を有する。
○:表面の光沢感に優れるが、裏面の白さ、または手触り感が若干劣る。
△:表面の光沢感に優れるが、裏面の白さ、手触り感がかなり劣る。
×:表面の光沢が無く、印画紙様の外観を全く有しない。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】
本発明の記録体は液体インクを吸収した後でも記録体にコックリング(印字によるボコツキ)がなく、またカールの生じない記録体であった。裏面層により原紙の伸びが抑制されることが効果が得られる一因と推定できる。また光沢に優れ、記録濃度、印字品質にも優れる。更に印画紙様の風合いを有している。
Claims (6)
- 表面に光沢を有する光沢層を有し、裏面にポリオレフィン樹脂含有層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、
紙基材の一面に、あるいは紙基材の一面に顔料および接着剤を含有する下塗り層面に、エチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなるガラス転移点が40℃以上の重合体樹脂、またはエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてなるガラス転移点が40℃以上の重合体樹脂とコロイダルシリカの複合体を含有する塗液を塗工し、得られる塗工層が湿潤状態にある間に、あるいは再湿潤した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥するキャスト仕上げで光沢層を設けた後、該紙基材の光沢層を設けた面の反対面に、ポリオレフィン樹脂含有層を、塗工量が5〜100g/m2となるように、溶融押出しラミネート法により設けることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。 - 表面に光沢を有する光沢層を有し、裏面にポリオレフィン樹脂含有層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、
紙基材の一面に、あるいは紙基材の一面に顔料および接着剤を含有する下塗り層面に、顔料と樹脂を含有し、該顔料として一次粒子の平均粒子径が3nm以上40nm以下で、二次粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下であるシリカ微細粒子を含有する塗液を塗工し、得られる塗工層が湿潤状態にある間に、あるいは再湿潤した後に、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥するキャスト仕上げで光沢層を設けた後、該紙基材の光沢層を設けた面の反対面に、ポリオレフィン樹脂含有層を、塗工量が5〜100g/m 2 となるように、溶融押出しラミネート法により設けることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。 - ポリオレフィン樹脂含有層が二酸化チタンを含有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- ポリオレフィン樹脂含有層の表面がマット仕上げされてなることを特徴とする請求項1〜3に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 下塗り層の顔料が、非晶質シリカを含有することを特徴とする請求項1〜4に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- ポリオレフィン樹脂は、その密度0.915g/cm 3 〜0.950g/cm 3 であり、そのメルトフローインデックス2〜20g/10分のポリエチレン樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
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