JP3939590B2 - 針刺し止栓の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外部から針を内部に刺し込む液体容器に用いられる針刺し止栓の製造方法に関する。特に、本発明は、医療用薬液を封入した薬液用瓶、薬液袋等に注射、又は点滴用針を容易に刺すことができ、しかも漏れがないものであって、熱可塑性合成樹脂弾性体と熱可塑性合成樹脂で作られ、その弾性力を強化した針刺部分を備えた針刺し止栓の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
注射用薬液を封入したカプセル、点滴用薬液を封入した薬液瓶、又は薬液袋は、これらから蓋・止栓を取り外すことなく、内部の薬液を外部に取り出す、又は注入できることが好ましい。そこで蓋・止栓は、これらに注射針、点滴用針を刺して一時的に抜いても内部の液がこぼれず、逆に内部に病院内の空気等の異物が侵入しないように構成されている。このような止栓は、これを量産しそのコストを下げることにより、より多くの人のために使用されることが望まれている。
【0003】
従来その止栓の材料として加硫ゴムが使用されているが、この止栓は、加硫ゴム中の添加物、重合溶媒等が容器内の薬液に溶出する。又注射針等で欠損したゴムが薬液に混入する等の心配から、熱可塑性合成樹脂弾性体(以下、弾性体をエラストマーともいう。)を用いるものが提案されている(特開平9−173417号公報)。
【0004】
本発明の発明者も特許第3142521号、特開2001−258991号公報等で、針刺し止栓の針刺部分に弾性力がゴムに比して低い熱可塑性合成樹脂弾性体を用いて、針を刺して抜いた後も容器内の液体が漏れないようにした技術を提案した。しかしながら、これら従来の針刺し止栓は、これを製造するときの成形時の歪みが針刺部分に残留して残留応力として残り、弾性限界を超えることから復元力が弱くなる。このために弾性力の強い材料を用いるとも、針を刺すときに硬いので使用者にとって使いづらいものとなる。
【0005】
又、熱可塑性合成樹脂エラストマーを二層にして止栓とする提案もなされている。しかし、針刺し条件が厳しい場合、僅かな薬液が漏れることもあって、充分な効果は得られず、必ずしも使用者が満足するものではなかった。このためにさらに改良したものが望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述した諸問題を解決するとともに、本発明の発明者等による前述の特許第3142521号、特開2001−258991号の技術をさらに改良したものであって、下記のような目的を達成する。
本発明の目的は、針刺部分を成形後に予め熱処理をしておいて、即ち、針刺部分の残留応力を先に解消するようにして弾性力を強化し、その後熱可塑性合成樹脂を射出成形して針を刺して抜いた後も針刺部分を弾性力で復元させ、容器内の液体が漏れないようにした針刺し止栓の製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、製造コストが低い針刺し止栓の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、次の手段で達成される。即ち、本発明の針刺し止栓は、針を差し込む部分で、重量平均分子量で150,000以上のスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物であり、前記共役ジェンがイソプレン、ブタジエンから選択される1種以上で構成されるスチレン系エラストマである熱可塑性合成樹脂弾性体をベースポリマーとして作られ、かつ硬さがJISのA硬度で20〜80,かつ厚さが2〜8mmの範囲内である針刺部分と、
前記針刺部分の材料より剛性が高く、前記針が前記針刺部分を刺すときの応力が外部に伝播することを防止し、前記針刺部分を区画するための外周部分を有した熱可塑性合成樹脂で構成された止栓本体と、
前記針刺部分と前記止栓本体とが熱融着されている熱融着部とを有して製造される針刺し止栓の製造方法であって、
成形された前記針刺部分を加熱することにより内部応力を取り除き弾性力を回復させるための熱処理を行い、この熱処理された前記針刺部分を射出成形金型に挿入し、前記射出成形金型と前記針刺部分とで区画されるキャビティに、熱可塑性合成樹脂の溶融樹脂を射出圧力59MPa以上で射出して前記止栓本体を成形し、前記針刺部分と前記止栓本体との熱融着部を前記射出成形金型内熱融着させて製造することを特徴とする。
【0008】
[針刺部分の熱可塑性合成樹脂弾性体]
前記針刺部分を構成しベースポリマーである前記熱可塑性合成樹脂弾性体は、重量平均分子量で270,000〜400,000のスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物であり、前記共役ジェンがイソプレン、ブタジエンから選択される1種以上で構成されるスチレン系エラストマが良い
前記熱可塑性合成樹脂弾性体は、重量平均分子量で270,000〜400,000のスチレン系エラストマーであり、成形性、外観の観点から一般的に他の用途に用いられるスチレン系エラストマーの分子量は、70,000〜120,000程度であることから考えると、このエラストマーの分子量は、かなりの高分子量である。
【0009】
本発明に適用されるスチレン系ポリマーは、必須成分であるスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物は、その共役ジェンがブタジエン、又はイソプレン単独、又はイソプレンとブタジエンの混合物からなる重合体ブロックである。
具体的には、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物系(SEBS系)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体の水素添加物系(SEPS系)、又はスチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物系(SEEPS系)を挙げることができる。更に、これらの重合体ブロックを単独でも良いが、2種以上を混合して使用しても良い。特に、SEEPS系は、SEBS系、及びSEPS系に比較してベースポリマーの分子量が大きく設計できるので、本発明の針刺部分に用いるとより効果的である。
【0010】
共役ジェンを混合して使用する場合の混合重量比(イソプレン/ブタジエン)は、(99/1)〜(1/99)、好ましくは(90/10)〜(65/35)である。これらスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物のスチレン含有量が、5〜50重量%、好ましくは8〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%、1,2−ミクロ構造が20%未満、好ましくは15%未満、水素添加率が85%以上、好ましくは97〜100%のブロック共重合体を用いることが重要である。
本発明に適用する熱可塑性合成樹脂弾性体の重量平均分子量は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されるものであり、次の条件で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。具体的な測定条件は次の通りである。
【0011】
(平均分子量測定条件)
機 器:150C ALC/GPC(MILLIPORE社製、所在地:米国)
カラム:ADM/S(昭和電工(株)製、所在地:日本)3本
溶 媒:o−ジクロロベンゼン
温 度:140℃
流 速:1m1/分
注入量:200μ1
濃 度:2mg/m1(酸化防止剤2,6−ジ−t−ブチル−p−フェノールを0.2重量%添加。濃度検出は、FOXBORO社製(所在地は米国)赤外分光光度計「MIRAN 1A」(商標)により波長3.42μmで測定)
撓みやすい部分は、前記止栓本体の成形時に前記針刺部分を前記針の針刺し方向に撓まして成形されたものが望ましい。前記針刺部分の硬さは、JIS(DURO)のA硬度で20〜70の範囲内で選択されたものが良い。好ましくは、前記針刺部分の硬さは、JIS K6253に規定されたタイプAのデュロメーターによる測定値のA硬度で45〜65の範囲内であるとよい。
特に、前記針刺部分は、硬度、相溶性等の観点から前記SEEPS系、パラフィン系オイル、及びポリオレフィン系樹脂とが混合されたものが好ましい。
【0012】
[針刺部分の構成]
前記針刺部分は、前述したスチレン系エラストマーで構成されていると良い。前記止栓本体が熱可塑性合成樹脂で構成され、かつ前記針刺部分と熱融着されていると良い。熱融着は、超音波振動による異材質のプラスチックスを溶着する超音波溶着であっても良い。超音波射出成形金型内で加圧されて融着させるものが良い。撓みやすい部分の厚さは、1〜10mmであると良い。望ましくは、撓みやすい厚さは、2〜5mmであると良い。針刺部分に要求される硬度、厚さ等の構成は、特許第3142521号に開示されている公知技術と実質的に変わることはない。
【0013】
[熱処理]
前記針刺部分への熱処理は、内部応力を取り除く処理であり、加熱空気が80〜120℃の温度で、30分から12時間の範囲の条件によって行われることを特徴としている。この熱処理の範囲において、100〜120℃の温度で、1〜2時間でも好適な効果が得られる。前記熱処理は、加熱空気中でなく、加熱液中であっても良い。
【0014】
[針刺し止栓の製造方法]
本発明の針刺し止栓の製造方法は、針を差し込む部分で、重量平均分子量で150,000以上のスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物であり、前記共役ジェンがイソプレン、ブタジエンから選択される1種以上で構成されるスチレン系エラストマである熱可塑性合成樹脂弾性体をベースポリマーとして作られ、かつ硬さがJISのA硬度で20〜80,かつ厚さが2〜8mmの範囲内である針刺部分と、前記針刺部分の材料より剛性が高く、前記針の針刺時の応力が外部に伝播することを防止し、前記針刺部分を区画するための外周部分を有した熱可塑性合成樹脂で構成された止栓本体と、前記針刺部分と前記止栓本体とが熱融着されている熱融着部とを有して製造される針刺し止栓の製造方法であって、
成形された前記針刺部分の熱処理を行い、この熱処理された針刺部分を射出成形金型に挿入し、前記射出成形金型と前記針刺部分とで区画されるキャビティに、熱可塑性合成樹脂の溶融樹脂を射出圧力59MPa以上で射出して前記止栓本体を成形し、前記針刺部分と前記止栓本体との熱融着部を前記射出成形金型内で熱融着させて製造する方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明による針刺し止栓を点滴用薬液袋に適用した例を示している。この適用例の構造、機能は公知であり、特許第3142521号、特開2001−258991号公報等に詳しく記載されている。本発明の理解を容易にするためにその概要を説明する。点滴用薬液容器1は、フィルム状のポリエチレン等の透明の合成樹脂で作られた容器2に薬液が入れられている。
【0016】
容器2の上部には開口3が形成されている。この開口3に環状の接続管の一端が挿入されている。開口3と接続管4とは超音波溶着等の手段で熱溶着により接続されている。接続管4の上端には、針刺し止栓5の一端が挿入され接続されている。接続管4と針刺し止栓5との接続も超音波溶接等の手段で熱溶着されている。
【0017】
針刺し止栓5は、止栓本体10と、針刺部分11と、外部気密用フィルム12と、内部気密用フィルム13とからなる。外部気密用フィルム12は、針刺部分11と外気が直接接触しないようにするための一種の隔壁である。内部気密用フィルム13は、針刺し止栓5と容器2内の薬液が直接接触しないように、かつ容器2の気密を保持するために配置された隔壁のための部材である。内部気密用フィルム13と容器2との結合には、超音波による熱溶着、接着剤を用いる接着などの公知技術を用いる。
【0018】
針刺し止栓5の針刺部分11と止栓本体10とは、異種の合成樹脂材料が用いられ、針刺部分11は止栓本体10の内部に配置固定されている。針刺部分11は、止栓本体10の中心部分に位置している。これらは、後記するインサート異材質射出成形により一体成形される。止栓本体10は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等の機械的強度を有する熱可塑性合成樹脂で作られている。
【0019】
ただし、針刺部分11の材料として、後述するようにスチレン系エラストマーが好ましいが、この材料に止栓本体10が熱融着させるには、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましい。針刺部分11の材料としては、各種熱可塑性合成樹脂弾性体を使用する熱可塑性合成樹脂弾性体としては、熱可塑性合成樹脂よりも硬度が低いJISのA硬度20〜65度のオレフィン系エラストマ、スチレン系エラストマ等から任意に1種以上選択し、単独、又は混合して使用する。好ましくは、スチレン系エラストマーのうちで水素添加物が良い。
【0020】
A硬度20以下では、材料強度が弱く、針の挿入時に裂けやすく、JIS K6253に規定されたタイプAのデュロメーターによる測定値のA硬度65以上では、材料が硬すぎて針刺し抵抗が大きく、作業性が悪い。
【0021】
これらの熱可塑性合成樹脂弾性体の中では、特にスチレン系エラストマーが好ましい。スチレン系エラストマーには、SEBS系(スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン)、SEPS系(スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン)、及び、SEEPS系(スチレン・イソピレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物)が代表的なものとして存在し、これらのものを1種以上を本実施の形態では使用した。好ましくは、これらの中でSEEPS系の高度飽和水添型のスチレン系エラストマーが好ましい。
【0022】
本発明に適用されるスチレン系エラストマーは、前述のSEBS、SEPS、或いはSEEPSを単独、又は複種類を使用して、これらをベースポリマーとしたコンパウンド材料を使用することが一般的である。コンパウンドする原料は、概略次のような配合割合で行う。
Figure 0003939590
ただし、これら(1)〜(3)に必要に応じて無機フィラーを50〜40重量部を加えても良い。本発明に適用されるスチレン系エラストマーのSEPS,SEBS、又はこれらの混合物(1)は、株式会社クラレ社(所在地日本)の「セプトン」(商標)、クレイトンポリマージャパン株式会社(所在地日本)の「クレイトンG」(商標)、三菱化学株式会社(所在地日本)の「ラバロン」(商標)の各商品名で販売されており、これらの中から特定の分子量を有するベースポリマーを選択する必要がある。この配合に用いられるパラフィン系オイル(2)は、次のものが使用できる。
【0023】
即ち40℃での動粘度が200〜800センチストークス(cst)、好ましくは500〜600cstであり、引火点(COC)が200〜400℃、好ましくは250〜350℃のオイルが好適に使用される。オイルは、一般に、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン環の三者を組み合わせた混合物であって、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50重量%以上を占めるものが30〜45重量%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、芳香族炭素数が30重量%より多いものが芳香族系オイルと呼ばれて、区分されている。
【0024】
針刺部分11は、これに針を刺しても刺したその部分の亀裂、裂け目、又は切断による開口から漏れることはない。針を針刺部分11に刺し込むことにより、針の楔作用により、裂け目、又は開口が作られる。この裂け目、又は開口が針刺部分11に形成された後、針を刺した状態、又は抜いた状態で、この裂け目、又は開口から容器2内の薬液が漏洩しないようにしなければならない。漏洩の主原因は、針の圧入により針刺部分11に永久歪みが、正確には圧縮永久歪みが針の挿入による開口の周囲に形成され弾性的な復元が出来ないためか、復元しても開口を塞ぐに足りる充分な弾性力を確保できないためであると推定される。
【0025】
即ち、漏洩防止は針刺部分11に充分な弾性力を確保させ、裂け目、又は開口を塞ぐ充分な弾性復元力があれば、漏洩を防止することができる。本発明においては、この針刺部分11に熱処理、即ち、内部応力を取り除く処理を行うことによって解決した。内部応力は、製品の寸法精度を狂わしたり、収縮、変形、破損の原因になり、特に本発明の用途に関する弾性力に限界をもたらす要因となっているからである。
【0026】
射出成形金型内で、熱可塑性合成樹脂弾性体が充填され成形された針刺部分11は、この熱可塑性合成樹脂弾性体がゴム的な弾性を有する材料であり、この材料が射出成形金型内に無理やり充填されることから、材料の流れ方向へ配向歪みが生じている。この歪みは、圧力を取り去っただけでは、射出成形金型内ですぐに冷却・固化されるために材料が元の形状に戻ろうとするときに戻れないので残留応力(内部応力)となって残る。本発明は、図2に示すように、針刺部分11が成形される工程Aの後に、この針刺部分を熱処理する工程B、即ち残留応力を取除くために成形後に行われる熱処理(アニーリング)を行う工程を加えたことにある。
【0027】
この熱処理は、再度、加熱処理が行われることにより、内部応力が解消し、配分歪が緩和することにより、ゲートからの材料の流れ方向と直角方向のバランスが良くなり、液漏れ防止として効果を発揮する。即ち、MD(Machine Direction)/TD(Tranceverce Direction)比が1に近くなる。この熱処理は、樹脂の種類によっても異なるが、概ね温度範囲が80〜120℃の熱空気中の雰囲気で、30分〜12時間の範囲で熱を針刺部分11に与える。この熱処理は、オーブン等の簡素な身近の機器で行うことができる。
【0028】
従って高価な設備を必要とすることなく残留応力の取除きが可能で、低コストで実現できる。この歪み取りを行うことにより、その素材が有している弾性力が回復される。この結果、針刺部分11は針が刺されても抜かれても復元力が増し弾性力で裂け目や開口部を塞ぐことになり、裂け目、または開口からの薬液漏洩は生じない。実際上は、100〜120℃の温度範囲で、1〜2時間の範囲でも好適な結果が得られている。次に歪み取りのなされた針刺部分11は射出成形の金型に挿入設置される(図2のC)。
【0029】
所定位置に設置された後、この金型に熱可塑性合成樹脂を射出して止栓本体10を成形し(図2のD)、針刺し止栓5が成形される(図2のE)。この工程の具体的な成形プロセスを図3によって示す。なお、樹脂の種類によっては、熱処理とあわせて強制吸湿処理(調湿処理)をほどこすことが望ましい。強制吸湿処理により、寸法の安定性、強靱性を保たせることができる。
【0030】
図3は射出成形用の金型装置の断面を示し、熱処理の行われた針刺部分11はこの射出成形の金型装置に挿入される。この金型装置は、射出成形により止栓本体10を成形し針刺し止栓5を成形する型装置である。この型装置は、固定側型要素20と可動側型要素21とから形成されている。固定側型要素20にゲート22とこれと連通するランナ23が配置されている。固定側型要素20と可動側型要素21とを閉じた状態で、第1キャビティ25が区画形成される。この第1キャビティ25には、予め成形され歪み取りがなされた針刺部分11が挿入設置される。
【0031】
従って、固定側型要素20、可動側型要素21、及び針刺部分11との間で第2キャビティ26が区画される。第2キャビティ26は、止栓本体10を形成するための円筒状の空間である。この第2キャビティ26に、止栓本体10を構成する溶融した熱可塑性合成樹脂を射出して止栓本体10を構成する。この溶融した熱可塑性合成樹脂は、針刺部分11を外周から加圧しつつ止栓本体10を成形する。即ち、針刺部分11が圧縮加圧された状態で針刺し止栓5が成形される。
【0032】
熱可塑性合成樹脂の射出圧力は、溶融体、半溶融体、又は固形化体の温度降下による自然収縮の容積減少分よりも多い量の容積縮小が行われるような圧力を負荷する。具体的には、熱可塑性合成樹脂の最適な射出条件とされる通常の射出圧力より大きい圧力で射出する。粘性が高いときは若干高めに設定する。望ましくは、熱可塑性合成樹脂の溶融樹脂を、射出圧力59MPa以上で射出して止栓本体10を成形する。
【0033】
同時に、止栓本体10と針刺部分11とは、射出成形金型内で止栓本体10を構成する溶融した熱可塑性合成樹脂で針刺部分11の熱可塑性合成樹脂弾性体の表面を溶融熱で溶かし両者を熱融着させる。針刺部分11を針で刺したとき、この部分が切断されて開口しても、歪み取りがなされ又圧縮された内部応力による弾性復元力でこれを塞ぐので、内部の薬液が漏れることはない。又、熱融着部があるので、更に液漏れのおそれはない。
【0034】
(他の実施の形態)
図4は、針刺部分の形状が異なる場合の製造について示した断面図である。この例の場合は、針刺部分30に凹部31を有していて、止栓本体39を構成する。溶融樹脂による射出圧力により針刺部分30は、外周を締め付けられるように加圧され、その圧力により圧縮圧力を受けるようになっている。型構造について説明すると、第1キャビティ32には、予め成形された針刺部分30が挿入載置されている。針刺部分30の凹部31には、円筒状のスライドコア33が挿入されている。
【0035】
このスライドコア33は、凹部31へ移動可能で、凹部31内への突出量が調整できる。前述同様に固定側型要素34、可動側型要素35、針刺部分30との間で第2キャビティ36を区画し止栓本体39を形成するための空間となる。又、第1キャビティ32に載置された針刺部分30の凹部31とスライドコア33の間に隙間Sが形成されている。このような型構成の第2キャビティ36に前述同様の条件で溶融した熱可塑性合成樹脂をランナ37,ゲート38を介して流入させる。
【0036】
この流入の圧縮圧力で針刺部分30は変形し、針刺部分30の凹部31に設けられた隙間Sを埋める。このため、針刺部分30は射出成形後に射出成形用金型から取り出されると、僅かであるが弾性変形したものとなる。この針刺部分30の凹部は、局部的に容易に変形し易い部分となる。従って、点滴針が刺されると、針刺凹部31は点滴針を囲むように変形し、点滴針の外表面と面接触するので、漏れにくい構成となる。この凹部31を有する針刺部分30も射出成形して止栓本体39を成形する前に熱処理を行っておけば、前述の漏れ防止の効果は一層増すことになる。
なお、適用できる容器は、容器内部の液体を取り出すタイプのものだけでなく、外部から針で液体を注入するタイプの容器にも適用できる。
【0037】
【発明の実施例】
以下、本発明の実施例を実験例に換えて説明する。
[実験例]
以下、前述した実施の形態1で製造した針刺し止栓5の性能を確認するために次のような条件で実験を行った。針刺部分11には、スチレン系エラストマーである、株式会社クラレ「セプトン4077」(登録商標)(材質は、SEEPSであり、分子量300,000)を、ベースポリマーとして使用したものであり、配合はセプトン4077/パラフィン系オイル/ポリピロピレン(40/50/10)のものを二軸押出機で混錬したものを使用し、硬度はJISA硬度49であった。
【0038】
止栓本体10には、熱可塑性合成樹脂として、ポリプロピレン(日本ポリケム製BC03C)を用い、以下のような成形条件で成形した。
【0039】
射出成形条件は、止栓本体10が射出温度210℃、圧力78MPa(800kgf/cm2)で、針刺部分11が射出温度200℃、圧力49MPa(500kgf/cm2)である。針刺部分11の肉厚は、4.8mmである。熱処理条件は、樹脂温度115℃で、加熱時間は1時間と8時間で行った。
【0040】
以下に示す表1は、液漏れテストの結果を示す実験例である。但し、テストは、直径4mmの点滴用プラスティック針を刺して、常温下で1時間、5時間の間放置後、その点滴用プラスティック針を抜いた後の漏れを目視により判定したものである。針刺し時間を1時間、5時間で行い、それぞれ5回テストした。
【0041】
【表1】
Figure 0003939590
【0042】
次に示す表2の結果は、表1と同様の実験を射出圧力と熱処理条件を差し替えてテストした結果であり、他は表1と同じである。
【表2】
Figure 0003939590
【0043】
【発明の効果】
本発明の針刺し止栓の製造方法によって得られる針刺し止栓の効果は、針を刺す針刺部分に残存している残留応力(内部応力)の解消がなされた熱可塑性合成樹脂弾性体を使用したので、針を刺したとき、又は抜いた後でも容器内から液漏れはなく周囲に薬液をまき散らすことがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の針刺し止栓を点滴用薬液袋に適用したときの断面図である。
【図2】図2は、針刺部分を熱処理して針刺し止栓を成形するまでの製造の流れを示す説明図である。
【図3】図3は、針刺し止栓を射出成形で成形する構成を示す金型の断面図である。
【図4】図4は、針刺し止栓を射出成形で成形する他の実施例構成を示す金型の断面図である。
【符号の説明】
1…点滴用薬液容器
2…容器
3…開口
4…接続管
5…針刺し止栓
10,39…止栓本体
11,30…針刺部分
12…外部気密用フィルム
13…内部気密用フィルム
20,34…固定側型要素
21,35…可動側型要素
22,38…ゲート
23,37…ランナ
25,32…第1キャビティ
26,36…第2キャビティ
33…スライドコア

Claims (6)

  1. 針を差し込む部分で、重量平均分子量で150,000以上のスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物であり、前記共役ジェンがイソプレン、ブタジエンから選択される1種以上で構成されるスチレン系エラストマである熱可塑性合成樹脂弾性体をベースポリマーとして作られ、かつ硬さがJISのA硬度で20〜80,かつ厚さが2〜8mmの範囲内である針刺部分と、
    前記針刺部分の材料より剛性が高く、前記針が前記針刺部分を刺すときの応力が外部に伝播することを防止し、前記針刺部分を区画するための外周部分を有した熱可塑性合成樹脂で構成された止栓本体と、
    前記針刺部分と前記止栓本体とが熱融着されている熱融着部とを有して製造される針刺し止栓の製造方法であって、
    成形された前記針刺部分を加熱することにより内部応力を取り除き弾性力を回復させるための熱処理を行い、この熱処理された前記針刺部分を射出成形金型に挿入し、前記射出成形金型と前記針刺部分とで区画されるキャビティに、熱可塑性合成樹脂の溶融樹脂を射出圧力59MPa以上で射出して前記止栓本体を成形し、前記針刺部分と前記止栓本体との熱融着部を前記射出成形金型内熱融着させて製造することを特徴とする針刺し止栓の製造方法。
  2. 請求項1に記載の針刺し止栓の製造方法において、
    前記熱処理は、80〜120℃の温度で、30分から12時間の範囲の条件によって行われることを特徴とする針刺し止栓の製造方法。
  3. 請求項1又は2項に記載の針刺し止栓の製造方法において、
    前記針刺部分を構成する前記熱可塑性合成樹脂弾性体は、重量平均分子量で270,000から400,000のスチレン・共役ジェンブロック共重合体の水素添加物であり、前記共役ジェンがイソプレン、ブタジエンから選択される1種以上で構成されるスチレン系エラストマであることを特徴とする針刺し止栓の製造方法。
  4. 請求項1又は2項に記載の針刺し止栓の製造方法において、
    前記針刺部分を構成する前記熱可塑性合成樹脂弾性体は、重量平均分子量で270,000から400,000のスチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物である
    ことを特徴とする針刺し止栓の製造方法。
  5. 請求項4に記載の針刺し止栓の製造方法において、
    前記止栓本体を構成する前記熱可塑性合成樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレンから選択される1種以上である
    ことを特徴とする針刺し止栓の製造方法。
  6. 請求項4に記載の針刺し止栓の製造方法において、
    前記針刺部分は、前記スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体の水素添加物、パラフィン系オイル、及びポリオレフィン系樹脂とが混合されたものである
    ことを特徴とする針刺し止栓の製造方法。
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