JP3939210B2 - 成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物およびそれよりなる成形体に関する。より詳細には、本発明は、熱可塑性アクリル樹脂が本来有する優れた光学特性、高い機械的強度、優れた耐候性などの特性を維持しながら、高い溶融流動性を有していて成形加工性に優れ、しかも耐溶剤性の向上した成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物およびそれからなる成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
メタクリル酸メチルを主体とする熱可塑性アクリル樹脂は、プラスチックのなかでも最高の透明性を有するものの一つであって光学特性に優れている。しかも熱可塑性アクリル樹脂は、耐候性、機械的強度などにも優れることから、航空機や自動車などの窓ガラス、時計ガラス、レンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、自動車のテールランプ、家電・事務機器銘板、照明カバー、看板、ディスプレイ、サンルーフやカーポートなどの屋根材、装身具などの多くの用途に利用されている。
【0003】
しかしながら、熱可塑性アクリル樹脂は、耐溶剤性が十分ではなく、アルコール類、燃料油類、ワックスリムーバーなどの有機溶剤に曝されると、クラックの発生、割れ、変形、変色などが生じ易いという欠点がある。熱可塑性アクリル樹脂の耐溶剤性を改善する方法としては、アクリル樹脂自体の分子量を大きくする方法が知られている。しかしながら、アクリル樹脂自体の分子量を大きくすることによって実質的な耐溶剤性向上効果を得るには、分子量を非常に大きくする必要があり、それに伴ってアクリル樹脂の溶融流動性が低下し、成形加工性が悪くなるので好ましくない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、熱可塑性アクリル樹脂が本来有する優れた光学特性、高い機械的強度、優れた耐候性などの諸特性を損なうことなくそのまま維持しながら、高い溶融流動性を発現することができ、しかも耐溶剤性の点で改善された成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物およびそれからなる成形体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ねてきた。その結果、メタクリル酸メチルを主体とするアクリル樹脂中に(メタ)アクリル酸を特定の割合で共重合させてカルボキシル基を有するアクリル樹脂とし、そのカルボキシル基を有するアクリル樹脂に亜鉛塩を含有させると、それにより得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物および該組成物からなる成形体は、熱可塑性アクリル樹脂が本来的に有している優れた光学特性、機械的強度、耐候性などの特性をそのまま保有しながら良好な耐溶剤性を示すこと、しかもその熱可塑性アクリル樹脂組成物は高い溶融流動性を有し、成形加工性に優れることを見出した。
【0006】
さらに、本発明者らは、カルボキシル基を有するアクリル樹脂に亜鉛塩を含有させた前記熱可塑性アクリル樹脂組成物中に、ホスファイトを更に含有させると、熱可塑性アクリル樹脂組成物を製造するための溶融混合時に熱可塑性アクリル樹脂の熱分解が防止または抑制され、しかも二次加工時の熱分解が抑制されて、前記した優れた光学特性、機械的強度、耐候性、良好な耐溶剤性、高い溶融流動性、良好な成形加工性などを維持しながら、熱安定性、耐久性、耐変色性などの特性に一層優れる成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物が得られることを見出した。
【0007】
また、本発明者らは、上記により得られた亜鉛塩を含有する熱可塑性アクリル樹脂組成物、または亜鉛塩とホスファイトを含有する熱可塑性アクリル樹脂組成物は、いずれも、メタクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体とからなる汎用の熱可塑性アクリル樹脂と任意の割合で混合できること、その際に該熱可塑性アクリル樹脂組成物と該汎用の熱可塑性アクリル樹脂の混合割合を調整することによって、上記した諸特性を維持しながら、それぞれの目的や用途に適した種々の成形体製造用の熱可塑性重合体組成物が得られることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) (A)メタクリル酸メチル50〜99.95モル%、(メタ)アクリル酸0.05〜2モル%および共重合可能な他の単量体0〜49.95モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂;並びに、
(B)亜鉛塩(B);
を含有することを特徴とする成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物である。
そして、本発明は、
(2) 熱可塑性アクリル樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸に由来する構造単位に対して、亜鉛塩(B)を0.2〜10モル当量の割合で含有する前記(1)の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物である。
【0009】
さらに、本発明は、
(3) ホスファイト(C)を更に含有する前記(1)または(2)の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物である。
そして、本発明は、
(4) 熱可塑性アクリル樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸に由来する構造単位に対して、ホスファイト(C)を0.2〜10モル当量の割合で含有する前記(3)の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物である。
【0010】
そして、本発明は、
(5) メタクリル酸メチル50〜99.95モル%と(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体0.05〜50モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂(D)を更に含有する前記(1)〜(4)のいずれかの成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物である。
さらに、本発明は、
(6) 前記(1)〜(5)のいずれかの成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物からなる成形体である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物で用いる熱可塑性アクリル樹脂(A)は、熱可塑性アクリル樹脂の製造に用いる全単量体に基づいて、メタクリル酸メチルを50〜99.95モル%、(メタ)アクリル酸を0.05〜2モル%、および共重合可能な他の単量体を0〜49.95モル%の割合で用いて共重合して得られる熱可塑性アクリル樹脂であればいずれでもよく、その重合方法などは特に制限されない。本発明で用いる熱可塑性アクリル樹脂(A)は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの公知の方法により得ることができる(以下、本発明の「成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物」を、「成形体製造用の」という用語を付さずに単に「熱可塑性アクリル樹脂組成物」ということがある)。
【0012】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物で用いる熱可塑性アクリル樹脂(A)は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を、熱可塑性アクリル樹脂(A)の製造に用いる全単量体に対して0.05〜2モル%の割合で用いて製造されたものであることが必要であり[アクリル酸とメタクリル酸の両方を用いる場合は両者の合計モル%]、0.07〜2モル%の割合で用いて製造されたものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸の割合が0.05モル%未満であると、熱可塑性アクリル樹脂組成物の耐溶剤性が低下する。一方、(メタ)アクリル酸の割合が10モル%を超えると、熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性および耐水性が低下するが、本発明では、熱可塑性アクリル樹脂(A)における(メタ)アクリル酸の割合の上限値として、その好ましい値である2モル%(すなわち2モル%以下)を採用している。
【0013】
熱可塑性アクリル樹脂(A)の製造に当たって用い得る共重合可能な他の単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のN−置換マレイミド化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物を挙げることができ、これらの単量体は単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
【0014】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物に用いる熱可塑性アクリル樹脂(A)では、共重合可能な他の単量体の割合が、熱可塑性アクリル樹脂(A)の製造に用いる全単量体に対して49.95モル%以下(0〜49.95モル%)であることが必要であり、30モル%以下であることが好ましい。共重合可能な他の単量体の割合が49.95モル%を超えると、熱可塑性アクリル樹脂本来の透明性、耐候性などの物性が低下し、ひいては熱可塑性アクリル樹脂組成物の透明性や耐候性が損なわれる。
【0015】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物で用いる熱可塑性アクリル樹脂(A)は、熱可塑性アクリル樹脂組成物の成形加工性を良好なものとするために、重量平均分子量(Mw)が3万〜15万の範囲にあることが好ましい。そのような重量平均分子量を有する熱可塑性アクリル樹脂(A)は、熱可塑性アクリル樹脂(A)の調製時に、例えばメルカプタンなどの従来公知の連鎖移動剤を添加して分子量の調節下に重合を行うことにより得ることができる。
なお、本明細書における熱可塑性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いてポリスチレン換算にて算出した重量平均分子量である。
【0016】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物で用いる亜鉛塩(B)の好ましい具体例としては、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛などの亜鉛塩を挙げることができ、これらは単独で使用してもまたは2種以上を用いてもよい。
【0017】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、熱可塑性アクリル樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸に由来する構造単位に対して、亜鉛塩(B)を0.2〜10モル当量、特に0.5〜5モル当量で含有することが好ましい。
亜鉛塩(B)の含有量が0.2モル当量よりも少ないと、熱可塑性アクリル樹脂組成物の耐溶剤性の向上効果が十分に得られにくくなる。一方、亜鉛塩(B)の含有量が10モル当量よりも多いと、熱可塑性アクリル樹脂組成物および該組成物よりなる成形体から遷移金属塩(B)がブリードアウトし易くなる。
【0018】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、必要に応じて更にホスファイト(C)を含有することができる。ホスファイト(C)を含有すると、熱可塑性アクリル樹脂組成物を製造するための溶融混合時に熱可塑性アクリル樹脂の熱分解、二次加工時の熱分解などが防止または抑制されて、耐熱性、長期安定性、耐変色性などの特性に一層優れる熱可塑性アクリル樹脂組成物を得ることができる。特に、融点が200℃以上の亜鉛塩を用いる場合は、熱可塑性アクリル樹脂組成物を製造するための溶融混合時に熱分解が生じ易くなるので、熱分解による物性低下や着色を防止するためにホスファイト(C)を用いることが好ましい。
【0019】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物がホスファイト(C)を含有する場合は、有機化合物および無機化合物のいずれでもよく、そのうちでも有機ホスファイトが熱可塑性アクリル樹脂(A)との混和性の点から好ましく用いられる。
本発明で好ましく用いられる有機ホスファイトの具体例としては、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エリスリトールジホスファイトなどのホスファイトなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エリスリトールジホスファイトなどのホスファイトが、溶融混練時の熱安定性の点から好ましく用いられる。
【0020】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物がホスファイト(C)を含有する場合は、熱可塑性アクリル樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸に由来する構造単位に対して、ホスファイト(C)を0.2〜10モル当量、特に0.5〜5モル当量の割合で含有することが、上記した溶融混合時の熱可塑性アクリル樹脂(A)の熱分解防止、二次加工時の熱可塑性アクリル樹脂組成物の熱分解の防止などの点から好ましい。
ホスファイト(C)の含有量が10モル当量を超えると、熱可塑性アクリル樹脂組成物および該組成物よりなる成形体からホスファイト(C)がブリードアウトし易くなる。
【0021】
また、本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、必要に応じて、メタクリル酸メチル50〜99.95モル%と(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体0.05〜50モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂(D)を更に含有することができる。熱可塑性アクリル樹脂(D)の重合方法などは特に制限されず、メタクリル酸メチルに由来する単位と(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体に由来する単位を前記した割合で有する共重合体を製造し得る方法であればいずれでもよく、例えば、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合などの公知の方法により製造することができる。本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、その用途や使用目的などに応じて、前記熱可塑性アクリル樹脂(D)を適当な量で含有することができ、例えば、熱可塑性アクリル樹脂組成物の総質量に対して熱可塑性アクリル樹脂(D)を0.5〜99.5質量%の割合で含有することができる。
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物中での熱可塑性アクリル樹脂(D)の含有量が例えば50質量%以上と多い場合であっても、熱可塑性アクリル樹脂組成物が、上記した熱可塑性アクリル樹脂(A)および亜鉛塩(B)を含有するか、または熱可塑性アクリル樹脂(A)、亜鉛塩(B)およびホスファイト(C)を含有することにより、光学特性、機械的強度、耐候性に優れ、しかも高い溶融流動性を有していて成形加工性に優れ、更に耐溶剤性の向上した熱可塑性アクリル樹脂組成物を得ることができる。
【0022】
熱可塑性アクリル樹脂(D)の製造に当たって用い得る(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体としては、例えば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルなどのアクリル酸エステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物、N−シクロヘキシルマレイミド、N−o−クロロフェニルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のN−置換マレイミド化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物を挙げることができ、これらの単量体は単独で用いても、または2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、熱可塑性アクリル樹脂(D)は、本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物の成形加工性を良好なものとするために、重量平均分子量(Mw)が3万〜15万の範囲にあることが好ましく、そのような重量平均分子量を有する熱可塑性アクリル樹脂(D)は、熱可塑性アクリル樹脂(D)の調製時に、例えばメルカプタンなどの従来公知の連鎖移動剤を添加して分子量の調節下に重合を行うことにより得ることができる。
【0024】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、必要に応じて、安定剤、滑剤、充填剤、染料、顔料などの添加剤の1種または2種以上を更に含有していてもよい。
【0025】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物の製造に当たっては、熱可塑性重合体組成物を製造する際に従来から利用されている溶融混合方法のいずれもが採用できる。例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、オープンロール、ニーダーなどの混練機を使用して、熱可塑性アクリル樹脂(A)、亜鉛塩(B)、および必要に応じて他の成分[例えばホスファイト(C)、熱可塑性アクリル樹脂(D)、その他の添加剤など]を溶融混合することにより製造することができる。或いは、例えば、前記した混練機を使用して、熱可塑性アクリル樹脂(A)、亜鉛塩(B)および場合によりホスファイト(C)を溶融混合してペレットとした後、さらにこのペレットに必要に応じて他の成分[熱可塑性アクリル樹脂(D)、その他の添加剤など]を溶融混合することなどによっても製造することができる。そのうちでも、本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物の製造に当たっては、ベント付き二軸押出機をなどの公知の混練機を使用して、減圧下で180〜320℃の温度で1段階で溶融混合する方法が、生産性などの点から好ましく採用される。
【0026】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、温度230℃、荷重3.8kgの条件下で、ASTM−D1238に従って測定したMFRが、一般に1.0g/10分以上、特に1.5g/10分以上となっており、高い溶融流動性を有しており、成形加工性に優れている。
【0027】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、従来既知の熱可塑性アクリル樹脂組成物と同様にして成形加工することができ、例えば、押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、注型、カレンダー成形などの従来公知の成形方法を用いて、板状物、シート状物、フイルム状物、中空成形体、管、ランプレンズ、その他の成形体などを製造することができる。
【0028】
本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物およびそれからなる成形体は、通常の熱可塑性アクリル樹脂と同様に極めて光学特性に優れていて高い透明性を有し、しかも機械的強度、耐候性、耐加水分解性などの特性にも優れており、それに加えて耐溶剤性に優れ、しかも高い溶融流動性を有する。そのため、それらの特性を活かして、例えば、航空機や自動車などの窓ガラスや時計ガラス、レンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、自動車のテールランプ、家電・事務機器銘板、照明カバー、看板、ディスプレイ、サンルーフやカーポートなどの屋根材、装身具などの種々の用途に有効に用いることができる。特に、本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、高い溶融流動性を有していて溶融成形性に極めて優れることから、例えば、車両用ランプレンズ、ドアバイザーなどのような大型成形体で且つ耐溶剤性が必要とされる成形体の製造に好適に用いられる。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されない。
以下の例において、熱可塑性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)、熱可塑性アクリル樹脂中のメタクリル酸由来の構造単位の含有量、熱可塑性アクリル樹脂または熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性、熱可塑性アクリル樹脂または熱可塑性アクリル樹脂組成物から得られた成形体の光学物性(全光線透過率およびヘイズ)、力学物性(曲げ弾性率)並びに耐溶剤性は次のようにして測定または評価した。
【0030】
(1)熱可塑性アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn):
東ソー社製「HLC8020GPC」を使用し、40℃で溶媒をTHFとし、カラムはTSKgel G2000HHRを1本と、TSKgel GMHHR−Mを2本、直列で使用して測定し、ポリスチレン換算にて算出した。
【0031】
(2)熱可塑性アクリル樹脂中のメタクリル酸由来の構造単位の含有量:
水酸化カリウムによる中和滴定により熱可塑性アクリル樹脂の酸価を測定し、下記の数式により求めた。
【0032】
【数1】
メタクリル酸由来の構造単位の含有量(モル%)
={x(100.1fMMA+86.1fMAA+86.1fMA)/(56.1×103)}×100
[式中、x=酸価(KOHのmg/樹脂1g)、fMMA=メタクリル酸メチルの仕込モル分率、fMAA=メタクリル酸の仕込モル分率、fMA=アクリル酸メチルの仕込モル分率を示す。]
【0033】
(3)溶融流動性:
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物または熱可塑性アクリル樹脂を用いて、ASTM−D1238に従って、温度230℃および荷重3.8kgの条件下にMFR(g/10分)を測定し、溶融流動性の指標とした。
【0034】
(4)光学物性:
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物または熱可塑性アクリル樹脂を用いて、射出成形機(日本製鋼所製「N70A型」)を使用して、溶融温度250℃、金型温度50℃の条件下射出成形を行って試験片を作製し、この試験片を用いて、ASTM−D1003により全光線透過率(%)およびヘイズ(%)を測定した。
【0035】
(5)力学物性(曲げ弾性率):
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物または熱可塑性アクリル樹脂を用いて、射出成形機(日本製鋼所製「N70A型」)を使用して、溶融温度250℃、金型温度50℃の条件下射出成形を行って試験片を作製し、この試験片を用いて、ASTM−D790により曲げ弾性率(MPa)を測定した。
【0036】
(6)耐溶剤性:
以下の実施例および比較例で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物または熱可塑性アクリル樹脂を用いて、射出成形機(日本製鋼所製「N70A型」)を使用して、溶融温度250℃、金型温度50℃の条件下射出成形を行って試験片を作製し、この試験片を用いて、任意の楕円曲線と同じ曲率を有する曲面を持った治具を作製し、その曲面の部分と試験片の厚さから歪が0.6%となる変形量を試験片に与えた位置で試験片を固定し、その状態で、歪み0.6%となる位置に100%イソプロピルアルコールを含浸させた5mm×5mmのロ紙を置き、クラックが発生するまでの時間を測定して、耐溶剤性の評価を行った。
【0037】
《実施例1》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌して溶解させ、そこにメタクリル酸メチル13.5kg、アクリル酸メチル0.3kg、メタクリル酸12.3g、n−オクチルメルカプタン39.0gおよびラウロイルパーオキサイド63.9gを加え、窒素置換した後、密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂中のメタクリル酸由来の構造単位の含有量はアクリル樹脂の全構造単位に対して0.13モル%であり、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は91000、分子量分布(Mw/Mn)は1.90であった。
(2) 上記(1)で得られた乾燥したビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)10.7gを加え、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0038】
《実施例2》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌して溶解させ、そこにメタクリル酸メチル13.5kg、アクリル酸メチル0.3kg、メタクリル酸12.3g、n−オクチルメルカプタン35.9gおよびラウロイルパーオキサイド63.9gを加え、窒素置換した後、密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂中のメタクリル酸由来の構造単位の含有量はアクリル樹脂の全構造単位に対して0.12モル%であり、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は105000、分子量分布(Mw/Mn)は1.91であった。
(2) 上記(1)で得られた乾燥したビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)10.7gおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(城北化学株式会社製「JP−650」)37.5gを加え、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0039】
《実施例3》
(1) 実施例2の(1)で得られたのと同じビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)10.7gおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エリスリトールジホスファイト(旭電化工業株式会社製「アデカスタブPEP−24G」)17.5gを加えて、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0040】
《実施例4》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌し溶解させ、次いでメタクリル酸メチル13.5kg、アクリル酸メチル0.3kg、メタクリル酸24.7g、n−オクチルメルカプタン35.9gおよびラウロイルパーオキシド63.9gを加え、窒素置換した後、密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂中のメタクリル酸由来の構造単位の含有量はアクリル樹脂の全構造単位に対して0.19モル%であり、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は97000、分子量分布(Mw/Mn)は1.92であった。
(2) 上記(1)で得られた乾燥したビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)21.4gおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(城北化学株式会社製「JP−650」)75.0gを加え、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0041】
《実施例5》
(1) 実施例4の(1)で得られたのと同じビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)21.4gおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エリスリトールジホスファイト(旭電化工業株式会社製「アデカスタブPEP−24G」)35.1gを加えて、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(2) 上記(1)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(1)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0042】
《実施例6》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌し溶解させ、次いでメタクリル酸メチル13.4kg、アクリル酸メチル0.3kg、メタクリル酸123.6g、n−オクチルメルカプタン35.9gおよびラウロイルパーオキシド63.9gを加え、窒素置換した後、密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂中のメタクリル酸由来の構造単位の含有量はアクリル樹脂の全構造単位に対して1.03モル%であり、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は49000、分子量分布(Mw/Mn)は1.89であった。
(2) 上記(1)で得られた乾燥したビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)55.0gおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(城北化学株式会社製「JP−650」)189.0gを加え、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0043】
《実施例7》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌し溶解させ、そこにメタクリル酸メチル13.5kg、アクリル酸メチル0.3kg、n−オクチルメルカプタン35.9gおよびラウロイルパーオキシド63.9gを加え、窒素置換した後、密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は95000、分子量分布(Mw/Mn)は1.91であった。
(2) 上記(1)で得られたビーズ状のアクリル樹脂4.5kgに、実施例6の(1)で得られたのと同じビーズ状のアクリル樹脂0.5kg、酢酸亜鉛(無水和物)10.7gおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)エリスリトールジホスファイト(旭電化工業株式会社製「アデカスタブPEP−24G」)35.1gを加えて、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0044】
《比較例1》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌し溶解させ、次いでメタクリル酸メチル13.5kg、アクリル酸メチル0.3kg、n−オクチルメルカプタン35.9gおよびラウロイルパーオキシド63.9gを加え、窒素置換した後に密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂は、メタクリル酸由来の構造単位を含んでおらず、その重量平均分子量(Mw)は105000、分子量分布(Mw/Mn)は1.95であった。
(2) 上記(1)で得られたアクリル樹脂をベント付き二軸押出機に供給して押出し温度280℃にて溶融混練した後にペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂ペレットの溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂ペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0045】
《比較例2》
(1) 容量50リットルの攪拌機付きオートクレーブに、イオン交換水20.6kgを仕込んだ後、ヒドロキシエチルセルロース60gを加えて120rpmで攪拌し溶解させ、次いでメタクリル酸メチル13.5kg、アクリル酸メチル0.3kg、n−オクチルメルカプタン21.4gおよびラウロイルパーオキシド63.9gを加え、窒素置換した後、密閉し、65℃に昇温し重合を開始した。重合発熱による昇温がピークを越えた後、100℃に昇温し後重合を行った。得られたビーズ状のアクリル樹脂(メタクリル樹脂)を水洗、ろ過、乾燥させた。得られたアクリル樹脂は、メタクリル酸由来の構造単位を含んでおらず、その重量平均分子量(Mw)は135000、分子量分布(Mw/Mn)は1.93であった。
(2) 上記(1)で得られたアクリル樹脂をベント付き二軸押出機に供給して押出し温度280℃にて溶融混練した後にペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂ペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0046】
《比較例3》
(1) 比較例1の(1)で得られたビーズ状のアクリル樹脂5kgに、酢酸亜鉛(無水和物)10.7gおよびトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(城北化学株式会社製「JP−650」)37.5gを加え、ベント付き二軸押出機を用い、押出し温度280℃にて溶融混合した後、ペレット化して、熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりであった。
また、上記(2)で得られた熱可塑性アクリル樹脂組成物のペレットを用いて試験片を作製して、上記した方法でその光学物性、力学物性および耐溶剤性を測定または評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
上記の表1および表2にみるように、実施例1〜7の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、組成物を構成するアクリル樹脂(A)(メタクリル酸メチル樹脂)がメタクリル酸に由来する構造単位を0.5〜2モル%の範囲内で有し且つ必須成分として亜鉛塩(B)(酢酸亜鉛)を含有し、場合によって更にホスファイト(C)を含有するか(実施例2〜6)またはホスファイト(C)と熱可塑性アクリル樹脂(D)を含有している(実施例7)ことにより、高いMFRを有し、溶融流動性に優れている。しかも、実施例1〜7の熱可塑性アクリル樹脂組成物から得られた成形体は、全光線透過率がいずれも90%以上で且つヘイズ値がいずれも0.7%以下であり、透明性の点でも極めて優れている。また、実施例1〜7の熱可塑性アクリル樹脂組成物よりなる成形体は、曲げ弾性率が高く力学物性にも優れており、しかも溶剤(イソプロピルアルコール)に曝したときの亀裂が発生するまでの時間が60秒以上と長く、耐溶剤性に優れている。
実施例1〜7の熱可塑性アクリル樹脂組成物のうち、実施例7の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、熱可塑性アクリル樹脂(A)、亜鉛塩(B)およびホスファイト(C)と共に、多量の熱可塑性アクリル樹脂(D)を含有しているが、それにも拘わらず、高い透明性と共に良好な耐溶剤性、力学的特性、成形加工性(溶融流動性)を有している。
【0051】
一方、上記の表3の結果から明らかなように、比較例1のアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有しておらず、また亜鉛塩(B)およびホスファイト(C)を含有していないことにより、溶剤(イソプロピルアルコール)に曝したときの亀裂が発生するまでの時間が18秒であって実施例1〜7に比べて大幅に短くなっており、耐溶剤性に劣っている。
また、比較例2のアクリル樹脂(メタクリル酸メチル樹脂)は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を有しておらず、しかもその重量平均分子量(Mw)が135000であって実施例2〜5の熱可塑性アクリル樹脂組成物で用いているアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)よりもかなり高いことにより、耐溶剤性の点では実施例1〜7とほぼ同じであるが、MFRが0.3g/10分と極めて低く、溶融流動性に劣っている。
【0052】
比較例3の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸に由来する構造単位を持たない比較例1のアクリル樹脂(メタクリル酸メチル樹脂)に亜鉛塩(B)(酢酸亜鉛)とホスファイト(C)[トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト]を配合したために、溶剤(イソプロピルアルコール)に曝したときの亀裂が発生するまでの時間が15秒と短く、耐溶剤性に劣っている。しかも、比較例3の熱可塑性アクリル樹脂組成物から得られた成形体は、全光線透過率が81%と低く且つヘイズ値が32%と高く、光学特性に劣っており、さらに実施例2〜6に比べて曲げ弾性率の点でも低い。
【0053】
【発明の効果】
メタクリル酸メチル50〜99.95モル%、(メタ)アクリル酸0.05〜2モル%および共重合可能な他の単量体0〜49.95モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂(A)中に必須成分として亜鉛塩(B)を含有する本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物およびそれからなる成形体は、熱可塑性アクリル樹脂(メタクリル酸メチル系樹脂)が本来有する優れた光学特性、高い機械的強度、優れた耐候性および耐加水分解性などの特性をそのまま保持しており、それに加えて耐溶剤性に優れていて溶剤に侵されにくく、しかも高い溶融流動性を有するので溶融成形性、成形加工性に優れている。
【0054】
また、前記熱可塑性アクリル樹脂(A)中に、亜鉛塩(B)と共に更にホスファイト(C)を更に含有する本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、熱可塑性アクリル樹脂組成物を製造するための溶融混合時に熱可塑性アクリル樹脂の熱分解、二次加工時の熱分解などが防止または抑制されて、前記した優れた諸特性と併せて、安定性および耐久性などの性質に一層優れる。
【0055】
熱可塑性アクリル樹脂(A)と亜鉛塩(B)を含有する熱可塑性アクリル樹脂組成物、または熱可塑性アクリル樹脂(A)、亜鉛塩(B)およびホスファイト(C)を含有する熱可塑性アクリル樹脂組成物は、メタクリル酸メチル50〜99.95モル%と(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体0.05〜50モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂(D)と任意の割合で混合することができ、前記混合時に該熱可塑性アクリル樹脂組成物と熱可塑性アクリル樹脂(D)の混合割合を調整することによって、上記した優れた諸特性に維持しながら、それぞれの目的や用途に適した種々の熱可塑性アクリル樹脂組成物を得ることができる。
【0056】
前記した本発明の熱可塑性アクリル樹脂組成物は、いずれも、前記した特性を活かして、例えば、航空機や自動車などの窓ガラスや時計ガラス、レンズ、プリズム、光ファイバー、光ディスク、自動車のテールランプ、家電・事務機器銘板、照明カバー、看板、ディスプレイ、サンルーフやカーポートなどの屋根材、装身具などの種々の用途に有効に使用することができ、特に車両用ランプレンズ、ドアバイザーなどのような大型成形体で且つ耐溶剤性が必要とされる成形体の製造に好適に用いられる。
Claims (6)
- (A)メタクリル酸メチル50〜99.95モル%、(メタ)アクリル酸0.05〜2モル%および共重合可能な他の単量体0〜49.95モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂;並びに、
(B)亜鉛塩(B);
を含有することを特徴とする成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物。 - 熱可塑性アクリル樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸に由来する構造単位に対して、亜鉛塩(B)を0.2〜10モル当量の割合で含有する請求項1に記載の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物。
- ホスファイト(C)を更に含有する請求項1または2に記載の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物。
- 熱可塑性アクリル樹脂(A)中の(メタ)アクリル酸に由来する構造単位に対して、ホスファイト(C)を0.2〜10モル当量の割合で含有する請求項3に記載の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物。
- メタクリル酸メチル50〜99.95モル%と(メタ)アクリル酸以外の他の共重合可能な単量体0.05〜50モル%からなる熱可塑性アクリル樹脂(D)を更に含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形体製造用の熱可塑性アクリル樹脂組成物からなる成形体。
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