JP3938829B2 - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転者の操作に応じて機械的に圧力が発生するマスタシリンダ以外の液圧源を有し、ホイルシリンダに対して、この液圧源の液圧を供給して増圧したり、ホイルシリンダの液圧を保持したり、ホイルシリンダの液圧を他へ逃がして減圧したりして、自動的に制動力を制御するブレーキ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、制動力を制御する種々のブレーキ制御装置が提案されている。このようなブレーキ制御装置における制御としては、先行車などの対向する障害物との車間距離に応じて自動的に制動を行う自動制動制御や、旋回時に過アンダステア状態や過オーバステア状態となったときに、旋回外前輪や旋回内後輪のホイルシリンダ液圧を自動的に制御して制動力を発生させることによって車両をニュートラルステア方向に戻すヨーモーメントを生じさせて車両の挙動を安定させる車両挙動制御や、駆動輪がスリップしたときにこの駆動輪に制動力を与えてスリップを抑制させるトルクスリップ制御や、運転者による制動操作を検出し、この検出値に基づいて液圧を発生させるバイワイヤ制御や、さらには運転者による制動操作により発生したブレーキ液圧に対し、さらに加圧して制動操作の補助を行うアシスト制御などがある。
【0003】
上述の各種制動制御にあっては、運転者が違和感を抱かないように制御品質の向上が図られている。このように制動制御の制御品質の向上を図る技術として、例えば、特開平8−150909号公報に記載のものが知られている。この従来技術は、先行車両などの障害物との車間距離に基づいて自動的に制動を行うブレーキ制御装置において、制動を緩やかに行う時にいわゆる「カックンブレーキ」が生じて乗り心地が悪化するのを防止することと、緊急を要する制動時には、急制動を確実に行うこととの両立を図ることを目的とするものである。
この目的を達成するために、この従来技術では、まず、制御偏差を求め、この制御偏差に基づいて偏差が大きいときには比例制御ゲインを大きくする一方、偏差が小さいときには比例制御ゲインを小さくするようにした。したがって、制御偏差が小さいときには油圧勾配が緩やかになって「カックンブレーキ」を防止することができる一方、緊急を要する制動時、すなわち制御偏差が大きいときには油圧勾配が急になって、応答性の高い制動が可能となり、上記目的を達成することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、液圧保持を行う際に電磁弁に対して出力する制御信号として、常に一定のデューティ比の信号を出力していた。このため、液圧保持を長く続ける場合に、バッテリ消費電力の増加を招いてしまうとともに、発熱量が大きくなって耐久性の点で不利となるという問題があった。特に、近年、車載の電装機器が増え、消費電力を抑えることが望まれている。
【0005】
本発明は、上述の従来の問題点に着目してなされたもので、ブレーキ制御装置において、制御品質を低下させることなく消費電力および発熱量の低減を図ることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明は、マスタシリンダと、ポンプと、前記マスタシリンダとホイルシリンダを接続する第1ブレーキ回路と、前記第1ブレーキ回路と前記ポンプの吐出側とを前記第1ブレーキ回路側への流れのみ許容する逆止弁を介して接続する第2ブレーキ回路と、前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記マスタシリンダ側に設けられた常開のアウト側ゲート弁と、前記第1ブレーキ回路上であって前記アウト側ゲート弁よりも前記マスタシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第3ブレーキ回路と、前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記ホイルシリンダ側に設けられた常開の流入弁と、前記第1ブレーキ回路上であって前記流入弁よりも前記ホイルシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第4ブレーキ回路と、前記第4ブレーキ回路上に設けられた常閉の流出弁と、前記第4ブレーキ回路上であって前記流出弁よりも前記ポンプの吸入側に設けられたリザーバと、車輪がロックしそうな状態になったら、前記流入弁を閉弁し、前記流出弁を開弁させて前記ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記リザーバに逃がし、前記リザーバに溜まったブレーキ液を前記ポンプの作動によって前記マスタシリンダ側に戻す車輪ロック回避制御手段と、自動的に制動制御するときは、前記流入弁及び前記流出弁を非作動状態とし、増圧する際は前記ポンプを作動させ、保持する際は前記アウト側ゲート弁を閉じ、減圧する際は前記アウト側ゲート弁を開弁させる液圧調整手段と、車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、この走行状態検出手段によって検出された車両の走行状態に応じ、前記液圧調整手段に向けて制御信号を出力して増圧・保持・減圧を実行させ、所望の制動力を発生させる制動制御を実行する制動制御手段と、を備えたブレーキ制御装置において、前記制動制御手段は、液圧調整手段を保持作動させるときには、前記アウト側ゲート弁を閉弁状態に維持させる制御信号を出力し、かつ、この制御信号は、保持するホイルシリンダ圧に応じホイルシリンダ圧が高いほど前記アウト側ゲート弁に対して出力する実行電流値を高い値に変化させる信号であることを特徴とする手段とした。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のブレーキ制御装置において、前記走行状態検出手段に、ホイルシリンダの実圧力を求める実圧力検出手段が設けられ、前記制動制御手段は、走行状態検出手段からの入力に基づいてホイルシリンダの目標液圧を算出する目標液圧算出手段を備え、かつ、前記制動制御時に前記実圧力検出手段が検出する実ホイルシリンダ圧を目標液圧算出手段で算出された目標液圧に近づけるべく前記液圧調整手段を作動させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のブレーキ制御装置において、前記実圧力検出手段は、車両減速度に基づいて実ホイルシリンダ圧を算出する手段であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3に記載のブレーキ制御装置において、前記制動制御手段が実行する制動制御とは、走行状態検出手段からの入力により先行車との車間距離を求め、この車間距離を最適値とするべく制動力を発生させる自動制動制御であることを特徴とする。
【0011】
【発明の作用および効果】
本発明では、制動制御手段が制動制御を実行するにあたり、ホイルシリンダ圧を保持するときには、アウト側ゲート弁に向けて閉弁状態に維持させる制御信号、例えばデューティ比信号を出力する。この時、この制御信号は、この保持するホイルシリンダ圧に応じ、保持圧が高ければ実行電流値(デューティ比)も高く保持圧が低ければ実行電流値(デューティ比)も低く制御する。したがって、アウト側ゲート弁に出力する制御信号は、アウト側ゲート弁を保持圧に対抗して閉弁状態に維持することができる最低実行電流値(デューティ比)の制御信号とすることができ、これにより、アウト側ゲート弁における消費電力および発熱量を軽減するとともに耐久性を向上できながら、確実に閉弁状態に維持させて制御品質を維持することが可能となるという効果が得られる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、制動制御手段は、制動制御の実行時には、走行状態検出手段からの入力に基づいて目標液圧を算出し、この目標液圧に実ホイルシリンダ圧を近づけるべく液圧調整手段を作動させる。この液圧調整手段の制御において、実ホイルシリンダ圧が目標液圧に近づくと、ホイルシリンダ圧を保持すべく電磁弁に対して実ホイルシリンダ圧に応じた実行電流値(デューティ比)の制御信号を出力する。したがって、制御要求に応じた精度の高い制動制御を実行することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、実ホイルシリンダ圧を車両減速度に基づいて算出する。すなわち、制動力と車両減速度とは相関関係にあり、車両減速度から実ホイルシリンダ圧を求めることができる。また、車両減速度は、車輪速から車体速を求め、この車体速の変化から求めることができる。その一例を示すと、現時点の車体速をVn,1回過去(前回の制御ルーチン実行時の意味であり、例えば10msec前である)の車体速を(Vn−1),3回前の車体速を(Vn−3),4回前の車体速度(Vn−4)とした場合、
減速度G=[Vn+(Vn−1)]−[(Vn−3)+(Vn−4)]
により求めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、先行車との車間距離を最適に保つ自動制動制御時に、上述の液圧調整手段の電磁弁を制御するもので、このような自動制動制御を実行するブレーキ制御装置において、上述の消費電力を軽減するとともに耐久性の向上を図ることができるという効果を得ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1は、請求項1〜5に記載の発明に対応した例であり、図1は実施の形態1のブレーキ装置を示すブレーキ回路図である。
図において、MCはマスタシリンダでありブレーキペダルBPを踏み込むとブレーキ回路1,2を介してブレーキ液をホイルシリンダWCに向けて供給する周知のものである。なお、マスタシリンダMCにはブレーキ液を貯留するリザーバRESが設けられている。
【0016】
前記ブレーキ回路1,2はいわゆるX配管と呼ばれる接続構造となっている。すなわち、ブレーキ回路1は、左前輪のホイルシリンダWC(FL)と右後輪のホイルシリンダWC(RR)とを結び、ブレーキ回路2は、右前輪のホイルシリンダWC(FR)と左後輪のホイルシリンダWC(RL)とを結ぶよう構成されている。
【0017】
前記ブレーキ回路1,2の途中には、実施の形態の電磁弁としてのアウト側ゲート弁3が設けられている。このアウト側ゲート弁3は、ブレーキ回路1,2の連通・遮断を切り替える常開のソレノイド弁である。
【0018】
前記アウト側ゲート弁3には、マスタシリンダMC側(以下、これを上流という)からホイルシリンダWC側(以下、これを下流という)へのブレーキ液の流通のみを許容する一方弁3aが並列に設けられている。
【0019】
また、前記ブレーキ回路1,2において、アウト側ゲート弁3の下流にはソレノイド駆動の常開のON・OFF弁からなる流入弁5が設けられ、さらに、この流入弁5よりも下流位置とリザーバ7とを結ぶリターン回路10の途中にはソレノイド駆動の常閉のON・OFF弁からなる流出弁6が設けられている。
【0020】
さらに、前記ブレーキ回路1,2には、マスタシリンダMC以外の液圧源(請求項5に記載の液圧源に相当する)としてポンプ4が接続されている。このポンプ4は、運転者が制動操作を行っていないときのブレーキ液圧源となるとともにABS制御を実行したときの戻しポンプを兼ねるものである。また、このポンプ4は、モータ8により作動するプランジャポンプであって、2つのプランジャ4p,4pを備えるとともに、それぞれのプランジャ4p,4pで吸入・吐出を行うポンプ室4rが、枝分かれされた吸入回路4a,4bを介して前記ブレーキ回路1,2においてアウト側ゲート弁3よりも上流の位置と、前記リザーバ7とに接続されている。一方、吐出回路4cが、前記ブレーキ回路1,2において、前記アウト側ゲート弁3と流入弁5との間の位置に接続されている。また、前記吸入回路4bには、ブレーキ液がリザーバ7の方向へ流れるのを防止する逆止弁4dが設けられている。
なお、前記流入弁5,流出弁6,リザーバ7,リターン回路10,吸入回路4bによりABSユニットが構成されており、制動時に車輪ロックが生じそうになったときには、必要に応じて、流入弁5を閉じるとともに流出弁6を開弁してホイルシリンダWCの減圧を行ったり、流入弁5と流出弁6の両方を閉弁させてホイルシリンダWCの液圧保持を行ったり、流入弁5を開くとともに流出弁6を閉じて増圧を行ったりすることができる。
【0021】
また、前記吸入回路4aには、この吸入回路4aの連通・遮断を切り替えるイン側ゲート弁9が設けられている。このイン側ゲート弁9は、常閉のソレノイドバルブにより構成されている。
【0022】
前記2つのゲート弁3,9、流入弁5、流出弁6およびモータ8の作動は、制動制御手段としてのコントロールユニット11により制御される。このコントロールユニット11は、図2に示すように、車輪速センサ12を含んで車両の走行状態を検出する走行状態検出手段13に接続され、この走行状態検出手段13からの入力に基づいて後述するABS制御、ならびに自動制動制御を実行する。ちなみに、走行状態検出手段13は、運転者の運転操作状態、すなわち制動操作や操舵やアクセル操作を検出する手段も含むものである。
【0023】
ABS制御は、周知の制御であり、これを簡単に説明すると、本実施の形態では、車輪速センサ12からの入力に基づいて制動時の車輪ロックを判断し、車輪がロックしそうな状態になったら、ホイルシリンダ圧を減圧させて車輪ロックを回避した後、その対象となる車輪の車輪速が、車体速よりも所定値だけ低い、制動に最も有効な速度となるように適宜、減圧・保持・増圧を行うものである。
【0024】
このABS制御における減圧・保持・増圧は、減圧の場合は、流入弁5を閉弁させるとともに流出弁6を開弁させ、保持の場合は、両弁5,6を閉弁させ、増圧の場合は、流入弁5を開弁させるとともに流出弁6を閉弁させることにより行う。また、減圧の際には、ホイルシリンダWCのブレーキ液がリザーバ7に逃がされるが、このリザーバ7に溜まったブレーキ液は、ポンプ4の作動に基づいて随時ブレーキ回路1,2に戻される。
【0025】
また、本実施の形態では、自動制動制御を実行する。この自動制動制御は、走行状態検出手段13からの入力に基づいて走行状態を検出して自動的に制動力を発生させるものであり、例えば、先行車との車間距離を検出し、この車間距離が車速に応じた理想車間距離よりも縮まったときに自動的に制動力を発生させて車間を理想車間距離に保つ制御を含む。
【0026】
上述の自動制動制御を実行する際には、イン側ゲート弁9を開弁させるとともにポンプ4を作動させて、ブレーキ液をブレーキ回路1,2に吐出させる。この時、流入弁5および流出弁6を非作動状態として、流入弁5を開弁状態に、流出弁6を閉弁状態に維持させていると、ホイルシリンダ圧が増圧される。本実施の形態では、後述するが、モータ8(ポンプ4)に対してパルス変調制御(以下、これをPWM制御という)することにより、増圧量を制御する。一方、この状態からアウト側ゲート弁3を開弁すると、ブレーキ回路1,2のブレーキ液がマスタシリンダMC側に逃がされて減圧が成される。本実施の形態では、このアウト側ゲート弁3の開弁量をPWM制御により行うことで、減圧量を制御する。
【0027】
また、自動ブレーキ制御としては、上述の自動制動制御の他に、駆動輪がスリップしたのを検出したときに駆動輪に制動力を発生させて駆動輪スリップを防止するトルクスリップ制御や、車両が過オーバステア状態や過アンダステア状態となったときに、所望の輪に制動力を発生させて、車両をニュートラル状態に戻す方向にヨーモーメントを発生させる車両運動制御、運転者がブレーキペダルBP以外に設けられてマスタシリンダ圧を発生させない操作手段により制動操作を行ったときに、この制動操作に応じて目標液圧(目標減速度)を決定し、これに応じた制動力を発生させるバイワイヤ制御などを実行してもよい。ちなみに、上記自動制動制御あるいはバイワイヤ制御の場合は、全輪のホイルシリンダ圧を同圧に制御あるいは前後輪で所定の液圧差を持たせながら全ホイルシリンダWCに対して液圧を供給するのに対し、車両運動制御の場合は、1輪のみに制動力を発生させる場合もある。また、トルクスリップ制御に関しては、駆動輪のホイルシリンダWCにのみ液圧を供給するものである。
【0028】
次に、上述の自動制動制御の詳細について図3のフローチャートにより説明する。
まず、ステップ101において、目標減速度(目標液圧に相当する)GTが、予め設定された保持禁止しきい値GMAXよりも大きいか否か判定し、GT>GMAXの場合ステップ102に進んで、保持禁止フラグF_GMAX=1にセットするとともに、フィードバックゲインDGAINBを0にリセットする。一方、ステップ101においてGT≦GMAXの場合、ステップ102を飛ばしてステップ103に進む。
ステップ103では、目標減速度GTが予め設定されたオフしきい値THOFFよりも大きいか否かに基づいて目標減速度GTに応じて減圧・保持・増圧の処理に向けて制動制御を実行するか否かを判定し、GT>THOFFの場合、目標減速度GTに向けた処理を実行すべくステップ104に進み、GT≦THOFFの場合、制動制御が不要であると判定してステップ114に進み、制動制御を終了するOFF処理を行う。すなわち、目標減速度GTが極めて小さいときにはOFF処理を行って、ポンプ4(モータ8)を駆動停止状態とし、アウト側ゲート弁3を開弁状態とし、イン側ゲート弁9を閉弁状態とするものである。
【0029】
ステップ104では、現在の減速度から目標減速度GTとなるまでの傾きである目標減速度勾配DGTが、予め設定された急増しきい値THKYU未満であるか否かに基づいて急増圧を実行するか否か判定し、DGT<THKYUの非急増圧判定時にはステップ105に進み、DGT≧THKYUの急増圧判定時にはステップ113に進む。
このステップ113では、急増圧処理を行うものであり、この場合、イン側ゲート弁9を開弁させる出力を行い、かつモータ8に対してデューティ比100%の出力を行うとともに、アウト側ゲート弁3に対してデューティ比60%の出力を行う。このように本実施の形態では、急増圧が必要なときには、高い制動力を発生させて、これに対応することができる。
【0030】
ステップ105では、保持禁止フラグF_GMAXがセットされているか否か判定し、F_GMAX=1の場合ステップ107に進み、F_GMAX≠1(F_GMAX=0)の場合ステップ106に進む。
ステップ106では、目標減速度勾配DGTが、増圧しきい値DBICよりも大きいか否か判定し、DGT>DBICの場合、増圧か保持かの判定を行うべくステップ107に進み、また、DGT≦DBICの場合、減圧か保持かの判定を行うべくステップ108に進む。
【0031】
ステップ107では、制御信号SIGCNTが、予め設定された増圧時保持しきい値DBIUよりも大きいか否か判定し、SIGCNT>DBIUの場合はステップ112に進んで増圧処理を実行し、一方、SIGCNT≦DBIUの場合はステップ111に進んで保持処理を実行する。なお、増圧時保持しきい値DBIUは、通常の保持領域よりも減圧側の値に設定されている。ステップ112において増圧処理を実行する場合、モータ8(ポンプ4)に対して出力デューティ比DUTY_Pを、図4に示す制御信号SIGCNTに対応したデューティ特性マップに基づいた値fp(SIGCNT)に設定し、かつ、イン側ゲート弁9を開弁状態に維持する。また、この時、アウト側ゲート弁3は、閉弁状態に維持させるものであり、この時、アウト側ゲート弁3に対して出力するデューティ比DUTY_Vを、後述する保持の場合と同様に、図5に示す目標液圧に対応した特性マップに基づいた値fk(目標液圧信号)に、保持デューティ余裕代Dαを加えた値とする。すなわち、DUTY_V=fk(目標液圧信号)+Dαの演算式により算出する。また、前記制御信号SIGCNTは、以下の演算式より算出する。
SIGCNT=PGAINF×GT+DGAINF×DGT+PGAINB×(GT−GL)+DGAINB×(DGT−DGL)
ここで、PGAINFはフィードフォワードPゲイン、GTは目標減速度、DGAINFはフィードフォワードDゲイン、DGTは目標減速度勾配、PGAINBはフィードバックPゲイン、GLは車両減速度、DGAINBはフィードバックDゲイン、DGLは車両減速度勾配である。また、車両減速度GLは、図7に示すように、4輪からの車輪速信号を平均化処理部aにより平均化して、微分部bにより微分し、増幅部cにより増幅させた後に、ローパスフィルタdによりバンドパス処理を行って、求めることができる。さらに、本実施の形態では、この車両減速度GLにゲイン処理部eにより所定のゲインを与えることにより、実ホイルシリンダ圧を示す液圧信号を形成し、本フローチャートにおける処理に使用している。
【0032】
ステップ108では、目標減速度勾配DGTが減圧しきい値DBDCよりも小さいか否か判定し、DGT<DBDCの場合、さらにステップ109に進んで、制御信号SIGCNTが減圧時保持しきい値DBDCよりも小さいか否か判定し、ステップ108ならびにステップ109の両方でYESの判定が成された場合ステップ110に進んで減圧処理を行い、一方、ステップ108とステップ109のいずれかでNOと判定された場合、ステップ111に進んで保持処理を行う。なお、減圧時保持しきい値DBDCは、通常の保持領域よりも増圧側の値に設定している。
【0033】
ステップ110において減圧処理を実行する場合、イン側ゲート弁9を閉弁させるとともにモータ8(ポンプ4)への出力デューティ比を0%とし、さらにアウト側ゲート弁3への出力ディーティ比DUTY_Vは、図6に示す制御信号SIGCNTに応じたマップに基づいて設定する。
【0034】
ステップ111において保持処理を実行する場合、本実施の形態では、モータ8(ポンプ4)の駆動を停止させるとともにイン側ゲート弁9を閉弁させ、さらにアウト側ゲート弁3に対しては、保持圧力に基づいたデューティ比の出力を行う。すなわちアウト側ゲート弁3に対する出力デューティ比は、前述した増圧時と同様に、図5に示す目標液圧に対応した特性マップに基づく値fk(目標液圧信号)に、保持デューティ余裕代Dαを加えた値とする。
すなわち、DUTY_V=fk(目標液圧信号)+Dα
の演算式により算出する。
【0035】
ステップ110〜114のいずれかの処理を行った後は、ステップ115に進んでアウト側ゲート弁3に対してフィードバック処理を実行する。
【0036】
図8は本実施の形態1の作動例を示すタイムチャートである。
この図に示すように、増圧時には、アウト側ゲート弁3に対する出力デューティ比DUTY_Vを、目標液圧に応じて変更し、また保持時には、その時点の実ホイルシリンダ圧である目標液圧に応じた値に維持する。したがって、目標液圧が低くなれば、それだけ出力デューティ比DUTY_Vは低くなる。また、減圧時には、制御信号SIGCNTに応じた出力デューティ比DUTY_Vを出力するものであり、この場合、ホイルシリンダ圧ならびに図外のリターンスプリングの付勢力によりアウト側ゲート弁3が開弁する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態では、アウト側ゲート弁3を閉弁させる際には、増圧時ならびに減圧時において、アウト側ゲート弁3に向けて出力するデューティ比DUTY_Vを、アウト側ゲート弁3により閉じこめるブレーキ回路1,2における液圧である目標液圧に応じて、図5に示すマップに基づいて決定するようにしたため、アウト側ゲート弁3を確実に閉弁状態に維持させながら、アウト側ゲート弁3の作動を必要最小限の電流により行うことができ、制御品質を保ちながら消費電力および発熱量の軽減を図ることができるという効果が得られる。
ちなみに、図9は、アウト側ゲート弁3における閉弁状態を保つことができる液圧とデューティ比との関係を示しており、このように、保持する液圧が低くなれば出力デューティ比DUTY_Vを低く抑えることができる。
なお、このように電磁弁に出力するデューティ比DUTY_Vは、電磁弁のコイル温度や雰囲気温度により補正してもよい。
【0038】
さらに、本実施の形態では、目標減速度GTが、保持禁止しきい値GMAXよりも大きいときには、ステップ106における目標減速度勾配に基づく判定を飛ばしてしてステップ107の増圧か保持かの判断に進み、かつ、このときフィードバックDゲインDGAINBを0にリセットして、制御信号SIGCNTに対して目標減速度勾配と車両減速度勾配との偏差が反映されなくなるため、車両減速度GLが目標減速度GTに達するまで増圧が行われ、応答性遅れが生じることなく、高い減速度が確実に得られ、これによっても高い制御品質を得ることができる。
【0039】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2のブレーキ装置について説明する。実施の形態2のブレーキ装置は、マスタシリンダMCを設けずに、通常の制動時もポンプの液圧を液圧源としてホイルシリンダ圧を制御する、いわゆるブレーキバイワイヤ式のブレーキ装置である。なお、アウト側ゲート弁3としては実施の形態1と同じ、構造のものを使用しているもので、また、他の構成についても、実施の形態1と同じ構成については実施の形態1と同じ符号を付けて説明を省略する。
【0040】
すなわち、図10は実施の形態2のブレーキ装置における1系統部分だけを示すブレーキ回路図であって、主たる構成は実施の形態1と共通している。実施の形態1との相違点は、アウト側ゲート弁3は、低圧回路201を介してポンプ4の吸入側に接続されている。したがって、アウト側ゲート弁3を開弁するとブレーキ回路1の液圧が減圧される。
なお、各弁3,5,6ならびにモータ8の作動を制御する図外のコントロールユニットには、ブレーキペダルあるいは手動ブレーキスイッチの操作を検出する制動操作検出手段が接続されている。運転者が制動操作を行ったときには、この制動操作検出手段の検出値に基づいて目標液圧ならびに制御信号SIGCNTを求め、これらの値に基づいてアウト側ゲート弁3ならびにモータ8をPWM制御する。
また、実施の形態1と同様に、ABS制御時には、流入弁5,流出弁6およびモータ8に対して制御を実行するものである。
【0041】
以上図面により実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態の構成に限定されるものではない。
例えば、本発明を適用可能なブレーキ制御装置としては、実施の形態に示したものに限られない。
また、実施の形態では、増圧時において、増圧量をモータ8(ポンプ4)の駆動により制御するものを示したが、液圧源とホイルシリンダとを結ぶ回路の途中に設けた電磁弁の開閉により制御するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のブレーキ制御装置におけるブレーキ回路を示すブレーキ回路図である。
【図2】実施の形態1における制御手段の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1の制動制御を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1においてポンプに出力するデューティ特性図である。
【図5】実施の形態1において増圧時・保持時にアウト側ゲート弁に出力するデューティ特性図である。
【図6】実施の形態1において減圧時にアウト側ゲート弁に出力するデューティ特性図である。
【図7】実施の形態1の要部構成を示すブロック図である。
【図8】実施の形態1の作動例を示すタイムチャートである。
【図9】実施の形態1における保持液圧と電流値との関係を示す特性図である。
【図10】実施の形態2のブレーキ制御装置におけるブレーキ回路を示すブレーキ回路図である。
【符号の説明】
1 ブレーキ回路
2 ブレーキ回路
3 アウト側ゲート弁
3a 一方弁
4 ポンプ
4a 吸入回路
4b 吸入回路
4c 吐出回路
4d 逆止弁
4p プランジャ
4r ポンプ室
5 流入弁
6 流出弁
7 リザーバ
8 モータ
9 イン側ゲート弁
10 リターン回路
11 コントロールユニット
12 車輪速センサ
13 走行状態検出手段
201 低圧回路
BP ブレーキペダル
MC マスタシリンダ
RES リザーバ
WC ホイルシリンダ
a 平均化部
b 微分部
c 増幅部
d ローパスフィルタ
e ゲイン処理部
Claims (4)
- マスタシリンダと、
ポンプと、
前記マスタシリンダとホイルシリンダを接続する第1ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路と前記ポンプの吐出側とを前記第1ブレーキ回路側への流れのみ許容する逆止弁を介して接続する第2ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記マスタシリンダ側に設けられた常開のアウト側ゲート弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記アウト側ゲート弁よりも前記マスタシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第3ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記ホイルシリンダ側に設けられた常開の流入弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記流入弁よりも前記ホイルシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第4ブレーキ回路と、
前記第4ブレーキ回路上に設けられた常閉の流出弁と、
前記第4ブレーキ回路上であって前記流出弁よりも前記ポンプの吸入側に設けられたリザーバと、
車輪がロックしそうな状態になったら、前記流入弁を閉弁し、前記流出弁を開弁させて前記ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記リザーバに逃がし、前記リザーバに溜まったブレーキ液を前記ポンプの作動によって前記マスタシリンダ側に戻す車輪ロック回避制御手段と、
自動的に制動制御するときは、前記流入弁及び前記流出弁を非作動状態とし、増圧する際は前記ポンプを作動させ、保持する際は前記アウト側ゲート弁を閉じ、減圧する際は前記アウト側ゲート弁を開弁させる液圧調整手段と、
車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、
この走行状態検出手段によって検出された車両の走行状態に応じ、前記液圧調整手段に向けて制御信号を出力して増圧・保持・減圧を実行させ、所望の制動力を発生させる制動制御を実行する制動制御手段と、
を備えたブレーキ制御装置において、
前記制動制御手段は、液圧調整手段を保持作動させるときには、前記アウト側ゲート弁を閉弁状態に維持させる制御信号を出力し、かつ、この制御信号は、保持するホイルシリンダ圧に応じホイルシリンダ圧が高いほど前記アウト側ゲート弁に対して出力する実行電流値を高い値に変化させる信号であること
を特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記走行状態検出手段に、ホイルシリンダの実圧力を求める実圧力検出手段が設けられ、
前記制動制御手段は、走行状態検出手段からの入力に基づいてホイルシリンダの目標液圧を算出する目標液圧算出手段を備え、かつ、前記制動制御時に前記実圧力検出手段が検出する実ホイルシリンダ圧を目標液圧算出手段で算出された目標液圧に近づけるべく前記液圧調整手段を作動させることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。 - 前記実圧力検出手段は、車両減速度に基づいて実ホイルシリンダ圧を算出する手段であることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御装置。
- 前記制動制御手段が実行する制動制御とは、走行状態検出手段からの入力により先行車との車間距離を求め、この車間距離を最適値とするべく制動力を発生させる自動制動制御であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載のブレーキ制御装置。
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