JP3938820B2 - 希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法、および該製造方法により得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を用いた放射線像変換パネル - Google Patents
希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法、および該製造方法により得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を用いた放射線像変換パネル Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法、および放射線像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる方法として、輝尽性蛍光体を用いる放射線像記録再生方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を該パネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、そののちに輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、該輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得、次いで得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。読み取りを終えた該パネルは、残存する画像の消去が行われた後、次の撮影のために備えられる。すなわち、放射線像変換パネルは繰り返し使用することができる。
【0003】
上記の放射線像記録再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。さらに、従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線像記録再生方法では放射線像変換パネルを繰返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0004】
輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用上では、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。従来から放射線像変換パネルに用いられてきた輝尽性蛍光体の例としては、希土類賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0005】
放射線像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルは、基本構造として、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層(以下、単に「蛍光体層」という場合がある。)とからなるものである。ただし、蛍光体層が自己支持性である場合には、必ずしも支持体を必要としない。蛍光体層は、通常は輝尽性蛍光体と、これを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものも知られている。また、輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されている蛍光体層を持つ放射線像変換パネルも知られている。これらのいずれの蛍光体層でも、輝尽性蛍光体はX線などの放射線を吸収したのち励起光の照射を受けると輝尽発光を示す性質を有するものであるから、被写体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線は、その放射線量に比例して放射線像変換パネルの蛍光体層に吸収され、パネルには被写体あるいは被検体の放射線像が放射線エネルギーの蓄積像として形成される。この蓄積像は、上記励起光を照射することにより輝尽発光光として放出させることができ、この輝尽発光光を光電的に読み取って電気信号に変換することにより放射線エネルギーの蓄積像を画像化することが可能となる。
【0006】
前記の希土類賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、感度が優れ、また放射線像変換パネルとして使用した場合に鮮鋭度の高い放射線再生画像をもたらすため、実用上において優れた輝尽性蛍光体ということができる。しかしながら、放射線像記録再生方法の実用化が進むにつれて、更に高特性の輝尽性蛍光体への要望が高まっている。
【0007】
特開平7−233369号公報では、従来用いられている希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が板状粒子からなっていることに注目して、その問題点を明らかにし、その解決として、特定の基本組成式を有し、14面体型形状にある希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体およびその製造法と、該輝尽性蛍光体を放射線像変換パネルに利用することを提案している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、放射線像記録再生方法に利用した場合に、輝尽発光特性が更に優れている特定組成の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を製造するための新規な方法、および該希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を用いた放射線像変換パネルを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 下記組成式(I):
(Ba1−a,MII a)FX・bMI・cMIII・dA:xLn 組成式(I)
〔式中、MIIは、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、MIは、Li、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、MIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、Cd、Luからなる群より選択される少なくとも一種の三価金属の化合物(但し、Al2O3を除く)を表す。Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択される少なくとも一種のハロゲンを表し、Lnは、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、TmおよびYbからなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素を表す。Aは、Al2O3、SiO2、ZrO2からなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物を表す。a、b、c、d、およびxはそれぞれ、0≦a≦0.3、0≦b≦2、0≦c≦2、0≦d≦0.5、0<x≦0.2を表す。〕
で表わされる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法であって、
上記組成式(I)で表される焼成物を、金属イオンの濃度が、ほぐし工程における液温で、添加されるBaBr 2 の状態での飽和濃度の1/10以上飽和濃度以下であるBaBr 2 水溶液を用いてほぐし処理を行い、スラリーを得るほぐし工程と、
ほぐし工程で得られたスラリーを湿式分級することにより、スラリー中の一定粒度以上の粒子を除去する湿式分級工程と、
湿式分級工程で得られた、一定粒度以上の粒子が除去されたスラリーを固液分離して、固形物を得る固液分離工程と、
固液分離工程で得られた固形物を乾燥し、希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を得る乾燥工程と、
を有することを特徴とする希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法である。
【0010】
<2> ほぐし工程において、BaBr 2 水溶液のBa 2+ が、BaBr 2 の状態で添加されたものであることを特徴とする<1>に記載の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法である。
【0014】
<3> 得られる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体が、14面体型であることを特徴とする<1>または<2>に記載の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法である。
【0015】
<4> 輝尽性蛍光体を含む蛍光体層を有する放射線像変換パネルであって、輝尽性蛍光体が、<1>ないし<3>のいずれか1に記載の製造方法により得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体であることを特徴とする放射線像変換パネルである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(以下、単に「蛍光体」という場合がある。)の製造方法を、以下に詳しく説明する。
【0017】
[焼成物の製造]
本発明においては、下記組成式(I):
(Ba1-a,MII a)FX・bMI・cMIII・dA:xLn 組成式(I)
〔式中、MIIは、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、MIは、Li、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、MIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、Cd、Luからなる群より選択される少なくとも一種の三価金属の化合物(但し、Al2O3を除く)を表す。Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択される少なくとも一種のハロゲンを表し、Lnは、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、TmおよびYbからなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素を表す。Aは、Al2O3、SiO2、ZrO2からなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物を表す。a、b、c、d、およびxはそれぞれ、0≦a≦0.3、0≦b≦2、0≦c≦2、0≦d≦0.5、0<x≦0.2を表す。〕
で表わされる焼成物を出発原料とする。
【0018】
上記組成式(I)で表わされる焼成物は、従来公知の如何なる方法で製造してもよいが、例えば、以下に示す工程a)〜d)を経ることにより製造することができる。
a)まず、BaBr2の水溶液にEuのハロゲン化物およびCaのハロゲン化物を添加する。更に、必要に応じてアルカリ金属Mの化合物(ハロゲン化物、亜硝酸塩、硝酸塩、酢酸塩など)を添加する。なお、このアルカリ金属化合物は、必ずしもここで添加する必要はなく、後述の工程c)における蛍光体前駆体結晶と酸化物との混合時に添加してもよい。このとき、所望により更に、少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、不溶性の金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。この溶液(反応母液)は20〜100℃の温度に維持される。また、反応開始前のこの溶液中のBaBr2濃度は、好ましくは0.9〜1.6モル/Lである。次に、20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に60℃付近に維持されたこの溶液(反応母液)を撹拌しながら、無機弗化物(弗化アンモニウムの水溶液、弗化バリウムのスラリーなど)をポンプ付きのパイプなどを用いて一定の速度で注入する。この注入は、撹拌が特に激しく実施されている領域部分に行うのが好ましい。この無機弗化物の反応母液への注入によって、希土類賦活弗化臭化バリウム系蛍光体前駆体結晶(以下、BFB結晶という)が沈殿する。次いで、該BFB結晶を濾過、遠心分離などによって溶媒から分離し、メタノールなどによって充分に洗浄し、乾燥する。
【0019】
b)BaI2の水溶液にEuのハロゲン化物を添加する。このとき、所望により更に少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、不溶性の金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。この溶液(反応母液)は20〜100℃の温度に維持される。また、反応開始前のこの溶液中のBaI2濃度は、好ましくは2.9〜4.2モル/Lである。次に、20〜100℃、好ましくは40〜80℃、特に60℃付近に維持されたこの溶液(反応母液)を撹拌しながら、無機弗化物(弗化水素の水溶液、弗化バリウムのスラリーなど)をポンプ付きのパイプなどを用いて一定の速度で注入する。この注入は、撹拌が特に激しく実施されている領域部分に行うのが好ましい。この無機弗化物の反応母液への注入によって、希土類賦活弗化沃化バリウム系蛍光体前駆体結晶(以下、BFI結晶という)が沈殿する。次いで、該BFI結晶を、濾過、遠心分離などによって溶媒から分離し、イソプロパノールなどによって充分に洗浄し、乾燥する。
【0020】
c)上記のBFB結晶およびBFI結晶に、酸化物A(Al2O3、SiO2など)の微粒子、並びに必要に応じてアルカリ金属Mのハロゲン化物、BaF2および/またはBaBr2を撹拌しながら充分に混合する。なお、この酸化物Aは、次の工程d)における焼成の際に蛍光体前駆体結晶の焼結による粒子形状の変化や粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止する目的で添加される。この混合によって酸化物Aの微粒子は結晶表面に均一に付着する。酸化物Aは、好ましくはAl2O3であり、その添加量は蛍光体前駆体結晶の0.1〜1.0重量%が適当である。
【0021】
d)上記の混合物を、石英ボート、アルミナルツボ、石英ルツボなどの耐熱性容器に充填し、電気炉の炉芯に入れて焼成を行う。焼成温度は700〜900℃の範囲が適当であり、特に750〜900℃の範囲が好ましい。焼成雰囲気としては、微量の酸素ガスを含有する窒素ガス雰囲気が利用される。焼成時間は、混合物の充填量、焼成温度および炉からの取出し温度などによっても異なるが、一般には1〜6時間が適当であり、特に2〜6時間が好ましい。
【0022】
例えば、まず、混合物を電気炉で750〜900℃の範囲の一定温度で2〜6時間焼成する。その間に、少なくとも1回は炉内を真空排気した後微量の酸素ガスを含有する窒素ガス雰囲気に置換する。次に、炉内の温度を30分以上かけて750℃以下の温度に下げた後、再度微量の酸素ガスを含有する窒素ガス雰囲気に置換する。次いで、炉内を大気に触れないようにして350℃以下の温度まで冷却した後、焼成物を大気中に取り出す。
【0023】
なお、上記蛍光体前駆体結晶の全重量m(kg)と電気炉の炉内容積l(L)との比率は、m/l≧0.05(kg/L)であるのが好ましい。
【0024】
[ほぐし工程]
以上のようにして得られた前記組成式(I)で表される焼成物は、ほぐし工程に供される。ほぐし工程は、該焼成物をBaBr 2 水溶液を用いてほぐし処理する工程である。ここでほぐし処理とは、前記焼成物を、前記金属イオンを含む水溶液に分散させて、攪拌し、焼成による焼結および凝集を緩和する処理を言う。
【0025】
Baイオンが存在する状態の溶液に、前記組成式(I)で表される焼成物を分散させた場合、前記組成式(I)中のBaの溶液中への溶解速度が遅く、輝尽発光の低下を起こさずに、攪拌によるほぐし処理が有効に行える。
【0026】
金属イオンを含む水溶液の金属イオンは、一般に金属塩の状態で水に添加されたものであり、陰イオンと共存することとなるが、該陰イオンは特に限定されない。なかでも、金属塩としては、ハロゲン化物とすることが好ましく、当該ハロゲンとしては、液の安定性の観点より、Brが好ましい。金属イオンを含む水溶液は、例えば、前記焼成物の一部を用いて調製したものであってもよい。
【0027】
金属イオンを含む水溶液の金属イオンは、前記組成式(I)中のBaが溶液中に溶解しにくくなるような濃度であることが望ましいが、金属イオンの種類、温度、陰イオンの種類等により変動するものであり、その絶対値を一律に規定することはできない。実際には水に添加する金属塩の状態における、ほぐし処理時の温度の飽和濃度に支配される。具体的には、当該金属塩の濃度が、0より大きく、かつ当該工程における液温での飽和濃度以下であることが好ましく、当該工程における液温での飽和濃度の1/10以上であることがより好ましく、さらに好ましくは3/10以上である。上限としては、10/10以下であれば問題ないが、溶液の安定性の観点より9/10以下であることが好ましく、より好ましくは8/10以下である。
【0028】
ほぐし処理における攪拌は、特に限定されないが、攪拌羽根による乱流攪拌とすることが、効率良くほぐし処理を行うことができる点で好ましい。また他の攪拌方法としては、ロールミル、振動ミル等の粉砕機や、ダブルコーン等の混合機を使用した方法によることも可能である。
【0029】
攪拌の程度としては、焼成による焼結および凝集を緩和し得る程度とすればよく、攪拌装置の種類、焼成後の組成物の状態等により適宜設定すればよいが、攪拌が弱すぎると焼結や凝集の緩和は進まず、分級時の収率は下がり、攪拌が強すぎると焼成後の蛍光体の粒子がストレスにより破砕され、輝尽発光が低下してしまうため、両者の程度を見て、最適な範囲に設定することが望ましい。
【0030】
攪拌時間としても、焼成による焼結および凝集を緩和し得る程度とすればよく、攪拌装置の種類、焼成後の組成物の状態、上記攪拌の程度等により適宜設定すればよいが、具体的には30分以上とすることが好ましく、より好ましくは1時間以上である。30分より短いと、焼結や凝集の緩和は進まず、分級時の収率が低下する。一方、攪拌時間をあまりに長くしすぎると、水溶液中へのBaの溶解および再析出を繰り返すことで少しずつ輝尽発光が低下するため、48時間以下とすることが好ましく、より好ましくは24時間以下とすることである。
【0031】
[湿式分級工程]
ほぐし工程で得られたスラリーは、湿式分級することにより、スラリー中の一定粒度以上の粒子を除去する湿式分級工程に供される。
湿式分級する方法としては、通常の濾過や振動篩などが挙げられる。湿式分級の条件としては、いわゆる粗大粒子が除去できる程度であれば問題ないが、メッシュサイズとして、50μm以下とすることが好ましく、より好ましくは30μm以下である。
【0032】
湿式分級は、メッシュの目詰まりによる分級効率低下を防止すべく、複数段の構成とすることが好ましい。すなわち、大径のメッシュサイズから順次小径のメッシュサイズになるように複数段の分級工程を設け(例えば、徐々にメッシュサイズが小さくなるように濾過工程を設け)、最終的に所望のメッシュサイズにして、目的の分級を達することとすることが好ましい。
湿式分級による濾過においては、メッシュの目詰まりによる分級効率低下を防止すべく、加圧濾過することが好ましい。
【0033】
[固液分離工程]
湿式分級工程で得られた、一定粒度以上の粒子が除去されたスラリーは、固液分離工程において、固液分離して、固形物を得る。
固液分離の方法としては、減圧濾過もしくは加圧濾過による方法、一定時間静置して上澄み液を廃棄するいわゆるデカンテーション法、および、遠心分離法等が挙げられる。なかでも、加圧濾過による方法は、平均粒径が10μm以下の蛍光体の粒子を含むスラリーを短時間で固液分離できる点で好ましい。
【0034】
[乾燥工程]
さらに、固液分離工程で得られた固形物は乾燥され、目的の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体となる。乾燥するための装置としては、従来公知のあらゆる装置、例えば、電気オーブン、熱風乾燥機等をいずれも適用することができる。
【0035】
乾燥温度としては、十分な乾燥を達すべく90℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、あまりに高温としすぎると得られる蛍光体の再凝集を招いたり、組成の変動を来す場合があるため、200℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましい。
乾燥時間としては、乾燥温度にもよるが、概ね30〜360分程度が好ましい。
【0036】
乾燥に先立ち、前記固液分離工程で得られた固形物を、低級アルコールを用いて洗浄しておくことが、金属塩の除去による凝集防止、乾燥後の耐湿性向上、および、固形物中の脱水を図る、等の観点より好ましい。用いることができる低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0037】
[乾式分級工程]
乾燥工程で乾燥することにより得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体は、乾燥時に凝集して粗大粒子が存在する場合ばあるため、振動篩などにより乾式分級を施すことが好ましい。乾式分級の条件としては、所望の粒径になるように適宜設定すればよく、好ましくは30〜100μmのメッシュサイズで行う。
【0038】
[得られる蛍光体の形状等]
本発明の製造方法により得られる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体は、前記組成式(1)で表される組成のものである。前記組成式(I)中のLnとしては、特にCeまたはEuであることが、好ましい。
【0039】
本発明の製造方法により得られる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体は、通常は、アスペクト比が1.0〜5.0の範囲にある。また、粒子アスペクト比が1.0〜2.0(さらに好ましくは、1.0〜1.5)の範囲、粒子サイズのメジアン径(Dm)が1〜10μm(さらに好ましくは、2〜7μm)の範囲、かつ、粒子サイズ分布の標準偏差をσとしたときのσ/Dmが50%以下(さらに好ましくは、40%以下)の範囲にあるものであることが好ましい。
【0040】
また、本発明の製造方法により得られる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の粒子の形状としては、直方体型、正六面体型、正八面体型、これらの中間多面体型、14面体型等があり、14面体型が好ましく、本発明の製造方法によれば、容易に14面体型のものを製造することができる。
【0041】
[蛍光体の保管]
得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体は、後述の輝尽性蛍光体を含む蛍光体層を有する放射線像変換パネルの蛍光体層に用いられるが、使用に供するまでは、蛍光体の特性の劣化を防ぐため、保管状況を適切に管理することが望ましい。
【0042】
具体的な管理条件としては、以下の通りである。
温度としては、60℃以下とすることが好ましく、より好ましくは0℃以上50℃以下である。
湿度としては、75%RH以下とすることが好ましく、より好ましくは60%RH以下である。
さらに紫外線の影響を排除すべく、波長が400nm以下の紫外線の強度が5mW/m2・nm以下の環境とすることが好ましく、より好ましくは1mW/m2・nm以下である。
【0043】
このような環境は、光を十分に遮断し得る容器に前記蛍光体を入れ、恒温恒湿槽内に置くことで得られる。また、容器内を所定の湿度に調整した後、密閉し恒温槽に置くことでも得られる。勿論、環境によっては、恒温槽等に置くことなく上記環境を達成し得る場合もある。
【0044】
[放射線像変換パネルの製造方法]
次に、本発明の製造方法により得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を用いた放射線像変換パネルの製造方法について述べる。
【0045】
本発明の製造方法により得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体は、放射線像変換パネルの蛍光体層に輝尽性蛍光体として含まれる。通常は、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるのものである。なお、蛍光体層中には更に、他の輝尽性蛍光体および/または着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0046】
蛍光体層が、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる場合を例にとり、放射線像変換パネルの製造方法を説明する。
【0047】
蛍光体層は、次のような公知の方法により支持体上に形成することができる。まず、輝尽性蛍光体と結合剤とを溶剤に加え、これを充分に混合して、結合剤溶液中に輝尽性蛍光体が均一に分散した塗布液を調製する。塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類などによって異なるが、一般には結合剤と輝尽性蛍光体との混合比(重量比)は、1:1乃至1:100の範囲から選ばれ、特に1:8乃至1:40の範囲から選ぶのが好ましい。次に、上記のようにして調製された輝尽性蛍光体と結合剤とを含有する塗布液を、支持体の表面に均一に塗布することにより塗膜を形成する。この塗布操作は、通常の塗布手段、たとえば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーターなどを用いることにより行うことができる。
【0048】
支持体としては、従来より放射線像変換パネルの支持体の材料として公知のものから任意に選ぶことができる。公知の放射線像変換パネルにおいて、支持体と蛍光体層との結合を強化するため、あるいは放射線像変換パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、蛍光体層が設けられる側の支持体表面にゼラチンなどの高分子物質を塗布して接着性付与層を設けたり、あるいは二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などを設けることが知られている。本発明において用いられる支持体についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は所望の放射線像変換パネルの目的、用途などに応じて任意に選択することができる。さらに特開昭58−200200号公報に記載されているように、得られる画像の鮮鋭度を向上させる目的で、支持体の蛍光体層側の表面(支持体の蛍光体層側の表面に接着性付与層、光反射層または光吸収層などが設けられている場合には、その表面を意味する)には微小凹凸が形成されていてもよい。
【0049】
上記のようにして支持体上に塗膜を形成したのち該塗膜を乾燥して、支持体上に蛍光体層を形成する。蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と輝尽性蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は20μm乃至1mmとする。該層厚は50乃至500μmとするのが好ましい。なお、蛍光体層は、必ずしも上記のように支持体上に塗布液を直接塗布して形成する必要はなく、たとえば、別に、ガラス板、金属板、プラスチックシートなどのシート上に塗布液を塗布し乾燥することにより蛍光体層を形成したのち、これを、支持体上に押圧するか、あるいは接着剤を用いるなどして支持体と蛍光体層とを接合してもよい。
【0050】
前述のように、通常は蛍光体層の上に保護膜が付設される。保護膜としては、セルロース誘導体やポリメチルメタクリレートなどのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、ポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したもの、などが用いられる。また、有機溶媒可溶性のフッ素系樹脂の塗布膜により形成され、パーフルオロオレフィン樹脂粉末もしくはシリコーン樹脂粉末を分散、含有させた保護膜であってもよい。
【0051】
なお、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、放射線像変換パネルを構成する上記各層の少なくとも一つの層が励起光を吸収し、輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色されていてもよく、独立した着色中間層を設けてもよい(特公昭54−23400号公報参照)。
【0052】
上記の方法により、支持体上に、本発明の製造方法により得られる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体と、これを分散状態で含有支持する結合剤と、からなる蛍光体層が付設されてなる放射線像変換パネルを製造することができる。
【0053】
【実施例】
[実施例1]
1:焼成物の製造
(原料組成)
BaFBr:Eu(Eu濃度5.0×10-3モル比、平均粒径6.5μm)・・・12,480g
BaFI:Eu(Eu濃度5.0×10-3モル比、平均粒径7.1μm)・・・2,640g
BaF2・・・248g
アルミナ−C・・・76g
上記合計15,444gの原料を十分に混合した。
【0054】
上記の混合物を4等分して、それぞれ焼成容器(石英ガラス製のボート、長さ30cm、幅15cm、厚さ5mm)に充填した。これらを、炉内雰囲気温度850℃に設定された電気炉(焼成空間100リットルの管状炉)の焼成空間に入れ、2時間加熱した(このときの焼成空間は、窒素ガス雰囲気)。その後焼成空間を酸素1.3%の弱酸化性雰囲気に変え、さらに1時間加熱した。次いで、冷却空間に移し、大気から遮断された状態で200℃以下まで冷却した後、焼成物を大気中に取り出した。
【0055】
2:金属イオンを含む水溶液の調製
純水1000mlに、BaBr21200gを入れ、室温にてマグネチックスターラーで1時間攪拌し、濾紙にて不溶解成分を除去し、金属イオンを含む水溶液として、BaBr2の飽和水溶液(Ba濃度=3.2mol/リットル)を調製した。
【0056】
3:ほぐし処理
上記得られたBaBr2の飽和水溶液に、前記得られた焼成物600gを入れ、プロペラ攪拌機を用い、攪拌羽根を50rpmで回転させ、6時間攪拌し、スラリーを得た。このときのBaBr2の飽和水溶液の温度は20℃であった。
【0057】
4:湿式分級工程
ほぐし処理で得られたスラリーを、20μmサイズのナイロンメッシュを張った振動篩機にかけて、湿式分級を行った。
【0058】
5:固液分離工程
湿式分級工程を経たスラリーを、加圧濾過(圧縮空気2.0kgf/cm2で加圧)により濾過して固液分離した。その際、スラリーを濾過した後に、メタノール500mlを入れて再度濾過する操作を2回行い、メタノールによる洗浄を行った。
【0059】
6:乾燥工程および乾式分級工程
110℃の乾燥機で10時間乾燥した。その後、再度振動篩(ナイロンメッシュ;#460)にかけて乾式分級を行った。このようにして、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。当該蛍光体について、後述の評価試験を行った。
【0060】
なお、得られた蛍光体の一部を、ポリエチレン製の袋に入れ、口を密閉し、さらにこれを黒色の缶に入れ蓋をして保管した。保管は40℃80%RHの恒温恒湿室内に缶ごと放置することにより行った。1ヶ月保管後の蛍光体についても、同様に後述の評価試験を行った。
【0061】
[実施例2]
金属イオンを含む水溶液のBa濃度を、BaBr2の飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0062】
[実施例3]
金属イオンを含む水溶液のBa濃度を、BaBr2の飽和水溶液の10分の3となるようにしたことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0063】
[実施例4]
金属イオンを含む水溶液のBa濃度を、BaBr2の飽和水溶液の10分の1となるようにしたことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0064】
[実施例5]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにLiBr2000gを用い、LiBrの飽和水溶液(Li濃度=2.0mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0065】
[実施例6]
金属イオンを含む水溶液のLi濃度を、LiBrの飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例5と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0066】
[実施例7]
金属イオンを含む水溶液のLi濃度を、LiBrの飽和水溶液の10分の1となるようにしたことを除き、実施例5と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0067】
[実施例8]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにNaBr1000gを用い、NaBrの飽和水溶液(Na濃度=0.88mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0068】
[実施例9]
金属イオンを含む水溶液のNa濃度を、NaBrの飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例8と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0069】
[実施例10]
金属イオンを含む水溶液のNa濃度を、NaBrの飽和水溶液の10分の1となるようにしたことを除き、実施例8と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0070】
[実施例11]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにKBr800gを用い、KBrの飽和水溶液(K濃度=0.55mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0071】
[実施例12]
金属イオンを含む水溶液のK濃度を、KBrの飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例11と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0072】
[実施例13]
金属イオンを含む水溶液のK濃度を、KBrの飽和水溶液の10分の1となるようにしたことを除き、実施例11と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0073】
[実施例14]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにRbBr1250gを用い、RbBrの飽和水溶液(Rb濃度=0.70mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0074】
[実施例15]
金属イオンを含む水溶液のRb濃度を、RbBrの飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例14と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0075】
[実施例16]
金属イオンを含む水溶液のRb濃度を、RbBrの飽和水溶液の10分の1となるようにしたことを除き、実施例14と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0076】
[実施例17]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにCsBr1350gを用い、CsBrの飽和水溶液(Cs濃度=0.58mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0077】
[実施例18]
金属イオンを含む水溶液のCs濃度を、CsBrの飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例17と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0078】
[実施例19]
金属イオンを含む水溶液のCs濃度を、CsBrの飽和水溶液の10分の1となるようにしたことを除き、実施例17と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0079】
[実施例20]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにBaCl2500gを用い、BaCl2の飽和水溶液(Ba濃度=0.17mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0080】
[実施例21]
金属イオンを含む水溶液のBa濃度を、BaCl2の飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例20と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0081】
[実施例22]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにBaI22200gを用い、BaI2の飽和水溶液(Ba濃度=0.52mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0082】
[実施例23]
金属イオンを含む水溶液のBa濃度を、BaI2の飽和水溶液の2分の1となるようにしたことを除き、実施例22と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0083】
[比較例1]
ほぐし処理に用いた金属イオンを含む水溶液を、単なる純水に代えたことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0084】
[比較例2]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにCaBr21500gを用い、CaBr2の飽和水溶液(Ca濃度=0.70mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0085】
[比較例3]
金属イオンを含む水溶液の調製において、BaBr21200gの代わりにSrBr21100gを用い、SrBr2の飽和水溶液(Sr濃度=0.41mol/リットル)を調製したことを除き、実施例1と同様にして各工程を行い、ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体粒子を得た。
【0086】
上記実施例1〜23および比較例1〜3で得られた蛍光体粒子は、いずれも14面体の形状であり、平均結晶サイズは約7μmであった。
【0087】
[蛍光体の評価]
得られた上記実施例1〜23および比較例1〜3の各蛍光体(実施例1については、保管の前後の双方)について、輝尽発光量(PSL)を下記の方法で測定した。
測定対象となる所定量の蛍光体に80kVpのX線を200mR照射して10秒後に、He−Neレーザ光(波長633nm)を4.6J/m2照射して蛍光体を励起し、その蛍光体から放射された輝尽発光光を光学フィルタ(B−410)を通して光電子増倍管で受光することにより輝尽発光量(PSL)を測定した。この発光量(PSL)を表1に相対値で示す。この輝尽発光量(PSL)は大きい方が好ましいことは勿論である。
【0088】
【表1】
【0089】
[実験結果]
本発明の方法によって製造された実施例の各ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム系蛍光体は、比較例の方法によって製造されたものに比べ、輝尽発光量が大きかった。また、保管状況を適切に管理することで、1ヶ月保管後であっても輝尽発光特性は悪化しなかった。
【0090】
【発明の効果】
本発明の方法に従って製造された希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体は、輝尽発光特性に優れたものとなる。かかる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を用いた放射線像変換パネルにおいても、同様に輝尽発光、消去特性、残像特性、フェーディング特性、そしてX線残光性において優れた特性を示すものとなる。
Claims (4)
- 下記組成式(I):
(Ba1−a,MII a)FX・bMI・cMIII・dA:xLn 組成式(I)
〔式中、MIIは、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属を表し、MIは、Li、Na、K、Rb、Csからなる群より選択される少なくとも一種のアルカリ金属の化合物を表し、MIIIは、Al、Ga、In、Tl、Sc、Y、Cd、Luからなる群より選択される少なくとも一種の三価金属の化合物(但し、Al2O3を除く)を表す。Xは、Cl、Br、Iからなる群より選択される少なくとも一種のハロゲンを表し、Lnは、Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Nd、Er、TmおよびYbからなる群より選択される少なくとも一種の希土類元素を表す。Aは、Al2O3、SiO2、ZrO2からなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物を表す。a、b、c、d、およびxはそれぞれ、0≦a≦0.3、0≦b≦2、0≦c≦2、0≦d≦0.5、0<x≦0.2を表す。〕
で表わされる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法であって、
上記組成式(I)で表される焼成物を、Ba 2+ の濃度が、ほぐし工程における液温で、添加されるBaBr 2 の状態での飽和濃度の1/10以上飽和濃度以下であるBaBr 2 水溶液を用いてほぐし処理を行い、スラリーを得るほぐし工程と、
ほぐし工程で得られたスラリーを湿式分級することにより、スラリー中の一定粒度以上の粒子を除去する湿式分級工程と、
湿式分級工程で得られた、一定粒度以上の粒子が除去されたスラリーを固液分離して、固形物を得る固液分離工程と、
固液分離工程で得られた固形物を乾燥し、希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を得る乾燥工程と、
を有することを特徴とする希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法。 - ほぐし工程において、BaBr 2 水溶液のBa 2+ が、BaBr 2 の状態で添加されたものであることを特徴とする請求項1に記載の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法。
- 得られる希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体が、14面体型であることを特徴とする請求項1または2に記載の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体の製造方法。
- 輝尽性蛍光体を含む蛍光体層を有する放射線像変換パネルであって、輝尽性蛍光体が、請求項1ないし3のいずれか1に記載の製造方法により得られた希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体であることを特徴とする放射線像変換パネル。
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