JP3777700B2 - 希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体及びそれを用いる放射線画像変換パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、及びそれを用いる放射線画像変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号等に記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線像記録再生方法が知られている。
【0003】
この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる。)を利用するもので、被写体を透過した、或いは被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線等の電磁波(励起光と言う。)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光と言う。)として放出させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体或いは被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読み取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0004】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面からも有利である。
【0005】
放射線変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみからなり、輝尽性蛍光体層は通常輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合剤からなるものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜からなる保護膜が設けられる。
【0006】
輝尽性蛍光体としては、波長400〜900nmの範囲にある励起光によって波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号等に記載の希土類元素付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号等に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号に記載の希土類元素付活オキシハライド蛍光体;特開昭58−69281号に記載のセリウム付活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロ硼酸塩蛍光体;特開昭60−217354号に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号に記載のセリウム付活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号に記載のセリウム付活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム付活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78153号に記載の2価のユーロピウム付活複合ハロゲン蛍光体;特開平7−233369号に記載の液相から析出させた14面体希土類金属付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体、等が挙げられ、中でも、沃素を含有する2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属付活ハロゲン化物系蛍光体、沃素を含有する2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体、沃素を含有する希土類元素付活希土類オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物系蛍光体は高輝度の輝尽発光を示す。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、放射線画像変換パネルにおいては、X線照射時の瞬時発光強度が小さく、輝尽発光強度が大きいことがS/N値に優れ、感度、鮮鋭性及び粒状性で評価される放射線再生画像の特性に有利であるが、前記従来の輝尽性蛍光体を用いて放射線画像変換パネルを形成すると、時としてS/N値や感度が低下する問題がある。
【0008】
即ち本発明の目的は、放射線画像変換パネルの感度、鮮鋭性及び粒状性を向上せしめることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、
立方体結晶又は平板結晶で、粉末X線回折において、母体であるバリウム弗化ハロゲン化物の(102)面の回折線強度に対する(004)面の回折線強度が40%以上であり、且つ、該バリウム弗化ハロゲン化物の形成に用いられるバリウム塩が沃化バリウムのみまたは臭化バリウムのみである希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、該希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネル、及び、ユーロピウム付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体であること、
によって達成される。
【0010】
即ち本発明者は、付活剤である希土類元素の蛍光体中での存在量及び存在位置が発光特性に大きく影響を与えると考え、バリウム弗化ハロゲン化物結晶を採用して特定の結晶面比率を制御することにより付活剤の挙動をコントロールできることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
尚、本発明において回折線強度は、日本電子(株)製X線回折装置「JDX−11RA」を用い、40kV、100mA、2θ=20°〜50°、ステップ角度0.04°の測定条件で、CuKα線にて粉末X線回折法で測定したものとする。
【0012】
以下、本発明について項目毎に説明する。
【0013】
《蛍光体の製造》
本発明の希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は好ましくは下記一般式(1)で表され、その製造は、粒子形状の制御が困難な固相法ではなく、該制御の容易な液相法によるのが好ましく、特に次に示す2つの液相合成法が好ましい。尚、付活剤を結晶内に均一に含有させるにも液相法が有利である。
【0014】
一般式(1) Ba1-xM2 xF1-aX1+a:yM1・zLn
〔式中、M2はSr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属を、M1はLi、Na、K、Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属を、LnはCe、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Tm及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を、XはCl、Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲンを、x、y、z及びaはそれぞれ0≦x≦0.5、0≦y≦0.05、0<z≦0.2、−0.5≦a≦0.5を表す。〕
(製造法1)
▲1▼ BaX2とLnのハロゲン化物を含み上記一般式(1)においてxが0でない場合には更にM2のハロゲン化物を、そしてyが0でない場合には更にM1のハロゲン化物を含み、それらが溶解した後BaX2濃度が2N以上、好ましくは2.7N以上の水溶液を調整する工程
▲2▼ 上記水溶液を50℃以上、好ましくは80℃以上の温度に維持しながら、これに濃度5N以上、好ましくは8N以上の無機弗化物(弗化アンモニウム若しくはアルカリ金属の弗化物)の水溶液を添加して希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の前駆体結晶の沈殿物を得る工程
▲3▼ 上記前駆体結晶沈殿物を水溶液から分離する工程、及び
▲4▼ 分離した前駆体結晶沈殿物を焼結を避けながら焼成する工程
を含む製造方法。以下、更に詳細を述べる。
【0015】
最初に、水系溶媒を用いて弗素化合物以外の原料化合物を溶解させる。即ち、BaX2とLnのハロゲン化物、必要に応じてM2のハロゲン化物やM1のハロゲン化物を、BaX2濃度が2N以上となる量の水系媒体中で十分に混合し、溶解させて水溶液を調製する。このとき少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体等を添加してもよい。この水溶液(反応母液)を一定温度に維持する。
【0016】
次いで一定温度に維持され撹拌されている該水溶液に、無機弗化物の水溶液をローラーポンプ等を用いて注入する。この注入は特に激しく撹拌されている領域に行うのが好ましい。この無機弗化物水溶液の注入により、前記一般式(1)で表される希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物蛍光体の前駆体結晶が沈殿する。
【0017】
次に、上記蛍光体の前駆体結晶を濾過、遠心分離等によって溶液から分離し、メタノール等によって充分に洗浄し、乾燥する。
【0018】
乾燥した蛍光体の前駆体結晶にアルミナ微粉末、シリカ微粉末等の焼結防止剤を添加混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。尚、焼成条件を選ぶことによって焼結防止剤を用いないこともできる。
【0019】
次いで蛍光体の前駆体結晶を、石英ボート、アルミナ坩堝、石英坩堝等の耐熱性容器に充填し、電気炉の炉心に入れて焼結を避けながら焼成を行う。焼成温度は800〜1300℃程度、800〜1000℃が好ましい。焼成時間は蛍光体原料混合物の充填量、焼成温度及び炉からの取り出し温度等によって異なるが、一般には1〜12時間が適当である。焼成雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気或いは少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気等の弱還元性雰囲気、或いは微量酸素導入雰囲気を利用できる。
【0020】
焼成過程において結晶内に存在する付活剤の還元が起こり、発光中心が生成する。例えば、母体結晶にバリウム弗化沃化物を用い、付活剤としてEuを添加した場合、結晶内でEu3++e-→Eu2+の還元反応が生じ、このEu2+が発光中心となる。図1及び図2に示す様に、上記の焼成条件にて処理することにより、蛍光体のX線回折強度が変化し付活剤の還元量及び存在位置の最適化がなされ、この輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルの優れた特性が達成できる。即ち、図1及び図2に示す様に、上記条件で焼成した試料は、(102)面に対して(004)面の回折強度が増加し、40%以上となる。このことは、バリウム弗化ハロゲン化物の単位格子のC軸に垂直な面に対して結晶成長することを意味し、この焼成により母体の結晶構造を壊さずに適切な付活剤の還元が可能となる。尚、母体結晶のハロゲンがBr又はClでも同様であり、この焼成によって目的の希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が得られる。
【0021】
(製造法2)
a) ハロゲン化アンモニウムとLnのハロゲン化物を含み、一般式(1)においてxが0でない場合には更にM2のハロゲン化物を、そしてyが0でない場合には更にM1のハロゲン化物を含み、それが溶解した後ハロゲン化アンモニウム濃度が3N以上、好ましくは4N以上の水溶液を調整する工程
b) 上記水溶液を50℃以上、好ましくは80℃以上の温度に維持しながら、これに濃度5N以上、好ましくは8N以上の無機弗化物(弗化アンモニウム若しくはアルカリ金属の弗化物)の水溶液とBaX2の水溶液とを、前者の弗素と後者のBaとの比率を一定に維持しながら連続的若しくは間欠的に添加して希土類付活バリウム弗化沃化物系輝尽性蛍光体の前駆体結晶の沈殿物を得る工程
c) 上記前駆体結晶沈殿物を水溶液から分離する工程、及び
d) 分離した前駆体結晶沈殿物を焼結を避けながら焼成する工程
を含む製造方法。以下、更に詳細を述べる。
【0022】
最初に水系溶媒を用いてBaX2と弗素化合物とを除く原料化合物、そしてハロゲン化アンモニウム(NH4Br、NH4Cl又はNH4I)を溶解させる。即ち、ハロゲン化アンモニウムとLnのハロゲン化物、必要に応じてM2のハロゲン化物やM1のハロゲン化物を、ハロゲン化アンモニウムの濃度が3N以上となる量の水系媒体中で十分に混合し、溶解させて水溶液を調製する。このとき少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体等を添加してもよい。この水溶液(反応母液)を一定温度に維持する。
【0023】
次いで一定温度に維持され撹拌されている該水溶液に、無機弗化物の水溶液とBaX2の水溶液とを同時に、無機弗化物の弗素とBaX2との比率を一定に維持する様に調整しながら連続的に又は間欠的に、をローラーポンプ等を用いて注入する。この注入は特に激しく撹拌されている領域に行うのが好ましい。この様に、蛍光体結晶生成中にBaイオンが過剰にならない様に配慮して反応を進行させることによって、前記一般式(1)で表される希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物蛍光体の前駆体結晶が沈殿する。
【0024】
次に蛍光体の前駆体結晶を製造法1の場合と同様に溶媒から分離し、乾燥し、次いで焼成を行うことによって、目的の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体を得ることができる。
【0025】
上記2つの製造法において、Lnのハロゲン化物の添加時期は問わず、添加開始時に予め反応母液等にあってもよく、また無機弗化物水溶液の添加時、及び無機弗化物水溶液とBaX2水溶液の添加時に同時又は後で添加してもよい。
【0026】
尚、本発明において輝尽性蛍光体粒子は単分散性であることが好ましく、標準偏差を平均粒径で割って100を掛けた変動係数が20%以下、更には15%以下のものが好ましい。ここに、平均粒径は、粒子の顕微鏡写真より無作為に選んだ200個について、球の体積に換算した体積粒子径で求めた平均値とする。
【0027】
《放射線画像変換パネル》
放射線画像変換パネルの支持体としては、各種高分子材料、硝子、金属等が用いられる。特に可撓性のシート或いはウェブに加工できるものが好適であり、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シート、或いは該金属酸化物、金属硫化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。
【0028】
支持体の厚さは材質にもよるが、80〜1000μm程度、更には80〜500μmが取り扱いの点から好ましい。又、支持体表面は滑面でもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。更に、接着性向上のために、輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0029】
輝尽性蛍光体を分散する結合剤としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、アラビアゴム、等の天然高分子物質;ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン、塩化ビニルコポリマー、ポリアクリル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル等の様な合成高分子物質、を挙げることができ、特に好ましいものは、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアクリル(メタ)アクリレート、線状ポリエステルとニトロセルロースの混合物、ニトロセルロースとポリアクリル(メタ)アクリレートの混合物及びポリウレタンとポリビニルブチラールとの混合物である。これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものでもよい。結合剤は一般に輝尽性蛍光体1重量部に対して0.01〜1重量部で用いられるが、感度と鮮鋭性の点からは少ない方が好ましく、塗布の容易さとの兼ね合いから0.03〜0.2重量部で用いるのが好ましい。
【0030】
輝尽性蛍光体層は例えば次の様な方法によって形成する。
【0031】
まず輝尽性蛍光体、必要に応じて黄変防止のための亜燐酸エステル等の化合物及び結合剤を適当な溶剤に添加し、ボールミル、サンドミル、アトライター、3本ロールミル、高速インペラ分散機、Kadyミル、超音波分散機等の分散装置を用いて充分に混合して均一な塗布液を調製する。
【0032】
塗布液の調製に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;トリオール、キシロール等の芳香族化合物;メチレンクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0033】
塗布液には蛍光体の分散性向上のための分散剤、形成される輝尽性蛍光体層での結合剤と蛍光体との結合力を向上させるための可塑剤、等の添加剤を添加してもよい。分散剤としてはフタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤等を挙げることができる。可塑剤としては燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニル等の燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸フタリルブチル等のグリコール酸エステル;そしてトリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールと琥珀酸とのポリエステル等のポリエチレングリコールと脂肪酸−塩酸基とのポリエステル等を挙げることができる。
【0034】
調製した塗布液は、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等通常の塗布手段を用いて均一に塗布し塗膜を形成する。
【0035】
次いで、形成された塗膜を徐々に加熱して乾燥させ、輝尽性蛍光体層とする。輝尽性蛍光体層の厚さは、放射線画像変換パネルに付与する特性、輝尽性蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との量比等によって異なるが、20〜1000μm程度、好ましくは50〜500μmである。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0037】
《放射線画像変換パネルの作製》
実施例1
ユーロピウム付活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体の前駆体を合成するために、3.5NのBaI2水溶液2500mlと0.2NのEuI3水溶液125mlを反応器に入れ、この反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。次いで8N弗化アンモニウム水溶液250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈殿を生成させ、更に2時間保温と撹拌を行い沈殿を熟成させた。
【0038】
沈殿を濾別してメタノールで洗浄した後、真空乾燥させてユーロピウム付活弗化沃化バリウムの結晶を得た。これに、焼成時の焼結による粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を1重量%添加し、ミキサーで充分に撹拌して、結晶表面にアルミナの微粒子を均一に付着させた。これを石英ボートに充填してチューブ炉を用いて窒素ガス雰囲気中、900℃で3時間焼成してユーロピウム付活弗化沃化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0039】
得られた蛍光体粒子を分級して平均粒径5μmとし、該蛍光体342g及びポリエステル樹脂〔東洋紡(株)製、バイロン200〕18gをメチルエチルケトンとトルエン(1:1)の混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25PSの塗布液を調製した。
【0040】
この塗布液をドクターブレードを用いて厚さ200μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて厚さ250μmの蛍光体層を形成した。
【0041】
一方、フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体樹脂〔旭硝子(株)製、ルミフロンLF100〕70g、架橋剤としてイソシアネート〔日本ポリウレタン(株)製、c−3041〕25gをトルエン−イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒に添加し、保護膜形成用塗布液を調製し、前記蛍光体層上にドクターブレードを用いて塗布し、120℃で30分間熱処理をして乾燥、熱硬化させて厚さ10μmの保護膜を設け、放射線画像変換パネルを得た。
【0042】
実施例2
2.4NのBaBr2水溶液2125ml、0.2NのEuBr3水溶液125mlを用いた以外は実施例1と同様にしてユーロピウム付活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得、実施例1と同様にして放射線画像変換パネルを得た。
【0043】
比較例1
焼成を600℃で0.5時間とした以外は実施例1と同様にしてユーロピウム付活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体を調製し、同様に、放射線画像変換パネルを得た。
【0044】
比較例2
427.2gのBaI2・2H2O粉末、175.4gのBaF2粉末及び1.6gのEuI3粉末を乳鉢にて充分混合し、チューブ式電気炉を用いて水素ガス雰囲気中にて、1000℃で4時間加熱溶解し、ユーロピウム付活弗化沃化バリウム蛍光体を得た。
【0045】
得られた蛍光体を粉砕分級し、平均粒径7μmの蛍光体粒子を得た。これを用いて実施例1と同様にして放射線画像変換パネルを作製した。
【0046】
《放射線画像変換パネルの評価》
各蛍光体の回折線強度を測定し、得られた各パネルについては下記の方法で感度、鮮鋭性及び粒状性について評価した。
【0047】
(感度)
放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を照射した後、100mWのHe−Neレーザー(波長633nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(浜松ホトニクス社製光電子倍増管、R1305)で受光してその強度を測定した。
【0048】
(鮮鋭性)
放射線画像変換パネルに鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後、He−Neレーザー(前出)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(前出)で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して記録されているX線画像の変調伝達関数(MTF)を測定し、空間周波数2サイクル/mmの値(%)で評価した。
【0049】
(粒状性)
放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を照射した後、He−Neレーザー(前出)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(前出)で受光して電気信号に変換し、フィルムイメージャ(コニカ(株)製Li−7)を用いて写真フィルム(コニカ(株)製LP670)に記録現像し、得られた画像の粒状性を目視観察して、コニカ(株)製増感紙SPO−250とコニカ(株)製X線写真フィルムSR−Gを使用した従来のX線写真撮影によって得た画像の粒状性と比較して下記の基準で評価した。
【0050】
◎:X線写真撮影によって得た画像よりも良好
○:X線写真撮影によって得た画像と同等
△:X線写真撮影によって得た画像よりもやや粗い
×:X線写真撮影によって得た画像よりも著しく粗い
以下に評価結果を示す。
【0051】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の付活剤の挙動をコントロールして、放射線画像変換パネルの感度、鮮鋭性及び粒状性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】600℃で焼成したBaFI:Eu蛍光体のX線回折パターンを示す図。
【図2】900℃で焼成したBaFI:Eu蛍光体のX線回折パターンを示す図。
Claims (3)
- 立方体結晶又は平板結晶で、粉末X線回折において、母体であるバリウム弗化ハロゲン化物の(102)面の回折線強度に対する(004)面の回折線強度が40%以上であり、且つ、該バリウム弗化ハロゲン化物の形成に用いられるバリウム塩が沃化バリウムのみまたは臭化バリウムのみであることを特徴とする希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
- 希土類がユーロピウムであることを特徴とする請求項1に記載の希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
- 請求項1又は2に記載の希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を含有する輝尽性蛍光体層を有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03772597A JP3777700B2 (ja) | 1997-02-21 | 1997-02-21 | 希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体及びそれを用いる放射線画像変換パネル |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP03772597A JP3777700B2 (ja) | 1997-02-21 | 1997-02-21 | 希土類付活バリウム弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体及びそれを用いる放射線画像変換パネル |
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