JP4165029B2 - 希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は希土類付活アルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体、該輝尽性蛍光体の製造方法、及び前記輝尽性蛍光体を用いた放射線画像変換パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる有効な診断手段として、特開昭55−12145号等に記載の輝尽性蛍光体を用いる放射線画像記録再生方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線画像変換パネル(蓄積性蛍光体シートとも呼ばれる)を利用するもので、被写体を透過した、又は被検体から発せられた放射線を輝尽性蛍光体に吸収させ、可視光線、紫外線などの電磁波(励起光と言う)で時系列的に輝尽性蛍光体を励起して、蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光と言う)として放射させ、この蛍光を光電的に読みとって電気信号を得、得られた電気信号に基づいて被写体又は被検体の放射線画像を可視画像として再生するものである。読取り後の変換パネルは、残存画像の消去が行われ、次の撮影に供される。
【0003】
この方法によれば、放射線写真フィルムと増感紙とを組み合わせて用いる放射線写真法に比して、遙かに少ない被爆線量で情報量の豊富な放射線画像が得られる利点がある。又、放射線写真法では撮影毎にフィルムを消費するのに対して、放射線画像変換パネルは繰り返し使用されるので、資源保護や経済効率の面からも有利である。
【0004】
放射線画像変換パネルは、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層、又は自己支持性の輝尽性蛍光体層のみから成り、輝尽性蛍光体層は通常輝尽性蛍光体とこれを分散支持する結合材から成るものと、蒸着法や焼結法によって形成される輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものがある。又、該凝集体の間隙に高分子物質が含浸されているものも知られている。更に、輝尽性蛍光体層の支持体側とは反対側の表面には、通常、ポリマーフィルムや無機物の蒸着膜から成る保護膜が設けられる。
【0005】
輝尽性蛍光体としては、通常、400〜900nmの範囲にある励起光によって、波長300〜500nmの範囲にある輝尽発光を示すものが一般的に利用され、特開昭55−12145号、同55−160078号、同56−74175号、同56−116777号、同57−23673号、同57−23675号、同58−206678号、同59−27289号、同59−27980号、同59−56479号、同59−56480号等に記載の希土類元素付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭59−75200号、同60−84381号、同60−106752号、同60−166379号、同60−221483号、同60−228592号、同60−228593号、同61−23679号、同61−120882号、同61−120883号、同61−120885号、同61−235486号、同61−235487号等に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体;特開昭55−12144号に記載の希土類元素付活オキシハライド蛍光体;特開昭58−69281号に記載のセリウム付活3価金属オキシハライド蛍光体;特開昭60−70484号に記載のビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体;特開昭60−141783号、同60−157100号等に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−157099号に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属ハロ硼酸塩蛍光体;特開昭60−217354号に記載の2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属水素化ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−21173号、同61−21182号等に記載のセリウム付活希土類複合ハロゲン化物蛍光体;特開昭61−40390号に記載のセリウム付活希土類ハロ燐酸塩蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム付活ハロゲン化セリウム・ルビジウム蛍光体;特開昭60−78151号に記載の2価のユーロピウム付活複合ハロゲン化物蛍光体等が挙げられ、中でも、沃素を含有する2価のユーロピウム付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物蛍光体、沃素を含有する希土類元素付活オキシハロゲン化物蛍光体及び沃素を含有するビスマス付活アルカリ金属ハロゲン化物蛍光体等が知られているが、依然、高輝度の輝尽性蛍光体が要求されている。
【0006】
又、輝尽性蛍光体を利用する放射線画像変換方法の利用が進むにつれて、得られる放射線画像の画質の向上、例えば鮮鋭度の向上や粒状性の向上が更に求められるようになって来た。
【0007】
先に記載の輝尽性蛍光体の製造方法は、固相法あるいは焼結法と呼ばれる方法で、焼成後の粉砕が必須であり、感度、画像性能に影響する粒子形状の制御が困難であるという問題を有する。放射線画像の画質向上の手段の中で、輝尽性蛍光体の微粒子化と微粒子化された輝尽性蛍光体の粒径を揃えること、即ち、粒径分布を狭くすることは有効である。
【0008】
特開平7−233369号、同9−291278号等で開示されている液相からの輝尽性蛍光体の製造法は、蛍光体原料溶液の濃度を調整して微粒子状の輝尽性蛍光体前駆体を得る方法であり、粒径分布の揃った輝尽性蛍光体粉末の製造法として有効である。又、放射線被爆量の低減という観点から、希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の内、沃素含有量が高いものが好ましいことが知られている。これは、臭素に比べて沃素がX線吸収率が高いためである。
【0009】
上記の様に液相で製造されるアルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体は、輝度、粒状性の点で有利であるが、液相にて前駆体結晶を得る場合、以下の様な問題を持っている。即ち、特開平10−88125号、同9−291278号の記載に見られるように、
1)沃化バリウムを水あるいは有機溶媒に溶解し、この液を攪拌しながら無機弗化物の溶液を添加する、
2)弗化アンモニウムを水に溶解し、この液をを攪拌しながら沃化バリウムの溶液を添加する、
方法が有効である。しかし、1)の方法では、溶液中に過剰の沃化バリウムを存在させておく必要があり、そのため投入した沃化バリウムと固液分離後に得られる弗化沃化バリウムの化学量論比は0.4前後と小さい値であることが多い。つまり、投入した沃化バリウムに対し、アルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体の収率は40%程度であることが多い。
【0010】
又、2)の方法でも、無機弗化物に対して過剰の沃化バリウムを必要とし、収率が低い。このように、弗化沃化バリウムの液相合成は収率が低く、生産性が悪いという問題を有している。収率を上げるために母液中の沃化バリウム濃度を下げると粒子の肥大化を招き、これは画質特性上好ましくない。
【0011】
希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、特にアルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体の収率を上げる試みとしては、特開平11−29324号に、反応母液の濃度と弗素源を添加した後、濃縮することにより基本組成式BaFI:xLn(Ln:Ce、Pr、Sm、Eu、Gd、
Tb、Tm及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素、xは0<x≦0.1の数値を表す)で示される希土類元素含有角状弗化沃化バリウム結晶を得る方法が開示されている。
【0012】
しかし、本発明者らが追試を行った結果、記載通りBaFI角状結晶は生成したものの、自然蒸発による濃縮を用いるため著しく生産性が低く、工業的には現実的ではないことが判った。又、得られる角状結晶も粒径が大きく、かつ粒径分布が広いため画像特性が悪く、実用に供することが出来ないことが判った。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、まず、粒径分布の揃った希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を生産性良く得ることであり、更に微粒子化され粒径分布の揃った希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を高い生産性で得ることであり、前記希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を用いた高感度・高画質の放射線画像変換パネルを提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の課題は、下記一般式(I)で示される酸素導入希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の液相での製造方法において、反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から乾燥気体を通気させる方法により溶媒を除去することにより輝尽性蛍光体前駆体を得る、希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法、下記一般式(I)で示される酸素導入希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の液相での製造方法において、反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から溶媒を除去することにより輝尽性蛍光体前駆体を得る希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法であって、溶媒除去の作業中、溶液が濡れ壁を形成することを特徴とする希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法、下記一般式(I)で示される酸素導入希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の液相での製造方法において、予めアルカリ金属のハロゲン塩が添加されている反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から溶媒を除去することにより輝尽性蛍光体前駆体を得ることを特徴とする、希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法によって達成される。
【0015】
一般式(I)
Ba(1-x)M2(x)FBr(y)I(1-y):aM1,bLn,cO
式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2はBe,Mg,Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,
Dy,Ho,Nd,Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦0.3,0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0≦c≦0.1である。
【0016】
尚、上記溶媒の除去後の質量が除去前の質量に対して0.97以下であることが好ましい。反応溶媒を除去する方法は、自然乾燥に加えて、除去するために反応液を加熱して行う方法、また、これに他の溶媒を除去する手段を併用することが好ましく、反応溶媒を除去するために反応容器内を減圧に保つ過程を経ること及び/又は乾燥気体を通気させる方法及び/又は溶媒除去の作業中に溶液が濡れ壁を形成すること等が好ましい。反応母液に予めアルカリ金属のハロゲン塩が0.1〜4mol/Lの濃度で含有されていることは好ましい。
【0017】
上記の製造方法によって得られた希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、並びに該希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を含む蛍光体層を有する放射線画像変換パネルも、本発明の課題を達成する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法の代表的な態様を以下に詳しく説明する。
【0019】
液相法による輝尽性蛍光体前駆体製造については、特開平10−140148号に記載された前駆体製造方法、特開平10−147778号に記載された前駆体製造装置が好ましく利用できる。ここで輝尽性蛍光体前駆体とは、前記一般式(I)の物質が400℃以上の高温を経ていない状態を示し、輝尽性蛍光体前駆体は、輝尽発光性や瞬時発光性を殆ど示さない。本発明では、液相で一般式(I)で示される輝尽性蛍光体の前駆体を合成する方法において、該液相は少なくともバリウム成分及び無機フッ化物が存在していることが好ましく、溶媒の除去の開始時期が該液相中に少なくともバリウム成分と無機フッ化物成分を存在させた直後から行うことが好ましい。バリウム成分と無機フッ化物の反応母液中への添加の順序は特に限定されないが、無機フッ化物の添加が最後であることが好ましい。また、一般式(I)で示される輝尽性蛍光体を構成する他の成分の原材料の投入順序は限定がなく、液相中に添加しても良いし、焼成時に添加しても良い。
【0020】
本発明では以下の液相合成法により前駆体を得ることが好ましい。
前記一般式(I)で示される希土類付活アルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体の製造は、粒子形状の制御が難しい固相法ではなく、粒径の制御が容易である液相法により行うことが好ましい。特に、下記の液相合成法により輝尽性蛍光体を得ることが好ましい。
【0021】
(製造法)
BaI2とLnのハロゲン化物を含み、前記一般式(I)のxが0でない場合には、更にM2のハロゲン化物を、yが0でない場合はBaBr2を、そしてaが0でない場合、M1のハロゲン化物を含み、それらが溶解した後、バリウム濃度が3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上で、上限として好ましくは5.0mol/L以下の溶液を調製する工程;
上記溶液を50℃以上、好ましくは100℃以上の温度に維持しながら、これに濃度5mol/L以上、好ましくは8mol/L以上、更に好ましくは12mol/L以上、上限として好ましくは15mol/L以下の無機弗化物(弗化アンモニウム又はアルカリ金属の弗化物)の溶液を添加して、希土類付活アルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体前駆体結晶の沈澱物を得る工程;
上記無機弗化物を添加しつつ、又は添加終了後、反応液から溶媒を除去する工程;
上記前駆体結晶沈澱物を反応液から分離する工程;
そして、分離した前駆体結晶沈澱物を焼結を避けながら焼成する工程を含む製造方法である。
【0022】
尚、本発明に係る粒子(前駆体結晶)は、平均粒径が1〜10μmで、かつ単分散性のものが好ましく、平均粒径が1〜5μm、平均粒径の分布(%)が20%以下のものがより好ましく、特に平均粒径が1〜3μm、平均粒径の分布が15%以下のものが良い。
【0023】
本発明における平均粒径とは、粒子(結晶)の電子顕微鏡写真より無作為に粒子200個を選び、球換算の体積粒子径で平均を求めたものである。
【0024】
以下に輝尽性蛍光体の製造法の詳細について説明する。
【0025】
(前駆体結晶の沈澱物の作製、輝尽性蛍光体の作製)
最初に、水系媒体中を用いて弗素化合物以外の原料化合物を溶解させる。即ち、BaI2とLnのハロゲン化物、そして必要により更にM2のハロゲン化物、そして更にM1のハロゲン化物を水系媒体中に入れ、充分に混合し、溶解させて、それらが溶解した水溶液を調製する。ただし、BaI2濃度が3.3mol/L以上、好ましくは3.5mol/L以上となるように、BaI2濃度と水系溶媒との量比を調整しておく。この時、バリウム濃度が低いと、所望の組成の前駆体が得られないか、得られても粒子が肥大化する。よって、バリウム濃度は適切に選択する必要があり、本発明者らの検討の結果、3.3mol/L以上で微細な前駆体粒子を形成することができることが判った。この時、所望により少量の酸、アンモニア、アルコール、水溶性高分子ポリマー、水不溶性金属酸化物微粒子粉体などを添加してもよい。BaI2の溶解度が著しく低下しない範囲で低級アルコール(メタノール、エタノール等)を適当量添加しておくのも好ましい態様である。この水溶液(反応母液)は50℃に、好ましくは80℃以上に、上限として好ましくは100℃以下に維持される。
【0026】
次に、この50℃以上に維持されて、無機フッ化物水溶液を添加し反応させるが、反応させているときの反応液の温度は50℃以上、さらには80℃以上に保たれていることが好ましい。添加は、撹拌されている水溶液に、無機弗化物(弗化アンモニウム、アルカリ金属の弗化物など)の水溶液をポンプ付きのパイプ等を用いて注入する。この注入は、撹拌が特に激しく実施されている領域部分に行うのが好ましい。この無機弗化物水溶液の反応母液への注入によって、前記一般式(I)に該当する希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体前駆体結晶が沈澱する。
【0027】
次に反応液から溶媒を除去する。本発明の反応母液から溶媒を除去するとは、自然乾燥で溶媒を蒸発させるプロセスに加えて、自然乾燥による蒸発速度を超える速度で溶媒を除去するプロセスを人為的に付与することにより溶媒を除去することを指す。溶媒を除去する時期は特に問わないが、無機フッ化物溶液の添加開始直後から沈殿物(前駆体)を分離するまでの間に行うことが好ましい。ここで添加開始直後とは、添加中及び添加終了のいずれをも意味する。
【0028】
溶媒除去は、1回又は複数回に分けて行っても良いし、連続的に行っても良い。例えば、1)無機フッ化物溶液の添加終了後、溶媒除去を行い、反応母液を放置する、2)無機フッ化物溶液の添加終了後、第1回目の溶媒除去を行い、反応母液を放置後、第2回目の溶媒除去を行い、再び反応母液を放置する、3)無機フッ化物溶液添加終了後、沈殿物を分離するまでの間、連続的に溶媒除去を行う、などの工程をおこなっても良い。
【0029】
溶媒除去の時期は、無機フッ化物溶液の添加終了後から除去を行うことが好ましく、該有機溶液添加終了後直ちに除去を開始することが更に好ましい。
【0030】
ここで、本発明に係る溶媒とは、当業者で認知されている定義と同義であり、溶質を溶かすために用いた成分である。例えば、本発明では溶質は少なくとも一般式(I)で表される輝尽性蛍光体を得るために用いられた原材料や中間体、触媒などが基本的に該当する。本発明の溶媒除去工程は、単一の溶媒を除去するだけでなく、複数の種類の溶媒が母液に含まれる場合は、それら全てが溶媒除去の対象となるが、除去の対象は限定されない。
【0031】
溶媒の除去量は、除去前と除去後の質量比で3%以上が好ましい。これ以下では結晶が好ましい組成に成りきらない場合がある。そのため除去量は3%以上が好ましく、5%以上がより好ましい。又、除去し過ぎても、反応溶液の粘度が過剰に上昇するなど、ハンドリングの面で不都合が生じる場合がある。そのため、溶媒の除去量は、除去前と除去後の質量比で50%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、更には20%以下がより好ましい。ここで、溶媒除去後とは、全ての溶媒除去工程を終えた後を指す。
【0032】
溶媒の除去に要する時間は、生産性に大きく影響するばかりでなく、粒子の形状、粒径分布も溶媒の除去方法に影響されるので、除去方法は適切に選択する必要がある。溶媒の除去は単位面積当たり2.0Kg/m2・hr以上20.0Kg/m2・hr以下の速度で行うことが好ましく、更には3.0Kg/m2・hr以上10.0Kg/m2・hr以下の速度がより好ましい。ここで、単位面積とは、反応母液の大気とが接触している面積を指す。一般的に、溶媒の除去に際しては、溶液を加熱し、溶媒を蒸発する方法が選択される。本発明においても、この方法は有用である。溶媒の除去により、意図した組成の前駆体を得ることができる。ここで、溶液を加熱しとは、溶媒除去工程の反応母液温度を溶媒除去工程時にも維持する又はそれ以上の温度に上げる事を指す。反応母液を50℃以上、80℃以上に保つように加熱することが好ましい。
【0033】
更に、生産性を上げるため、又、粒子形状を適切に保つため、他の溶媒除去方法を併用することが好ましい。併用する溶媒の除去方法は特に問わない。本発明では生産性の面から、以下の除去方法を選択することが好ましい。
【0034】
1.乾燥気体を通気
反応容器を密閉型とし、少なくとも2箇所以上の気体が通過できる孔を設け、そこから乾燥気体を通気する。気体の種類は任意に選ぶことができる。安全性の面から、空気、窒素が好ましい。通気する気体の飽和水蒸気量に依存して溶媒が気体に同伴、除去される。反応容器の空隙部分に通気する方法の他、液相中に気体を気泡として噴出させ、気泡中に溶媒を吸収させる方法も、又、有効である。
【0035】
2.減圧
よく知られるように、減圧にすることで溶媒の蒸気圧は低下する。蒸気圧降下により効率的に溶媒を除去することができる。減圧度としては溶媒の種類により適宜選択することができる。溶媒が水の場合、86,450Pa以下が好ましい。
【0036】
3.液膜
蒸発面積を拡大することにより溶媒の除去を効率的に行うことができる。本発明のように、一定容積の反応容器を用いて加熱、攪拌し、反応を行わせる場合、加熱方法としては、加熱手段を液体中に浸漬するか、容器の外側に加熱手段を装着する方法が一般的である。該方法によると、伝熱面積は液体と加熱手段が接触する部分に限定され、溶媒除去に伴い伝熱面積が減少し、よって、溶媒除去に要する時間が長くなる。これを防ぐため、ポンプ又は攪拌機を用いて反応容器の壁面に散布し、伝熱面積を増大させる方法が有効である。
【0037】
このように反応容器壁面に液体を散布し、液膜を形成する方法は“濡れ壁”として知られている。濡れ壁の形成方法としては、ポンプを用いる方法の他、特開平6−335627号、同11−235522号に記載の攪拌機を用いる方法が挙げられる。
【0038】
これらの方法は単独のみならず、組み合わせて用いても構わない。液膜を形成する方法と容器内を減圧にする方法の組合せ、液膜を形成する方法と乾燥気体を通気する方法の組合せ等が有効である。特に前者が好ましく、特開平6−335627号に記載の方法が好ましく用いられる。
【0039】
次に、上記の蛍光体前駆体結晶を、濾過、遠心分離などにより溶液から分離し、メタノール等で充分に洗浄し、乾燥する。この乾燥蛍光体前駆体結晶に、アルミナ微粉末、シリカ微粉末などの焼結防止剤を添加、混合し、結晶表面に焼結防止剤微粉末を均一に付着させる。尚、焼成条件を選ぶことにより焼結防止剤の添加を省略することも可能である。
【0040】
次に、蛍光体前駆体の結晶を、石英ポート、アルミナ坩堝、石英坩堝などの耐熱性容器に充填し、電気炉の炉心に入れて焼結を避けながら焼成を行う。焼成温度は400〜1,300℃の範囲が適当であり、500〜1,000℃の範囲が好ましい。焼成時間は、蛍光体原料混合物の充填量、焼成温度及び炉からの取出し温度などによっても異なるが、一般には0.5〜12時間が適当である。
【0041】
焼成雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気、あるいは少量の水素ガスを含有する窒素ガス雰囲気、一酸化炭素を含有する二酸化炭素雰囲気などの弱還元性雰囲気、あるいは微量酸素導入雰囲気が利用される。焼成方法については、特開2000−8034号に記載の方法が好ましく用いられる。
【0042】
上記の焼成によって目的の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が得られる。
【0043】
(放射線画像変換パネルの作製)
本発明の放射線画像変換パネルに用いられる支持体としては、各種高分子材料、ガラス、金属等が用いられる。特に情報記録材料としての取扱い上、可撓性のあるシート又はウェブに加工できるものが好適であり、この点から言えばセルロースアセテート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、トリアセテート、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム;アルミニウム、鉄、銅、クロム等の金属シート又は該金属酸化物の被覆層を有する金属シート等が好ましい。
【0044】
これら支持体の層厚は、用いる支持体の材質等によって異なるが、一般的には10〜1000μmであり、取扱い上の点から、更に好ましくは10〜500μmである。
【0045】
これら支持体の表面は滑面であってもよいし、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的でマット面としてもよい。更に、輝尽性蛍光体層との接着性を向上させる目的で、輝尽性蛍光体層が設けられる面に下引層を設けてもよい。
【0046】
輝尽性蛍光体層に用いられる結合剤の例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、又はアラビアゴムのような天然高分子物質;ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステル等のような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができる。これらの中で特に好ましいものは、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ニトロセルロースと線状ポリエステルとの混合物、ニトロセルロースとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物及びポリウレタンとポリビニルブチラールとの混合物である。尚、これらの結合剤は、架橋剤によって架橋されたものでもよい。
【0047】
輝尽性蛍光体層は、例えば次のような方法により下塗層上に形成することができる。
【0048】
まず、沃素含有輝尽性蛍光体、黄変防止のための亜燐酸エステル等の化合物及び結合剤を適当な溶剤に添加し、これらを充分に混合して結合剤溶液中に蛍光体粒子及び該化合物の粒子が均一に分散した塗布液を調製する。
【0049】
本発明に用いられる結着剤としては、例えばゼラチンの如き蛋白質、デキストランの如きポリサッカライド又はアラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニルデン・塩化ビニルコポリマー、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール等のような、通常、層構成に用いられる造膜性の結着剤が使用される。
【0050】
一般に、結着剤は輝尽性蛍光体1質量部に対して0.01〜1質量部の範囲で使用される。しかしながら、得られる放射線画像変換パネルの感度と鮮鋭性の点では結着剤は少ない方が好ましく、塗布の容易さとの兼合いから0.03〜0.2質量部の範囲がより好ましい。
【0051】
塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比(ただし、結合剤全部がエポキシ基含有化合物である場合には、該化合物と蛍光体との比率に等しい)は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、蛍光体の種類、エポキシ基含有化合物の添加量などによって異なるが、一般には、結合塗布液調製用の溶剤例として、メタノール、エノタール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライド等の塩素原子含有炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;トルエン;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0052】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製に用いられる溶剤例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、ブタノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル;トリオール、キシロール等の芳香族化合物;メチレンクロライド、エチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0053】
尚、塗布液には、該塗布液中における蛍光体の分散性を向上させるための分散剤、又、形成後の輝尽性蛍光体層中における結合剤と蛍光体との結合力を向上させるための可塑剤など、種々の添加剤が混合されてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。又、可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキシエチル等のフタル酸エステル;グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステル等のポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステル等を挙げることができる。
【0054】
上記のように調製した塗布液を、下塗層の表面に均一に塗布することにより塗布液の塗膜を形成する。この塗布操作は通常の塗布手段、例えばドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等を用いて行うことができる。次いで、形成された塗膜を徐々に加熱することにより乾燥し、下塗層上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。
【0055】
輝尽性蛍光体層用塗布液の調製は、ボールミル、サンドミル、アトライター、三本ロールミル、高速インペラー分散機、Kadyミル、及び超音波分散機などの分散装置を用いて行われる。調製された塗布液をドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布し、乾燥することにより輝尽性蛍光体層が形成される。前記塗布液を保護層上に塗布・乾燥した後に輝尽性蛍光体層と支持体とを接着してもよい。
【0056】
放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚は、目的とする放射線画像変換パネルの特性、輝尽性蛍光体の種類、結着剤と輝尽性蛍光体との混合比等によって異なるが、10〜1,000μmの範囲から選ばれるのが好ましく、10〜500μmの範囲から選ばれるのがより好ましい。
【0057】
以上、ユーロピウム付活弗化沃化バリウム等の輝尽性蛍光体の例について主に説明したが、ユーロピウム付活弗化臭化バリウム、その他の前記一般式(I)で表される輝尽性蛍光体についても、上記を参照して製造することが出来る。
【0058】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を例証する。
【0059】
実施例1
ユーロピウム付活弗化沃化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するため、二つの孔を有する耐圧容器にBaI2水溶液(4mol/L濃度)2500mlとEuI3水溶液(0.2mol/L濃度)26.5mlを入れた。更に、水溶液中に沃化カリウム992gを添加した。
【0060】
この反応器中の反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。弗化アンモニウム水溶液(10mol/L濃度)600mlを、反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後、乾燥空気を10L/minの割合で20分間通気した。通気前後の溶液の質量比は0.94であった。反応容器を密封しそのままの温度で90分間攪拌した。90分攪拌した後、濾過しエタノール2,000mlで洗浄した。
【0061】
回収した前駆体の質量を計測し、投入したBa量から求めた理論収量と比較することで収率を求めた。又、得られた沈殿物についてX線回折測定(Cu−Kα線を使用)を行った。次いで、沈殿物の平均粒径も測定した。
【0062】
実施例2
弗化アンモニウムの添加終了後、循環アスピレーターを用いて反応容器内の圧力を74,480Paとし、溶媒の減圧濃縮を行った。15分間濃縮を行った。濃縮前後の反応溶液の質量比は0.92であった。
【0063】
これ以外は実施例1と同様の操作を行い、沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0064】
実施例3
弗化アンモニウムの添加終了後、ポンプを用いて反応容器壁面に反応液を散布し、液膜を形成させつつ溶媒を蒸発させた。この操作を15分間行った。濃縮前後の反応溶液の質量比は0.94であった。
【0065】
これ以外は実施例1と同様の操作を行い、沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0066】
比較例1
ユーロピウム付活弗化沃化バリウムの輝尽性蛍光体前駆体を合成するために、BaI2水溶液(4mol/L濃度)2,500mlとEuI3水溶液(0.2mol/L濃度)26.5mlを反応器に入れた。更に、水溶液中に沃化カリウム332gを添加した。この反応母液を撹拌しながら83℃で保温した。弗化アンモニウム水溶液(10mol/L濃度)250mlを反応母液中にローラーポンプを用いて注入し、沈澱物を生成させた。注入終了後、そのままの温度で90分間攪拌した。90分攪拌した後、濾過しエタノール2,000mlで洗浄した。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0067】
比較例2
反応母液に注入する弗化アンモニウム水溶液の量を600mlとした以外は比較例1と同様にして沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0068】
比較例3
反応母液に注入する弗化アンモニウム水溶液の量を600mlとし、弗化アンモニウム溶液を注入した後、15時間、自然蒸発により溶液を濃縮した。濃縮前後の反応溶液の質量比は0.89であった。
【0069】
これ以外は比較例1と同様にして沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0070】
実施例4
反応母液に添加する沃化カリウムの量を500gとした以外は実施例1と同様にして沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0071】
実施例5
反応母液に沃化カリウムを添加しない以外は実施例1と同様にして沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0072】
実施例6
弗化アンモニウムを添加した後、反応容器内の圧力を74,480Paとし、ポンプを用いて反応容器壁面に反応液を散布し、液膜を形成させつつ溶媒を除去した。この操作を7分間行った。濃縮前後の反応液の質量比は0.93であった。
【0073】
これ以外は実施例1と同様の操作を行い、沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0074】
これらの結果を表1に纏めて示す。
【0075】
X線回折の結果から、2θ=29.4°のピークを副生成物であるBaF2と同定した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から明らかなように、反応液から溶媒を除去することにより、粒子の肥大化を防ぎつつ高収率で、ユーロピウム付活弗化沃化バリウム輝尽性蛍光体前駆体を得ることができる。粒子の肥大化を防ぐ効果はカリウムイオンの存在により顕著である。
【0078】
実施例7
反応母液に沃化セシウムを添加し、反応母液に添加する弗化アンモニウム水溶液の量を700mlとし、21,280Paの減圧で30分溶媒を除去した以外は実施例2と同様にして沈殿物を得た。尚、溶媒の除去前後の反応液の質量比は0.90であった。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0079】
実施例8
反応母液に沃化セシウムを添加し、反応母液に添加する弗化アンモニウム水溶液の量を800mlとし、21,280Paの減圧で35分溶媒を除去した以外は実施例2と同様にして沈殿物を得た。尚、溶媒の除去前後の反応液の質量比は0.88であった。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0080】
比較例4
反応母液に沃化セシウムを添加し、反応母液の濃度を4mol/Lから3.2mol/Lに変え、添加する弗化アンモニウム溶液の量を480mlに変えた以外は実施例2と同様にして沈殿物を得た。尚、溶媒の除去前後の質量比は0.98であった。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0081】
比較例5
反応母液の濃度を4mol/Lから3.2mol/Lに変え、添加する弗化アンモニウム溶液の量を200mlに変えた以外は比較例1と同様にして沈殿物を得た。実施例1と同様に収率を計算し、沈殿物のX線回折、平均粒径測定を行った。
【0082】
実施例7〜8、比較例4,5の結果を表2に纏めて示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2から明らかなように、実施例7及び8では、微細な輝尽性蛍光体前駆体を高収率で得ることが可能である。
【0085】
(輝尽性蛍光体の製造)
上記実施例1〜8及び比較例1及び3〜5について、保温燒結により粒子形状の変化、粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を1質量%添加し、ミキサーで充分撹拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを10Lの炉芯容積を有するバッチ式ロータリーキルンの石英製炉芯管に充填し、窒素/水素/酸素(93/5/2容量%)の混合ガスを10L/minの流量で20分間流通させて雰囲気を置換した。十分に炉芯内雰囲気を置換した後、上記混合ガスの流量を2L/minに減じ、2rpmの速度で炉心管を回転させながら10℃/minの昇温速度で830℃まで加熱した。試料温度が830℃に到達した後、試料温度を830℃に保ちながら窒素/水素(93/5容量%)の混合ガスを10L/minの流量で20分間流通させ、雰囲気を置換した。その後、窒素/水素(93/5容量%)の混合ガスの流量を2L/minに減じ、90分間保持した。窒素/水素(93/5容量%)の混合ガスの流量を2L/minに保持したまま、10℃/minの降温速度で25℃まで冷却した後、雰囲気を大気に戻し、生成した酸素導入ユーロピウム付活弗化沃化バリウム蛍光体を取り出した。
【0086】
次に放射線画像変換パネルの製造例を示す。
【0087】
蛍光体層形成材料として、上記で得たユーロピウム付活弗化沃化バリウム蛍光体427g、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン社製:デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン、トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25〜30PSの塗布液を調製した。この塗布液を、ドクターブレードを用いて下塗付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗布した後、100℃で15分間乾燥させて、蛍光体層を形成した。
【0088】
次に、保護膜形成材料として、弗素系樹脂(フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体,旭硝子社製:ルミフロンLF100)70g、架橋剤(イソシアナート,住友バイエルウレタン社製:デスモジュールZ4370)25g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂5g、及びシリコーン樹脂微粉末(信越化学工業社製:KMP−590,粒子径1〜2μm)10gをトルエン、i−プロピルアルコール(1:1)混合溶媒に添加し、塗布液を作った。
【0089】
この塗布液を、上記のように予め形成しておいた蛍光体層上にドクターブレードを用いて塗布し、次に120℃で30分間熱処理して熱硬化させると共に乾燥し、厚さ10μmの保護膜を設けた。このようにして、輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを得た。
【0090】
(放射線画像変換パネルの評価)
各放射線画像変換パネルについて、以下の評価を行った。
【0091】
《感度》
放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザー光(633nm)で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を受光器(分光感度S−5の光電子像倍管)で受光して強度を測定した。表3において、感度は相対値で示される。
【0092】
《鮮鋭度》
放射線画像変換パネルに、鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を感度測定と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをアナログ/デジタル変換して磁気テープに記録し、磁気テープをコンピューターで分析して、磁気テープに記録されているX線画像の変調伝達関数(MTF)を調べた。表3には、空間周波数2サイクル/mmにおけるMTF値(%)が示される。
【0093】
《粒状性》
放射線画像変換パネルに管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザー光で操作して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記と同じ受光器で受光して電気信号に変換し、これをフィルムスキャナーによって通常の写真フィルムに記録し、得られた画像の粒状性を目視で3段階評価した。
【0094】
尚、表3において、粒状性は増感紙(コニカ社製:SRO−250)とX線写真フィルム(コニカ社製:SR−G)を使用した、従来、実用のX線写真撮影によって得た画像の粒状性と比較して示した。
【0095】
○印は、前記の増感紙とフィルムを使用したX線写真撮影によって得た画像と同等の粒状性を意味し、◎印は、それよりも良好な粒状性を意味する。又、△印はX線写真撮影によって得た画像よりもやや荒い粒状性を意味し、×印は、それよりも著しく荒い粒状性を意味する。
【0096】
各放射線画像変換パネルの評価結果を併せて表3に示す。
【0097】
【表3】
【0098】
本発明に係る放射線画像変換パネルは、感度、鮮鋭度、粒状性の何れにおい
も優れている。
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、輝度、鮮鋭性、粒状性に優れた放射線画像変換パネルに必要な希土類付活アルカリ土類金属弗化沃化物系輝尽性蛍光体を、高い生産性で得ることができる。
Claims (6)
- 下記一般式(I)で示される酸素導入希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の液相での製造方法において、反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から乾燥気体を通気させる方法により溶媒を除去することにより輝尽性蛍光体前駆体を得ることを特徴とする、希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
一般式(I)
Ba(1-x)M2(x)FBr(y)I(1-y):aM1,bLn,cO 〔式中、M1はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M2はBe,Mg,Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,
Dy,Ho,Nd,Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦0.3,0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0≦c≦0.1である。〕 - 下記一般式(I)で示される酸素導入希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の液相での製造方法において、反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から溶媒を除去することにより輝尽性蛍光体前駆体を得る希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法であって、溶媒除去の作業中、溶液が濡れ壁を形成することを特徴とする希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
一般式(I)
Ba (1-x) M 2(x) FBr (y) I (1-y) :aM 1 ,bLn,cO 〔式中、M 1 はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M 2 はBe,Mg,Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,
Dy,Ho,Nd,Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦0.3,0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0≦c≦0.1である。〕 - 下記一般式(I)で示される酸素導入希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の液相での製造方法において、予めアルカリ金属のハロゲン塩が添加されている反応母液中のバリウム濃度が3.3mol/L以上の溶液から溶媒を除去することにより輝尽性蛍光体前駆体を得ることを特徴とする、希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
一般式(I)
Ba (1-x) M 2(x) FBr (y) I (1-y) :aM 1 ,bLn,cO 〔式中、M 1 はLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属、M 2 はBe,Mg,Sr及びCaから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属、LnはCe,Pr,Sm,Eu,Gd,Tb,Tm,
Dy,Ho,Nd,Er及びYbから選ばれる少なくとも1種の希土類元素を表し、x,y,a,b及びcは、それぞれ0≦x≦0.3,0≦y≦0.3,0≦a≦0.05,0<b≦0.2,0≦c≦0.1である。〕 - 反応液の質量が(溶媒除去後/溶媒除去前)≦0.97であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
- 反応溶媒を除去するため反応液を加熱し、かつ他の溶媒を除去する手段を併用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
- 反応溶媒を除去するために反応容器内を減圧に保つ過程を経ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法。
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