JP2005114721A - 放射線画像変換パネルおよび放射線画像変換パネルの製造方法 - Google Patents

放射線画像変換パネルおよび放射線画像変換パネルの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高感度化、高鮮鋭化に加えて、剥離耐久性および耐衝撃性を向上した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】放射線画像変換パネルに、成長速度の最も速い方向に垂直な結晶格子面について粉末法のX線回折装置によりX線入射角10°から70°までの範囲で測定したときのX線回折パターンにおいて第2ピーク強度I2と第1ピーク強度I1の比I2/I1が0.3
≦I2/I1≦1となる輝尽性蛍光体層を少なくとも一層設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、気相堆積法により形成された輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルおよびその製造方法に関する。
従来、輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルを用いて放射線画像変換方法により、被写体からデジタル化した放射線画像を得ることが行われている。放射線画像変換方法とは、被写体を透過させた放射線を輝尽性蛍光体層に照射することによって、被写体各部の放射線透過密度に対応する放射線エネルギーを輝尽性蛍光体に蓄積させた後、励起光によって輝尽性蛍光体に蓄積された放射線エネルギーを輝尽発光させ、この輝尽発光光の強弱を電気信号に変換し、この電気信号を、感光材料などの画像記録材料やCRT(Cathode Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)などの画像表示装置を介して可視像とする方法である。
ところで、CsBrを母体とする輝尽性蛍光体を用いて蒸着法で輝尽性蛍光体層を支持体上に形成することにより、極めて感度の高い放射線画像変換パネルを得ることができることが知られている。
また、微細な柱状結晶から輝尽性蛍光体層を構成することにより、高鮮鋭性を実現できることが知られている。微細な柱状結晶は光誘導効果を有することから、このような輝尽性蛍光体層では輝尽励起光を柱状結晶内で繰り返し反射させながら、輝尽励起光の散乱を防止しながら輝尽励起光を柱状結晶の底まで到達させることができ、これにより輝尽発光による画像の鮮鋭性を増大させることができる。
特に、柱状結晶化する際に、輝尽性蛍光体層において結晶内部の結晶成長方向を揃えることが効果的であることが知られている(例えば、「特許文献1」参照。)。
特開平5−249298号公報
しかしながら、特にCsBrなどのハロゲン化アルカリの母体にEu等を賦活したAX系蛍光体は熱膨張係数が大きく、結晶性を高めると支持体から剥離しやすくなる傾向があり、耐衝撃性も低下する。このため、輝尽性蛍光体層には高感度、高鮮鋭性に加え、剥離耐久性、耐衝撃性の向上が求められていた。
本発明の課題は、高感度化、高鮮鋭化に加えて、剥離耐久性および耐衝撃性を向上した輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルおよびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、少なくとも一層の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、前記輝尽性蛍光体層は、X線回折装置によりX線入射角10°から70°までの範囲で測定したときのX線回折パターンにおいて第2ピーク強度I2と第1ピーク強度I1の比I2/I1が0.3≦I2/I1≦1であることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の放射線画像変換パネルにおいて、第1ピークが示す結晶格子面が(x 0 0)(x=1,2,3のいずれか)であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の放射線像変換パネルにおいて、前記輝尽性蛍光体層は、下記式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする。
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA…(1)
〔式(1)中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1
種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu
及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、
La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。〕
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルを製造する放射線画像変換パネルの製造方法であって、真空容器と、この真空容器内に設けられて支持体を回転支持する支持体回転機構と、この支持体回転機構に支持されながら回転させられた前記支持体に対して蒸発させた輝尽性蛍光体を堆積させる蒸発源とを備える蒸着装置を使用して、気相堆積法により支持体上に前記輝尽性蛍光体の蒸着膜からなる輝尽性蛍光体層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、放射線画像変換パネルの高感度化、高鮮鋭化に加えて、輝尽性蛍光体層の剥離耐久性および耐衝撃性を向上することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1に本発明に係る放射線画像変換パネル10を示す。図1(a)に示すように、放射線画像変換パネル10は、支持体11と、該支持体11上に気相堆積法により輝尽性蛍光体の柱状結晶により形成された輝尽性蛍光体層12を少なくとも一層備えたものであり、必要に応じて輝尽性蛍光体層12を保護する保護層(図示略)を設けてもよい。
以下、各層毎に説明する。
支持体11は、従来の放射線画像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができるが、気相堆積法により輝尽性蛍光体層12を形成する観点から石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート及び炭素繊維強化樹脂シートが好ましい。
支持体11には、その表面を平滑な面とするために樹脂層を有することが好ましい。樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、パラフィン、グラファイト等の化合物を含有することが好ましく、その膜厚は、約5μm〜50μmであることが好ましい。この樹脂層は、支持体の表面に設けても裏面に設けても両面に設けても良い。
支持体11上に樹脂層を設ける手段としては、貼合法、塗設法等の手段が挙げられる。
貼合法による場合、加熱、加圧ローラを用いて行い、加熱条件としては約80〜150℃が好ましく、加圧条件としては4.90×10〜2.94×102N/cm、搬送速度
は0.1〜2.0m/秒が好ましい。
本発明において輝尽性蛍光体層12は、成長速度の最も速い方向(図中に示す矢印A)に垂直な結晶格子面について粉末法のX線回折装置によりX線入射角10°から70°までの範囲で測定したときのX線回折パターンにおいて第2ピーク強度I2と第1ピーク強度I1の比I2/I1が0.3≦I2/I1≦1となるように結晶格子面の方向が揃っていること
を特徴としている。
ここで、X線入射角とは、輝尽性蛍光体層12が形成される際の成長速度の最も早い方向に対して垂直な平面とX線入射方向とが成す鋭角θをいう。
第1ピーク強度I1とは、X線源(図示略)からX線を所定のX線入射角θにより輝尽
性蛍光体層12に入射させ、X線ディテクタ(図示略)に到達するX線の量を測定して求められるX線回折パターンにおいて、最大強度を示すピークの強度をいう。同様に第2ピーク強度I2は、上記X線回折パターンにおける第2番目の強度を示すピーク強度をいう。このとき、(100)面と(200)面のように結晶格子面として同義の場合も別のピークとして扱う。
なお、X線は、例えば、CuKα(1.54Å)を用いることができる。
また、輝尽性蛍光体層12が形成される際の成長速度の最も早い方向は、通常は図1(a)に示すように、支持体11に対して垂直な方向となるが、図1(b)に示すように支持体11に対して垂直な方向から角度φだけ傾いた方向となる場合がある。本発明においては、いずれの場合(図1(a)、(b))をも含むものとする。
輝尽性蛍光体層12において、第1ピーク強度I1と第2ピーク強度I2との比I2/I1を0.3以上とすると結晶格子面の方向が揃っていないために結晶同士が接着しやすく、輝尽性蛍光体層12の支持体11に対する剥離耐久性および輝尽性蛍光体層12の耐衝撃性が向上する。I2/I1が0.3より小さくなると輝尽性蛍光体の結晶性がよくなり過ぎるため膜剥がれが起きやすくなり、機械的強度も低くなる。
また、本発明においては、感度および鮮鋭性を高める観点から、第1ピークが示す結晶格子面が(x 0 0)(x=1,2,3のいずれか)であることが好ましい。図2に、本発明に係るX線回析パターンを示す。
この様な輝尽性蛍光体層12は、下記式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することが好ましい。
1X・aM2X′2・bM3X″3:eA…(1)
〔式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のア
ルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びN
iの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc、Y、La、
Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。〕
上記式(1)で表される輝尽性蛍光体において、M1は、Li、Na、K、Rb及びC
s等の各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表すが、中でもRb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、さらに好ましくはCs原子である。
2は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNi等の各原子から選
ばれる少なくとも1種の二価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Be、Mg、Ca、Sr及びBa等の各原子から選ばれる二価の金属原子である。
3は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、
Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びIn等の各原子から選ばれる少なくとも1種の三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びIn等の各原子から選ばれる三価の金属原子である。
Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。中でも好ましくはEu原子である。
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X’及びX”はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子を表すが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましく、Br原子が更に好ましい。
また、上記式(1)において、b値は0≦b<0.5であるが、好ましくは、0≦b<10―2である。
上記式(1)で表される輝尽性蛍光体は、例えば下記(a)〜(c)に示す蛍光体原料を用いて、以下に述べる方法により製造される。
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種もしくは2種以上の化合物が用いられる。
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2
CaI2、SrF2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCI2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、N
iCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の化
合物が用いられる。
(c)前記式(1)において、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMg等の各原子から選ばれる金属原子を有する化合物が用いられる。
製造する輝尽性蛍光体の組成式に応じて、上記(a)〜(c)の中から用いる蛍光体原料を適宜選択し、各原料を上記式(2)のa,b,eの範囲を満たすように秤量し、純水にて溶解する。この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合しても良い。
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
次に、得られた原料混合物を石英ルツボあるいはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気あるいは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
なお、前記の焼成条件で一度焼成した後、焼成物を電気炉から取り出して粉砕し、しかる後、焼成物粉末を再び耐熱性容器に充填して電気炉に入れ、前記と同じ焼成条件で再焼成を行えば輝尽性蛍光体の発光輝度を更に高めることができ、また、焼成物を焼成温度より室温に冷却する際、焼成物を電気炉から取り出して空気中で放冷することによっても所望の輝尽性蛍光体を得ることができるが、焼成時と同じ、弱還元性雰囲気もしくは中性雰囲気のままで冷却しても良い。
また、焼成物を電気炉内で加熱部より冷却部へ移動させて、弱還元性雰囲気、中性雰囲気もしくは弱酸化性雰囲気で急冷することにより、得られた輝尽性蛍光体から発せられる輝尽光の輝度をより一層高めることができ好ましい。
本発明において輝尽性蛍光体層12は、上記の輝尽性蛍光体を支持体11の一面へ気相堆積法により所望の膜厚に柱状結晶化させることにより形成することができる。
気相堆積法としては、真空蒸着法(以下、「蒸着法」という)、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等、如何なる方法であってもよいが、特に蒸着法を好ましく用いることができる。
蒸着法を適用するに当たり、例えば、図3に示す蒸着装置1を好適に用いることができる。
図3に示すように、蒸着装置1は、真空容器2と、真空容器2内に設けられて輝尽性蛍光体を加熱して蒸発または昇華させ、その蒸気を支持体11に蒸着させる蒸発源3と、支持体11を保持する支持体ホルダ4と、支持体ホルダ4を蒸発源3に対して回転させる支持体回転機構5と、真空容器2内の排気及び大気の導入を行う真空ポンプ6等を備えている。本蒸着装置1において、支持体回転機構5により支持体ホルダ4を回転させながら、支持体11上に蒸発源3からの蒸気を蒸着させて本発明の輝尽性蛍光体層12を形成することができる。
蒸発源3は、輝尽性蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いたアルミナ製のるつぼから構成しても良いし、ボートや、高融点金属からなるヒータから構成しても良い。また、輝尽性蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でも良いが、本発明では、比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から抵抗加熱法が好ましい。また、蒸発源3は分子源エピタキシャル法による分子線源でも良い。
さらに、支持体11と蒸発源3との間に、蒸発源3から支持体11に至る空間を遮断するシャッタ(図示略)を設けても良い。シャッタを設けることにより輝尽性蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階で蒸発し、支持体11に付着するのを防ぐことができる。
支持体ホルダ4には、支持体11を加熱する加熱ヒータ(図示略)を備えることが好ましい。支持体11を加熱することによって、支持体11表面の吸着物を離脱・除去し、支持体11表面と輝尽性蛍光体との間に不純物層の発生を防いだり、密着性の強化や輝尽性蛍光体層の膜質調整を行うことができる。
支持体回転機構5は、例えば、支持体ホルダ4を支持するとともに支持体ホルダ4を回転させる回転軸5aと、真空容器2外に配置されて回転軸5aの駆動源となるモータ(図示略)等から構成されている。
このように構成された蒸着装置1を使用して、以下の手順により、支持体11に輝尽性蛍光体層12を形成することができる。
まず、支持体ホルダ4に支持体11を取り付ける。
次いで、真空容器2内を真空排気し、所望の真空度に調整する。その後、支持体回転機構5により支持体ホルダ4を蒸発源3に対して回転させ、蒸着可能な真空度に真空容器2が達したら、加熱された蒸発源3から輝尽性蛍光体を蒸発させて、支持体11表面に輝尽性蛍光体を所望の厚さに成長させる。この場合において、支持体11と、蒸発源3との間隔は、100mm〜1500mmに設置するのが好ましい。
なお、前記蒸着工程では複数回に分けて輝尽性蛍光体層12を形成することも可能である。さらに、前記蒸着工程では複数の抵抗加熱器あるいはエレクトロンビームを用いて共蒸着し、支持体11上で目的とする輝尽性蛍光体を合成すると同時に輝尽性蛍光体層12を形成することも可能である。
また、蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて、被蒸着体(支持体11、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱しても良い。
さらに、蒸着終了後、輝尽性蛍光体層12を加熱処理しても良い。また、蒸着法においては必要に応じてO2、H2等のガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行っても良い。
形成する輝尽性蛍光体層12の膜厚は、放射線画像変換パネル10の使用目的によって、また輝尽性蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50μm〜2000μmであり、好ましくは50μm〜1000μmであり、さらに好ましくは100μm〜800μmである。
上記の気相堆積法による輝尽性蛍光体層12の形成にあたり、輝尽性蛍光体層12が形成される支持体11の温度は、室温(rt)〜300℃に設定することが好ましく、さらに好ましくは50〜200℃である。好ましい真空度Pとしては、1.0E−3Pa<P≦5.0E−1Pa、より好ましくは3.0E−3Pa≦P≦3.0E−1Paである。
なお、蒸着法においては、蒸着装置1の真空度、支持体11の温度、蒸着速度、支持体11面に対する蒸発源3の蒸気流の方向等を適宜調整することにより、上記第1ピーク強度I1に対する第2ピーク強度I2の比I2/I1の値を制御することが可能である。
以上のようにして輝尽性蛍光体層12を形成した後、必要に応じて、輝尽性蛍光体層12の支持体11とは反対の側の面に、物理的にあるいは化学的に輝尽性蛍光体層12を保護するための保護層を設けてもよい。保護層は、保護層用の塗布液を輝尽性蛍光体層12の表面に直接塗布して形成もよいし、また、予め別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層12に接着してもよい。
保護層の材料としては、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化−塩化エチレン、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体などの通常の保護層用材料が用いられる。他に透明なガラス基板を保護層として用いることもできる。
また、保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2、SiN、Al23等の無機物質を積層して形成してもよい。
これらの保護層の層厚は0.1μm〜2000μmが好ましい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
(放射線画像変換パネルの作製)
(1)実施例1の作製
炭素繊維強化樹脂シートからなる支持体11の片面に輝尽性蛍光体(CsBr:0.0002Eu)を、図3に示す蒸着装置1を使用して蒸着させ輝尽性蛍光体層12を形成した。
まず、上記輝尽性蛍光体(CsBr:0.0002Eu)を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダ4に支持体11を設置し、支持体11と蒸発源3との間隔を500mmに調節した。続いて蒸着装置1内を一旦排気し、Arガスを導入して5.0E−3Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体11を回転しながら支持体11の温度を100℃に保持した。
次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して輝尽性蛍光体を蒸着し、輝尽性蛍光体層12の膜厚が500μmとなったところで蒸着を終了させた。
次いで、乾燥空気内で輝尽性蛍光体層12を保護層袋に入れ、輝尽性蛍光体層12が密封された構造の本発明に係る実施例1としての放射線画像変換パネル10を得た。
(2)実施例2〜4の作製
次に、表1に示すように、蒸着装置1内の真空度を1.0E−2、5.0E−2、1.0E−1とした以外は実施例1と同様にして放射線画像変換パネルを製造し、本発明に係る実施例2〜4とした。
(3)比較例1および2の作製
次に、表1に示すように、蒸着装置1内の真空度を5.0E−4、1.0E−3とした以外は実施例1と同様にして放射線画像変換パネルを製造し、本発明に係る実施例2〜4とした。
〔評価〕
以上の様にして得られた実施例1〜4および比較例1、2のそれぞれについて、X線回折パターンを測定し、第1ピーク強度I1に対する第2ピーク強度I2の比I1/I2を求め、鮮鋭性、膜剥がれの度合い、耐衝撃性について評価した。
(1)回折パターンの測定
実施例1〜4および比較例1,2において得られた放射線画像変換パネルにおいて、それぞれ成長速度の最も速い速度に垂直な結晶格子面について粉末法のX線回折装置「日本電子製JDX−11RA」によりX線入射角10°から70°までの範囲で測定したときのX線回折パターンにおける第1ピーク強度I1、第2ピーク強度I2からI1/I2を求めた。結果を表1に示す。なお、実施例1〜4および比較例1,2の第1ピークが示す結晶格子面はいずれも(200)面であった。
(2)鮮鋭性
実施例1〜4および比較例1,2において得られた放射線画像変換パネルにそれぞれCTFチャートを貼付けた後、管電圧80kVP-P のX線を10 mR(管球からパネルまでの距離:1.5 m)照射し、半導体レーザ光(発振波長:780nm 、ビーム径: 100μm) で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光として読取り、光検出器 (光電子増倍管) で光電変換して画像信号を得た。この信号値により、画像の変調伝達関数 (MTF)を調べ、放射線画像の鮮鋭性を、比較例1で得られた放射線画像変換パネルの場合を 100とする相対値で示した。なお、MTFは、空間周波数が1サイクル/mmの時の値である。結果を表1に示す。
(3)膜剥がれの度合い
実施例1〜4および比較例1,2において得られた放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜剥がれの様子をそれぞれ目視評価した。結果を表1に示す。
なお、表1では、膜剥がれの度合いを下記の基準に従って示した。
○:全く膜剥がれをおこしていない。
△:膜剥がれをおこしかけている。
×:膜剥がれをおこしている。
(4)耐衝撃性
実施例1〜4および比較例1,2において得られた放射線画像変換パネルに対して、500gの鉄球を20cmの高さから落下させた後、目視評価した。さらに、その後各放射線画像変換パネルに、管電圧80kVpのX線を照射した後、パネルをHe−Neレーザ光(633nm)で走査して励起し、蛍光体層から放射される輝尽発光を上記記載の受光器で受光して電気信号に変換し、これを画像再生装置によって画像として再生し、出力装置よりプリントアウトし、得られたプリント画像を、目視にて耐衝撃性の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、表1では、耐衝撃性の目視評価を下記の基準に従って示した。
◎:ひび割れがなく、また、均一な画像である。
○:ひび割れがなく、画質的に殆ど気にならない程度である。
△:ひび割れが見られ、画欠が確認されるが、実用上許容できるレベル。
×:ひび割れが見られ、明らかな画欠が認められ、実用上問題が発生するレベル。
Figure 2005114721
表1に示すように、放射線画像変換パネルを作製する際の蒸着装置1内の真空度が高くなるにつれて、第1ピーク強度I1に対する第2ピーク強度I2の比I2/I1の値は小さくなり、輝尽性蛍光体層の結晶性がよくなることが分かる。上記I2/I1の値が0.3よりも小さくなると、膜剥がれが起きやすく、耐衝撃性も低くなることが分かる。一方、上記I2/I1の値が高くなるにつれて膜剥がれが起きにくく、耐衝撃性も高くなることが分かる。また、比較例1,2に対して実施例1〜4の放射線画像変換パネルの鮮鋭性は若干高く、本発明に係る放射線画像変換パネルは、高感度化、高鮮鋭化に加えて、輝尽性蛍光体層の剥離耐久性および耐衝撃性を向上することができる。
本発明に係る放射線画像変換パネルの一例の概略構成を示す断面図(a),(b)である。 本発明に係るX線回析パターンである。 蒸着装置の一例の概略構成を示す断面図である。
符号の説明
1 蒸着装置
2 真空容器
3 蒸発源
4 支持体ホルダ
5 支持体回転機構
6 真空ポンプ
10 放射線画像変換パネル
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層

Claims (4)

  1. 少なくとも一層の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルにおいて、
    前記輝尽性蛍光体層は、X線回折装置によりX線入射角10°から70°までの範囲で測定したときのX線回折パターンにおいて第2ピーク強度I2と第1ピーク強度I1の比I2/I1が0.3≦I2/I1≦1であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
  2. 請求項1に記載の放射線画像変換パネルにおいて、
    第1ピークが示す結晶格子面が(x 0 0)(x=1,2,3のいずれか)であることを特徴とする放射線画像変換パネル。
  3. 請求項1または2に記載の放射線像変換パネルにおいて、
    前記輝尽性蛍光体層は、下記式(1)で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
    1X・aM2X′2・bM3X″3:eA…(1)
    〔但し、式(1)中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsの各原子から選ばれる少なく
    とも1種のアルカリ金属原子であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd
    、Cu及びNiの各原子から選ばれる少なくとも1種の二価金属原子であり、M3はSc
    、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInの各原子から選ばれる少なくとも1種の三価金属原子であり、X、X′、X″はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子であり、AはEu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子であり、また、a、b、eはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<e<1.0の範囲の数値を表す。〕
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネルを製造する放射線画像変換パネルの製造方法であって、
    真空容器と、この真空容器内に設けられて支持体を回転支持する支持体回転機構と、この支持体回転機構に支持されながら回転させられた前記支持体に対して蒸発させた輝尽性蛍光体を堆積させる蒸発源とを備える蒸着装置を使用して、気相堆積法により支持体上に前記輝尽性蛍光体の蒸着膜からなる輝尽性蛍光体層を形成することを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
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