JP3707753B2 - 14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体および放射線像変換パネル - Google Patents

14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体および放射線像変換パネル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な14面体型の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、そしてその輝尽性蛍光体を用いた放射線像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる方法として、たとえば特開昭55−12145号公報に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線像記録再生方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線を該パネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、そののちに輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、該輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得、次いで得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。読み取りを終えた該パネルは、残存する画像の消去が行なわれた後、次の撮影のために備えられる。すなわち、放射線像変換パネルは繰り返し使用することができる。
【0003】
上記の放射線像記録再生方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。さらに、従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線像変換方法では放射線像変換パネルをくり返し使用するので、資源保護、経済効率の面からも有利である。
【0004】
輝尽性蛍光体は、放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体であるが、実用上では、波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す蛍光体が一般的に利用される。従来より放射線像変換パネルに用いられてきた輝尽性蛍光体の例としては、希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体を挙げることができる。
【0005】
放射線像記録再生方法に用いられる放射線像変換パネルは、基本構造として、支持体とその表面に設けられた輝尽性蛍光体層とからなるものである。ただし、蛍光体層が自己支持性である場合には必ずしも支持体を必要としない。輝尽性蛍光体層は、通常は輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる。ただし、輝尽性蛍光体層としては、蒸着法や焼結法によって形成される結合剤を含まないで輝尽性蛍光体の凝集体のみから構成されるものが知られている。また、輝尽性蛍光体の凝集体の間隙に高分子物質が含浸されている輝尽性蛍光体層を持つ放射線像変換パネルも知られている。これらのいずれの蛍光体層でも、輝尽性蛍光体はX線などの放射線を吸収したのち励起光の照射を受けると輝尽発光を示す性質を有するものであるから、被写体を透過したあるいは被検体から発せられた放射線は、その放射線量に比例して放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層に吸収され、パネルには被写体あるいは被検体の放射線像が放射線エネルギーの蓄積像として形成される。この蓄積像は、上記励起光を照射することにより輝尽発光光として放出させることができ、この輝尽発光光を光電的に読み取って電気信号に変換することにより放射線エネルギーの蓄積像を画像化することが可能となる。
【0006】
なお、輝尽性蛍光体層の表面(支持体に面していない側の表面)には通常、ポリマーフィルムあるいは無機物の蒸着膜などからなる保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0007】
前記の希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、感度が優れ、また放射線像変換パネルとして使用した場合に鮮鋭度の高い放射線再生画像をもたらすため、実用上において優れた輝尽性蛍光体ということができる。しかしながら、放射線像記録再生方法の実用化が進むにつれて、更に高性能の輝尽性蛍光体への要望が高まっている。
【0008】
特開平7−233369号公報は、従来用いられている希土類付活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体が板状粒子からなっていることに注目して、その問題点を明らかにし、その解決として、特定の基本組成式を有し、14面体型形状にある希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体と、その輝尽性蛍光体を放射線像変換パネルに利用することを提案している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、放射線像記録再生方法に利用した場合において、上記の特開平7−233369号公報に具体的に記載されている14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体に比べて、輝尽発光、消去特性、残像特性、フェーディング特性、そしてX線残光性などの実用的な性能が更に優れている14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基本組成式(I):
Ba1-x Cax FBr1-yy :aEu,bK,cCs …(I)
[但し、x、y、a、b、およびcは、それぞれ、0.001≦x≦0.03、0.10≦y≦0.20、0.001≦a≦0.01、0<b≦0.0003、そして0<c≦0.0001の範囲にある数値である。]
で表わされる14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、およびそれを含む放射線像変換パネルにある。
なお、本明細書中に記載した蛍光体組成における上記のx、y、a、b、cなどの係数は、得られた蛍光体を分析して求めた数値である。蛍光体製造時の焼成工程の前後で、組成の変化が生じるため、蛍光体製造時に用いた各原料の各成分の比と出来上がった蛍光体の各成分の比は若干異なる。
【0011】
なお、上記の基本組成式(I)の輝尽性蛍光体は、その輝尽性蛍光体としての基本的な特性を変えない限り、所望により、リチウムなどの他のアルカリ金属、ストロンチウムなどの他のアルカリ土類金属、もしくはそれら以外の元素を含んでいてもよい。
【0012】
本発明はまた、基本組成式(II):
Ba1-x Cax FBr1-yy :aEu,bK,cLi …(II)
[但し、x、y、a、b、およびcは、それぞれ、0.001≦x≦0.03、y=0、0.001≦a≦0.01、0.00001≦b≦0.001、そして0<c≦0.01の範囲にある数値である。]
で表わされる14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体、およびそれを含む放射線像変換パネルにもある。
なお、上記基本組成式(II)の輝尽性蛍光体は、その輝尽性蛍光体としての基本的な特性を変えない限り、所望により、セシウムなどの他のアルカリ金属、ストロンチウムなどの他のアルカリ土類金属、もしくはそれら以外の元素を含んでいてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、バリウム、カルシウム、ユーロピウム、カリウム、セシウム、リチウムなどの各種金属のハロゲン化物を利用し、特開平7−233369号公報に記載の方法に準じる方法を利用して製造することができる。
【0014】
本発明の14面体型の希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、正六面体と正八面体との中間多面体であり、通常は、アスペクト比は1.0〜5.0の範囲にあり、その形状は、上記の特開平7−733369号公報に写真で示されたものと同様である。
【0015】
本発明の放射線像変換パネルは、その輝尽性蛍光体層に、前記の各基本組成式で表わされる14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を含んでおり、その輝尽性蛍光体層は通常、輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなるのものである。蛍光体層中には更に、他の輝尽性蛍光体および/または着色剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0016】
次に、蛍光体層が輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる場合を例にとり、本発明の放射線像変換パネルを製造する方法を説明する。
【0017】
蛍光体層は、次のような公知の方法により支持体上に形成することができる。
まず、輝尽性蛍光体と結合剤とを溶剤に加え、これを充分に混合して、結合剤溶液中に輝尽性蛍光体が均一に分散した塗布液を調製する。塗布液における結合剤と輝尽性蛍光体との混合比は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類などによって異なるが、一般には結合剤と蛍光体との混合比は、1:1乃至1:100(重量比)の範囲から選ばれ、そして特に1:8乃至1:40(重量比)の範囲から選ぶのが好ましい。
上記のようにして調製された蛍光体と結合剤とを含有する塗布液を、次に、支持体の表面に均一に塗布することにより塗膜を形成する。この塗布操作は、通常の塗布手段、たとえば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーターなどを用いることにより行なうことができる。
【0018】
支持体としては、従来の放射線像変換パネルの支持体として公知の材料から任意に選ぶことができる。公知の放射線像変換パネルにおいて、支持体と蛍光体層の結合を強化するため、あるいは放射線像変換パネルとしての感度もしくは画質(鮮鋭度、粒状性)を向上させるために、蛍光体層が設けられる側の支持体表面にゼラチンなどの高分子物質を塗布して接着性付与層としたり、あるいは二酸化チタンなどの光反射性物質からなる光反射層、もしくはカーボンブラックなどの光吸収性物質からなる光吸収層などを設けることが知られている。本発明において用いられる支持体についても、これらの各種の層を設けることができ、それらの構成は所望の放射線像変換パネルの目的、用途などに応じて任意に選択することができる。さらに特開昭58−200200号公報に記載されているように、得られる画像の鮮鋭度を向上させる目的で、支持体の蛍光体層側の表面(支持体の蛍光体層側の表面に接着性付与層、光反射層または光吸収層などが設けられている場合には、その表面を意味する)には微小凹凸が形成されていてもよい。
【0019】
上記のようにして支持体上に塗膜を形成したのち塗膜を乾燥して、支持体上への輝尽性蛍光体層の形成を完了する。蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なるが、通常は20μm乃至1mmとする。ただし、この層厚は50乃至500μmとするのが好ましい。なお、輝尽性蛍光体層は、必ずしも上記のように支持体上に塗布液を直接塗布して形成する必要はなく、たとえば、別に、ガラス板、金属板、プラスチックシートなどのシート上に塗布液を塗布し乾燥することにより蛍光体層を形成したのち、これを、支持体上に押圧するか、あるいは接着剤を用いるなどして支持体と蛍光体層とを接合してもよい。
【0020】
前述のように、通常は蛍光体層の上に保護膜が付設される。保護膜としては、セルロース誘導体やポリメチルメタクリレートなどのような透明な有機高分子物質を適当な溶媒に溶解して調製した溶液を蛍光体層の上に塗布することで形成されたもの、あるいはポリエチレンテレフタレートなどの有機高分子フィルムや透明なガラス板などの保護膜形成用シートを別に形成して蛍光体層の表面に適当な接着剤を用いて設けたもの、あるいは無機化合物を蒸着などによって蛍光体層上に成膜したものなどが用いられる。また、有機溶媒可溶性のフッ素系樹脂の塗布膜により形成され、パーフルオロオレフィン樹脂粉末もしくはシリコーン樹脂粉末を分散、含有させた保護膜であってもよい。
【0021】
なお、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、本発明の放射線像変換パネルを構成する上記各層の少なくとも一つの層が励起光を吸収し、輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色されていてもよく、独立した着色中間層を設けてもよい(特公昭54−23400号公報参照)。
【0022】
上記の方法により、支持体上に、前記基本組成式(I)もしくは(II)で表わされる14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体とこれを分散状態で含有支持する結合剤とからなる蛍光体層が付設されてなる本発明の放射線像変換パネルを製造することができる。
【0023】
【実施例】
[実施例1]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
1)1150mLのBaBr2 水溶液(2.5モル/L)、36mLのEuBr3 水溶液(0.2モル/L)、2.97gのKBr、3.40gのCaBr2 ・2H2 O、および1812mLの水を容積4000mLの反応容器に入れた。この反応容器中の反応母液(BaBr2 濃度:0.96モル/L)を60℃に保温し、直径60mmのスクリュー型撹拌羽根を500rpmで回転させて、反応母液を撹拌した。
288mLのNH4 F水溶液(5モル/mL)を、撹拌下に保温している上記の反応母液中にローラーポンプを用いて4.8mL/分の送液速度で注入し、沈殿物を生成させた。注入の完了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行なった。次に沈殿物を濾別し、メタノール2Lで洗浄した。次いで、洗浄した沈殿物を取り出し、120℃で4時間真空乾燥させて、320gの蛍光体前駆体結晶(以下、BFB結晶という)を得た。得られた結晶を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その大部分が14面体型の結晶であった。次に、この結晶を光回折型粒子サイズ分布測定器(堀場製作所株式会社製:LA−500)で測定したところ、平均結晶サイズは6.5μmであることが確認された。
【0024】
2)2850mLのBaI2 水溶液(4.0モル/L)、90mLのEuI3 水溶液(0.2モル/L)、および60mLの水を容積4000mLの反応容器に入れた。この反応容器中の反応母液(BaI2 濃度:3.80モル/L)を60℃に保温し、直径60mmのスクリュー型撹拌羽根を500rpmで回転させて、反応母液を撹拌した。
720mLのHF水溶液(5モル/mL)を、撹拌下に保温している上記の反応母液中にローラーポンプを用いて12mL/分の送液速度で注入し、沈殿物を生成させた。注入の完了後も保温と撹拌とを2時間続けて沈殿物の熟成を行なった。次に沈殿物を濾別し、イソプロパノール2Lで洗浄した。次いで、洗浄した沈殿物を取り出し、120℃で4時間真空乾燥させて、1000gの蛍光体前駆体結晶(以下、BFI結晶という)を得た。得られた結晶を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その大部分が14面体型の結晶であった。次に、この結晶を光回折型粒子サイズ分布測定器で測定したところ、平均結晶サイズは6.5μmであることが確認された。
【0025】
3)上記のBFB結晶を165g、そしてBFI結晶を35gとり、これに、CsBrを0.10g、そして焼成時の焼結による粒子形状の変化や粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を1.0g添加し、ミキサーで充分に撹拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを100g取って石英ボートに充填し、チューブ炉を用い、窒素ガス雰囲気中、820℃で3時間焼成して標記の組成式で表わされるユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。得られた蛍光体粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その大部分が原料結晶と同じく14面体の形状にあった。
【0026】
[実施例2]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.0002K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のKBr添加量を8.91gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0027】
[実施例3]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu, 0.001K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のKBr添加量を29.7gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0028】
[実施例4]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 Kの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際にCsBrを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0029】
[実施例5]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K0.00001 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のCsBr添加量を0.05gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0030】
[実施例6]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K0.0002Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のCsBr添加量を0.40gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0031】
[実施例7]Ba0.999 Ca0.001 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のCaBr2 ・2H2 O添加量を0.34gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0032】
[実施例8]Ba0.970 Ca0.030 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のCaBr2 ・2H2 O添加量を10.20gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0033】
[実施例9]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.900.10: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のBFB結晶とBFI結晶の使用量をそれぞれ、174gと26gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0034】
[実施例10]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.700.30: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のBFB結晶とBFI結晶の使用量をそれぞれ、174gと26gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0035】
[実施例11]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のアルミナの超微粒子粉体の使用量を0.6gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0036】
[実施例12]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のアルミナの超微粒子粉体の使用量を2.0gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0037】
[実施例13]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15:0.0001Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.004モル/Lに変え、工程2)のBFI結晶の製造の際に使用するEuI3 水溶液の濃度を0.004モル/Lに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0038】
[実施例14]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15:0.010 Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.4モル/Lに変え、工程2)のBFI結晶の製造の際に使用するEuI3 水溶液の濃度を0.4モル/Lに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0039】
[比較例1]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際にKBrを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0040】
[比較例2]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.002 K,
0.00002Csの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際のKBrの添加量を59.4gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0041】
[比較例3]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K
0.002Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のCsBr添加量を4.0gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0042】
[比較例4]BaFBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶製造の際にCaBr2 ・2H2 Oを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0043】
[比較例5]Ba0.950 Ca0.050 FBr0.850.15: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のCaBr2 ・2H2 O添加量を17.0gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0044】
[比較例6]Ba0.993 Ca0.007 FBr: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際にBFB結晶を200g使用し、BFI結晶を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0045】
[比較例7]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.600.40: 0.004Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程3)の蛍光体前駆体結晶の焼成の際のBFB結晶とBFI結晶の使用量を各々116gと84gに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0046】
[比較例8]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15:0.00005 Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.002モル/Lに変え、工程2)のBFI結晶の製造の際に使用するEuI3 水溶液の濃度を0.002モル/Lに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0047】
[比較例9]Ba0.993 Ca0.007 FBr0.850.15: 0.020Eu,0.00006 K,0.00002 Csの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.8モル/Lに変え、工程2)のBFI結晶の製造の際に使用するEuI3 水溶液の濃度を0.8モル/Lに変えた以外は、実施例1と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0048】
[14面体型ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体の特性評価]
上記実施例と比較例のそれぞれで得られた14面体型ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体の各種特性を下記の方法で評価した。
1)輝尽発光量
所定量の蛍光体に80kVpのX線を200mR照射して10秒後に、半導体レーザ光(波長680nm)を4.8J/m2 照射して蛍光体を励起し、その蛍光体から放射された輝尽発光光を光学フィルタ(B−410)を通して光電子増倍管で受光することにより輝尽発光量(PSL)を測定した。この発光量(PSL)を第1表に相対値で示す。この発光量(PSL)は大きい方が好ましいことは勿論である。
【0049】
2)消去特性
上記1)の方法で測定した輝尽発光量(PSL)を初期PSLとし、その測定対象とした蛍光体に次に、白色蛍光灯の光をシャープカット光学フィルタ(SC−46)を通して200万Lux・秒照射して消去操作を行なった。この消去操作を施した蛍光体について、X線照射を行なわない以外は上記1)の方法と同じ方法で再度、輝尽発光量(PSL)を測定して、それを消去後PSLとした。初期PSLに対する消去後PSLの比(消去後PSL/初期PSL)を消去値として第1表に示す。この消去値は小さい方が好ましいことは勿論である。
【0050】
3)残像特性
上記2)の方法で消去値を求めた後、蛍光体を暗所にて60℃で24時間放置し、その後、X線照射を行なわない以外は上記1)の方法と同じ方法で再度、輝尽発光量(PSL)を測定して、それを経時後PSLとした。初期PSLに対する経時後PSLの比(経時後PSL/初期PSL)を残像値として第1表に示す。この残像値は小さい方が好ましいことは勿論である。
【0051】
4)フェーディング特性
上記1)の方法で蛍光体の輝尽発光量(初期PSL)を測定した後、暗所にて32℃で1時間放置し、その後、X線照射を行なわない以外は上記1)の方法と同じ方法で再度、輝尽発光量(PSL)を測定して、それをフェーディング後PSLとした。初期PSLに対するフェーディング後PSLの比(フェーディング後PSL/初期PSL)×100をフェーディング値として第1表に示す。このフェーディング値は大きい方が好ましいことは勿論である。
【0052】
5)X線残光
所定量の蛍光体に80kVpのX線を200mR照射した後、そのまま46秒放置し、次いで蛍光体から放射される残光を光学フィルタ(B−410)を通して光電子増倍管で受光することにより残光量を求めた。この残光量を初期PSLに対する比で表わし、次いでこの比を常用対数で表わしてX線残光(log10(残光量/初期PSL)を求めた。そのX線残光を第1表に相対値で示す。このX線残光は、小さい値ほど良いことは勿論である。
【0053】
【表1】
Figure 0003707753
【0054】
上記の実施例と比較例の各データを比較すると、次のことが分る。
比較例1:カリウムが添加されていないと、輝尽発光量が小さくなる。
比較例2:カリウムの添加が過剰であると、フェーディングとX線残光とが好ましくない方向に進む。
比較例3:セシウムの添加が過剰であると、フェーディングが好ましくない方向に進む。
比較例4:カルシウムが添加されていないと、輝尽発光量が小さくなる。
比較例5:カルシウムの添加が過剰であっても、輝尽発光量が小さくなる。
比較例6:ヨウ素が含まれていないと、輝尽発光量が小さくなり、フェーディングも好ましくない方向に進む。
比較例7:ヨウ素の添加量が過剰であると、輝尽発光量が小さくなり、残像特性もX線残光も悪化する。
比較例8:ヨーロピウムの付活量が少ないと、輝尽発光量が小さくなり、また消去特性、残像特性、そしてX線残光のいずれもが悪化する。
比較例9:ヨーロピウムの付活量が過剰であると、フェーディングが好ましい値を示さない。
【0055】
[実施例15]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
1)1200mLのBaBr2 水溶液(2.5モル/L)、37.5mLのEuBr3 水溶液(0.2モル/L)、30.9gのKBr、3.54gのCaBr2 ・2H2 O、および1762.5mLの水を容積4000mLの反応容器に入れた。この反応容器中の反応母液(BaBr2 濃度:1.00モル/L)を60℃に保温し、直径60mmのスクリュー型撹拌羽根を500rpmで回転させて、反応母液を撹拌した。
300mLのNH4 F水溶液(5モル/mL)を、撹拌下に保温している上記の反応母液中にローラーポンプを用いて5.0mL/分の送液速度で注入し、沈殿物を生成させた。注入の完了後も保温と撹拌を2時間続けて沈殿物の熟成を行なった。次に沈殿物を濾別し、メタノール2Lで洗浄した。次いで、洗浄した沈殿物を取り出し、120℃で4時間真空乾燥させて、350gの蛍光体前駆体結晶(以下、BFB結晶という)を得た。得られた結晶を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その大部分が14面体型の結晶であった。次に、この結晶を光回折型粒子サイズ分布測定器(堀場製作所株式会社製:LA−500)で測定したところ、平均結晶サイズは4.8μmであることが確認された。
【0056】
2)上記のBFB結晶を200gとり、これにLiBrを0.23g、そして焼成時の焼結による粒子形状の変化や粒子間融着による粒子サイズ分布の変化を防止するために、アルミナの超微粒子粉体を1.0g添加し、ミキサーで充分に撹拌して、結晶表面にアルミナの超微粒子粉体を均一に付着させた。これを100g取って石英ボートに充填し、チューブ炉を用い、酸素を0.3%含む窒素ガス雰囲気中、850℃で3時間焼成して標記の組成式で表わされるユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。得られた蛍光体粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、その大部分が原料結晶と同じく14面体の形状にあることが確認された。
【0057】
[実施例16]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00006 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のKBr添加量を3.09gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0058】
[実施例17]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.001 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のKBr添加量を154.5gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0059】
[実施例18]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 Kの製造
工程2)のBFB結晶の焼成の際にLiBrを添加しなかった以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0060】
[実施例19]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.0003Liの製造
工程2)のBFB結晶の焼成の際のLiBrの添加量を0.023gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0061】
[実施例20]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.009 Liの製造
工程2)のBFB結晶の焼成の際のLiBrの添加量を0.69gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0062】
[実施例21]Ba0.999 Ca0.001 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のCaBr2 ・2H2 O添加量を0.35gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0063】
[実施例22]Ba0.970 Ca0.030 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のCaBr2 ・2H2 O添加量を10.61gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0064】
[実施例23]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程2)のBFB結晶の焼成の際のアルミナの超微粒子粉体の使用量を0.6gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0065】
[実施例24]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程2)のBFB結晶の焼成の際のアルミナの超微粒子粉体の使用量を2.0gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0066】
[実施例25]Ba0.992 Ca0.008 FBr:0.0001Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.004モル/Lに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0067】
[実施例26]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.010Eu,0.00014 K, 0.003Liの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.4モル/Lに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0068】
[比較例10]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際にKBrを添加しなかった以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0069】
[比較例11]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.0020K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際のKBrの添加量を0.21gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0070】
[比較例12]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.015 Liの製造
工程2)のBFB結晶の焼成の際のLiBr添加量を1.20gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0071】
[比較例13]BaFBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶製造の際にCaBr2 ・2H2 Oを添加しなかった以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0072】
[比較例14]Ba0.950 Ca0.050 FBr: 0.005Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶製造の際のCaBr2 ・2H2 O添加量を17.69gに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0073】
[比較例15]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.00005Eu,0.00014 K, 0.003Liの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.002モル/Lに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0074】
[比較例16]Ba0.992 Ca0.008 FBr: 0.020Eu,0.00014 K,0.003 Liの製造
工程1)のBFB結晶の製造の際に使用するEuBr3 水溶液の濃度を0.8モル/Lに変えた以外は、実施例15と同様にして標記の組成式で表わされる14面体型のユーロピウム賦活弗化臭化バリウム蛍光体粒子を得た。
【0075】
[14面体型ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体の特性評価]
実施例15〜26と比較例10〜16のそれぞれで得られた14面体型ユーロピウム賦活弗化臭化バリウム輝尽性蛍光体の各種特性を下記の方法で評価した。
1)輝尽発光量
所定量の蛍光体に80kVpのX線を200mR照射して10秒後に、He−Neレーザ光(波長633nm)を4.6J/m2 照射して蛍光体を励起し、その蛍光体から放射された輝尽発光光を光学フィルタ(B−410)を通して光電子増倍管で受光することにより輝尽発光量(PSL)を測定した。この発光量(PSL)を第2表に相対値で示す。この発光量(PSL)は大きい方が好ましいことは勿論である。
【0076】
2)消去特性
上記1)の方法で測定した輝尽発光量(PSL)を初期PSLとし、その測定対象とした蛍光体に次に、白色蛍光灯の光をシャープカット光学フィルタ(SC−46)を通して400万Lux・秒照射して消去操作を行なった。この消去操作を施した蛍光体について、X線照射を行なわない以外は上記1)の方法と同じ方法で再度、輝尽発光量(PSL)を測定して、それを消去後PSLとした。初期PSLに対する消去後PSLの比(消去後PSL/初期PSL)を消去値として第2表に示す。この消去値は小さい方が好ましいことは勿論である。
【0077】
3)残像特性
上記2)の方法で消去値を求めた後、蛍光体を暗所にて60℃で24時間放置し、その後、X線照射を行なわない以外は上記1)の方法と同じ方法で再度、輝尽発光量(PSL)を測定して、それを経時後PSLとした。初期PSLに対する経時後PSLの比(経時後PSL/初期PSL)を残像値として第2表に示す。この残像値は小さい方が好ましいことは勿論である。
【0078】
4)フェーディング特性
上記1)の方法で蛍光体の輝尽発光量(初期PSL)を測定した後、暗所にて32℃で1時間放置し、その後、X線照射を行なわない以外は上記1)の方法と同じ方法で再度、輝尽発光量(PSL)を測定して、それをフェーディング後PSLとした。初期PSLに対するフェーディング後PSLの比(フェーディング後PSL/初期PSL)をフェーディング値として第2表に示す。このフェーディング値は大きい方が好ましいことは勿論である。
【0079】
5)X線残光
所定量の蛍光体に80kVpのX線を200mR照射した後、そのまま15秒放置し、次いで蛍光体から放射される残光を光学フィルタ(B−410)を通して光電子増倍管で受光することにより残光量を求めた。この残光量を初期PSLに対する比で表わし、次いでこの比を常用対数で表わしてX線残光(log10(残光量/初期PSL)を求めた。そのX線残光を第2表に相対値で示す。このX線残光は、小さい値ほど良いことは勿論である。
【0080】
【表2】
Figure 0003707753
【0081】
上記の実施例と比較例の各データを比較すると、次のことが分る。
比較例10:カリウムが添加されていないと、輝尽発光量が小さくなる。
比較例11:カリウムの添加が過剰であると、フェーディングとX線残光とが好ましくない方向に進む。
比較例12:リチウムの添加が過剰であると、消去特性と残像特性が共に好ましくない方向に進む。
比較例13:カルシウムが添加されていないと、輝尽発光量が小さくなり、またX線残光が悪化する。
比較例14:カルシウムの添加が過剰であっても、輝尽発光量が小さくなる。
比較例15:ヨーロピウムの付活量が少ないと、輝尽発光量が小さくなり、また消去特性、残像特性、そしてX線残光のいずれもが悪化する。
比較例16:ヨーロピウムの付活量が過剰であると、フェーディングが好ましい値を示さない。
【0082】
次に放射線像変換パネルの製造例を示す。
[実施例27]
蛍光体層形成材料として、実施例1で得た14面体のカリウム添加ユーロピウム付活弗化臭化バリウム蛍光体356g、ポリウレタン樹脂(住友バイエルウレタン(株)製、デスモラック4125)15.8g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂2.0gをメチルエチルケトン−トルエン(1:1)混合溶媒に添加し、プロペラミキサーによって分散し、粘度25〜30PSの塗布液を調製した。この塗布液をドクターブレードを用いて下塗り付ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布したのち、100℃で15分間乾燥させて、厚さ200μmの蛍光体層を形成した。
【0083】
次に、保護膜形成材料として、フッ素系樹脂:フルオロオレフィン−ビニルエーテル共重合体(旭硝子(株)製ルミフロン LF100)70g、架橋剤:イソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製デスモジュールZ4370)25g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂5g、およびシリコーン樹脂微粉末(KMP−590、信越化学工業(株)製、粒子径1〜2μm)10gをトルエン−イソプロピルアルコール(1:1)混合溶媒に添加し、塗布液を作った。この塗布液を上記のようにして予め形成しておいた蛍光体層上にドクターブレートを用いて塗布し、次に120℃で30分間熱処理して熱硬化させるとともに乾燥し、厚さ10μmの保護膜を設けた。
以上に記載の方法により、本発明に従う放射線像変換パネルを得た。
【0084】
[実施例28]
蛍光体層形成材料として、実施例15で得た14面体のカリウム添加ユーロピウム付活弗化臭化バリウム蛍光体を用いた以外は実施例27に記載の方法により本発明に従う放射線像変換パネルを得た。
【0085】
【発明の効果】
本発明の特定の組成を持った14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は、輝尽発光量(PSL)、消去特性、残像特性、フェーディング性、そしてX線残光などの各種の特性において非常に優れており、またそれらの特性間のバランスも良い。従って、本発明の14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体は放射線像変換パネルに導入することにより、放射線像記録再生方法に有利に利用できる。

Claims (4)

  1. 基本組成式(I):
    Ba1-x Cax FBr1-yy :aEu,bK,cCs …(I)
    [但し、x、y、a、b、およびcは、それぞれ、0.001≦x≦0.03、0.10≦y≦0.20、0.001≦a≦0.01、0<b≦0.0003、そして0<c≦0.0001の範囲にある数値である。]
    で表わされる14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
  2. 請求項1に記載の14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を含む放射線像変換パネル。
  3. 基本組成式(II):
    Ba1-x Cax FBr1-yy :aEu,bK,cLi …(II)
    [但し、x、y、a、b、およびcは、それぞれ、0.001≦x≦0.03、y=0、0.001≦a≦0.01、0.00001≦b≦0.001、そして0<c≦0.01の範囲にある数値である。]
    で表わされる14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体。
  4. 請求項3に記載の14面体型希土類賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体を含む放射線像変換パネル。
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