JP3937818B2 - 人工海藻の構造体 - Google Patents
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- Y02A40/81—Aquaculture, e.g. of fish
Landscapes
- Artificial Fish Reefs (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚礁として役立つとともに、海岸または河岸の砂浜の洗掘を防止するはたらきもある、人工海藻の構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
海岸や河岸の砂浜の砂が水流に流されて失われる、いわゆる「洗掘」を防ぐことを目的として、水底に置いた格子状の基礎にとりつけたプラスチックのリボンを海藻のように生やした、人工海藻の使用が試みられた[菅原・永井「港湾技研資料」No.771, Mar. 1994 (運輸省港湾技術研究所)]。この人工海藻を試験的に用いた結果、洗掘防止の効果に加えて、魚礁としての効果も得られることがわかった。人工海藻となるプラスチックのリボンにほんものの海藻が生え、それを食べに貝類が付着し、また魚が卵を産み、幼魚が育つという働きである。水流で砂が流されなければ、次第に砂が堆積して格子が砂に埋もれ、人工海藻とそれに付着したほんものの海藻とが安定して生育するようになる。このようにして、漁業者らが「藻場」と呼んでいる海藻の密集した区域が、人工的に形成される。
【0003】
合成樹脂のリボンとして、最近では、発泡プラスチックを使用して海水・河水との比重の差を大きくし、浮力によりリボンが水中でよく立ち上がるようにしている。激しい海流でリボンが千切れると、人工海藻としての効力を失い、千切れた片が水面を漂って環境を損なうので、丈夫なシート状物と積層するなどして、リボンを補強する企てもなされている。
【0004】
この人工の藻場は、その効果を発揮するためには、ある程度の広がりをもつことが必要である。そこで実際には、鋼の丸棒か、またはワイヤを撚ったものを何本か、平行かつ直交させて配置し、交点で溶接して一体化し、たとえば幅が1mで長さが2mの長方形といった大きさの格子状体とし、そこへ発泡プラスチックのリボンをとりつけた構造体を製作して、それらを必要な数だけ、海底、河底、湖底(以下「海底」で代表させる)へ配列することで、藻場を形成している。
【0005】
発明者は、上記のような人工海藻構造体において、鋼の丸棒に代えてスチールワイヤを使用し、ワイヤへの人工海藻リボンの取り付け方を合理化することにより、組立てに工数がかからず、製造コストも低く抑えられる構造体を開発して、すでに開示した(特開2001−54334)。
【0006】
ところが、人工海藻の構造体を配置する海底は、平坦とは限らない。大きな石を海底に敷き並べたマウンドは、比較的平坦であるが、天然のままの海底面は様々である。スチールワイヤーで格子を形成し、ポリエチレンのコーティングを施したものでも、緩やかに変化する面にはある程度対応できるが、急激な変化には追従できない。そうなると、人工海藻の固定からして困難な場合が出てくるし、藻場として役に立たないこともあることが経験された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、藻場を形成するための人工海藻の構造体であって、海底の激しい凹凸や、急な傾斜にもよく適応して、海底に密着した人工の藻場を形成することが可能である、フレキシブルなもの、しかも構造が簡単で容易に組み立てることができ、コストが低廉なものを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
こうした目的を達成する本発明の人工海藻の構造体は、組み立てた後の構造を図1に示すように、ロープで格子状体を形成した基礎部材(1)、基礎部材にとりつける人工海藻部材(2)、人工海藻部材の取付部分を包み込んで基礎部材に固定する人工海藻取付部材(3)、およびこれら各部材の組み合わせを海底の所定の位置に固定するための固定部材(4)を本質的な構成要素とする。
【0009】
【発明の実施形態】
基礎部材(1)は、柔軟なロープが縦横に交差して格子を形成し、各交点において、ロープを通すための、近接して直交する2本の孔(51,52)をもった交点固定具(5)により固定されて格子を維持するものである。ロープの材質は、綿、麻そのほかの天然繊維でもよいが、耐久性の点で、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維を使用することが好ましい。直径が10〜12mm程度の太さのものが使いやすく、丈夫さとコストとのバランスがよい。
【0010】
交点固定具(5)は、任意の材質を使用できるし、その製造方法にも制限はない。たとえば鋼製の鋳物でもよいし、短い鋼管を交差させて溶接したものでもよいし、真鍮などの管をロウ付けした製品も使用可能である。好適な態様としては、図3に示すような、プラスチックの射出成形などの手段で成形したブロックが推奨される。このブロックは、取り扱いや設置に当ってひっかかりを少なくすることが望ましければ、丸味をおびた形状にすればよい。
【0011】
孔(51,52)の大きさは、ロープが容易に通る程度に選択すると、格子の形成が楽になる。ロープが辛うじて通る程度の摩擦がある方が、できた格子が安定することが期待されるが、実際には、いったんロープを組み立てたのちは、思ったより格子形状は崩れないし、人工海藻取付部材を取り付けることにより、格子が維持される。ただし、人工海藻部材をすべての格子間に取り付けることが適切とは限らず、取り付けないところもあるので、格子間隔を維持する上で必要であれば、人工海藻部材を取り付けない部分に、人工海藻取付部材だけを取り付ければよい。
【0012】
人工海藻部材(2)は、水に浮く比重をもった、海藻の色に着色した長方形のシートに対し、その中央部(21)を残して長手方向に多数の平行なスリット(22)を入れて、リボン(23)を形成してなるものである。材料としては、その人工海藻の構造体を設置する場における使用条件、たとえば水温の変化、太陽光や風波の強さ、あるいは海洋生物のアタックに耐える能力をもつ材料を選択すべきである。
【0013】
具体的には、発泡プラスチック、とくに発泡ポリオレフィンのシートが好適である。発泡倍率は、2〜10倍、好適には6〜8倍である。発泡倍率が高いほど水中での浮力が高いが、リボンの耐久力を確保するため、あまり高倍率にすべきでない。シート厚さは、1〜5mm、好適には1〜3mmの範囲から選ぶ。着色は、黒、緑、赤そのほか、実現しようとする人工藻場に適したものとする。前記したように、発泡プラスチックに、織布、不織布もしくはプラスチックのシートを積層して、耐久性を高めたものがより好ましい。
【0014】
人工海藻取付部材(3)は、ロープの太さに人工海藻部材を構成するシートの厚さを加えた寸法に対応する内径をもった筒状体(31)が、軸に沿う一本の線で開口し、そこから半径方向に平行に伸びる2枚の平板部分(32,32’)を有する形状のものである。この部材は、剛性とともに若干の弾性をもつ材料で製造する。通常は、低密度ないし高密度のポリエチレン、またはポリプロピレンが好適である。部材の製造方法は任意であるが、押出成形と切断の組み合わせで容易に製造することができるから、この方法が推奨される。
【0015】
固定部材(4)は、各部材の組み合わせを水底に沈めるに足りる重さのオモリ、または水底に固定するアンカーである。どちらを使用するかは、人工海藻に作用する水流の強さや、施工の難易などによって決定すればよい。図5に示した例は、ほぼ立方体形状をしたコンクリート製のオモリである。
【0016】
本発明の人工海藻の構造体を組み立てるに当っては、まず所要の長さ(たとえば縦は2m、横は1m)に用意したロープを交差させ、交点を交点固定具(5)で固定して格子を形成することにより格子状の基礎部材(1)を形成しておき、ロープに人工海藻部材の中央部(21)を巻きつけ、その上から人工海藻取付部材(3)を嵌める、という工程による。
【0017】
人工海藻部材の取り付けは、人工海藻取付部材の筒状部分が人工海藻部材をロープに向かって締め付ける力だけに頼ると、平板部分の端が開いて締め付け不充分になるおそれがあるから、締め付ける力を確保するため、平板部分(32,32’)に対して締付手段をつけ加えることが好ましい。それにより、人工海藻取付部材が人工海藻部材を固定する力が増強される。締付手段の構成は任意であるが、簡便に利用でき、かつコストのかからないものが好ましいことはもちろんである。図4に示したような、プラスチック成形品で、ピン(61)とフィクサー(62)の組み合わせからなり、ピンを通すとフィクサーにより戻らなくなるファスナー(6)があって、種々の分野で使用されている。これが、ここでも好都合に利用できる。
【0018】
【実施例】
[実施例1]
直径10mmのポリエチレン繊維製のロープを、長さ3mに切ったものを2本、長さ2.1mに切ったものを4本用意し、3mのものを両外側に、2.1mのものをその内側に、20cm間隔で並べた。別に、長さ1.1mに切った短いロープを11本用意し、20cm間隔で直交させた。それらの交点に、図3に示した形状の、ポリエチレンの射出成形で製作した交点固定具を配置し、1m×2m、格子のピッチが約20cmの長方形の格子を用意した。縁のT字状の部分は、交点固定具から突き出した端を折り返し、ナイロンテープで縛ることにより固定した。両側の長いロープは、折り返してその端を縛ることにより、アンカーで水底に固定するためのループを形成した。
【0019】
緑色に着色した発泡ポリエチレン(発泡倍率約4)製の厚さ約1mmのシートを幅15cm、長さ200cmに裁断したものに対し、図2に示すように、中央部の幅16cmを残して外側に向かう平行なスリットを入れ、人工海藻部材とした。別に、ポリエチレンの押出成形−切断により、図1に示した形状の人工海藻取付部材を成形した。
【0020】
前記の基礎部材の四隅にあるループを柱にかけて支持しておき、人工海藻部材を中央線から二つ折りにしたものの折った部分を縦横のロープにのせ、人工海藻取付部材を嵌めてから、その両端を前記のファスナーで固定した。人工海藻部材を取り付けた部分は、図5に太線で示した部分であり、細線で示した部分はロープだけである。人工海藻部材は、横方向のロープに一つおきに、千鳥配置で取り付けたから、全部で25セットである。
【0021】
これらの人工海藻の構造体を2枚、長さ7m×幅3mの回流式試験水槽の中に並べ、1個の重量が約10kgのコンクリート塊をオモリとして用い、それらを四隅のループにつないで固定した。水流の速度1〜3ノットで海水を循環させたところ、人工海藻は流れる海水に揺らぎ、あたかも現実の藻場のように見えた。この試験を数時間ないし半日続けたのち回流を停止し、人工海藻の構造体を引き上げて観察したが、別段の変化は見られなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明の人工海藻の構造体は、前記の、さきに提案した人工海藻構造体の有する効果、すなわち、人工海藻となるリボンが1枚のシートをもって根元の部分で連なった形に形成され、それを基礎部材に巻きつけ、その上から円筒プラス平行平板の形状をもつ固定部材を嵌め、必要に応じて締付部材を追加する、簡単な構成で実現するという利点を、そのまま享受できる。したがって、製造に要する労力が、それ以前の人工海藻構造体に比べて、格段に少なくて済む。各構成部品は、プラスチックの押出成形や射出成形により、場合により多少の後加工を行なうことで、容易に製造できるから、コストを低く抑えることが可能である。
【0023】
製造された人工海藻の構造体は、こうしたメリットに加え、水底の凹凸や傾斜によく対応して、柔軟に変形することができるから、スチールワイヤの基礎をもつ人工海藻構造体が適応できないような場所においても、問題なく使用することができる。輸送・保管に当ってかさばらず、軽量で扱いやすいことも、この人工海藻の構造体に固有の利点である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による人工海藻の構造体の代表的な例について、その構成を示す一部分の斜視図。
【図2】 本発明で使用する人工海藻部材の展開図。
【図3】 本発明で使用する交点固定具の一例を示す斜視図。
【図4】 本発明で使用する締付部材の一例を示す断面図。
【図5】 本発明の実施例における、基礎部材への人工海藻部材取り付け位置を示す平面図。
【符号の説明】
1 基礎部材(ロープ)
2 人工海藻部材
21 中央部 22 スリット 23 リボン
3 人工海藻取付部材
31 筒状体 32,32’ 平板部分
4 固定部材(オモリ)
5 交点固定具
51,52 ロープを通すための孔
6 ファスナー
61 ピン 62 フィクサー
【発明の属する技術分野】
本発明は、魚礁として役立つとともに、海岸または河岸の砂浜の洗掘を防止するはたらきもある、人工海藻の構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
海岸や河岸の砂浜の砂が水流に流されて失われる、いわゆる「洗掘」を防ぐことを目的として、水底に置いた格子状の基礎にとりつけたプラスチックのリボンを海藻のように生やした、人工海藻の使用が試みられた[菅原・永井「港湾技研資料」No.771, Mar. 1994 (運輸省港湾技術研究所)]。この人工海藻を試験的に用いた結果、洗掘防止の効果に加えて、魚礁としての効果も得られることがわかった。人工海藻となるプラスチックのリボンにほんものの海藻が生え、それを食べに貝類が付着し、また魚が卵を産み、幼魚が育つという働きである。水流で砂が流されなければ、次第に砂が堆積して格子が砂に埋もれ、人工海藻とそれに付着したほんものの海藻とが安定して生育するようになる。このようにして、漁業者らが「藻場」と呼んでいる海藻の密集した区域が、人工的に形成される。
【0003】
合成樹脂のリボンとして、最近では、発泡プラスチックを使用して海水・河水との比重の差を大きくし、浮力によりリボンが水中でよく立ち上がるようにしている。激しい海流でリボンが千切れると、人工海藻としての効力を失い、千切れた片が水面を漂って環境を損なうので、丈夫なシート状物と積層するなどして、リボンを補強する企てもなされている。
【0004】
この人工の藻場は、その効果を発揮するためには、ある程度の広がりをもつことが必要である。そこで実際には、鋼の丸棒か、またはワイヤを撚ったものを何本か、平行かつ直交させて配置し、交点で溶接して一体化し、たとえば幅が1mで長さが2mの長方形といった大きさの格子状体とし、そこへ発泡プラスチックのリボンをとりつけた構造体を製作して、それらを必要な数だけ、海底、河底、湖底(以下「海底」で代表させる)へ配列することで、藻場を形成している。
【0005】
発明者は、上記のような人工海藻構造体において、鋼の丸棒に代えてスチールワイヤを使用し、ワイヤへの人工海藻リボンの取り付け方を合理化することにより、組立てに工数がかからず、製造コストも低く抑えられる構造体を開発して、すでに開示した(特開2001−54334)。
【0006】
ところが、人工海藻の構造体を配置する海底は、平坦とは限らない。大きな石を海底に敷き並べたマウンドは、比較的平坦であるが、天然のままの海底面は様々である。スチールワイヤーで格子を形成し、ポリエチレンのコーティングを施したものでも、緩やかに変化する面にはある程度対応できるが、急激な変化には追従できない。そうなると、人工海藻の固定からして困難な場合が出てくるし、藻場として役に立たないこともあることが経験された。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、藻場を形成するための人工海藻の構造体であって、海底の激しい凹凸や、急な傾斜にもよく適応して、海底に密着した人工の藻場を形成することが可能である、フレキシブルなもの、しかも構造が簡単で容易に組み立てることができ、コストが低廉なものを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
こうした目的を達成する本発明の人工海藻の構造体は、組み立てた後の構造を図1に示すように、ロープで格子状体を形成した基礎部材(1)、基礎部材にとりつける人工海藻部材(2)、人工海藻部材の取付部分を包み込んで基礎部材に固定する人工海藻取付部材(3)、およびこれら各部材の組み合わせを海底の所定の位置に固定するための固定部材(4)を本質的な構成要素とする。
【0009】
【発明の実施形態】
基礎部材(1)は、柔軟なロープが縦横に交差して格子を形成し、各交点において、ロープを通すための、近接して直交する2本の孔(51,52)をもった交点固定具(5)により固定されて格子を維持するものである。ロープの材質は、綿、麻そのほかの天然繊維でもよいが、耐久性の点で、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの合成繊維を使用することが好ましい。直径が10〜12mm程度の太さのものが使いやすく、丈夫さとコストとのバランスがよい。
【0010】
交点固定具(5)は、任意の材質を使用できるし、その製造方法にも制限はない。たとえば鋼製の鋳物でもよいし、短い鋼管を交差させて溶接したものでもよいし、真鍮などの管をロウ付けした製品も使用可能である。好適な態様としては、図3に示すような、プラスチックの射出成形などの手段で成形したブロックが推奨される。このブロックは、取り扱いや設置に当ってひっかかりを少なくすることが望ましければ、丸味をおびた形状にすればよい。
【0011】
孔(51,52)の大きさは、ロープが容易に通る程度に選択すると、格子の形成が楽になる。ロープが辛うじて通る程度の摩擦がある方が、できた格子が安定することが期待されるが、実際には、いったんロープを組み立てたのちは、思ったより格子形状は崩れないし、人工海藻取付部材を取り付けることにより、格子が維持される。ただし、人工海藻部材をすべての格子間に取り付けることが適切とは限らず、取り付けないところもあるので、格子間隔を維持する上で必要であれば、人工海藻部材を取り付けない部分に、人工海藻取付部材だけを取り付ければよい。
【0012】
人工海藻部材(2)は、水に浮く比重をもった、海藻の色に着色した長方形のシートに対し、その中央部(21)を残して長手方向に多数の平行なスリット(22)を入れて、リボン(23)を形成してなるものである。材料としては、その人工海藻の構造体を設置する場における使用条件、たとえば水温の変化、太陽光や風波の強さ、あるいは海洋生物のアタックに耐える能力をもつ材料を選択すべきである。
【0013】
具体的には、発泡プラスチック、とくに発泡ポリオレフィンのシートが好適である。発泡倍率は、2〜10倍、好適には6〜8倍である。発泡倍率が高いほど水中での浮力が高いが、リボンの耐久力を確保するため、あまり高倍率にすべきでない。シート厚さは、1〜5mm、好適には1〜3mmの範囲から選ぶ。着色は、黒、緑、赤そのほか、実現しようとする人工藻場に適したものとする。前記したように、発泡プラスチックに、織布、不織布もしくはプラスチックのシートを積層して、耐久性を高めたものがより好ましい。
【0014】
人工海藻取付部材(3)は、ロープの太さに人工海藻部材を構成するシートの厚さを加えた寸法に対応する内径をもった筒状体(31)が、軸に沿う一本の線で開口し、そこから半径方向に平行に伸びる2枚の平板部分(32,32’)を有する形状のものである。この部材は、剛性とともに若干の弾性をもつ材料で製造する。通常は、低密度ないし高密度のポリエチレン、またはポリプロピレンが好適である。部材の製造方法は任意であるが、押出成形と切断の組み合わせで容易に製造することができるから、この方法が推奨される。
【0015】
固定部材(4)は、各部材の組み合わせを水底に沈めるに足りる重さのオモリ、または水底に固定するアンカーである。どちらを使用するかは、人工海藻に作用する水流の強さや、施工の難易などによって決定すればよい。図5に示した例は、ほぼ立方体形状をしたコンクリート製のオモリである。
【0016】
本発明の人工海藻の構造体を組み立てるに当っては、まず所要の長さ(たとえば縦は2m、横は1m)に用意したロープを交差させ、交点を交点固定具(5)で固定して格子を形成することにより格子状の基礎部材(1)を形成しておき、ロープに人工海藻部材の中央部(21)を巻きつけ、その上から人工海藻取付部材(3)を嵌める、という工程による。
【0017】
人工海藻部材の取り付けは、人工海藻取付部材の筒状部分が人工海藻部材をロープに向かって締め付ける力だけに頼ると、平板部分の端が開いて締め付け不充分になるおそれがあるから、締め付ける力を確保するため、平板部分(32,32’)に対して締付手段をつけ加えることが好ましい。それにより、人工海藻取付部材が人工海藻部材を固定する力が増強される。締付手段の構成は任意であるが、簡便に利用でき、かつコストのかからないものが好ましいことはもちろんである。図4に示したような、プラスチック成形品で、ピン(61)とフィクサー(62)の組み合わせからなり、ピンを通すとフィクサーにより戻らなくなるファスナー(6)があって、種々の分野で使用されている。これが、ここでも好都合に利用できる。
【0018】
【実施例】
[実施例1]
直径10mmのポリエチレン繊維製のロープを、長さ3mに切ったものを2本、長さ2.1mに切ったものを4本用意し、3mのものを両外側に、2.1mのものをその内側に、20cm間隔で並べた。別に、長さ1.1mに切った短いロープを11本用意し、20cm間隔で直交させた。それらの交点に、図3に示した形状の、ポリエチレンの射出成形で製作した交点固定具を配置し、1m×2m、格子のピッチが約20cmの長方形の格子を用意した。縁のT字状の部分は、交点固定具から突き出した端を折り返し、ナイロンテープで縛ることにより固定した。両側の長いロープは、折り返してその端を縛ることにより、アンカーで水底に固定するためのループを形成した。
【0019】
緑色に着色した発泡ポリエチレン(発泡倍率約4)製の厚さ約1mmのシートを幅15cm、長さ200cmに裁断したものに対し、図2に示すように、中央部の幅16cmを残して外側に向かう平行なスリットを入れ、人工海藻部材とした。別に、ポリエチレンの押出成形−切断により、図1に示した形状の人工海藻取付部材を成形した。
【0020】
前記の基礎部材の四隅にあるループを柱にかけて支持しておき、人工海藻部材を中央線から二つ折りにしたものの折った部分を縦横のロープにのせ、人工海藻取付部材を嵌めてから、その両端を前記のファスナーで固定した。人工海藻部材を取り付けた部分は、図5に太線で示した部分であり、細線で示した部分はロープだけである。人工海藻部材は、横方向のロープに一つおきに、千鳥配置で取り付けたから、全部で25セットである。
【0021】
これらの人工海藻の構造体を2枚、長さ7m×幅3mの回流式試験水槽の中に並べ、1個の重量が約10kgのコンクリート塊をオモリとして用い、それらを四隅のループにつないで固定した。水流の速度1〜3ノットで海水を循環させたところ、人工海藻は流れる海水に揺らぎ、あたかも現実の藻場のように見えた。この試験を数時間ないし半日続けたのち回流を停止し、人工海藻の構造体を引き上げて観察したが、別段の変化は見られなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明の人工海藻の構造体は、前記の、さきに提案した人工海藻構造体の有する効果、すなわち、人工海藻となるリボンが1枚のシートをもって根元の部分で連なった形に形成され、それを基礎部材に巻きつけ、その上から円筒プラス平行平板の形状をもつ固定部材を嵌め、必要に応じて締付部材を追加する、簡単な構成で実現するという利点を、そのまま享受できる。したがって、製造に要する労力が、それ以前の人工海藻構造体に比べて、格段に少なくて済む。各構成部品は、プラスチックの押出成形や射出成形により、場合により多少の後加工を行なうことで、容易に製造できるから、コストを低く抑えることが可能である。
【0023】
製造された人工海藻の構造体は、こうしたメリットに加え、水底の凹凸や傾斜によく対応して、柔軟に変形することができるから、スチールワイヤの基礎をもつ人工海藻構造体が適応できないような場所においても、問題なく使用することができる。輸送・保管に当ってかさばらず、軽量で扱いやすいことも、この人工海藻の構造体に固有の利点である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による人工海藻の構造体の代表的な例について、その構成を示す一部分の斜視図。
【図2】 本発明で使用する人工海藻部材の展開図。
【図3】 本発明で使用する交点固定具の一例を示す斜視図。
【図4】 本発明で使用する締付部材の一例を示す断面図。
【図5】 本発明の実施例における、基礎部材への人工海藻部材取り付け位置を示す平面図。
【符号の説明】
1 基礎部材(ロープ)
2 人工海藻部材
21 中央部 22 スリット 23 リボン
3 人工海藻取付部材
31 筒状体 32,32’ 平板部分
4 固定部材(オモリ)
5 交点固定具
51,52 ロープを通すための孔
6 ファスナー
61 ピン 62 フィクサー
Claims (4)
- ロープで格子状体を形成した基礎部材(1)、基礎部材にとりつける人工海藻部材(2)、人工海藻部材の取付部分を包み込んで基礎部材に固定する人工海藻取付部材(3)、およびこれら各部材の組み合わせを水中の所定の位置に固定するための固定部材(4)を本質的な構成要素とする人工海藻の構造体であって、基礎部材(1)は、柔軟なロープが縦横に交差して格子を形成し、各交点において、ロープを通すための、近接して直交する2本の孔(51,52)をもった交点固定具(5)により固定されて格子を維持するものであり、人工海藻部材(2)は、水に浮く比重をもった、海藻の色に着色した長方形のシートに対し、その中央部(21)を残して長手方向に多数の平行なスリット(22)を入れてリボン(23)を形成してなるものであり、人工海藻取付部材(3)は、剛性とともに若干の弾性をもつ材料で製造され、ロープの太さに人工海藻部材を構成するシートの厚さを加えた寸法に対応する内径をもった筒状体(31)が、軸に沿う一本の線で開口し、そこから半径方向に平行に伸びる2枚の平板部分(32,32’)を有する形状のものであり、固定部材(4)は、各部材の組み合わせを水底に沈めるに足りる重さのオモリまたは水底に固定するアンカーであることを特徴とする人工海藻の構造体。
- 交点固定具(5)が、プラスチック成形品のブロックである請求項1の人工海藻の構造体。
- 人工海藻部材(2)を、発泡プラスチックのシート、またはこれと、織布、不織布もしくはプラスチックのシートとの積層材で形成した請求項1の人工海藻の構造体。
- 人工海藻取付部材(3)の平板部分に対してファスナー(6)を加えて、人工海藻取付部材が人工海藻部材を固定する力を増強した請求項1の人工海藻の構造体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001359775A JP3937818B2 (ja) | 2001-11-26 | 2001-11-26 | 人工海藻の構造体 |
Applications Claiming Priority (1)
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