JP3936210B2 - 電動ディスクブレーキおよびその制御プログラム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換して制動力を発生させる電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換して制動力を発生させる電動ディスクブレーキとして、例えば、電動モータと、電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出器と、ピストンが受けるピストン推力を検出する推力センサとを有する電動ディスクブレーキがあり、その一例として特開2000−213575号公報に開示されたものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電動モータのモータ回転位置とピストン推力との関係は、図16に示すようになっており、ピストンが後退しブレーキパッドの押圧が解除された後のパッドクリアランス領域のモータ回転位置においては、ピストン推力は0となっている。そして、上記公報に開示されたもの等、従来の電動ディスクブレーキは、図17に示すように、推力センサで検出されるピストン推力をフィードバックとする制御ブロックで制御を行っている。
【0004】
ここで、図17において、符号100は積分処理を行う積分器を、符号101は予め設定された積分係数Kiによって処理を行う増幅器を、符号102は予め設定された係数Kpによって処理を行う増幅器を、符号103は制御対象である電動キャリパを、符号104は推力センサをそれぞれ示しており、目標推力に対し推力センサ104で検出された現在の推力を推力フィードバックとして減算し、このデータに、一方でこのデータを積分器100において積分処理を行いさらに増幅器101において積分係数Kiを乗算処理したデータを求めて、これを加算し、加算後のデータにさらに増幅器102において係数Kpを乗算処理して、得られた制御データで電動キャリパ103内の電動モータを制御する。
【0005】
ここで、推力センサはアナログ出力のためAD変換器の性能により分解能が決まるが、電動ディスクブレーキの発生推力が非常に大きいため、例えば、一つの推力センサで高推力領域まで推力を検出する場合、推力センサの低推力領域での推力検出の分解能が低くなってしまうことになり、電動モータの低推力領域での制御の精度が悪くなってしまうという問題もあった。
【0006】
図18に上記制御ブロックによるステップ応答の一例を示すが、この例のように、減力方向でピストン推力が0になった時点T1で電動モータの制御量が0になるが、慣性によって、モータ位置が0で停止せず図18にX2で示すように回転しすぎる、いわゆるオーバーシュートが生じてしまい、このときピストンは推力を受けていないため、推力センサはオーバーシュートを検出できない。その結果、電動モータは、ピストンをブレーキパッドに対しクリアランスを生じる位置まで後退させてしまうことになり、連続的に制動力を発生させる場合等の応答性が悪くなってしまうという問題が発生する。
【0007】
したがって、本発明は、低推力領域での制御精度を向上させることができ、応答性を向上させることができる電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムの提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の電動ディスクブレーキは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキであって、前記制御手段は、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力に応じて、前記推力制御および前記位置制御の制御量の配分を、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うように変化させることを特徴としている。
【0009】
このように、制御手段は、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御のみを行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うことができる。よって、例えば、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、低推力領域での推力制御による分解能不足を位置制御で補って分解能を高めることができる。
【0010】
また、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと位置制御を合わせることになり、その結果、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。
【0011】
本発明の請求項2記載の電動ディスクブレーキは、請求項1記載のものに関して、前記制御手段は、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が小さいほど、前記位置制御の制御量の配分を大きくするとともに前記推力制御の制御量の配分を小さくすることを特徴としている。
【0012】
このように、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が小さいほど、位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするため、推力検出手段の推力検出の分解能の低下に応じて、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御量の配分を小さくすることになる。
【0013】
本発明の請求項3記載の電動ディスクブレーキは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキであって、前記制御手段は、前記ブレーキパッドをディスクに押圧した後に、前記推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことを特徴としている。
【0014】
このように、制御手段は、推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域では、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことができる。よって、低推力領域において分解能が不足する推力制御ではなく、分解能が確保できるモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、分解能を高めることができる。
【0015】
また、低推力領域で位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと、モータ回転位置から割り出されたピストン推力を用いて推力制御を行うことになり、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。
【0016】
本発明の請求項4記載の電動ディスクブレーキは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、該推力検出手段で検出されたピストン推力および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキであって、ピストン推力が所定値に達したときに前記推力検出手段への押圧を規制して前記推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定手段を有することを特徴としている。
【0017】
このように、推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定手段を有することから、この推力範囲限定手段が推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を低推力領域のみに限定することで、推力検出手段として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができる。
【0018】
しかも、推力検出手段として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができるため、推力検出手段についてコスト低減および小型化が図れる。
【0019】
本発明の請求項5記載の電動ディスクブレーキは、請求項4記載のものに関して、前記制御手段は、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、前記ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともに前記モータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、前記推力制御の制御量の配分を小さくするとともに前記位置制御の制御量の配分を大きくすることを特徴としている。
【0020】
このように、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするため、例えば、低推力領域では、この領域の分解能が高い推力検出手段のピストン推力検出の分解能に合わせて、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくする一方、推力検出手段でピストン推力が検出できない高推力領域では、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくする。
【0021】
本発明の請求項6記載の電動ディスクブレーキは、請求項5記載のものに関して、前記所定のしきい値を、前記ピストン推力の変化量と前記モータ回転位置の変化量とから設定することを特徴としている。
【0022】
このように、所定のしきい値を、ピストン推力の変化量とモータ回転位置の変化量とから設定するため、個体によって異なるしきい値を正確に設定することができる。
【0023】
本発明の請求項7記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキの制御プログラムであって、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力に応じて、前記推力制御および前記位置制御の制御量の配分を、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うように変化させることを特徴としている。
【0024】
このように、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御のみを行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うことができる。よって、例えば、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、低推力領域での推力制御による分解能不足を位置制御で補って分解能を高めることができる。
【0025】
また、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと位置制御を合わせることになり、その結果、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。
【0026】
本発明の請求項8記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムは、請求項7記載の制御プログラムに関して、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が小さいほど、前記位置制御の制御量の配分を大きくするとともに前記推力制御の制御量の配分を小さくすることを特徴としている。
【0027】
このように、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が小さいほど、位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするため、推力検出手段の推力検出の分解能の低下に応じて、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御量の配分を小さくすることになる。
【0028】
本発明の請求項9記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキの制御プログラムであって、前記ブレーキパッドをディスクに押圧した後に、前記推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことを特徴としている。
【0029】
このように、推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域では、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことができる。よって、低推力領域において分解能が不足する推力制御ではなく、分解能が確保できるモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、分解能を高めることができる。
【0030】
また、低推力領域で位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと、モータ回転位置から割り出されたピストン推力を用いて推力制御を行うことになり、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。
【0031】
本発明の請求項10記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムは、電動モータと、該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、該推力検出手段で検出されたピストン推力および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づいて前記電動モータを制御する制御手段と、ピストン推力が所定値に達したときに前記推力検出手段への押圧を規制して前記推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定手段とを有する電動ディスクブレーキの制御プログラムであって、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、前記ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともに前記モータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、前記推力制御の制御量の配分を小さくするとともに前記位置制御の制御量の配分を大きくすることを特徴としている。
【0032】
このように、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするため、例えば、低推力領域では、この領域の分解能が高い推力検出手段のピストン推力検出の分解能に合わせて、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくする一方、推力検出手段でピストン推力が検出できない高推力領域では、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくする。
【0033】
本発明の請求項11記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムは、請求項10記載のものに関して、前記所定のしきい値を、前記ピストン推力の変化量と前記モータ回転位置の変化量とから設定することを特徴としている。
【0034】
このように、所定のしきい値を、ピストン推力の変化量とモータ回転位置の変化量とから設定するため、個体によって異なるしきい値を正確に設定することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態の電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムを図1〜図4を参照しつつ以下に説明する。
【0036】
図1に示すように、本実施形態の電動ディスクブレーキの電動キャリパ10は、図示せぬ車輪とともに回転するディスク11の一側(通常は車体に対して内側)にキャリパ本体12が配置されており、このキャリパ本体12には、略C字形に形成されてディスク11を跨いで反対側へ延びる爪部13が一体的に結合されている。ディスク11の両側、すなわち、ディスク11とキャリパ本体12との間および爪部13の先端部との間に、それぞれブレーキパッド14,15が設けられている。ブレーキパッド14,15は、車体側に固定されるキャリア16によってディスク11の軸方向に沿って移動可能に支持されて、制動トルクをキャリア16で受けるようになっており、また、キャリパ本体12は、キャリア16に取付けられた図示せぬスライドピンによってディスク11の軸方向に沿って摺動可能に案内されている。
【0037】
キャリパ本体12には、ボルト17によって略円筒伏のケース18が結合され、このケース18内には、電動モータ19および位置検出器(位置検出手段)20が設けられている。一方、キャリパ本体12内には、ボールランプ機構21及び減速機構22が挿入されている。ケース18の後端部には、カバー23がボルト24によって取付けられている。
【0038】
電動モータ19は、ケース18の内周部に固定されたステータ25と、ステータ25に挿入されて軸受26,27によってケース18に回転可能に支持されたロータ28とを備えている。位置検出器20は、ケース18側に固定されたレゾルバステータ29及びロータ28に取付けられたレゾルバロータ30からなり、これらの相対回転に基づいてロータ28の回転位置すなわち電動モータ19のモータ回転位置を検出するものである。
【0039】
ボールランプ機構21は、環状の第1及び第2ディスク32,33と、これらの間に介装された複数のボール(鋼球)34とから構成されている。第1ディスク32は、軸受35によってキャリパ本体12に回転可能に支持され、ロータ28内に挿入される円筒部36が一体的に形成されている。第2ディスク33には、円筒部36よりも小径の円筒状のスリーブ37が一体的に形成され、このスリーブ37が円筒部36内に挿通されている。
【0040】
ボールランプ機構21の第1ディスク32及び第2ディスク33の対向面には、それぞれ円周方向に沿って延びる円弧状の例えば3つのボール溝38,39が形成されている。これらのボール溝38,39は、等しい中心角(例えば90゜)の範囲に延ばされて、同じ方向に傾斜されている。そして、第1及び第2ディスク32,33に形成されたボール溝38,39間にボール34が装入され、第1、第2ディスク32,33の相対回転によって、ボール溝38,39内をボール34が転動することにより、第1ディスク32と第2ディスク33とが軸方向に相対変位するようになっている。このとき、第1ディスク32が第2ディスク33に対して反時計回りに回転したとき、これらが離間する方向に変位する。
【0041】
第2ディスク33とブレーキパッド14との間には、ピストン40が設けられている。ピストン40は、外周にネジ部41を形成した円筒部材42aを有している。円筒部材42aは、第2ディスク33のスリーブ37内に挿入され、その内周に形成されたネジ部43に螺合されている。円筒部材42a内には、ケース18にブラケット44を介して取付けられた軸45の図示せぬ二面取部が嵌合されて、その回転が規制されている。また、ピストン40は、円筒部材42aの軸45に対し反対側に回転が規制された状態で連結される略円板状の押圧部材42bを有している。そして、円筒部材42aと押圧部材42bと軸45との間に、ピストン40が受けるピストン推力を検出する推力センサ(推力検出手段)46が設けられている。
【0042】
ピストン40の円筒部材42のネジ部41と、第2ディスク33のスリーブ37のネジ部43とで不可逆ねじを形成しており、ピストン40は、その軸方向に力が作用しても移動することはないが、第2ディスク33を反時計回りに回転させることにより、ディスク11側へ移動するようになっている。
【0043】
軸45の外周部及び第2ディスク33のスリーブ37の内周部にそれぞれ形成されたバネ受47,48間に複数の皿バネ(圧縮ばね)49が介装され、そのばね力によって第2ディスク33がボール34を第1ディスク32との間で挟みつけるように付勢されている。軸45は、調整ネジ50およびロックナット51によってブラケット44に取付けられている。
【0044】
第2ディスク33には、最もディスク11側の外径部にリング部材52が固定されている。一方、爪部13のキャリパ本体12側には、その内側に円筒部材53が位置固定で設けられており、この円筒部材53の内側には、第1ディスク32および第2ディスク33の相互対向側が配置されている。この円筒部材53の内側には、上記リング部材52と対向するようにリング部材54が固定されており、リング部材52とリング部材54との間には、これらの間に適度な抵抗力を付与するウエーブワッシャ55が介装されている。
【0045】
電動モータ19、位置検出器20、推力センサ46には、コネクタ31を介して図示せぬコントローラ(制御手段)が接続され、このコントローラは、位置検出器20の検出結果すなわち電動モータ19の実際のモータ回転位置と、電動モータ19の電流値と、推力センサ46の検出結果すなわち実際のピストン推力とに基づいて電動モータ19を制御することで、ピストン推力が目標推力となるように制御を行う。
【0046】
次に、減速機構22について説明する。電動モータ19の口ータ58の一端部に偏心軸57が形成され、偏心軸57の外周部には、軸受58を介して偏心板59が回転可能に取付けられている。キャリパ本体12には、偏心板59に対向させて固定板60が固定されている。偏心板59及び固定板60の対向面には、それぞれ周方向に沿って複数の穴(凹所)61,62が形成されており、これらの穴61,62間にボール(鋼球)63が介装してオルダム機構を構成して、公転運動する偏心板59を支持している。偏心板59の一端面は、第1ディスク32に対向されており、これらの対向面には、それぞれサイクロイド溝64,65が形成され、サイクロイド溝64,65間にボール(鋼球)66が挿入されている。
【0047】
第2ディスク33のスリーブ37の先端外周部には、円筒状のスプリングホルダ67がピン68によって回転しないように取付けられている。スプリングホルダ67の一端部が、第1ディスク32の円筒部36の先端部に係合して、これらの相対回転を一定範囲に制限している。スプリングホルダ67の周りには、コイルスプリング69が巻装され、コイルスプリング69は、所定のセット荷重をもって捻られて、その一端部がスプリングホルダ67に結合され、他端部が第1ディスク32の円筒部36に結合されている。
【0048】
以上のように構成した本実施形態の電動ディスクブレーキの基本作動について次に説明する。
【0049】
非制動状態では、ボールランプ機構21のボール34がボール溝38,39の最も深い端部にあり、第1ディスク32と第2ディスク33とが最も近い位置にある。コントローラは、制動力を発生させる際に、電動モータ19のロータ28を時計回りに回転させる。すると、偏心板59が公転し、サイクロイド溝64,65及びボール66の作用によって第1ディスク32がロータ28に対して、次式で示される一定の回転比Nで反時計回りに回転する。
N=(d−D)/D
ここで、
d:サイクロイド溝64の基準円直径
D:サイクロイド溝65の基準円直径
すなわち、第1ディスク32は、ロータ28に対して一定の減速比α(=1/N)で減速されて反時計回りに回転し、その分、トルクが増幅される。
【0050】
第1ディスク32の回転力は、コイルスプリング69を介して第2ディスク33に伝達される。ピストン40がブレーキパッド14,15を押圧する前は、ピストン40に軸方向の荷重が殆ど作用せず、ピストン40と第2ディスク33との間のネジ部41,43に生じる抵抗が小さいので、コイルスプリング69のセット荷重によって第2ディスク33が第1ディスク32と一体に回転し、第2ディスク33とピストン40との間に相対回転が生じて、ネジ部41,43の作用によってピストン40がディスク11側ヘ前進する。なお、これにより、ネジ部41,43は電動モータ19の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部を構成している。
【0051】
上記前進時において、第1ディスク32と一体に回転する第2ディスク33に固定されたリング部材52と、爪部13に円筒部材53を介して固定配置されたリング部材54とが相対回転することになり、これらの間に介装されたウエーブワッシャ55が第2ディスク33の回転に対して適度な抵抗力を付与する。
【0052】
そして、ピストン40が一方のブレーキパッド14に接触してこれをディスク11ヘ押圧させ、その反力によってキャリパ本体12がキャリア16のスライドピンに沿って移動して、爪部13が他方のブレーキパッド15をディスク11に押圧させる。
【0053】
両ブレーキパッド14,15がディスク11に押圧された後は、その反力によってピストン40に軸方向の大きな荷重が作用するため、ネジ部41,43の抵抗が増大してコイルスプリング69のセット荷重を超えて、第2ディスク33が回転を停止させることになり、その結果、コイルスプリング69が撓んでボールランプ機構21の第1ディスク32および第2ディスク33間に相対回転が生じる。これにより、ボール34がボール溝38,39内を転動して第2ディスク33およびピストン40を一体に前進(すなわち直線運動)させ、ピストン40によってブレーキパッド14,15をディスク11にさらに押付ける。なお、これにより、ボールランプ機構21も電動モータ19の回転運動をピストン40の直線運動に変換する変換機構部を構成している。
【0054】
そして、ピストン40がブレーキパッド14に接触した後においても、コントローラは、位置検出器20の検出結果すなわちモータ回転位置と、推力センサ46の検出結果すなわちピストン推力とから電動モータ19の電流値を制御することで、ピストン推力を所望値に制御する。
【0055】
ここで、コントローラは、各種センサからの検出データに基づいて電動キャリパ10の制動力すなわちピストン40に発生させる目標推力を求め、この目標推力をピストン40に発生させるように電動モータ19に対し、推力センサ46で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御および位置検出器20で検出されたモータ回転位置をフィードバックとする位置制御を行う。その際に、コントローラは、推力センサ46で検出されたピストン推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させる。
【0056】
図2は、上記制御を行うためのコントローラ内に設けられた制御ブロックを示している。
【0057】
図2において、符号71は積分処理を行う積分器を、符号72は予め設定された積分係数Kfiによって処理を行う増幅器を、符号73は予め設定された係数Kfpによって処理を行う増幅器を、符号74はピストン推力に応じて可変となる係数αによって処理を行う可変増幅器をそれぞれ示している。また、符号76は予め設定されたマップ(剛性モデル)に基づいて変換処理を行う変換器を、符号77は積分処理を行う積分器を、符号78は予め設定された積分係数Kpiによって処理を行う増幅器を、符号79は予め設定された係数Kppによって処理を行う増幅器を、符号80はピストン推力に応じて可変となる係数1−αによって処理を行う可変増幅器をそれぞれ示している。
【0058】
そして、目標推力に対し、変換器76において予め設定されたマップからこの目標推力に対する目標モータ回転位置データを割り出し、このデータに対し、位置検出器20で検出された現在のモータ回転位置データを位置フィードバックとして減算し、このデータに、一方でこのデータを積分器77において積分処理を行いさらに増幅器78において積分係数Kpiを乗算処理したデータを求めて、これを加算し、この加算後のデータにさらに増幅器79において係数Kppを乗算処理する。他方、目標推力に対し、推力センサ46で検出された現在のピストン推力を推力フィードバックとして減算し、このデータに対し、一方で積分器71において積分処理を行いさらに増幅器72において積分係数Kfiを乗算処理したデータを求めて、これを加算し、この加算後のデータにさらに増幅器73において係数Kfpを乗算処理する。
【0059】
そして、推力センサ46で検出された現在のピストン推力に基づいて、図3に示すマップから、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数α(0≦α≦1)を求め、増幅器73において係数Kfpが乗算処理された推力制御のデータに可変増幅器74においてαを乗算処理するとともに、増幅器79において係数Kppが乗算処理された位置制御のデータに可変増幅器80において1−αを乗算処理し、これらを加算して得られた値で電動モータ19を制御する。
【0060】
ここで、図3に示すマップは、推力センサ46で検出された現在のピストン推力が、所定の第1しきい値F1以下である場合はα=0とし、この第1しきい値F1よりも大きい第2しきい値F2以上の場合はα=1とする。そして、推力センサ46で検出された現在のピストン推力が、所定の第1しきい値F1より大きく第2しきい値F2より小さい範囲では、ピストン推力が大きいほど、0から1の範囲でαが比例的に大きくなって、位置制御の制御量の配分を小さくするとともに推力制御の制御量の配分を大きくする。すなわち、ピストン推力が第2しきい値F2以上で大きい場合は位置制御の制御量を0として推力制御の制御量だけで制御することになり、ピストン推力が第1しきい値F1以下で小さい場合は推力制御の制御量を0として位置制御の制御量だけで制御することになる。さらに、これら第1しきい値F1より大きく第2しきい値F2より小さい範囲では、位置制御の制御量と推力制御の制御量とを合わせることになるが、このとき、ピストン推力が小さいほど、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御量の配分を小さくする。
【0061】
なお、上記に限定されることなく、例えば、推力センサ46で検出された現在のピストン推力が、予め設定された所定値に達していない場合には、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御の配分を小さくする制御とし、予め設定された所定値に達している場合には、位置制御の制御量の配分を小さくするとともに推力制御の制御の配分を大きくする制御を行うものとしてもよい。
【0062】
また、推力センサ46で検出された現在のピストン推力に基づいて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数αを求めるものでなく、目標推力に基づいて推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数αを求めるマップを用いてもよい。すなわち、コントローラは、ピストン40に発生させる目標推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるようにしてもよいのである。
【0063】
さらに、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数αのマップを、車両状態、ブレーキ動作状態、モータ位置等によって変化させても良い。
【0064】
加えて、目標推力に対する目標モータ回転位置データを割り出す変換器76におけるマップとして、予め設定されたものに限定されることなく、制御中に推力センサ46で検出されるピストン推力と位置検出器20で検出されるモータ回転位置との関係から作成したものを使用することも可能である。
【0065】
以上に述べた第1実施形態の電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムによれば、コントローラは、推力センサ46で検出されたピストン推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるため、上記したように高推力領域では推力センサ46で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御のみを行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出器20で検出されたモータ回転位置をフィードバックとする位置制御とを組み合わせ、さらに極低推力領域では位置検出器20で検出されたモータ回転位置をフィードバックとする位置制御のみを行うことができる。よって、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと位置制御を合わせ、さらに極低推力領域で位置制御のみを行って電動モータ19が0位置で停止するように制御すれば、図4に示すように、減力方向でピストン推力が0になった時点T1から電動モータ19が行きすぎても位置制御によりこれを円滑に戻すことができる。また、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、低推力領域での推力制御による分解能不足を位置制御で補って分解能を高めることができ、さらに極低推力領域では誤差の大きい推力制御を排除して位置制御のみを行うことで、制御精度を確保できる。これらは、減速機構22により電動モータ19は多回転されることになるため、結果として、位置検出器20の分解能が高くなっているためである。
【0066】
したがって、応答性を向上させることができ、しかも、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。なお、推力制御と位置制御とを並列して行うことにより、推力センサ46の故障時でも位置制御によりブレーキ性能を確保するようにもできる。
【0067】
しかも、低推力領域では、推力センサ46で検出されたピストン推力が小さいほど、位置検出器20で検出されたモータ回転位置をフィードバックとする位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力センサ46で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御の制御量の配分を小さくするため、推力センサ46の推力検出の分解能の低下に応じて、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御量の配分を小さくすることになる。したがって、低推力領域での制御の精度を一層向上させることができる。
【0068】
本発明の第2実施形態の電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムを主に図5を参照しつつ第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0069】
第2実施形態の電動ディスクブレーキは、第1実施形態に対しコントローラの一部が主に相違している。
【0070】
第2実施形態のコントローラは、各種センサからの検出データに基づいて電動ディスクブレーキの制動力すなわちピストン40に発生させる目標推力を求め、この目標推力をピストン40に発生させるように電動モータ19に対し、推力センサ46で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御を行う。その際に、コントローラは、推力センサ46で検出されたピストン推力が予め設定された値に達している場合は、推力センサ46で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御を行う一方、推力センサ46で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出器20で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行う。
【0071】
図5は、上記制御を行うためのコントローラ内に設けられた制御ブロックを示している。
【0072】
図5において、符号82は積分処理を行う積分器を、符号83は予め設定された積分係数Kfiによって処理を行う増幅器を、符号84は予め設定された係数Kfpによって処理を行う増幅器をそれぞれ示している。また、符号86は、予め設定されたマップに基づいて変換処理を行う変換器を、符号87は推力センサ46で検出されたピストン推力によって制御される制御器をそれぞれ示している。
【0073】
そして、目標推力に対し、推力センサ46で検出された現在のピストン推力を推力フィードバックとして減算することになるが、制御器87において、推力センサ46で検出されたピストン推力が予め設定された値に達している場合は、推力センサ46で検出されたピストン推力を推力フィードバックとして減算する一方、推力センサ46で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出器20で検出されたモータ回転位置から変換器86においてマップ(剛性モデル)にしたがって割り出したピストン推力を推定推力フィードバックとして減算する。そして、このデータに対し、一方で積分器82において積分処理を行いさらに増幅器83において積分係数Kfiを乗算処理したデータを求めて、これを加算し、この加算後のデータにさらに増幅器84において係数Kfpを乗算処理して得られた値で電動モータ19を制御する。
【0074】
このように、第2実施形態の電動ディスクブレーキによれば、コントローラが、推力センサ46で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出器20で検出されたモータ回転位置から推定推力フィードバックを割り出して推力制御を行うため、上記のように、高推力領域では推力センサ46で検出されたピストン推力をフィードバックとする推力制御を行い、低推力領域では、位置検出器20で検出されたモータ回転位置から推定推力フィードバックを割り出して推力制御を行うことになる。よって、低推力領域では位置検出器20で検出されたモータ回転位置から推力フィードバックを推定して推力制御を行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと、モータ回転位置から作成された推力フィードバックを用いて推力制御を行うことになり、例えば、変換器86におけるマップが、モータ回転位置がマイナスの場合は、マイナスの推定推力フィードバックを作成するものとすれば、電動モータ19が行き過ぎてしまってもピストン40を円滑に戻すことが可能となる。また、低推力領域において分解能が不足する推力制御ではなく、分解能が確保できるモータ回転位置から推定推力フィードバックを作成して推力制御を行うことで、第1実施形態と同様に分解能を高めることができる。
【0075】
したがって、応答性を向上させることができ、しかも、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0076】
第2実施形態では、予め設定されたしきい値により制御を切り換えたが、図6に示すように、制御器87に換えて、第1実施形態と同様のピストン推力に応じて可変となる係数αによって処理を行う可変増幅器74と、ピストン推力に応じて可変となる係数1−αによって処理を行う可変増幅器80とを設けることで、ピストン推力の大きさによってフィードバック量の配分を変化させても良い。
【0077】
なお、以上においては、位置制御、推力制御をPI制御としているが、フィードフォワード制御あるいはPID制御とすることも可能である。
【0078】
本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムを主に図7〜図15を参照しつつ第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。なお、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付しその説明は略す。
【0079】
図7に示すように、第3実施形態においては、ピストン40の円筒部材42aと押圧部材42bとが、互いに回転方向の相対移動が規制され、軸線方向の移動に自由度を設けるようにスプライン結合部110によって結合されている。そして、ピストン40にピストン推力が発生していない状態では、互いに対向する円筒部材42aの対向面111と押圧部材42bの対向面112とが離間しており、ピストン40にピストン推力が発生するとその初期すなわちピストン推力が予め設定された所定値F12より小さい状態では、円筒部材42aの対向面111と押圧部材42bの対向面112とが離間した状態のまま押圧部材42bの押圧面113が推力センサ46を押圧する。そして、ピストン推力が所定値F12に達すると、円筒部材42aの対向面111と押圧部材42bの対向面112とが当接することになり押圧部材42bの押圧面113がそれ以上推力センサ46を押圧するのを規制する。
【0080】
これにより、推力センサ46には、所定値F12を超えるピストン推力が入力されることがなく、推力センサ46に入力されるピストン推力の範囲は0からF12という小側の所定範囲に限定されることになる。すなわち、図8に示すように、実際のピストン推力が0からF12を超えるF13まで変化しても、推力センサ46の出力は0からF12までの範囲内に限定される。その結果、推力センサ46には、許容荷重がF12以下と小さく、検出範囲が0からF12と狭く限定される一方、この範囲の分解能が高いセンサを使用することができる。
【0081】
以上において、スプライン結合部110と円筒部材42aの対向面111と押圧部材42bの対向面112とが、推力センサ46に入力されるピストン推力の範囲を機械的に小側の所定範囲に限定する推力範囲限定部(推力範囲限定手段)114を構成している。
【0082】
ここで、上記のように、推力センサ46として検出範囲が0からF12と狭いセンサを使用することができる理由であるが、電動ディスクブレーキの電動モータ19のモータ回転位置と実際のピストン推力との関係は、ブレーキパッド14,15の摩耗状態(摩耗量大、摩耗量中、新品および偏摩耗状態)によって図9に示すような関係を示すことになるが、この図9から明らかなように、いずれの摩耗状態でも低推力領域では上記関係は大きく変化するものの、あるピストン推力F11以上では概ね一定の関係になる。そして、通常のブレーキ作動で発生するピストン推力は、このピストン推力F11未満の範囲となっている。これらの理由から、このピストン推力F11を若干超える値を上記した所定値F12に設定し、この所定値F12以下の範囲のピストン推力のみを推力センサ46で検出する一方、この所定値F12を超える範囲については、モータ回転位置でピストン推力を正確に推定することができることから、推定により推力を求めれば良いのである。
【0083】
図10は、上記制御を行うためのコントローラ内に設けられた制御ブロックを示している。
【0084】
推力フィードバック制御部116は、目標推力と、推力センサ46で検出されたフィードバックとしてのピストン推力とが入力され、これらに基づいて電動モータ19の制御量を演算し出力するものである。
【0085】
推定推力制御部117は、目標推力と、推力センサ46で検出されたフィードバックとしてのピストン推力と、位置検出器20で検出されたフィードバックとしてのモータ回転位置とが入力され、位置検出器20で検出されたモータ回転位置に基づいてピストン推力を推定しこの推定推力を出力するとともに、目標推力と、位置検出器20で検出されたモータ回転位置とに基づいて電動モータ19の制御量を演算し出力するものである。
【0086】
配分変更部118は、推定推力制御部117から出力される推定推力または推力センサ46で検出されたフィードバックとしてのピストン推力に基づいて、上記推力フィードバック制御部116でピストン推力に基づき演算された制御量および上記推定推力制御部117でモータ回転位置に基づき演算された制御量の配分を変更するための係数α(0≦α≦1)を割り出す。
【0087】
α乗算部119は、配分変更部118で割り出された係数αを推力フィードバック制御部116から出力される制御量に乗算する可変増幅器である。
【0088】
1−α乗算部120は、配分変更部118で割り出された係数αを1から減算した1−αを推定推力制御部117から出力される制御量に乗算する可変増幅器である。
【0089】
そして、推力フィードバック制御部116から出力される制御量に配分変更部118で割り出された係数αをα乗算部119で乗算した後の制御量と、推定推力制御部117から出力される制御量に係数1−αを1−α乗算部120で乗算した後の制御量とを加算する。
【0090】
モータ駆動部122は、この加算した制御量で電動キャリパ10内の電動モータ19を駆動する。
【0091】
ここで、上記した配分変更部118は、推力センサ46で検出されたピストン推力(ピストンに発生させる目標推力でも可)が第1しきい値に達していない場合は、ピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにモータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくする一方、推力センサ46で検出されたピストン推力(ピストンに発生させる目標推力でも可)が第1しきい値よりも大きい第2しきい値に達した場合は、ピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにモータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくする。
【0092】
具体的に例示すれば、配分変更部118は、推力センサ46で検出されたピストン推力に対する係数αの図11に示すようなマップにしたがって係数αを割り出す。
【0093】
すなわち、配分変更部118は、推力センサ46で検出されたピストン推力が0から上記した第1しきい値F11までの小さい所定範囲にあるとき、係数α=1とすることになり、その結果、この範囲においてモータ駆動部122は、推力フィードバック制御部116から出力される制御量のみで電動モータ19を駆動する。ここで、上記したように、ピストン推力が0から上記した第1しきい値F11までの小さい所定範囲にあるときには、推力センサ46が高い分解能でピストン推力を検出できることと、モータ回転位置に基づいてピストン推力を正確には推定できないこととから、推力センサ46で検出されるピストン推力に基づいて推力フィードバック制御部116から出力される制御量のみで電動モータ19を駆動する。
【0094】
また、配分変更部118は、推力センサ46で検出されたピストン推力が上記した第1しきい値F11から第2しきい値F12までの所定範囲にあるとき、第1しきい値F11で係数α=1となり、第2しきい値F12で係数α=0となり、第1しきい値F11から第2しきい値F12に近づくにしたがって直線的(比例的)に係数αが減っていくように係数αが決められる。その結果、モータ駆動部122は、推力フィードバック制御部116から出力される制御量と推定推力制御部117から出力される制御量とを、推力センサ46で検出されたピストン推力が大きいほど推力フィードバック制御部116から出力される制御量が大きくかつ推定推力制御部117から出力される制御量が小さくなるように配分しこれらを加算した制御量で電動モータ19を駆動する。
【0095】
そして、第2しきい値F12では係数α=0となるため、モータ駆動部122は、推定推力制御部117から出力される制御量のみで電動モータ19を駆動する。ここで、上記したように、推力センサ46に入力されるピストン推力は、上記第2しきい値F12を超えることがないように推力範囲限定部114で限定されているため、推力センサ46で検出されたピストン推力がF12であった場合、実際のピストン推力はF12以上となっていることがある。このとき、推力センサ46は低推力の分解能を高めた結果、第2しきい値F12を超えたピストン推力を正確に検出することはできないことと、第2しきい値F12を超えるとモータ回転位置に基づいてピストン推力を正確に推定できることとから、上記のように推力センサ46で検出されたピストン推力がF12であった場合、位置検出器20で検出されたモータ回転位置に基づいてピストン推力を推定しこの推定推力に基づいて推定推力制御部117から出力される制御量のみで電動モータ19を駆動する。
【0096】
なお、例えば図12に示すように、推力センサ46で検出されるピストン推力の上限となる第2しきい値が、実際のピストン推力に対して、電動キャリパ10の組み付け誤差によって、個体Aと個体BとでF12AとF12Bのように変化したり、例えば図13に示すように、第2しきい値が個体Aと個体BとでF12AとF12Bのように変化した場合に、第2しきい値を検出するモータ回転位置がX1とX2のように変化したりすることがある。このため、第1しきい値F11と第2しきい値F12との関係は、電動キャリパ10の組み付け誤差以上である必要がある。
【0097】
上記した推力フィードバック制御部116は、PI制御を行うもので、図14に示すように、積分処理を行う積分器124と、予め設定された積分係数Kiによって処理を行う増幅器125と、予め設定された係数Kpによって処理を行う増幅器126とを有しており、目標推力に対し、推力センサ46で検出された現在のピストン推力を推力フィードバックとして減算し、このデータに対し、一方で積分器124において積分処理を行いさらに増幅器125において積分係数Kiを乗算処理したデータを求めて、これを加算し、この加算後のデータにさらに増幅器126において係数Kpを乗算処理した値を制御量として出力する。
【0098】
また、上記した推定推力制御部117は、PI制御を行うもので、図15に示すように、予め設定された剛性モデルのマップに基づいて変換処理を行う変換器130と、積分処理を行う積分器131と、予め設定された積分係数Kiによって処理を行う増幅器132と、予め設定された係数Kpによって処理を行う増幅器133と、予め設定された剛性逆モデルのマップに基づいて変換処理を行う変換器134と、剛性モデルのマップおよび剛性逆モデルのマップを補正するモデル補正部135とを有している。
【0099】
そして、推定推力制御部117は、目標推力に対し、変換器130において予め設定された剛性モデルのマップからこの目標推力に対する目標モータ回転位置データを割り出し、このデータに対し、位置検出器20で検出された現在のモータ回転位置データを位置フィードバックとして減算し、このデータに、一方でこのデータを積分器131において積分処理を行いさらに増幅器132において積分係数Kiを乗算処理したデータを求めて、これを加算し、この加算後のデータにさらに増幅器133において係数Kpを乗算処理した値を制御量として出力する。
【0100】
また、推定推力制御部117は、位置フィードバックとしての位置検出器20で検出された現在のモータ回転位置データに対し、変換器134において予め設定された剛性逆モデルのマップから推定推力を割り出して出力する。
【0101】
さらに、推定推力制御部117は、第1しきい値F11と第2しきい値F12との間において位置フィードバックとしての位置検出器20で検出された現在のモータ回転位置データと推力フィードバックとしての推力センサ46で検出された現在のピストン推力とから、モデル補正部135において、剛性モデルおよび剛性逆モデルの補正データを演算し、変換器130の剛性モデルのマップデータおよび変換器134の剛性逆モデルのマップデータを補正する。
【0102】
なお、第2しきい値F12以降の領域では、推力センサ46の剛性が影響しなくなるため、固定の剛性モデルを使用する。しかし、第2しきい値F12は、上述したように電動キャリパ10の個体によって異なるため、推力センサ46で検出されたピストン推力の変化量と、位置検出器20で検出されたモータ回転位置の変化量とから、第2しきい値F12を設定する。この第2しきい値F12の設定は、例えば、モータ回転位置の変化量がゼロではないときに、ピストン推力の変化量がゼロとなった場合に設定する。ただし、その設定時期については、機構のバックラッシュを考えて推力発生後の増力方向へピストンが移動しているときに限定する必要がある。
【0103】
以上に述べた第3実施形態の電動ディスクブレーキおよびその制御プログラムによれば、推力センサ46に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定部114を有することから、この推力範囲限定部114が推力センサ46に入力されるピストン推力の範囲を低推力領域のみに限定することで、推力センサ46として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができる。
【0104】
したがって、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。しかも、推力センサ46として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができるため、推力センサ46についてコスト低減および小型化が図れる。
【0105】
また、推力センサ46として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができるため、電動モータ19を行き過ぎたりせずに停止させることが可能となる。したがって、応答性を向上させることができる。
【0106】
加えて、推力センサ46で検出されたピストン推力またはピストン40に発生させる目標推力が第1しきい値に達していない場合は、ピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにモータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくする一方、推力センサ46で検出されたピストン推力またはピストン40に発生させる目標推力が第2しきい値に達した場合は、ピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにモータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくするため、低推力領域では、この領域の分解能が高い推力センサ46のピストン推力検出の分解能に合わせて、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくする一方、推力センサ46でピストン推力が検出できない高推力領域では、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくする。
【0107】
したがって、全推力領域での制御の精度を効率良く向上させることができる。
【0108】
加えて、第2しきい値F12を、ピストン推力の変化量とモータ回転位置の変化量とから設定するため、個体によって異なる第2しきい値F12を正確に設定することができる。
【0109】
なお、第3実施形態においても、推力センサ46で検出された現在のピストン推力に基づいて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数αを求めるものでなく、目標推力に基づいて推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数αを求めるマップを用いてもよい。すなわち、コントローラは、ピストン40に発生させる目標推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるようにしてもよいのである。
【0110】
さらに、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるための係数αのマップを、車両状態、ブレーキ動作状態、モータ位置等によって変化させても良い。
【0111】
加えて、目標推力に対する目標モータ回転位置データを割り出す変換器76におけるマップとして、予め設定されたものに限定されることなく、制御中に推力センサ46で検出されるピストン推力と位置検出器20で検出されるモータ回転位置との関係から作成したものを使用することも可能である。
【0112】
さらに、位置制御、推力制御をPI制御としているが、フィードフォワード制御あるいはPID制御とすることも可能である。
【0113】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の請求項1記載の電動ディスクブレーキによれば、制御手段は、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御のみを行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うことができる。よって、例えば、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、低推力領域での推力制御による分解能不足を位置制御で補って分解能を高めることができる。したがって、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0114】
また、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと位置制御を合わせることになり、その結果、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。したがって、応答性を向上させることができる。
【0115】
本発明の請求項2記載の電動ディスクブレーキによれば、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が小さいほど、位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするため、推力検出手段の推力検出の分解能の低下に応じて、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御量の配分を小さくすることになる。したがって、低推力領域での制御の精度を一層向上させることができる。
【0116】
本発明の請求項3記載の電動ディスクブレーキによれば、制御手段は、推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域では、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことができる。よって、低推力領域において分解能が不足する推力制御ではなく、分解能が確保できるモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、分解能を高めることができる。したがって、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0117】
また、低推力領域で位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと、モータ回転位置から割り出されたピストン推力を用いて推力制御を行うことになり、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。したがって、応答性を向上させることができる。
【0118】
本発明の請求項4記載の電動ディスクブレーキによれば、推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定手段を有することから、この推力範囲限定手段が推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を低推力領域のみに限定することで、推力検出手段として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができる。したがって、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0119】
しかも、推力検出手段として高い分解能で低推力領域のみ検出可能なものを用いることができるため、推力検出手段についてコスト低減および小型化が図れる。
【0120】
本発明の請求項5記載の電動ディスクブレーキによれば、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするため、例えば、低推力領域では、この領域の分解能が高い推力検出手段のピストン推力検出の分解能に合わせて、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくする一方、推力検出手段でピストン推力が検出できない高推力領域では、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくする。したがって、全推力領域での制御の精度を効率良く向上させることができる。
【0121】
本発明の請求項6記載の電動ディスクブレーキによれば、所定のしきい値を、ピストン推力の変化量とモータ回転位置の変化量とから設定するため、個体によって異なるしきい値を正確に設定することができる。
【0122】
本発明の請求項7記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムによれば、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力に応じて、推力制御および位置制御の制御量の配分を変化させるため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御のみを行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うことができる。よって、例えば、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、低推力領域での推力制御による分解能不足を位置制御で補って分解能を高めることができる。したがって、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0123】
また、低推力領域で推力制御と位置制御とを組み合わせて行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと位置制御を合わせることになり、その結果、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。したがって、応答性を向上させることができる。
【0124】
本発明の請求項8記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムによれば、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が小さいほど、位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするため、推力検出手段の推力検出の分解能の低下に応じて、位置制御の制御量の配分を大きくするとともに推力制御の制御量の配分を小さくすることになる。したがって、低推力領域での制御の精度を一層向上させることができる。
【0125】
本発明の請求項9記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムによれば、推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うため、例えば、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域では、位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことができる。よって、低推力領域において分解能が不足する推力制御ではなく、分解能が確保できるモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、分解能を高めることができる。したがって、低推力領域での制御精度を向上させてブレーキフィーリングを向上させることができる。
【0126】
また、低推力領域で位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことで、減力方向でピストン推力が0に近づくと、モータ回転位置から割り出されたピストン推力を用いて推力制御を行うことになり、電動モータが行き過ぎてしまってもピストンを円滑に戻すことが可能となる。したがって、応答性を向上させることができる。
【0127】
本発明の請求項10記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムによれば、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、推力検出手段で検出されたピストン推力またはピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を小さくするとともにモータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を大きくするため、例えば、低推力領域では、この領域の分解能が高い推力検出手段のピストン推力検出の分解能に合わせて、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を小さくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を大きくする一方、推力検出手段でピストン推力が検出できない高推力領域では、モータ回転位置に基づく制御の制御量の配分を大きくするとともにピストン推力に基づく制御の制御量の配分を小さくする。したがって、全推力領域での制御の精度を効率良く向上させることができる。
【0128】
本発明の請求項11記載の電動ディスクブレーキの制御プログラムによれば、所定のしきい値を、ピストン推力の変化量とモータ回転位置の変化量とから設定するため、個体によって異なるしきい値を正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態の電動ディスクブレーキの電動キャリパを示す断面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの要部を示す制御ブロック図である。
【図3】 本発明の第1実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラのピストン推力に対する係数αを割り出すためのマップを示す図である。
【図4】 本発明の第1実施形態の電動ディスクブレーキの作動時のモータ回転位置およびピストン推力の一例を示すタイミングチャートである。
【図5】 本発明の第2実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの要部を示す制御ブロック図である。
【図6】 本発明の第2実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの要部の変形例を示す制御ブロック図である。
【図7】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキの電動キャリパを示す断面図である。
【図8】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキにおける実際のピストン推力(横軸)と推力センサで検出されるピストン推力(縦軸)との関係を示す特性線図である。
【図9】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキにおけるモータ回転位置(横軸)と実際のピストン推力との関係(縦軸)をブレーキパッドの状態毎に示す特性線図である。
【図10】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの要部を示す制御ブロック図である。
【図11】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラのピストン推力に対する係数αを割り出すためのマップを示す図である。
【図12】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキにおける実際のピストン推力(横軸)と推力センサで検出されるピストン推力(縦軸)との関係の個体差を示す特性線図である。
【図13】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキにおけるモータ回転位置(横軸)と実際のピストン推力(縦軸)との関係の個体差を示す特性線図である。
【図14】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの推力フィードバック制御部を示す制御ブロック図である。
【図15】 本発明の第3実施形態の電動ディスクブレーキのコントローラの推定推力制御部を示す制御ブロック図である。
【図16】 従来の電動ディスクブレーキのモータ回転位置とピストン推力との関係を示す特性線図である。
【図17】 従来の電動ディスクブレーキのコントローラの要部を示す制御ブロック図である。
【図18】 従来の電動ディスクブレーキの作動時のモータ回転位置およびピストン推力の一例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
10 電動キャリパ
11 ディスク
14,15 ブレーキパッド
19 電動モータ
20 位置検出器(位置検出手段)
21 ボールランプ機構(変換機構部)
40 ピストン
41,43 ネジ部(変換機構部)
46 推力センサ(推力検出手段)
114 推力範囲限定部(推力範囲限定手段)

Claims (11)

  1. 電動モータと、
    該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、
    前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、
    前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、
    該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキであって、
    前記制御手段は、
    前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力に応じて、前記推力制御および前記位置制御の制御量の配分を、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うように変化させることを特徴とする電動ディスクブレーキ。
  2. 前記制御手段は、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が小さいほど、前記位置制御の制御量の配分を大きくするとともに前記推力制御の制御量の配分を小さくすることを特徴とする請求項1記載の電動ディスクブレーキ。
  3. 電動モータと、
    該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、
    前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、
    前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、
    該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキであって、
    前記制御手段は、
    前記ブレーキパッドをディスクに押圧した後に、前記推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことを特徴とする電動ディスクブレーキ。
  4. 電動モータと、
    該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、
    前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、
    前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、
    該推力検出手段で検出されたピストン推力および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づいて前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキであって、
    ピストン推力が所定値に達したときに前記推力検出手段への押圧を規制して前記推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定手段を有することを特徴とする電動ディスクブレーキ。
  5. 前記制御手段は、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、前記ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともに前記モータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、前記推力制御の制御量の配分を小さくするとともに前記位置制御の制御量の配分を大きくすることを特徴とする請求項4記載の電動ディスクブレーキ。
  6. 前記所定のしきい値を、前記ピストン推力の変化量と前記モータ回転位置の変化量とから設定することを特徴とする請求項5記載のディスクブレーキ。
  7. 電動モータと、
    該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、
    前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、
    前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、
    該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキの制御プログラムであって、
    前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力に応じて、前記推力制御および前記位置制御の制御量の配分を、高推力領域では推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御を行い、低推力領域ではこの推力制御と位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づく位置制御とを組み合わせて行うように変化させることを特徴とする電動ディスクブレーキの制御プログラム。
  8. 前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が小さいほど、前記位置制御の制御量の配分を大きくするとともに前記推力制御の制御量の配分を小さくすることを特徴とする請求項7記載の電動ディスクブレーキの制御プログラム。
  9. 電動モータと、
    該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、
    前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、
    前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、
    該推力検出手段で検出されたピストン推力に基づく推力制御によって、前記ピストンに目標推力を発生させるように前記電動モータを制御する制御手段とを有する電動ディスクブレーキの制御プログラムであって、
    前記ブレーキパッドをディスクに押圧した後に、前記推力検出手段で検出されたピストン推力が予め設定された値に達していない場合は、前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置からピストン推力を推定して推力制御を行うことを特徴とする電動ディスクブレーキの制御プログラム。
  10. 電動モータと、
    該電動モータの回転運動をピストンの直線運動に変換し該ピストンでブレーキパッドをディスクに接触させる変換機構部と、
    前記電動モータのモータ回転位置を検出する位置検出手段と、
    前記ピストンが受けるピストン推力を検出する推力検出手段と、
    該推力検出手段で検出されたピストン推力および前記位置検出手段で検出されたモータ回転位置に基づいて前記電動モータを制御する制御手段と、
    ピストン推力が所定値に達したときに前記推力検出手段への押圧を規制して前記推力検出手段に入力されるピストン推力の範囲を限定する推力範囲限定手段とを有する電動ディスクブレーキの制御プログラムであって、
    前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達していない場合は、前記ピストン推力に基づく推力制御の制御量の配分を大きくするとともに前記モータ回転位置に基づく位置制御の制御量の配分を小さくする一方、前記推力検出手段で検出されたピストン推力または前記ピストンに発生させる目標推力が所定のしきい値に達した場合は、前記推力制御の制御量の配分を小さくするとともに前記位置制御の制御量の配分を大きくすることを特徴とする電動ディスクブレーキの制御プログラム。
  11. 前記所定のしきい値を、前記ピストン推力の変化量と前記モータ回転位置の変化量とから設定することを特徴とする請求項10記載のディスクブレーキの制御プログラム。
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