JP3934449B2 - 継合式釣竿 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、並継式、逆並継式、振出式、インロー継合式の継合式釣竿に関する。
【0002】
【従来の技術】
釣竿には大きな曲げ力が作用するが、これによっても竿が破損しないよう、最大曲げの部位が順次滑らかに後方に移動するよう竿管各部位の曲げ剛性が設定される。然しながら、竿管を継ぎ合わせる継合式釣竿の継合領域では、大小竿管の重なりが生じ、一般的に、その前後領域に比べて曲げ剛性が急に上昇する。この継合領域端部における応力集中の防止や、撓みバランス向上に鑑みて、本出願人による特開平11−215936号公報では、大小竿管の継合部の端部側領域において、低剛性層を形成する構造が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
然しながら、上記公報開示の構造では、各竿管の継合部端部側領域には、軸長方向指向の強化繊維の層が存在しており、この層の存在によって継合領域の曲げ剛性の低減には限度があり、その前後領域の曲げ剛性との相違は依然として高く、応力集中の防止は充分とは言えない。
また、継合部の端の曲げ剛性が大きいと、その縁部が当接して継ぎ合わせた相手方竿管への応力集中を大きくするが、上記公報開示の構造では、各竿管の継合部には軸長方向指向の強化繊維の層が(階段状に)存在しており、その継合部の端において急に存在しなくなる。従って、やはり、その継合領域を外れた領域の曲げ剛性との相違は依然として高く、応力集中の防止は充分とは言えない。また、この継合領域とその前後の撓み変化を滑らかにさせるには、端から継合部端部側領域内部にまで可及的に滑らかに曲げ剛性を変化させる必要がある。
依って本発明は、継合領域の端部近くにおける応力集中の防止された継合式釣竿の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み本発明の請求項1では、繊維強化樹脂製の大径竿管と小径竿管とが互いに継ぎ合わされる釣竿であって、大径竿管の継合部の端部側領域と小径竿管の継合部の端部側領域との少なくとも何れか一方には、軸長方向強化繊維を主体とする層が存在しておらず、継合部端部側領域に軸長方向強化繊維を主体とする層が存在していない竿管の、残りの継合部領域から該継合部端部側領域との境界部にまで至っている軸長方向強化繊維を主体とする第1層と、該第1層の内方又は外方に設けられ、該継合部端部側領域から離れて設けられている軸長方向強化繊維を主体とする第2層とを具備することを特徴とする継合式釣竿を提供する。
本明細書での継合部の端部側領域とは、この継合部を有する竿管の端部を含む領域の意味であり、継合部の範囲内で長さはいくらでもよい。
【0005】
継合部の端部側領域に軸長方向強化繊維を主体とする層が存在していないため、曲げ剛性を小さく構成でき、継合領域が撓みを受けた場合に、この端部側領域と対面している他方の竿管部位に対して作用する力は小さくなり、応力集中が防止できる。また、この端部側領域に対応する領域の継合領域の曲げ剛性は小さくでき、それだけ撓み性が向上する。
更に、第1層の端が継合部端部側領域端と接しており、第2層の端はこれよりも離れているため、この第2層の端から前記第1層の端に至って更にその先方まで軸長方向強化繊維を主体としない層を設けることができ、この層によって、第1層と、該第1層の端と接している継合部端部側領域の1つの層との境界部を保持できる。また、第1層によって、第2層と、該第2層の端と接している前記軸長方向強化繊維を主体としない層との境界部を保持できる。従って、軸長方向強化繊維を主体とする層と、軸長方向強化繊維を主体としない層とが竿管の長手方向に互い違いに並ぶことで、それらの境界部の強度が保持できる。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態例に基づき、更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る並継式釣竿要部の縦断面図、図2は振出式釣竿要部の縦断面図、図3は図1の要部拡大断面図である。本願の各竿管は、エポキシ樹脂等の合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製竿管である。実施例として使用しているマトリックスはエポキシ樹脂である。図1では、後側である大径竿管10の前側継合部10T内に、前側である小径竿管12の後側継合部12Tを差し込んで継ぎ合わせている。TRは差し込んだ状態の両継合部を含んだ継合領域を示す。継合部10Tの端部側領域10Eには、軸長方向指向の強化繊維を主体とする層を設けていない。また、これらのことは図2に示す振出式釣竿においても同様である。並継式の場合は、本発明の構造により大径竿管の端部(玉口部)が撓み易くなることにより、この領域の小径竿管の撓みに追随でき、該小径竿管の不用意な抜けが防止できる。
【0007】
図3を参照する。大径竿管10の前側継合部10T領域内には、竿管10の後方部(本体部)から延伸し、軸長方向に指向した強化繊維としての炭素繊維を主体とした第1層J1が至っている。更には、前記の継合部10Tの端部側領域10Eとの境界K1にまで至っており、その外側に同様な軸長方向炭素繊維を主体とする第2層J2が継合部10T領域内に至っており、前記境界K1よりも後方位置である境界K2にまで至っている。
【0008】
前記境界K1で第1層J1と接している残りの層Y1(端部側領域10Eの範囲)には、前記第1層J1よりも曲げ剛性が数分の一程度に小さくなる繊維強化樹脂材を設ける。例えば、強化繊維の方向を±45度方向等の傾斜方向に指向させたり、円周方向(90度方向)に指向させたりする。或いは、ガラス繊維等の弾性率の低い強化繊維を使用する。また、これらを併用する、等である。
【0009】
前記境界K2で第2層J2と接している残りの層Y2にも、前記層Y1と同様に曲げ剛性が数分の一程度に小さくなる繊維強化樹脂材を設ける。その具体例は上記と同様である。
これらの軸長方向層J1,J2と層Y1,Y2の内側と外側には、大径竿管の本体部から端面K0にまで至り、円周方向に指向した内側層C1と外側層C2とが設けられている。更には、継合部10Tの最内層であって、端面部から継合部の長さの7割程内部に至る位置まで、補強層Hが設けられている。この補強層も強化繊維を円周方向か±45度等の傾斜方向に指向させる。
【0010】
大径竿管10の継合部10Tは以上の構成であるため、その端部側領域10Eにおいては、軸長方向の強化繊維を主体とする層が存在しないため、この領域の曲げ剛性が非常に小さくなり、境界K2より後方の継合部領域の曲げ剛性と比較して、好ましくは1/5以下に設定する。更に好ましくは、1/10以下にする。また、この端部側領域10Eとその残り領域との境界位置K1において、曲げ剛性が急変することは撓みの滑らかさを阻害するため好ましくない。これに対して、本形態例では、軸長方向第1層J1の外側の第2層J2を、前記境界K1よりも後方位置K2が端となるように設けており、この境界位置K2から境界位置K1を経て先端K0に至る領域では、曲げ剛性が段々と小さくなるよう構成している。
【0011】
更には、層J2と層Y2との境界K2は、該境界位置K2の前後に亘って連続したその内側の層J1によって保持されているため、撓みを受けた場合等に、該境界部において破損し易くなることが防止されている。また、層J1と層Y1との境界K1は、該境界位置K1の前後に亘って連続したその外側の層Y2によって保持されているため、撓みを受けた場合等に、該境界部において破損し易くなることが防止されている。従って、継合部10Tの強度が確保されている。層Y2には強化繊維を傾斜方向に指向させるのが好ましい。繊維が位置K1の前後に亘って配向し、強度が確実に確保される。
【0012】
以上の構成があれば、本願請求項1と2は成り立つが、この形態例では更に、小径竿管12においても同様な構造を採用している。符号’を付した記号の示すものは、大径竿管10において、その符号’を除いた記号の示す層等に対応しており、詳述しない事項は、この対応する大径竿管10の各説明を適用する。本体部から後側継合部12T内の位置K1’にまで至る軸長方向炭素繊維を主体とする層J1’を設け、それと端面が接する端部側領域12Eの層Y1’には、曲げ剛性の小さくなる層を設ける。
【0013】
これらの外側には、前記境界K1’よりも前側位置を境界K2’として、本体部から軸長方向炭素繊維を主体とする第2層J2’を設け、これと端面が接する端面K0’側の層Y2’を設ける。層Y2’は、前記層Y1’と同様な低曲げ剛性の繊維強化樹脂層とする。層J1’と層Y1’の内側には、強化繊維が円周方向に指向した層C1’を設け、また、層J2’と層Y2’の外側には、強化繊維が円周方向に指向した層C2’を設けている。更には、層C2’の外側に、並継式の継合部12Tの適切な外径を設定し、補強するために、補充層H’を設けている。
上記構成による作用効果は、大径竿管10の場合の説明と同様である。
【0014】
図4から図8は参考形態例を説明する図である。図4は、その継合式釣竿の内の、大径竿管の製法を説明する図である。芯金20の先部に、+45度方向と、−45度方向に、夫々指向した炭素繊維を主体とするシートを重合させたプリプレグPHを巻回する。その外側には、竿管の全長に対応する長さであって、強化繊維を円周方向に指向させたプリプレグPC1を巻回する。その外側には、先部領域Lが、図示の如く、夫々が先細状の三角形状にカット形成された複数個の三角形要素を巻回方向(円周方向)に並べた形態のプリプレグPJを巻回する。このプリプレグは、軸長方向に指向した炭素繊維を主体とし、長さは竿管の全長に対応する長さのプリプレグである。
【0015】
この先部領域L付近の外側に、前記プリプレグPHと同様なプリプレグPYを巻回する。更にその外側に、竿管の全長に対応する長さであって、強化繊維を円周方向に指向させたプリプレグPC2を巻回する。これを常法に従って加熱成形した大径竿管の、前記先部領域Lの途中位置における横断面を図5に示す。この竿管の継合部は前記先部領域Lを含み、更に、その後方部所定範囲を含む領域である。
【0016】
最内層がプリプレグPHに対応する補強層Hであり、その外側がプリプレグPC1に対応する円周方向層C1である。その外側には、プリプレグPJの先部PJEに対応する軸長方向層JEと、プリプレグPYに対応する傾斜方向層Yとが円周方向に交互に配設されている。この交互の配設間隔は、等間隔であり(この例では120度づつ)、全体として、大径竿管の先部に撓みの方向性(曲げ剛性の方向性)が出難いように形成している。その外側は、プリプレグPC2に対応する円周方向層C2である。
【0017】
竿管の成形時には加圧するため、上側に巻回したプリプレグPYがプリプレグPJの先部領域Lのカットされている隙間領域に侵入できる。しかし、それをより十分に侵入させて、先部肉厚を薄く形成するには、プリプレグPYに代え、図6に示すようにプリプレグPJの先部領域Lのカットされている隙間領域に合致させた形状のプリプレグPY”を使用するとよい。
【0018】
上記のように構成すれば、大径竿管の先側継合部の端部側領域、即ち、プリプレグPJの先部領域Lに対応する領域は、先端に行くに従って軸長方向指向の強化繊維が漸次少なくなり、理想的には先端において丁度無くなる。この軸長方向指向の強化繊維の減少した部位に代わって、±45度等の傾斜方向指向の強化繊維が配設されている構成のため、この領域の曲げ剛性が低減し、相手側竿管、即ち、小径竿管に対する応力集中が低減する。また、先端に向かって漸次曲げ剛性が低減して、先端において最小となるため、撓みが滑らかになると共に、継合状態の継合部端部と、継合領域の直ぐ前の小径竿管部位の曲げ剛性との剛性差を小さくでき、この意味で更に撓みが滑らかになる。
【0019】
図7は図5の形態に代わる大径竿管の横断面であるが、異なるのは軸長方向層JE’の2箇所と傾斜方向層Y’の2箇所とが、夫々、円周方向に180度離れて存在することである。曲げ剛性の方向性防止の観点からは、この例のように、各層JE’,Y’は、180度離隔した最低2箇所づつは必要である。従って、図4でいえば、プリプレグPJの先部PJEの三角形要素は、巻回された状態の360度の範囲内に2つ以上(複数)必要ということである。また、図8に示すように、図4のプリプレグPJに代り、これと類似の2枚のプリプレグPJ1,PJ2を用い、巻回した状態で図8の重なり状態のように三角形要素がずれて、円周における三角形要素の数が増えるように巻回し、360度中の必要な配設数を確保してもよい。
【0020】
図4以降で説明した大径竿管の継合部の構造は、小径竿管の継合部にも同様に適用できる。
【0021】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば、継合領域の端部近くにおける応力集中の防止された継合式釣竿が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明に係る並継式釣竿の縦断面図である。
【図2】 図2は振出式釣竿の縦断面図である。
【図3】 図3は図1の要部の拡大図である。
【図4】 図4は他の継合式釣竿の製法図である。
【図5】 図5は、図4の方法によって成形された釣竿竿管の要部横断面図である。
【図6】 図6は図4に代わる他の製法説明図である。
【図7】 図7は図5に代わる他の継合式釣竿竿管の横断面図である。
【図8】 図8は図4に代わる他の製法説明図である。
【符号の説明】
10 大径竿管
10E 継合部の端部側領域
10T 継合部
12 小径竿管
12E 継合部の端部側領域
12T 継合部
TR 継合領域
Claims (1)
- 繊維強化樹脂製の大径竿管と小径竿管とが互いに継ぎ合わされる釣竿であって、大径竿管の継合部の端部側領域と小径竿管の継合部の端部側領域との少なくとも何れか一方には、軸長方向強化繊維を主体とする層が存在しておらず、
継合部端部側領域に軸長方向強化繊維を主体とする層が存在していない竿管の、残りの継合部領域から該継合部端部側領域との境界部にまで至っている軸長方向強化繊維を主体とする第1層と、該第1層の内方又は外方に設けられ、該継合部端部側領域から離れて設けられている軸長方向強化繊維を主体とする第2層とを具備する
ことを特徴とする継合式釣竿。
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